以下、図面を適宜参照して、本発明の各実施の形態における炭酸亜鉛の製造方法につき、詳細に説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態における炭酸亜鉛の製造方法につき、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法の工程を示す図である。
図1に示すように、本実施形態では、亜鉛抽出工程101及び炭酸亜鉛分離工程102を順に実行し、亜鉛抽出工程101が亜鉛含有水溶液生成工程に相当する。原料としての電炉ダスト又は2次ダストから亜鉛成分を抽出した水溶液を生成することを優先し、その水溶液中の亜鉛成分から生成した炭酸塩の形態の亜鉛含有化合物として炭酸亜鉛を生成するという製造コンセプトに基づいている。
具体的には、まず、亜鉛抽出工程101では、酸化亜鉛等である亜鉛含有化合物及び酸化鉄等である鉄化合物を含む原料としての電炉ダスト1と、アルカリ剤7の水溶液と、を直接接触させて、かかる亜鉛含有化合物から亜鉛成分を選択的に抽出した亜鉛抽出液として、亜鉛成分を含むアルカリ剤水溶液30を生成すると共に、アルカリ剤7の水溶液に溶解しない固形分を残渣20とした。
例えば、電炉ダスト1中の酸化亜鉛に対してアルカリ剤7として水酸化ナトリウムを使用して亜鉛成分を選択的に抽出したアルカリ剤水溶液30を得る場合の化学式を、以下の(化1)に示す。
なお、亜鉛抽出工程101で用いる原料としては、電炉ダスト1の代わりに電炉ダストを還元炉で還元して得られる2次ダストを用いてもよい。また、亜鉛抽出工程101で用いる原料としては、電炉ダスト1に炭酸カルシウムを混合しか焼して得たものを用いてもよい。かかるか焼によれば、電炉ダスト1の亜鉛フェライト成分に含まれる亜鉛成分をアルカリ剤による抽出が容易な酸化亜鉛成分に転換することができる。また、このか焼で得られた二酸化炭素は、次の炭酸亜鉛分離工程102で用いることができる。また、亜鉛抽出工程101においては、アルカリ剤7の代わりに中性アンモニウム塩29を用いてもよい。
次に、炭酸亜鉛分離工程102では、亜鉛抽出工程101で抽出された亜鉛成分を含むアルカリ剤水溶液30と、二酸化炭素(炭酸ガス)23と、を接触させて、亜鉛抽出工程101で抽出された亜鉛成分を含むアルカリ剤水溶液30から炭酸亜鉛21を析出させ、それを固液分離して固体として回収して、これをそのまま製品とした。炭酸亜鉛分離工程102での固液分離後のろ液は、亜鉛抽出工程101で亜鉛成分を選択的に抽出するためのアルカリ剤7として、繰り返し使用することができる。なお、亜鉛抽出工程101においてアルカリ剤7の代わりに中性アンモニウム塩29を用いた場合には、炭酸亜鉛分離工程102での固液分離後のろ液は、亜鉛抽出工程101で亜鉛成分を選択的に抽出するための中性アンモニウム塩29として、繰り返し使用することができる。また、繰り返し使うアルカリ剤や中性アンモニウム塩成分の分離には、イオン交換膜による拡散透析法や電気透析法等を併用してもよい。
例えば、化学式(化1)で示すアルカリ剤水溶液30中の亜鉛成分に、以下の化学式(化2)に示すように、二酸化炭素23を吹き込んで炭酸亜鉛21を析出させ、このように析出させた炭酸亜鉛21をろ過すれば、固形分としての炭酸亜鉛21が得られる。
なお、炭酸亜鉛分離工程102では、アルカリ剤水溶液30に接触させる二酸化炭素23の代わりに、炭酸イオンを含む液体を用いてもよい。また、化学式(化2)から明らかなように、水酸化亜鉛がアルカリ水溶液に溶存するためには過剰の水酸イオンが必要なので、炭酸亜鉛分離工程102では、炭酸亜鉛21の代わりに又は炭酸亜鉛と共に、水酸化亜鉛を析出させることもできる。また、炭酸亜鉛が母液から析出するときに、目的成分の亜鉛が固体である炭酸亜鉛に優先して析出し、不純物成分を母液に残す晶析の効果による精製効果がある。また、分離された炭酸亜鉛は、水酸化亜鉛や酸化亜鉛と二酸化炭素とに分解するものであるが、水酸化亜鉛又は酸化亜鉛に分解する過程においてもこれと同様の効果がある。また、水酸化亜鉛を、酸性の液から炭酸亜鉛をアルカリ剤として利用して分離する場合には、鉄と亜鉛とが共沈し亜鉛の歩留りが低下することがあるので、アルカリ剤として使う場合に鉄と亜鉛との共沈を防ぐために、炭酸亜鉛を加熱して炭酸亜鉛中の炭酸イオン成分を二酸化炭素として揮散させると共に、炭酸亜鉛中の亜鉛成分を水酸化亜鉛又は酸化亜鉛とすることも好ましいものである。なお、炭酸亜鉛や水酸化亜鉛は、加熱されると酸化亜鉛となる特性を有するため、炭酸亜鉛の一部が水酸化亜鉛のみならず酸化亜鉛になっていてもよい。また、亜鉛成分を含むアルカリ剤水溶液30の加熱、冷却及びpH調整等の手法により、炭酸亜鉛や水酸化亜鉛の析出と再溶解とを繰り返して、精製効果を積極的に利用して更に高純度の生成物を得ることもできる。
以上の本実施の形態の炭酸亜鉛の製造方法は、電炉ダスト又は電炉ダストを還元炉で還元した際に発生する2次ダストを原料として、原料中の亜鉛成分を含有する亜鉛含有水溶液を生成する亜鉛含有水溶液生成工程と、亜鉛含有水溶液中の亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離して、炭酸亜鉛を製品として得る炭酸亜鉛分離工程と、を備え、亜鉛含有水溶液生成工程が、原料から亜鉛成分を選択的に抽出して亜鉛含有水溶液を生成する亜鉛抽出工程101を有し、炭酸亜鉛分離工程102が、亜鉛含有水溶液に二酸化炭素又は炭酸イオンを接触させて、亜鉛含有水溶液中の亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離するものであるため、原料としての電炉ダスト又は2次ダストから亜鉛成分を抽出した水溶液を生成することを優先し、その水溶液中の亜鉛成分から生成した炭酸塩の形態の亜鉛含有化合物として炭酸亜鉛を生成するという製造コンセプトに基づいて、炭酸亜鉛を歩留まりよく安定的に量産することができる。
(第2の実施形態)
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施形態における炭酸亜鉛の製造方法につき、詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法の工程を示す図である。
図2に示すように、本実施の形態に係る炭酸亜鉛の製造方法は、第1の実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法と比較して、亜鉛抽出工程101と炭酸亜鉛分離工程102との間に、置換工程(セメンテーション工程)103を有していることが、主たる相違点である。本実施の形態においては、かかる相違点に着目して説明するものとし、同一な構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。
具体的には、亜鉛抽出工程101に続く置換工程103では、亜鉛抽出工程101で抽出された亜鉛成分を含む亜鉛抽出液としてのアルカリ剤水溶液30と、亜鉛微粒子等の金属亜鉛9と、を接触させて、アルカリ剤水溶液30中における亜鉛よりも貴な銅、鉛、カドミウム等の金属不純物成分10を還元析出して、アルカリ剤水溶液30中の不純物成分の濃度を低減している。
次に、炭酸亜鉛分離工程102では、置換工程103で不純物成分の濃度が低減されたアルカリ剤水溶液131と、二酸化炭素23と、を接触させて、アルカリ剤水溶液131から炭酸亜鉛21を析出させ、それを固液分離して固体物として回収することになる。
以上の本実施の形態の炭酸亜鉛の製造方法によれば、第1の実施形態の構成に加えて、亜鉛抽出工程101で生成された亜鉛含有水溶液に金属亜鉛を接触させて、亜鉛含有水溶液中における亜鉛よりも貴な金属不純物成分を還元析出する置換工程103を更に有するものであるため、純度を向上した炭酸亜鉛を歩留まりよく安定して量産することができる。
(第3の実施形態)
次に、図3を参照して、本発明の第3の実施形態における炭酸亜鉛の製造方法につき、詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法の工程を示す図である。
図3に示すように、本実施の形態に係る炭酸亜鉛の製造方法は、第2の実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法と比較して、亜鉛抽出工程101と置換工程103との間に、脱鉄脱マンガン工程104を有していることが、主たる相違点である。本実施の形態においては、かかる相違点に着目して説明するものとし、同一な構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。
具体的には、亜鉛抽出工程101に続く脱鉄脱マンガン工程104では、亜鉛抽出工程101で抽出された亜鉛成分を含む亜鉛抽出液としてのアルカリ剤水溶液30に含まれる鉄成分及び溶解性マンガンを除去するために、かかるアルカリ剤水溶液30に含まれる鉄又は溶解性マンガン成分の酸化とpH調整とを行うと共に、アルカリ剤水溶液30中の鉄成分及びマンガン成分を不溶解性の沈殿物のスラッジ8として分離除去する。具体的には、アルカリ剤水溶液30に過マンガン酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素等の酸化剤11を添加してアルカリ剤水溶液30中の第1鉄成分を第2鉄成分に酸化し、溶解性マンガンを酸化して不溶解性の二酸化マンガンに転換しスラッジ8として分離除去する。また、アルカリ剤水溶液30中の鉄成分は、温度、pH値及び酸化還元電位(ORP)値を制御して第一鉄成分及び第二鉄成分双方を含むマグヘマイトのような磁性酸化鉄にすることもできる。
なお、酸化剤11として過マンガン酸塩を用いる場合、過剰の過マンガン酸がアルカリ剤水溶液30に残存するまで過マンガン酸塩を供給して脱マンガンの終点を判断することができ、また、残存した過マンガン酸は、それを活性炭と接触させて不溶解性の二酸化マンガンに転換して除去される。
次に、置換工程103では、脱鉄脱マンガン工程104で不純物成分の濃度が低減されたアルカリ剤水溶液132と、亜鉛微粒子等の金属亜鉛9と、を接触させて、アルカリ剤水溶液132中における亜鉛よりも貴な銅、鉛、カドミウム等の金属不純物成分10を還元析出して、アルカリ剤水溶液132中の不純物成分の濃度を更に低減している。
ここで、脱鉄脱マンガン工程では、酸化剤と共にpH調整のための酸又はアルカリ剤を適宜添加して脱鉄脱マンガン工程における不純物除去効果を向上させてもよい。また、脱鉄脱マンガン工程と置換工程との実施順序については、置換工程の後工程が脱鉄脱マンガン工程であってもよい。例えば、原料が2次ダストのような、鉄の還元工程を経たものの場合は原料に含まれる鉄成分が2価(第1鉄成分)を多く含むケースがあり、このような原料を処理する場合は先に置換工程を実施する方が合理的だからである。このような脱鉄脱マンガン工程と置換工程との実施順序の自由度については、脱鉄脱マンガン工程と置換工程の両方を行う本実施形態以降の実施形態においても同様に当てはまるものである。また、かかる事情は、脱鉄脱マンガン工程を脱鉄工程及び脱マンガン工程に分離して、各々個別に実行する実施形態においても同様である。
以上の本実施の形態の炭酸亜鉛の製造方法によれば、第2の実施形態の構成に加えて、亜鉛抽出工程101で生成された亜鉛含有水溶液に酸化剤を接触させて、亜鉛含有水溶液中における鉄成分及びマンガン成分を分離する脱鉄脱マンガン工程104を更に有するものであるため、純度を向上した炭酸亜鉛を歩留まりよく安定して量産することができる。
(第4の実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第4の実施形態における炭酸亜鉛の製造方法につき、詳細に説明する。
図4は、本実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法の工程を示す図である。
図4に示すように本実施の形態に係る炭酸亜鉛の製造方法は、第1の実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法と比較して、炭酸亜鉛分離工程102の後段に、炭酸亜鉛塩化工程105、脱鉄脱マンガン工程106、置換工程107及び炭酸亜鉛分離工程108を順に有していることが、主たる相違点である。本実施の形態においては、かかる相違点に着目して説明するものとし、同一な構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。
具体的には、亜鉛抽出工程101に続く工程であって前段の炭酸亜鉛分離工程102では、亜鉛抽出工程101で抽出された亜鉛成分を含む亜鉛抽出液であるアルカリ剤水溶液30から炭酸亜鉛21を析出させ、それを固液分離して固体として回収することは第1の実施形態のものと同様であるが、これをそのまま製品とはしない。
次に、炭酸亜鉛塩化工程105では、炭酸亜鉛分離工程102で回収された炭酸亜鉛21に塩化剤19としての塩酸を接触させ、炭酸亜鉛21を固体のまま直接塩化して塩化亜鉛水溶液6を生成する。なお、炭酸亜鉛21が水酸化亜鉛や酸化亜鉛を含む場合には、これらを含めて塩化すればよい。
次に、炭酸亜鉛塩化工程105に続く脱鉄脱マンガン工程106では、炭酸亜鉛塩化工程105で生成された亜鉛成分を含む塩化亜鉛水溶液6に含まれる鉄成分及び溶解性マンガンを除去するために、かかる塩化亜鉛水溶液6に含まれる鉄又は溶解性マンガン成分を酸化することによるpH調整を行うと共に、塩化亜鉛水溶液6中の鉄及びマンガン成分を不溶解性の沈殿物のスラッジ8として分離除去して塩化亜鉛水溶液61を得る。具体的には、塩化亜鉛水溶液6に過マンガン酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素等の酸化剤11を添加して塩化亜鉛水溶液6中の第1鉄成分を第2鉄成分に酸化し、溶解性マンガンを酸化して不溶解性の二酸化マンガンに転換しスラッジ8として分離除去する。
なお、酸化剤11として過マンガン酸塩を用いる場合、過剰の過マンガン酸が塩化亜鉛水溶液6に残存するまで過マンガン酸塩を供給して脱マンガンの終点を判断することができ、また、残存した過マンガン酸は、それを活性炭と接触させて不溶解性の二酸化マンガンに転換して除去される。
次に、置換工程107では、脱鉄脱マンガン工程106を経由した塩化亜鉛水溶液61を、亜鉛微粒子等の金属亜鉛9に接触させて、塩化亜鉛水溶液61中における亜鉛よりも貴な銅、鉛、カドミウム等の金属不純物成分10を還元析出して、塩化亜鉛水溶液61中の不純物成分の濃度を低減した塩化亜鉛水溶液62を得る。
次に、炭酸亜鉛分離工程108では、塩化亜鉛水溶液62に炭酸ナトリウム16を添加して炭酸亜鉛21を析出させ、Cろ紙を使用した吸引及びろ過により炭酸亜鉛21を分離すると共に、炭酸亜鉛分離工程108での固液分離後のろ液22は、排出した。更に、分離した炭酸亜鉛21を水酸化亜鉛31及び二酸化炭素に分解し、水酸化亜鉛31をそのまま製品とした。
以上の本実施の形態の炭酸亜鉛の製造方法によれば、第1の実施形態の構成に加えて、亜鉛抽出工程101で生成された亜鉛含有水溶液中の亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離する前段炭酸亜鉛分離工程102と、前段炭酸亜鉛分離工程102で分離された炭酸亜鉛の亜鉛成分に塩酸の水溶液を接触させて塩化亜鉛の水溶液である塩化亜鉛水溶液を生成する炭酸亜鉛塩化工程105と、塩化亜鉛水溶液に酸化剤を接触させて、塩化亜鉛水溶液中における鉄成分及びマンガン成分を分離する脱鉄脱マンガン工程106と、脱鉄脱マンガン工程を経た塩化亜鉛水溶液に金属亜鉛を接触させて、塩化亜鉛水溶液中における亜鉛よりも貴な金属不純物成分を還元析出する置換工程107と、を更に有し、炭酸亜鉛分離工程108が、置換工程107を経た塩化亜鉛水溶液中の亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離するものであるため、純度を向上した炭酸亜鉛を歩留まりよく安定して量産することができる。
(第5の実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第5の実施形態における炭酸亜鉛の製造方法につき、詳細に説明する。
図5は、本実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法の工程を示す図である。
図5に示すように、本実施形態では、選択塩化工程201、溶解工程202、脱鉄工程203、置換工程204、脱マンガン工程205及び亜炭酸鉛分離工程206を順に実行し、選択塩化工程201及び溶解工程202が亜鉛含有水溶液生成工程に相当する。本実施形態でも、原料としての電炉ダスト又は2次ダストから亜鉛成分を抽出した水溶液を生成することを優先し、その水溶液中の亜鉛成分から生成した炭酸塩の形態の亜鉛含有化合物として炭酸亜鉛を生成するという製造コンセプトに基づいている。また、必要に応じて、選択塩化工程201、溶解工程202及び炭酸亜鉛分離工程206のみを設けてもよい。
具体的には、まず、選択塩化工程201では、酸化亜鉛等である亜鉛含有化合物及び酸化鉄等である鉄化合物を含む原料としての電炉ダスト1と、塩素ガス15及び酸素含有ガスである空気17の混合ガスと、を高温下で直接接触させて電炉ダスト1を塩化し、主として塩化亜鉛成分から成り蒸気である塩化亜鉛3及び酸素ガス2を生成する共に、不揮発性である固形分を、酸化鉄を主成分とする残渣4とした。なお、選択塩化工程201を簡素化する観点からは、塩素ガス15及び酸素含有ガスである空気17の混合ガスに代えて、塩素ガス15のみを用いてもよい。また、選択塩化工程201で用いる原料としては、電炉ダスト1の代わりに電炉ダストを還元炉で還元して得られる2次ダストを用いてもよい。
次に、溶解工程202では、選択塩化工程201で生成された塩化亜鉛3を脱塩水等の水13に溶解して、塩化亜鉛水溶液6を生成すると共に、吸引及びろ過によりろ別された固形分を、塩化鉛及び酸化第2鉄(ヘマタイト)を主成分とする不溶解スラッジ5とした。
次に、脱鉄工程203では、溶解工程202で生成された塩化亜鉛水溶液6に苛性アルカリ、アンモニア水等のアルカリ剤7を添加してpH調整を行い、塩化亜鉛水溶液6中の塩化第2鉄成分を水酸化物、酸化物等の不溶解性の沈殿物(スラッジ8)として分離除去して分離除去する。なお、かかるアルカリ剤7については、苛性アルカリ又はアンモニア水の添加に代えて、アンモニアガスとの接触、又は消石灰、生石灰、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム等の添加を行ってもよい。
ここで、脱鉄のためのpH調整が、アルカリ剤と塩素と、アルカリ剤と次亜塩素酸塩(例えば食品添加物の次亜塩素酸ナトリウム)と、又はアルカリ性の次亜塩素酸塩18を添加することによって行われれば、脱鉄と脱マンガンとを同時に実施することができるのみならず、不溶解性の含鉄沈殿物をろ過性のよい水和酸化鉄にできて好都合である。かかる事情は、実施の形態3以降の脱鉄脱マンガン工程104、106、207、302や脱鉄工程203で同様である。
次に、置換工程204では、脱鉄工程203で不純物成分の濃度を低減された塩化亜鉛水溶液161と、亜鉛微粒子等の金属亜鉛9と、を接触させて、亜鉛よりも貴な銅、鉛、カドミウム等の金属不純物成分10を還元析出して、塩化亜鉛水溶液161中の不純物成分の濃度を更に低減している。
次に、脱マンガン工程205では、置換工程204で不純物成分の濃度を低減された塩化亜鉛水溶液162に過マンガン酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素等の酸化剤11を添加して、塩化亜鉛水溶液162中の溶解性マンガンを酸化し、不溶解性の二酸化マンガン(スラッジ8)に転換して分離除去する。
ここで、酸化剤11として過マンガン酸塩を用いる場合、過剰の過マンガン酸がアルカリ剤水溶液30に残存するまで過マンガン酸塩を供給して脱マンガンの終点を判断することができ、また、残存した過マンガン酸は、それを活性炭と接触させて不溶解性の二酸化マンガンに転換して除去される。
次に、炭酸亜鉛分離工程206では、脱マンガン工程205で不純物成分の濃度を低減された塩化亜鉛水溶液163と、アルカリ剤として炭酸ナトリウム16と、を接触させて、塩化亜鉛水溶液163から炭酸亜鉛21を析出させ、それを固液分離して固体物として回収して、これをそのまま製品とした。
以上の本実施の形態の炭酸亜鉛の製造方法によれば、電炉ダスト又は電炉ダストを還元炉で還元した際に発生する2次ダストを原料として、原料中の亜鉛成分を含有する亜鉛含有水溶液を生成する亜鉛含有水溶液生成工程と、亜鉛含有水溶液中の亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離して、炭酸亜鉛を製品として得る炭酸亜鉛分離工程と、を備え、亜鉛含有水溶液生成工程が、原料に塩素ガスを接触させて蒸発させ亜鉛成分を選択的に塩化し塩化亜鉛を生成する選択塩化工程201と、塩化亜鉛を水に溶解して塩化亜鉛水溶液を亜鉛含有水溶液として生成する溶解工程202と、を有し、塩化亜鉛水溶液にアルカリ剤を接触させて、塩化亜鉛水溶液中における鉄成分を分離する脱鉄工程203と、鉄成分が分離された塩化亜鉛水溶液中における亜鉛よりも貴な金属不純物成分を還元析出する置換工程204と、置換工程204を経た塩化亜鉛水溶液に酸化剤を接触させて、塩化亜鉛水溶液中におけるマンガン成分を分離する脱マンガン工程205と、を更に有し、炭酸亜鉛分離工程206が、脱マンガン工程205を経た塩化亜鉛水溶液中の亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離するものであるため、原料としての電炉ダスト又は2次ダストから亜鉛含有化合物としての塩化亜鉛を水溶液として優先して生成し、その原料中の亜鉛成分から生成した炭酸塩の形態の亜鉛含有化合物として炭酸亜鉛を生成するという製造コンセプトに基づいて、純度を向上した炭酸亜鉛を歩留まりよく安定的に量産することができる。
(第6の実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第6の実施形態における炭酸亜鉛の製造方法につき、詳細に説明する。
図6は、本実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法の工程を示す図である。
図6に示すように、本実施形態では、第5の実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法と比較して、脱鉄工程203及び脱マンガン工程205を置換工程210の前段に1つの脱鉄脱マンガン工程207として纏めて設定し、併せて、炭酸亜鉛分離工程206の前段に、炭酸亜鉛分離工程208及びアルカリ再生工程209を有していることが、主たる相違点である。本実施の形態においては、かかる相違点に着目して説明するものとし、同一な構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。なお、炭酸亜鉛分離工程208及びアルカリ再生工程209は、付加的な工程である。
具体的には、溶解工程202に続く脱鉄脱マンガン工程207では、溶解工程202で生成された塩化亜鉛水溶液6に苛性アルカリ、アンモニア水等のアルカリ剤7を添加してpH調整を行い、塩化亜鉛水溶液6中の塩化第2鉄成分を水酸化物、酸化物等の不溶解性の沈殿物〈スラッジ8)として分離除去すると共に、かかる塩化亜鉛水溶液6に過マンガン酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素等の酸化剤11を添加して塩化亜鉛水溶液6中の溶解性マンガンを酸化し、不溶解性の二酸化マンガン〈スラッジ8〉に転換して分離除去する。なお、かかるアルカリ剤7については、苛性アルカリ又はアンモニア水の添加に代えて、アンモニアガスとの接触、又は消石灰、生石灰、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム等の添加を行ってもよい。
ここで、脱鉄のためのpH調整が、アルカリ剤と塩素と、アルカリ剤と次亜塩素酸塩、又はアルカリ性の次亜塩素酸塩18(例えば食品添加物の次亜塩素酸ナトリウム)を添加することによって行われれば、脱鉄と脱マンガンとを同時に実施することができるのみならず、不溶解性の含鉄沈殿物をろ過性のよい水和酸化鉄にできて好都合である。また、酸化剤11として過マンガン酸塩を用いる場合、過剰の過マンガン酸が塩化亜鉛水溶液6に残存するまでの期間で過マンガン酸塩を供給して脱マンガンの終点を判断することができ、また、残存した過マンガン酸は、それを活性炭と接触させて不溶解性の二酸化マンガンに転換して除去される。
次に、置換工程210では、脱鉄脱マンガン工程207で不純物成分の濃度を低減された塩化亜鉛水溶液261と、亜鉛微粒子等の金属亜鉛9と、を接触させて、亜鉛よりも貴な銅、鉛、カドミウム等の金属不純物成分10を還元析出して、塩化亜鉛水溶液261中の不純物成分の濃度を更に低減した塩化亜鉛水溶液262を生成している。
ここで、炭酸亜鉛分離工程208では、脱鉄脱マンガン工程207で不純物成分の濃度を低減された塩化亜鉛水溶液261と、アルカリ剤7として炭酸ナトリウムと、を接触させて、塩化亜鉛水溶液261から炭酸亜鉛21を析出させ、それを固液分離して固体物として回収し脱鉄脱マンガン工程207に戻すことで、炭酸亜鉛21をアルカリ剤として利用し、アルカリ剤成分を塩化亜鉛水溶液261に残存させることなく塩化亜鉛水溶液261中の亜鉛成分の濃度を高めることができる。このとき、前述したように、鉄と亜鉛との共沈を防ぐために炭酸亜鉛を加熱して、炭酸亜鉛中の炭酸イオン成分を二酸化炭素として揮散させると共に、炭酸亜鉛中の亜鉛成分を水酸化亜鉛又は酸化亜鉛とすることも好ましい。この際、アルカリ剤7として用いる炭酸ナトリウムは、実施の形態3以降の脱鉄脱マンガン工程104、106、207、302や脱鉄工程203でアルカリ剤7として用いてもよい。また、炭酸亜鉛分離工程208では、炭酸亜鉛21の代わりに又は炭酸亜鉛と共に、水酸化亜鉛を析出させてもよい。
また、付言すれば、アルカリ再生工程209では、炭酸亜鉛分離工程208で炭酸亜鉛を分離後の塩化ナトリウムを主成分とするろ液22に炭酸アンモニウム24を添加して炭酸ナトリウムを析出させ、それを固液分離し、固体物として回収しアルカリ剤7として炭酸亜鉛分離工程208に戻すと共に、固液分離後のろ液25は排出している。なお、ろ液25中に塩化アンモニウムが含まれる場合には、塩化アンモニウムにアルカリ剤を加えてストリッピング工程により揮散させて捕集しアンモニア成分が必要な工程で再利用してもよい。
以上の本実施の形態の炭酸亜鉛の製造方法によれば、電炉ダスト又は電炉ダストを還元炉で還元した際に発生する2次ダストを原料として、原料中の亜鉛成分を含有する亜鉛含有水溶液を生成する亜鉛含有水溶液生成工程と、亜鉛含有水溶液中の亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離して、炭酸亜鉛を製品として得る炭酸亜鉛分離工程と、を備え、亜鉛含有水溶液生成工程が、原料に塩素ガスを接触させて蒸発させ亜鉛成分を選択的に塩化し塩化亜鉛を生成する選択塩化工程201と、塩化亜鉛を水に溶解して塩化亜鉛水溶液を亜鉛含有水溶液として生成する溶解工程202と、を有し、塩化亜鉛水溶液に酸化剤及びアルカリ剤を接触させて、塩化亜鉛水溶液中における鉄成分及びマンガン成分を分離する脱鉄脱マンガン工程207と、鉄成分及びマンガン成分が分離された塩化亜鉛水溶液中における亜鉛よりも貴な金属不純物成分を還元析出する置換工程210と、鉄成分及びマンガン成分が分離された塩化亜鉛水溶液から亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離して脱鉄脱マンガン工程に戻す前段炭酸亜鉛分離工程208と、を更に有し、炭酸亜鉛分離工程が206、置換工程を経た塩化亜鉛水溶液中の亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離するものであるため、原料としての電炉ダスト又は2次ダストから亜鉛含有化合物としての塩化亜鉛を水溶液として優先して生成し、その原料中の亜鉛成分から生成した炭酸塩の形態の亜鉛含有化合物として炭酸亜鉛を生成するという製造コンセプトに基づいて、純度を向上した炭酸亜鉛を歩留まりよく安定的に量産することができる。
(第7実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第7の実施形態における炭酸亜鉛の製造方法につき、詳細に説明する。
図7は、本実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法の工程を示す図である。
図7に示すように、本実施の形態に係る炭酸亜鉛の製造方法は、第6の実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法と比較して、第6の実施形態における選択塩化工程201及び溶解工程202を塩酸浸出工程301に置換した構成を有していることが、主たる相違点である。本実施の形態においては、かかる相違点に着目して説明するものとし、同一な構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。
つまり、本実施形態では、塩酸浸出工程301、脱鉄脱マンガン工程302、置換工程303及び炭酸亜鉛分離工程304を順に実行し、塩酸浸出工程301が亜鉛含有水溶液生成工程に相当するもので、本実施形態でも、原料としての電炉ダスト又は2次ダストから亜鉛成分を抽出した水溶液を生成することを優先し、その水溶液中の亜鉛成分から生成した炭酸塩の形態の亜鉛含有化合物として炭酸亜鉛を生成するという製造コンセプトに基づいている。
具体的には、まず、塩酸浸出工程301では、酸化亜鉛等である亜鉛含有化合物及び酸化鉄等である鉄化合物を含む原料としての電炉ダスト1と、塩酸19の水溶液と、を直接接触させて電炉ダスト1を塩化し、主として塩化亜鉛成分及び塩化鉄成分から成る塩化亜鉛水溶液6を生成する共に、塩酸19の水溶液に溶解しない固形分を残渣20とした。なお、塩酸浸出工程301で用いる原料としては、電炉ダスト1の代わりに電炉ダストを還元炉で還元して得られる2次ダストを用いてもよい。
次に、脱鉄脱マンガン工程302では、塩酸浸出工程301で生成された塩化亜鉛水溶液6に苛性アルカリ、アンモニア水等のアルカリ剤7を添加してpH調整を行い、塩化亜鉛水溶液6中の塩化第2鉄成分を水酸化物、酸化物等の不溶解性の沈殿物(スラッジ8)として分離除去すると共に、かかる塩化亜鉛水溶液6に過マンガン酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素等の酸化剤11を添加して塩化亜鉛水溶液6中の溶解性マンガンを酸化し不溶解性の二酸化マンガン(スラッジ8)に転換して分離除去する。
また、脱鉄脱マンガン工程302以降の置換工程303及び炭酸亜鉛分離工程304は、第2から第6の実施形態における置換工程103、107、204及び210、並びに第4から第6の実施形態における炭酸亜鉛分離工程108及び206と同様である。
以上の本実施の炭酸亜鉛の製造方法によれば、電炉ダスト又は電炉ダストを還元炉で還元した際に発生する2次ダストを原料として、原料中の亜鉛成分を含有する亜鉛含有水溶液を生成する亜鉛含有水溶液生成工程と、亜鉛含有水溶液中の亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離して、炭酸亜鉛を製品として得る炭酸亜鉛分離工程と、を備え、亜鉛含有水溶液生成工程が、原料に塩酸の水溶液を接触させて亜鉛成分を塩化した塩化亜鉛水溶液を生成する塩酸浸出工程301を有し、塩化亜鉛水溶液にアルカリ剤及び酸化剤を接触させて、塩化亜鉛水溶液中における鉄成分及びマンガン成分を分離する脱鉄脱マンガン工程302と、鉄成分及びマンガン成分が分離された塩化亜鉛水溶液中における亜鉛よりも貴な金属不純物成分を還元析出する置換工程303と、を更に有し、炭酸亜鉛分離工程304が、置換工程303を経た塩化亜鉛水溶液中の亜鉛成分を炭酸亜鉛として分離するものであるため、原料としての電炉ダスト又は2次ダストから亜鉛含有化合物としての塩化亜鉛を水溶液として優先して生成し、その原料中の亜鉛成分から生成した炭酸塩の形態の亜鉛含有化合物として炭酸亜鉛を生成するという製造コンセプトに基づいて、純度を向上した炭酸亜鉛を歩留まりよく安定的に量産することができる。
(第8の実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第8の実施形態における炭酸亜鉛の製造方法につき、詳細に説明する。
図8は、本実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法の工程を示す図である。
図8に示すように、本実施の形態に係る炭酸亜鉛の製造方法は、第7の実施形態に係る炭酸亜鉛の製造方法と比較して、炭酸亜鉛分離工程304の前段に、炭酸亜鉛分離工程305及びアルカリ再生工程306を有していることが、主たる相違点である。本実施の形態においては、かかる相違点に着目して説明するものとし、同一な構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。
具体的には、炭酸亜鉛分離工程305及びアルカリ再生工程306は、第6の実施形態における炭酸亜鉛分離工程208及びアルカリ再生工程209と同様である。
以上の本実施の炭酸亜鉛の製造方法によれば、第7の実施形態の構成に加えて、炭酸亜鉛分離工程304の前段に、炭酸亜鉛分離工程305及びアルカリ再生工程306を更に有ものであるため、純度を向上した炭酸亜鉛を歩留まりよく安定して量産することができる。
最後に、以上説明した本実施形態に対し、代表的に第1から第7の実施形態に対応する実験例につき、図9から図16をも参照して詳細に説明する。
図9は、本発明の第1の実施形態の実験例1の結果を対応して示す表1であり、図10及び図11は、本発明の第2の実施形態の2つの実験例2及び3の結果を示す表2及び3であり、図12は、本発明の第3の実施形態の実験例4の結果を示す表4であり、図13は、本発明の第4の実施形態の実験例5の結果を示す表5であり、図14は、本発明の第5の実施形態の実験例6の結果を示す表6であり、図15は、本発明の第6の実施形態の実験例7の結果を示す表7であり、また、図16は、本発明の第7の実施形態の実験例8の結果を示す表8である。なお、表中のNDは、検出せずであることを示す。また、表中の空欄は、電炉ダスト及び残渣については、検出限界未満又は検出せずであることを示し、電炉ダスト及び残渣以外については、分析項目外であることを示す。
(実験例1)
本実験例は、本発明の第1の実施形態に対応した実験例であり、その結果は図9の表1に示される。
まず、亜鉛抽出工程101では、予め、441gの重量の炭酸カルシウムと、762.8gの重量の電炉ダスト1と、を混合しか焼して得た870gの電炉ダスト(EAFD)1から88.5gの重量のEAFDを分取し、分取したEAFDと、中性アンモニウム塩29として20.4%の濃度のNH4Cl水溶液と、を接触させ、中性アンモニウム塩29の水溶液に溶解しない固形分をろ過により分離した残りの液体として、413mlの体積の亜鉛抽出液30を得た。また、中性アンモニウム塩29の水溶液に溶解しない固形分をろ過して純水で洗浄した後に乾燥して、52.8gの重量の残渣20を得た。亜鉛抽出工程101における抽出条件では、温度が95℃及び圧力が常圧であり、中性アンモニウム塩29の水溶液とEAFDとの接触時間は、8時間とした。
次に、炭酸亜鉛分離工程102では、亜鉛抽出液30に二酸化炭素23を吹込み、炭酸亜鉛21を析出させ、Cろ紙を使用した吸引及びろ過により炭酸亜鉛21を分離し、これをそのまま製品とした。かかる炭酸亜鉛21の組成を表1に示す。
なお、炭酸亜鉛21を分離した後のろ液は、亜鉛抽出工程101で中性アンモニウム塩29の水溶液として利用した。二酸化炭素23は、亜鉛抽出工程101の電炉ダスト1のか焼において炭酸カルシウムの分解により発生したものを利用した。
(実験例2)
本実験例は、本発明の第2の実施形態に対応した実験例であり、その結果は図19の表2に示される。
まず、亜鉛抽出工程101では、予め、441gの重量の炭酸カルシウムと、762.8gの重量の電炉ダスト1と、を混合しか焼して得た870gの重量の電炉ダスト(EAFD)1から186gの重量のEAFDを分取し、分取したEAFDと、中性アンモニウム塩29として80.2gの重量のNH4Cl及び66gの重量の(NH4)2SO4を溶解して体積500mlにメスアップした水溶液と、を接触させ、中性アンモニウム塩29の水溶液に溶解しない固形分をろ過により分離した残りの液体として、体積362.5mlの亜鉛抽出液30を得た。また、中性アンモニウム塩29の水溶液に溶解しない固形分をろ過して純水で洗浄した後に乾燥し、62.9gの残渣20を得た。このように中性アンモニウム塩29に(NH4)2SO4を混合したことにより、実験例1でNH4Cl水溶液を用いた場合に亜鉛抽出液30中に濃度11.3mg/lで抽出された鉛及び濃度8910mg/lで抽出されたカルシウムは、対応して検出下限値濃度5mg/l未満及び濃度619mg/lになった。なお、本実験例の亜鉛抽出工程101における温度等の抽出条件は、実験例1のものと同じにした。
次に、置換工程103では、亜鉛抽出液30に平均粒子径が約6μmの粉末状の亜鉛粒子9を5g投入した後に加熱して撹拌し、この撹拌物をろ過精度0.1μmのメンブレンフィルタで吸引しろ過して、そのろ液として亜鉛抽出液131を得た。また、メンブレンフィルタ上の固形分を脱塩水で洗浄した後に吸引及び脱水し乾燥した固形分は、亜鉛粒子9の溶解に伴い還元されて析出した金属粉10と、溶解せず残った粉末状亜鉛と、の混合物であった。
次に、置換工程103に引き続く炭酸亜鉛分離工程102を、亜鉛抽出液131を用いて実験例1のものと同じ内容で実行し、分離した炭酸亜鉛21をそのまま製品とした。本実験例で得られた炭酸亜鉛21の組成は、表2に示す通りであり、実験例1のものに比較すると銅、鉛、カドミウム等の金属不純物成分が低減されていた。
(実験例3)
本実験例は、本発明の第2の実施形態に対応した別の実験例であり、その結果は図11の表3に示される。
まず、亜鉛抽出工程101では、予め、441gの重量の炭酸カルシウムと、762.8gの重量の電炉ダスト1と、を混合しか焼して得た870gの重量の電炉ダスト(EAFD)1から300gの重量のEAFDを分取し、分取したEAFDと、中性アンモニウム塩29として20.4%の濃度のNH4Cl水溶液と、を接触させ、中性アンモニウム塩29の水溶液に溶解しない固形分をろ過により分離した残りの液体として、6015mlの体積の亜鉛抽出液30を得た。また、中性アンモニウム塩29の水溶液に溶解しない固形分の抽出可能な成分と、2400mlの濃度20.4%のNH4Cl水溶液と、を接触させてかかる固形分を抽出した後に、それを純水で洗浄した後ろ過して、乾燥重量94.7gの残渣20を得た。なお、本実験例の亜鉛抽出工程101における温度等の抽出条件は、実験例1のものと同じにした。また、残渣20をろ別した後のろ液(不溶解固形分から抽出可能な成分を抽出した後の中性アンモニウム塩の水溶液)は、次にEAFDを溶解するための中性アンモニウム塩29の水溶液として利用し、残渣20を純水で洗浄した後の洗浄水は、補給水として利用した。
次に、亜鉛抽出工程101に引き続く置換工程103を、実験例2のものと同じ内容で実行し、また、炭酸亜鉛分離工程102を、実験例1及び実験例2のものと同じ内容で実行し、分離した炭酸亜鉛21をそのまま製品とした。本実験例で得られた炭酸亜鉛21の組成は、表3に示す通りであり、実験例1のものに比較すると銅、鉛、カドミウム等の金属不純物成分が低減されていた。
(実験例4)
本実験例は、本発明の第3の実施形態に対応した実験例であり、その結果は図12の表4に示される。
まず、亜鉛抽出工程101では、予め、441gの重量の炭酸カルシウムと、762.8gの重量の電炉ダスト1と、を混合しか焼して得た870gの重量の電炉ダスト(EAFD)1から60.5gの重量のEAFDを分取し、分取したEAFDと、アルカリ剤7として16.5%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液と、を接触させ、アルカリ剤7の水溶液に溶解しない固形分をろ過により分離した残りの液体として395mlの亜鉛抽出液30を得た。アルカリ剤7の水溶液に溶解しない固形分の抽出可能な成分と、866mlの体積の濃度16.55%の水酸化ナトリウム水溶液と、を接触させてかかる固形分を抽出した後に、それを純水で洗浄した後ろ過して、乾燥重量43.3gの残渣20を得た。なお、本実験例の亜鉛抽出工程101における温度等の抽出条件は、実験例1のものと同じにした。また、残渣20をろ別した後のろ液(不溶解固形分から抽出可能な成分を抽出した後のアルカリ剤の水溶液)は、次にEAFDを溶解するためのアルカリ剤7として利用し、残渣20を純水で洗浄した後の洗浄水は、希釈水として利用した。
次に、亜鉛抽出工程101に引き続く脱鉄脱マンガン工程104では、亜鉛抽出液30に酸化剤11として0.1gの重量のKMnO4結晶を添加した赤色の液に、加熱下で10gの重量の活性炭を加えてその液色が透明になったことを確認後、ろ過精度が0.1μmのメンブレンフィルタで吸引しろ過したろ液(脱鉄及び脱マンガンした亜鉛抽出液132)を得た。ろ紙上の固形分は、脱塩水で洗浄後乾燥し、263gの重量の脱鉄脱マンガンスラッジ8を得た。なお、残りの脱塩水は、ろ液に混合した。
次に、脱鉄脱マンガン工程104に引き続く置換工程103を、亜鉛抽出液132を用いて実験例2及び実験例3のものと同じ内容で実行し、また、炭酸亜鉛分離工程102を、実験例1から実験例3のものと同じ内容で実行し、分離した炭酸亜鉛21をそのまま製品とした。本実験例で得られた炭酸亜鉛21の組成は、表4に示す通りである。但し、本実験例では、炭酸亜鉛21の分析値は、加熱乾燥時に酸化亜鉛に転換したものを分析したものを用いた。
(実験例5)
本実験例は、本発明の第4の実施形態に対応した実験例であり、その結果は図13の表5に示される。
まず、亜鉛抽出工程101では、予め、441gの重量の炭酸カルシウムと、762.8gの重量の電炉ダスト1と、を混合しか焼して得た870gの重量の電炉ダスト(EAFD)1から228.3gの重量のEAFDを分取し、分取したEAFDと、中性アンモニウム塩29として20.4%の濃度のNH4Cl水溶液と、を接触させ、中性アンモニウム塩29の水溶液に溶解しない固形分をろ過により分離した残りの液体として、1280mlの体積の亜鉛抽出液30を得た。中性アンモニウム塩29の水溶液に溶解しない固形分をろ過して純水で洗浄した後に乾燥し、154.5gの重量の残渣20を得た。なお、本実験例の亜鉛抽出工程101における温度等の抽出条件は、実験例1のものと同じにした。
次に、炭酸亜鉛分離工程102を、実験例1から実験例4のものと同じ内容で実行した。但し、分離した炭酸亜鉛21は、製品とされることなく、次の炭酸亜鉛塩化工程105に送られた。
次に、炭酸亜鉛塩化工程105では、炭酸亜鉛分離工程102で固形分として分離した炭酸亜鉛21を希塩酸19に溶解して塩化亜鉛水溶液6を得た。
次に、炭酸亜鉛塩化工程105に引き続く脱鉄脱マンガン工程106では、塩化亜鉛水溶液6に酸化剤11として次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加し、ろ過精度が0.1μmのメンブレンフィルタ吸引しろ過したろ液(脱鉄及び脱マンガンした塩化亜鉛水溶液61)を得た。ろ紙上の固形分は、脱塩水で洗浄後乾燥して脱鉄脱マンガンスラッジ8を得た。脱鉄脱マンガン工程106では鉄やマンガン以外にクロムも除去された。なお、残りの脱塩水は、ろ液に混合した。
次に、置換工程107では、塩化亜鉛水溶液61に平均粒子径が約6μmの粉末状の亜鉛粒子9を5g投入した後に加熱して撹拌し、この撹拌物をろ過精度が0.1μmのメンブレンフィルタで吸引しろ過して、そのろ液として塩化亜鉛水溶液62を得た。メンブレンフィルタ上の固形分を脱塩水で洗浄した後に吸引脱水し乾燥した固形分は、亜鉛粒子9の溶解に伴い還元されて析出した金属粉10と、溶解せず残った粉末状亜鉛と、の混合物であった。
次に、炭酸亜鉛分離工程108では、塩化亜鉛水溶液62に炭酸ナトリウム16を添加して炭酸亜鉛21を析出させ、Cろ紙を使用した吸引及びろ過により炭酸亜鉛21を分離した。更に、分離した炭酸亜鉛21を加熱して、水酸化亜鉛31及び二酸化炭素に分解し、水酸化亜鉛31をそのまま製品とした。かかる水酸化亜鉛31の組成は、表5では省略しているが、前段の炭酸亜鉛分離工程102で分離した炭酸亜鉛21の組成は、表5に示す通りである。
(実験例6)
本実験例は、本発明の第5の実施形態に対応した実験例であり、その結果は図14の表6に示される。
まず、選択塩化工程201では、竪型の管状炉(反応管)内で反応温度が900℃の条件下で、電炉ダスト1を塩素ガス15及び酸素ガス17の混合ガスと接触させ、管状炉内の電炉ダスト(EAFD)1から、主として塩化亜鉛成分からなる塩化亜鉛3及び酸素2を蒸発させた。管状炉の下部には不揮発性の酸化鉄を主成分とする残渣4が残った。
次に、溶解工程202では、628.3gの塩化亜鉛3を628mlの脱塩水13に溶解して吸引及びろ過し950mlの塩化亜鉛水溶液6を得た。ここで、PbCl2とFe2O3とを主成分とし吸引及びろ過によりろ別された不溶解スラッジ5を水洗して得られた水溶液から、0.525gの鉛を回収した。一方で、水洗により溶解しないFe2O3を主成分とする固形分における乾燥重量は、1.117gであった。
次に、脱鉄工程203では、塩化亜鉛水溶液6を脱塩水で希釈してその体積を1400mlとし、これに対してpH調整剤7として水酸化亜鉛を添加してpHを4.84とし、これをCろ紙で吸引及びろ過してろ液(脱鉄した塩化亜鉛水溶液161)を得た。また、ろ紙上の固形分を脱塩水で洗浄し乾燥して、重量が8.995gの脱鉄スラッジ8を得た。なお、洗浄水は、ろ液に混合した。
次に、置換工程204では、洗浄水を含むろ液(脱鉄した塩化亜鉛水溶液161)に平均粒子径が約6mmで粒状の亜鉛粒子9を50.3g投入した後に加熱し撹拌して、この撹拌物をろ過精度が0.1μmのメンブレンフィルタで吸引及びろ過してろ液(塩化亜鉛水溶液162)を得た。また、メンブレンフィルタ上の固形分を脱塩水で洗浄した後に吸引及び脱水して乾燥した固形分は、亜鉛粒子9の溶解に伴って還元されて析出した金属粉10と、溶解せず残った粉末状亜鉛と、の混合物であった。
次に、脱マンガン工程205では、塩化亜鉛水溶液162に酸化剤11として4gの重量のKMnO4結晶を添加した赤色の液に、加熱下で10gの重量の活性炭を加えてその液色が透明になったことを確認後、ろ過精度が0.1μmのメンブレンフィルタで吸引しろ過したろ液(脱マンガンした亜鉛抽出液163)を得た。ろ紙上の固形分は、脱塩水で洗浄後乾燥し、9.7gの重量の脱マンガンスラッジ8を得た。なお、残りの脱塩水は、ろ液に混合した。
次に、炭酸亜鉛分離工程206では、塩化亜鉛水溶液163にアルカリ剤として炭酸ナトリウム16を添加して炭酸亜鉛21を析出させ、これをCろ紙を使用した吸引及びろ過により分離し、分離した炭酸亜鉛21をそのまま製品とした。本実験例で得られた炭酸亜鉛21の組成は、表6に示す通りである。また、この炭酸亜鉛21は、加熱及び乾燥されると同時に水酸化亜鉛と二酸化炭素とに分解してしまうため、得られた水酸化亜鉛を脱鉄工程203でアルカリ剤の代わりに利用した。
(実験例7)
本実験例は、本発明の第6の実施形態に対応した実験例であり、その結果は図15の表7に示される。
まず、選択塩化工程201及び溶解工程202を実験例6のものと同じ内容で実行した。但し、本実験例の溶解工程202では、回収した鉛は、0.73gであった。
次に、脱鉄脱マンガン工程207では、分取した塩化亜鉛水溶液6を脱塩水で希釈して、これに対して酸化剤11として次亜塩素酸ナトリウムを添加してpHを4.4とし、これをCろ紙で吸引及びろ過してろ液(脱鉄脱マンガンした塩化亜鉛水溶液261)を得た。
次に、置換工程210では、洗浄水を含むろ液(脱鉄脱マンガンした塩化亜鉛水溶液261)に平均粒子径が約6μmで粉末状の亜鉛粒子9を投入した後に加熱し撹拌して、この撹拌物をろ過精度が0.1μmのメンブレンフィルタで吸引及びろ過してろ液(塩化亜鉛水溶液262)を得た。
ここで、前段の炭酸亜鉛分離工程208では、塩化亜鉛水溶液261にアルカリ剤7として炭酸ナトリウムを添加して炭酸亜鉛21を析出させ、これをCろ紙を使用した吸引及びろ過により分離した。この炭酸亜鉛21は、加熱及び乾燥されると同時に水酸化亜鉛と二酸化炭素とに分解してしまうため、得られた水酸化亜鉛を脱鉄脱マンガン工程でアルカリ剤の代わりに利用した。
また、アルカリ再生工程209では、炭酸亜鉛21を分離後の塩化ナトリウムを主成分とするろ液22に炭酸アンモニウム24を添加して炭酸ナトリウムを析出させ、これをろ過することにより炭酸ナトリウムを回収して、この回収した炭酸ナトリウムを炭酸亜鉛分離工程208でのアルカリ剤7として利用した。また、このように炭酸ナトリウムをろ過したろ液25は、排出した。
次に、炭酸亜鉛分離工程206では、塩化亜鉛水溶液262にアルカリ剤として炭酸ナトリウム16を添加して炭酸亜鉛21を析出させ、これをCろ紙を使用した吸引及びろ過により分離した。更に、分離した炭酸亜鉛21を加熱して、水酸化亜鉛31及び二酸化炭素に分解し、水酸化亜鉛31をそのまま製品とした。かかる水酸化亜鉛31の組成は、表7に示す通りである。
(実験例8)
本実験例は、本発明の第7の実施形態に対応した実験例であり、その結果は図16の表8に示される。
まず、塩酸浸出工程301では、557.8gの重量の電炉ダスト1を塩酸19として1050mlの体積の濃度35%の塩酸水溶液に溶解し、塩酸に溶解しない固形分をろ過により分離して塩化亜鉛水溶液6を得た。塩酸に溶解しない固形分は、残余の917mlの体積の濃度35%の塩酸水溶液に接触させて抽出した後に純水で洗浄後ろ過して乾燥重量38.5gの残渣20を得た。このときの溶解、抽出条件は、温度が95℃、圧力が常圧で、塩酸と電炉ダスト1との接触時間が8時間とした。なお、残渣20をろ別したろ液(不溶解固形分から抽出可能な成分を抽出した濃度35%の塩酸水溶液)は、次にEAFDを溶解するための塩酸19として利用し、残渣20を純粋で洗浄した後の洗浄水は、希釈水として利用した。
次に、脱鉄脱マンガン工程302では、分取した塩化亜鉛水溶液6を脱塩水で希釈してその体積を2680mlとし、これに対してpH調整剤7として水酸化ナトリウムと酸化剤11として次亜塩素酸ナトリウムとを添加してpHを4.05とし、これをCろ紙で吸引及びろ過したろ液(脱鉄脱マンガンした塩化亜鉛水溶液261)を得た。また、ろ紙上の固形分は、脱塩水で洗浄し乾燥して、重量が263gの脱鉄脱マンガン8を得た。脱鉄脱マンガン工程302では鉄やマンガン以外にクロムも除去された。なお、洗浄水は、ろ液に混合した。
次に、置換工程303では、洗浄水を含むろ液(脱鉄脱マンガンした塩化亜鉛水溶液261)に平均粒子径が約6μmで粉末状の亜鉛粒子9を25g投入した後に加熱し撹拌して、この撹拌物をろ過精度が0.1μmのメンブレンフィルタで吸引及びろ過してろ液(ろ過後の塩化亜鉛水溶液262)を得た。また、メンブレンフィルタ上の固形分を脱塩水で洗浄した後に吸引及び脱水して乾燥した36.6gの重量の固形分は、亜鉛粒子9の溶解に伴って還元されて析出した金属粉10と、この際に溶解せず残った粉末状亜鉛と、の混合物であった。
次に、炭酸亜鉛分離工程304では、塩化亜鉛水溶液262にアルカリ剤として炭酸ナトリウム16を添加して炭酸亜鉛21を析出させ、これをCろ紙を使用した吸引及びろ過により分離し、分離した炭酸亜鉛21をそのまま製品とした。本実験例で得られた炭酸亜鉛21の組成は、表8に示す通りである。
なお、本発明は、構成要素の形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、かかる構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。