以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略正面図である。図2は、本実施形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示すブロック図である。
本実施形態の画像形成装置1(以下単に装置ということもある)は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に転写(一次転写)し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙Sに転写(二次転写)することにより画像を形成する。
また、画像形成装置1は、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式である。
このような画像形成装置1は、図2を参照して、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、および制御部100を備える。また、電源部90を備える。電源部90からは制御部100からの指令(制御)によって各部への必要な電力が供給される(電源部90から各部への電源線は図示省略した)。
制御部100は、CPU(Central Proce(Sing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Acces Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1内の画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、および用紙搬送部50など各部の動作を制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、たとえば不揮発性の半導体メモリ(たとえばフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。したがって、制御部100は、いわゆるコンピューターである。
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(たとえばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、たとえば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、たとえばLANカード等の通信制御カードで構成される。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をイメージセンサー(たとえばCCD(Charge Coupled Device)センサー)12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
操作表示部20は、たとえばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。たとえば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、有色トナーによるカラー画像を形成する画像形成ユニット41、形成されたトナー像を用紙に定着させる定着部60等を備える。これら画像形成部40内の各部も制御部100によって制御される。
画像形成ユニット41は、Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、および41Kと、中間転写ユニット42を備える。画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは同様の構成を有する。図示および説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、またはKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、さらに露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
感光体ドラム413は、たとえばドラム径が60[mm]のアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo−conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(たとえばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(たとえばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(たとえばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
制御部100が感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413は一定の周速度で回転する。
帯電装置414は、コロナ放電を発生させることにより、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
露光装置411は、たとえば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成されることとなる。
現像装置412は、二成分逆転方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424およびベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ベルト421は、基体としてPI(ポリイミド)が用いられた無端状ベルトで構成され、ステアリングローラー423Cを含む複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。たとえば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
中間転写ベルト421は、導電性および弾性を有するベルトであり、表面に体積抵抗率が、たとえば8〜11[logΩ・cm]である高抵抗層を有する。中間転写ベルト421は、制御部100からの制御信号によって回転駆動される。なお、中間転写ベルト421については、導電性および弾性を有するものであれば、材質、厚さおよび硬度を限定しない。
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるローラー423B(以下「バックアップローラー423B」と称する)に対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用しても良い。
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。
定着部60内には、加熱ローラー61、定着ローラー62、定着ベルト63、加圧ローラー64を備える。また、ヒーターユニット110、他端部サーミスター80、端部サーミスター82、中央部サーモスタット84、中央部サーミスター86、一端部サーモスタット88などを備えている。これらの詳細は後述する。
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)があらかじめ設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
次に、定着部60の具体的な構成について、さらに図1を参照しながら説明する。定着部60は、用紙Sの定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される上側定着部60A、用紙Sの裏面(定着面の反対の面)側に配置される下側定着部60Bを備える。
上側定着部60Aは、加熱ローラー61と定着ローラー62とを有する。加熱ローラー61と定着ローラー62との間には、無端状の定着ベルト63が所定のベルト張力(たとえば、250[N])で張架されている。
下側定着部60Bは、加圧ローラー64を有する。加圧ローラー64は、定着ベルト63を介して定着ローラー62に所定の定着荷重(たとえば、2500[N])で押圧される。このようにして、定着ローラー62と加圧ローラー64との間には、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
定着ベルト63は、トナー像が形成された用紙Sに接触して、この用紙Sを定着温度(たとえば160〜200℃)で加熱する。ここで、定着温度とは、用紙S上のトナーを溶融するのに必要な熱量を供給しうる温度であり、画像形成される用紙Sの紙種等によって異なる。
定着ベルト63は、たとえば、基体として厚さ70[μm]のPI(ポリイミド)を用い、基体の外周面を弾性層として厚さ200[μm]の耐熱性のシリコンゴム(硬度JIS−A30[°])で被覆し、さらに、表層に厚さ30[μm]の耐熱性樹脂であるPFA(パーフルオロアルコキシ)のコーティングをしている。
加熱ローラー61は、定着ベルト63を加熱する加熱部としてのヒーターユニット110を内蔵している。ヒーターユニット110が加熱ローラー61内で発熱することで、定着ベルト63を加熱する。そして定着ベルト63が定着ローラー62を加熱することになる。したがって、定着ローラー62は定着ベルトを介してヒーターユニット110によって間接的に加熱されることになる。
加熱ローラー61は、たとえば、金属等から形成された円筒状の芯金そのまま、またはその外周面を、フッ素系樹脂等でコーティングしたものである。定着ローラー62は、図示しない駆動手段(たとえば、モーター)から動力が伝達されることにより回転駆動する。定着ベルト63および加熱ローラー61は定着ローラー62の回転に応じて回転駆動する。
図3は加熱ローラー部分の構造を示す概略正面図である。図4はヒーターユニットの構造を示す概略図であって、図3中のA方向から見た図である(加熱ローラーの軸方向と直交する方向から見た図)。
ヒーターユニット110は、定着ニップを通過する複数種類の用紙Sの用紙幅に対応するために棒状に形成された複数のヒーターを備える。複数のヒーターは第1ヒーター120、第2ヒーター130、および第3ヒーター140である。
第1ヒーター120、第2ヒーター130、および第3ヒーター140は、管状のバルブと、バルブ内に軸方向に沿って伸びるように配設されたフィラメントとを有するランプである。各ヒーターは、制御部100の制御によって電源部90から電力が供給されて発熱する。
なお、図4において、各ヒーター(ランプ)の大きさは、実際のヒーターの大きさではなく、各ヒーターの配熱をわかり易くするために、動作時の発熱量が大きなものほど大きく描いている。また、図4に示すように、一端部側(図示右側)を画像形成装置の前側(フロント側)とし、他端部側(図示左側)を後側(リア側)とする。
図5は、各ヒーターの配熱(各部位の発熱量)を示すグラフである。
第1ヒーター120は、サブヒータランプであり、軸方向の両端部を発熱するために一端部側ヒーターランプ121と他端部側ヒーターランプ122よりなる。第1ヒーター120は、加熱ローラー61および定着ベルト63を介して定着ローラー62の軸方向における一端部側を他端部側よりも高温に加熱するように構成されている。すなわち、第1ヒーター120は、図5の一点鎖線L1に示すように、一端部側の発熱量が他端部側よりも大きい。このため一端部側ヒーターランプ121の発熱量が他端部側ヒーターランプ122の発熱量よりも大きいのである。
第2ヒーター130は、サブヒータランプであり、軸方向の両端部を発熱するために一端部側ヒーターランプ131と他端部側ヒーターランプ132よりなる。第2ヒーター130は、加熱ローラー61および定着ベルト63を介して定着ローラー62の軸方向における他端部側を一端部側よりも高温に加熱するように構成されている。すなわち、第2ヒーター130は、図5の点線L2に示すように、他端部側の発熱量が一端部側よりも大きい。このため他端部側ヒーターランプ132の発熱量が一端部側ヒーターランプ131の発熱量よりも大きいのである。
第3ヒーター140は、メインヒーターランプであり、軸方向の中央部が発熱するように形成されている。すなわち、第3ヒーター140は、加熱ローラー61および定着ベルト63を介して定着ローラー62の軸方向の中央部を一端部(前側、以下同様)および他端部(後側、以下同様)より高温に加熱するように構成されている。第3ヒーター140は、図5の実線L3に示すように、一端部と他端部の両端部よりも中央部が高温となる発熱量となっている。第3ヒーター140の軸方向における中央部の長さは、たとえばA4縦送りサイズの用紙幅に相当する。
これら3つのヒーターによって定着ローラー62は加熱ローラー61および定着ベルトを介在させて軸方向にまんべんなく加熱されることになる。
本実施形態では、第1ヒーター120と第2ヒーター130とは、加熱ローラー61の軸方向において、左右対称の発熱分布を有している。なお、第1ヒーター120と第2ヒーター130とは、加熱ローラー61の軸方向において、左右非対称の加熱分布を有しても良い。
第3ヒーター140の軸方向における中央部に配設されたフィラメントの長さと第1ヒーター120および第2ヒーター130の軸方向における両端部に配設されたフィラメントの長さとの和は、たとえばA4サイズ長手方向の用紙幅に相当する。
第1ヒーター120、第2ヒーター130、および第3ヒーター140は、制御部100から出力された命令によって、選択的に点灯(発熱)または消灯(非発熱)する。
加熱ローラー61の近傍には、各ヒーターの温度制御のために温度検出部材が配置されている。温度検出部材は、他端部側から順に、他端部サーミスター80、端部サーミスター82、中央部サーモスタット84、中央部サーミスター86、一端部サーモスタット88を備えている。なお図4において、サーモスタットを「tmt」、サーミスターをtmsと記した。
他端部サーミスター80は、他端部の非通紙部に、加熱ローラー61(または定着ベルト63を介して加熱ローラー61)と接触するように配置されている。他端部サーミスター80は、高温を検知すると制御部100が全ヒーターのOFFと画像形成の停止を行う。したがって他端部サーミスター80が加熱ローラー61の軸方向における他端部において高温を検出したときには、即座に全ヒーターへの電力が遮断される。他端部サーミスター80は、定着ニップ幅方向において用紙が搬送される領域外の位置に加熱ローラー61または定着ベルト63に接触するように取り付けることで、確実にヒーターユニット110の異常な温度を検出できるようになっている。
端部サーミスター82は温度センサーとなるものであり、加熱ローラー61および定着ベルト63と非接触で他端部側に配置されている。端部サーミスター82は他端部側の温度を検出して、制御部100へ伝え、制御部100が第1ヒーター120と第2ヒーター130をON/OFFして制御温度に制御する。したがって端部サーミスター82は、加熱ローラー61の軸方向における他端部の温度を検出して制御部100に出力する。制御部100は、たとえば、端部サーミスター82から出力された温度と両端部の目標温度との差に基づいて、検出温度が目標温度に向かうように、第1ヒーター120および第2ヒーター130の点灯制御を行う。
端部サーミスター82は、第1ヒーター120および第2ヒーター130のそれぞれの他端部側ヒーターランプ122および132に対応した位置に設けられている。
この端部サーミスター82は定着ベルト63から常に離れた位置に設けられている。これは定着ベルト63に端部サーミスター82が接触すると定着ベルト63表面に傷がつく恐れがあり、傷がついてしまうと、形成された画像に悪影響があるので、このような傷が発生しないようにするためである。
中央部サーモスタット84は、加熱ローラー61および定着ベルト63と非接触で中央部に配置されており、高温を検知すると自身のスイッチが切れて、第3ヒーター140への通電を遮断することにより、第3ヒーター140をOFFする。中央部サーモスタット84からは、第3ヒーター140への通電を遮断したことを知らせる信号が制御部100にも出力される(高温を検出したことを知らせる信号でもよいし、制御部100が通電の遮断を検知してもよい)。これにより制御部100は、実行中の画像形成処理を停止する。中央部サーモスタット84も、定着ベルト63に傷をつけないために、常に離れた位置に設けられている。
中央部サーミスター86は、中央部に加熱ローラー61および定着ベルト63と非接触で配置されており、温度を検出して、第3ヒーター140をON/OFFして制御温度に制御する。中央部サーミスター86は、加熱ローラー61の軸方向における中央部の温度を検出して制御部100に出力する。制御部100は、たとえば、中央部サーミスター86から出力された温度と中央部の目標温度との差に基づいて、中央部の温度が目標温度に向かうように、第3ヒーター140の点灯制御を行う。中央部サーミスター86も、定着ベルト63に傷をつけないために、常に離れた位置に設けられている。
一端部サーモスタット88は、一端部に加熱ローラーおよび定着ベルト63と非接触で配置されており、高温を検知すると自身のスイッチが切れて、第1ヒーター120および第2ヒーター130への通電を遮断することにより、これらヒーターをOFFする。したがって一端部サーモスタット88が加熱ローラー61の軸方向における一端部において高温を検出したときには、即座に第1ヒーター120および第2ヒーター130への電力を遮断する。一端部サーモスタット88からは、第1ヒーター120および第2ヒーター130への通電を遮断したことを知らせる信号が制御部100にも出力される(高温を検出したことを知らせる信号をでもよいし、制御部100が通電の遮断を検知してもよい)。これにより制御部100は、実行中の画像形成処理を停止する。
この一端部サーモスタット88も、定着ベルト63に傷をつけないために、常に離れた位置に設けられている。
このように制御部100は、端部サーミスター82および中央部サーミスター86の2つ温度検出部材(温度センサー)が検出した温度により、第1ヒーター120、第2ヒーター130、および第3ヒーター140の点灯制御を行っている。
サーモスタットやサーミスターは、本実施形態のごとく、加熱ローラー61の軸方向に複数のヒーターが設けられている場合、それぞれのヒーターに対応させて、一端部、中央部、および他端部に配置することが理想である。しかし、画像形成装置においては、内部構造や空間的な制約から、様々な部材の配置が制約されてしまうことがある。たとえば、加熱ローラー61の軸方向における発熱幅を330[mm]とした場合、温度制御用のサーミスターの幅として約50[mm]、高温検出用のサーモスタットの幅として50[mm]、各サーミスターおよび各サーモスタットへ電力を供給する電源部90と接続するための配線の幅として30[mm]がそれぞれ必要である。すなわち、サーミスターおよびサーモスタットの1セットで130[mm]の幅が必要となる。本実施形態では発熱部材である各ヒーターによる温度の高い領域が一端部、中央部、および他端部の3つに分かれている。このため理想的には、サーミスターおよびサーモスタットは3セットとなって、390[mm]の幅が必要となる。しかし先に示したように、加熱ローラー61の軸方向における発熱幅は330[mm]であるから、サーミスターおよびサーモスタットを3セット配置することができない。
このため本実施形態では、画像形成できなくなるような高温に対応するためのサーミスターおよびサーモスタットについては、一端部(一端部サーモスタット88)、中央部(中央部サーモスタット84)および他端部(他端部サーミスター80)のそれぞれに対応して配置する。一方、温度制御ためのサーミスターは、他端部側に端部サーミスター82、中央部に中央部サーミスター86の2個のみとした。したがって、一端部側には温度制御のためのサーミスター(すなわち温度センサー)が存在しないのである。
このような本実施形態における定着部60の温度制御を説明する前に、温度制御に影響を与える画像形成装置1内部のエアーフローについて説明する。
図6は、画像形成装置内部のエアーフローを説明するための画像形成装置の概略図である。
画像形成装置1においては、一般的に、装置本体内の排気および排熱のために複数のファンが設けられている。複数のファンによるエアーフローは、図6中の太線矢印F1で示すように、装置本体の前側に設けられている吸気ダクト210から吸気し、装置本体の後側に排気するようになっている。
たとえば、画像形成処理時においては、定着部60から発生する熱量が多くなり画像形成装置1内の温度が上昇する。これに対応するために、画像形成処理時においては装置本体の後側に配置された機内冷却ファン220や定着排気ファン230を100[%]の出力で動作させる。一方、アイドリング時においては、定着部60から発生する熱量が少ないため、機内冷却ファン220や定着排気ファン230を30[%]程度の出力で動作させる。画像形成装置は、このようなファンの動作によって画像形成装置1内の温度が上昇することを防止している。
なお、画像形成処理の終了直後におけるアイドリング時においては、画像形成処理時に発生した熱が画像形成装置1内に残っているため、機内冷却ファン220や定着排気ファン230を一定時間、100[%]の出力で動作させたり、アイドリング時の出力より大きな出力(たとえば、50[%])で動作させたりする場合もある。
図7は、アイドリング中における定着ベルト63の軸方向の温度分布を示すグラフである。アイドリング中においては、小さな電力で定着ニップの温度を維持することができるため、第1ヒーター120、第2ヒーター130、および第3ヒーター140による熱供給は小さくなる。しかし、機内冷却ファン220や定着排気ファン230の動作は維持されるため、温度の低い外気が吸気ダクト210から入り込み、定着部60から発生する熱によって温められた空気が装置本体の後側に流れることにより装置本体の後側の温度は余り低下しない(図7の点線T2)。つまり、前側の温度が後側の温度より低くなる方向に温度の傾きが大きくなる。したがって、装置本体の前側の発熱量が大きいヒーター(本実施形態では、第1ヒーター120)の点灯時間を、発熱量が小さいヒーター(本実施形態では、第2ヒーター130)よりも長くすることによって、定着ニップの軸方向の温度分布を均一にして定着不良の発生を防止する(図7中の実線T1)。
図8は、画像形成中における定着ベルト63の軸方向の温度分布を示すグラフである。画像形成中は定着ニップの温度維持に大きな電力を必要とする。このとき図7で示したアイドリング中同様に、第1ヒーター120の点灯時間を大きく設定すると、前側の温度が上昇しすぎる結果となる(図8の点線T2を参照)。
そこで画像形成中は、前側の発熱量が小さい第2ヒーター130の点灯時間を、アイドリング時と比べて長くすることによって、定着ニップの軸方向の温度分布を均一にして定着不良の発生を防止している(図8中の実線T1)。
また、本実施形態では、定着部60において、図6に示すように、用紙が定着ニップを通過した後に定着ベルト63から分離させるためにエアを吹き付ける分離ファン240が設置される。また、加圧ローラー64を冷却するためにエアを吹き付ける加圧ローラー冷却ファン250が設置される。これらのファンの動作によって、定着ニップの軸方向の温度分布が均一になるように作用するエアーフロー(図6の矢印F2)が形成される。
ところで、画像形成装置1の動作状態(たとえば、アイドリング中、画像形成中等)の変化に応じて、第1ヒーター120、第2ヒーター130、および第3ヒーター140による熱供給量が変化するだけでなく、上記した各種ファンの稼働状況も変化する。ファンの稼働状況が変化すると、ファンによって形成される画像形成装置1内のエアーフローも変化する。このため定着ニップの軸方向の温度分布に影響を与える。その結果、定着ニップにおける用紙Sに対する加熱量が定着ニップの軸方向で不均一になってしまい、定着不良が発生する。特にアイドリング中は、定着部60の温度を維持するために必要な熱量が画像形成中と比べて少なくなるため、ファンによって形成されたエアーフローの影響を受けて、定着ニップの軸方向の温度分布は大きく変化してしまう。
そこで、本実施形態では、制御部100は、画像形成装置1内に設けられたファンの稼働状況の変化に応じて、定着ベルト63ひいては定着ニップの軸方向の温度が均一となるように、第1ヒーター120および第2ヒーター130の発熱量を制御する。
図9は、定着部の加熱制御の手順を示すフローチャートである。
この制御は、画像形成装置1の電源がオフからオンに切り替えられることによって開始する。
まず、制御部100は、定着ベルト63の目標温度をアイドリング中の目標温度としてあらかじめ定められているアイドル目標温度に設定する(S1)。次に、制御部100は、画像形成装置1内に設けられたファンのアイドリング中における稼働状況に応じて第1ヒーター120および第2ヒーター130の点灯比率を算出する(S2)。本実施形態では、第1ヒーター120および第2ヒーター130の点灯比率は、以下の式(1)、式(2)によって定義される。
第1ヒーター120の点灯比率[%]=第1ヒーター120の点灯時間/(第1ヒーター120の点灯時間+第2ヒーター130の点灯時間) …(1)
第2ヒーター130の点灯比率[%]=100[%]−第1ヒーター120の点灯比率[%] …(2)
この第2ヒーター130の点灯比率が後述するR2となる。
第1ヒーター120の点灯比率の算出方法は、ファンごとにファンの駆動状態(動作出力:0〜100[%])に対して、定着ニップの軸方向の温度分布への影響の大きさを表す係数を掛けたものを求めて積算する。温度分布への影響が大きなファンについては、係数を大きく設定し、影響が小さなファンについては、係数を小さく設定することで、ファン動作を適切に点灯比率へ盛り込むことができる。なお、各種ファンの温度分布への影響は装置本体内に形成されるエアーフローや定着部60の断熱状態により異なるため、上記係数は画像形成装置ごとに異なった値となる。
第1ヒーター120の点灯比率の算出式の例を以下の式(3)に示す。
第1ヒーター120の点灯比率[%]=50[%]+機内冷却ファン220の動作出力×係数1+分離ファン240の動作出力×係数2 …(3)
ここで、第1項の「50[%]」は初期値であり、第1ヒーター120および第2ヒーター130を均等な比率で動作させることとしてこの値にしている。もちろん初期値として他の値であってもよい。これにより求めた第1ヒーター120の点灯比率が後述するR1となる。
ここで、係数1は、機内冷却ファン220すなわち装置本体の前側の温度を低下させるファンに対する係数である、したがって、係数1は、前側を後側より高温に加熱する第1ヒーター120の点灯比率を高くする必要があり正の値をとる。その一方、係数2は、分離ファン240すなわち装置本体の前側から後側にわたって均一に温度を低下させるファンに対する係数であるため、第1ヒーター120の点灯比率を低くする必要があり負の値をとる。
表1は、各種ファンについて第1ヒーター120の点灯比率を算出する際に用いる係数と、画像形成装置1の動作状態に応じた各種ファンの動作出力との関係、および、式(3)による第1ヒーター120および第2ヒーター130の点灯比率の算出結果を示す。表1に示すように、機内冷却ファン220と分離ファン240の稼働状況から点灯比率を決定すると、アイドリング時においては、第1ヒーター120の点灯比率は、68[%]となり、第2ヒーター130の点灯比率(32[%])より高くなる。また、画像形成処理時においては、第1ヒーター120の点灯比率は、47[%]となり、第2ヒーター130の点灯比率(53[%])より若干低くなる。なお、上記式(3)において、各種ファンの動作出力を変更せずに、画像形成装置1の動作状態の変化に応じて係数1、2の値を変化させることによって第1ヒーター120の点灯比率を算出してもよい。すなわち、画像形成装置1の動作状態の変化に応じた各種ファンの稼働状況の変化を係数1、2に反映させても良い。
図9のフローチャートに戻り説明を続ける。制御部100は、ここで温度傾き値監視処理を開始する(S3)。この温度傾き値監視処理はサブルーチンであり、かつ、メインルーチンとは平行的に実施される処理である。この処理の詳細は後述する。
続いて、制御部100は、端部サーミスター82から検出された温度(検出温度)を取得する(S4)。
続いて、制御部100は、取得した検出温度がステップS1で設定された目標温度より小さいか否かについて判定する(S5)。判定の結果、検出温度が目標温度より小さい場合(S5、YES)、制御部100は、ステップS2にて算出した点灯比率に基づいて第1ヒーター120および第2ヒーター130を点灯させる(S6)。その後、処理はステップS8に遷移する。
一方、ステップS5において、検出温度が目標温度より小さくない場合(S5、NO)、制御部100は、第1ヒーター120および第2ヒーター130を消灯させる(S7)。その後、処理はステップS8へ遷移する。検出温度が目標温度より小さくない場合とは、すなわち、目標温度に到達したことを示している。
ここで、S2で算出された点灯比率による第1ヒーター120および第2ヒーター130の点灯タイミングを説明する。
図10は、第1ヒーター120および第2ヒーター130の点灯、消灯のタイミングチャートと、検出温度のグラフである。図10においてタイミングチャートとグラフの横軸である時間は同じにしている。なお、この図は、本実施形態における温度傾き値を用いた制御を行ってない比較例を示している。
本実施形態では、ステップS2(または後述するステップS10)において決められた点灯比率となるように時分割により制御している。このため、図10に示すように、第1ヒーター120および第2ヒーター130を点灯する場合(ステップS5:YESまたは後述するS12:YES)、制御部100は、最初の時分割時間の間(Tm1)において、第1ヒーター120の点灯比率に対応する時間の間(A1)、第1ヒーター120を点灯(ON)し、第2ヒーター130を消灯(OFF)する。第1ヒーターの点灯比率分の時間が経過したなら、第2ヒーター130の点灯比率に対応する時間の間(A2)、第1ヒーター120を消灯(OFF)し、第2ヒーター130を点灯(ON)する。ステップS5:YESの状態が続いている間、これを時分割時間(Tm1、Tm2)ごとに繰り返す。そして、検出温度が目標温度を超えたなら(ステップS5またはS12:NO)、両ヒーターはともに消灯(OFF)とする。ここでは、時分割時間Tm3の途中で目標温度に到達しているので、その時点で制御部100は、即座に両ヒーターを消灯(OFF)させる。
その後、再び検出温度が目標温度を下回ったなら(Tm4)、S5(またはS12)がYESとなるので、制御部100は、時分割時間ごとに第1ヒーター120および第2ヒーター130の点灯制御を行う(Tm5)。ここでも時分割時間Tm6の途中で目標温度に到達するので、その時点で両ヒーターを消灯(OFF)させることになる。その後このような動作を繰り返して、目標温度を維持することになる。
なお、時分割制御においては、制御部100は時間をカウントするだけでなく、たとえば、装置(電源部90)が受電している公衆電源(AC)の電力周波数(東日本50[Hz]、西日本60[Hz])(または交流の周期)をカウントして、点灯比率に応じた点灯比率となるように分割してもよい。
図11は、第3ヒーター140の点灯、消灯のタイミングチャートと、検出温度のグラフである。図11においてタイミングチャートとグラフの横軸である時間は同じにしている。
第3ヒーター140は、それ専用の中央部サーミスター86が対応している。したがって、この中央部サーミスター86の検出温度に応じて第3ヒーター140を点灯、消灯させることになる。つまり、制御部100は、中央部サーミスター86の検出温度が目標温度より小さい場合、第3ヒーター140を点灯させる。その後、検出温度が目標温度を超えるまで点灯状態を継続し、検出温度が目標温度を超えた段階で消灯する。このような制御によって、第3ヒーター140の目標温度を維持する。
処理がステップS8に遷移した後は、制御部100は、操作部22からのユーザー操作によって、画像形成指示があったか否かを判定する。判定の結果、画像形成指示がなかった場合(S8、NO)、処理はステップS4へ戻る。一方、画像形成指示があった場合(S8、YES)、制御部100は、定着ベルト63の目標温度を画像形成処理中の目標温度としてあらかじめ定められている画像形成目標温度に設定する(S9)。そして、制御部100は、画像形成処理の実行を開始するように画像形成部40を制御する。
続いて、制御部100は、画像形成装置1内に設けられたファンの画像形成処理中における稼働状況に応じて第1ヒーター120および第2ヒーター130の点灯比率を算出する(S10)。たとえば表1を参照して説明したように、制御部100は、第1ヒーター120および第2ヒーター130の点灯比率をそれぞれ47[%]および53[%]として算出する。
次に、制御部100は、端部サーミスター82から検出された温度(検出温度)を取得する(S11)。
続いて、制御部100は、取得した検出温度がステップS240で設定された目標温度より小さいか否かについて判定する(S12)。判定の結果、検出温度が目標温度より小さい場合(S12、YES)、制御部100は、ステップS10にて算出した点灯比率となるように第1ヒーター120および第2ヒーター130を点灯させる(S13)。その後、処理はステップS15に遷移する。ここでの点灯比率も図10を用いて説明したものと同じで分割された一定時間内において第1ヒーター120および第2ヒーター130の点灯時間が決められた点灯比率となるように制御するものである。
一方、検出温度が目標温度より小さくない場合(S12、NO)、制御部100は、第1ヒーター120および第2ヒーター130を消灯させる(S14)。その後、処理はステップS15に遷移する。
ステップS15では、制御部100は、実行中の画像形成処理が終了したか否かについて判定する(S15)。判定の結果、画像形成処理が終了していない場合(S15、NO)、処理はステップS11へ戻る。一方、画像形成処理が終了した場合(S15、YES)、画像形成装置1の動作状態が画像形成処理中からアイドル中に遷移するため、処理はステップS1へ戻る。
次に、ステップS3の温度傾き値監視処理について説明する。
まず温度傾き値について説明する。温度傾き値は、定着ローラー62の軸方向両端部間の温度差を表す指標である。
定着ローラー62は、加圧ローラー64との間で定着ベルト63を介在させているが、画像を定着させる用紙が通る定着ニップを形成している。したがってこの定着ローラー62の温度制御は重要である。
本実施形態では、既に説明したとおり、定着ローラー62は、加熱ローラー61および定着ベルト63を介して加熱されている。その熱源はヒーターユニット110である。
そして、第1ヒーター120および第2ヒーター130は、それぞれ両端部の発熱量が異なる。このため一方のヒーターのみを点灯すると、その間、発熱量の大きい方の端部側の温度が高くなる。このため一端部側と他端部側に温度差ができる。この軸方向における両端部間の温度差の指標として温度傾き値を用いる。
温度傾き値は、ある時点までの第1ヒーターの点灯状態、第2ヒーターの点灯状態から、加熱ローラー61の軸方向の温度傾き値を求めることになる。
温度傾き値は、下記式(4)により求める。
温度傾き値=t1/R1−t2/R2 …(4)
ここで、t1/R1の項は第1ヒーター120の点灯時間t1と、その算出時の式(3)で求められる第1ヒーター120の点灯比率R1である。t2/R2は第2ヒーター130の点灯時間t2と、その算出時の式(2)で求められる第2ヒーター130の点灯比率R2である。
なお、R1およびR2は、0[%]となる場合は、それぞれの項(t1/R1、t2/R2)は算出せず、それぞれの項は0(ゼロ)を置く。
この温度傾き値についてさらに説明する。温度傾き値は、第1ヒーター120と第2ヒーター130の点灯割合R1:R2が所定の割合(比率)で点灯したときに0となるようにしている。本実施形態では、たとえば、温度傾き値が0となるように、R1=60、R2=40に設定する。装置の前側はファンの影響で冷えやすい。そこで前側(一端部側)に発熱量の大きいヒーターランプ121を設けている第1ヒーター120の点灯比率を多くすることでファンの影響により前側に温度が傾くのを抑えるのである。
この点灯比率になるように時分割制御すると、第1ヒーター120が6秒、第2ヒーター130が4秒、すなわち6:4の割合で点灯したときに温度傾きが0となる。これを式(4)に代入すれば、温度傾き値=6秒/60−4秒/40=0となる。
この温度傾き値は、一定時間間隔で算出して積算して行く。実際の計算では、式(4)を見ればわかるとおり、たとえば一定時間間隔ごとに現在点灯しているヒーターを確認して第1ヒーター120が点灯している場合は、温度傾き値に(積算間隔時間/R1)を加え、第2ヒーター130が点灯している場合は、温度傾き値から(積算間隔時間/R2)を引くようにしてもよい(式(4)の第2項の前に引き算符号があることと同じである)
このようにして求められる温度傾き値は、定着ローラー62の軸方向の両端部間の温度差そのものではなく、加熱ローラー61内の第1および第2ヒーターの点灯状態から推定した温度差の指標である。そしてこの指標を基に温度の傾きを解消すればよいので、ここでは温度差そのものを知る必要はない。
なお、温度差の要因となる発熱量の大きい方のヒーターランプの発熱量だけを使用して温度傾き値を算出してもよい。このような算出方法とすることで温度傾き値の計算をごく簡単なものにすることができる。
図12は、温度傾き値監視処理の手順を示すフローチャートである。
温度傾き値監視処理は、メインルーチンの処理と並行して行われる。まず、制御部100は、第1ヒーター120および第2ヒーター130のそれぞれの点灯経過時間(t1、t2)と点灯比率(R1、R2)から、温度傾き値を算出する(S31)。温度傾き値は電源投入後、いずれかのヒーターを点灯することを始点として算出を開始する。その後装置の電源が切られるか、またはスリープ状態(ヒーターも消灯している状態が続いている状態)となった時点で温度傾き値の算出を終了する。
続いて、制御部100は、温度傾き値があらかじめ決められた所定値より大きいか否かを判定する(S32)。ここで温度傾き値が所定値より大きければ(S32:YES)、メインルーチンでの処理に割り込みをかける。そしてこの割り込み処理において制御部100は、次にヒーターを点消灯させるタイミングで優先点灯させるヒーターを温度傾き値に基づき決定し、そのヒーターを点灯させるように指示する(S33)。
一方、温度傾き値が所定値より大きくなければ(S32:NO)、処理はS34へ遷移する。
ステップS34では、制御部100は、温度傾き値算出時間間隔として一定時間経時する(S34)。このS34の処理は、温度傾き値を一定時間間隔ごとに算出するための処理である。この時間間隔は、少なくともステップS2(またはステップS10)において決定された点灯比率による各ヒーターのなかの最短点灯時間より短くする。この時間間隔はできるだけ短い方が好ましく、たとえば、1秒以下、好ましくは0.5秒以下(0秒を超える)の間隔である。このように各ヒーターのなかの最短点灯時間より短い時間間隔で、温度傾き値を求めることで、確実にヒーターの点灯切り換えのタイミグにおける温度傾き値を取得することができる。特に、より短い時間間隔とすることで、温度傾き値が急激に変化するようなことがあっても対応することが可能となる。たとえばアイドル状態から画像形成開始、逆に画像形成終了からアイドルへ戻るなどの変換点、また、用紙サイズや坪量が変化した時(詳細後述)など、様々に条件が変わったときでもリアルタイムで適切な温度傾き値を算出することができる。
さらに、温度傾き値に基づいた制御の具体例を説明する。図13は温度傾き値に基づいた制御を説明するため説明図であり、ヒーターの点消灯のタイミングチャートと温度傾き値のグラフである。図13においてタイミングチャートとグラフの横軸である時間は同じにしている。図13は図10に示した比較例の制御と同様に目標温度へ到達させる制御を行いつつ、本実施形態による温度傾き値による制御を加えたものである。
ここでは具体例としてたとえば、第1ヒーター120の一端部側ヒーターランプ121の発熱量を110%、他端部側ヒーターランプ122の発熱量を95%、第2ヒーター130の一端部側ヒーターランプ131の発熱量を105%、他端部側ヒーターランプ132の発熱量を95%とする。なお、ここで百分率で示した発熱量は、第3ヒーター140の発熱量を100%とした場合の相対値である。
このような発熱量において点灯比率を第1ヒーター:第2ヒーター=60:40、すなわちR1=60、R2=40とする。
時分割区間Tm1、Tm2…のそれぞれの区間内は、第1ヒーター120点灯および第2ヒーター130消灯となっている区間A1と、第1ヒーター120消灯および第2ヒーター130点灯となっている区間A2ある。
温度傾き値を求める際、実際の装置にあっては、第1ヒーター120および第2ヒーター130がともに消灯した状態を加味する必要がある。第1ヒーター120および第2ヒーター130がともに消灯した場合は、加熱ローラー61が完全に冷えるまでは機内冷却ファンのエアーフローにより温度の傾きが生じる。そこで、第1ヒーター120および第2ヒーター130がともに消灯した場合を加味するために、式(4)に両ヒーター消灯時の影響を加味した下記式(5)により温度傾き値を算出することとする。
温度傾き値=t1/R1−t2/R2−t3/R3 …(5)
ここでt3は両ヒーターを消灯している時間である。R3は点灯比率と同様にしてファンの影響を加味するための値であり、第1ヒーター120および第2ヒーター130がともに消灯した場合に、下記式(6)により求める。
第1および第2ヒーター消灯時ファン影響R3=機内冷却ファン220の動作出力×係数1+分離ファン240の動作出力×係数2 …(6)
式(6)中、係数1および係数2は前述した動作状態の変化に応じた各種ファンの稼働状況の変化をあらわすものであり、係数1は機内冷却ファン、係数2は分離ファンの稼働状態を表す値である。
なお、式(5)において、R3が0になるとき、すなわち、両方のファンが動作停止している場合(たとえば機内温度が十分に低い場合やスリープ中など)は、t3/R3の項は算出せず0を置く。また、当然であるが両ヒーターのうち少なくとも一方が点灯している場合は、t3=0である。
この第3項を加えることで、両ヒーター消灯時においても、機内冷却ファンによって前側がより冷えやすいという装置構成特有の要因による温度傾き値を得ることができる。特に、ヒーター点灯時のような大きな温度変化ではなく、ファンの影響による、ヒーター点灯時と比較すれば小さな温度変化よる温度の傾きも求めることができるようになる。なお、両ヒーター消灯時の影響がほとんどないような装置構成の場合は、この第3項はなくてもよい(すなわち、上述式(4)のままで温度傾き値を求めればよい)。
図13を参照して、式(5)を用いて温度傾きを求めた例を説明する。まず、時分割時間Tm1の間を算出する。時分割時間Tm1内の区間A1は6秒であるから「温度傾き値=6/60−0−0=1/10」となる。この時点で所定値(後述)を超えている。このため、優先点灯させるのは、第2ヒーター130ということになるが、元々次のタイミングでは第2ヒーター130を点灯させるものとなっているので、そのままの制御となる。そして区間A2は4秒であるから「温度傾き値=0−4/40−0=1/10」となる。これを時分割時間Tm1内で積算すると、「温度傾き値=6/60−4/40=0」となる。
次に時分割時間Tm2の間を同様に算出する。時分割時間Tm2内の区間A1およびA2は時分割時間Tm1と同じであるから「温度傾き値=6/60−4/40=0」となる。これを時分割時間Tm1にさらに積算すると、Tm1=0およびTm2=0であるから「温度傾き値=0+0=0」となる。
次に、時分割時間Tm3内を計算する。時分割時間Tm3内の区間A1「温度傾き値=6/60−0−0=1/10」となる。そして、時分割時間Tm3内では途中で目標温度に到達するため、区間A2では途中まで第2ヒーター130が点灯していることになる。この途中までの第2ヒーター130の点灯時間は1秒である。
そうすると、時分割時間Tm2内の区間A2での温度傾き値は「温度傾き値=0−1/40−0=1/40」となる。これをこれまでの温度傾き値と積算する。時分割時間Tm1、Tm2はいずれも0であるから、実質的には時分割時間Tm3内の区間A1との積算となる。したがって、積算値は「温度傾き値=6/60−1/40−0=3/40」となる。この時点でも所定値を超えたままである。そして温度傾き値は「正」の値であるから一端部側の温度の方が他端部側よりも高いことを示している。なお、ここでは式(4)および式(5)から、一端部側の温度が高い場合に温度傾き値は「正」の値になる。
したがって、次の点灯タイミングでは、他端部側の温度を高くするために第2ヒーター130を優先点灯させるように決定して指示することになる。
続いて、時分割時間Tm3の途中から時分割時間Tm4では第1ヒーター120も第2ヒーター130も消灯が続く。この間も、温度傾き値の算出は続けられる。この間は、「温度傾き値=0−0−t3/R3」となる。
その後、目標温度を下回った時点で、ヒーター点灯が再開される。ヒーター点灯再開時点でも温度傾き値は所定値を超えているので、時分割時間Tm5では、先ほど優先点灯させるように決定した第2ヒーター130を点灯させることになる。
その後は、同様に、Tm5、Tm6…と同様に、目標温度へ到達させるための制御とともに、温度傾き値による制御が継続されることになる。
なお、図13の例とは異なり、両ヒーターを消灯している間(Tm3の途中からTm4)に、温度傾き値の積算値が所定値未満となった場合は、先ほど第2ヒーター130を優先点灯させるように決定したものと、元の第1ヒーター120を優先点灯させることに再度決定することになる。
このように本実施形態では、温度傾き値に基づいて、次の点消灯のタイミングで優先的に点灯させるヒーターを決めている。
そしてこのような温度傾き値による制御を入れたことで、通常の時分割による制御では益々温度傾き値が大きくなるところが、本制御によっていち早く温度傾き値を小さくすることができるのである。したがって、定着ローラー62の両端部間の温度差が少なく軸方向における温度の均一化を図ることができる。しかも、第1ヒーター120と第2ヒーター130による総合熱量は、通常の時分割制御(図10参照)の場合とほとんど変わらないため、目標温度への到達時間が長くなるようなこともない。
ここで、温度傾き値と比較する所定値について説明する。温度傾き値は、既に説明した式(4)および(5)式から、傾きの無い状態が0である。したがって、所定値は、好ましくは0である。所定値=0とすることで定着ローラー62の軸方向の温度の傾きをなくすように制御できる。なお、図13においても所定値=0としている。
ただし、所定値は0以外であってもよい。たとえば定着ローラー62の両端部間温度差がどの程度発生すると定着ローラー62の軸方向の温度が不均一になり、それが画像形成に影響するかどうかによって決めるようにしてもよい。これは、既に説明したとおり、画像形成装置内部は多くのファンによって空冷されているので、装置内部の空気の流れが機種や個体ごとに異なる。このため定着ローラー62の両端部間温度差がどの程度現れるかは機種や個体ごと異なり、それによる画像形成への影響も異なる。所定値を0以外とすることで、このような機種や個体ごとの違いを加味して温度傾きを補正することができる。このような場合、同じ機種では同じ所定値をセットしてもよい。またたとえば、画像形成に影響するようになる手前で、それ以上温度傾きが発生しないようにマージンを持たせた所定値としてもよい。このようなマージンを持たせることで、画像不良が発生するほどの温度傾きが生じる前に、温度傾きの発生を抑えることが可能になる。所定値を0以外にする場合は、正側と負側のそれぞれに所定値を設けるか、または所定値と温度傾き値の絶対値を比較するようにしてもよい。
この温度傾き値による制御は、ここでは「正」の方向に傾く例を説明したが、もちろん「負」の方向に傾いた場合でも同様に制御する。すなわち、他端部側の温度が一端部側より高くなるような場合には、符号が「負」になる。そして温度傾き値が所定値を超えれば、本来第2ヒーター130を点灯するタイミングであっても、第1ヒーター120を点灯するように制御する。
なお、本実施形態では、温度傾き値監視処理をステップS3としたが、この処理は、ヒーターへの電力供給前であればどの段階から入ってもよい。たとえばステップS1の前、装置の電源投入直後から温度傾き値監視処理を行うようにしてもよい。
次に、温度傾き値が大きくなった場合の制御について説明する。たとえば、定着ニップ幅よりも小さな用紙を片側基準で通紙させた場合、片方の端部温度だけが低下する。このような場合、温度傾き値が通常の目標温度への制御の状態よりも大きくなることがある。また、通紙により定着ローラー62全体の温度も低下する。したがって、このような場合はいち早く定着ローラー62全体の温度を目標温度まで上昇させるとともに定着ローラー62軸方向の温度の傾きもいち早く解消する必要がある。
たとえば、他端部側基準で定着ニップ幅に満たない用紙が通紙されたものと仮定する。この仮定では、使用された用紙の幅から一端部側は通紙していないことがわかる。そうすると一端部側の温度低下は大きくないことがわかる。このような場合は、他端部側の温度が低く、一端部側の温度が高い状態となった温度傾き値を推定することになる。このような場合も、式(4)または式(5)から温度傾き値を求めることができる。
ここでもファンの影響を加味した式(5)を用いて算出する場合を説明する。ここでは通紙した時点で、温度低下が見込まれる他端部側の発熱量が大きい第2ヒーター130が消灯している状態であると仮定する。したがって、式(5)中のt2は0と置く。一方、通紙されていない一端部側の発熱量の大きな第1ヒーター120を点灯と仮定して、式(5)のt1に通紙時間を入れる。既に説明したとおり、温度傾き値はあくまでも両端部間温度差の指標であって温度差そのものではない。
そして、このような他端部側基準で通紙する場合、他端部側には端部サーミスター82があるため、通紙により低下した温度が検出できる。一方、一端部に温度センサーはないが、一端部は通紙されないため、その温度低下はわずかである。したがって、一端部の温度は、通紙前の端部サーミスター82の温度からわずかに下がった温度となる。そこで温度傾き値は下記式(7)により求めることになる。
温度傾き値=通紙中の端部サーミスター82の検出温度−通紙前の端部サーミスター82の検出温度×温度低下係数 …(7)
温度低下係数は、他端部に通紙したときに、通紙していない一端部側の温度がどの程度下がるかを加味するための係数である。このような温度低下係数はあらかじめ決めておくことになる。このような端部サーミスター82の検出温度を用いた温度傾き値の算出は、上述した仮定に基づくものより複雑ではあるものの、厳密な温度傾き値を推定することができる。
温度傾き値が大きく上昇した場合の具体的な制御例を説明する。図14は、温度傾き値が高くなっている場合の制御を説明するため説明図であり、ヒーターの点消灯のタイミングチャートと温度傾き値のグラフである。
図14では、一端部側の温度が他端部側より高くなっている場合を想定する。この場合、温度傾き値は「正」側に大きくなっている。
この状態で、単純に時分割で制御した場合、温度が下がっている他端部側の温度をより上げるための点灯比率が設定される。つまり第2ヒーター130を点灯比率が大きい時分割となる(図中一点鎖線)。そうすると第2ヒーター130の点灯比率が大きいとはいえ、途中第1ヒーター120も点灯するため、なかなか温度傾き値が下がらない。
一方、本実施形態では、温度傾き値が所定値を超えている間は、常に温度傾き値が補正されるヒーターを優先点灯するように制御することになる。したがって、図14に示すように、時分割制御におけるヒーターの切り換えタイミングである、C1、C2、C3においては、いずれも所定値を超えているので、そのまま第2ヒーター130の点灯が継続される。そして、C4の時点で温度傾き値が所定値以下となるので、通常の時分割制御に戻ることになる。したがって、目標温度到達後は、第1ヒーター120も第2ヒーター130も、OFFとなる。その後は装置の稼働状況に応じて制御されることになる。
このような制御は、既に説明した温度傾き値監視処理の手順(図12)および具体例(図13)と同じ制御における温度傾き値に、さらに、通紙中の温度傾き値として上記式(7)を積算(加算)したものである。
このように本実施形態は、定着ローラー62軸方向の温度が大きく傾いたような場合であっても、温度傾き値からそのような状態になったことを推定することができる。そして温度傾き値を補正するようにヒーターの点灯、消灯を制御することで素早く定着ローラー62軸方向の温度の傾きを補正することが可能となる。
また、このような目標温度への昇温時における制御は、以下の効果も得ることができる。時分割制御では、第1ヒーター120と第2ヒーター130の点灯、消灯を交互に繰り返すことで所定の点灯比率となるようにして、目標温度に到達させるようにしている。このように複数のヒーターの点灯、消灯を短い時間間隔で繰り返すと、ヒーターの切り替えのタイミングで一時的に電力不足が生じることがある。このような電力不足が生じると、一時的とはいえ、定着ローラー62を十分に加熱することができずに、温度が低下する場合がある。特に定着ローラー62の熱容量が低い場合にこのような現象が起こりやすい。また、ヒーターの切り換え時においては、突入電流が発生する可能性がある。この突入電流は、たとえばスルーアップ、スルーダウンによって解消できるが、そのためには同様に電力不足が生じる可能性がある。
このような現象は、複数のヒーターのうち、一つのヒーターのみを継続して点灯させることで抑制することができる。本実施形態による温度傾き値を用いた制御は、ヒーターの切り換えが少なくなるため、電力不足の問題を少なくすることができるのである。
以上説明したように、本実施形態によれば、温度センサーとして端部サーミスター82を他端部のみに設け、一端部側においては温度センサーを省略することができる。しかも、本実施形態は、一端部側の温度センサーを省略したにもかかわらず、定着ローラー62の軸方向の温度差を常に小さい状態に維持することが可能となる。また、本実施形態は、温度傾き値が大きくなった場合でも、温度傾き値に基づいて各ヒーターを制御して定着ローラー62軸方向の温度の傾きを小さくすることができる。このように本実施形態によれば、複数のヒーターを備えた定着部(定着装置)において、空間的な制約により十分な数の温度センサーの設置が難しい状況においても、確実に定着装置の温度制御を行うことができるのである。
(他の制御形態)
上述の制御例では、第1ヒーター120と第2ヒーター130の点灯比率を達成するために、時分割制御による例を説明した。しかし、本発明は、このような時分割制御に限定されるものではない。本発明は、たとえば、電力制御による発熱量の制御に対応したヒーターを用いることもできる。電力制御可能なヒーターを用いた場合は、電源部90から供給する電力を制御することで、各ヒーターの発熱量を決められた点灯比率となるように制御することになる。また温度傾き値による制御も供給電力を制御することで実施可能である。
たとえば、上述した60:40の点灯比率と同じ発熱量となるように供給電力を制御する場合を説明する。たとえば、第1ヒーター120および第2ヒーター130ともに最大発熱時の消費電力を700Wとする。そうすると、これらを60:40の比率となるようにするためには、第1ヒーター120は700W×60%=420Wとなる。第2ヒーターは、700W×40%=280Wとなる。したがって、第1ヒーター120への供給電力を420W、第2ヒーター130への供給電力を280Wとすることで、60:40の点灯比率を達成することができる。
このような電力制御による温度傾き値の算出は、式(4)または式(5)と同じでよく、そのときの点灯比率で電力制御している時間をt1、t2の値として算出すればよい。すなわち、式(4)から、「温度傾き値=t1/60−t2/40」となる。ただし点灯している時間は同じであるためt1=t2となる。
そして、制御部100は、温度傾き値が所定値を超えたなら、温度傾き値を補正する方向のヒーターへの電力供給量を大きくする(逆側のヒーターの電力供給量を少なくする、または電力供給を停止する)。
たとえば温度傾き値が「正」側に大きくなった場合、一端部側の温度が高くなっていることを表している。この場合、他端部側の発熱量が大きいヒーターランプを有している第2ヒーター130の電力供給量を上げて、第1ヒーター120側の電力供給量を下げることになる。具体的には、両ヒーターを60:40の比率で点灯させている場合、温度傾き値が所定値(ここでも所定値=0としている)を超えて、傾きが「正」方向の場合、第1ヒーターを0%=0W、第2ヒーターを100%=700Wとする。この状態で温度傾き値が小さくなったら、元の60:40=420W:280Wに戻すことになる。
このようにヒーターへの電力を制御する形態であっても、空間的な制約があるなか、複数のヒーターを備えた定着部(定着装置)において十分な温度制御を行うことができる。
(他の装置形態)
上述した画像形成装置1の構成は、定着部60に定着ベルト63を用いた形態を例示した。しかし本発明は、このような定着ベルト方式に限定されるものではない。図15は定着ローラー62と加圧ローラー64が直接接する定着部の形態を示す概略図である。
この形態は、定着ローラー62と加圧ローラー64が直接接して定着ニップを形成している。そして、定着ローラー62内にはヒーターユニット110が配置されていて、定着ローラー62を加熱する。
このような形態においても、ヒーターユニット110内には複数ヒーターが配置されていて、温度傾き値による制御を上述した実施形態と同じように行うことができる。
さらに、上述した画像形成装置1の構成では、ヒーターユニット110には3個のヒーターが設けられている形態を示したが、本発明はこれに限らず、両端部でそれぞれ配熱が異なる少なくとも2本のヒーターを用いた形態であれば適用可能である。
図16は、両端部でそれぞれ配熱が異なる2本のヒーターを用いた形態を示す概略図である。
この形態のヒーターユニット110は、第1ヒーター150と第2ヒーター160が配置されている。第1ヒーター150は一端部側に発熱量の大きなヒーターランプ151が配置され、他端部側に発熱量の小さいヒーターランプ152が配置されている。一方、第2ヒーター160は、一端部側に発熱量の小さなヒーターランプ161が配置され、他端部側に発熱量の大きいヒーターランプ162が配置されている。そして他端部側の画像形成領域外となる位置に高温(異常温度)を検出するための他端部サーミスター80、他端部側のヒーターランプ152および162に対応した位置に端部サーミスター82とサーモスタット84が配置されている。一方、一端部側のヒーターランプ151および161に対応した位置にはサーモスタット88が配置されているが、サーミスターは配置されていない。このようなヒーターユニット110の形態においても、温度傾き値を用いた制御を行うことで定着ローラー62の軸方向の温度を均一に維持することができる。また、一方の端部にのみ温度センサーであるサーミスターを設ければよいので、小型の装置でも複数ヒーター構造を採用することができる。また、小型化だけでなく、温度センサーを複数配置する必要がなくなるので、コストダウンを図ることができる。
以上本発明と適用した実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を限定的に解釈するものではない。たとえば、他端部側に温度センサーである端部サーミスター82を設けたが、これは一端部側に設け、他端部側を省略する形態であってもよい。さらにサーモスタットについても、高温を検出して各ヒーターへの電力供給を遮断できるものであれば、各ヒーターに対して1対1で対応していなくてもよい。そのほかヒーターユニット110は、画像形成装置1の内部において、定着部60の上側に配置されたローラー(加熱ローラー61または定着ローラー62内部)設けたが、加圧ローラー64側であってもよい。
そのほか、本発明は特許請求の範囲によって解釈されるものであって、上述した実施形態や装置構成例、仮定した事例などに限定的に解釈されるものではない。