以下、本発明の実施の形態による作業機械用油圧制御装置を、大型の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図6は第1の実施の形態を示している。図1において、大型の油圧ショベル1は、種々の作業現場(一例として、鉱山等の砕石場)で掘削作業を行うときに用いられる。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられた後述の作業装置10とを含んで構成されている。
上部旋回体4は、旋回フレーム5、建屋カバー6、キャブ7およびカウンタウエイト8等により構成されている。旋回フレーム5は上部旋回体4の支持構造体を構成している。この旋回フレーム5は、旋回装置3を介して下部走行体2上に取付けられている。旋回フレーム5には、その前部側にはキャブ7が設けられ、後部側にはカウンタウエイト8が設けられている。また、旋回フレーム5には、キャブ7とカウンタウエイト8との間に位置して建屋カバー6が設けられ、建屋カバー6内には原動機としてのエンジン9が設けられている。この建屋カバー6は、旋回フレーム5、キャブ7およびカウンタウエイト8と共に、エンジン9等を内部に収容する空間(機械室)を画成するものである。
キャブ7は旋回フレーム5の前側に搭載されている。このキャブ7は、オペレータが搭乗する運転室を内部に画成している。また、キャブ7の内部には、オペレータが着座する運転席、各種の操作レバー(例えば、図2中に示す操作レバー20A)等が配設されている。カウンタウエイト8は上部旋回体4の一部を構成している。このカウンタウエイト8は、エンジン9よりも後側に位置して旋回フレーム5の後端部に取付けられ、作業装置10との重量バランスをとるものである。
作業装置10は、基端側が旋回フレーム5に俯仰動可能に取付けられたブーム10Aと、該ブーム10Aの先端側に俯仰動可能に取付けられたアーム10Bと、例えば土砂等の掘削作業を行うため該アーム10Bの先端側に回動可能に設けられた作業具としてのバケット10Cとにより大略構成されている。作業装置10のブーム10Aは、ブームシリンダ10Dにより旋回フレーム5に対して上,下に俯仰動され、アーム10Bは、ブーム10Aの先端側でアームシリンダ10Eにより上,下に俯仰動される。また、作業具としてのバケット10Cは、アーム10Bの先端側で作業具用シリンダとしてのバケットシリンダ10Fにより上,下に回動される。
図2に示すように、原動機としてのエンジン9により駆動されるメインの油圧ポンプ11は、タンク12内から吸込んだ作動油を高圧の圧油として吐出する。メインの油圧ポンプ11は、例えば可変容量型のアキシャルピストン式またはラジアルピストン式油圧ポンプからなり、タンク12と共にメインの油圧源を構成している。なお、油圧ポンプ11は、固定容量型の油圧ポンプであってもよい。
作業用の油圧シリンダ13は油圧アクチュエータの代表例を示している。この油圧シリンダ13は、例えば作業装置10に設けられるブームシリンダ10D、アームシリンダ10Eまたはバケットシリンダ10F等を構成する。油圧シリンダ13は、チューブ13A、ピストン13Bおよびロッド13C等により構成されている。特に、大型の油圧ショベル1に用いる油圧シリンダ13は、そのシリンダ径が大きく、油圧ポンプ11から油圧シリンダ13に給排される圧油量(作動油量)も大きくなっている。
油圧シリンダ13は、チューブ13A内がピストン13Bにより2つの油室13D,13Eに画成され、ピストン13Bには、ロッド13Cの基端側が固着されている。ロッド13Cの先端側は、チューブ13A外に突出し、チューブ13A内に給排される圧油により伸長,縮小される。なお、油圧アクチュエータは、油圧シリンダ13に限らず、例えば油圧ショベル1の旋回用または走行用の油圧モータであってもよい。
制御弁としての方向制御弁14は、油圧シリンダ13用のコントロールバルブで、油圧ポンプ11、タンク12と油圧シリンダ13との間に設けられている。この方向制御弁14は、例えば4ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁からなり、左,右両側には油圧パイロット部14A,14Bが設けられている。方向制御弁14の油圧パイロット部14A,14Bは、後述のパイロット圧制御装置21にパイロット管路15A,15Bを介して接続されている。
方向制御弁14は、パイロット圧制御装置21から油圧パイロット部14A,14Bにパイロット圧が供給されることにより、中立位置(I)から切換位置(II),(III)のいずれかに切換えられる。これにより、油圧シリンダ13の油室13D,13Eには、油圧ポンプ11からの圧油が一対の主管路16A,16Bを介して給排され、油圧シリンダ13のロッド13Cは、チューブ13Aから伸縮(駆動)される。このとき、油圧シリンダ13のボトム側の油室13Dとロッド側の油室13Eとに給排される圧油の流量は、方向制御弁14のストローク量(即ち、後述する操作レバー20Aの傾転操作量)に対応して可変に制御される。
パイロットポンプ17はタンク12と共にパイロット油圧源を構成している。このパイロットポンプ17は、エンジン9によりメインの油圧ポンプ11と一緒に回転駆動される。パイロットポンプ17の吐出側には、タンク12との間に低圧リリーフ弁18が設けられている。この低圧リリーフ弁18は、パイロットポンプ17の吐出圧力を予め決められたリリーフ設定圧以下に抑えるものである。
メインの油圧ポンプ11には、その吐出管路11Aとタンク12との間に高圧リリーフ弁19が設けられている。この高圧リリーフ弁19は、油圧ポンプ11に過剰圧が発生するのを防ぐため、油圧ポンプ11の吐出圧力を予め決められたリリーフ設定圧以下に抑える。このリリーフ設定圧は、低圧リリーフ弁18よりも十分に高い圧力に設定されている。
操作レバー装置20は電気式操作装置であり、油圧シリンダ13を遠隔操作する電気レバー装置として構成されている。この操作レバー装置20は、油圧ショベル1のオペレータによって手動で傾転操作される操作レバー20Aを有している。操作レバー装置20は、操作レバー20Aの操作方向(矢示A,B方向)と操作量とに対応した電気信号を電磁式のパイロット圧制御装置21に出力する。
ここで、操作レバー装置20は、油圧ショベル1のキャブ7内に設けられている。一方、電磁式のパイロット圧制御装置21は、キャブ7から大きく離間した位置(例えば、方向制御弁14に近い位置)に配置される。即ち、操作レバー装置20は電気式操作装置であるため、パイロット圧制御装置21との間を電気配線(信号線)で接続すればよく、両者間の距離は、必要に応じて数メートル以上に延ばすことができる。パイロット油圧配管の場合は、例えば1〜2メートル以内の長さに制約される。
電磁式のパイロット圧制御装置21は、操作レバー装置20からの電気信号に対応(比例)したパイロット圧をパイロット管路15A,15Bに供給する第1電磁弁としての2つの第1電磁比例減圧弁22,23と、これらの第1電磁比例減圧弁22,23と共通の弁ハウジング24に設けられた第2電磁弁としての第2電磁比例減圧弁25と、パイロットポンプ17の吐出側に接続して設けられ、弁ハウジング24内へと延びたパイロット圧供給管路26と、弁ハウジング24からタンク12に向けて延び先端側がタンク12に接続されたタンク管路27と、後述の固定絞り33とを含んで構成されている。
2つの第1電磁比例減圧弁22,23は、互いに並列となるように弁ハウジング24内に配置され、前記電気信号に従って低圧位置(a)から切換位置(b)に電磁比例して切換えられる。2つの第1電磁比例減圧弁22,23は、それぞれ弁ハウジング24内でパイロット圧供給管路26にそれぞれ接続される第1ポンプポート22A,23Aと、タンク管路27にそれぞれ接続される第1タンクポート22B,23Bと、方向制御弁14の油圧パイロット部14A,14Bに接続される第1出力ポート22C,23Cとを有している。
第1電磁比例減圧弁22,23のうち一方の電磁比例減圧弁22は、前記電気信号に従って低圧位置(a)または切換位置(b)に切換えられることにより、第1出力ポート22Cが第1ポンプポート22Aまたは第1タンクポート22Bに選択的に接続される。即ち、操作レバー20Aが中立位置にある間、電磁比例減圧弁22は、電気信号が消磁(通電停止)されているので低圧位置(a)となり、このときに第1出力ポート22Cは、第1ポンプポート22Aに対し遮断されて第1タンクポート22Bに接続される。このため、パイロット管路15A内のパイロット圧は、タンク圧に近い低圧状態に保持される。
しかし、操作レバー20Aが例えば矢示A方向に傾転操作され、前記電気信号が励磁(通電)状態になると、電磁比例減圧弁22は、このときの電流値に比例して低圧位置(a)から切換位置(b)に電磁比例して切換わり、このときに第1出力ポート22Cは第1ポンプポート22Aに接続される。このため、パイロット管路15A内のパイロット圧は、操作レバー装置20からの電気信号(即ち、制御電流)に対応して増大され、方向制御弁14は、このときのパイロット圧に比例して中立位置(I)から切換位置(II)へと切換えられる。
第1電磁比例減圧弁22,23のうち他方の電磁比例減圧弁23は、前記電気信号に従って第1出力ポート23Cが第1ポンプポート23Aまたは第1タンクポート23Bに選択的に接続される。電磁比例減圧弁23は、操作レバー20Aが中立位置に戻されて電気信号が消磁されている間は低圧位置(a)となり、このときに第1出力ポート23Cは第1タンクポート23Bに接続される。このため、パイロット管路15B内のパイロット圧は、タンク圧に近い低圧状態に保持される。
しかし、操作レバー20Aが例えば矢示B方向に傾転操作され、前記電気信号が励磁されるようになると、電磁比例減圧弁23は、このときの電流値に比例して低圧位置(a)から切換位置(b)に電磁比例して切換わり、このときに第1出力ポート23Cは第1ポンプポート23Aに接続される。このため、パイロット管路15B内のパイロット圧は、操作レバー装置20からの電気信号(即ち、制御電流)に対応して増大され、方向制御弁14は、このときのパイロット圧に比例して中立位置(I)から切換位置(III)へと切換えられる。
方向制御弁14は、前述の如くパイロット圧が油圧パイロット部14A,14Bに供給されることにより、中立位置(I)から切換位置(II),(III)のいずれかに切換えられる。このため、油圧シリンダ13の油室13D,13Eには、油圧ポンプ11からの圧油が一対の主管路16A,16Bを介して給排され、油圧シリンダ13のロッド13Cは伸縮動作(駆動)される。このように、油圧シリンダ13の伸縮動作は、操作レバー装置20により電磁式のパイロット圧制御装置21(第1電磁比例減圧弁22,23)と方向制御弁14を介して遠隔操作される。
第2電磁比例減圧弁25は、2つの第1電磁比例減圧弁22,23と並列となるように共通の弁ハウジング24内に設けられている。第2電磁比例減圧弁25は、パイロット圧制御装置21のヒート回路を構成し、コントローラ30からの電気信号により還流停止位置(c)から還流位置(d)に電磁比例して切換えられる。第2電磁比例減圧弁25は、弁ハウジング24内でパイロット圧供給管路26に接続される第2ポンプポート25Aと、同じく弁ハウジング24内でタンク管路27に接続される第2タンクポート25Bおよび第2出力ポート25Cとを有している。
第2電磁比例減圧弁25は、コントローラ30からの電気信号に従って還流停止位置(c)または還流位置(d)に切換えられることにより、第2出力ポート25Cが第2ポンプポート25Aまたは第2タンクポート25Bに選択的に接続される。即ち、第2電磁比例減圧弁25は、コントローラ30からの電気信号により還流停止位置(c)に戻されている間は、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内で作動油が流通(還流)するのを停止させる。
しかし、第2電磁比例減圧弁25がコントローラ30からの電気信号により還流停止位置(c)から還流位置(d)に切換えられたときには、第2出力ポート25Cが第2ポンプポート25Aに接続される。これにより、第2電磁比例減圧弁25は、パイロットポンプ17から吐出されるパイロット圧油をパイロット圧供給管路26、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24に流通させつつ、第2電磁比例減圧弁25の第2ポンプポート25Aから第2出力ポート25Cを介してタンク管路27に還流させる。このとき、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24は、内部を流通するパイロット圧油(作動油)により熱エネルギを受けて温度上昇し、弁ハウジング24内で作動油の油温を高い温度に維持することができる。
換言すると、第2電磁比例減圧弁25は、パイロット圧制御装置21を含めた方向制御弁14を切換操作するパイロット回路(特に、第1電磁比例減圧弁22,23)に対し、これらを加温するヒート回路として設けられている。即ち、第2電磁比例減圧弁25は、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内にタンク12内の暖油(後述のヒータ31で常に加温されている作動油)を循環させることにより、パイロット回路(即ち、第1電磁比例減圧弁22,23を含む弁ハウジング24内の油圧回路)を暖機することができる。弁ハウジング24は、第1電磁比例減圧弁22,23と第2電磁比例減圧弁25と後述の固定絞り33との間で前記作動油の油温上昇による熱が伝えられるのを許す共通の熱伝導体を構成している。
温度センサ28は、例えばタンク管路27の途中に設けられた温度検出器であり、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24からタンク管路27を介してタンク12へと戻される戻り油(作動油)の温度を検出する。また、圧力センサ29A,29Bは、パイロット管路15A,15B内のパイロット圧を個別に検出する検出器である。圧力センサ29Aは、第1電磁比例減圧弁22の第1出力ポート22Cと方向制御弁14の油圧パイロット部14Aとの間でパイロット管路15Aの途中に設けられている。圧力センサ29Bは、第1電磁比例減圧弁23の第1出力ポート23Cと方向制御弁14の油圧パイロット部14Bとの間でパイロット管路15Bの途中に設けられている。温度センサ28および圧力センサ29A,29Bによる検出信号は、コントローラ30に出力される。
コントローラ30は、例えばマイクロコンピュータ等により構成されている。このコントローラ30は、エンジン9の駆動情報、操作レバー装置20からの電気信号、温度センサ28および圧力センサ29A,29Bからの検出信号に従って第1電磁比例減圧弁22,23と第2電磁比例減圧弁25とを切換制御する制御手段を構成している。コントローラ30は、その入力側に、操作レバー装置20、温度センサ28、圧力センサ29A,29Bおよびエンジン9用の制御装置(図示せず)等が接続され、その出力側は第1電磁比例減圧弁22,23および第2電磁比例減圧弁25等に接続されている。
コントローラ30は、例えば不揮発性メモリ,ROM,RAM等からなるメモリ30Aを有している。このメモリ30A内には、例えば暖機運転モードの制御処理を行うプログラム(図4参照)と、作業モードの制御処理を行うプログラム(図5参照)と、作動油の温度Tが適正な温度範囲にあるか否を判定するための第1の温度Ta、第2の温度Tb(Ta>Tb)と、方向制御弁14を切換操作する上でパイロット管路15A,15B内のパイロット圧(即ち、操作回路圧力)が所要の設定圧力P1に達しているか否かを判定するための圧力値等と、が格納されている。
前記第1の温度Taは、例えば暖機運転時の目標となる温度と同様な温度に設定される。前記第2の温度Tbは、第1の温度Taよりも所定温度だけ低い温度であり、作動油の粘度上昇による応答性の低下が発生しない限界の温度に設定される。即ち、第2の温度Tbは、例えば操作レバー20Aの傾転操作に対してパイロット管路15A,15Bに発生するパイロット圧の応答性が低下する手前の温度に設定される。
また、前記設定圧力P1は、例えば操作レバー20Aが矢示A,B方向のいずれかに傾転操作されているか否かを判定するための圧力値であり、第1電磁比例減圧弁22,23からパイロット管路15A,15Bに供給するパイロット圧(即ち、図6に示す操作回路圧力)の最高圧力値MAXに対して、十分に低い圧力値(例えば、1/2以下の圧力値)に設定されている。この設定圧力P1は、例えばパイロット圧の圧力不足で方向制御弁14の切換操作(油圧ショベル1の操作)が出来なくなるような、操作に影響の出ない範囲の最低限の圧力を設定するのが好ましい。
寒冷地等で稼働する油圧ショベル1には、例えばタンク12にヒータ31が設けられている。このヒータ31は、タンク12内の作動油が適正な粘度となるように加温し、油温が所要の温度範囲となるように保温している。この温度範囲とは、例えば暖機運転時の目標となる温度に基づいて決められる。なお、リリーフ弁32は、油圧シリンダ13のボトム側の油室13Dに過剰圧が発生するのを防ぐため、油圧シリンダ13の油室13Dとタンク12との間で主管路16Aの途中に設けられている。
ここで、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内には、タンク管路27の途中に位置して固定絞り33が設けられている。これは、固定絞り33がない状態で、第1電磁比例減圧弁22,23と第2電磁比例減圧弁25との比例制御を行うと、減圧弁の調圧の影響で圧力が安定しないため、例えば第2電磁比例減圧弁25等にハンチングが発生する虞れがあるためである。なお、固定絞り33を設けない場合、第2電磁比例減圧弁25は比例制御ではなく、ON−OFF制御が好ましい。
第1の実施の形態による大型の油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体4のキャブ7に搭乗し、エンジン9を始動して油圧ポンプ11とパイロットポンプ17を駆動する。これにより、油圧ポンプ11から吐出管路11Aに向けて圧油が吐出され、この圧油は方向制御弁14を介して油圧シリンダ13(例えば、図1に示すブームシリンダ10D)に供給される。また、これ以外の方向制御弁(図示せず)からは他の油圧アクチュエータ(例えば、図1に示すアームシリンダ10E、バケットシリンダ10F、旋回用油圧モータ、走行用油圧モータ等)へと供給される。
キャブ7に搭乗したオペレータが操作レバー20Aを操作したときに、パイロット圧制御装置21は、第1電磁比例減圧弁22または23が低圧位置(a)から切換位置(b)に切換えられ、操作レバー装置20からの電気信号に対応(比例)したパイロット圧をパイロット管路15Aまたは15Bに供給する。このため、方向制御弁14は、中立位置(I)から切換位置(II),(III)のいずれか一方に切換えられ、油圧ポンプ11からの圧油は、方向制御弁14を介して油圧シリンダ13に供給される。これにより、油圧シリンダ13は、ロッド13Cがチューブ13Aから伸長または縮小され、作業装置10を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
ところで、寒冷地で稼働する油圧ショベル1は、作動油の油温が低い温度まで下がると、作動油の粘度が高くなり、油圧ポンプ11およびパイロットポンプ17による作動油の吸込み性が悪くなり、作業機械としての作動を円滑に行うことが難しくなる。このため、作動油を貯留するタンク12等にはヒータ31を設け、機械の休車中に作動油の温度が所定温度以下まで下がらないように保温している。また、エンジン9の低温始動時においては暖機運転を実施し、油圧アクチュエータ等の油圧機器を暖めてから作業を開始するようにしている。
しかし、暖機運転後の油圧ショベル1の操作中には、パイロット回路(即ち、パイロット圧制御装置21)内の油循環が停止されることがあり、このときに機械の操作中でも雰囲気温度に影響されて油温が下がる。このため、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24等を加温しない限り、作動油の粘度が高くなって操作時の応答性が低下してしまう。
特に、車体重量が100t以上となる超大型の油圧ショベル1では、パイロットポンプ17の吐出側からパイロット回路の末端に設置してある第1電磁比例減圧弁22,23までの管路長が長くなり、車体の熱源(例えば、エンジン9の位置)からも遠くなるため、より雰囲気温度の影響を受け易くなる。また、パイロット圧制御装置21(パイロット回路)を循環する流量が少ない場合は、管路内の油温が雰囲気温度の影響を受け易くなり、寒冷地環境ではパイロット回路を流れる作動油の粘度が高くなり、例えば第1電磁比例減圧弁22,23が電気信号の入力から動き出すまでの反応速度が遅くなり、パイロット回路側での操作応答性が低下し易い。
そこで、第1の実施の形態では、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内に、第2電磁比例減圧弁25を2つの第1電磁比例減圧弁22,23と並列となるように設けている。この第2電磁比例減圧弁25は、コントローラ30からの電気信号により還流位置(d)に切換えられたときに、パイロットポンプ17から吐出されるパイロット圧油をパイロット圧供給管路26、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内へと流通させつつ、タンク管路27からタンク12へと還流させる。
これにより、第2電磁比例減圧弁25は、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内にタンク12内の暖油(ヒータ31で常に加温されている作動油)を循環させることができ、パイロット回路(即ち、第1電磁比例減圧弁22,23)を暖機して、パイロット管路15A,15Bに供給するパイロット圧油を適正な温度と油粘度の状態に保つことができる。
図4は、コントローラ30による第2電磁比例減圧弁25の暖機運転モードにおける制御処理を示している。
即ち、暖機運転モードの制御処理が開始されると、ステップ1でエンジン9が始動されているか否か判定する。ステップ1で「NO」と判定する間はエンジン9が始動されていないので、制御処理を終了させる。ステップ1で「YES」と判定したときには、次のステップ2において、温度センサ28で検出したタンク管路27内の作動油の温度Tが、第1の温度Ta(例えば、暖機運転の設定温度)よりも低いか否かを判定する。
ステップ2で「YES」と判定したときには、作動油の温度Tが第1の温度Taに達していないので、次のステップ3でヒート回路最大開口に設定するため、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内で第2電磁比例減圧弁25を還流停止位置(c)から還流位置(d)に切換える。これにより、第2電磁比例減圧弁25は、第2ポンプポート25Aから第2出力ポート25Cを介してタンク管路27に還流される作動油の流量を最大流量とする。
このため、第2電磁比例減圧弁25は、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内にタンク12内の暖油(ヒータ31で常に加温されている作動油)を循環させることができ、第1電磁比例減圧弁22,23を暖機して、パイロット管路15A,15Bに供給するパイロット圧油を適正な温度と粘度状態に保つことができる。次のステップ4ではリターンし、ステップ1以降の処理を繰返す。
一方、ステップ2で「NO」と判定したときには、作動油の温度Tが第1の温度Taに達しているので、次のステップ5ではヒート回路を閉じるように、第2電磁比例減圧弁25を還流停止位置(c)に戻す。これにより、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内で作動油が流通(還流)するのを停止させ、作動油の温度Tが第1の温度Ta以上に過度に高くなるのを抑え、次のステップ4でリターンし、ステップ1以降の処理を繰返す。
図6中の特性線34〜36で示すように、暖機運転モードである時間0〜t1の間は、エンジン9の始動に伴ってコントローラ30からの電気信号により第2電磁比例減圧弁25が切換制御され、前述の如くヒート回路開口面積を最大(MAX)に設定する(特性線34参照)。これにより、温度センサ28で検出される作動油の温度Tは、特性線36の如く時間0〜t1の間で漸次上昇し、第1の温度Ta(暖機運転の設定温度)まで上昇される。
なお、暖機運転モードでは、第2電磁比例減圧弁25を還流位置(d)に切換えると共に、2つの電磁比例減圧弁22,23を低圧位置(a)から切換位置(b)に切換制御する構成としてもよい。このときに、パイロットポンプ17から吐出されるパイロット圧油は、パイロット圧供給管路26、第2電磁比例減圧弁25、タンク管路27を介してタンク12へと還流される。このため、2つの電磁比例減圧弁22,23を低圧位置(a)から切換位置(b)に切換えたとしても、パイロット管路15A,15B内のパイロット圧は共に低い圧力となり、方向制御弁14が中立位置(I)から不用意に切換わることはない。しかし、パイロット管路15A,15B内に導かれた作動油を温度上昇させることは可能となる。
次に、コントローラ30による作業モードの制御処理を図5を参照して説明する。即ち、作業モードの制御処理が開始されると、ステップ11でエンジン9が稼動中であるか否か判定する。ステップ11で「NO」と判定する間はエンジン9が稼働されていないので、制御処理を終了させる。
ステップ11で「YES」と判定したときには、次のステップ12に移り、温度センサ28で検出したタンク管路27内の作動油の温度Tが、第2の温度Tbよりも低いか否か(即ち、操作レバー20Aの傾転操作に対してパイロット管路15A,15Bに発生するパイロット圧の応答性が低下する温度まで下がったか否か)を判定する。例えば、図6中の特性線36に示す如く、作業モードの時間t1〜t2の間では、作動油の温度Tが第2の温度Tb以上となっているので、ステップ12では「NO」と判定される。この場合は、次のステップ13でリターンし、ステップ11以降の処理を続行する。
一方、ステップ12で「YES」と判定したときには、作動油の温度Tが第2の温度Tbよりも低くなっている。このため、ステップ14ではヒート回路開口量を増加させるため、第2電磁比例減圧弁25を還流停止位置(c)から還流位置(d)に切換え、還流位置(d)での開口量を漸次増加させる。これにより、例えば図6中の時間t2〜t3間の特性線36に示すように、作動油の温度Tは第2の温度Tb以上に上昇される。
次のステップ15では、操作レバー20Aが傾転操作されているか否かを判定し、ステップ15で「NO」と判定したときには、操作レバー20Aが傾転操作されていないので、後述のステップ18に移る。ステップ15で「YES」と判定したときには、次のステップ16に移る。このステップ16では、圧力センサ29A,29Bで検出した操作回路圧力P(即ち、第1電磁比例減圧弁22,23からパイロット管路15A,15Bに供給する作業モードのパイロット圧)が設定圧力P1(図6中の特性線35参照)よりも低いか否かを判定する。ステップ16で「NO」と判定するときには、前記ステップ14に戻ってヒート回路開口量を前述の如く増加させる。一方、ステップ16で「YES」と判定するときには、次のステップ17に移ってヒート回路開口量を減少させる制御を行う。
図2、図3に示すパイロット圧制御装置21において、第2電磁比例減圧弁25を還流停止位置(c)から還流位置(d)に切換え、還流位置(d)での開口量を大きく増加させると、パイロットポンプ17から吐出されるパイロット圧油は、パイロット圧供給管路26、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内へと流通しつつ、その大部分がタンク管路27からタンク12に還流される。このため、第1電磁比例減圧弁22,23を低圧位置(a)から切換位置(b)に切換えても、第1電磁比例減圧弁22から方向制御弁14の油圧パイロット部14Aに供給するパイロット圧(または、第1電磁比例減圧弁23から方向制御弁14の油圧パイロット部14Bに供給するパイロット圧)が圧力上昇することはない。この場合、パイロット管路15A,15B内のパイロット圧油は不足しがちになり、場合によっては、方向制御弁14の切換操作が難しくなって、油圧シリンダ13の伸縮操作が不可能となる。
そこで、このような場合には、前記ステップ16で「YES」と判定し、圧力センサ29A,29Bで検出した操作回路圧力Pが設定圧力P1以上となっていない操作状態(即ち、第1電磁比例減圧弁22,23のいずれか一方が低圧位置(a)から切換位置(b)に切換えられた操作状態)であるので、次のステップ17でヒート回路の開口量を減少させる。換言すると、第2電磁比例減圧弁25の還流位置(d)での開口量を減少させる。これにより、第2電磁比例減圧弁25からタンク管路27を介してタンク12へと還流されるパイロット圧油の流量を減少させる。このため、第1電磁比例減圧弁22または23から方向制御弁14の油圧パイロット部14Aまたは14Bに供給するパイロット圧油(即ち、操作回路圧力P)を増やすことができ、所要のパイロット圧を確保できるようにする。
次のステップ18では、作動油の温度Tが第1の温度Taよりも低いか否かを判定し、ステップ18で「YES」と判定するときには、前記ステップ16に戻ってこれ以降の処理を続行する。しかし、ステップ18で「NO」と判定したときには、作動油の温度Tが第1の温度Ta以上となって、過剰に高い温度(オーバヒート)となるのを避けるため、次のステップ19に移ってヒート回路を閉じる制御を行う。即ち、第2電磁比例減圧弁25を還流位置(d)から還流停止位置(c)に戻すことによってヒート回路を閉じ、パイロット圧油の還流を停止させた状態で、ステップ13に移ってリターンする。
このように、コントローラ30による作業モードの制御処理が図5中のステップ12〜19の如く実行される。このため、図6中の特性線34の如く、時間t1〜t7間でヒート回路の開口面積が可変に制御される。これによって、温度センサ28で検出したタンク管路27内の作動油の温度Tは、特性線36で示すように、第1の温度Taと第2の温度Tbとの間の温度範囲(即ち、暖機温度の範囲)内に収められるように制御される。
また、圧力センサ29A,29Bで検出される操作回路圧力Pは、図6中の特性線35の如く段階的に制御され、例えば設定圧力P1以上の必要操作圧力(即ち、第1電磁比例減圧弁22または23から方向制御弁14の油圧パイロット部14Aまたは14Bに供給するパイロット圧)を確保することができる。このため、作業モード時に、作動油の温度を加温した状態に保ちつつ、第1電磁比例減圧弁22または23から方向制御弁14の油圧パイロット部14Aまたは14Bに供給するパイロット圧油が不足傾向となったりするのを防ぐことができ、油圧シリンダ13の伸縮操作(作業時に必要な動作)を続行することができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、例えば寒冷地等でのエンジン9の低温始動時直後に冷え切った車体を暖機する際には、第2電磁比例減圧弁25によるヒート回路を最大開口とし、流量を増やすことで、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内にタンク12内の暖油(ヒータ31で常に加温されている作動油)を循環させることができる。これにより、パイロット回路(即ち、第1電磁比例減圧弁22,23)を暖機して、パイロット管路15A,15Bに供給するパイロット圧油を適正な温度と粘度状態に保つことができる。
また、暖機運転モード後の作業モードにおいても、タンク管路27側に設けた温度センサ28によりパイロット圧油の油温を常に監視し、第2電磁比例減圧弁25によるヒート回路の開口面積を状況に応じて調整することができる。これによって、方向制御弁14の操作に必要な最低限のパイロット圧(操作回路圧力)を、第1電磁比例減圧弁22,23の切換制御により確保することができると共に、パイロット圧制御装置21の暖機が可能となり、油温を所要温度に維持することができる。
また、暖機運転モードと作業モードとの切換えは、キャブ7(運転室)内のオペレータが、例えばスイッチ(図示せず)等で任意操作により自由に行えるようにすると良い。さらに、暖機運転モード時は、パイロット圧制御装置21の温度センサ28で検出する油温が、例えば第1の温度Ta等の設定温度に達した際にオペレータにモニタ等で報知するようにすれば、スムーズに作業モードに移行して現場作業を開始することができる。
従って、第1の実施の形態によれば、第2電磁比例減圧弁25は第2ポンプポート25Aから第2出力ポート25Cに流れるパイロット圧油をタンク管路27に還流させることにより、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内を流通する作動油の油温を上昇させることできる。このため、簡易な回路構成でパイロット圧制御装置21(パイロット回路)のヒートシステムを実現でき、エンジン9の低温始動直後の暖機運転を効率的に行うことができる。また、油圧ショベル1の操作中でも、第1電磁比例減圧弁22,23と第2電磁比例減圧弁25とを切換制御することにより、作業を中断させることなくパイロット回路を暖機することができる。
しかも、第1の実施の形態で採用したパイロット圧制御装置21は、第2電磁比例減圧弁25の下流側でタンク管路27の途中に固定絞り33を設けている。これにより、第2電磁比例減圧弁25の第2ポンプポート25Aから第2出力ポート25Cを介してタンク管路27に還流される作動油(戻り油)は、その流動(運動)エネルギが熱エネルギに固定絞り33で変換される。これにより、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内を流通する作動油の油温を上昇させ、パイロット圧制御装置21の暖機を良好に行うことできる。
このように、第1の実施の形態によれば、第2電磁比例減圧弁25の下流側でタンク管路27の途中に固定絞り33を設けることにより、パイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内を流通する作動油の油温を上昇させ、パイロット圧制御装置21の暖機を維持することができる。また、この状態で第2電磁比例減圧弁25の上流側には、固定絞り33の抵抗分の圧力を発生させることができ、第1電磁比例減圧弁22,23側の圧力不足で操作不能となることを防ぐことができる。換言すると、固定絞り33は、機械の操作に影響のでない最低限の圧力を保証し、かつ流量を確保する固定絞り径を設定することで、安全装置の役割を果たすことができる。
なお、前記第1の実施の形態では、固定絞り33をパイロット圧制御装置21の弁ハウジング24内に設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば固定絞り33をパイロット圧制御装置21の弁ハウジング24外に位置してタンク管路27の途中に設ける構成としてもよい。
次に、図7および図8は第2の実施の形態を示している。本実施の形態では、前述した第1,第2の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第2の実施の形態の特徴は、制御弁を切換操作するためのパイロット圧制御装置を、上部旋回体4(車体)の熱源から離れた位置(例えば、作業装置10のブーム10A)で外側に露出した状態に設ける構成としたことにある。
図8に示すように、油圧シリンダ13の主管路16A,16B間には、ボトム側の油室13Dとロッド側の油室13Eとを短絡して連通させるように再生管路51が設けられている。この再生管路51の途中には、制御弁としての流量再生弁52とチェック弁53とが設けられている。流量再生弁52は、例えば2ポート2位置の油圧パイロット式切換弁により構成され、常時はばね52Bにより遮断位置(e)に置かれている。
流量再生弁52は、その油圧パイロット部52Aにパイロット管路54を介してパイロット圧が供給されると、ばね52Bに抗して遮断位置(e)から流量再生位置(f)に切換えられる。このとき、流量再生弁52は、油圧シリンダ13のボトム側の油室13Dから主管路16Aに排出される圧油(戻り油)の一部を再生管路51、チェック弁53を介して主管路16B側に合流して流通させ、これを再生油としてロッド側の油室13Eに供給する。流量再生弁52は、油圧シリンダ13への圧油の供給を制御する制御弁を構成している。
電磁式のパイロット圧制御装置55は、流量再生弁52の油圧パイロット部52Aにパイロット管路54を介してパイロット圧を供給する第1電磁弁としての第1電磁比例減圧弁56と、この第1電磁比例減圧弁56と共通の弁ハウジング57に設けられた第2電磁弁としての第2電磁比例減圧弁58と、パイロットポンプ17の吐出側に接続して設けられ、弁ハウジング57内へと延びたパイロット圧供給管路59と、弁ハウジング57からタンク12に向けて延び先端側がタンク12に接続されたタンク管路60とを含んで構成されている。
パイロット圧制御装置55のパイロット圧供給管路59は、パイロット圧制御装置21のパイロット圧供給管路26から途中で分岐され、両者は共にパイロットポンプ17の吐出側に接続されている。パイロット圧制御装置55のタンク管路60も、パイロット圧制御装置21のタンク管路27から途中で分岐するように設けられ、両者は共にタンク12に接続されている。
第1電磁比例減圧弁56は、第2電磁比例減圧弁58と並列となるように弁ハウジング57内に配置され、後述するコントローラ64からの電気信号に従って低圧位置(g)から切換位置(h)に電磁比例して切換えられる。第1電磁比例減圧弁56は、弁ハウジング57内でパイロット圧供給管路59に接続される第1ポンプポート56Aと、タンク管路60に接続される第1タンクポート56Bと、流量再生弁52の油圧パイロット部52Aに接続される第1出力ポート56Cとを有している。
第1電磁比例減圧弁56は、前記電気信号に従って低圧位置(g)または切換位置(h)に切換えられることにより、第1出力ポート56Cが第1ポンプポート56Aまたは第1タンクポート56Bに選択的に接続される。即ち、コントローラ64からの電気信号が消磁(通電停止)されている間、第1電磁比例減圧弁56は低圧位置(g)となり、このときに第1出力ポート56Cは、第1ポンプポート56Aに対し遮断されて第1タンクポート56Bに接続される。このために、パイロット管路54内のパイロット圧は、タンク圧に近い低圧状態に保持される。
しかし、コントローラ64からの電気信号が励磁(通電)状態になると、第1電磁比例減圧弁56は、このときの電流値に比例して低圧位置(g)から切換位置(h)に電磁比例して切換わり、このときに第1出力ポート56Cは第1ポンプポート56Aに接続される。このため、パイロット管路54内のパイロット圧は前記電気信号(即ち、制御電流)に対応して増大され、流量再生弁52は、このときのパイロット圧に比例して遮断位置(e)から流量再生位置(f)へと切換えられる。
流量再生弁52は、このようにパイロット圧が油圧パイロット部52Aに供給されることにより、遮断位置(e)から流量再生位置(f)に切換えられる。このため、油圧シリンダ13のロッド13Cをチューブ13A内に縮小させるときには、油圧シリンダ13のボトム側の油室13Dから主管路16Aに排出される圧油(戻り油)の一部を再生管路51、チェック弁53を介して主管路16B側に流通させ、これを再生油としてロッド側の油室13Eへと供給することができる。これにより、油圧シリンダ13のロッド13Cを縮小させる動作を、再生した流量分だけ速くすることができる。
第2電磁比例減圧弁58は、第1電磁比例減圧弁56と並列となるように共通の弁ハウジング57内に設けられている。第2電磁比例減圧弁58は、パイロット圧制御装置55のヒート回路を構成し、コントローラ64からの電気信号により還流停止位置(j)から還流位置(k)に電磁比例して切換えられる。第2電磁比例減圧弁58は、弁ハウジング57内でパイロット圧供給管路59に接続される第2ポンプポート58Aと、同じく弁ハウジング57内でタンク管路60に接続される第2タンクポート58Bおよび第2出力ポート58Cと、を有している。
第2電磁比例減圧弁58は、コントローラ64からの電気信号に従って還流停止位置(j)または還流位置(k)に切換えられることにより、第2出力ポート58Cが第2ポンプポート58Aまたは第2タンクポート58Bに選択的に接続される。即ち、第2電磁比例減圧弁58は、コントローラ64からの電気信号により還流停止位置(j)に戻されている間は、パイロット圧制御装置55の弁ハウジング57内で作動油が流通(還流)するのを停止させる。
しかし、第2電磁比例減圧弁58がコントローラ64からの電気信号により還流停止位置(j)から還流位置(k)に切換えられたときには、第2出力ポート58Cが第2ポンプポート58Aに接続される。これにより、第2電磁比例減圧弁58は、パイロットポンプ17から吐出されるパイロット圧油をパイロット圧供給管路59、パイロット圧制御装置55の弁ハウジング57に流通させつつ、第2電磁比例減圧弁58の第2ポンプポート58Aから第2出力ポート58Cを介してタンク管路60に還流させる。このとき、パイロット圧制御装置55の弁ハウジング57は、内部を流通するパイロット圧油(作動油)により熱エネルギを受けて温度上昇し、弁ハウジング57内で作動油の油温を高い温度に維持することができる。
換言すると、第2電磁比例減圧弁58は、流量再生弁52を切換操作するパイロット圧制御装置55を含めたパイロット回路(特に、第1電磁比例減圧弁56)に対し、これらを加温するヒート回路として設けられている。即ち、第2電磁比例減圧弁58は、タンク12内の暖油(ヒータ31で常に加温されている作動油)を、パイロット圧制御装置55の弁ハウジング57内へと循環させることにより、パイロット回路(即ち、第1電磁比例減圧弁56)を暖機することができる。弁ハウジング57は、第1電磁比例減圧弁56と第2電磁比例減圧弁58と間で前記作動油の油温上昇による熱が伝えられるのを許す共通の熱伝導体を構成している。
さらに、パイロット圧制御装置55には、第2電磁比例減圧弁58の第2出力ポート58Cとタンク管路60との間に、このタンク管路60に還流される戻り油の流量を制限する固定絞り61が設けられている。この固定絞り61は、前記第2の実施の形態で述べた固定絞り33と同様に構成されているが、弁ハウジング57の外部に配置されている点で、第2の実施の形態とは相違している。なお、固定絞り61は、弁ハウジング57の内部に配置してもよく、このような設計変更は必要に応じて行うことができる。
ここで、第2の実施の形態で採用したパイロット圧制御装置55は、弁ハウジング57内に互いに並列に配置された第1電磁比例減圧弁56と第2電磁比例減圧弁58とが、共通の弁ハウジング57と共に作業装置10のブーム10Aに設けられている。これにより、流量再生弁52の油圧パイロット部52Aと第1電磁比例減圧弁56との間を接続するパイロット管路54の管路長を短くすることができる。図7に示すように、パイロット圧制御装置55の第1電磁比例減圧弁56、第2電磁比例減圧弁58および弁ハウジング57は、ブーム10Aの外側に露出した状態で設けられている。
温度センサ62は、例えばタンク管路60の途中に設けられた温度検出器であり、パイロット圧制御装置55の弁ハウジング57からタンク管路60を介してタンク12へと戻される戻り油(作動油)の温度を検出する。また、圧力センサ63は、パイロット管路54内のパイロット圧を検出する検出器である。この圧力センサ63は、第1電磁比例減圧弁56の第1出力ポート56Cと流量再生弁52の油圧パイロット部52Aとの間でパイロット管路54の途中に設けられている。温度センサ62および圧力センサ63による検出信号は、コントローラ64に出力される。
コントローラ64は、第1の実施の形態で述べたコントローラ30とほぼ同様に構成されている。しかし、このコントローラ64は、エンジン9の駆動情報、操作レバー装置20からの電気信号、温度センサ62および圧力センサ63からの検出信号に従って第1電磁比例減圧弁56と第2電磁比例減圧弁58とを切換制御する点で、第1の実施の形態とは相違している。コントローラ64は、その入力側に、操作レバー装置20、温度センサ28,62、圧力センサ29A,29B,63およびエンジン9用の制御装置(図示せず)等が接続されている。コントローラ64の出力側は、前記第1の実施の形態で述べたパイロット圧制御装置21の第1電磁比例減圧弁22,23、第2電磁比例減圧弁25に加えて、パイロット圧制御装置55の第1電磁比例減圧弁56および第2電磁比例減圧弁58等に接続されている。
コントローラ64は、例えば不揮発性メモリ,ROM,RAM等からなるメモリ64Aを有している。このメモリ64A内には、例えば第1の実施の形態で述べた暖機運転モードの制御処理(図4参照)と、作業モードの制御処理を行うプログラム(図5参照)と、第1の温度Ta、第2の温度Tbおよび所要の設定圧力P1等に加えて、流量再生弁52を切換制御するためのプログラム(図示せず)、さらには、パイロット圧制御装置55を暖機するためのプログラム(図示せず)等と、が格納されている。
かくして、このように構成される第2の実施の形態では、前述した第1,第2の実施の形態と同様に、簡易な回路構成でパイロット圧制御装置21(パイロット回路)のヒートシステムを実現でき、エンジン9の低温始動直後の暖機運転を効率的に行うことができると共に、油圧ショベル1の操作中でも、第1電磁比例減圧弁22,23と第2電磁比例減圧弁25とを切換制御することにより、作業を中断させることなくパイロット回路を暖機することができる。
しかも、第2の実施の形態では、流量再生弁52をパイロット圧で切換制御するパイロット圧制御装置55の第1電磁比例減圧弁56に、第2電磁比例減圧弁58等を追加して設けることにより、パイロット圧制御装置55のヒートシステムを簡易な構成で実現でき、油圧ショベル1の操作中でも、第1電磁比例減圧弁56と第2電磁比例減圧弁58とを切換制御することにより、作業を中断させることなくパイロット管路54等を暖機することができる。
図7に示すように、パイロット圧制御装置55の第1電磁比例減圧弁56、第2電磁比例減圧弁58および弁ハウジング57は、ブーム10Aに外側から取付けた状態で設けられている。これにより、流量再生弁52の油圧パイロット部52Aと第1電磁比例減圧弁56との間を接続するパイロット管路54の管路長を短くできるという利点がある。しかし、パイロット圧制御装置55の弁ハウジング57は、上部旋回体4(車体)の熱源から離れた位置にあり、ブーム10Aの外側に露出した状態で吹きさらしとなっているので、弁ハウジング57、パイロット圧供給管路59およびタンク管路60内の油温は、特に寒冷地での雰囲気温度の影響を受け易い。
そこで、例えば寒冷地等でのエンジン9の低温始動時直後に冷え切った車体と作業装置10のブーム10A側等を暖機する際には、第2電磁比例減圧弁58によるヒート回路を最大開口とし、流量を増やすことで、パイロット圧制御装置55の弁ハウジング57内にタンク12内の暖油(ヒータ31で常に加温されている作動油)を循環させることができる。これにより、パイロット回路(即ち、第2電磁比例減圧弁58により第1電磁比例減圧弁56と弁ハウジング57)を暖機して、パイロット管路54に供給するパイロット圧油を適正な温度と粘度状態に保つことができる。
従って、第2の実施の形態では、パイロット圧制御装置55の弁ハウジング57等を上部旋回体4(車体)の熱源から離れた位置で吹きさらしとなる位置に設けた場合でも、タンク12内の暖油を弁ハウジング57内に循環させることにより、弁ハウジング57、パイロット圧供給管路59およびタンク管路60内の油温を上昇でき、特に寒冷地での雰囲気温度の影響を受け易い箇所でも必要な暖機を効率的に行うことができる。
なお、前記第2の実施の形態では、パイロットポンプ17の吐出側にパイロット圧供給管路26,59を介してパイロット圧制御装置21と他のパイロット圧制御装置55とを設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばパイロット圧制御装置21は省略してもよく、他のパイロット圧制御装置55だけを設ける構成としてもよい。
また、前記第1の実施の形態では、パイロット圧制御装置21に第1電磁比例減圧弁22,23と第2電磁比例減圧弁25とを設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば第2電磁比例減圧弁25に替えて、より安価なON−OFF制御が可能な電磁弁を使用してもよい。
また、前記第2の実施の形態で述べたパイロット圧制御装置55についても、第2電磁比例減圧弁58を安価なON−OFF制御が可能な電磁弁により構成してもよい。
さらに、前記各実施の形態では、作業機械として大型の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば中型の油圧ショベル等に適用してもよい。さらにまた、油圧クレーン、ホイールローダ、ダンプトラック等の作業機械にも広く適用できるものである。