JP2020029211A - 運転曲線作成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の実走行の特徴を考慮した省エネ運転曲線を短時間で作成できる装置を提供する。【解決手段】本実施形態による運転曲線作成装置は、鉄道車両が走行したときに単位時間毎に得られる該車両の位置、該車両のノッチの段数および該車両の消費エネルギーの情報を含む実走行データを受け取る入力部を備える。記憶部は実走行データを格納する。選択部は、実走行データの中から第1走行区間の複数の実走行データを抽出後、第1走行区間の複数の実走行データから車両の消費エネルギーまたは回生エネルギーに基づいて複数の省エネ走行データを選択する。作成部は複数の省エネ実走行データから特定のノッチ切替え動作を実行したときの車両の位置または時間を含む切替え情報を抽出後、該切替え情報を用いて車両の運転曲線を作成する。補正部は、第1走行区間の終点における車両の停止位置または停止時間を調整するために運転曲線を補正する。【選択図】図1
Description
本発明による実施形態は、運転曲線作成装置に関する。
近年、エネルギー効率の良い輸送機関である鉄道に対しても更なる省エネルギー(以下、省エネ)が求められている。省エネを実現する手段の1つに、省エネ化された運転曲線に基づいて鉄道を運行することが考えられる。運転曲線とは、列車が或る駅間を所与の時間通りに走行するために、該列車の位置および速度を時系列で表したグラフである。
省エネ運転曲線を作成する手法の一つとして、出発から到着までの列車の運動状態の全ての組み合わせの中から、消費エネルギーの最の小さい運転曲線を探索する手法がある。この手法は、走行区間の勾配や列車の特性を考慮しながら、全てのノッチの組み合わせから消費エネルギーの小さい運転曲線を探索する手法である。
この場合、列車の運動状態の全ての組み合わせを探索するので、消費エネルギーの小さい運転曲線を正確に求めることができる。しかしながら、単位時間毎に全てのノッチのそれぞれに遷移したときの列車の運動状態を算出する必要があるので、その運動状態の計算量は膨大となり、非常に長い時間がかかる。また、省エネのみに着目すると、乗り心地等の他の要素を無視した実走行に好ましくない運転曲線が算出される可能性がある。従って、ヒューリスティックな条件を設定することが考えられるが、その条件設定は、開発設計者に依存するところが大きく、また、その条件設定にも長時間を要する。
車両の実走行の特徴を考慮した省エネ運転曲線を短時間で作成することができる運転曲線作成装置を提供する。
本実施形態による運転曲線作成装置は、鉄道車両が走行したときに単位時間毎に得られる該車両の位置、該車両のノッチの段数および該車両の消費エネルギーの情報を含む実走行データを受け取る入力部を備える。記憶部は実走行データを格納する。選択部は、実走行データの中から第1走行区間の複数の実走行データを抽出後、第1走行区間の複数の実走行データから車両の消費エネルギーまたは回生エネルギーに基づいて複数の省エネ走行データを選択する。作成部は複数の省エネ実走行データから特定のノッチ切替え動作を実行したときの車両の位置または時間を含む切替え情報を抽出後、該切替え情報を用いて車両の運転曲線を作成する。補正部は、第1走行区間の終点における車両の停止位置または停止時間を調整するために運転曲線を補正する。
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による車両10および運転曲線作成装置20の構成の一例を示すブロック図である。車両10は、地上側の運転曲線作成装置20と互いに通信可能に接続されている。車両10は、走行データ送信部11と、運転曲線受信部12と、運転曲線表示部13とを含むシステムを備える。車両10は、例えば、鉄道車両であり、或る駅を出発し、次の駅に停車する走行動作を繰り返す。このような車両10は、走行時に実走行データを測定する。
図1は、第1実施形態による車両10および運転曲線作成装置20の構成の一例を示すブロック図である。車両10は、地上側の運転曲線作成装置20と互いに通信可能に接続されている。車両10は、走行データ送信部11と、運転曲線受信部12と、運転曲線表示部13とを含むシステムを備える。車両10は、例えば、鉄道車両であり、或る駅を出発し、次の駅に停車する走行動作を繰り返す。このような車両10は、走行時に実走行データを測定する。
実走行データは、車両10が実走したときに、単位時間毎に得られる時刻、車両10の位置、車両10の速度、車両10のノッチ段数および車両10の消費エネルギー等の情報を含む測定データである。また、実走行データは、実走したときの出発駅または次の到着駅を識別する駅コード、あるいは、走行時において車両10で発生する回生エネルギーの情報を含んでいてもよい。
ノッチは、車両10の速度を制御するために車両10の制御レバーに設けられた刻み(段)を示す。運転者は、ノッチの段を変化させることによって、車両10の速度を制御し、力行、惰行、ブレーキのいずれかの状態にすることができる。
1つの実走行データは、或る駅から次の駅までの駅間(走行区間)を車両10が走行したときに得られる一連の実走行データである。従って、車両10が同一走行区間を複数回走行した場合、該走行区間における複数の実走行データが得られる。また、車両10が異なる複数の走行区間を走行した場合、その複数の走行区間のそれぞれにおける複数の実走行データが得られる。実走行データは、車両10に設けられた主制御装置、補助電源装置、空調制御装置、ブレーキ等の機器に設けられた計測機器で計測される。ここで、図2を参照して実走行データを説明する。
図2は、1つの実走行データの一例を示す概念図である。上述の通り、実走行データは、車両10が実走したときに、単位時間毎に得られる時刻、車両10の位置、車両10の速度、車両10のノッチ段数および車両10の累積消費エネルギー等の情報を含む。図2の実走行データでは、車両10が或る駅を出発してから0.2秒間隔で周期的に、時刻、車両10の位置、車両10の速度、車両10のノッチ段数および車両10の累積消費エネルギーを測定している。行番号は、ノッチや累積消費エネルギー等の測定順に付された番号である。図2の実走行データに示すように、ノッチの切替えに応じて、車両10は、速度を変化させて移動する。それに伴い、車両10の累積消費エネルギーは単位時間毎に上昇する。1つの実走行データは、或る駅を出発してから次の駅に到着するまでに測定されたデータである。従って、1つの実走行データの最後の行には、或る駅を出発してから次の駅に到着するまでの累積消費エネルギーが表示される。尚、図2では、時刻を示しているが、時刻とともに、あるいは、時刻に代えて、車両10が出発駅を出発してからの時間を用いてもよい。
図1を再度参照する。走行データ送信部11は、車両10で計測された実走行データを地上側に配置されている運転曲線作成装置20へ送信する。走行データ送信部11は、運転曲線作成装置20と有線または無線で通信可能に接続されている。
運転曲線受信部12は、運転曲線作成装置20で作成された運転曲線を受け取る。運転曲線受信部12も、運転曲線作成装置20と有線または無線で通信可能に接続されている。
運転曲線表示部13は、運転曲線受信部12で受信された運転曲線を表示させる。運転曲線の表示は、任意であるが、図10に示すようなグラフであってもよい。運転曲線受信部12が実走行データを走行データ送信部11から受け取っている場合、運転曲線表示部13は、運転曲線作成装置20で作成された運転曲線とともに実走行データを表示してもよい。この場合、運転曲線および実走行データの表示形式は同一にして両者を比較可能にしてもよい。
運転曲線作成装置20は、入力部21と、第1のデータベース22、走行区間選択部23と、実走行データ整列部24と、実走行データ選択部25と、切替え情報抽出部26と、第2のデータベース27と、運転曲線作成部28と、運転曲線補正部29と、運転曲線送信部30とを備えている。
入力部21は、車両10からの実走行データを受け取り、実走行データをデータベース22へ格納する。車両10が走行するごとに、実走行データがデータベース22に蓄積されていく。データベース22は、通常、多数の走行区間の実走行データを格納し、各走行区間のそれぞれについて多数の実走行データを格納する。
走行区間選択部23は、データベース22に格納されている実走行データの中から、運転曲線を作成する対象の走行区間(第1走行区間)の実走行データを選択する。走行区間選択部23は、データベース22にある全てまたは一部の第1走行区間の実走行データを選択してよい。尚、第1走行区間の実走行データの数が少な過ぎると、運転曲線作成部28が有効な運転曲線を作成することができなくなってしまうので、実走行データの数は多い方が良い。
実走行データ整列部24は、走行区間選択部23で選択された第1走行区間の複数の実走行データを、車両10の消費エネルギー順に配列する。例えば、実走行データ整列部24は、複数の実走行データを消費エネルギーの小さい順に配列する。
図3は、第1走行区間の複数の実走行データを累積消費エネルギーの小さい順に配列した概念図である。走行番号は、各実走行データに付された固有の番号である。図3に示す実走行データは、図2に示す時刻ごとの測定情報をまとめた結果として示されている。各実走行データは、車両10が第1走行区間を走行したときに得られる走行時間および累積消費エネルギーの情報を含む。また、図3では、各実走行データは、特定のノッチ切替え動作(例えば、力行ノッチから惰行ノッチへの切替動作、または、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替動作)を実行した時間を示している。尚、ここでの時間は、第1走行区間の走行時間(即ち、或る駅を出発した時点を基準(0秒)として次の駅に到着するまでの累積時間)である。
例えば、図3では、走行番号23、101、5の実走行データは、第1走行区間の実走行データの中で累積消費エネルギーの最も小さい3つの実走行データである。走行番号23の実走行データは、車両10が第1走行区間を123秒で走行し、そのときの累積消費エネルギーが12.9kWhであったことを示している。走行番号101の実走行データは、車両10が第1走行区間を128秒で走行し、そのときの累積消費エネルギーが15.6kWhであったことを示している。走行番号5の実走行データは、車両10が第1走行区間を121秒で走行し、そのときの累積消費エネルギーが15.8kWhであったことを示している。
図1を再度参照する。実走行データ選択部25は、このように消費エネルギーの小さい順に配列された複数の実走行データから、消費エネルギーの小さい順に複数の省エネ走行データを選択する。消費エネルギーの小さい実走行データを選択することによって、運転曲線作成部28は、消費エネルギーを考慮した省エネ運転曲線を作成することができる。また、事故発生時等のように特殊なケースもあるため、単一の省エネ走行データを選択すると、運転曲線作成部28は、特殊なケースに基づいて例外的な運転曲線を作成してしまうおそれがある。このような特殊なケースに基づく例外的な運転曲線は、現実的な運転曲線とは大きくかけ離れたものとなるおそれがある。運転曲線作成部28がこのような例外的な運転曲線を作成することを防止するために、実走行データ選択部25は、複数の省エネ走行データを選択することが好ましい。尚、選択する省エネ走行データの数は、特に限定しない。
切替え情報抽出部26は、複数の省エネ走行データのそれぞれから、特定のノッチ切替え動作を実行したときの車両10の位置または時間を含む切替え情報を抽出する。例えば、停止状態または惰行状態のノッチ(以下、惰行ノッチという)を0段とすると、力行ノッチは1段〜6段、ブレーキノッチは−1段〜−6段のように、車両10の速度を制御する制御レバーの刻み(段)である。力行ノッチは、車両10を加速させるノッチであり、ノッチ段数が大きくなると加速度も大きくなるように設定されている。ブレーキノッチは、車両10を減速させるノッチであり、ノッチ段数の絶対値が大きくなると減速度(制動力)も大きくなるように設定されている。停止または惰行ノッチ(0段)は、ニュートラルノッチである。
特定のノッチ切替え動作は、例えば、力行ノッチ(1段〜6段のいずれか)から惰行ノッチ(0段)への切替え動作、あるいは、惰行ノッチ(0段(ニュートラルノッチ))からブレーキノッチ(−1段〜−6段のいずれか)への切替え動作等のように車両10の動作を転換する特徴的な切替え動作である。例えば、力行ノッチから惰行ノッチに切り替わったときに、車両10は、加速状態から惰行状態に移行する。惰行ノッチからブレーキノッチに切り替わったときに、車両10は、惰行状態からブレーキ状態に移行する。このような車両10の動作を転換する特徴的な切替え動作を抽出することにより、運転曲線受信部12は、省エネ走行データの全てのノッチ切替え動作を考慮することなく、特定のノッチ切替え動作を用いて省エネ走行データに類似した運転曲線を簡単に短時間で作成することができる。切替え情報抽出部26で抽出された切替え情報は、データベース27に格納される。切替え情報は、各省エネ走行データに関連付けられてデータベース27に格納される。
運転曲線作成部28は、データベース27から各省エネ走行データに対応する切替え情報を取得し、この切替え情報を用いて車両10の運転曲線を作成する。ここで、図2に示すように、実走行データは、単位時間毎(例えば、0.2秒ごと)のノッチ切替え動作を示す。また、ノッチ切替え動作は、実走時における運転士の実際のノッチ切替え動作である。従って、複数の実走行データは、完全に同一なノッチ切替え動作を示すことはほぼあり得ず、互いに異なるノッチ切替え動作を示す可能性が高い。複数の省エネ実走行データおよびそれらに対応する切替え情報も、同様に、互いに異なるノッチ切替え動作を示す可能性が高い。そこで、運転曲線作成部28は、複数の省エネ走行データについて、切替え情報に含まれる車両10の位置の平均値または時間の平均値を算出する。そして、運転曲線作成部28は、切替え情報における車両10の位置の平均値または時間の平均値を用いて運転曲線を作成する(図8参照)。切替え情報における車両10の位置の平均値は、複数の省エネ走行データにおいて特定のノッチ切替え動作を行う車両10の平均的な位置を示す。また、切替え情報における時間の平均値は、複数の省エネ走行データにおいて特定のノッチ切替え動作を行う平均的な時間を示す。従って、運転曲線作成部28は、消費エネルギーの小さい現実的な運転曲線を簡単かつ短時間に作成することができる。
このとき作成された運転曲線は、特定のノッチ切替動作において平均的な車両10の位置または時間を用いて作成されているため、第1走行区間の終点における車両10の停止位置または停止時間が到着駅または到着時刻からずれている場合がある。
運転曲線補正部29は、第1走行区間の終点における車両の停止位置を調整するために、運転曲線を補正する。運転曲線の補正は、特定のノッチ切替え動作を実行するときの車両10の位置の補正でもよい。例えば、運転曲線補正部29は、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え動作を実行する車両10の位置を補正してもよい。あるいは、運転曲線補正部29は、力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作を実行する車両10の位置を補正してもよい。運転曲線の補正については、図9を参照して後で説明する。
運転曲線送信部30は、補正後の運転曲線を車両10へ送信する。送信された運転曲線は、車両10側の運転曲線受信部12で受信され、運転曲線表示部13に表示される。
本実施形態の運転曲線作成装置20は、汎用的なパーソナルコンピュータ等で実行することを想定している。従って、データベース22、27は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージデバイスでよい。走行区間選択部23、実走行データ整列部24、実走行データ選択部25、切替え情報抽出部26、運転曲線作成部28および運転曲線補正部29は、例えば、1つまたは複数のCPU(Central Processor Unit)等で構成すればよい。
次に、運転曲線の作成動作を説明する。
図4は、第1実施形態による運転曲線作成方法の全体を示すフロー図である。まず、入力部21が、車両10から実走行データを受け取り、実走行データをデータベース22へ格納する(S10)。尚、実走行データの形式は、図3に示すように各実走行データの測定結果をまとめた形式でよい。
次に、走行区間選択部23が、データベース22に格納されている実走行データの中から、第1走行区間の複数の実走行データを選択する(S20)。選択される実走行データは、データベース22に格納されている第1走行区間の全ての実走行データであってよく、あるいは、任意期間の実走行データであってもよい。
次に、実走行データ整列部24が、第1走行区間の複数の実走行データを、車両10の消費エネルギー順に配列する。次に、実走行データ選択部25が、累積消費エネルギーの小さい順に複数の実走行データを省エネ走行データとして選択する。(S30)。省エネ走行データは、配列された第1走行区間の実走行データのうち、累積消費エネルギーの小さい順に、例えば、30%の実走行データを省エネ走行データとして選択する。勿論、配列された第1走行区間の実走行データに対して抽出される省エネ走行データの比率(抽出比率)は、30%に限定しない。省エネ走行データの抽出比率を小さくするほど、消費エネルギーの比較的小さな運転曲線を作成することができる。一方、省エネ走行データの抽出比率を大きくすると、事故発生時等における特殊なケースの影響を緩和させることができ、現実的な運転曲線が作成され得る。
尚、実走行データ整列部24は、累積消費エネルギーの順番に実走行データを整列させている。しかし、実走行データ整列部24は、実走行データを累積回生エネルギーの大きい順に整列させてもよい。この場合、累積回生エネルギーの大きな実走行データで運転曲線を作成することができる。また、実走行データ整列部24は、累積消費エネルギーと累積回生エネルギーとの差分エネルギーの順番に実走行データを配列してもよい。差分エネルギーは、例えば、累積消費エネルギーから累積回生エネルギーを引き算したエネルギーでよい。これにより、実走行データ整列部24は、車両10が実質的に消費しているエネルギーに基づいて運転曲線を作成することができる。
次に、切替え情報抽出部26が、複数の省エネ走行データのそれぞれから、特定のノッチ切替え動作を実行したときの車両10の位置または時間を含む切替え情報を抽出する(S40)。図3において、切替え情報は、例えば、力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作が実行されたときの車両10の位置または時間である。あるいは、切替え情報は、例えば、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え動作が実行されたときの車両10の位置または時間である。
図5は、切替え情報を説明するための運転曲線の概念図である。図5の運転曲線は、省エネ走行データから作成され、縦軸は、車両10の速度を示し、横軸は車両10の位置を示している。A駅が出発駅であり、B駅が到着駅である。尚、横軸は、車両10の位置に変えて、時間または時刻で示してもよい。
本実施形態において、特定のノッチ切替え動作は、力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作、並びに、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え動作である。図5のSW1は、複数の省エネ走行データにおける力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作を示している。図5のSW2は、複数の省エネ走行データにおける惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え動作を示している。特定のノッチ切替え動作以外の他のノッチ切替え動作は、図4には示されていない。従って、図5の運転曲線は、省エネ走行データを特定のノッチ切替え動作のみで表現した運転曲線である。
次に、運転曲線作成部28は、複数の省エネ走行データについて切替え情報に含まれる車両10の平均位置および平均時間を算出する(S50)。例えば、運転曲線作成部28は、複数の省エネ走行データについて、図5に示す特定のノッチ切替え動作SW1の平均位置と、特定のノッチ切替え動作SW1が実行された平均時間(平均時刻)とをそれぞれ算出する。運転曲線作成部28は、特定のノッチ切替え動作SW2の平均位置と、特定のノッチ切替え動作SW2が実行された平均時間(平均時刻)もそれぞれ算出する。また、運転曲線作成部28は、複数の省エネ走行データについて、図5に示す特定のノッチ切替え動作SW1の平均速度と、特定のノッチ切替え動作SW2の平均速度とをそれぞれ算出してもよい。平均位置は、複数の省エネ走行データについて、出発駅(A駅)からノッチ切替え動作SW1、SW2を行った位置までの距離を平均化した値でよい。平均時間は、複数の省エネ走行データについて、出発駅(A駅)からノッチ切替え動作SW1、SW2を行った時点までの時間を平均化した値であってよい。平均時間に代えて、ノッチ切替え動作SW1、SW2を実行した平均時刻を用いてもよい。以下、本実施形態では、平均時間を用いて説明を続ける。
図4を再度参照する。次に、運転曲線作成部28は、切替え情報の平均位置および平均時間を用いて車両10の運転曲線を作成する(S60)。図6を参照して、運転曲線の作成をより詳細に説明する。
図6は、ステップS60の動作を示すフロー図である。運転曲線作成部28は、まず、切替え情報の平均位置および平均時間を取得し(S61)、出発時から時系列で順番に単位時間毎に時系列データの行を生成していく。各行は、行番号、時間、車両10の位置、速度、ノッチの段数の情報を含む。
図7は、時系列データの一例を示す概念図である。尚、速度は、駅間の線形条件データ、車両特性データ、及びノッチの段数から計算可能である。線形条件データは、例えば、トンネル、勾配、カーブの始点位置や終点位置などの情報により構成され、車両特性データは、車両に関する特性データであり、例えば駅間を走行する際の抵抗、駅間を走行する際の加減速特性などの情報により構成される。
例えば、切替え情報が、車両10の出発時からノッチ切替え動作SW1の平均時間まで力行ノッチ(例えば、6段)を示しているものとする。この場合、出発時の時系列データの1行目には、力行ノッチ番号として“6”が入力される(S62)。
次に、運転曲線作成部28は、単位時間だけ時間を進めた時系列データの時間がノッチ切替え動作SW1の平均時間に達するか否かを判定する(S63)。時系列データの時間がノッチ切替え動作SW1の平均時間に達していない場合(S63のNO)、追加された行のノッチ欄には、力行ノッチ(6段)が入力される(S62)。
このように、運転曲線作成部28は、時系列データの時間がノッチ切替え動作SW1の平均時間に達するまで、時系列データに行を追加しながら、その行のノッチ欄に、力行ノッチ(6段)が入力される。尚、入力されるノッチの段数は、力行ノッチ、惰行ノッチ、ブレーキノッチのそれぞれにおいて使用頻度の最も大きなノッチの段数に対応させればよい、本実施形態では、力行ノッチは6、惰行ノッチは0、ブレーキノッチを−6とする。
そして、時系列データの時間がノッチ切替え動作SW1の平均時間に達した場合(S63のYES)、追加された行のノッチ欄には、ノッチ切替え動作SW1の切替え後の惰行ノッチ(0段)が入力される(S64)。
次に、運転曲線作成部28は、時系列データの時間がノッチ切替え動作SW2の平均時間に達するか否かを判定する(S65)。時系列データの時間がノッチ切替え動作SW2の平均時間に達していない場合(S65のNO)、追加された行のノッチの欄には、惰行ノッチ(0段)が入力される(S64)。
このように、運転曲線作成部28は、時系列データの時間がノッチ切替え動作SW2の平均時間に達するまで、時系列データに行を追加しながら、その行のノッチ欄に、惰行ノッチ(0段)が入力される。
そして、時系列データの時間がノッチ切替え動作SW2の平均時間に達した場合(S65のYES)、追加された行のノッチの欄には、ノッチ切替え動作SW2の切替え後のブレーキノッチ(−6段)が入力される(S66)。
次に、運転曲線作成部28は、時系列データの時間がB駅の到着時間に達するか否かを判定する(S67)。時系列データの時間がB駅の到着時間に達していない場合(S67のNO)、追加された行のノッチの欄には、ブレーキノッチ(−6段)が入力される(S66)。時系列データの時間がB駅の到着時間に達した場合(S67のYES)、時系列データの作成が終了する。
次に、運転曲線作成部28は、ステップS60で作成された時系列データをもとに、運転曲線を作成する(S68)。
図8は、ステップS60の時系列データをもとに作成された運転曲線を示す概念図である。この運転曲線は、切替え情報の位置平均値および速度平均値に基づいて得られた運転曲線となる。特定のノッチ切替え動作SW1、SW2の平均位置は、それぞれPavg1、Pavg2である。特定のノッチ切替え動作SW1、SW2の平均速度は、それぞれVavg1、Vavg2である。切替え情報の位置平均値および速度平均値を用いた運転曲線は、出発駅(A駅)、(Pavg1、Vavg1)、(Pavg2、Vavg2)、到着駅(B駅)を順番に直線で結ぶことで作成された運転曲線となる。
図4を再度参照する。次に、運転曲線補正部29が、第1走行区間の終点における車両の停止位置を調整するために、時系列データまたは運転曲線を補正する(S70)。運転曲線作成部28で作成された運転曲線は、複数の省エネ走行データに基づく平均的な運転曲線であり、時系列データの時間がB駅の到着時間に達したことで終了している。従って、運転曲線における車両の到着地点が正確にB駅に一致しているとは限らない。即ち、運転曲線作成部28で作成された運転曲線は、平均化されており、かつ、時間に基づいて作成されているため、運転曲線における車両の到着地点がB駅からずれている場合がある。そこで、運転曲線補正部29は、第1走行区間の終点における車両の停止位置を調整するために、運転曲線を補正する。
図9は、運転曲線の補正処理を示すフロー図である。図10は、運転曲線の補正処理の一例を示す概念図である。まず、運転曲線補正部29は、運転曲線作成部28で作成された運転曲線の走行シミュレーションを実行し、運転曲線における車両10の到着地点とB駅とのずれ(距離)を算出する(S71)。車両10の到着地点とB駅との距離は、車両10の到着地点とB駅の位置との差を計算すればよい。
次に、運転曲線補正部29は、車両10の到着地点とB駅との距離が予め設定された閾値未満か否かを判定する(S72)。車両10の到着地点とB駅との距離が、閾値未満である場合(S72のYES)、運転曲線補正部29は、運転曲線の補正をせず、運転曲線を運転曲線送信部30へ送信する(S73)。
一方、車両10の到着地点とB駅との距離が、閾値以上である場合(S72のNO)、運転曲線補正部29は、時系列データまたは運転曲線の補正を行う(S74)。
図10に示すように、この例において、運転曲線補正部29は、ノッチ切替え動作SW2の平均位置Pavg2を用いて運転曲線を補正する。平均位置Pavg2は、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え動作を実行する車両10の位置である。平均位置Pavg2をA駅へ近付く方向D1へずらすことで、車両10の停止位置をD1方向へ移動させることができる。より詳細には、運転曲線補正部29は、時系列データにおいて、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え動作のタイミングを早める。これにより、運転曲線における平均位置Pavg2をD1方向へずらすことができる。平均位置Pavg2がD1方向へずれると、車両10の停止位置もD1方向へずれる。
逆に、車両10の停止位置は、平均位置Pavg2をA駅から離れる方向D2へずらすことで、D2方向へ移動させることができる。より詳細には、運転曲線補正部29は、時系列データにおいて、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え動作のタイミングを遅くする。これにより、運転曲線における平均位置Pavg2をD2方向へずらすことができる。平均位置Pavg2がD2方向へずれると、車両10の停止位置もD2方向へずれる。
切替え動作SW2のタイミングをずらす量(補正量)は、例えば、実走行データの単位時間であってもよく、あるいは、単位時間のn倍(nは任意数)であってもよい。
このように、運転曲線補正部29は、ノッチ切替え動作SW2を実行する車両10の位置Pavg2または時間(ノッチ切替え動作SW2のタイミング)を調節することによって、車両10の停止位置をB駅に近づけることができる。
図9を再度参照する。時系列データまたは運転曲線の補正によって、車両10の停止位置とB駅との距離が増大する場合がある。このような場合、運転曲線補正部29は、車両10の停止位置とB駅との距離が減少するように補正の方向を逆にする必要がある。例えば、運転曲線補正部29は、車両10の停止位置とB駅との距離を比較する(S75)。補正後の車両10の停止位置とB駅との距離が補正前のそれよりも大きい場合(S75のYES)、運転曲線補正部29は、切替え動作SW2のタイミングをずらす方向を逆方向にする(S76)。即ち、当初、切替え動作SW2のタイミングがD1方向にずらされている場合、運転曲線補正部29は、次の補正では、D2方向へずらせばよい。逆に、当初、切替え動作SW2のタイミングがD2方向にずらされている場合、運転曲線補正部29は、次の補正では、D1方向へずらせばよい。その後、運転曲線補正部29は、ステップS71〜S74を再度実行する。これにより、確実に車両10の停止位置をB駅に近づけることができる。
運転曲線補正部29は、運転曲線の補正後、ステップS71、S72を再度実行する。依然として、車両10の停止位置とB駅との距離が閾値以上の場合(S72のNO)、運転曲線補正部29は、ステップS74の補正を繰り返し実行する。このように、運転曲線補正部29は、車両10の停止位置とB駅との距離が閾値未満になるまで、ステップS74の補正を繰り返す。ステップS74の補正を実行するごとに、切替え動作SW2のタイミングが単位時間あるいは単位時間のn倍ずつずれていく。そして、ステップS73において、車両10の到着地点とB駅との距離が閾値未満になると、運転曲線補正部29は、補正後の運転曲線を運転曲線送信部30へ送信する。
図4を再度参照する。運転曲線送信部30は、補正後の運転曲線を車両10の運転曲線受信部12へ送信する(S80)。車両10では、運転曲線表示部13が補正後の運転曲線を表示する。
本実施形態による運転曲線作成装置20は、車両10が実走したときに得られる実走行データのうち、消費エネルギーを考慮した省エネ走行データを選択し、省エネ走行データの運転の特徴となるノッチ切替え動作の情報に基づいて運転曲線を作成する。これにより、実走行データに基づいた現実的な省エネ運転曲線を作成することができる。また、省エネ走行データ全体を用いずに、運転の特徴となる切替え情報を抽出し、その切替え情報を用いて運転曲線を作成している。これにより、運転曲線作成装置20は、現実的な省エネ運転曲線を、簡単かつ短時間に、ヒューリスティックに作成することができる。
熟練運転士の実走行データを用いて運転曲線を作成すれば、熟練運転士の運転に類似した運転曲線を簡単に作成することができる。また、開発設計者の専門知識を必要とせず、簡単かつ短時間に運転曲線を作成することができる。
また、運転曲線作成装置20は、複数の省エネ走行データについて車両10の位置の平均値または時間の平均値を用いて運転曲線を作成している。従って、事故発生時等の特殊なケースによる実走行データのみに基づいて、特殊な運転曲線が作成されることを抑制することができる。
また、運転曲線作成装置20は、第1走行区間の終点における車両10の停止位置を調整するために、特定のノッチ切替え動作を実行する車両10の位置およびタイミングを補正する。これにより、補正後の運転曲線に従って車両10を走行させたときに、車両10は、到着駅に定刻通りに到着することができる。
(変形例)
第1実施形態では、実走行データ選択部25は、実走行データの中から消費エネルギーを考慮して省エネ走行データを選択している(図4のS30)。本変形例では、実走行データ選択部25は、消費エネルギーだけでなく、他のパラメータもさらに考慮して省エネ走行データを選択する。例えば、パラメータは、第1走行区間を車両10が走行する時間、第1走行区間での車両10の重量(あるいは乗客率)、第1走行区間を車両が走行したときの回生エネルギー等でよい。実走行データ選択部25は、第1走行区間の複数の実走行データを、上記パラメータでフィルタリングした後に、車両10の消費エネルギーに基づいて複数の省エネ走行データを選択する。
第1実施形態では、実走行データ選択部25は、実走行データの中から消費エネルギーを考慮して省エネ走行データを選択している(図4のS30)。本変形例では、実走行データ選択部25は、消費エネルギーだけでなく、他のパラメータもさらに考慮して省エネ走行データを選択する。例えば、パラメータは、第1走行区間を車両10が走行する時間、第1走行区間での車両10の重量(あるいは乗客率)、第1走行区間を車両が走行したときの回生エネルギー等でよい。実走行データ選択部25は、第1走行区間の複数の実走行データを、上記パラメータでフィルタリングした後に、車両10の消費エネルギーに基づいて複数の省エネ走行データを選択する。
例えば、実走行データ選択部25は、第1走行区間の走行時間が所定の範囲内にある実走行データを抽出し、抽出された実走行データから省エネ走行データを選択してもよい。これにより、実走行データ選択部25は、事故発生等によって遅延が発生したような特殊なケースの実走行データを、省エネ走行データから除くことができる。
例えば、実走行データ選択部25は、車両10の重量(あるいは乗客率)が所定の範囲内にある実走行データを抽出し、抽出された実走行データから省エネ走行データを選択してもよい。第1走行区間を実走したときに、車両10の重量(あるいは乗客率)は、消費エネルギーを変化させる。従って、実走行データ選択部25は、車両10の重量(あるいは乗客率)が所定の範囲内にある実走行データを、省エネ走行データとして選択可能にする。これにより、車両10の重量(あるいは乗客率)による影響を抑制することができる。
例えば、実走行データ選択部25は、車両10の走行時刻が所定の範囲内にある実走行データを抽出し、抽出された実走行データから省エネ走行データを選択してもよい。これにより、実走行データ選択部25は、ラッシュ時または閑散時等のような特殊なケースの実走行データを、省エネ走行データから除くことができる。あるいは、実走行データ選択部25は、ラッシュ時または閑散時等のような特殊なケースのみの実走行データを、省エネ走行データに含めることができる。
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態による運転曲線の補正処理の一例を示す概念図である。第2実施形態では、運転曲線補正部29は、ノッチ切替え動作SW1の平均位置Pavg1を用いて運転曲線を補正する。平均位置Pavg1は、力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作を実行する車両10の位置である。平均位置Pavg1をA駅へ近付く方向D1へずらすことで、車両10の停止位置をD1方向へ移動させることができる。より詳細には、運転曲線補正部29は、時系列データにおいて、力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作のタイミングを早める。これにより、運転曲線における平均位置Pavg1をD1方向へずらすことができる。平均位置Pavg1がD1方向へずれると、車両10の停止位置もD1方向へずれる。
図11は、第2実施形態による運転曲線の補正処理の一例を示す概念図である。第2実施形態では、運転曲線補正部29は、ノッチ切替え動作SW1の平均位置Pavg1を用いて運転曲線を補正する。平均位置Pavg1は、力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作を実行する車両10の位置である。平均位置Pavg1をA駅へ近付く方向D1へずらすことで、車両10の停止位置をD1方向へ移動させることができる。より詳細には、運転曲線補正部29は、時系列データにおいて、力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作のタイミングを早める。これにより、運転曲線における平均位置Pavg1をD1方向へずらすことができる。平均位置Pavg1がD1方向へずれると、車両10の停止位置もD1方向へずれる。
逆に、平均位置Pavg1をA駅から離れる方向D2へずらすことで、車両10の停止位置をD2方向へ移動させることができる。より詳細には、運転曲線補正部29は、時系列データにおいて、力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作のタイミングを遅くする。これにより、運転曲線における平均位置Pavg1をD2方向へずらすことができる。平均位置Pavg1がD2方向へずれると、車両10の停止位置もD2方向へずれる。
このように、第2実施形態による運転曲線作成装置20は、ノッチ切替え動作SW1の平均位置Pavg1をずらすことで運転曲線を補正している。第2実施形態は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態による運転曲線の補正処理の一例を示す概念図である。第3実施形態では、運転曲線補正部29は、ノッチ切替え動作SW2から運転曲線の終点までのノッチをビーム探索により求める。ビーム探索は、採用可能な全ての組み合わせを試行する手法である。運転曲線補正部29は、第1走行区間の終点における車両10の停止位置を調整するために、惰行ノッチからブレーキノッチへのノッチ切替え動作SW2後におけるノッチ段数の任意の組み合わせを試行する。即ち、運転曲線補正部29は、ノッチ切替え動作SW2から運転曲線の終点までの間に採用可能な全てのノッチ段数の組み合わせを試行する。そして、運転曲線補正部29は、運転曲線の終点がB駅に最も近いノッチの組み合わせを選択する。例えば、図12の白丸は、ノッチ段数を示す。図12のSTは、運転曲線の終点がB駅に最も近いノッチ段数の組み合わせを示している。
図12は、第3実施形態による運転曲線の補正処理の一例を示す概念図である。第3実施形態では、運転曲線補正部29は、ノッチ切替え動作SW2から運転曲線の終点までのノッチをビーム探索により求める。ビーム探索は、採用可能な全ての組み合わせを試行する手法である。運転曲線補正部29は、第1走行区間の終点における車両10の停止位置を調整するために、惰行ノッチからブレーキノッチへのノッチ切替え動作SW2後におけるノッチ段数の任意の組み合わせを試行する。即ち、運転曲線補正部29は、ノッチ切替え動作SW2から運転曲線の終点までの間に採用可能な全てのノッチ段数の組み合わせを試行する。そして、運転曲線補正部29は、運転曲線の終点がB駅に最も近いノッチの組み合わせを選択する。例えば、図12の白丸は、ノッチ段数を示す。図12のSTは、運転曲線の終点がB駅に最も近いノッチ段数の組み合わせを示している。
このように、第3実施形態による運転曲線作成装置20は、ノッチ切替え動作SW1の平均位置Pavg1をずらすことで運転曲線を補正してもよい。第3実施形態も、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態による運転曲線の補正処理の一例を示す概念図である。第4実施形態では、運転曲線補正部29は、実走行データから得たノッチ操作を用いて運転曲線の一部を置換することによって運転曲線を補正する。
図13は、第4実施形態による運転曲線の補正処理の一例を示す概念図である。第4実施形態では、運転曲線補正部29は、実走行データから得たノッチ操作を用いて運転曲線の一部を置換することによって運転曲線を補正する。
例えば、図13では、ノッチ切替え動作SW2の時点から運転曲線の終点まで、熟練運転士のノッチ操作で置換する。熟練運転士のノッチ操作は、L1で示されている。これにより、最も熟練を必要とする停止制御において、開発設計者の専門的知識を必要とせず、運転曲線の作成に要する手間が省ける。また、熟練運転手のノッチ操作を用いるので、現実的な運転曲線になる。第4実施形態も、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第5実施形態)
第5実施形態では、運転曲線補正部29は、第1走行区間の終点における車両10の停止位置を調整するために、ノッチ切替え動作SW2後のブレーキノッチを、実走行データのブレーキノッチの平均値で補正する。このために、データベース27に格納される切替え情報は、ノッチ切替え動作SW1、SW2の位置の平均値または時間の平均値の他に、ノッチ切替え動作SW2後のブレーキノッチ情報を含む。ブレーキノッチ情報は、ノッチ切替え動作SW2後に、ブレーキノッチで走行している間の実走行データである。従って、ブレーキノッチ情報は、ノッチ切替え動作SW2後のノッチの段数、位置、時間、消費エネルギー等の情報を、単位時間毎に有する。
第5実施形態では、運転曲線補正部29は、第1走行区間の終点における車両10の停止位置を調整するために、ノッチ切替え動作SW2後のブレーキノッチを、実走行データのブレーキノッチの平均値で補正する。このために、データベース27に格納される切替え情報は、ノッチ切替え動作SW1、SW2の位置の平均値または時間の平均値の他に、ノッチ切替え動作SW2後のブレーキノッチ情報を含む。ブレーキノッチ情報は、ノッチ切替え動作SW2後に、ブレーキノッチで走行している間の実走行データである。従って、ブレーキノッチ情報は、ノッチ切替え動作SW2後のノッチの段数、位置、時間、消費エネルギー等の情報を、単位時間毎に有する。
第5実施形態による運転曲線作成装置20は、このブレーキノッチ情報を用いて、ノッチ切替え動作SW2後の運転曲線を作成する。例えば、実走行データ整列部24は、図4のステップS30と同様に、ノッチ切替え動作SW2後の複数のブレーキノッチ情報を、車両10の累積消費エネルギー順に配列する。実走行データ選択部25が、累積消費エネルギーの小さい順に複数のブレーキノッチ情報を省エネ走行データとして選択する。
次に、ステップS40の切替え情報の抽出を実行することなく、運転曲線作成部28は、複数の省エネ走行データについて、単位時間毎にノッチの平均値を算出する。このとき、各省エネ走行データは、実走行データの一部であるので、単位時間毎に、ノッチの段数、位置、時間、消費エネルギー等の情報を有する。従って、運転曲線作成部28は、ノッチ切替え動作SW2後の複数の省エネ走行データについて、単位時間毎に、ノッチの平均値を算出することができる。
複数の省エネ走行データのノッチの平均値は、整数でなく連続値となる可能性がある。従って、運転曲線作成部28は、ノッチの平均値を四捨五入、小数以下切り上げ、あるいは、小数以下切り捨てをすることにより近似化し、ノッチの平均値を整数化(離散化)する。運転曲線補正部29は、整数化されたノッチの平均値を用いて、ノッチ切替え動作SW2後の運転曲線の部分を置換する。これのように、運転曲線補正部29は、運転曲線を補正する。
熟練運転士の実走行データを用いて運転曲線を補正すれば、熟練運転士に類似したブレーキノッチ操作を、ノッチ切替え動作SW2後の運転曲線に組み込むことができる。その結果、運転曲線の終端部分を、熟練運転士のブレーキ操作に類似した運転曲線にすることができ、乗り心地等を考慮した優れた省エネ運転曲線にすることができる。
また、第5実施形態によれば、ノッチ切替え動作SW2後の運転曲線のみが補正されるので、車両10の実走行の特徴を考慮した運転曲線を短時間で作成することができる。
上記実施形態および変形例において、特定のノッチ切替動作としてSW1およびSW2の2つが抽出されている。しかし、特定のノッチ切替動作は、1であってもよく、あるいは、3つ以上であってもよい。抽出条件の設定によって、特定のノッチ切替動作は、より詳細に設定することができる。
以上の実施形態による運転曲線作成装置20における運転曲線作成方法の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、データ処理方法の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、運転曲線作成方法の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10 車両、20 運転曲線作成装置、21 入力部、22、27 データベース、23 走行区間選択部、24 実走行データ整列部、25 実走行データ選択部、26 切替え情報抽出部、28 運転曲線作成部、29 運転曲線補正部、30 運転曲線送信部
Claims (9)
- 鉄道車両が走行したときに単位時間毎に得られる該車両の位置、該車両のノッチの段数および該車両の消費エネルギーの情報を含む実走行データを受け取る入力部と、
前記実走行データを格納する記憶部と、
前記実走行データの中から第1走行区間の複数の実走行データを抽出後、該第1走行区間の複数の実走行データから前記車両の消費エネルギーまたは回生エネルギーに基づいて複数の省エネ走行データを選択する選択部と、
前記複数の省エネ実走行データから特定のノッチ切替え動作を実行したときの前記車両の位置または時間を含む切替え情報を抽出後、該切替え情報を用いて前記車両の運転曲線を作成する作成部と、
前記第1走行区間の終点における前記車両の停止位置または停止時間を調整するために、前記運転曲線を補正する補正部とを備えた運転曲線作成装置。 - 前記作成部は、前記複数の省エネ走行データについて前記切替え情報の前記車両の位置の平均値または時間の平均値を算出し、前記車両の位置の平均値または時間の平均値を用いて前記運転曲線を作成する、請求項1に記載の運転曲線作成装置。
- 前記選択部は、前記第1走行区間の複数の実走行データを、前記第1走行区間を前記車両が走行する時間、前記第1走行区間での前記車両の重量、または、前記車両の走行時刻に基づいてフィルタリングした後に、前記車両の消費エネルギーに基づいて複数の省エネ走行データを選択する、請求項1または請求項2に記載の運転曲線作成装置。
- 前記特定のノッチ切替え動作は、前記車両の力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作、および、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え動作である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の運転曲線作成装置。
- 前記補正部は、前記第1走行区間の終点における前記車両の停止位置を調整するために、前記特定のノッチ切替え動作を実行する前記車両の位置または時間を補正する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の運転曲線作成装置。
- 前記補正部は、前記第1走行区間の終点における前記車両の停止位置を調整するために、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え動作を実行する前記車両の位置または時間を補正する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の運転曲線作成装置。
- 前記補正部は、前記第1走行区間の終点における前記車両の停止位置を調整するために、力行ノッチから惰行ノッチへの切替え動作を実行する前記車両の位置または時間を補正する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の運転曲線作成装置。
- 前記補正部は、前記第1走行区間の終点における前記車両の停止位置を調整するために、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え後の前記車両のノッチの段数の任意の組み合わせを試行する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の運転曲線作成装置。
- 前記補正部は、前記第1走行区間の終点における前記車両の停止位置を調整するために、惰行ノッチからブレーキノッチへの切替え後のブレーキノッチを、前記実走行データのブレーキノッチの平均値で補正する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の運転曲線作成装置。
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-
2018
- 2018-08-23 JP JP2018156631A patent/JP2020029211A/ja active Pending
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