JP6659335B2 - 運転曲線作成装置および運転曲線作成方法 - Google Patents

運転曲線作成装置および運転曲線作成方法 Download PDF

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Description

本発明は、既定の車両条件および路線条件に応じて運転曲線を作成するための運転曲線作成装置および運転曲線作成方法に関する。
車両条件、路線条件およびダイヤに応じて運転曲線(列車走行時の位置に応じた速度)を、コンピュータを用いて作成する技術が知られている。近年では、列車の走行に要する消費電力量の低減を目的として、不必要な加減速を抑制した運転曲線を作成することが求められている。
既定の走行時分を満たしつつ消費電力量の小さな運転曲線を作成する技術として、特開2015−101149号公報(特許文献1)には、「当該区間の力行とブレーキとの間に所与の距離の惰行走行を追加した仮の運転曲線候補を生成し、改善効率Rが最大となる仮の運転曲線候補を、最良の運転曲線候補として選択する」技術が記載されている。
また、特許第2858529号公報(特許文献2)には、「編成車両条件、路線条件、および走行条件を基本データとし、予め定められた第1の制御ルールに従って列車運転曲線を自動作成する列車運転曲線作成装置において、出発点から次の停止点までの運転時分を、上記第1の制御ルールに従って作成された運転曲線から得られる運転時分より大きい所定の値に指定する手段、その運転時分と上記指定された運転時分との差が所定値以下となる範囲内で、上記第1の制御ルールに従って作成された運転曲線に存在する力行部分を所定量減少させた複数の運転曲線を設定する手段、およびこれら設定した各運転曲線での消費電力量を求め、この消費電力量が最小となる運転曲線を選定する手段を備えたことを特徴とする列車運転曲線作成装置」が記載されている。
さらに、非特許文献1には、複数の運転曲線調整手段が存在する場合に適用する運転曲線調整手段を選択する手段として、運転曲線候補を適用した際の消費電力量の変化量ΔWと走行時分の変化量Δtとの比率に基づいて選択する手法について述べられている。
特開2015−101149号公報 特許第2858529号公報
村田悟,永田剛士,秋山弘之「駅間の速度制限を考慮した省エネルギー運転曲線作成方法」平成7年鉄道技術連合シンポジウム,pp.479−482,1995
特許文献1に記載の技術では、運転曲線の修正方法として、惰行の付与ならびに惰行距離の延長を用いることで、消費電力量の低減を図っている。また、特許文献2に記載の技術では、運転曲線の修正方法として、定速速度の低減を用いることで、消費電力量の低減を図っている。具体的には、特許文献1ならびに特許文献2に記載の技術は、運転曲線における力行、定速、惰行および制動などの異なる運転操作(以下、「運転モード」という)が切替るタイミングにおいて、運転モードの切替えタイミングの変更や新たな運転モードを追加することで、運転曲線の修正を実施し、消費電力量がより小さくなる運転曲線を作成している。
一方、運転モードの切替タイミング以外では調整を実施しないため、例えば、定速中の下り勾配で惰行により位置エネルギーを活用したり、上り勾配前に加速して効率の良い状態で定速走行を行うことにより、消費電力量を低減するような運転曲線を作成することは困難であった。
本発明は、上記のような課題を解決するために、勾配等の路線条件に応じた運転モードの切替えを可能とすることで、既定の走行時分を満たしつつ、より小さな消費電力量となる運転曲線を作成することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る運転曲線作成装置は、路線条件と車両特性に基づいて作成または調整した運転曲線を保存する運転曲線保存部と、運転曲線保存部が保存する運転曲線を調整する運転曲線調整部とを備え、運転曲線調整部は、路線条件の変化点を抽出し当該変化点から運転曲線の調整が可能な第一の運転曲線調整点を出力する路線条件変化点抽出手段と、運転モードの変化点を抽出し当該変化点から運転曲線の調整が可能な第二の運転曲線調整点を出力する運転モード変化点抽出手段と、第一の運転曲線調整点および第二の運転曲線調整点の少なくともいずれかを用いて調整を施した運転曲線を作成する運転曲線更新手段とを備え、当該調整を施した運転曲線を運転曲線保存部に出力することを特徴とする。
本発明によれば、路線条件に応じて運転モードを変更する運転曲線を作成することが可能となり、既定の走行時分を満たしつつ、より小さな消費電力量となる運転曲線を作成することが可能となる。
図1は、本発明に係る運転曲線作成装置100の構成を示す図である。 図2は、運転曲線の一例を示す図である。 図3は、運転曲線情報の一例を示す表である。 図4は、運転モード変化点抽出手段161における処理のフローチャートを示す図である。 図5は、路線条件変化点抽出手段162における処理のフローチャートを示す図である。 図6は、実施例1の運転曲線更新手段163が運転曲線調整点情報に基づいて実施する運転曲線の調整例を示す図である。 図7は、実施例1によって作成される運転曲線の一例を示す図である。 図8は、実施例2の路線条件変化点抽出手段162における処理のフローチャートを示す図である。 図9は、実施例2の運転曲線更新手段163が運転曲線調整点情報に基づいて実施する運転曲線の調整例を示す図である。
本発明を実施するための形態として、実施例1および2について、図面を参照しながら以下に説明する。
実施例1は、運転曲線作成装置により、路線条件として特に下り勾配で運転モードを追加して運転曲線を作成する例である。
図1は、本発明に係る運転曲線作成装置100の構成を示す図である。
運転曲線作成装置100は、条件読み取り部110、走行条件保存部120、基本運転曲線作成部130、運転曲線保存部140、調整必要性判定部150、運転曲線調整部160および運転曲線出力部170から構成される。
ここで、運転曲線とは、ある出発駅を出発した列車が到着地点に到着するまでの速度の変化を示す曲線(グラフ)である。例えば、図2に示すように、横軸に出発駅からの位置、縦軸に各位置における速度をとったグラフで表すことができる。
図3には、運転曲線情報を表として記述した例を示す。運転曲線情報は、運転曲線を一意に定めるのに必要な情報を列挙したものである。表の各行には駅出発からの時間、位置、速度および運転モードの情報を含む。図3で示す例では、運転曲線情報を、0.5[秒]毎に一定の間隔で記録しているが、運転曲線情報は、運転曲線を一意に定めるのに十分な時間的精度で記録するのであれば、0.5[秒]間隔に特定されない。また、記録する時間も等間隔でなくてもよい。なお、運転曲線および運転曲線情報について、出発から到着までの一部分を抽出したものを、「部分運転曲線」および「部分運転曲線情報」と呼称する。
条件読み取り部110は、車両特性および路線条件をデータベース(DB)から読み取り、読み取った情報を走行条件情報として走行条件保存部120に記録する。ここで、車両特性は、列車の物理的な挙動を再現するために必要な情報である。例えば、列車の総重量、列車長、列車の引張力、列車の制動力、列車の力行時の効率および制動時の効率の情報等である。また、路線条件は、走行パターンの作成に必要な路線やダイヤの情報である。例えば、出発駅の位置情報、到着駅の位置情報、出発駅から到着駅間の勾配情報、出発駅から到着駅間の曲線情報、出発駅から到着駅間の速度制限情報および出発駅から到着駅間で満たすべき既定の走行時分Ttの情報等である。
なお、条件読み取り部110は、車両条件および路線条件をデータベース(DB)以外から読み取ってもよい。例えば、地上−車上通信を用いて、地上に設置したサーバから取得するようにしてもよい。要は、条件読み取り部110が車両特性および路線条件を取得できるのであれば、その方法は問わない。また、既定の走行時分Ttは、実際にダイヤで定められた時間を用いるか、また、ダイヤで定められた時間から増減させた値を用いてもよい。
走行条件保存部120は、条件読み取り部110が読み取った車両特性および路線条件を走行条件情報として保存し、基本運転曲線作成部130および運転曲線調整部160に該走行条件情報を出力する。
基本運転曲線作成部130は、走行条件保存部120から受け取った走行条件情報に基づいて、出発駅から到着駅までを最速で運転する基本運転曲線を、以下の2つの規則に則り作成する。
i 駅停車や駅中間の速度制限で減速が必要な区間では、運転モードを制動とする。
ii 上記i以外の区間では、運転モードを力行とし、速度制限で力行が許されない場合は運転モードを定速とする。
さらに、基本運転曲線作成部130は、前記基本運転曲線に対応する運転曲線情報を第一の運転曲線情報として運転曲線保存部140に保存する。第一の運転曲線情報は、調整する際の初期の運転曲線情報である。
運転曲線保存部140は、基本運転曲線作成部130で作成された第一の運転曲線情報を受け取ると、受け取った第一の運転曲線情報を保存運転曲線情報として保存する。また、第一の運転曲線情報を保存運転曲線情報として保存した後に、運転曲線調整部160によって作成された第二の運転曲線情報(これについては後述する)を受け取ると、受け取った第二の運転曲線情報を保存運転曲線情報として保存する。また、運転曲線保存部140は、保存運転曲線情報が更新されたタイミングで、該保存運転曲線情報と判定要求を調整必要性判定部150に出力する。併せて、運転曲線保存部140は、保存運転曲線情報を運転曲線調整部160および運転曲線出力部170に出力する。
調整必要性判定部150は、運転曲線保存部140から判定要求と保存運転曲線情報を受信すると、さらなる調整を適用する必要があるかどうか、その必要性を判定する。判定は、保存運転曲線情報に記述された走行時分Tc、既定の走行時分Ttおよび判定基準値Tjを用いた判定式として、以下の(式1)の真偽に基づいて行う。
|Tc−Tt| < Tj ・・・ (式1)
ここで、調整必要性判定部150は、(式1)が偽の場合に、運転曲線調整部160に調整要求を出力し、(式1)が真の場合に、運転曲線出力部170に保存運転曲線情報の出力要求を出力する。
(式1)による判定は、既定の走行時分Ttからのずれが判定基準値Tj以上の場合には、保存運転曲線情報にさらなる調整を適用する必要があると判定することを意味する。一方、そのずれが判定基準値Tjより小さい場合には、既定の走行時分Ttに十分近づいたとして、これ以上の運転曲線の調整は必要ないことを意味する。なお、判定基準値Tjの値は、既定の走行時分Ttからのずれとして、実際の列車への適用に支障をきたさない範囲であれば、任意の値をとることができる。例えば、Tj=1秒とする。
運転曲線調整部160は、調整必要性判定部150から調整要求を受信すると、走行条件保存部120から受け取った走行条件情報に基づいて、運転曲線保存部140から受け取った保存運転曲線情報に対して調整を施した運転曲線情報を作成し、第二の運転曲線情報として運転曲線保存部140に出力する。
運転曲線出力部170は、調整必要性判定部150から出力要求を受信すると、運転曲線保存部140から受け取った保存運転曲線情報を出力する。
運転曲線調整部160は、運転モード変化点抽出手段161、路線条件変化点抽出手段162および運転曲線更新手段163から構成される。
運転モード変化点抽出手段161は、保存運転曲線情報から運転曲線上で運転モードが変更となる点を、運転モード変化点として抽出する。さらに、運転モード変化点抽出手段161は、運転モード変化点のうち、保存運転曲情報の調整可能な点の情報および各点で実施可能な調整の種別を表す調整種別情報を、第一の運転曲線調整点情報として運転曲線更新手段163に出力する。
路線条件変化点抽出手段162は、走行条件情報と保存運転曲線情報とから運転曲線上で路線条件が変化する点を、路線条件変化点として抽出する。さらに、路線条件変化点抽出手段162は、路線条件変化点のうち、保存運転曲線情報の調整可能な点の情報および各点で実施可能な調整の種別を表す調整種別情報を、第二の運転曲線調整点情報として運転曲線更新手段163に出力する。
運転曲線更新手段163は、第一の運転曲線調整点情報、第二の運転曲線調整点情報および走行条件情報に基づいて、保存運転曲線情報に調整を施した運転曲線候補を作成し、その上で該運転曲線候補から一つを選択し、第二の運転曲線情報として運転曲線保存部140に出力する。
次に、運転モード変化点抽出手段161および路線条件変化点抽出手段162が実行する処理について順に説明する。
まず、運転モード変化点抽出手段161が実行する処理を説明する。図4は、運転モード変化点抽出手段161における処理手順を示す図である。運転モード変化点抽出手段161は、ステップS401〜S409によって運転モード変化点を抽出し、各変化点で適用可能な調整種別を判定する。
ステップS401〜S409を実行する主体は、運転モード変化点抽出手段161であるところ、以下ではその主体の記述を省略する。
<ステップS401>
運転曲線情報の行数のカウントに用いる変数iを初期値i=1として、次のステップS402に進む。
<ステップS402>
図3に示す表の形式で表される保存運転曲線情報のi行目の運転モードの情報を第一の運転モードとし、保存運転曲線情報のi+1行目の運転モードの情報を第二の運転モードとして、次のステップS403に進む。
<ステップS403>
第一の運転モードと第二の運転モードの状態が異なるかどうかを判定する。この判定結果が、真の場合には(Yes)、ステップS404に進み、偽の場合には(No)、ステップS408に進む。すなわち、ステップS403は、運転モードの変化点を抽出するステップである。
<ステップS404>
第一の運転モードが力行以外か否かを判定する。この判定結果が、真の場合には(Yes)、ステップS406に進み、偽の場合には(No)、ステップS405に進む。すなわち、ステップS404は、力行運転モードを抽出するステップである。
<ステップS405>
定速速度低下による運転曲線の調整が可能な運転モードの切替点として、保存運転曲線情報のi行目の位置、速度および運転モードの情報、並びに定速速度低下による運転曲線の変更が可能なことを表す第一の調整種別情報を、第一の運転曲線調整点情報に追加する。続いて、ステップS406に進む。
<ステップS406>
次の論理式の真偽を判定する。
「第二の運転モードが惰行以外、かつ、第一の運転モードが惰行または第二の運転モードが制動以外」
この判定結果が、真の場合には(Yes)、ステップS408に進み、偽の場合には(No)、ステップS407に進む。すなわち、ステップS406は、第一の運転モードが惰行でありかつ第二の運転モードが力行である点を抽出するステップである。
<ステップS407>
惰行距離増加による変更が可能な運転モードの切替点として、保存運転曲線情報のi行目の位置、速度および運転モードの情報、並びに惰行距離増加による運転曲線の変更が可能なことを表す第二の調整種別情報を、第一の運転曲線調整点情報に追加する。続いて、ステップS408に進む。
<ステップS408>
i+1が保存運転曲線情報の行数に一致するかどうかを判定する。この判定結果が、偽の場合には(No)、ステップS409に進み、真の場合には(Yes)、処理を終了する。
<ステップS409>
i=i+1にインクリメントして、ステップS402に戻る。
なお、ステップS405およびステップS407において、第一の運転曲線調整点に追加する点の情報は、位置、速度および運転モードすべての情報を追加する必要はなく、位置または行数iのいずれかであってもよい。また、その他の情報であっても、保存運転曲線情報のいずれかの点を一意に定めることのできる情報であれば何でもよい。
続いて、路線条件変化点抽出手段162が実行する処理を説明する。図5は、路線条件変化点抽出手段162における処理手順を示す図である。路線条件変化点抽出手段162は、ステップS501〜S508によって、定速中の下り勾配における惰行挿入が可能な点を抽出する。
ステップS501〜S508を実行する主体は、路線条件変化点抽出手段162であるところ、以下ではその主体の記述を省略する。
<ステップS501>
運転曲線情報の行数のカウントに用いる変数iを初期値i=1として、次のステップS502に進む。
<ステップS502>
位置および速度における惰行加速判定を実施する。ここで、惰行加速判定は、惰行を実施した場合に列車の速度が増加するか否かで判定を行い、そのために、走行条件情報と、列車の位置および速度で決定される、曲線抵抗、勾配抵抗および走行抵抗とを用いる。増加する場合は、判定結果を真とし、増加しない場合は、判定結果を偽とする。図3に示す表の形式で表される保存運転曲線情報のi行目の位置および速度情報に基づいて惰行加速判定を行い、その結果を第一の惰行加速判定とする。また、保存運転曲線情報のi+1行目の位置および速度情報に基づいて惰行加速判定を行い、その結果を第二の惰行加速判定とする。続いて、ステップS503に進む。
<ステップS503>
保存運転曲線情報のi行目の運転モードの情報を第一の運転モードとし、保存運転曲線情報のi+1行目の運転モードの情報を第二の運転モードとして、次のステップS504に進む。
<ステップS504>
第一の惰行加速判定が偽かつ第二の惰行加速判定が真かどうかを判定する。この判定結果が、真の場合には(Yes)、ステップS505に進み、偽の場合には(No)、ステップS507に進む。すなわち、ステップS504は、下り勾配開始点を抽出するステップである。
<ステップS505>
第一の運転モードおよび第二の運転モードがともに定速であるかを判定する。この判定結果が、真の場合には(Yes)、ステップS506に進み、偽の場合には(No)、ステップS507に進む。すなわち、ステップS505は、定速中であることを抽出するステップである。
<ステップS506>
定速中の下り勾配における惰行挿入によって運転曲線の調整が可能な路線条件の変化点として、保存運転曲線情報のi+1行目の位置、速度および運転モードの情報、並びに定速中の下り勾配における惰行挿入による運転曲線の変更が可能なことを表す第三の調整種別情報を、第二の運転曲線調整点情報に追加する。続いて、ステップS507に進む。
<ステップS507>
i+1が保存運転曲線情報の行数に一致するかどうかを判定する。この判定結果が、真の場合には(Yes)、処理を終了し、偽の場合には(No)、ステップS508に進む。
<ステップS508>
i=i+1にインクリメントして、ステップS502に戻る。
なお、ステップS506において、第二の運転曲線調整点情報に追加する点の情報は、位置、速度および運転モードのすべての情報を追加する必要はなく、位置または行数i+1のいずれかであってもよい。また、その他の情報であっても、保存運転曲線情報のいずれかの点を一意に定めることのできる情報であれば何でもよい。
次に、運転曲線更新手段163の動作を説明する。
運転曲線更新手段163は、第一の運転曲線調整点情報と第二の運転曲線調整点情報に基づいて、保存運転曲線情報を調整し、消費電力量を低減する運転曲線情報を作成する。実施例1における運転曲線の調整方法は、(1)定速速度低下、(2)惰行距離増加および(3)定速中の下り勾配における惰行挿入、の3種類である。各運転曲線調整点でいずれの調整を実施するかは、運転モード変化点抽出手段161および路線条件変化点抽出手段162から受け取る調整種別情報の種類で判断する。
図6は、実施例1の運転曲線更新手段163が運転曲線調整点情報に基づいて実施する運転曲線の調整例を示す図である。以下、図6の(1)〜(3)を用いてそれぞれの調整方法について説明する。
(1)図6の(1)は、運転モード変化点抽出手段161および路線条件変化点抽出手段162から受け取る調整種別情報が、第一の調整種別情報に一致する場合の運転曲線調整方法を示す図である。第一の運転曲線調整点情報あるいは第二の運転曲線調整点情報が示す点をP610とする。
出発駅S641から到着駅S651間の調整前の運転曲線をL601とする。運転曲線L601が力行から定速に変化する点P610が、定速速度低下を適用可能な点として抽出されている状態である。
P610から既定速度ΔVだけ低下させた点を新たな運転曲線調整点P611とする。点P611から定速を実施した場合の部分運転曲線L602(P611−P612;破線部)を作成する。なお、部分運転曲線L602の終点P612は、P611から定速を実施したとして順に計算していく点が、位置−速度平面上で調整前の運転曲線L601と交差する点とする。調整前の運転曲線L601上のP611−P610−P612を、部分運転曲線L602(破線部)で置換えたものを運転曲線候補とする。なお、ΔVの値は正の微小値である。
(2)図6の(2)は、運転モード変化点抽出手段161および路線条件変化点抽出手段162から受け取る調整種別情報が、第二の調整種別情報に一致する場合の運転曲線調整方法を示す図である。第一の運転曲線調整点情報あるいは第二の運転曲線調整点情報が示す点をP620とする。
出発駅S642から到着駅S652間の調整前の運転曲線をL603とする。運転曲線L603が定速から惰行に変化する点P620が、惰行距離増加を適用可能な点として抽出されている状態である。
P620から出発駅側に既定距離ΔXだけ移動させた点を新たな運転曲線調整点P621とする。点P621から惰行をした場合の部分運転曲線L604(P621−P622;破線部)を作成する。なお、部分運転曲線L604の終点P622は、P621から惰行を実施したとして順に計算していく点が、位置−速度平面上で調整前の運転曲線L603と交差する点とする。調整前の運転曲線L603のP621−P620−P622を、部分運転曲線L604(破線部)で置換えたものを運転曲線候補とする。なお、ΔXの値は正の微小値であり、調整による走行時分の増加量が判定基準値Tj未満となる任意の値をとることができる。
(3)図6の(3)は、運転モード変化点抽出手段161および路線条件変化点抽出手段162から受け取る調整種別情報が、第三の調整種別情報に一致する場合の運転曲線調整方法を示す図である。第一の運転曲線調整点情報あるいは第二の運転曲線調整点情報が示す点をP630とする。
出発駅S643から到着駅S653間の調整前の運転曲線をL605とする。運転曲線L605で定速中に惰行が可能な点P630が、定速中の下り勾配における惰行挿入を適用可能な点として抽出されている状態である。
P630から惰行をした場合の部分運転曲線L606(P630−P631;破線部)を作成する。なお、部分運転曲線L606の終点P631は、P630から惰行を実施したとして順に計算していく点が、位置−速度平面上で調整前の運転曲線L605と交差する点とする。調整前の運転曲線L605で定速となっているP630−P631を、部分運転曲線L606(破線部)で置換えたものを運転曲線候補とする。なお、部分運転曲線L606のP630−P631の部分が速度制限(Vmax)を超す場合には作成不可とする。
また、運転曲線更新手段163は、運転モード変化点抽出手段161および路線条件変化点抽出手段162から受け取る前記種別情報に関わらず、全種別の運転曲線の調整方法を試行してもよい。ただし、本実施例に記載したように、種別情報によって実施する調整方法を限定することで計算時間を短縮することができる。
次に、運転曲線更新手段163は、第一の運転曲線調整点と第二の運転曲線調整点の数だけ存在する運転曲線候補から一つの運転曲線を選択して、第二の運転曲線として運転曲線保存部140に出力する。運転曲線候補から一つの運転曲線を選択する方法としては、単純に消費電力量が最小となる運転曲線を選択するか、または、非特許文献1の方法に従い保存運転曲線情報からの走行時分および消費電力量の変化量に基づいて選択してもよい。
図7は、運転曲線作成装置100によって作成される運転曲線の一例を示す図である。曲線L701は、基本運転曲線作成部130により作成された第一の運転曲線である。曲線L702が、運転曲線調整部160により作成される第二の運転曲線の例である。また、従来技術として、実施例1における運転曲線調整部160の構成から路線条件変化点抽出手段162を除いた構成(すなわち、運転モード変化点抽出手段161を用いた調整)で作成した運転曲線を、曲線L703として示す。実施例1により作成した曲線L702では、曲線L703で定速が実施されている区間の一部で惰行が実施されていることがわかる。
以上のように、実施例1によれば、定速途中の下り勾配で惰行を挿入した運転曲線を作成することが可能となる。これにより、既定の走行時分を満たしつつ、より小さな消費電力量となる運転曲線を作成することが可能となる。
また、運転曲線作成装置100を自動列車運転装置に搭載し、駅出発前に運転曲線作成装置100が作成した運転曲線情報に基づいて、自動列車運転装置が制御指令を出力することで、前記運転曲線情報を基にした、より小さな消費電力量となる運転を実現することが可能となる。
そしてまた、運転曲線作成装置100を運転支援装置に搭載し、駅出発前に運転曲線作成装置100が作成した運転曲線情報に基づいた運転支援情報を表示することで、運転士による手動運転においても前記運転曲線情報を基にした、より小さな消費電力量となる運転を実現することが可能となる。
実施例2は、運転曲線作成装置により、上り勾配での力行挿入を、実施例1における運転曲線の調整方法とは異なる調整方法の一つとして用いて運転曲線を作成する例である。運転曲線作成装置100の装置構成は、実施例1と同様であるが、路線条件変化点抽出手段162の処理および運転曲線更新手段163の動作の一部が、実施例1から変更となる。
図8は、実施例2における路線条件変化点抽出手段162の処理手順を示す図である。
路線条件変化点抽出手段162は、ステップS801〜S808により、定速中の上り勾配が一定以上となる点を抽出する。
ステップS801〜S809を実行する主体は、路線条件変化点抽出手段162であるところ、以下ではその主体の記述を省略する。
<ステップS801>
運転曲線情報の行数のカウントに用いる変数iを初期値i=1として、次のステップS802に進む。
<ステップS802>
位置に基づく上り勾配判定を実施する。ここで、上り勾配判定は、列車の位置における走行条件情報に基づいて、該当位置における勾配値Rが勾配基準値R0以上の値であるかどうかにより判定する。R≧R0のときは判定結果を真とし、R<R0のときは判定結果を偽とする。保存運転曲線情報のi行目の情報に基づいて上り勾配判定を行い、その結果を第一の上り勾配判定とし、保存運転曲線情報のi+1行目の情報に基づいて上り勾配判定を行い、その結果を第二の上り勾配判定とする。続いて、ステップS803に進む。
ここで、勾配基準値R0は、任意の正の値をとることができ、例えばR0=20%とする。あるいは、勾配基準値R0を列車の重量や搭載電動機の特性および効率の情報から決定してもよい。また、勾配基準値R0の決定方法は、常に一定である必要はなく、例えば路線毎に変更してもよいし、路線内の駅間毎に変更してもよい。
<ステップS803>
保存運転曲線情報のi行目の運転モードの情報を第一の運転モードとし、保存運転曲線情報のi+1行目の運転モードの情報を第二の運転モードとして、次のステップS804に進む。
<ステップS804>
第一の上り勾配判定が偽かつ第二の上り勾配判定が真かどうかを判定する。この判定結果が、真の場合には(Yes)、ステップS805に進み、偽の場合には(No)、ステップS807に進む。すなわち、ステップS804は、一定勾配以上の上り勾配開始点を抽出するステップである。
<ステップS805>
第一の運転モードと第二の運転モードが共に定速であるかを判定する。この判定結果が、真の場合には(Yes)、ステップS806に進み、偽の場合には(No)、ステップS807に進む。すなわち、ステップS805は、定速中であることを抽出するステップである。
<ステップS806>
運転曲線の変更が可能な路線条件の変化点として、保存運転曲線情報のi+1行目の位置、速度および運転モードの情報、並びに上り勾配での力行挿入による運転曲線の変更が可能なことを表す第四の調整種別情報を、第二の運転曲線調整点に追加する。続いて、ステップS807に進む。
<ステップS807>
i+1が保存運転曲線情報の行数に一致するかどうかを判定する。この判定結果が、真の場合には(Yes)、処理を終了し、偽の場合には(No)、ステップS808に進む。
<ステップS808>
i=i+1にインクリメントして、ステップS802に戻る。
次に、実施例2における運転曲線更新手段163の動作態様を説明する。
図9は、運転モード変化点抽出手段161および路線条件変化点抽出手段162から受け取る調整種別情報が、第四の調整種別情報に一致する場合の運転曲線調整方法を示す図である。第一の運転曲線調整点情報あるいは第二の運転曲線調整点情報が示す点をP910とする。
出発駅S921から到着駅S931間の調整前の運転曲線L901とする。調整種別情報が第四の調整種別情報である場合には、運転曲線L901の定速区間における一定勾配以上の上り勾配開始点P910が、運転曲線調整点として抽出されている状態である。P910を基点として、列車の運動方程式を時間に対して逆方向に計算することで、力行した場合にP910に到達するような部分運転曲線L902(P911−P910;図中の破線)を作成する。なお、P911は、P910を基点として列車の運動方程式を時間に対して逆方向に計算した際に、速度がP910より既定速度ΔVだけ低下した点とする。また、調整前の運転曲線L901上でP911より出発駅側かつ速度がP911と等しくなる点をP912とし、P912−P911間を定速で走行する部分運転曲線をL903(図中の破線)とする。このように、調整前の運転曲線L901のP912−P910の部分を、部分運転曲線L903と部分運転曲線L902(共に、図中の破線)で置換えたものを運転曲線候補とする。なお、既定速度ΔVは正の微小値である。
実施例2によれば、一定勾配以上の上り勾配が存在する場合に、該上り勾配の前方で再力行を実施し、該上り勾配直前までの区間のみで定速速度を低減した運転曲線を作成することができる。一般に、同じ速度で定速走行する場合、平坦な区間を走行する際の駆動装置の効率は、上り坂を走行する際の駆動装置の効率より低い。このため、上り勾配直前までの区間のみで定速速度を低減することで、効率が低い状態における定速での消費電力量を減らし、効率の良い状態での定速での消費電力量を増やすことによって、結果的に消費電力量を減少させることができる。
以上のように、実施例2によれば、一定勾配以上の上り勾配直前までの区間のみで定速速度を低減した運転曲線を作成することが可能となる。これにより、既定の走行時分を満たしつつ、より小さな消費電力量となる運転曲線を作成することが可能となる。
100 運転曲線作成装置、110 条件読み取り部、120 走行条件保存部、
130 基本運転曲線作成部、140 運転曲線保存部、150 調整必要性判定部、
160 運転曲線調整部、170 運転曲線出力部、161 運転モード変化点抽出手段、162 路線条件変化点抽出手段、163 運転曲線更新手段

Claims (4)

  1. 列車が走行する路線の路線条件と当該列車を構成する車両の車両特性に基づいて作成または調整した運転曲線を保存する運転曲線保存部と、
    前記運転曲線保存部が保存する前記運転曲線を調整する運転曲線調整部と
    前記運転曲線保存部が保存する前記運転曲線を出力する運転曲線出力部と
    を備え、
    前記運転曲線調整部は、運転モードの変化点を抽出し当該変化点から前記運転曲線の調整が可能な第一の運転曲線調整点を抽出する運転モード変化点抽出手段と、前記路線条件の変化点を抽出し当該変化点から前記運転曲線の調整が可能な第二の運転曲線調整点を抽出する路線条件変化点抽出手段と、前記第一の運転曲線調整点および前記第二の運転曲線調整点の少なくともいずれかを用いて調整を施した前記運転曲線を作成する運転曲線更新手段とから構成され、当該調整を施した前記運転曲線を前記運転曲線保存部に出力し、
    前記路線条件変化点抽出手段は、定速運転中における前記列車の位置の勾配の大きさと曲線抵抗および前記列車の速度で定まる走行抵抗を用いて当該列車が惰行した際に加速が可能な前記路線上の点を前記第二の運転曲線調整点として抽出し、
    前記運転曲線更新手段は、前記第二の運転曲線調整点として抽出した前記路線上の点の前方から惰行を実施した前記運転曲線を作成することを特徴とする運転曲線作成装置。
  2. 列車が走行する路線の路線条件と当該列車を構成する車両の車両特性に基づいて作成または調整した運転曲線を保存する運転曲線保存部と、
    前記運転曲線保存部が保存する前記運転曲線を調整する運転曲線調整部と
    前記運転曲線保存部が保存する前記運転曲線を出力する運転曲線出力部と
    を備え、
    前記運転曲線調整部は、運転モードの変化点を抽出し当該変化点から前記運転曲線の調整が可能な第一の運転曲線調整点を抽出する運転モード変化点抽出手段と、前記路線条件の変化点を抽出し当該変化点から前記運転曲線の調整が可能な第二の運転曲線調整点を抽出する路線条件変化点抽出手段と、前記第一の運転曲線調整点および前記第二の運転曲線調整点の少なくともいずれかを用いて調整を施した前記運転曲線を作成する運転曲線更新手段とから構成され、当該調整を施した前記運転曲線を前記運転曲線保存部に出力し、
    前記路線条件変化点抽出手段は、定速運転中に上り勾配の大きさが基準値以上の前記路線上の点を前記第二の運転曲線調整点として抽出し、
    前記運転曲線更新手段は、前記第二の運転曲線調整点として抽出した前記路線上の点の前方で力行を実施し、当該力行を開始するまでの定速区間の定速速度を低減する前記調整を施した前記運転曲線を作成する
    ことを特徴とする運転曲線作成装置。
  3. 請求項1または2に記載の運転曲線作成装置であって、
    前記運転曲線保存部が保存する前記運転曲線に対して更なる調整の必要性を判定する調整必要性判定部を更に備え、
    前記調整必要性判定部は、前記更なる調整が必要と判定すると前記運転曲線調整部へ調整要求を出力し、前記更なる調整が不要と判定すると前記運転曲線出力部へ出力要求を出力し、
    前記運転曲線調整部は、前記調整要求を入力すると処理を実行する
    ことを特徴とする運転曲線作成装置。
  4. 請求項3に記載の運転曲線作成装置であって、
    前記調整必要性判定部は、前記運転曲線保存部が保存する前記運転曲線に基づく走行時分と既定の走行時分との偏差が判定基準値以上の場合に前記更なる調整が必要と判定する
    ことを特徴とする運転曲線作成装置。
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