JP6660474B2 - 液晶性繊維材料、及び繊維製品 - Google Patents

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Description

本発明は、温度変化に応じて液晶相と等方相との間で可逆的に伸縮する液晶性ポリウレタンを含む液晶性繊維材料、及び当該液晶性繊維材料を用いた繊維製品に関する。
分子構造内にメソゲン基を有する液晶性ポリマーは、液晶(メソゲン基)の配向度が変化すると、液晶性ポリマーの物性も変化する。このような性質に着目し、液晶性ポリマーを様々な用途で利用する試みがなされている。
例えば、特定構造を有する高結晶性の液晶性ポリマーについて、ある重量平均分子量以上のポリマーを溶融紡糸することにより、高配向度の液晶性繊維材料を得る技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1においては、液晶性ポリマーを(Ti+30)℃以上の温度に加熱することで、溶融紡糸できる溶融粘度に調整する液晶性繊維材料の製造方法が開示されている。なお、Tiは液晶性ポリマーにおける液晶相から等方相への転移温度を示す。
特開2013−82804号公報
液晶性繊維材料を日用品に組み入れて実用化するためには、特に常温付近において、液晶性繊維材料の強度(耐久性)を一定以上に維持しながら、温度等の外部環境の変化に応じて液晶性繊維材料の力学的物性や変位量を任意に変化させることが求められる。
この点に関し、特許文献1において液晶ポリマー繊維の原料として使用される液晶ポリマーは、液晶相と等方相と間の転移温度(Ti)が常温よりかなり高いため、液晶ポリマー繊維の転移温度(Ti)も常温より高いものとなり、衣類などの日用品の材料には適さないと考えられる。また、特許文献1の液晶ポリマー繊維は、繰り返しの使用を想定したものではないため、連続的な温度変化を伴う環境下では、長期に亘って熱応答性材料としての耐久性や信頼性を維持できない虞がある。
このように、従来の液晶性繊維材料は、強度を一定以上に維持しながら、繰り返しの使用に耐え得る熱応答性が確立されておらず、液晶性繊維材料の用途展開を検討していく上で改善の余地は大きい。本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、温度変化によって液晶性ポリウレタンが液晶相と等方相との間で相転移するときに伸長率が変化する現象に着目し、常温付近で熱応答性を有しながら、一定以上の強度(耐久性)を有する液晶性繊維材料を提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該液晶性繊維材料を用いた繊維製品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明にかかる液晶性繊維材料の特徴構成は、
温度変化に応じて液晶相と等方相との間で可逆的に伸縮する液晶性ポリウレタンを含む液晶性繊維材料であって、
前記液晶性ポリウレタンが最も収縮している状態を基準(100%)として、繊維方向における伸長率が102〜200%に設定され、又は前記液晶性ポリウレタンが最も伸長している状態を基準(100%)として、繊維方向における収縮率が98.04〜50%に設定されていることにある。
一般に、高分子材料の構造は物性に大きく影響することが知られており、液晶性ポリウレタンを含む熱応答性を有する液晶性繊維材料においても、当該液晶性ポリウレタンの相構造(液晶相及び等方相)と力学的物性との相関関係を把握することは、液晶性繊維材料を設計する上で重要な手掛かりとなる。そこで、本発明者らは、液晶性ポリウレタンを含む新たな液晶性繊維材料を開発するにあたり、液晶性ポリウレタンの相構造の変化(相転移)に伴う液晶性ポリウレタンの伸長率又は収縮率に着目して、本発明の目的に合致する液晶性繊維材料を探索した。
本構成の液晶性繊維材料によれば、温度変化に応じて液晶相と等方相との間で可逆的に伸縮する液晶性ポリウレタンを含むため、液晶性と伸縮性とを兼ね備えた熱応答性材料として利用することができる。ここで、液晶性ポリウレタンの伸長率は、液晶性ポリウレタンが最も収縮している状態を基準(100%)として、繊維方向における伸長率が102〜200%に設定され、液晶性ポリウレタンの収縮率は、液晶性ポリウレタンが最も伸長している状態を基準(100%)として、繊維方向における収縮率が98.04〜50%に設定されているため、熱応答材料として利用可能な変位量を確保しながら、液晶相と等方相との間で一定以上の強度(耐久性)を維持することができる。
本発明にかかる液晶性繊維材料において、
前記液晶性ポリウレタンは、モノフィラメント又はマルチフィラメントとして構成されていることが好ましい。
本構成の液晶性繊維材料によれば、前記液晶性ポリウレタンは、モノフィラメント又はマルチフィラメントとして構成されているため、適切な繊維形態で、様々な用途に利用することができる。
本発明にかかる液晶性繊維材料において、
前記繊維方向において、前記液晶性ポリウレタンが前記液晶相を含むときの弾性率をEとし、前記等方相を含むときの弾性率をEとしたとき、E/E ≦ 1000 を満たすことが好ましい。
本構成の液晶性繊維材料によれば、液晶性ポリウレタンが液晶相を含むときの弾性率をEとし、等方相を含むときの弾性率をEとしたとき、E/E ≦ 1000 を満たすように設定されているため、液晶相と等方相との間で相転移が発生すると、液晶性ポリウレタンの弾性率が最大で1000倍に変化する。このとき、相転移に伴って、液晶性ポリウレタンの分子構造の秩序(エントロピー)が増減し、それに応じて液晶性ポリウレタンが変位(伸縮)する。なお、液晶性ポリウレタンが変位しても、液晶性ポリウレタンの弾性率の変化は、上記のとおり1000倍以内に維持される。このように、本構成の液晶性繊維材料は、液晶相と等方相との間で一定以上の強度(耐久性)を有するものでありながら、弾性率を大きく変化させることができるため、相転移を利用した熱応答性を有する材料として有用である。
本発明にかかる液晶性繊維材料において、
前記繊維方向において、前記液晶性ポリウレタンが前記液晶相を含むときの破断応力をσとし、前記等方相を含むときの破断応力をσとしたとき、σ/σ ≦ 40 を満たすことが好ましい。
本構成の液晶性繊維材料によれば、液晶性ポリウレタンが液晶相を含むときの破断応力をσとし、等方相を含むときの破断応力をσとしたとき、σ/σ ≦ 40 を満たすように設定されているため、液晶相と等方相との間で相転移が発生すると、液晶性ポリウレタンの破断応力が最大で40倍に変化する。このとき、相転移に伴って、液晶性ポリウレタンの分子構造の秩序(エントロピー)が増減し、それに応じて液晶性ポリウレタンが変位(伸縮)する。なお、液晶性ポリウレタンが変位しても、液晶性ポリウレタンの破断応力の変化は、上記のとおり40倍以内に維持される。このように本構成の液晶性繊維材料は、液晶相と等方相との間で一定以上の強度(耐久性)を有するものでありながら、破断応力を大きく変化させることができるため、相転移を利用した熱応答性を有する材料として有用である。
本発明にかかる液晶性繊維材料において、
前記液晶相と前記等方相との境界となる相転移温度(Ti)は、前記液晶性ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)以上かつ100℃以下であることが好ましい。
本構成の液晶性繊維材料によれば、液晶性ポリウレタンの相転移温度(Ti)が、ガラス転移温度(Tg)と100℃との間に存在するため、常温を含む比較的低温の領域で液晶性ポリウレタンの弾性率や破断応力が大きく変化し、使い勝手が良好で実用的な液晶性繊維材料となる。
本発明にかかる液晶性繊維材料において、
前記相転移温度(Ti)と前記ガラス転移温度(Tg)との差は、20℃以上であることが好ましい。
本構成の液晶性繊維材料によれば、相転移温度(Ti)とガラス転移温度(Tg)との差を20℃以上とすることで、弾性率や破断応力が大きくなる液晶相の領域が広く確保され、使い勝手が良好な実用的な液晶性繊維材料となる。
本発明にかかる液晶性繊維材料において、
前記液晶性ポリウレタンは、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドと、架橋剤との反応物を含むことが好ましい。
本構成の液晶性繊維材料によれば、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドと、架橋剤とが反応して液晶性ポリウレタンが生成する際、アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドが液晶性ポリウレタンに含まれるメソゲン基の熱的安定性を低下させるように作用するため、液晶性ポリウレタンの液晶性発現温度が低下し、常温において無溶媒で液晶性繊維材料を成形することが可能となる。
本発明にかかる液晶性繊維材料において、
前記架橋剤は、少なくとも3つの反応性官能基を有するポリオールであることが好ましい。
本構成の液晶性繊維材料によれば、架橋剤として少なくとも3つの反応性官能基を有するポリオールを使用することで、マトリックスが緻密化されるため、材料として一定以上の強度を確保することができる。また、少なくとも3つの反応性官能基を有するポリオールは、分子構造内の立体障害が少ないため、液晶性ポリウレタンの相転移温度前後における過剰な弾性率や破断応力の変化が抑制される。従って、液晶性繊維材料が液晶相から等方相に相転移したとき、熱応答性は維持しながら、マトリックスの物性低下を少なくすることができる。
本発明にかかる液晶性繊維材料において、
前記メソゲン基含有化合物、前記イソシアネート化合物、前記アルキレンオキシド及び/又は前記スチレンオキシド、並びに前記架橋剤の合計量を100重量部としたとき、前記架橋剤の配合量は、0.1〜20重量部であることが好ましい。
本構成の液晶性繊維材料によれば、液晶性ポリウレタンの原材料中の架橋剤の配合量が適切な範囲に設定されているため、液晶性ポリウレタン中のメソゲン基は適度に動くことが可能であり、熱応答性と液晶性とをバランスよく発現させることができる。
上記課題を解決するための本発明にかかる繊維製品の特徴構成は、
上記何れか一つの液晶性繊維材料を用いた繊維製品であって、
前記伸長率又は前記収縮率が局所的に異なるように構成されていることにある。
本構成の繊維製品によれば、上記の液晶性繊維材料を用いるものであるため、一定以上の強度(耐久性)を有するとともに、熱応答性に優れた繊維製品として有用なものとなる。また、原材料となる液晶性繊維材料は、液晶相から等方相への相転移に伴う変位量が有意な値に設定されているため、本構成の繊維製品は、医療用品等の微小な伸縮性が求められるものから、ソックス、スポーツウェア、サポーター等の大きな伸縮性が求められるものまで利用することができる。また、伸長率又は収縮率が局所的に異なるように構成されているため、身体の締め付けたい箇所のみを局所的に締め付ける矯正下着や、マッサージ効果が得られる健康衣料品として利用することができる。
図1は、液晶性繊維材料について、温度変化に伴う相構造と弾性率との関係を示した説明図である。 図2は、液晶性繊維材料について、相構造の違いによる破断応力を示した説明図である。 図3は、液晶性繊維材料を利用した繊維製品の説明図である。
以下、本発明の液晶性繊維材料、及び当該液晶性繊維材料を用いた繊維製品に関する実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
〔液晶性繊維材料の組成〕
本発明の液晶性繊維材料は、液晶性ポリウレタンを含むものであり、液晶性と伸縮性とを兼ね備えた液晶性エラストマーである。原材料である液晶性ポリウレタンは、本発明の液晶性繊維材料のマトリックスを構成するものであり、液晶紡糸により繊維状に加工される。ここで、本明細書において、「マトリックス」とは、材料の主成分であることを意味する。従って、本発明の液晶性繊維材料は、主成分の他に、少量添加される副成分(例えば、他のポリマー、低分子物質、フィラー等)や、微小な三次元構造物(例えば、気泡、空隙等)などを含み得ることを排除するものではない。
液晶性ポリウレタンは、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物(以下、単に「メソゲン基含有化合物」と称する。)と、イソシアネート化合物と、アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドと、架橋剤とを反応させることにより生成される。液晶性ポリウレタンを生成する際、アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドが液晶性ポリウレタンに含まれるメソゲン基の熱的安定性を低下させるように作用するため、液晶性ポリウレタンの液晶性発現温度が低下し、常温において無溶媒で液晶性繊維材料を成形することが可能となる。
メソゲン基含有化合物は、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物が使用される。
Figure 0006660474
式中、Xは前記メソゲン基の分子構造の一部であって、隣接する結合基の一部をなす単結合、−N=N−、−CO−、−CH=N−、−CO−O−、−CH−、−CH=CH−、又は−CO−NH−であり、A及びAは独立して又は共に、炭素数3〜8のシクロアルカン、ベンゼン環、ナフタレン、ビフェニル、若しくはこれらのヘテロ環式化合物、又はこれらの一部が−Br、−Cl、若しくは−CHで置換された化合物であり、Y及びYは独立して又は共に、隣接する結合基の一部をなす単結合、−O−、−CO−、−S−、−Se−、又は−Te−であり、B及びBは独立して又は共に、隣接する結合基の一部をなす単結合、又はmが1〜20の整数である−(CH−である。ただし、Y及びYが−O−であり、且つB及びBが隣接する結合基の一部をなす単結合であるものを除く。Z及びZは前記活性水素基を有する末端基であって、独立して又は共に、−OH、−SH、−NH、−COOH、−CHO、−O−CH(OH)−CHOH、又は二級アミン等である。なお、「隣接する結合基の一部をなす単結合」とは、当該単結合が隣接する結合基の一部と共有されている状態を意味する。例えば、上記一般式(1)において、Zが−OHであり、Yが−CO−であり、Bが隣接する結合基の一部をなす単結合である場合、Z−B−Yの部位はHO−CO−となり、単結合であるBは両側の−OH及び−CO−と共有された状態となる。
イソシアネート化合物は、例えば、ジイソシアネート化合物、又は3官能以上のイソシアネート化合物を使用することができる。ジイソシアネート化合物を例示すると、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、及びm−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、並びに1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。上掲のジイソシアネート化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。3官能以上のイソシアネート化合物を例示すると、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、ビシクロヘプタントリイソシアネート等のトリイソシアネート、及びテトライソシアネートシラン等のテトライソシアネートが挙げられる。上掲の3官能以上のイソシアネート化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。イソシアネート化合物は、上掲のジイソシアネート化合物と、上掲の3官能以上のイソシアネート化合物とを混合したものを使用することも可能である。イソシアネート化合物の配合量は、液晶性ポリウレタンの全原材料に対して、10〜40重量%、好ましくは15〜35重量%となるように調整される。イソシアネート化合物の配合量が10重量%未満の場合、ウレタン反応による高分子化が不十分となるため、液晶性ポリウレタンを連続成形することが困難となる。イソシアネート化合物の配合量が40重量%を超える場合、全原材料に占めるメソゲン基含有化合物の配合量が相対的に少なくなるため、液晶性ポリウレタンの液晶性が低下する。
アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はブチレンオキシドを使用することができる。上掲のアルキレンオキシドは、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。スチレンオキシドについては、ベンゼン環にアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン等の置換基を有するものでもよい。アルキレンオキシドは、上掲のアルキレンオキシドと、上掲のスチレンオキシドとを混合したものを使用することも可能である。アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドの配合量は、メソゲン基含有化合物1モルに対して、アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドが1〜10モル、好ましくは2〜8モル付加されるように調整される。アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドの付加モル数が1モル未満の場合、液晶性ポリウレタンの液晶性が発現する温度範囲を十分に低下させることが困難となり、そのため、無溶媒で且つ液晶性が発現した状態で原材料を反応硬化させながら液晶性ポリウレタンを連続成形することが困難となる。アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドの付加モル数が10モルを超える場合、液晶性ポリウレタンの液晶性が発現し難くなる虞がある。
架橋剤は、例えば、少なくとも3つの反応性官能基を有するポリオール(以下、「3以上の反応性官能基を有するポリオール」とも言う。)を使用することができる。このようなポリオールを架橋剤として使用すれば、液晶性ポリウレタンが緻密化されるため、材料として一定以上の強度を確保することができる。また、ポリオールは、分子構造内の立体障害が少ないため、液晶性ポリウレタンの相転移温度前後における過剰な弾性率の変化や破断応力の変化が抑制される(弾性率の変化及び破断応力の変化については、後で詳しく説明する)。従って、液晶性繊維材料が液晶相から等方相に相転移したとき、熱応答性を維持しながら、液晶性ポリウレタンの物性低下を少なくすることができる。少なくとも3つの反応性官能基を有するポリオールを例示すると、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリカーボネートポリオール等の3つ以上の水酸基を有する高分子量ポリオール(分子量400以上)、並びにトリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、meso−エリトリトール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオールが挙げられる。上掲のポリオールは、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。架橋剤の配合量は、すべての原材料(メソゲン基含有化合物、イソシアネート化合物、アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシド、並びに架橋剤)の合計量を100重量部としたとき、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜18重量部に調整される。このような範囲であれば、液晶性ポリウレタン中のメソゲン基は適度に動くことが可能であり、熱応答性と液晶性とをバランスよく発現させることができる。架橋剤の配合量が0.1重量部未満の場合、液晶性ポリウレタンが十分に硬化しないため、マトリックス自体が流動して熱応答性が得られなくなる虞がある。架橋剤の配合量が20重量部を超える場合、液晶性ポリウレタンの架橋密度が高くなり過ぎるため、メソゲン基の配向が阻害されて液晶性が発現し難くなり、熱応答性が得られなくなる虞がある。
液晶性繊維材料は、例えば、以下の反応スキームにより生成される。初めに、メソゲン基含有化合物とアルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドとを反応させ、アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドが付加されたメソゲン基含有化合物(以下、「メソゲンジオール」と称する。)を調製する。得られたメソゲンジオールに、触媒及び一段階目のイソシアネート化合物を添加し、液晶性ウレタン化合物が得られる。一段階目のイソシアネート化合物は、NCO indexが50〜98となるように添加されることが好ましい。ここで、NCO indexとは、イソシアネート化合物が有するイソシアネート基の総数をイソシアネート基と反応可能なポリオールの活性水素基の総数で除したものに100を乗じた数値である。NCO indexが50未満の場合、液晶性ウレタン化合物の分子量が小さいため、液晶性ウレタン化合物の粘度が低く紡糸が困難になる虞がある。NCO indexが98を超える場合、一段階目のイソシアネート化合物の添加で液晶性ポリウレタンの架橋密度が高くなり過ぎるため、二段階目のイソシアネート化合物の添加で3官能以上の反応性官能基を添加しても架橋反応がほとんど起こらない虞がある。上記の条件により、3以上の反応性官能基を有するポリオールにより架橋される前に、得られる液晶性ウレタン化合物中に含まれるメソゲン基をある程度均一に分散した状態とすることができる。得られた液晶性ウレタン化合物に、架橋剤及び二段階目のイソシアネート化合物を添加し、加熱しながら混練すると半硬化状態の液晶性ウレタン化合物(プレポリマー)が得られる。二段階目のイソシアネート化合物は、最終的にNCO indexが100〜130となるように添加されることが好ましい。これにより、過不足なく、イソシアネート基がポリオールの活性水素基と反応することができる。この半硬化状態の液晶性ウレタン化合物を押出成形機等を用いて繊維状に押し出し、適切な条件下で養生すると、液晶性ウレタン化合物が高分子化しながら硬化し、繊維の形態に成形された液晶性ポリウレタン(エラストマー)が生成する。このとき、液晶性ポリウレタンをガラス転移温度(Tg)以上かつ相転移温度(Ti)以下(すなわち、液晶性が発現する温度)で延伸しながら成形すると、液晶性ポリウレタンに含まれるメソゲン基が延伸方向に沿うように動いて高度な配向性が得られる。そして、延伸した状態で液晶性ポリウレタンを養生すると、温度変化に応じて液晶相と等方相との間で可逆的に伸縮する液晶性ポリウレタンを含む液晶性繊維材料が完成する。当該液晶性繊維材料は、温度変化に応じて液晶相と等方相との間で可逆的に変化する液晶性ポリウレタンを含むため、液晶性と伸縮性とを兼ね備えたものとなり、特に、温度変化に応じて可逆的に伸縮する熱応答性伸縮材料として利用することができる。この液晶性繊維材料は、液晶性ポリウレタン中のメソゲン基が延伸方向に配向したものであり、熱が加わるとメソゲン基の配向が崩れて(不規則となって)延伸方向に収縮し、熱を取り除くとメソゲン基の配向が復活して延伸方向に伸長するという特異的な熱応答挙動を示す。
ちなみに、液晶性ポリウレタンの配向性は、メソゲン基の配向度によって評価することができる。配向度の値が大きいものは、メソゲン基が一軸方向に高度に配向している。配向度は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いた1回全反射測定法(ATR)により、芳香族エーテルの逆対称伸縮振動の吸光度(0°、90°)、及びメチル基の対称変角振動の吸光度(0°、90°)を測定し、これらの吸光度をパラメータとする以下の計算式に基づいて算出される。
配向度=(A−B)/(A+2B)
A:0°で測定したときの芳香族エーテルの逆対称伸縮振動の吸光度/0°で測定したときのメチル基の対称変角振動の吸光度
B:90°で測定したときの芳香族エーテルの逆対称伸縮振動の吸光度/90°で測定したときのメチル基の対称変角振動の吸光度
上述の反応スキームにより得られた液晶性ポリウレタンは、そのまま本発明の液晶性繊維材料のマトリックスとして利用可能であるが、液晶性ポリウレタンに副成分を少量添加したり、気泡を分散させて利用することも可能である。液晶性ポリウレタンに添加可能な副成分を例示すると、有機フィラー、無機フィラー、補強剤、増粘剤、離型剤、賦形剤、カップリング剤、難燃剤、耐炎剤、顔料、着色料、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、及び界面活性剤等が挙げられる。また、副成分として、他のポリマーや低分子物質を添加することも可能である。副成分が添加された液晶性ポリウレタンは、当該副成分の機能が付与されたものとなり、様々な場面で利用することができる。
液晶性ポリウレタン中に気泡を分散させる方法としては、例えば、液晶性ポリウレタンの原材料に発泡剤を混合しておき、液晶性ポリウレタンの硬化反応時に発泡剤を発泡させる方法が挙げられる。この場合、発泡剤として、例えば、炭酸水素ナトリウムを使用することができる。また、液晶性ポリウレタン中に気泡を分散させる別の方法として、例えば、液晶ポリウレタンの原材料に空気を含ませながら当該原材料を混合することにより、液晶性ポリウレタン中に気泡を混入させるメカニカルフロス法、液晶性ポリウレタンの原材料に中空フィラーを混合することにより、液晶性ポリウレタン中に中空フィラーを分散させる方法等が挙げられる。液晶性ポリウレタン中に気泡が分散した液晶性繊維材料は、気泡によって断熱性が高まるため、温度変化が大きい環境でも使用することが可能となる。また、液晶性ポリウレタン中に気泡が含まれることで液晶性繊維材料が軽量化されるため、例えば、自動車等の輸送用機械に好適に適用することができる。
液晶性繊維材料の繊維形態は、モノフィラメント又はマルチフィラメントの何れでも構わない。モノフィラメントは、液晶性ポリウレタンを液晶紡糸により繊維状に加工することによって得られる。上述のメソゲンジオールと一段階目のイソシアネート化合物とから得られた液晶性ウレタン化合物と、二段階目のイソシアネート化合物とを溶融させた混練物を押出成形機等で繊維状に押出すことにより、繊維状の液晶性ポリウレタン(エラストマー)が生成される。この液晶性ポリウレタンを一軸延伸しながらロールに巻き取り、所定期間養生することによりモノフィラメントが得られる。マルチフィラメントは、モノフィラメントを数本〜数百本束ねて撚り合わせたものである。モノフィラメント又はマルチフィラメントとして構成された液晶性繊維材料は、その繊維形態に応じて様々な用途に利用することができる。
〔液晶性繊維材料の物性〕
本発明の液晶性繊維材料は、液晶性ポリウレタンが液晶相を含む状態と等方相を含む状態との間で物性が大きく異なっていることに特徴がある。以下の実施形態では、相転移に伴う液晶性ポリウレタンの伸長率又は収縮率、並びに液晶性ポリウレタンの相構造が力学的物性(特に、弾性率及び破断応力)に与える影響について説明する。
(液晶性繊維材料の伸長率又は収縮率)
液晶性繊維材料においては、相転移温度(Ti)より下では液晶性ポリウレタンのメソゲン基が配向することにより液晶相が発現する。液晶性繊維材料中のメソゲン基が延伸方向(すなわち、繊維方向)に配向するため、液晶性繊維材料自体が延伸方向に沿って伸長する。一方、相転移温度(Ti)より上では液晶性ポリウレタンのメソゲン基の配向が崩れて(不規則となって)等方相が発現する。液晶性繊維材料中のメソゲン基の配向が不規則であるため、延伸方向に揃って配向しているときに比べて、液晶性繊維材料自体が延伸方向に沿って収縮する。メソゲン基の配向性は、上述のように液晶紡糸することにより液晶性繊維材料に付与される。液晶性繊維材料は、例えば、液晶性ポリウレタンが最も収縮している状態を基準(100%)として、繊維方向における伸長率が102〜200%に設定される。このような伸長率に設定された液晶性繊維材料は、熱応答材料として利用可能な変位量を確保しながら、液晶相と等方相との間で一定以上の強度(耐久性)を有するものとなり、相転移を利用した熱応答性を有する材料として有用である。例えば、体内で使用されるような医療用品や精密機器等においては、臓器や他の部材等に負担をかけない程度の微小な伸縮が求められる場合がある。また、ソックス、スポーツウェア、サポーター等においては、身に装着する際には緩く、かつ装着した後は身にフィットし、必要に応じて圧迫するような大きな伸縮が求められる場合がある。当該液晶性繊維材料は、伸長率が102〜200%に設定されているため、様々な繊維製品の素材として好適に利用することができる。伸長率が102%未満の場合、液晶性繊維材料を利用した繊維製品が殆ど伸縮しないため、実質的に熱応答性を有する材料として適当ではない。伸長率が200%を超える場合、液晶性繊維材料を利用した繊維製品は大きく変形するため、繰り返し伸縮されることにより耐久性が低下する虞がある。なお、上記の液晶性繊維材料の伸張率は、液晶性ポリウレタンが最も収縮している状態を基準(100%)とするものであるが、液晶性ポリウレタンが最も伸張している状態を基準(100%)とすれば、液晶性繊維材料の収縮率として表すこともできる。この場合、伸長率102〜200%は、収縮率98.04〜50%に対応する。また、繊維材料が有意な伸縮性を発現するためには、液晶性ポリウレタンの配向度が0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。
(液晶性繊維材料の相構造と弾性率との関係)
図1は、本発明の液晶性繊維材料について、温度変化に伴う相構造と弾性率との関係を示した説明図である。低温状態にある液晶性繊維材料を加熱して温度を連続的に上昇させると、ガラス転移温度(Tg)を境として、液晶性ポリウレタンの弾性率が低下する。しかし、ガラス転移温度(Tg)を超えた領域では、その後の弾性率は維持される。これは、破線円(a)内のイメージに示すように、ガラス転移温度(Tg)より上では液晶性ポリウレタンのメソゲン基が配向することにより液晶相が発現し、その配向方向においてメソゲン基が応力を負担できるためである。この状態から液晶性繊維材料をさらに加熱すると、相転移温度(Ti)を境として、液晶性ポリウレタンの弾性率が著しく低下する。これは、破線円(b)内のイメージに示すように、液晶性ポリウレタンのメソゲン基の配向が崩れることにより液晶相から等方相に相転移し、メソゲン基の応力負担能力が低下するためである。ここで、液晶性ポリウレタンが液晶相を含むときの弾性率をEとし、等方相を含むときの弾性率をEとしたとき、本発明の液晶性繊維材料は、以下の力学的条件1:
<力学的条件1>: E/E ≦ 1000
を満たすように設計される。弾性率Eは、例えば、液晶性ポリウレタンの相転移温度(Ti)より10〜30℃低い温度で測定した初期引張抵抗度(みなしヤング率)を採用することができる。弾性率Eは、例えば、液晶性ポリウレタンの相転移温度(Ti)より10〜30℃高い温度で測定した初期引張抵抗度(みなしヤング率)を採用することができる。なお、初期引張抵抗度は、引張試験より求められるヤング率Eであってもよいし、動的粘弾性測定より求められる貯蔵弾性率E´であってもよい。以降の説明では、弾性率Eを初期引張抵抗度Eとして説明する。
上記の力学的条件1を満たす液晶性繊維材料は、液晶相と等方相との間で相転移が発生すると、液晶性ポリウレタンの初期引張抵抗度Eが最大で1000倍に変化する。具体的には、液晶相から等方相に相転移すると、液晶性ポリウレタンの初期引張抵抗度は1/1000倍まで低減し得る。このとき、相転移に伴って配向していたメソゲン基が不規則になるため、液晶性ポリウレタンの分子構造の秩序(エントロピー)が増大し、液晶性繊維材料は配向方向(すなわち、繊維方向)において縮むとともに非配向方向(すなわち、繊維の径方向)において伸びるように変位する。反対に、等方相から液晶相に相転移すると、液晶性ポリウレタンの初期引張抵抗度は1000倍まで増大し得る。このとき、相転移に伴って不規則であったメソゲン基が再び配向するため、液晶性ポリウレタンの分子構造の秩序(エントロピー)が低下し、液晶性繊維材料は配向方向において伸びるとともに非配向方向において縮むように変位する。なお、上記の力学的条件1において、E/Eの下限値は特に規定していないが、図1から理解されるように、初期引張抵抗度Eが初期引張抵抗度Eより小さくなることは現実的には考え難いため、E/Eは1より大きい値とするのが妥当である。従って、相転移に伴って液晶性ポリウレタンが変位しても、液晶性ポリウレタンの初期引張抵抗度の変化は、上記のとおり1000倍以内に維持される。このように、本発明の液晶性繊維材料は、液晶相と等方相との間で一定以上の強度(耐久性)を有するものでありながら、初期引張抵抗度を大きく変化させることができるため、相転移を利用した熱応答性を有する材料として有用である。
液晶性繊維材料が実用的な強度を有するためには、先に定義したE及びEが所定以上の値であることが好ましい。本発明では、特に、液晶性ポリウレタンの相転移温度(Ti)より高い温度で測定されるEが0.01cN/dtex以上、好ましくは0.02cN/dtex以上となるように設定される。Eが0.01cN/dtex以上であれば、十分な耐久性を備えた実用的な液晶性繊維材料として好適に利用することができる。なお、Eの値については、上記の力学的条件1より、例えば、E=0.01cN/dtexの場合、E≦10cN/dtexとなる。
(液晶性繊維材料の相構造と破断応力との関係)
図2は、本発明の液晶性繊維材料について、相構造の違いによる破断応力を示した説明図(応力−歪み曲線)である。本発明の液晶性繊維材料は、エラストマーであるため、例えば、繊維方向に引張応力を付与すると繊維方向に伸長し、引張応力をさらに増加させるとそれに伴って液晶性繊維材料はさらに伸長する。そして、引張応力が限界値を超えると、液晶性繊維材料は破断することになる。この液晶性繊維材料が破断したときの応力が破断応力である。本発明の液晶性繊維材料は、液晶性ポリウレタンが液晶相を含む状態にある場合、図2(a)に示すように、液晶性ポリウレタンのメソゲン基が配向することにより液晶相が発現し、配向方向においてメソゲン基が応力を負担できるため、比較的高い破断応力を有する。一方、液晶性ポリウレタンが等方相を含む状態にある場合、図2(b)に示すように、液晶性ポリウレタンのメソゲン基の配向が崩れることにより液晶相から等方相に相転移し、メソゲン基の応力負担能力が低下するため、破断応力が著しく低下する。ここで、液晶性ポリウレタンが液晶相を含むときの破断応力をσとし、等方相を含むときの破断応力をσとしたとき、本発明の液晶性繊維材料は、以下の力学的条件2:
<力学的条件2>: σ/σ ≦ 40
を満たすように設計される。破断応力σは、例えば、液晶性ポリウレタンの相転移温度(Ti)より10〜30℃低い温度で測定した破断応力を採用することができる。破断応力σは、例えば、液晶性ポリウレタンの相転移温度(Ti)より10〜30℃高い温度で測定した破断応力を採用することができる。
上記の力学的条件2を満たす液晶性繊維材料は、液晶相と等方相との間で相転移が発生すると、液晶性ポリウレタンの破断応力σが最大で40倍に変化する。具体的には、液晶相から等方相に相転移すると、液晶性ポリウレタンの破断応力は1/40倍まで低減し得る。このとき、相転移に伴って配向していたメソゲン基が不規則になるため、液晶性ポリウレタンの分子構造の秩序(エントロピー)が増大し、液晶性ポリウレタンは配向方向(すなわち、繊維方向)において縮むとともに非配向方向(すなわち、繊維の径方向)において伸びるように変位する。反対に、等方相から液晶相に相転移すると、液晶性ポリウレタンの破断応力は40倍まで増大し得る。このとき、相転移に伴って不規則であったメソゲン基が再び配向するため、液晶性ポリウレタンの分子構造の秩序(エントロピー)が低下し、液晶性ポリウレタンは配向方向において伸びるとともに非配向方向において縮むように変位する。なお、上記の力学的条件2において、σ/σの下限値は特に規定していないが、上述した初期引張抵抗度Eと初期引張抵抗度Eとの関係と同様に、破断応力σが破断応力σより小さくなることは現実的には考え難いため、σ/σは1より大きい値とするのが妥当である。従って、相転移に伴って液晶性ポリウレタンが変位しても、液晶性ポリウレタンの破断応力の変化は、上記のとおり40倍以内に維持される。このように、本発明の液晶性繊維材料は、液晶相と等方相との間で一定以上の強度(耐久性)を有するものでありながら、破断応力を大きく変化させることができるため、相転移を利用した熱応答性を有する材料として有用である。
液晶性繊維材料が実用的な強度を有するためには、先に定義したσ及びσが所定以上の値であることが好ましい。本発明では、特に、液晶性ポリウレタンの相転移温度(Ti)より高い温度で測定されるσが0.01cN/dtex以上、好ましくは0.02cN/dtex以上となるように設定される。σが0.01cN/dtex以上であれば、十分な耐久性を備えた実用的な液晶性繊維材料として好適に利用することができる。なお、σの値については、上記の力学的条件2より、例えば、σ=0.01cN/dtexの場合、σ≦0.4cN/dtexとなる。
(液晶性ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)及び相転移温度(Ti))
液晶性繊維材料が常温を含む温度領域で使用可能であるためには、適切なガラス転移温度(Tg)及び相転移温度(Ti)を有する液晶性ポリウレタンをマトリックスとして選択する必要がある。本発明では、液晶性ポリウレタンとして、相転移温度(Ti)が、当該液晶性ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)以上かつ100℃以下のものが好適に使用される。さらに、相転移温度(Ti)とガラス転移温度(Tg)との差は、20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましい。このような液晶性ポリウレタンを含む液晶性繊維材料は、常温を含む比較的低温の領域で液晶性ポリウレタンの初期引張抵抗度及び破断応力が大きく変化し、しかも初期引張抵抗度が大きくなる液晶相の領域が広く確保されるため、熱応答性に優れながら、使い勝手が良好な実用的な液晶性繊維材料となる。
上記の初期引張抵抗度E及び初期引張抵抗度Eに関する力学的条件1、上記の破断応力σ及び破断応力σに関する力学的条件2、並びに上記のガラス転移温度(Tg)及び相転移温度(Ti)を満たす、本発明の液晶性繊維材料の原材料として好ましい液晶性ポリウレタンは、先の「液晶性繊維材料の組成」の項目で説明した液晶性ポリウレタンであり、メソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドと、架橋剤とを反応させることにより生成されるものである。本発明において利用可能な液晶性ポリウレタンの好ましい物性値を以下に例示する。
・ガラス転移温度(Tg) :−30〜60℃
・相転移温度(Ti) :0〜100℃
・−30〜60℃における初期引張抵抗度E :2〜25cN/dtex
・0〜100℃における初期引張抵抗度E :0.01〜5cN/dtex
・−30〜60℃における破断応力σ :0.06〜1.6cN/dtex
・0〜100℃における破断応力σ :0.01〜0.6cN/dtex
〔液晶性繊維材料の用途〕
本発明の液晶性繊維材料は、液晶性ポリウレタンの液晶性と伸縮性とを利用して様々な用途に適用することができる。そのような適用例について説明する。
図3は、本発明の液晶性繊維材料を利用した繊維製品の説明図である。図3では、衣料製品の一例として、ソックス10を示してある。
ソックス10は、主に脛を覆う上段部12、主に足首を覆う中段部13、主につま先から踵を覆う下段部14を備えており、各部の伸長率が異なるように構成されている。上段部12、中段部13、及び下段部14は、夫々本発明の液晶性繊維材料を液晶紡糸して得られたマルチフィラメントからなる繊維11をチェーンステッチとして編み上げたものである。上段部12、中段部13、及び下段部14は、互いに異なる伸長率を有するように構成され、中段部13、上段部12、下段部14の順に伸長率が大きくなるように設定されている。
液晶紡糸された繊維11は、その繊維長の方向に液晶性ポリウレタンの分子鎖が高度に配向し、優れた液晶性を示すものとなる。図3(a)に示すように、ソックス10が液晶性ポリウレタンの相転移温度(Ti)未満の環境にあり、破線円内のイメージに示すように、繊維11を構成する液晶性繊維材料が液晶相を含んでいる状態では、繊維11が伸長しているため、例えば、上段部12及び中段部13を構成する編地は比較的緩んだ状態となっている。このため、使用者は、ソックス10を足に容易に着用することができる。使用者がソックス10を着用した後、使用者の体温によりソックス10が温められ、液晶性ポリウレタンの相転移温度(Ti)を超えると、図3(b)の破線円内のイメージに示すように、繊維11を構成する液晶性繊維材料が等方相を含む状態となり、それに伴って繊維11が収縮する。繊維11の収縮に伴って、上段部12及び中段部13が夫々縮んだ状態となり、ソックス10は使用者の足にフィットする。ここで、上段部12及び中段部13を、夫々異なる伸長率で設定すれば、使用者の足にフィットするだけでなく、必要に応じて使用者の足の部位に応じて圧力を段階的に付与することができる。本適用例の場合、上段部12に比べて中段部13の伸長率を大きく設定しているため、上段部12に覆われている脛に比べて中段部13に覆われている足首は外側から強く圧迫される。下段部14は、上段部12及び中段部13と比べて伸長率が小さいため、外側からの圧迫は弱くなる。このように圧迫に強弱を持たせることにより、使用者の足の血流を効果的に促すことができる。特に、繊維11に使用する液晶性ポリウレタンの相転移温度(Ti)を、体温(約35〜37℃)付近に設定すれば、例えば、医療用品等の微小な伸縮性が求められるものから、ソックス、スポーツウェア、サポーター等の大きな伸縮性が求められるものまで様々な繊維製品の素材として好適に利用することができる。また、伸長率又は収縮率が局所的に異なるように構成されているため、身体の締め付けたい箇所のみを局所的に締め付ける矯正下着や、マッサージ効果が得られる健康衣料品として利用することができる。
本発明の液晶性繊維材料の有用性を確認するため、原材料の配合を変更して種々の液晶性ポリウレタンを含む液晶性繊維材料を調製し、それらの特性について評価を行った。以下、繊維材料の実施例として説明する。
〔液晶性繊維材料の調製〕
本発明の条件に従って液晶性ポリウレタンを合成し、これを紡糸することにより液晶性繊維材料を得た(実施例1〜5)。なお、以下の実施例では、液晶性ポリウレタンの各原材料の配合量の単位を「g」としているが、本発明は、任意の倍率でスケールアップが可能である。すなわち、液晶性ポリウレタンの各原材料の配合量の単位については、「重量部」と読み替えることができる。
<実施例1>
反応容器に、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物としてBH6(500g)、水酸化カリウム(19.0g)、及び溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(3000ml)を入れて混合し、さらに、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを1モルのBH6に対して2当量添加し、これらの混合物を、加圧条件下、120℃で2時間反応させた(付加反応)。次いで、反応容器にシュウ酸(15.0g)を添加して付加反応を停止させ、反応液中の不溶な塩を吸引ろ過によって除去し、さらに、反応液中のN,N−ジメチルホルムアミドを減圧蒸留法により除去することにより、メソゲンジオールAを得た。メソゲンジオールAの合成スキームを式(2)に示す。なお、式(2)中に示したメソゲンジオールAは代表的なものであり、種々の構造異性体を含み得る。
Figure 0006660474
次に、メソゲンジオールA(500g)、触媒としてトリエチレンジアミン(東ソー株式会社製、商品名「TEDA(登録商標)−L33」)(5g)、及び一段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(158g)を混合して100℃で2時間加熱して液晶性ウレタン化合物Aを得た。一段階目のイソシアネート化合物は、NCO indexが83となるように添加した。次いで、この液晶性ウレタン化合物Aを予熱した押出成形機内に充填し溶融させ、サイドフィーダーを用いて架橋剤のトリメチロールプロパン(9g)、及び二段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(45g)を添加して100℃で混練しながら混練物を繊維状に押出した。二段階目のイソシアネート化合物は、最終的にNCO indexが107となるように添加した。原材料(メソゲンジオールA、イソシアネート化合物、及び架橋剤)の合計量を100重量部としたとき、架橋剤であるトリメチロールプロパンの含有量は1.3重量部であった。押出された繊維を20℃で延伸倍率が2倍となるように一軸延伸をかけながら巻き取った。巻き取られた繊維を室温で24時間養生し、液晶(メソゲン基)が配向した実施例1の液晶性繊維材料を得た。
<実施例2>
トリメチロールプロパンの配合量を18.5gとし、一段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を160gとし(NCO indexが77)、二段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を57gとした(最終のNCO indexが105)。原材料100重量部に対して、架橋剤であるトリメチロールプロパンの含有量は2.5重量部であった。その他の原材料、及びその配合量、並びに、反応条件、延伸条件、及び養生条件については、実施例1と同様とし、実施例2の液晶性繊維材料を得た。
<実施例3>
トリメチロールプロパンの配合量を1.5gとし、一段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を150gとし(NCO indexが86)、二段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を27gとした(最終のNCO indexが101)。原材料100重量部に対して、架橋剤であるトリメチロールプロパンの含有量は0.22重量部であった。その他の原材料、及びその配合量、並びに、反応条件、延伸条件、及び養生条件については、実施例1と同様とし、実施例3の液晶性繊維材料を得た。
<実施例4>
架橋剤としてポリエーテルポリオール(旭硝子株式会社製、商品名「エクセノール(登録商標)400MP」)を150g配合し、一段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を173gとし(NCO indexが58)、二段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を132gとした(最終のNCO indexが102)。原材料100重量部に対して、架橋剤であるポリエーテルポリオールの含有量は16重量部であった。その他の原材料、及びその配合量、並びに、反応条件、延伸条件、及び養生条件については、実施例1と同様とし、実施例4の液晶性繊維材料を得た。
<実施例5>
反応容器に、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物としてBH6(500g)、水酸化カリウム(19.0g)、及び溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(3000ml)を入れて混合し、さらに、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを2モルのBH6に対して7当量(すなわち、1モルのBH6に対して3.5当量)添加し、これらの混合物を、加圧条件下、120℃で2時間反応させた(付加反応)。次いで、反応容器にシュウ酸(15.0g)を添加して付加反応を停止させ、反応液中の不溶な塩を吸引ろ過によって除去し、さらに、反応液中のN,N−ジメチルホルムアミドを減圧蒸留法により除去することにより、メソゲンジオールBを得た。メソゲンジオールBの合成スキームを式(3)に示す。なお、式(3)中に示したメソゲンジオールBは代表的なものであり、種々の構造異性体を含み得る。
Figure 0006660474
次に、メソゲンジオールB(500g)、触媒としてトリエチレンジアミン(東ソー株式会社製、商品名「TEDA(登録商標)−L33」)(5g)、及び一段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(142g)を混合して100℃で2時間加熱して液晶性ウレタン化合物Bを得た。一段階目のイソシアネート化合物は、NCO indexが90となるように添加した。次いで、この液晶性ウレタン化合物Bを予熱した押出成形機内に充填し溶融させ、サイドフィーダーを用いて架橋剤のトリメチロールプロパン(9g)、及び二段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(35g)を添加して100℃で混練しながら混練物を繊維状に押出した。二段階目のイソシアネート化合物は、最終的にNCO indexが112となるように添加した。原材料(メソゲンジオールB、イソシアネート化合物、及び架橋剤)の合計量を100重量部としたとき、架橋剤であるトリメチロールプロパンの含有量は1.3重量部であった。押出された繊維を20℃で延伸倍率が2倍となるように一軸延伸をかけながら巻き取った。巻き取られた繊維を室温で24時間養生し、液晶(メソゲン基)が配向した実施例5の液晶性繊維材料を得た。
<比較例1>
トリメチロールプロパンの配合量を0.2gとし、一段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を147gとし(NCO indexが85)、二段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を29gとした(最終のNCO indexが102)。原材料100重量部に対して、架橋剤であるトリメチロールプロパンの含有量は2.5重量部であった。原材料100重量部に対して、架橋剤であるトリメチロールプロパンの含有量は0.03重量部であった。その他の原材料、及びその配合量、並びに、反応条件、延伸条件、及び養生条件については、実施例1と同様とし、比較例1の繊維材料を得た。
<比較例2>
架橋剤としてポリエーテルポリオールを300g配合し、一段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を437gとし(NCO indexが103)、二段階目のイソシアネート化合物として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を30gとした(最終のNCO indexが110)。原材料100重量部に対して、架橋剤であるトリメチロールプロパンの含有量は2.5重量部であった。原材料100重量部に対して、架橋剤であるポリエーテルポリオールの含有量は24重量部であった。その他の原材料、及びその配合量、並びに、反応条件、延伸条件、及び養生条件については、実施例4と同様とし、比較例2の繊維材料を得た。
〔液晶性繊維材料の特性測定〕
実施例1〜5の液晶性繊維材料の特性(物性)を確認するため、ガラス転移温度(Tg)、相転移温度(Ti)、液晶性、伸張率、初期引張抵抗度、破断応力、及び繊度について測定を行った。各測定項目の測定方法及び測定条件を以下に説明する。
<ガラス転移温度(Tg)、相転移温度(Ti)>
示差走査熱量分析計[DSC](株式会社日立ハイテクサイエンス社製、X−DSC 7000)を使用し、各試料のガラス転移温度(Tg)、及び相転移温度(Ti)を測定した。測定時の昇温速度については、20℃/分とした。
<液晶性>
偏光顕微鏡(株式会社ニコン社製、LV−100POL)によって各試料を観察し、液晶性の有無を確認した。さらに、示差走査熱量分析計[DSC](株式会社日立ハイテクサイエンス社製、X−DSC 7000)の測定結果からも液晶性の有無を確認した。
<伸長率>
各試料について、液晶相と等方相との間での相転移に伴って発生する配向方向におけるサイズの変化(試料の長さの変化)をスケールで測定した。測定にあたっては、液晶性ポリウレタンが最も収縮している状態(本実施例の場合、液晶性繊維材料の繊維方向の最短長)を基準(100%)として、繊維方向における伸長率%を算出した。
<初期引張抵抗度>
動的粘弾性測定装置(株式会社上島製作所社製、全自動粘弾性アナライザ VR−7110)を使用し、各試料の貯蔵弾性率E´を測定した。測定条件は、昇温速度を2℃/分とし、測定モードを引張モードとし、歪を2%とし、振動数を10Hzとした。各試料について、相転移温度(Ti)より20℃低い温度における貯蔵弾性率E´を初期引張抵抗度Eとし、相転移温度(Ti)より20℃高い温度における貯蔵弾性率E´を初期引張抵抗度Eとした。
<破断応力>
引張試験装置(株式会社島津製作所社製、精密万能試験機 オートグラフAG−X)を使用し、各試料を、JIS L 1013に準拠して測定した。各試料について、相転移温度(Ti)より約20℃低い温度における破断応力σを破断応力σとし、相転移温度(Ti)より約20℃高い温度における破断応力σを破断応力σとした。
<繊度>
各試料の繊度を、JIS L 1013に準拠して測定した。
各試料の測定結果を、以下の表1にまとめる。
Figure 0006660474
実施例1〜5の液晶性繊維材料は、繊度が149〜160dtexのものが得られ、液晶性ポリウレタンが液晶相から等方相に相転移するに伴って、配向方向のサイズ(繊維長)が減少(収縮)した。そして、液晶性ポリウレタンを等方相から液晶相に戻すと、繊維長が増大(伸張)した。このように、実施例1〜5の液晶性繊維材料は、温度変化に応じて液晶相と等方相との間で可逆的に伸縮する性質を示した。液晶性繊維材料が最も収縮している液晶性ポリウレタンが等方相にあるときの繊維長を100%とすると、液晶性ポリウレタンが液晶相にあるときの繊維長(伸長率)は103〜119%であった。ちなみに、この測定結果を収縮率に換算すると、液晶性ポリウレタンが液晶相にあるときの繊維長を100%とした場合、液晶性ポリウレタンが等方相にあるときの繊維長(収縮率)は97.08〜84.03%となる。このように、実施例1〜5の液晶性繊維材料は、熱応答材料として利用可能な変位量を示すことが確認された。実施例1〜5の液晶性繊維材料は、何れも初期引張抵抗度Eが0.01cN/tdex以上であり、初期引張抵抗度Eと初期引張抵抗度Eとの比率(E/E)が6.32〜875であり、上述の力学的条件1を満たすものであった。実施例1〜5の液晶性ポリウレタンは、何れも破断応力σが0.01cN/tdex以上であり、破断応力σと破断応力σとの比率(σ/σ)が4.17〜22.5であり、上述の力学的条件2を満たすものであった。このように、実施例1〜5の液晶性ポリウレタンは、液晶相と等方相との間で一定以上の強度(耐久性)を有するものでありながら、相転移により初期引張抵抗度及び破断応力が大きく変化し得ることが確認された。従って、本発明の液晶性ポリウレタンを含む液晶性繊維材料は、熱応答性を有するとともに、一定以上の強度(耐久性)を有し、液晶性と伸縮性とを兼ね備えた材料として有用であることが示唆された。
これに対し、比較例1の繊維材料は、初期引張抵抗度Eと初期引張抵抗度Eとの比率(E/E)が1400であり、上述の力学的条件1を満たさないものであった。また、比較例1の繊維材料は、破断応力σと破断応力σとの比率(σ/σ)が42.1であり、上述の力学的条件2を満たさないものであった。比較例1の繊維材料は、液晶性が確認されたが、温度変化に応じて液晶相と等方相との間で可逆的に伸縮する性質を示さなかった。また、比較例2の繊維材料は、液晶性が発現せず、温度変化に応じた伸縮性も確認されなかった。
本発明の液晶性繊維材料、及び繊維製品は、その優れた熱応答性、伸縮性、弾性率変化特性、破断応力変化特性を利用し、実施形態で説明した衣料製品(ソックス)の他にも様々な用途で利用することができる。例えば、本発明の液晶性繊維材料、及び繊維製品は、アクチュエータ、フィルター等の工業分野において利用できる。また、人工筋肉、カテーテル等の医学・医療分野においても利用できる可能性がある。
10 ソックス
11 繊維(液晶性繊維材料)

Claims (10)

  1. 温度変化に応じて液晶相と等方相との間で可逆的に伸縮する液晶性ポリウレタンを含む液晶性繊維材料であって、
    前記液晶性ポリウレタンが最も収縮している状態を基準(100%)として、繊維方向における伸長率が103〜119%に設定されている液晶性繊維材料。
  2. 前記液晶性ポリウレタンは、モノフィラメント又はマルチフィラメントとして構成されている請求項1に記載の液晶性繊維材料。
  3. 前記繊維方向において、前記液晶性ポリウレタンが前記液晶相を含むときの弾性率をEとし、前記等方相を含むときの弾性率をEとしたとき、E/E ≦ 1000 を満たす請求項1又は2に記載の液晶性繊維材料。
  4. 前記繊維方向において、前記液晶性ポリウレタンが前記液晶相を含むときの破断応力をσとし、前記等方相を含むときの破断応力をσとしたとき、σ/σ ≦ 40 を満たす請求項1〜3の何れか一項に記載の液晶性繊維材料。
  5. 前記液晶相と前記等方相との境界となる相転移温度(Ti)は、前記液晶性ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)以上かつ100℃以下である請求項1〜4の何れか一項に記載の液晶性繊維材料。
  6. 前記相転移温度(Ti)と前記ガラス転移温度(Tg)との差は、20℃以上である請求項5に記載の液晶性繊維材料。
  7. 前記液晶性ポリウレタンは、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、アルキレンオキシド及び/又はスチレンオキシドと、架橋剤との反応物を含む請求項1〜6の何れか一項に記載の液晶性繊維材料。
  8. 前記架橋剤は、少なくとも3つの反応性官能基を有するポリオールである請求項7に記載の液晶性繊維材料。
  9. 前記メソゲン基含有化合物、前記イソシアネート化合物、前記アルキレンオキシド及び/又は前記スチレンオキシド、並びに前記架橋剤の合計量を100重量部としたとき、前記架橋剤の配合量は、0.1〜20重量部である請求項7又は8に記載の液晶性繊維材料。
  10. 請求項1〜9の何れか一項に記載の液晶性繊維材料を用いた繊維製品であって、
    前記伸長率が局所的に異なるように構成されている繊維製品。
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