JP6656694B2 - イルメナイト鉱からの酸化チタンの回収方法 - Google Patents

イルメナイト鉱からの酸化チタンの回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、イルメナイト鉱からの酸化チタンの回収方法に関するものである。
金属チタンは、鉄と比べて比重が約60%と軽量でありながら、比強度が2倍程度高く、しかも耐食性に優れることから、化学プラントや、火力発電所、海上構造物等の設備材や建築材料として、また、自動車、航空機等の材料として利用されている。さらに、金属チタンは、金属アレルギーを発症させにくく、しかも体内に蓄積して毒性を示すことがないため、人工歯根(インプラント)や、人工骨、人工関節等の医療用の材料や機器にも用いられている。
また、チタンの酸化物の一つである二酸化チタンTiOは、顔料や化粧品の原料として用いられたり、光酸化作用の高さから光触媒として利用されてもいる。
このように、金属チタンやチタンの酸化物は、多様な産業分野で利用されているが、近年、自動車産業や航空機産業等の分野において、機体重量の軽量化による燃費向上が期待できるとして、金属チタンの需要が特に急増している。
現在の金属チタン製造用の原料としては、資源の豊富さや価格の観点からチタン鉱石の一つであるイルメナイト鉱が用いられている。イルメナイト鉱は、組成式FeTiOあるいはFeTiOで表わされる、鉄とチタンを主成分とする酸化鉱であり、チタン品位が35.0〜65.0mass%程度である。このような低品位の鉱石から多数の工程からなるプロセスを経て金属チタンを製造している。
現在、商業的に生産される金属チタンの多くは、イルメナイト鉱をアップグレードして得られる純度90〜95%程度の品位の粗酸化チタンをコークスとともに流動床塩化炉に投じて塩素化した後、蒸留精製して得た純四塩化チタンTiClをMg還元するクロール法により製造されている。
しかしながら、クロール法では、TiClの還元反応が非常に大きな発熱反応であることから、反応容器の温度制御が困難であり、しかも反応後の冷却工程にも数日間を要し、還元プロセスの反応速度が低速で時間がかかるという欠点があった。また、TiClの還元工程はバッチ式プロセスであるため生産性が低く、金属チタンを連続的に得ることができない。これらの理由から、チタンは、資源的には豊富な元素であるにもかかわらず、金属チタンの大量生産は依然として容易ではなく、潜在的需要を満たすことができていなかった。このため、大量生産可能な金属チタンの新たな取得方法の開発が強く望まれている。
このような要請に対して、近年、金属チタンの新しい生産プロセスとして、Ca熱還元や電解還元によるTiOから金属チタンへの直接還元法が提案されている。直接還元法では、反応が比較的高速であり、かつ連続プロセスを構築することが可能である。
しかしながら、直接還元法によって工業用途に使用可能な金属チタンを得るためには、還元前の状態において品位99.0mass%以上の極めて高純度のTiOを原料とする必要がある。このような高純度のTiOを工業的に大量に用意することは現状において容易ではない。
現在、高純度の酸化チタンを製造する方法としては、例えば、塩素法と硫酸法による方法が存在する(非特許文献1参照)。
塩素法は、前記のクロール法とよく似た方法で、イルメナイト鉱をアップグレードして製造された純度90.0〜99.0mass%程度の酸化チタンにコークスを添加して、塩素化炉内において塩素ガスと950℃で反応させて、TiClを生成し、副生成物として生成した塩化鉄などの不純物を除去し、高純度のTiClを酸化させることで高純度のTiOを取得する方法である。
硫酸法は、イルメナイト鉱を濃硫酸に加熱溶解して、生成したFeSOを除去し、残液中に液体として存在するTiOSOを加水分解し、チタンを水酸化物TiO(OH)として回収した後、焼成酸化して高純度のTiOを取得する方法である。
しかしながら、塩素法では、不純物の除去のために塩素が消費され、しかも、廃棄物量の増大や塩化炉における流動不良、生成した塩化物による配管閉塞等が引き起こされることが問題とされている。
また、硫酸法では、湿式プロセスであるため、環境負荷が大きく有害な硫酸廃液が生じることが問題とされている。
このように、現状では高純度のTiOを得るための適切かつ良好なプロセスが存在しているとは言い難い問題があった。
T.S. Mackey, "Upgrading ilmenite into a high-grade synthetic rutile," JOM, 46 (1994), 59-64.
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、簡便かつ低コストに、より高純度の酸化チタンをイルメナイト鉱から効率的に回収可能とする新規な方法を提供することを課題としている。
本発明者らは、前記課題に対応するための検討を鋭意進めたところ、従来のイルメナイト鉱のアップグレード法に使用する装置構成を大幅に変更せず、アップグレード工程における還元処理や酸処理の条件を見直すことにより、水素雰囲気下、塩酸水溶液中に可溶性のチタンイオンであるTi3+を溶出させ、これを溶液中で酸化させることで品位99.0mass%以上の純酸化チタンTiOが得られるという新しい知見を得た。本発明は、このような知見に基づいて完成されている。
本発明は、少なくとも以下の工程を含むことを特徴とするイルメナイト鉱からの酸化チタンの回収方法を提供する。
<1>イルメナイト鉱に、炭素または炭化チタンのうち少なくともいずれか一方を含む還元剤を添加して還元する工程;
<2>得られた還元生成物を水素雰囲気下で塩酸を用いて酸浸出してTi3+を含有する浸出液を得る工程;
<3>得られた浸出液に空気酸化処理することによって酸化チタンを析出させる工程。
前記工程<3>においては、浸出液のpHが2.0以下であることや、空気酸化前における浸出液中の2価の鉄イオン濃度CFeと3価のチタンイオン濃度CTiの比率CFe/CTiの値が10.0以下であることが好ましく考慮される。
本発明のイルメナイト鉱からの酸化チタンの回収方法によれば、簡便かつ低コストに、より高純度の酸化チタンをイルメナイト鉱から効率的に回収可能とすることができる。
本発明のイルメナイト鉱からの金属チタン製造用酸化チタンの回収手順を示したフローチャートである。 本発明の工程<1>におけるイルメナイト鉱の還元反応に用いる実験例としての電気炉の模式図である。 本発明の工程<2>における水素雰囲気下でのチタン酸化物の実験例としての浸出装置の模式図である。 水環境にあるチタンと鉄の酸化還元電位−pHの関係を示した状態図である。実線は、Ti−HO系図を示しており、破線は、Fe−HO系図を示している。 本発明の工程<3>における浸出液の実験例としての空気酸化装置の模式図である。 本発明のイルメナイト鉱からの金属チタン製造用酸化チタンの回収手順において、工程<2>の前に磁選工程を追加した場合の手順を示したフローチャートである。 水素雰囲気下、75℃における浸出液の塩酸濃度と浸出液中のチタン酸化物の濃度の関係を示したグラフである。 本発明の工程<3>における浸出液を酸化して得られたTiOの純度と、浸出液中に溶存するFe2+(aq)とTi3+(aq)の濃度の比CFe/CTiとの関係を示したグラフである。 還元されたイルメナイト鉱の浸出後に得られた残渣のXRDパターンを示した図である。
以下に本発明のイルメナイト鉱からの金属チタン製造用酸化チタンの回収方法を詳細に説明する。
本発明のイルメナイト鉱からの金属チタン製造用酸化チタンの回収方法は、図1のフローチャートに例示したように、少なくとも以下の工程を含むことを特徴とする。
<1>イルメナイト鉱に還元剤を添加して還元する工程;
<2>得られた還元生成物を酸浸出してTi3+を含有する浸出液を得る工程;
<3>得られた浸出液に空気酸化処理することによって酸化チタンを析出させる工程。
背景技術において述べたとおり、イルメナイト鉱は、チタン鉄鉱の一種であり、その一般式はFeTiOあるいはFeTiOと表わされる。これまでのイルメナイト鉱の酸化・還元に関する研究の結果から、イルメナイト鉱の還元に用いる還元剤の種類や、還元条件によって3価のチタン酸化物であるTiの他に、炭化チタンTiCや五酸化三チタンTi等が還元生成物として生成されることが知られている。これらの還元生成物の中で、TiCは、酸溶解が困難なチタン化合物であることが知られている。一方、Tiは、可溶性の酸化チタンの一つではあるものの、Tiと比較して溶解度が低いことが知られている。すなわち、イルメナイト鉱の還元処理によって得られる還元生成物の中で、3価のチタン酸化物であるTiの溶解度が最も高い。そこで、イルメナイト鉱の還元条件として、生成される還元生成物の大部分がTiとなる条件が検討されている。
このような観点からも、本発明の工程<1>では、イルメナイト鉱の還元により、還元生成物としてTiを得るようにする。
本発明の原料に用いるイルメナイト鉱としては、例えば、含有されるチタン化合物の一部あるいは大部分が二酸化チタンTiOであるイルメナイト鉱またはイルメナイト鉱が風化などによって微細な粉末となったものなどが用いられる。
本発明においては、イルメナイト鉱を粉砕、磨砕して得られるイルメナイト鉱粉末と還元剤とを混合して加熱することによって、酸化還元反応が進行し、イルメナイト鉱粉末の還元が促進する。その際、反応系内におけるイルメナイト鉱粉末の表面積が大きいほど、還元剤と接触する確率が高まるため、酸化還元反応の反応効率が向上する。このようにイルメナイト鉱粉末の表面積を増大させる上で、粒子径を小さくすることが有効であることから、イルメナイト鉱はあらかじめ粉砕されて用いられることが好ましい。粉砕の方法としては、例えば、遊星ボールミルや攪拌ビーズミルなどの公知の粉砕方法を適用可能である。イルメナイト鉱粉末の平均径は、特に限定されるものではないが、例えば、150μm未満のものが例示される。原料に用いるイルメナイト鉱が風化などによって既に微細な粒子となっている場合、必ずしも粉砕処理は必要ではない。なお、イルメナイト鉱粉末の平均径については、例えば、顕微鏡下で観察して粒子径を測定したり、所定の孔径の貫通孔を有するスクリーンを通過させて選別すること等が例示される。
表1には、実施例での実験において原料として用いたイルメナイト鉱の化学組成を例示している。
例えば、この表1に示すように、イルメナイト鉱には、二酸化チタンTiOが63.3mass%、酸化鉄(III)Feが30.8mass%含まれている。また、TiOおよびFe以外の微量成分としてアルミニウム、ケイ素、マンガンが検出され、それらの濃度は酸化物換算で、それぞれ2.6mass%、1.9mass%、1.4mass%程度である。これは代表例の一つであるが、一般的には、イルメナイト鉱の組成としては、TiOを40.0mass%〜70.0mass%、Feを30.0mass%〜60.0mass%程度含有することが考慮される。
なお、イルメナイト鉱の化学組成は、例えば、エネルギー分散型X線元素分析装置を装着した走査型電子顕微鏡装置(SEM−EDS装置)等を用いて分析することが例示される。
本発明においては、イルメナイト鉱に対して、還元剤として炭素材または炭化チタンTiCのうち少なくともいずれか一方を用いることが好ましい。すなわち、本発明においては、イルメナイト鉱中のチタン酸化物を炭素還元することが好ましい。
チタン酸化物の炭素還元では、副生成物としてCOもしくはCOが生成する。また、炭素共存下、温度1000℃以上では、副生成物の大部分がCOとなることが知られている。このため、イルメナイト鉱に含まれるFeおよびTiOの炭素還元は、下記の反応式(1)(2)に示される反応にしたがって進行する。なお、反応式中、(s)は固体、(l)は液体、(g)は気体の状態をそれぞれ表している。
炭素材としては、例えば、黒鉛やカーボンブラック、活性炭、木炭、コークス等が例示される。これらの炭素材は、単独または2種類以上を併用することができる。
また、これらの炭素材は、イルメナイト鉱の還元反応を促進する限りにおいて、特に制限されることなく用いられるが、粒子径が小さい方がイルメナイト鉱と接触する確率が高まり、還元反応を促進するため、より好ましく考慮される。
また、本発明においては、好ましい還元剤の一つは炭化チタンTiCである。炭化チタンTiCとしては、例えば、市販の炭化チタン粉末、切削工具のスクラップ、本発明のプロセスで生じる副産物としてのTiCなどが例示される。特に、本発明のプロセスで生じる副産物としてのTiCを再利用することにより、チタンの損失を防止することができるため好ましく考慮される。
さらにまた、本発明においては、例えば、金属チタン加工時に生成する金属チタン粉末や酸素汚染されたチタン材も還元剤として利用することが例示される。
さらに、本発明においては、還元剤として、上記の炭素材と炭化チタンを併用することも好ましく考慮される。
上記還元剤の添加量としては、例えば、イルメナイト鉱の質量の0.05〜0.3倍の範囲が例示される。還元剤の添加量がイルメナイト鉱の質量の0.3倍を超えると、イルメナイト鉱中のTiOが炭化チタンTiCに変化してTiが生成されなくなり、還元剤の添加量がイルメナイト鉱の質量の0.05倍未満の場合、イルメナイト鉱中のFeの還元が不十分となる。
イルメナイト鉱の還元の際には、イルメナイト鉱と前記還元剤をるつぼに入れて、加熱炉の中で所定の温度まで加熱し、かつ所定の温度において温度保持する。イルメナイト鉱と還元剤は、粉末状態で単に混合したものであってもよいし、ペレット状に加圧成形したものを用いてもよい。
るつぼとしては、本発明の工程<1>における加熱温度の範囲内において、所望の耐食性、耐熱性を発揮する限り特に制限されないが、例えば、黒鉛るつぼや酸化マグネシウムるつぼ等が例示される。これらのるつぼは、多くの工業プロセスで使用されており、入手が容易であることから好適に用いることができる。また、黒鉛るつぼでは、還元剤である黒鉛がるつぼからも供給されるため特に好ましく用いることができる。一方、黒鉛供給量を厳密に制御したい場合には、黒鉛るつぼの代わりに酸化マグネシウムるつぼを使用することが好ましく考慮される。
加熱炉としては、従来公知の加熱装置を用いることができるが、安全上の観点から電気炉を用いることが好ましい。電気炉としては、公知の機器を適用することが可能であるが、例えば、実験的には図2に模式図を示したような縦型管状電気炉の使用が好ましく考慮される。
イルメナイト鉱の還元は、酸素を含有しない雰囲気下、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下でおこなうことが好ましく例示される。例えば、図2に例示した縦型管状電気炉においては、炉底より一定量の不活性ガスを炉内に供給している。
イルメナイト鉱の還元時の温度としては、例えば1000℃以上1800℃以下の範囲が好ましく例示される。還元時の温度が上記範囲内にあれば、還元反応の副生物としてCOが生じ、イルメナイト鉱中のFeおよびTiOをほぼ全量還元することができる。
上記温度の保持時間としては、例えば、1時間以上6時間以下の範囲が例示される。
また、還元反応後、加熱炉から取り出したるつぼは、加熱時と同様に、不活性ガス中に放置して室温まで冷却することが好ましい。
このような工程<1>を経ることによって、イルメナイト鉱中のFeは金属鉄Feに還元され、TiOはTiに還元される。また、還元反応の副生物としてCOが発生する。
次いで、本発明の工程<2>においては、工程<1>で得られた還元生成物を酸浸出して、Ti3+を含有する浸出液を得る。
従来よりアップグレード法として行われてきた、イルメナイト鉱由来のTiOから不純物である酸化鉄等を酸水溶液やアルカリ水溶液を用いて選択的に浸出除去する方法では、TiO相に固溶した不純物成分や、TiO相に表面を覆われた不純物成分等を除去することが困難であるため、TiOの高純度化に限界があることが知られている。例えば、塩化アンモニウム水溶液を用いて鉄を選択的に浸出除去するビーチャー法では、TiOの純度は92mass%程度、塩酸水溶液を用いて鉄を選択的に浸出除去するベニライト法では、TiOの純度は95mass%程度であり、硫酸水溶液を用いて鉄を選択的に浸出除去する石原法では、純度96mass%程度である。すなわち、いずれの方法においても、直接還元法によるTiOの金属チタンの製造に要求されている99.0mass%以上の純度まではアップグレードすることができなかった。
一方、本発明の工程<2>においては、図3に実験的な装置構成を例示したように、水素雰囲気下で酸浸出することが好ましく考慮される。すなわち、本発明の工程<2>は還元条件下でおこなわれることが望ましい。
図4に示したようにTi−HO系には、3価および4価のチタンイオンおよびチタン酸化物が存在している。4価のチタンイオンであるTiO2+は、pH=−1.0近傍で安定的に存在することができ、4価のチタン酸化物であるTiO・HO(s)は濃硫酸などの強力な酸溶液中にのみ溶解する。
一方、3価のチタンイオンであるTi3+は、pH=0.0近傍において安定的に存在することができる。また、3価のチタンイオンであるTi3+は、pH=0.0の酸溶液中に完全に可溶化していることから、塩酸等の比較的マイルドな酸水溶液を用いても溶解させることが可能である。
上記のようなpH=−1.0〜0.0の範囲を維持しつつ、長時間にわたる酸浸出を行うためには、還元雰囲気下、より好ましくは水素雰囲気下で酸浸出することが考慮される。
本発明の工程<2>での浸出液としては、塩酸水溶液を用いることが好ましく考慮される。また、塩酸水溶液のpHとしては、pH2.0以下の範囲であることが好ましい。塩酸水溶液のpHが2.0を超えると、イルメナイト鉱からの酸化チタンの浸出速度が低下し酸化チタンの生産コストが上昇するおそれがある。
また、塩酸水溶液の濃度としては、例えば、1.0mol L−1以上13.0mol L−1以下の範囲が例示される。浸出液として、高濃度の塩酸水溶液を用いれば、浸出液中に溶出するチタン酸化物の濃度を上昇させることができる。
また、本発明の工程<2>においては、酸浸出時に酸水溶液を加温することが好ましく考慮される。酸水溶液の温度としては、例えば、室温から80℃以下の範囲が例示される。酸水溶液として塩酸水溶液を用いる場合、80℃を超えて加熱すると、塩酸水溶液中から塩化水素が揮発してしまい、pHの上昇による酸化チタンの浸出速度の低下が起こるおそれがある。なお、酸水溶液の加温には、電熱ヒーターやホットプレート等の裸火を用いない加熱装置を使用することが好ましく考慮される。
さらに、本発明の工程<2>においては、酸水溶液と還元されたイルメナイト鉱粉末との混合物を攪拌しながら浸出することも好ましく考慮される。攪拌には、マグネチックスターラー等、周知の攪拌装置を使用することが可能である。
酸水溶液の浸出時間としては、例えば、6時間以上48時間以下の範囲が例示される。
このような工程<2>を経ることにより、還元生成物の金属鉄、Tiは、それぞれ2価の鉄イオンFe2+、3価のチタンイオンTi3+として浸出液中に完全に溶解した状態を作りだすことができる。そして、浸出液を濾過することにより、不溶性微量成分を濾別することができ、濾過後の浸出液中に2価の鉄イオンFe2+、3価のチタンイオンTi3+および可溶性微量成分を回収することが可能である。
次いで、本発明の工程<3>においては、前記工程<2>において得られた浸出液に対し空気酸化処理することによって酸化チタンを析出させる。
空気酸化処理は、図5に実験的な装置構成を例示したように、可溶性のチタンイオンTi3+を含有する浸出液に空気を吹き込んで酸化する処理である。すなわち、高温高圧環境下等の特殊な条件や設備を必要とすることなく、可溶性のチタンイオンTi3+を酸化してTiO・HOを回収することが可能となる。
このとき、工程<3>において空気酸化前における前記浸出液中の2価の鉄イオン濃度CFeと3価のチタンイオン濃度CTiの比率CFe/CTiの値が10.0以下、より好ましくはCFe/CTiの値が2.0以下であることが好ましく考慮される。CFe/CTiの値が10.0以下の範囲にあれば、得られる二酸化チタンの純度が98.0mass%〜99.0mass%の範囲で概ね一定の値を示す。特に、CFe/CTiの値が2.0以下の範囲においては、CFe/CTiの値が小さくなるにつれ、得られる二酸化チタンの純度が99.0mass%〜99.9mass%に近い値を示す。
また、本発明の工程<3>においては、空気酸化時に前記浸出液を加温することが好ましく考慮される。浸出液の温度としては、例えば、室温から80℃以下の範囲が例示される。浸出液として塩酸水溶液を用いる場合、80℃を超えて加熱すると、塩酸水溶液中から塩化水素が揮発してしまい、pHの上昇による酸化チタンの浸出速度の低下が起こるおそれがある。なお、浸出液の加温には、電熱ヒーターやホットプレート等の裸火を用いない加熱装置を使用することが好ましく考慮される。
空気酸化の時間としては、例えば、6時間以上48時間以下の範囲が例示される。
このような、空気酸化の工程によって、浸出液中に溶解していたFe2+はFe3+に酸化されるものの、依然として塩酸水溶液中に溶解したままとなる。また、可溶性の微量成分についても、Feと同様に空気酸化された浸出液中に溶解したままとなる。
一方、可溶性のチタンイオンであるTi3+(aq.)は、二酸化チタンの水和物であるTiO・H0に酸化されて浸出液中に析出、沈殿する。
空気酸化前の浸出液は透明な紫色を呈するが、空気酸化後の浸出液は、上記のとおり二酸化チタンの水和物であるTiO・H0が析出するため、濁った淡黄色を呈する(不図示)。
析出した二酸化チタンの水和物は、空気酸化後の浸出液を濾過することにより、濾別回収することができ、しかもこの二酸化チタンの水和物を乾燥焼結することにより、純度99.0mass%以上の純二酸化チタンを得ることができる。得られる純二酸化チタンは、わずかに黄色味を帯びた乳白色の粉末状である。
なお、二酸化チタンの水和物の乾燥焼結については、例えば、空気酸化後の浸出液を濾過することで得られた固形分をるつぼに分取し、このるつぼを電気炉内で加熱して水分を除去し、二酸化チタンの水和物を乾燥焼結する方法等が例示される。
また、本発明においては、工程<2>の酸浸出工程終了後に、塩酸廃液中に沈殿しているイルメナイト鉱の残渣を濾過等の方法によって除去し、濾液に塩酸を注ぎ足すことによって、塩酸を酸浸出に再利用可能な循環系を構築することも好ましく考慮される。
さらに、本発明のイルメナイト鉱からの酸化チタンの回収方法においては、図6に示すように、工程<2>の酸溶出工程の前に、還元後のイルメナイト鉱粉末について、磁場を用いた選別工程(磁選工程)等を追加することにより、還元後のイルメナイト鉱粉末から非磁性金属であるチタン酸化物以外の金属鉄やその他の金属不純物を排除することができる。このような選別工程を一段階追加することによって、工程<2>において使用する酸水溶液の量を低減させることが可能となり、より低コストかつ効率的に最終産物であるTiOの純度を高めることができる。
なお、磁選工程で使用する磁選機としては、磁力選鉱機等の周知の装置を用いることができる。また、磁選工程は、乾式プロセスおよび湿式プロセスのいずれについてもおこなうことが可能である。
以下に実施例を示すが、本発明のイルメナイト鉱からの金属チタン製造用酸化チタンの回収方法は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例では、オーストラリア産のイルメナイト鉱を実験に用いた。このイルメナイト鉱を、平均径150mm程度の大きさに粉砕し、還元工程に供した。実施例の以下の記載においては、イルメナイト鉱を粉砕したものをイルメナイト鉱粉末と記載する。
還元工程では、上記のイルメナイト鉱粉末10gを所定の量の黒鉛と混合し、この混合物を酸化マグネシウムるつぼ内に投入し、縦型管状電気炉内にるつぼを設置して、炉底から流量200mL min−1でアルゴンガスを流しながら1300℃で6時間加熱保持してイルメナイト鉱の炭素還元をおこなった。加熱処理後、るつぼを炉内から取り出し、アルゴンガス中に放置して冷却した。室温まで冷却されたるつぼ
次いで、得られた還元後のイルメナイト鉱の浸出(リーチング)試験は、水素雰囲気下、6.0mol L−1の塩酸水溶液100mLを入れた実験用フラスコで行った。実験用フラスコには、還元後のイルメナイト鉱を全量添加し、ホットプレートを用いて75℃に加温しながら浸出実験をおこなった。浸出時間は24時間とした。
このようにして得られた浸出液を定性濾紙を用いて濾過し、濾過後の浸出液について空気酸化処理をおこなった。空気酸化処理は、浸出実験と同様に、ホットプレートを用いて浸出液を75℃に加温しながら、浸出液中に空気ポンプを用いて流量100mL min−1〜500mL min−1程度で、24時間室温の空気を吹き込んだ。
その後、空気酸化後の浸出液を濾過し、固形分を濾別して回収し60℃で乾燥し、純度99.0mass%以上の純二酸化チタン粉末を得た。
また、塩酸水溶液による酸浸出後の還元イルメナイト鉱の残渣についてXRD分析をおこなった。
<結果>
図7に示すように、浸出液中の4価のチタン酸化物であるTiOの濃度は、浸出液の塩酸濃度を上昇させても0.0mol L−1付近に留まっており、塩酸水溶液中にはほぼ浸出しないことが確認された。
一方、浸出液中の3価のチタン酸化物であるTiの濃度は、浸出液の塩酸濃度の上昇にともなって増大し、特に、濃度2.0mol L−1以上の塩酸水溶液中におけるTiの濃度の上昇は顕著であった。さらに、濃度6.0mol L−1の塩酸水溶液中において、Tiの濃度は最大となった。具体的なTiの含有量を算出してみたところ、濃度6.0mol L−1の塩酸水溶液中には、塩酸水溶液1Lあたり約61gのTiが溶解していることが確認された。
また、図8に示すように、浸出液中の2価の鉄イオン濃度CFeと3価のチタンイオン濃度CTiの比率CFe/CTiの値は、pH1.0〜2.0の範囲内で得られる純二酸化チタンの純度が99.0mass%以上に達し、その後、pHの上昇にともなって緩やかに得られる純二酸化チタンの純度が低下し、pH10.0を超えると得られる純二酸化チタンの純度は95.0mass%未満まで低下することが確認された。
さらに、表2に、本発明の実施例に該当する試験体#1および#2について、本発明の工程<1><2><3>を経ることによって得られる純二酸化チタンの純度を示す。
表2に示すように、試験体#1は、CFe/CTiの値が2.01であった。この試験体#1について本発明の工程<1><2><3>を経ることによって得られる純二酸化チタンの純度は、98.0mass%であった。
一方、試験体#2は、CFe/CTiの値が2.53であった。この試験体#2について、本発明の工程<1><2><3>を経ることによって得られる純二酸化チタンの純度は、99.3mass%であった。
このように、CFe/CTiの値が2.0以上10.0以下の範囲においては、従来の二酸化チタンの回収方法より高純度の二酸化チタンを得られることが確認された。
また、塩酸水溶液による酸浸出後の還元イルメナイト鉱の残渣についてXRD分析をおこなったところ、図9に示すように、TiOおよびTiの存在を示すピークは確認されず、Ti、TiCおよびCの存在を示すピークのみが確認された。これらの残渣中に確認された物質は、いずれも酸水溶液に難溶な物質であった。
したがって、還元イルメナイト鉱中に含まれる、可溶性のチタン酸化物であるTiは、ほぼ全量が塩酸水溶液中に浸出していることが確認された。

Claims (3)

  1. 少なくとも以下<1>から<3>の工程を含むことを特徴とするイルメナイト鉱からの酸化チタンの回収方法
    <1>イルメナイト鉱に、炭素または炭化チタンのうち少なくともいずれか一方を含む還元剤を添加して還元する工程;
    <2>得られた還元生成物を水素雰囲気下で塩酸を用いて酸浸出してTi3+を含有する浸出液を得る工程;
    <3>得られた浸出液に空気酸化処理することによって酸化チタンを析出させる工程。
  2. 前記工程<3>において前記浸出液のpHが2.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のイルメナイト鉱からの酸化チタンの回収方法。
  3. 前記工程<3>において前記空気酸化前における前記浸出液中の2価の鉄イオン濃度C Fe と3価のチタンイオン濃度C Ti の比率C Fe /C Ti の値が10.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のイルメナイト鉱からの酸化チタンの回収方法。
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