JP6659407B2 - 解析装置、解析方法および解析プログラム - Google Patents
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Description
熱弾塑性解析法では、多数の微小時間ステップごとに各種の非線形要素まで考慮して現象を計算するので、高精度な解析をすることができる。
一方、弾性解析では、線形要素のみを考慮して解析をするため、短時間で解析をすることができる。
積層造形では、従来と比較して造形された構造物の形状をニアネットで製造することができるとともに、造形形状の選択幅が広い。
金属が溶融・凝固すると構造物に固有ひずみ(塑性ひずみ、熱ひずみ)が発生し、構造物の内部にこの固有ひずみに起因した残留応力が発生する。
残留応力は材料特性に及ぼす影響が大きいため、予測および制御をすることが重要になる。
これら固有ひずみまたは残留応力を高い精度で評価するには、入熱プロセスを厳密に再現する必要がある。
しかしながら、上述したように熱弾塑性解析法では非線形要素まで考慮するため、全てのステップの解析には非現実的な計算時間および費用がかかるという課題があった。
図1は、第1実施形態にかかる解析装置10のブロック図である。
さらに解析装置10は、全体モデル16を構成する要素ごとに固有ひずみの種類を選択するひずみ選択部18を備える。
ここで、図2は、部分モデル12の一例を示す図である。
部分モデル12は、構造物の造形形状の一部分を表現したモデルであって、ソリッド要素で構成される。
また、解析対象である構造物の形状に応じて、モデルの要素は4面体要素や8面体要素、ボクセル要素を使用することもできる。
部分モデル12の寸法または形状は、熱源の移動を安定的に表現できるものに任意に選択変更することができる。
図3は、全体モデル16の一例を示す図である。
全体モデル16は、解析される構造物の全体を表現したモデルであって、部分モデル12と同様にソリッド要素などで構成される。
解析条件は、構造物の力学シミュレーションを規定する条件であり、積層造形解析条件受付部11a(11)が受け付ける積層造形条件と、材料物性条件受付部11b(11)が受け付ける材料物性条件と、に大別される。
積層造形条件は、例えば、熱源の出力、熱源の種類、ビームプロファイル、走査速度、走査シーケンス、ラインオフセットまたは予熱温度などをパラメータとする条件である。
機械的物性値は、ヤング率、耐力、線膨張係数または加工硬化指数などである。熱物性値は、熱伝導率または比熱などである。
これらの物性値には、室温から金属の溶融温度までの温度依存性、または相変態に伴うヒステリシスなど既知の数値を用いることができる。
なお、積層造形条件または材料物性条件が変更になった場合、変更分を解析条件に反映させることで、様々な条件に応じた解析をすることができる。
解析時の時間ステップおよび収束判定条件は、熱源の走査速度などを考慮して選択することができる。
熱弾塑性解析では、通常、まず部分モデル12において温度分布を導出し、この温度分布を基にした弾塑性解析を行って固有ひずみを算出する。
また、抽出箇所は例えば部分モデル12の重心点など、部分モデル12の固有ひずみ分布を代表するような定常域である。
ひずみ抽出部23で抽出された固有ひずみは、ひずみ入力部28から、例えば熱ひずみとして全体モデル解析部17に入力される。
ひずみ選択部18によって、全体モデル16を構成する異なる要素に異なる固有ひずみを入力することで、より精度の高い解析をすることができる。
固有ひずみの選択は、解析者が行っても、既定の条件に従って自動で行ってもよい。
固有ひずみデータは、解析条件を規定する複数のパラメータを変化させて測定した実験測定または熱弾塑性解析によって予め解析条件に関連付けられている。
全体モデル解析部17で導出された残留応力等は、表示部26に表示される。
以上のような構成によって、部分モデル12の解析には解析負荷の大きい熱弾性解析が適用され、全体モデル16の解析には解析負荷の小さい弾性解析が適用される。
そして、積層造形解析条件受付部11aが、熱源の出力またはプロファイルなどをパラメータとする積層造形条件の入力を受け付ける(S12)。
また、材料物性条件受付部11bが、材料物性条件のパラメータである材料の耐力などの機械的物性値、および熱伝導率または比熱などの熱物性値の入力を受け付ける(S13)。
そして、ひずみ抽出部23が、算出された固有ひずみの最終値を抽出する(S15)。固有ひずみの抽出点は、例えば重心点である。
そして、ひずみ選択部18から選択された固有ひずみが各要素に入力される(S16)。
また、部分モデル12の熱弾塑性解析で算出された温度分布に基づいた機械的物性値であるヤング率を受け付ける(S17)。このヤング率は通常は室温の値である。
入力されたヤング率は、全体モデル解析部17に入力される。
次に、全体モデル解析部17が、データ保存部24の固有ひずみデータを参照しながら、固有ひずみに基づいて構造物の全体モデル16について弾性解析をする(S18)。
この弾性解析によって、構造物が積層造形された場合の残留応力等が評価される。
そして、この解析結果が表示部26に表示されて、動作が終了する(S19:END)。
解析装置10は、CPU等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、或いはHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、を具備するコンピュータとして構成することができる。
また、このようなソフトウェア処理に換えて、ASIC(Application Specific Integration Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアで実現することもできる。
次に、解析装置10の実施例について説明する。
実施例では、部分モデル12の形状を縦5mm×横5mm×高さ2mmの直方体にした。また、積層造形条件として、電子ビーム熱源による走査を入力した。
熱源は2次元のガウシアン分布を有しており、入熱量は約1000J/m、走査速度は約300m/秒、積層厚さは80μmである。
部分モデル12の熱弾塑性解析には、エレメントバース法を採用した。
エレメントバース法とは、熱源が通過していない未溶融領域は剛性が弱い物性値を用い、熱源が通過した後は合金(実施例ではNi基合金)そのものの熱的物性値を用いる方法である。
図4は、ある特定の時間ステップにおける造形時の温度分布の評価結果を示す図である。このように求められた熱伝導解析の評価結果を用いて、図5に示される造形後の残留応力の評価結果を算出した。
図6(A),(B)は、全ステップ終了後に表層に発生する応力についての解析値(白点)と実験値(黒点)とを比較した図である。
図6(A)は図5に示すA線上の9地点における応力のX方向成分、図6(B)は同地点における応力のY方向成分を比較している。
図6(A),(B)より、実験値と解析値とは良く一致する傾向があり、解析手法の有効性を確認することができる。
実施例では、構造物の全体モデルを一例としてボクセル要素で作成した縦50mm×横70mm×高さ100mmの直方体にした。
図7(A)は上述した一例となる全体モデルである直方体の表面に引いたライン(図示せず)上の9地点における残留応力のX方向成分、図7(B)は同地点における残留応力のY方向成分を比較している。
図7(A),(B)は、解析値の方が実験値よりも僅かに高い値を示しているが、実験と解析値は良く一致する傾向を示し、解析手法の有効性を確認することができる。
よって、解析負荷を顕著に低減することができる一方、積層造形特有である熱源の高速移動などの現象は部分モデル12において詳細に再現することができる。
つまり、第1実施形態にかかる解析装置10によれば、実現可能な解析負荷において高い精度で残留応力分布または溶接変形を解析することができる。
図8は、第2実施形態にかかる解析装置10のブロック図である。
第2実施形態にかかる解析装置10は、図8に示されるように、導出された残留応力等が既定の応力許容値または変形許容値(以下、「応力許容値等」という)を超過した場合に全体モデル16を変更する全体モデル変更部29を備える。
この場合、構造物は形状を変更する必要がある。
比較部31は、閾値保持部25に保持される応力許容値等と、全体モデル解析部17で導出された残留応力等と、を比較する。
全体モデル変更部29は、超過告知信号Sを受信して、全体モデル作成部22に変更出力し、全体モデル16を変更する。
なお、「変更」には、全体モデル16の一部を修正することも、別の全体モデルに刷新することも含まれるものとする。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (8)
- 積層造形によって造形される構造物の力学シミュレーションを規定する解析条件の入力を受け付ける解析条件受付部と、
受け付けた前記解析条件に基づいて前記構造物の部分モデルについて熱弾塑性解析をして固有ひずみを算出する部分モデル解析部と、
前記固有ひずみに基づいて前記構造物の全体モデルについて弾性解析をして応力または変形を導出する全体モデル解析部と、
前記全体モデルを構成する要素ごとに前記固有ひずみの種類を選択するひずみ選択部と、を備えることを特徴とする解析装置。 - 導出された前記応力または前記変形が既定の許容値を超過した場合に前記全体モデルを変更する全体モデル変更部、を備える請求項1に記載の解析装置。
- 前記解析条件は、熱源の出力、熱源の種類、ビームプロファイル、走査速度、走査シーケンス、ラインオフセット、ヤング率、耐力、線膨張係数、加工硬化指数、熱伝導率および比熱の少なくとも一つを含む請求項1または請求項2に記載の解析装置。
- コンピュータが、
積層造形によって造形される構造物の力学シミュレーションを規定する解析条件の入力を受け付けるステップと、
受け付けた前記解析条件に基づいて前記構造物の部分モデルについて熱弾塑性解析をして固有ひずみを算出するステップと、
前記解析条件に関連付けられた前記固有ひずみに基づいて前記構造物の全体モデルについて弾性解析をして応力または変形を導出するステップと、前記全体モデルを構成する要素ごとに前記固有ひずみの種類を選択するステップと、を実行することを特徴とする解析方法。 - 前記全体モデルを構成する要素ごとに前記固有ひずみの種類を選択するステップを含む請求項4に記載の解析方法。
- 導出された前記応力または前記変形が既定の許容値を超過した場合に前記全体モデルを変更するステップを含む請求項4または請求項5に記載の解析方法。
- コンピュータに、
積層造形によって造形される構造物の力学シミュレーションを規定する解析条件の入力を受け付けるステップ、
受け付けた前記解析条件に基づいて前記構造物の部分モデルについて熱弾塑性解析をして固有ひずみを算出するステップ、
前記解析条件に関連付けられた前記固有ひずみに基づいて前記構造物の全体モデルについて弾性解析をして応力または変形を導出するステップ、
前記全体モデルを構成する要素ごとに前記固有ひずみの種類を選択するステップ、を実行させることを特徴とする解析プログラム。 - 導出された前記応力または前記変形が既定の許容値を超過した場合に前記全体モデルを変更するステップを含む請求項7に記載の解析プログラム。
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