JP6653583B2 - 抗菌性能に優れた抗菌性繊維布帛 - Google Patents
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Description
セルロース繊維に、人体には安全で、しかも耐久性のある抗菌性を付与することは容易なことではなく、これまでに繊維処理剤として用いられている第4級アンモニウム塩系等の抗菌剤は、洗濯耐久性に乏しく、敏感肌の人の場合、皮膚がかぶれる等の問題があるため、人体に優しく、抗菌性能の満足のいくものは得られていない。
特に、最近ではMRSAのような耐性菌の出現により、抗生物質が抗菌性万能とはいえなくなり、このような耐性菌への配慮も必要となっている。
さらに、ジフェニルエーテル系抗菌剤のように加工繊維の焼却時に、発がん物質のダイオキシンが生成する事例が報告されており、環境への配慮も必要となっている。
耐性菌に対しても強い抗菌性を示し、かつ、発がん物質の生成もない抗菌剤として、ゼオライトに銀、銅又は亜鉛を担持させた無機化合物が、これを繊維ポリマー中に練り込む等の方法において使用されているが、所望の効果を発揮させるためには使用量を多くする必要があり、また、使用量が多くなると経時的に酸化を受け変色を起こす問題があり、製品での安定性、安全性が高く、抗菌性能に優れた布帛が求められている。
また、下記の特許文献2には、キトサンをセルロースと共にロダン酸塩水溶液に溶解した原液を紡糸するキトサン含有セルロース繊維が提案されている。しかしながら、十分な抗菌効果を発現させるにはキトサン含有量を5重量%以上と多くする必要がある。
また、下記の特許文献3には、ビスコースの原液に粒径4mm以下のキチンを溶解させビスコース法にて紡糸するキチンキトサンビスコース繊維が提案されている。しかしながら抗菌効果を発現させるためには、キチンキトサン含有量を5%と高くする必要がある。
また、キチンナノファイバーを酸性水溶液に浸けて超音波照射にてキチンナノファイバー水分散体を作製し、この水分散体に合成繊維布帛を浸漬し、樹脂バインダーを使用せずに、キチンナノファイバーを網目状に直接付着させることで抗菌性能に優れた布帛を得ることができるものの、セルロース繊維をかかる方法で浸漬処理した場合、キチンナノファイバーは凝集し、網目状に付着しないことから洗濯耐久性が悪いという問題がある。
このように、現状では、天然物質で安全性が高く、人体にも環境にも優しい脱アセチル化したキチンをセルロース繊維からなる布帛に、バインダー樹脂や架橋剤を用いずに、少量付着させた、抗菌性能の洗濯耐久性に優れた布帛は未だ得られていない。
[1]セルロース繊維からなる繊維表面に、幅20〜80nm、長さ150〜600nmのキチンナノファイバーが、該繊維の表面積1μm2あたり、25本以上で直接付着していることを特徴とする抗菌性繊維布帛。
[2]幅20〜80nm、長さ150〜600nmのキチンナノファイバーをpH3.5〜5.0に調整した酸性溶液に分散させた溶液を、1粒滴あたりの大きさが20μm以下となる噴霧装置を用いて、セルロース繊維からなる繊維表面に噴霧して、該キチンナノファイバーを付着させる工程を含む、前記[1]に記載の抗菌性繊維布帛の製造方法。
本実施形態の抗菌性繊維布帛は、セルロース繊維からなる繊維表面に、幅20〜80nm、長さ150〜600nmのキチンナノファイバーが、該繊維の表面積1μm2あたり、25本以上で直接付着していることを特徴とする抗菌性繊維布帛である。
セルロース繊維とは、綿、麻等の天然セルロース繊維やビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維をいい、再生セルロース繊維が好ましく使用でき、中でも銅アンモニア法によって得られるキュプラ(旭化成せんい(株)製ベンベルグ(登録商標))を用いると、所望の効果が最も顕著に発現されるため好ましい。
セルロース繊維は、特に限定しないが、総繊度20〜300デシテックスの繊維であることが好ましい。さらに断面形状は、L型断面の場合、しなやかな風合が得やすいとともに比表面積が大きくなっていることから、網目状に付着したキチンナノファイバーの耐久性が高まるので好ましい。
繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや、太細の斑があるものでもよい。
繊維が加工される糸状の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸、エアジェット精紡糸等の紡績糸、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等が挙げられる。
布帛形態としては、編物、織物、及びこれらの複合布帛(例えば、積層布帛)が挙げられる。
セルロース繊維とその他の繊維を混用する場合の糸条の形態の例としては、混紡(混綿、フリース混紡、スライバー混紡、コアヤーン、サイロスパン、サイロフィル、ホロースピンドル等)、交絡混繊、交撚、意匠撚糸、カバリング(シングル、ダブル)、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚)、伸度差仮撚、位相差、仮撚加工後に後混繊、2フィード(同時フィードやフィード差)空気噴射加工等による混用形態が挙げられる。
またセルロース繊維とその他繊維を混用する布帛形態の例としては、編物、織物、及びこれらの複合布帛(例えば、積層布等)がある。具体例としては、いわゆる機上混用品があり、製編織時に他の裸糸又は被覆糸を機上にてセルロース繊維と他の繊維を引き揃えて又は合糸して混用した編織物が挙げられる。
本実施形態においては、セルロース繊維と他の繊維との混用形態は何ら制限されるものではなく、セルロース繊維と他の繊維が公知の混用手段によって混用されていればよい。
キチンナノファイバーは、キチン含有生物由来の材料からなるものであり、例えば、特開2010−1830309号公報、特許第5186694号公報等の方法により得られたものや市販品として、例えば、(株)スギノマシン製のBiNFi−s(ビンフィス)等が挙げられる。
本実施形態においては、バインダー樹脂を用いることなくセルロース繊維からなる布帛の繊維表面にキチンナノファイバーを網目状に直接付着させたものであることに特徴がある。
本明細書中、用語「直接付着している」とは、バインダー樹脂、架橋剤等を用いずに、キチンナノファイバーがセルロース繊維の表面に長期間存在している状態を意味する。
キチンナノファイバーを網目状に直接付着させるためには、キチンナノファイバーをpH3.5〜5.0に調整した酸性水溶液に分散させ、超音波照射を行い、キチンナノファイバー1本1本をバラケさせて分散させるともに、この分散溶液のゼータ電位をプラスに高めたキチンナノファイバー水分散体を用いることができる。
この際、pH3.5〜5.0の酸性水溶液の調整においては、任意の酸を用いることができるが、オキシカルボン酸を用いるのが、超音波照射した際にキチンナノファイバーが凝集することなく1本1本バラケさせ、水溶液中での分散性を高め易いともに分散水溶液のゼータ電位をプラス側に高めることができる点で好ましい。オキシカルボン酸とは、有機化合物の1分子内にカルボキシル基と水酸基をもつものをいい、乳酸、リンゴ酸、酒石酸等が、少ない使用量でpHのコントロールがし易い点で、好ましい。
水溶液のpHは、3.5〜5.5に調整することが好ましい。水溶液のpHが3.5未満、5.5以上の範囲では、超音波照射後にキチンナノファイバー分散水溶液のゼータ電位を+40〜100mVに高めることができないし、キチンナノファイバーの分散安定性が悪くなる点で、好ましくない。
pH3.5〜5.0の酸性水溶液に浸すキチンナノファイバーの含有濃度は、0.01〜1.0重量%が好ましく、0.02〜0.5重量%がより好ましい。処理温度は25〜50℃が好ましく、処理時間は20〜90分間が好ましく、15〜45分間がより好ましい。
また、超音波処理を行うときは密閉系で処理することが、キチンナノファイバーの分散安定性が高まる点で、好ましい。
超音波処理にて、キチンナノファイバー水分散体のゼータ電位が高まったか否かは、ゼータ電位計を用いた測定により判断することができる。
分散溶液中のキチンナノファイバーの含有濃度は0.01〜0.4重量%が好ましく、より好ましくは0.02〜0.3重量%である。含有濃度が0.01重量%未満では、所望の抗菌性能が得られず、他方、0.4重量%を超えると、しなやかな風合が得られにくくなる点で、好ましくない。
また、繊維表面に網目状に付着したものがキチンであるかは、TOF−SIMSによるイオン強度を測定することにより確認することができる。
また、衣服の着用時、汗をかいたときに快適に感じるには、布帛が水分を吸い取る力を有することが必要であるが、汗を吸い取るだけでは一ヶ所に水分が保持されるのでベタツキ感が解消されずに不快感をもったままである。ベタツキ感を解消するためには、吸い取った水分をすばやく拡散させる必要がある。本実施形態においては、繊維表面にキチンナノファイバーが網目状に直接付着しているので、繊維表面上に超微細な起伏ができ、この起伏と表面積の増大により水分をすばやく拡散させる力を発揮する。着用時、汗をかいたときの快適性は水滴消失時間と吸水拡散面積で表すことができる。水滴消失時間と吸水拡散と快適性との関係において、水滴消失時間が2秒以下、好ましくは1秒以下で吸水拡散面積が8cm2以上、好ましくは10cm2以上であると着用快適性に優れる。本実施形態の布帛においては、水滴消失時間が1秒以下、吸水拡散面積が11cm2を達成し、肌着衣料に用いた場合、しなやかな風合を有していることから肌触りがよく、汗をかいたとき肌にはりつくことなく着心地のよい衣料が得られる。
このようにして得られたセルロース繊維からなる布帛は、繊維製品衛生加工評議会(SEK)が定める認証基準に規定されている抗菌性能に優れたものとなる。具体的には、後述する黄色ブドウ球菌における静菌活性値が2.2以上、好ましくは2.5以上である。
本実施形態の抗菌性布帛は、繰り返し洗濯した後でも、上記試験における抗菌性能に優れることを特徴とする。具体的には、JIS−L−0217−103法による洗濯を20回繰り返した後の布帛でも、上記抗菌性能を維持することができる。
本実施形態の抗菌性繊維性布帛は、上記抗菌性能に加え、吸水性能にも優れ、具体的には洗濯20回後の水滴消失時間が2秒以下であり、吸水拡散面積が8cm2以上であり商品価値の高い布帛品である。
以下、実施例等で用いた特性値の測定法を示す。
(1)抗菌性評価
繊維製品衛生加工評議会(SEK)の統一試験法に準じて行った。滅菌後クリーンベンチ内で乾燥した検体(1辺が約18mmの正方形の試験片0.4g)に、予め高圧蒸気滅菌した後、氷冷した1/20濃度のニュートリエントブロスで、生菌数を(1+0.3)×105個/mlに調整した試験菌懸濁液0.2mlを検体全体に均一に浸みるように接種し、減菌したキャップを締め付ける。これを37±1℃で18時間培養し、培養後の生菌数を測定した。
検体は、標準布(抗菌防臭加工製品の加工効果評価試験マニュアルに規定された布)と加工布の2種類であり、試験菌としては、黄色ブドウ状球菌(Staphylococc
us aureus ATCC 6538P)を用い、抗菌性の指標である以下の静菌活性値を算出し、静菌活性値が2.2以上のものを抗菌性ありと判断した。
静菌活性値:LogB−LogC
但し、試験成立条件(LogB−LogA)>1.5を満たすものとする
A:標準布の接種直後に回収した菌数平均値
B:標準布の18時間培養後の菌数平均値
C:試験布の18時間培養後の菌数平均値
走査型電子顕微鏡(日立製作所製、形式S−3500N)を用いて、試料の繊維表面を5万倍に拡大し、適宜に5ヶ所写真撮影し、スケールゲージと比較して、サンプル布帛の繊維表面積1μm2に存在するキチンナノファイバーの幅、長さ、及び数を測定し、平均値を求めた。
JIS L−0217 103法に従って、20回行った。尚、洗剤は、花王(株)製アタック(登録商標) 1g/Lを用いた。
加工品について、JIS−L−1097滴下法に準じて水滴消失時間を評価した。洗濯20回後のサンプルにつき5回測定を行い、平均水滴消失時間を求めた。このときの水滴1滴の平均量は0.039mlであった。
布帛を直径15cmの刺繍用の丸枠に取り付け、布帛表面に水溶性青染料(C.I.アシッドブルー62を0.005wt%含有)を0.1ml滴下し、3分後に濡れ拡がった吸水拡散面積を次式により求めた:
吸水拡散面積(cm2)=[縦の直径(cm)×横の直径(cm)]×π÷4
サンプル毎に測定5回を行い、平均吸水拡散面積を求めた。
検査者(30人)の感触によって加工品の洗濯20回後の布帛を以下の評価基準で相対評価した:
○ :肌触りのよいしなやかな風合
△ :肌触り感、しなやか感がやや劣る
× :硬く、肌触り感が悪い
<キチンナノファイバー水分散体の作製>
スギノマシン(社)製キチンナノファイバー(商品名:ビンフィス(型式;SFo−20010)、濃度10wt%)を、リンゴ酸にてpH4に調整した水溶液に、濃度0.1重量%、0.2重量%となるように所定量を撹拌させながら溶解させた。
次に、この水溶液を、超音波装置を用い、高周波出力80W、発信周波数40kHzにて30℃に加温しながら45分間、密閉状態で照射し、キチンナノファイバーの凝集がなく分散された溶液を作製した。ここで、分散溶液を室温にて2昼夜放置後も、キチンナノファイバーの凝集や沈殿は全くなく、水溶液中での分散安定性が高いことを確認した。
また、分散溶液のゼータ電位は、濃度0.1重量%の場合、+60.2mV、濃度0.2重量%の場合、+62.6mVであった。また、キチンナノファイバーの比表面積は各々240m2/gであった。
84dtex/45fのキュプラ(旭化成せんい(株)製ベンベルグ(登録商標))と33dtexのポリウレタン繊維(旭化成せんい(社)製ロイカ(登録商標))を用い、常法により36ゲージにてベア天竺丸編地を作製した。このときのキュプラ繊維の混率は87wt%であった。
次いで、拡布状70℃でプレウエットした後、185℃でプレセットを行い、下記条件にて染色した。
<染色条件>
反応染料:レマゾール ターコイズ ブルー G:0.2%omf
炭酸ナトリウム :10g/リットル
芒硝:20g/リットル
助剤:イマコール C2GL(浴中柔軟剤):4g/リットル
浴比 :1:20
染色温度、時間:60℃、40分
染色後は、90℃にて湯洗及び水洗を繰り返し、脱水を行い乾燥した。
染色布帛表面のゼータ電位は、−38.8mVであった。
得られた染色布帛の繊維表面上に付着しているキチンナノファイバーの状態、抗菌性能、風合、吸水性の評価結果を以下の表1に示す。表1の結果から実施例1、2で得られた布帛は、抗菌性能、吸水性能に優れ、しなやかな風合を有し、商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
実施例1にて得られたキチンナノファイバー水分散液を実施例1と同様に二流体ノズルにて、以下の表1に示す粒滴の大きさとなるようにノズル圧力、流量を調整し、直接噴霧し、90℃で乾燥後、130℃の熱処理にて、実施例1と同等の目付となるように仕上げた。
得られた染色布帛の抗菌性能、風合、吸水性能の評価結果を以下の表1に示す。
表1の結果から、本発明の実施例1、2で得られた染色布帛は、比較例1、2で得られた布帛に比べ、抗菌性能、吸水性能に優れ、風合にも優れ商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
ナイロン6繊維78dtex/68fのPOYを常法により185℃にて仮撚加工を行い、未解撚部を残し、加工工程中に56dtex/45fのキュプラを挿入し、インターレース混繊し、110dtex/113fの複合糸を得た。
得られた複合糸と33dtexのポリウレタン繊維を用い、常法により28ゲージにて、ベア天竺編地を作製した。この編地中のセルロース繊維の混用率は48%、ナイロン繊維の混用率は42%、ポリウレタン繊維の混用率は10%であった。
次いで、80℃で精練した後、185℃でプレセットを行い、下記に示す条件にて染色を行った:
<染色条件>
反応染料;カヤセロン リアクト レッド CN−3B:0.1%omf
酸性染料;ナイロサン レッド N−GZS:0.1%omf
均染剤 :リオゲン KSE 2%omf
カヤクバッファー P−7:2g/リットル
芒硝 :20g/リットル
浴比 :1:20
染色温度、時間:100℃、30分
染色後は、80℃にて湯洗及び水洗の順序で2回繰り返した後、脱水・乾燥を行った。
染色布帛表面のゼータ電位は、−42.5mVであった。
実施例1で作製した、キチンナノファイバー濃度0.2重量%の水分散液を二流体ノズル(アトマックス製AM−12)を用い、ノズルから染色布帛表面までの距離100mmにして、ノズル圧力0.4MPaにて、粒滴の大きさ7.9μmになるように流量を調整し、染色布帛表面に直接噴霧した。噴霧後は90℃にて乾燥し、目付が140g/m2になるように調整し、130℃の熱処理にて仕上げた。
得られた染色布帛の繊維表面上に付着しているキチンナノファイバー、抗菌性能、風合、吸水性の評価結果を以下の表2に示す。表2の結果から実施例3で得られた布帛は、抗菌性能、吸水性能に優れ、しなやかな風合を有し、商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
実施例1で作製した、キチンナノファイバー濃度0.2重量%の水分散液を実施例2と同様に二流体ノズルにて、粒滴の大きさが33.6μmとなるようにノズル圧力、流量を調整し、噴霧し、90℃で乾燥後、130℃の熱処理にて、実施例2と同等の目付となるように仕上げた。
得られた染色布帛の抗菌性能、風合、吸水性能の評価結果を以下の表2に示す。
実施例2にて得られた染色布帛を下記に示す条件にてバインダー樹脂を用してキトサンをPad法にて付与し、140℃熱処理にて、実施例2と同等の目付となるように仕上げた。
<仕上剤処方>
キトサン:ダイキトサンW−10(大日精化社製) 6重量部
シリコーンバインダー:パインテックスS−200L(大和化学製)3重量部
得られた染色布帛の抗菌性能、風合、吸水性能の評価結果を以下の表2に示す。
以下の表2の結果から、実施例3で得られた染色布帛は、比較例3、4で得られた布帛に比べ、抗菌性能、吸水性能に優れ、風合にも優れ商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
ポリエステル繊維80dtex/48fの糸を常法により190℃にて仮撚加工を行い、未解撚部を残し、加工工程中に56dtex/45fのキュプラを挿入し、インターレース混繊し、108dtex/93fの複合糸を得た。
得られた複合糸と22dtexのポリウレタン繊維を用い、常法により28ゲージにて、ベア天竺編地を作製した。この編地中のセルロース繊維の混用率は49%、ポリエステル繊維の混用率は43%、ポリウレタン繊維の混用率は8%であった。
次いで、80℃で精練した後、190℃でプレセットを行い、下記に示す条件にて染色を行った:
<染色条件>
反応染料;カヤセロン リアクト ブルー CN−BL:0.1%omf
酸性染料;カヤロン ポリエステル ブルー AQ−LE:0.1%omf
カヤクバッファー P−7:2g/リットル
芒硝 :20g/リットル
浴比 :1:20
染色温度、時間:130℃、30分
染色後は、80℃にて湯洗及び水洗の順序で2回繰り返した後、脱水・乾燥を行った。
染色布帛表面のゼータ電位は、−43.8mVであった。
実施例1で作製した、キチンナノファイバー濃度0.2重量%の水分散液を二流体ノズル(アトマックス製AM−12)を用い、ノズルから染色布帛表面までの距離100mmにして、ノズル圧力0.4MPaにて、粒滴の大きさ7.9μmになるように流量を調整し、染色布帛表面に直接噴霧した。噴霧後は90℃にて乾燥し、目付が135g/m2になるように調整し、130℃の熱処理にて仕上げた。
得られた染色布帛の繊維表面上に付着しているキチンナノファイバー、抗菌性能、風合、吸水性の評価結果を以下の表3に示す。表3の結果から実施例3で得られた布帛は、抗菌性能、吸水性能に優れ、しなやかな風合を有し、商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
実施例1で作製した、キチンナノファイバー濃度0.2重量%の水分散液を実施例3と同様に二流体ノズルにて、粒滴の大きさが33.6μmとなるようにノズル圧力、流量を調整し、直接噴霧し、90℃で乾燥後、130℃の熱処理にて、実施例3と同等の目付となるように仕上げた。
得られた染色布帛の抗菌性能、風合、吸水性能の評価結果を以下の表3に示す。
実施例3にて得られた染色布帛を下記に示す条件にて樹脂バインダー併用のもとにキトサンをPad法にて付与し、140℃熱処理にて、実施例2と同等の目付となるように仕上げた。
<仕上剤処方>
キトサン:ダイキトサンW−10(大日精化社製) 6重量部
シリコーンバインダー:パインテックスS−200L(大和化学製) 3重量部
得られた染色布帛の抗菌性能、風合、吸水性能の評価結果を以下の表3に示す。
以下の表3の結果から、実施例3で得られた染色布帛は、比較例5、6で得られた布帛に比べ、抗菌性能、吸水性能に優れ、風合にも優れ商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
Claims (2)
- セルロース繊維からなる繊維表面に、幅20〜80nm、長さ150〜600nmのキチンナノファイバーが、該繊維の表面積1μm2あたり、25本以上で直接付着していることを特徴とする抗菌性繊維布帛。
- 幅20〜80nm、長さ150〜600nmのキチンナノファイバーをpH3.5〜5.0に調整した酸性溶液に分散させた溶液を、1粒滴あたりの大きさが20μm以下となる噴霧装置を用いて、セルロース繊維からなる繊維表面に噴霧して、該キチンナノファイバーを付着させる工程を含む、請求項1に記載の抗菌性繊維布帛の製造方法。
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