JP6654151B2

JP6654151B2 - 樹脂製パネルの生産方法

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Publication number: JP6654151B2
Application number: JP2016572014A
Authority: JP
Inventors: 智志塩田
Original assignee: Riken Technos Corp
Current assignee: Riken Technos Corp
Priority date: 2015-01-26
Filing date: 2016-01-25
Publication date: 2020-02-26
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Description

本発明は、樹脂製パネルの生産方法に関する。更に詳しくは、本発明は、冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚などの物品の本体の正面部を開閉する扉体の正面パネル、及び本体の平面部を開閉する蓋体の平面パネルなどに好適に用いることのできる樹脂製パネルの生産方法に関する。

従来、冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚などの物品の本体の正面部を開閉する扉体の正面パネルを構成する部材として、十分な強度及び剛性を要することから、鋼板が用いられてきた（例えば、特許文献１）。しかし、正面パネルを構成する部材として、鋼板を用いることにより、鋼板は比重が大きいことから、扉体が重くなるという不都合がある。また、鋼板は熱伝導性が高いため、例えば、冷蔵庫の扉体の場合には、十分な断熱性を得るためには発泡体を厚くする必要があり、大きなスペースを要するという不都合がある。

近年、ガラスは、その透明感のある意匠感から、冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚などの物品の扉体の正面パネルを構成する部材として注目されている。しかし、ガラスには、耐衝撃性が低く割れ易い、加工性が低い、比重が大きく重いなどの不都合がある。

そこで、特許文献２及び３には、冷蔵庫の本体の正面部を開閉する扉体の正面パネルとして、樹脂シート製のパネルを用いることが提案されている。しかし、これらの文献には、樹脂シートから正面パネルを生産する方法について、何の記載も示唆もない。

特開２００３−８３６７１号公報特開昭６３−１６３７６８号公報特開平５−２８８４５８号公報

本発明の課題は、冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚などの物品の本体の正面部を開閉する扉体の正面パネル、及び本体の平面部を開閉する蓋体の平面パネルなどに好適に用いることのできる樹脂製パネルの生産方法を提供することにある。

本発明者は、鋭意研究した結果、特定の樹脂シートを特定の方法で打抜き加工することにより、上記課題を達成できることを見出した。

すなわち、本発明の諸態様は、以下のとおりである。
［１］．物品の正面パネルの少なくとも一部として使用される樹脂製パネルを生産する方法であって、
（Ａ）厚みが０．５〜１０ｍｍの樹脂シートを加工台に固定する工程；および
（Ｂ）トムソン刃を、上記樹脂シートの上記物品の外面となる面側から、上記樹脂シートに対して略鉛直に入れ、上記正面パネルを打抜く工程
を含み、ここで
（Ｃ）上記トムソン刃は、刃先の角度が３０〜６０度の両刃である、上記方法。
［２］．上記樹脂シートの引張弾性率が１５００ＭＰａ以上である、上記［１］項に記載の方法。
［３］．上記樹脂シートが、上記物品の外面となる面側から順に透明樹脂シートの層、及び着色樹脂シートの層を含み、上記着色樹脂シートが、ＡＳＴＭ−Ｄ２７９４に準拠し、温度０℃の環境下、高さ５０ｃｍ、撃芯の直径１インチ、撃芯の重さ１ｋｇ、及び受芯台の直径１／２インチの条件でデュポン衝撃試験を行ったとき、割れないものである、上記［１］又は［２］項に記載の方法。
［４］．上記透明樹脂シートが、下記特性（ｉ）〜（ｉｉｉ）を満たす上記［３］項に記載の方法：
（ｉ）全光線透過率８０％以上；
（ｉｉ）ヘーズ５％以下；
（ｉｉｉ）黄色度指数３以下。
［５］．上記樹脂シートが、非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂シートの層を１層以上含むことを特徴とする、上記［１］〜［４］項の何れか１項に記載の方法。
［６］．少なくとも一部として樹脂製パネルを含む正面パネルを有する物品を生産する方法であって、
上記［１］〜［５］項の何れか１項に記載の方法を用いて樹脂製パネルを生産する工程；及び、
上記工程で生産された樹脂製パネルを用いて物品を組み立てる工程、
を含む上記方法。

本発明の生産方法により、冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚などの物品の本体の正面部を開閉する扉体の正面パネル、及び本体の平面部を開閉する蓋体の平面パネルなどに好適に用いることのできる樹脂製パネルを得ることができる。

ネコ耳が生じた樹脂製パネルの断面の概念図である。良好に打抜加工された樹脂製パネルの断面の概念図である。好ましいトムソン刃の一例を示す断面の概念図である。

本明細書において、「シート」の用語は、フィルムや板をも含む用語として使用する。「樹脂」の用語は、２以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。「扉体」の用語は、「蓋体」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。「正面パネル」の用語は、平面パネル、背面パネル、側面パネル、及び底面パネルのいずれかと相互交換的に又は相互置換可能に使用する。「トムソン刃」の用語は、「トムソン型」として知られた形状を有する刃を意味する。「物品」の用語は、樹脂製パネルを配置可能な少なくとも一つの平らな面を有する筐体を意味し、特に限定されないが、典型例として冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚を含む。従って、「物品の外面」とは、筐体の外側面を指す。

本発明の方法は、物品の正面パネルの少なくとも一部として使用される樹脂製パネルを生産する方法であって、（Ａ）厚みが０．５〜１０ｍｍの樹脂シートを加工台に固定する工程を含む。
本発明の方法では、一般的に、厚みが均一な樹脂シートの使用を想定している。そのため、本工程での樹脂シートの「厚み」は、通常、樹脂シート全体において一定であるものとする。ただし、これは、完成品である物品の正面パネルの全体が同じ厚みを有することに限定する趣旨ではない。

上記樹脂シートの厚み（複数層から形成されている場合はそれらの層厚みの合計）は、正面パネルとして必要な強度及び剛性を保持する観点から、０．５ｍｍ以上、好ましくは０．８ｍｍ以上、より好ましくは１．２ｍｍ以上である。一方、加工性、及び物品の薄型化の要求に応える観点から、樹脂シートの厚みは、１０ｍｍ以下、好ましくは７ｍｍ以下、より好ましくは５ｍｍ以下である。

上記樹脂シートの引張弾性率は、正面パネルとして必要な強度及び剛性を保持する観点から、好ましくは１５００ＭＰａ以上、より好ましくは１８００ＭＰａ以上である。引張弾性率の上限は特にないが、樹脂シートであるから、通常入手可能な範囲ではせいぜい１００００ＭＰａ程度である。樹脂シートの引張弾性率は、ＪＩＳＫ７１２７：１９９９に従い、試験片タイプ１Ｂ、引張速度５０ｍｍ／分の条件で測定した。

上記樹脂シートを上記加工台に固定する方法は、次工程（Ｂ）においてトラブルが発生しないように確実に固定することができ、かつ上記樹脂シートに固定痕等の外観不良を生じない方法であれば特に制限されず、任意の方法で行うことができる。例えば、表面をゴム等の柔軟な素材で覆われた治具を使用して樹脂シートを挟む方法；エアを使用して吸引又は排気することにより押え付ける方法；及びこれらの組み合わせなどの方法を挙げることができる。加工台の形状は、樹脂シートを一定姿勢で固定可能である限りは特に制限されない。

本発明の方法は、（Ｂ）トムソン刃を、上記樹脂シートの上記物品の外面となる面側から、上記樹脂シートに対して略鉛直に入れ、上記正面パネルを打抜く工程を含む。

本発明の方法は、所謂打抜加工であるため、各種形状への対応自由度が大きく、生産性に優れている。また、樹脂シートは、ガラス調の高い意匠性を有するものであっても、連続生産が可能であり、生産性を高めることが容易である。そのため樹脂シートから打抜くことにより、ガラス調の高い意匠性を有する樹脂製パネルを高い生産性で得ることができる。

一方、打抜加工を、肉厚の樹脂シートに、特に引張弾性率の高い樹脂シートに適用した場合、トムソン刃を上記樹脂シートに対して略鉛直に入れたとしても、樹脂製パネルのトムソン刃を入れた側の面の切断縁には、樹脂が上記トムソン刃により圧延されること等により、断面図において、幅１００〜５００μｍ程度の略三角形状の形状不良がしばしば生じる。以下、当該不良を「ネコ耳」と称する。これは、猫の耳に似た形状を有する外観不良を意味する。
図１は、ネコ耳が生じた樹脂製パネルの断面の概念図である。図１において、１はネコ耳、２はトムソン刃の入る方向、３はネコ耳の幅を示す。
それに対して、図２は、良好に打抜加工された樹脂製パネルの断面の概念図である。図２において、２はトムソン刃の入る方向を示す。

本発明の方法は、上記トムソン刃を、上記樹脂シートの上記物品の外面となる面側から入れる。上記トムソン刃を、上記樹脂シートの上記物品の外面となる面側から入れること；及び上記トムソン刃として刃先の角度が３０〜６０度の両刃であるものを使用することにより、ネコ耳の問題を解決できることは、特異的であり、驚くべきことである。

本発明の方法は、上記トムソン刃として、（Ｃ）刃先の角度が３０〜６０度、好ましくは３５〜５０度の両刃のものを使用する。このような刃先の角度を有するトムソン刃を使用することによって、ネコ耳の問題を解決することができる。別の態様として、トムソン刃として、刃先の角度が３０〜５０度、または３５〜６０度の両刃のものを使用することもまた好ましい。
図３は、好ましいトムソン刃の一例を示す断面の概念図である。図３において、４は刃先、５は刃先の角度を示す。

両刃のトムソン刃としては、刃先から刃元まで角度変化のない１段刃、刃先から刃元にかけて２段階に角度を変化させた２段刃、及び刃先から刃元にかけて３段階に角度を変化させた３段刃などを挙げることができる。これらの中で、ネコ耳の発生を防ぐ観点から、１段刃が好ましい。

また、両刃のトムソン刃としては、刃先が刃の厚み方向の略中央にあるセンター刃、及び刃先が刃の厚み方向において一方に片寄ったものを挙げることができる。これらの中で、ネコ耳の発生を防ぐ観点から、センター刃が好ましい。

上記刃の厚みは、ネコ耳の発生を防ぐ観点から、０．５〜１．５ｍｍが好ましい。別の態様として、刃の厚みは、０．５〜１．２ｍｍ、０．６〜１．５ｍｍ、または０．６〜１．２ｍｍであることもまた好ましい。

上記刃を構成する材料は、特に制限されず、刃を構成する材料として公知のものを使用することができる。典型的には、刃を構成する材料として、ステンレス鋼を用いることができる。

本発明の方法は、排出性（打抜かれた樹脂製パネルをトムソン刃から外す際の作業性）、及びトムソン刃の継目に起因する不良の抑制の観点から、大きなサイズの樹脂製パネルの生産に適している。本発明の方法を使用して生産する樹脂製パネルは、その形状にもよるが、例えば、縦横比が２倍の略長方形である場合には、縦２００ｍｍ、横１００ｍｍ以上の大きさであることが好ましく、縦３００ｍｍ、横１５０ｍｍ以上の大きさであることがより好ましく、縦４００ｍｍ、横２００ｍｍ以上の大きさであることが更に好ましい。略円形である場合には、半径１００ｍｍ以上の大きさであることが好ましく、半径１５０ｍｍ以上の大きさであることがより好ましく、半径２００ｍｍ以上の大きさであることが更に好ましい。

上記樹脂シートは、正面パネルとして必要な強度及び剛性を保持するとともに、好ましくは透明樹脂シートの層を含み、扉体にガラス調の意匠を付与する働きをする。上記樹脂シートの好ましいものとしては、例えば、上記正面パネルの表面側から順に（すなわち物品の外面となる面側から順に）、「透明樹脂シートの層／印刷模様層／着色樹脂シートの層」を含む積層体、「表面保護層／印刷模様層／透明樹脂シートの層／着色樹脂シートの層」を含む積層体、及び「表面保護層／透明樹脂シートの層／印刷模様層／着色樹脂シートの層」を含む積層体を挙げることができる。

上記透明樹脂シートは、ガラス調の意匠を付与する観点から、高い透明性を有するものである。好ましくは高い透明性を有し、かつ着色のないものである。

そのため上記透明樹脂シートは、全光線透過率（ＪＩＳＫ７３６１−１：１９９７に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「ＮＤＨ２０００」（商品名）を用いて測定）が、好ましくは８０％以上、より好ましくは８５％以上、更に好ましくは９０％以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。

また、上記透明樹脂シートは、ヘーズ（ＪＩＳＫ７１３６：２０００に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「ＮＤＨ２０００」（商品名）を用いて測定）が、好ましくは５％以下、より好ましくは３％以下、更に好ましくは２％以下である。ヘーズは低いほど好ましい。

更に上記透明樹脂シートは、黄色度指数（ＪＩＳＫ７１０５：１９８１に従い、株式会社島津製作所の色度計「ＳｏｌｉｄＳｐｅｃ−３７００」（商品名）を用いて測定）が、好ましくは３以下、より好ましくは２以下、更に好ましくは１以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。

上記透明樹脂シートの厚みは、特に制限されないが、深みのある意匠を付与する観点から、通常０．１ｍｍ以上、好ましくは０．３ｍｍ以上、より好ましくは１ｍｍ以上であってよい。また、物品の軽量化の要求に応える観点から、通常１０ｍｍ以下、好ましくは１０ｍｍ未満、より好ましくは６ｍｍ以下、更に好ましくは３ｍｍ以下であってよい。

上記透明樹脂シートは１の樹脂シートであってもよく、２以上の樹脂シートの積層体であってもよい。上記透明樹脂シートが２以上の樹脂シートの積層体である場合、積層方法は制限されず、任意の方法で積層することができる。例えば、各々の樹脂シートを任意の方法により得た後、ドライラミネート又は熱ラミネートする方法；各々の構成材料を押出機にて溶融させ、フィードブロック法又はマルチマニホールド法若しくはスタックプレート法によるＴダイ共押出により積層体を得る方法；少なくとも１の樹脂シートを任意の方法により得た後、該樹脂シート上に他の樹脂シートを溶融押出する押出ラミネート方法；任意のフィルム基材上に溶融押出、又は構成材料と溶剤とを含む塗料を塗布乾燥し、形成された樹脂シートを、上記フィルム基材から剥離し、他の樹脂シートの上に転写する方法、及びこれらの２以上を組み合わせる方法などを挙げることができる。

また、上記透明樹脂シートが２以上の樹脂シートの積層体である場合、所望により、意匠感を高めるため、任意の層間に、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。なお、印刷層により、深み感を損なわないようにするため、印刷は部分的に設けるか、又は透明なインクを用いて設けることが好ましい。また、印刷層は１に限定されず、２以上であってもよい。

上記透明樹脂シートとしては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂；アクリル系樹脂；ポリカーボネート系樹脂；ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂；セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂；ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂（ＡＢＳ樹脂）、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂；ポリ塩化ビニル系樹脂；ポリ塩化ビニリデン系樹脂；ポリ弗化ビニリデンなどの含弗素系樹脂；その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどの樹脂シートを挙げることができる。これらのシートは、無延伸シート、一軸延伸シート、二軸延伸シートを包含する。また、これらの１種以上を２層以上積層した積層シートを包含する。

これらの中で、意匠性、パネルとしての要求される機械的物性、及び加工性の観点から、非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂シートが、透明樹脂シートとして好ましい。

上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂シートは、非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を主として（通常５０質量％以上、好ましくは７５質量％以上、より好ましくは９０質量％以上）含む樹脂又は樹脂組成物から形成されたシートである。

上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸成分とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、１，２−ブタンジオール、１，３−ブタンジオール、１，４−ブタンジオール、１，５−ペンタンジオール、３−メチル−１，５−ペンタンジオール、２−メチル−１，３−プロパンジオール、１，４−シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール成分とのポリエステル系共重合体を挙げることができる。より具体的には、モノマーの総和を１００モル％として、テレフタル酸４５〜５０モル％及びエチレングリコール３０〜４０モル％、１，４−シクロヘキサンジメタノール１０〜２０モル％を含むグリコール変性ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴＧ）；テレフタル酸４５〜５０モル％、エチレングリコール１６〜２１モル％及び１，４−シクロヘキサンジメタノール２９〜３４モル％を含むグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート（ＰＣＴＧ）；テレフタル酸２５〜４９．５モル％、イソフタル酸０．５〜２５モル％及び１，４−シクロヘキサンジメタノール４５〜５０モル％を含む酸変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート（ＰＣＴＡ）；テレフタル酸４５〜５０モル％、イソフタル酸５〜０モル％、及び１，４−シクロヘキサンジメタノール２５〜４５モル％、２，２，４，４，−テトラメチル−１，３−シクロブタンジオール２５〜５モル％を含む共重合体；及びテレフタル酸３０〜４５モル％、イソフタル酸５〜２０モル％及びエチレングリコール３５〜４８モル％、ネオペンチルグリコール２〜１５モル％、ジエチレングリコール１モル％未満、ビスフェノールＡ１モル％未満を含む酸変性及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレートなどの１種又は２種以上の混合物を挙げることができる。

なお、本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのＤｉａｍｏｎｄＤＳＣ型示差走査熱量計を使用し、試料を３２０℃で５分間保持した後、２０℃／分の降温速度で−５０℃まで冷却し、−５０℃で５分間保持した後、２０℃／分の昇温速度で３２０℃まで加熱するという温度プログラムでＤＳＣ測定を行って得られる融解曲線における融解熱量が、１０Ｊ／ｇ以下のポリエステルを非結晶性、１０Ｊ／ｇを超えて６０Ｊ／ｇ以下のポリエステルを低結晶性と定義した。

上記着色樹脂シートは、外部から物品の内部（例えば、正面パネルを支持するための構造、及び充填されている断熱材など）が観察できないようにする隠蔽層としての働きをする。

上記着色樹脂シートとしては、制限されず、任意の着色樹脂シートを用いることができる。例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂；アクリル系樹脂；ポリカーボネート系樹脂；ポリ（メタ）アクリルイミド系樹脂；ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂；セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びアセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂；ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂（ＡＢＳ樹脂）、及びスチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂；ポリ塩化ビニル系樹脂；ポリ塩化ビニリデン系樹脂；ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂；その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどの着色樹脂シートを挙げることができる。これらのシートは、無延伸シート、一軸延伸シート、二軸延伸シートを包含する。また、これらの１種以上を２層以上積層した積層シートを包含する。ここでの積層は、透明樹脂シートについて上述したような任意の公知の方法で行うことができる。

これらの中で、意匠性、パネルとしての要求される機械的物性、及び加工性の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂、および非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂シートが、着色樹脂シートとして好ましい。非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂シートについては、上記透明樹脂シートの説明において上述した。

上記着色樹脂シートには、その目的に反しない限度において、所望により、コアシェルゴムなどの熱可塑性樹脂；可塑剤；顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー；滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤などの任意成分を含ませることができる。上記コアシェルゴムの例としては、メタクリル酸エステル・スチレン／ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン／ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン／エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン／アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル／アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル／アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などを挙げることができる。上記可塑剤の例としては、特に限定されないが、ジ−２−エチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、イタコン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤、及びエポキシ系可塑剤などが挙げられる。これらの任意成分の配合量は、通常、着色樹脂シートの全質量に対して０．０１〜４０質量％程度であってよい。

上記着色樹脂シートの厚みは、特に制限されないが、隠蔽効果を得る観点から、通常０．０３ｍｍ以上、好ましくは０．０５ｍｍ以上、より好ましくは０．１ｍｍ以上であってよい。また、物品の軽量化の要求に応える観点から、通常６ｍｍ以下、好ましくは４ｍｍ以下、より好ましくは３ｍｍ以下であってよい。

上記着色樹脂シートは、打抜加工性の観点から、ＡＳＴＭ−Ｄ２７９４に準拠し、温度０℃の環境下、高さ５０ｃｍ、撃芯の直径１インチ、撃芯の重さ１ｋｇ、及び受芯台の直径１／２インチの条件でデュポン衝撃試験を行ったとき、割れないものであることが好ましい。温度−１０℃の環境下、高さ５０ｃｍ、撃芯の直径１インチ、撃芯の重さ１ｋｇ、及び受芯台の直径１／２インチの条件でデュポン衝撃試験を行ったとき、割れないものであることがより好ましい。上記着色樹脂シートが、上述の特性を有するものであることにより、打抜加工時に上記着色樹脂シートの層が割れ欠けするなどのトラブルが防止される。更に、驚くべきことに、ネコ耳の発生も防止される。

上記印刷模様層は、上記樹脂シートに高い意匠性を付与するために設けるものであり、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。また、上記印刷模様層を、上記着色樹脂シートの替わりに、隠蔽層を兼ねて形成してもよい。また、金属調の意匠を施すため、アルミニウム、錫、チタン、インジウム及びこれらの酸化物などを、直接又はアンカーコートを介して、透明樹脂シートの正面側若しくは背面側の面の上に又は着色樹脂シートの正面側の面の上に、全面的に又は部分的に、公知の方法により蒸着してもよい。

上記印刷は、直接又はアンカーコートを介して、透明樹脂シートの正面側若しくは背面側の面の上に又は着色樹脂シートの正面側の面の上に、全面的に又は部分的に、施すことができる。上記模様としては、ヘアライン等の金属調模様、木目模様、大理石等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、寄木模様、及びパッチワークなどを挙げることができる。上記印刷インキとしては、バインダーに顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、及び硬化剤等を適宜混合したものを使用することができる。上記バインダーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、及び酢酸セルロース系樹脂などの樹脂、及びこれらの樹脂組成物を使用することができる。

上記透明樹脂シートと上記着色樹脂シートとの積層は、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。例えば、熱ラミネート、及びドライラミネートなどの方法を挙げることができる。

上記表面保護層は、特に限定されないが、例えばポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコン系樹脂、及び弗素系樹脂などの熱可塑性樹脂組成物を含む塗料；活性エネルギー線硬化性樹脂を、１分子中に２以上のイソシアネート基（−Ｎ＝Ｃ＝Ｏ）を有する化合物及び／又は光重合開始剤と共に含む組成物などの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含む塗料を用い、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート及びダイコートなどの公知の塗膜形成方法によって形成することができる。
上記表面保護層は、特に限定されないが、例えば樹脂シートの表面部に、上述の塗料を用いて形成された塗膜、弗化ビニリデン系樹脂フィルム、及び二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂などの耐外傷性や耐溶剤性に優れた樹脂フィルムを、熱ラミネートあるいは接着剤によって積層することによって設けることができる。
また、表面保護層の厚みは、例えば０．０５ｍｍ〜１ｍｍ程度であってよい。

以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

（Ｐ）透明樹脂シート
（Ｐ−１）イーストマンケミカルカンパニーの非晶性芳香族ポリエステル系樹脂「ＫＯＤＡＲＰＥＴＧＧＳ１」（商品名）、ガラス転移温度８１℃、融解熱量０Ｊ／ｇ（ＤＳＣセカンド融解曲線に明瞭な融解ピークなし）を用い、Ｔダイ押出製膜法により、Ｔダイ出口樹脂温度２７０℃の条件で、厚み１１００μｍの透明樹脂シートを製膜した。引張弾性率１５００ＭＰａ、全光線透過率８９％、ヘーズ１．３％、及び黄色度指数０．４であった。

（Ｑ）着色樹脂シート
（Ｑ−１）重合度８００の塩化ビニル単独重合体９０質量部、コアシェルゴム（メタクリル酸エステル・スチレン／ブタジエンゴムグラフト共重合体）１０質量部、及び可塑剤（ジ−２−エチルヘキシルフタレート）３質量部を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物から、厚み３００μｍの黒色樹脂シートを形成した。上述の条件でデュポン衝撃試験を行ったとき、温度０℃、温度−１０℃の何れも割れがなかった。
（Ｑ−２）重合度８００の塩化ビニル単独重合体９０質量部、コアシェルゴム（メタクリル酸エステル・スチレン／ブタジエンゴムグラフト共重合体）１０質量部、及び可塑剤（ジ−２−エチルヘキシルフタレート）３質量部を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物から、厚み１５０μｍの黒色樹脂シートを形成した。上述の条件でデュポン衝撃試験を行ったとき、温度０℃、温度−１０℃の何れも割れがなかった。
（Ｑ−３）重合度８００の塩化ビニル単独重合体９５質量部、コアシェルゴム（メタクリル酸エステル・スチレン／ブタジエンゴムグラフト共重合体）５質量部、及び可塑剤（ジ−２−エチルヘキシルフタレート）２３質量部を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物から、厚み３００μｍの黒色樹脂シートを形成した。上述の条件でデュポン衝撃試験を行ったとき、温度０℃、温度−１０℃の何れも割れがなかった。
（Ｑ−４）重合度８００の塩化ビニル単独重合体９５質量部、コアシェルゴム（メタクリル酸エステル・スチレン／ブタジエンゴムグラフト共重合体）５質量部、及び可塑剤（ジ−２−エチルヘキシルフタレート）３質量部を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物から、厚み３００μｍの黒色樹脂シートを形成した。上述の条件でデュポン衝撃試験を行ったとき、温度０℃、温度−１０℃の何れも割れが発生した。

（Ｒ）接着剤
（Ｒ−１）ＤＩＣグラフィックス株式会社の塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル共重合体系接着剤「ＶＴＰ−ＮＴ」（商品名）

例１（物品の正面パネルの製造）
上記透明樹脂シート（Ａ−１）と上記着色樹脂シート（Ｂ−１）とを、上記接着剤（Ｒ−１）を用いてドライラミネートし、多層樹脂シートを得た（接着剤（Ｒ−１）の層は「印刷模様層」を仮想して形成された）。
得られた多層樹脂シートを適宜の大きさに裁断し、加工台に固定し、トムソン刃（１段刃タイプの両刃、刃先の角度４２度、刃の厚み１ｍｍ。）を、上記多層樹脂シートの上記透明樹脂シート側の面（物品の外面となる面）側から、上記多層樹脂シートに対して略鉛直に入れ、縦４００ｍｍ、横４００ｍｍの正面パネルを打抜いた。
同様にして縦２００ｍｍ、横１００ｍｍの正面パネルを打抜いた。
上記で得た正面パネルについて、目視観察により、ネコ耳などの不良の有無を確認した。何れの正面パネルについても、結果は良好であった（不良の発生は認められなかった）。

例２
着色樹脂シートとして、上記着色樹脂シート（Ｑ−２）を用いたこと以外は、例１と同様に物品の正面パネルの製造およびネコ耳などの不良の有無の確認を行った。何れの正面パネルについても、結果は良好であった（不良の発生は認められなかった）。

例３
着色樹脂シートとして、上記着色樹脂シート（Ｑ−３）を用いたこと以外は、例１と同様に物品の正面パネルの製造およびネコ耳などの不良の有無の確認を行った。何れの正面パネルについても、結果は良好であった（不良の発生は認められなかった）。

例４
着色樹脂シートとして、上記着色樹脂シート（Ｑ−４）を用いたこと以外は、例１と同様に物品の正面パネルの製造およびネコ耳などの不良の有無の確認を行った。何れの正面パネルについても、ネコ耳は認められなかったが、着色樹脂シートの層に割れ・欠けが認められた。

例５
トムソン刃として、１段刃タイプの両刃、刃先の角度２６度、刃の厚み１ｍｍのものを使用したこと以外は、例１と同様に物品の正面パネルの製造およびネコ耳などの不良の有無の確認を行った。何れの正面パネルについても、ネコ耳が認められた。

例６
トムソン刃として、片刃、刃先の角度４０度、刃の厚み１ｍｍのものを使用したこと以外は、例１と同様に物品の正面パネルの製造およびネコ耳などの不良の有無の確認を行った。何れの正面パネルについても、ネコ耳が認められた。

例７
トムソン刃として、１段刃タイプの両刃、刃先の角度３０度、刃の厚み１ｍｍのものを使用したこと以外は、例１と同様に物品の正面パネルの製造およびネコ耳などの不良の有無の確認を行った。縦４００ｍｍ、横４００ｍｍの正面パネルについては、結果は良好であった（不良の発生は認められなかった）。縦２００ｍｍ、横１００ｍｍの正面パネルについては、ネコ耳が認められた。

例８
トムソン刃として、１段刃タイプの両刃、刃先の角度３６度、刃の厚み１ｍｍのものを使用したこと以外は、例１と同様に物品の正面パネルの製造およびネコ耳などの不良の有無の確認を行った。何れの正面パネルについても、結果は良好であった（不良の発生は認められなかった）。

例９
トムソン刃として、１段刃タイプの両刃、刃先の角度５０度、刃の厚み１ｍｍのものを使用したこと以外は、例１と同様に物品の正面パネルの製造およびネコ耳などの不良の有無の確認を行った。何れの正面パネルについても、結果は良好であった（不良の発生は認められなかった）。

例１０
上記着色樹脂シート（Ｂ−１）側の面から打抜いたこと以外は、例１と同様に物品の正面パネルの製造およびネコ耳などの不良の有無の確認を行った。何れの正面パネルについても、ネコ耳が認められた。

本発明の構成が、実施例により具体的に説明されたが、これらは本発明を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特徴から外れない範囲内で様々な変形が可能である。本明細書に開示された実施例により、本発明の技術思想と技術的範囲が何ら限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、これと同等の範囲内にある全ての技術は、本発明の技術的範囲に含まれるものと解釈されるべきである。

１：ネコ耳
２：トムソン刃の入る方向
３：ネコ耳の幅
４：刃先
５：刃先の角度

Claims

樹脂製パネルを配置可能な少なくとも一つの平らな面を有する筐体の正面パネルの少なくとも一部として使用される樹脂製パネルを生産する方法であって、
（Ａ）厚みが０．５〜１０ｍｍの樹脂シートを加工台に固定する工程であって、この樹脂シートが、上記筐体の外面となる面側から順に透明樹脂シートの層、及び着色樹脂シートの層を含む、工程；および
（Ｂ）トムソン刃を、上記樹脂シートの上記筐体の外面となる面側から、上記樹脂シートに対して略鉛直に入れ、上記正面パネルを打抜く工程
を含み、ここで
（Ｃ）上記トムソン刃は、刃先の角度が３０〜６０度の両刃である、上記方法。
上記樹脂シートの引張弾性率が１５００ＭＰａ以上である、請求項１に記載の方法。
上記着色樹脂シートが、ＡＳＴＭ−Ｄ２７９４に準拠し、温度０℃の環境下、高さ５０ｃｍ、撃芯の直径１インチ、撃芯の重さ１ｋｇ、及び受芯台の直径１／２インチの条件でデュポン衝撃試験を行ったとき、割れないものである、請求項１又は２に記載の方法。
上記透明樹脂シートが、下記特性（ｉ）〜（ｉｉｉ）を満たす請求項３に記載の方法：
（ｉ）全光線透過率８０％以上；
（ｉｉ）ヘーズ５％以下；
（ｉｉｉ）黄色度指数３以下。
上記樹脂シートが、非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂シートの層を１層以上含むことを特徴とする、請求項１〜４の何れか１項に記載の方法。
少なくとも一部として樹脂製パネルを含む正面パネルを有する物品を生産する方法であって、
請求項１〜５の何れか１項に記載の方法を用いて樹脂製パネルを生産する工程；及び、
上記工程で生産された樹脂製パネルを用いて物品を組み立てる工程、
を含む上記方法。