JP6648891B2 - 物質含有量を断層可視化する装置および方法 - Google Patents

物質含有量を断層可視化する装置および方法 Download PDF

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Description

本発明は、測定対象における特定の物質の含有量を計測可能な装置に関する。
人体を構成する物質の約70%は水であり、細胞内の物質代謝のために機能する。このため、水が人体に与える影響は大きく、生体内の含水率の変動によって様々な疾患が発症する。例えば、皮膚における含水率の低下は、そのバリア機能を低下させ、皮膚炎を発症させやすい。老化に伴う皮膚のしわやたるみは、皮膚組織内部の含水率に依存した力学特性変化に起因する。軟骨組織が変性すると、その含水率が増大することも知られている。そのため、生体内の含水率を精密に計測することが、生体組織の正確な診断、効果的なスキンケアやアンチエイジング等に結びつくと考えられる。
このような含水率の計測装置として、静電容量式水分計やラマン分光装置などが知られている。静電容量式水分計を皮膚に接触させることで、主に角層における平均的な含水量を定性的に表示できる(例えば特許文献1参照)。ラマン分光装置を用いれば、皮膚の奥行方向の含水率を定量的に計測できる(例えば特許文献2参照)。
特開2012−71055号公報 特開2010−12076号公報
しかしながら、特許文献1の手法は、計測範囲の水分量を定性的に評価するものであり、生体組織レベルで定量的な評価が得られるものではない。また、特許文献2の手法は、奥行方向について定性的・定量的な評価が可能であるが、時間分解能が低いため、二次元的な計測や経時変化の検出が困難である。特に、ラマン信号の中に内在する散乱と吸収について光特性の分離が困難であるため、水の光吸収特性に基づく含水量の評価が実用に供し得なかった。生体組織の水分計測を精密な診断に適用するためには、空間分解能および時間分解能がともに優れ、マイクロスケールでの計測が可能であることが望まれる。
なお、このような計測の問題は、生体組織である場合に限らず、再生組織や培養組織その他の測定対象に対して生じ得る。また、水分量のみならず、薬剤等の化学物質の含有量を測定する場合にも生じ得る。特に創薬の分野においては、特定の薬剤の含有量を高精度に測定することが新薬の開発促進につながるとも考えられる。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、散乱と吸収の光特性の分離を可能とすることで、測定対象における特定の物質の含有量を高精度に計測でき、その計測結果を実用に供し得るレベルで可視表示可能な装置および方法を提供することにある。
本発明のある態様は、光コヒーレンストモグラフィー(Optical Coherence Tomography:以下「OCT」という)を用いる光学系を含み、測定対象における特定の物質の含有量分布を断層可視化する物質含有量可視化装置に関する。この装置は、物質による光吸収作用が互いに異なる波長帯域を包括する複数の波長帯域光を同時に出射可能な単一もしくは複数の光源と、測定対象を経由するオブジェクトアームに設けられ、光源からの光を測定対象に導いて走査させる第1光学機構と、測定対象を経由しないリファレンスアームに設けられ、光源からの光を参照鏡に導いて反射させる第2光学機構と、測定対象にて反射した物体光と参照鏡にて反射した参照光とが重畳された干渉光を検出する光検出装置と、第1光学機構および第2光学機構を駆動し、光検出装置から出力された光干渉信号を処理することにより、物質の含有量の断層分布を演算する制御演算部と、制御演算部の演算結果に基づいて、測定対象における物質の含有量分布を断層可視化する態様で表示する表示装置と、を備える。
第2光学機構は、リファレンスアームを経由する複数の波長帯域光に対して互いに異なる周波数変調を施すための変調機構を含む。光検出装置は、複数の干渉光を単一チャンネルの光ファイバを介して入力する。制御演算部は、入力された光干渉信号に対して変調機構による変調周波数に基づくバンドパスフィルタ処理を実行し、各波長帯域に対応する光干渉信号に分離し、分離された光干渉信号の強度比に基づいて、その光干渉信号に内在する散乱と吸収の光特性を分離し、物質の含有量の断層分布を演算する。
本発明の別の態様は、OCTを用いて測定対象における特定の物質の含有量分布を断層可視化する物質含有量可視化方法に関する。この方法は、光吸収作用が互いに異なる波長帯域を包括する複数の波長帯域光を同時に出射する出射工程と、出射された光を、測定対象を経由するオブジェクトアームと、参照鏡を経由するリファレンスアームとに分波する分波工程と、リファレンスアームを経由する複数の波長帯域光に対し、互いに異なる周波数変調を施す変調工程と、オブジェクトアームを経由する光とリファレンスアームを経由する光との干渉信号を単一チャンネルにて取得し、変調工程による変調周波数に基づいて各波長帯域に対応する光干渉信号にデジタル処理にて分離する分離工程と、分離された光干渉信号の強度比に基づいて、その光干渉信号に内在する散乱と吸収の光特性を分離し、物質の含有量の断層分布を演算する演算工程と、物質の含有量分布を断層可視化する表示工程と、を備える。
本発明によれば、OCTを用いることで、測定対象における特定の物質の含有量をマイクロスケールにて断層計測できる。そして特に、OCT干渉信号に内在する散乱と吸収の光特性を分離可能としたことで、その計測結果を実用に供し得るレベルで可視表示可能な装置および方法を提供できる。
実施例に係る物質含有量可視化装置の構成を概略的に表す図である。 光学機構の構成を模式的に示す図である。 水による光吸収特性を表す図である。 含水率の演算に用いられる演算マップおよびその作成過程を示す。 各波長帯域光を同時照射したときに得られる信号を表す図である。 各波長帯域光を同時照射したときに得られる信号を表す図である。 各波長帯域光による皮膚のOCT断層画像を表す図である。 パターンマッチング処理を表す図である。 パターンマッチング処理を表す図である。 含水率の演算過程で得られる各パラメータの断層画像を示す図である。 通常状態で皮膚を断層計測した場合の演算結果を示す図である。 皮膚を水につけ、角層に水分を過剰に含浸させた場合の演算結果を示す図である。 制御演算部により実行される含水率可視化処理の流れを示すフローチャートである。 変形例に係る物質含有量断層可視化方法を表す図である。
本発明の一実施形態は、OCTを用いる物質含有量可視化装置である。この装置は、光源、第1光学機構、第2光学機構、光検出装置、制御演算部および表示装置を備え、測定対象における特定の物質(以下「特定物質」ともいう)の含有量分布を断層可視化する。「測定対象」は、皮膚や軟骨等の生体であってもよいし、再生組織や培養組織その他の物体であってもよい。「含有量」は特定物質が含まれる程度を示し、特定物質の質量や体積であってもよいし、含有率(含有される割合)であってもよい。
「光源」は、複数の波長帯域光を同時に出射可能であれば単一の光源であってもよいし、複数の光源であってもよい。「波長帯域光」は、複数の波長の光(「波長光」ともいう)を含む。各波長帯域光は、特定の波長幅(帯域)の中に連続的に(無限に)波長が集まった光と捉えることができる。複数の波長帯域光は、特定物質による光吸収作用が互いに異なる波長帯域の光である。「特定物質」は、計測ターゲットとなる物質であり、水、造影剤、薬剤等の化学物質であってもよい。複数の波長帯域光は、光吸収作用が相対的に小さい波長帯域の第1の光(第1波長帯域光)と、光吸収作用が相対的に大きい波長帯域の第2の光(第2波長帯域光)を含む。第1波長帯域光は、光吸収作用を規格化するためのベースとなり、第2波長帯域光との光吸収作用の差が大きいもの、好ましくは特定物質による光吸収作用を実質的に有しないものがよい。
第1光学機構は、オブジェクトアームに設けられ、光源からの光を測定対象に導いて走査させ、測定対象の内部で反射した光(後方散乱光)を物体光として取得する。走査方向は、測定対象の奥行方向とそれに直角な方向を含んでよく、二次元走査でも三次元走査でもよい。
第2光学機構は、リファレンスアームに設けられ、光源からの光を参照鏡に導いて反射させ、参照光として取得する。第2光学機構は、複数の波長帯域光のそれぞれの周波数(より詳細には、各波長帯域光に含まれる複数の波長光のそれぞれの周波数)をドップラー効果により変調するための変調機構を含む。「変調機構」は、参照鏡における反射ポイントの速度を、複数の波長帯域光について互いに異ならせるものでもよい。
変調機構は、参照鏡を軸線周りに回転させる回転機構と、光源からの複数の波長帯域光を参照鏡の所定位置に照射させるための回折格子と、を含むものでもよい。この回折格子は、波長帯域が異なる複数の光を、参照鏡において軸線からの距離が異なる位置にそれぞれ照射させる。軸線からの距離が異なれば、参照鏡を一定の角速度で回転させても各反射ポイントの速度が異なる。すなわち、参照鏡を回転させることにより、複数の波長帯域光の周波数を互いに異なる態様で変調できる。
あるいは、複数の波長帯域光をそれぞれ反射させる複数の参照鏡を設け、それらの参照鏡を光ファイバの光軸方向に振動させる変調モジュールを設けてもよい。これらの参照鏡を互いに異なる速度で振動させることにより周波数変調できる。
光検出装置は、複数の波長帯域光のそれぞれについて、物体光と参照光とが重畳された干渉光を検出する。複数の干渉光は、単一チャンネルの光ファイバを介して入力される。このため、それぞれの光干渉信号に異質なノイズがのることを抑制できる。言い換えれば、仮に複数の光干渉信号にノイズがのるとしても、それらのノイズを同質なものとすることで、それらをフィルタリングにより除去しやすくできる。
制御演算部は、第1光学機構および第2光学機構を駆動する一方で光干渉信号を処理することにより、物質の含有量の断層分布を演算する。制御演算部は、光検出装置を介して入力された光干渉信号に対し、変調機構による変調周波数に基づくバンドパスフィルタ処理を実行し、各波長帯域光に対応する光干渉信号に分離する。すなわち、制御演算部は、デジタルバンドパスフィルタ機能を有し、分離した光干渉信号の強度比(干渉光の輝度比)に基づいて、その光干渉信号に内在する散乱と吸収の光特性を分離し、物質の含有量の断層分布を演算する。なお、デジタルバンドパスフィルタ機能の一部を光検出装置(回路)にもたせ、制御演算部によりバンドパスを設定できるようにしてもよい。表示装置は、その演算結果に基づいて、測定対象における物質の含有量分布を断層可視化する態様で表示する。
この態様によると、OCTを用いることにより、空間分解能および時間分解能がともに優れた断層計測が可能となる。特に、同時に出射された複数の波長帯域光について波長ごとに異なる周波数変調をし、それらの光干渉信号を1チャンネルで得た後、その干渉信号をデジタル周波数解析にて波長ごとに分離する。この分離された光干渉信号の強度比を用いることにより、測定対象における特定物質の含有量を高精度に断層可視化できる。
より詳しくは、制御演算部は、後述する実施例でも述べるように、上記強度比の空間勾配に基づき、光吸収作用が相対的に大きい光の吸収減衰係数を演算してもよい。そして、その演算結果に基づいて物質の含有量の断層分布を演算してもよい。
制御演算部は、上記強度比の算出に先立ち、分離された光干渉信号による複数の断層画像の断層位置を対応させるようパターンマッチング処理を実行してもよい。このような手法により、測定対象の断層位置に関して複数の干渉光の輝度比(光干渉信号の強度比)をより正確に取得できる。そのことが含有量の高精度な断層計測および表示につながる。
制御演算部は、上記吸収減衰係数と物質の含有量との対応関係が予め定められた演算マップを保持してもよい。そして、吸収減衰係数の断層分布を演算した後、その演算結果に基づいて演算マップを参照することにより含有量の断層分布を演算してもよい。物質の種別ごとにこのような演算マップを保持することで、測定対象について計測を行うときの演算負荷を軽減でき、当該装置をより実用に供するものとできる。
以下、図面を参照しつつ、本実施形態を具体化した実施例について詳細に説明する。
[実施例]
図1は、実施例に係る物質含有量可視化装置の構成を概略的に表す図である。本実施例の装置は、皮膚組織の水分量をマイクロスケールにて断層計測し、可視表示するものである。この断層計測にOCTを利用する。
図1に示すように、OCT装置1は、光源2、オブジェクトアーム4、リファレンスアーム6、光学機構8,10、光検出装置12、制御演算部14および表示装置16を備える。各光学要素は、光ファイバにて互いに接続されている。なお、図示の例では、マッハツェンダー干渉計をベースとした光学系が示されているが、マイケルソン干渉計その他の光学系を採用することもできる。また、本実施例では、OCTとしてTD−OCT(Time Domain OCT)を用いるが、SS−OCT(Swept Source OCT)、SD−OCT(Spectral Domain OCT)その他のOCTを用いてもよい。
光源2から出射された光は、カプラー18(ビームスプリッタ)にて分けられ、その一方がオブジェクトアーム4に導かれて物体光となり、他方がリファレンスアーム6に導かれて参照光となる。オブジェクトアーム4の物体光は、サーキュレータ20を介して光学機構8に導かれ、測定対象である皮膚Sに照射される。この物体光は、皮膚Sの表面および断面にて後方散乱光として反射されてサーキュレータ20に戻り、カプラー22に導かれる。
一方、リファレンスアーム6の参照光は、サーキュレータ24を介して光学機構10に導かれる。この参照光は、光学機構10の参照鏡26にて反射されてサーキュレータ24に戻り、カプラー22に導かれる。すなわち、物体光と参照光とがカプラー22にて合波(重畳)され、その干渉光が光検出装置12により検出される。光検出装置12は、これを光干渉信号(干渉光強度を示す信号)として検出する。この光干渉信号は、A/D変換器28を介して制御演算部14に入力される。
制御演算部14は、光学系全体の制御と、OCTによる画像出力のための演算処理を行う。制御演算部14の指令信号は、図示略のD/A変換器を介して光源2、光学機構8,10等に入力される。制御演算部14は、光検出装置12に入力された光干渉信号を処理し、OCTによる測定対象(皮膚S)の断層画像を取得する。そして、その断層画像データに基づき、後述の手法により測定対象内部における水分量の断層分布を演算する。
より詳細には以下のとおりである。
光源2は、中心波長が異なる2つの光源32,34を有する。これらの光源は、スーパールミネッセントダイオード(Super Luminessent Diode:以下「SLD」と表記する)からなる広帯域光源である。光源32は、中心波長が1317nmである1300波長帯域の光(「第1の光」に該当する)を出射する。一方、光源34は、中心波長が1421nmである1400波長帯域の光(「第2の光」に該当する)を出射する。制御演算部14は、光源32,34から異なる波長帯域の光を同時に出射させる。以下では便宜上、1300波長帯域の光を「1300波長帯域光」、1400波長帯域の光を「1400波長帯域光」ともいう。
光源2とカプラー18との間には、WDM方式(Wavelength Division Multiplexing)の分光素子36が設けられている。光源32,34から出射された光は、分光素子36にて合波され、カプラー18に導かれる。オブジェクトアーム4およびリファレンスアーム6には光ファイバとして、偏光による影響を抑えることが可能な偏波保持光ファイバ(Polarization Maintaining Fiber)が用いられている。なお、変形例においては、WDM方式の分光素子36に代えてファイバカプラを用いてもよい。
光学機構8は、オブジェクトアーム4を構成し、光源2からの光を測定対象(皮膚S)に導いて走査させる機構と、その機構を駆動するための駆動部を備える。光学機構8は、コリメータレンズ40、2軸のガルバノミラー42、および対物レンズ44を含む。対物レンズ44は、皮膚S(測定対象)に対向配置される。サーキュレータ20を経た光は、コリメータレンズ40を介してガルバノミラー42に導かれ、x軸方向やy軸方向に走査されて皮膚Sに照射される。皮膚Sからの反射光は、物体光としてサーキュレータ20に戻り、カプラー22に導かれる。
光学機構10は、RSOD方式(Rapid Scanning Optical Delay Line)の機構であり、リファレンスアーム6を構成する。光学機構10は、コリメータレンズ50、回折格子52、レンズ54および参照鏡26を含む。サーキュレータ24を経た光は、コリメータレンズ50を介して回折格子52に導かれる。この光は、回折格子52によって波長ごとに分光され、それぞれレンズ54によって参照鏡26上の異なる位置に集光される。参照鏡26を微小角にて回転させることで、高速光路走査および周波数変調が可能となる。参照鏡26からの反射光は、参照光としてサーキュレータ24に戻り、カプラー22に導かれる。そして、物体光と重畳されて干渉光として光検出装置12に送られる。
光検出装置12は、光検出器60、フィルタ62およびアンプ64を含む。カプラー22を経ることで得られた干渉光は、光検出器60にて光干渉信号として検出される。この光干渉信号は、フィルタ62によりノイズが除去又は低減され、アンプ64およびA/D変換器28を経て制御演算部14に入力される。
制御演算部14は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどを有し、これらのハードウェア、およびソフトウェアによって、光学系全体の制御と、OCTによる画像出力のための演算処理を行う。制御演算部14は、光源2および光学機構8,10の駆動を制御し、その駆動に基づいて得られた光干渉信号を処理する。すなわち、光検出装置12から入力された光干渉信号に対してデジタルバンドパス処理を実行し、1300波長帯域光と1400波長帯域光に対応する光干渉信号に分離し、各波長帯域光による皮膚Sの断層画像を取得する。そして、それらの断層画像データに基づき、後述の手法により皮膚Sにおける含水率の断層分布を演算する。
表示装置16は、例えば液晶ディスプレイからなり、制御演算部14にて演算された皮膚内部の水分量(含水率)を断層可視化する態様で画面に表示させる。
図2は、光学機構10の構成を模式的に示す図である。
本実施例では上述のように、RSOD方式の周波数変調機構を採用する。この方式によれば、参照鏡26(スキャニングミラー)と回折格子52とを用いることにより、波長帯域が異なる複数の光(波長帯域光)を、それぞれ異なるドップラー周波数に変調したうえで干渉させることができる。このため、その光干渉信号をその変調周波数に基づいて周波数解析することで複数の波長帯域光ごとに分離し、それぞれの干渉光強度(輝度)を抽出できる。
なお、RSODは、レンズを省略し、その代わりに湾曲ミラーを用いた湾曲ミラー型であってもよい。あるいは、光路を倍にするための三次元的な光路を有し、回折格子に4回入射するダブルパス型であってもよい。湾曲ミラー型は、レンズの光分散を避けられるメリットがある。ダブルパス型は、奥行き走査距離が拡大するメリットと、リファレンスアームでの光強度の揺らぎの低減できるメリットがある。このため、本システムには湾曲ミラー型かつダブルパス型のRSODが最適である。特に、光強度の揺らぎ低減は、干渉強度比を信号とする本システムでは大きなメリットとなる。
リファレンスアーム6に導かれた1300波長帯域光および1400波長帯域光は、コリメータレンズ50を経由して回折格子52に照射される。これらの光は、回折格子52において波長ごとに異なる回折角で回折され、レンズ54により参照鏡26上の異なる位置に集光される。すなわち、参照鏡26の表面(反射面)には、回転軸56からr1300の位置に1300波長帯域光が照射され、r1400の位置に1400波長帯域光が照射される。より詳細には、各波長帯域光の各波長光ごとに異なる位置に集光されるため、各波長帯域光に集光幅があることとなる。
各波長帯域光について参照鏡26への照射位置が異なる一方、参照鏡26の回転速度は回転軸56からの距離rに応じて異なる。このため、1300波長帯域光と1400波長帯域光のドップラー周波数fRSODを異ならせることができる。すなわち、回折格子52を用いることにより、波長に依存した周波数変調が可能となる。なお、ドップラー周波数fRSODは、下記式(1)にて表すことができる。
Figure 0006648891
ここで、λはビームの中心波長であり、ωは参照鏡26の回転角速度である。rλはλ波長帯域光の回転軸56からの距離rである。
以下、水分量(含水率)の演算処理方法について詳細に説明する。
上述のように、OCTにおいて、オブジェクトアーム4を経た物体光(測定対象からの反射光)と、リファレンスアーム6を経た参照光とが合波され、光検出装置12により光干渉信号として検出される。制御演算部14は、この光干渉信号を干渉光強度に基づく測定対象(皮膚S)の断層画像として取得することができる。この断層分布は三次元で演算することもできるが、ここでは二次元での演算について説明する。
OCTの光軸方向(奥行方向)の分解能であるコヒーレンス長lは、光源の自己相関関数によって決定される。ここでは、コヒーレンス長lを自己相関関数の包括線の半値半幅とし、下記式(2)にて表すことができる。
Figure 0006648891
ここで、λはビームの中心波長であり、Δλはビームの半値全幅である。
一方、光軸垂直方向(ビーム走査方向)の分解能は、集光レンズによる集光性能に基づき、ビームスポット径Dの1/2とされる。そのビームスポット径ΔΩは、下記式(3)にて表すことができる。
Figure 0006648891
ここで、dは集光レンズに入射するビーム径、fは集光レンズの焦点距離である。
光吸収特性が異なる2つの波長帯の光源を用いてOCT断層計測を行うことにより、皮膚組織の含水率分布を算出することができる。
図3は、水による光吸収特性を表す図である。本図の横軸は光の波長を示し、縦軸は後述の吸収減衰係数を示す。本図は、所定含水率を有する組織の光吸収作用が、光の波長によってどの程度異なるかを示す。図中の実線は含水率100%の場合、一点鎖線は含水率80%の場合、破線は含水率60%の場合をそれぞれ示す。
本図によれば、いずれの含水率の組織においても、1300波長帯域光は光吸収作用が相対的に小さく、1400波長帯域光は光吸収作用が相対的に大きいことが分かる。1300波長帯域光は、1400波長帯域光と比較して光吸収作用を実質的に有しないと言える。1400波長帯域光は光吸収作用により後方散乱光強度が大きく減衰するが、1300波長帯域光の後方散乱光強度には光吸収作用の影響が現れ難い。本実施例では、この2つの波長帯域光の光吸収特性の相異を利用して含水率の断層分布を算出する。
ところで、皮膚の深部位置z(奥行方向位置)における干渉光強度Iλcは、下記式(4)にて表される。光干渉信号には、光の散乱と吸収の影響が内在している。この干渉信号の中に内在する散乱と吸収の光特性の分離が通常は困難であるが、本実施例では以下の手法でこれらを分離できる。なお、干渉光強度は、実質的に後方散乱光強度に対応する。
Figure 0006648891
ここで、Iinc λcは入射光強度分布、Rλcは組織内部のエネルギー反射率、μs λcは散乱減衰係数(以下「散乱係数」ともいう)、μa λcは吸収減衰係数(以下「吸収係数」ともいう)である。各変数の添字λcは入射光の中心波長を示す。
本実施例では、制御演算部14が、光検出装置12を介して取得した光干渉信号に対してデジタルバンドパスフィルタ処理を施すことで、1300波長帯域光と1400波長帯域光のそれぞれの干渉信号(2波長帯干渉信号)に分離する。このとき、上述したRSODにて変調された周波数帯にて分離を行う。
続いて、下記式(5)により、分離された2波長帯干渉信号を周波数領域にてヒルベルト変換する。これより、断層検出速度(走査速度)を上げた場合であっても、空間解像度を高く保ったまま局所的な周波数検出精度を高く維持できる。このため、両波長帯の分離能も高く維持できる。
Figure 0006648891
そして、下記式(6)により、その2波長帯干渉信号の包絡線(振幅)を干渉光強度Iλcとして算出する。
Figure 0006648891
上記式(6)で得られる2つの干渉光強度Iλcについて、同一の断層位置における強度比を演算する。本実施例では、1300波長帯域光と1400波長帯域光の干渉光強度について演算する。ただし、1300波長帯域光と1400波長帯域光とは、そもそも波長が異なることもあり、上記式(4)における奥行方向位置(z位置)が厳密には一致しない。これは、奥行きZ方向に対しては波長の違いに依存した光路長のズレが発生し、また、Z方向に垂直なXやY方向に対しては波長に応じたビーム径の違いなどによる断層像の歪曲(ひずみ,ディストーション)が発生しているためである。そこで、以下に示すサブピクセル精度のパターンマッチング処理を施すことにより、空間的にもほぼ同一の断層位置での強度比を得る。
このパターンマッチング処理には、同時に取得した1300波長帯域光の断層画像と1400波長帯域光の断層画像について、繰り返し相互相関処理を実施する再帰的相互相関法(Recursive Cross-correlation method)を適用する。これは、両波長帯域光の輝度パターンが二次元的に一致又は類似する断層画像を抽出するものである。低解像度において算出された輝度パターンを参照し、探査領域を限定するとともに階層的に検査領域を縮小して相互相関法を適用する手法である。これにより、高解像度なパターンマッチングを行うことができる。
また、これをサブピクセル精度で実現するために、輝度勾配を利用する風上勾配法(Up-stream Gradientmethod)と、伸縮および剪断を考慮した画像変形法(Image Deformation method)の両サブピクセル解析法を併用し、高精度なパターンマッチングを実現する。なお、ここでいう「風上勾配法」は、勾配法(オプティカルフロー法)の一種である。各手法の詳細については後述する。
以上のようにして得られた各波長帯域光の干渉光強度Iλcについて、両者の強度比(輝度比)を演算することにより、下記式(7)が得られる。
Figure 0006648891
ここで、両光の波長差が100nm程度であることから、それらのエネルギー反射率Rλcおよび散乱係数μs λcはほぼ同等と考えられる。一方、1300波長帯域光における吸収係数μa 1300は水のモル吸光係数が微小であるため無視できる。すなわち、上記式(7)によれば、光の散乱と吸収の影響を分離することができる。このことも考慮して上記(7)式の両辺について自然対数をとり、奥行方向(z方向)の空間微分を施すことにより、下記式(8)が得られる。移動最小二乗法(MLSM)により、その空間勾配を算出することができる。
Figure 0006648891
なお、この空間勾配を算出に際し、表面や深部などの境界領域において既知の値を外挿し、移動最小二乗法を用いてもよい。例えば、皮膚表面から離れた空気中の湿度が既知であるため、その値を用いて外挿補間をしてもよい。また、水分量が時間的に変化する場合には、時空間移動最小二乗法を利用し、時間方向の平滑化を行ってもよい。
この対数化された強度比の奥行方向の空間勾配の断層分布が、1400波長帯域光における吸収係数μa 1400の断層分布に対応する。以上のように、光の散乱と吸収の影響を分離して吸収作用のみ取り出すことができ、吸収係数μa 1400の断層分布に基づいて皮膚Sの含水率をマイクロ断層可視化することができる。
組織性状や組織形態が急減に変化する部位(例えば、角層から表皮生細胞層や真皮に変わる境界)では、強度が急激に変化するため、エネルギー反射率R1400(z)やR1300(z)が急変する。このため、それぞれの干渉信号の強度勾配を先に算出すると、上記境界部位では空間勾配の値がオーバーシュートしてしまい、強度比の算出が困難となる。この点、上記式(7)の強度比を取る演算によって、組織性状や組織形態が急減に変化する部位での過誤検出を低減できる。それにより、対象物質の光吸収特性μa1400を検出し、物質の含有量をマイクロ断層可視化することができる。
図4は、含水率の演算に用いられる演算マップおよびその作成過程を示す。
制御演算部14は、吸収係数μa 1400と含水率との対応関係が予め設定された演算マップを保持し、上述のように吸収係数μa 1400の断層分布を演算した後、その演算結果に基づいてその演算マップを参照することにより含水率の断層分布を演算する。
この演算マップは、予め行われた実験結果等により作成される。本実施例では、蒸留水(Water)と重水(Heavy Water)との混合水により含水率をコントロールした試料を作成した。この試料は、その混合水にナノ粒子を懸濁し、生体組織の光散乱特性を模擬したナノ粒子散乱溶液である。各含水率の試料について吸収係数μa 1400をOCTにより計測および演算して対応づけた。具体的には、含水率60%、80%、100%の試料を用意した。
図4(A)は、蒸留水と重水について、光の波長をパラメータとした吸収係数の変化を示す。横軸が波長(nm)を示し、縦軸が吸収係数(cm-1)を示す。本図によれば、蒸留水は波長帯に応じた光吸収作用を有するが、重水はそれと比較して実質的に光吸収作用がないことが分かる。このため、混合水における蒸留水の比率を、試料の含水率とみなすことができる。
図4(B)は、各試料をOCT計測したときの光干渉信号の強度比を、試料の奥行方向についてサンプリングしたものである。横軸が奥行方向位置(μm)を示し、縦軸が輝度比(強度比)を示す。ただし、輝度比は自然対数をとったものとしている。本図によれば、各含水率について、奥行方向の輝度比の勾配(空間勾配)がそれぞれほぼ一定である(直線近似できる)ことが分かる。これは上記式(8)と整合する。この傾きを−2で除算することにより、吸収係数μa 1400を得ることができる。
この吸収係数μa 1400と含水率との関係を表すと、図4(C)に示すようになる。図4(C)の横軸は含水率(%)を示し、縦軸は吸収係数μa 1400(a.u.)を示す。本図によれば、吸収係数μa 1400と含水率とはほぼ比例関係を有する。すなわち、図4(C)に示される両者の関係を、含水率を算出する際の演算マップとして用いることができる。
OCTによる計測および演算処理により吸収係数μa 1400の断層分布が得られると、これを用いて図4(C)の演算マップを参照する。それにより、測定対象について含水率の断層分布が得られ、これを可視表示することができる。
以下、本実施例による具体的な演算過程および結果について説明する。
図5および図6は、各波長帯域光を同時照射したときに得られる信号を表す図である。図5(A)は、光源のスペクトル情報を表している。横軸が波長(nm)を示し、縦軸が光強度(a.u.)を示す。図5(B)は、光検出装置12にて検出される光干渉信号を表している。横軸が奥行方向位置(μm)を示し、縦軸が干渉光強度(mV)を示す。図6(A)は、光干渉信号の周波数解析結果を表している。横軸がドップラー周波数(kHz)を示し、縦軸が干渉光強度(V)を示す。図6(B)は、ヒルベルト変換後の光干渉信号の奥行方向強度分布を表している。横軸が奥行方向位置(μm)を示し、縦軸が干渉光強度(mV)を示す。
図5(A)に示すように、本実施例では、1300波長帯域光の中心波長が1317nm、1400波長帯域光の中心波長が1421nmとなっている。これらの波長帯域光を出射すると、図5(B)に示すように、1300波長帯域光と1400波長帯域光とが混在した光干渉信号が検出される。
この光干渉信号を周波数解析することにより、図6(A)に示すように、光干渉信号が1300波長帯域光に対応する周波数帯域(実線枠部)と、1400波長帯域光に対応する周波数帯域(破線枠部)とに分かれる。このため、1300波長帯域光について100〜160kHz、1400波長帯域光について30〜90kHzのデジタルバンドパスを設定すれば、それぞれの波長帯域光の光干渉信号を良好に分離できる。
分離された光干渉信号に対してヒルベルト変換処理を施すことにより、図6(B)に示すように、各波長帯域光の光干渉信号を得ることができる。図中実線が1300波長帯域光を示し、破線が1400波長帯域光を示す。各干渉信号の包絡波(振幅信号)を算出することにより、OCT断層画像を得る。
図7は、各波長帯域光による皮膚のOCT断層画像を表す図である。図7(A)は1300波長帯域光による断層画像を示し、図7(B)は1400波長帯域光による断層画像を示す。各図において、Z=100μm付近の高輝度線は皮膚Sの表面を示し、z=300μm付近の高輝度線は角層と表皮生細胞層の境界を示していると考えられる。両図を比較することにより、1400波長帯域光による断層画像が、1300波長帯域光による断層画像よりも後方散乱光強度の減衰量が大きいことが分かる。この減衰量の相違は、両波長帯域光の光吸収作用の差に起因する。これらの断層画像に基づいて、上述した光干渉信号の強度比の断層分布を演算する。この強度比の算出に先立って上述したパターンマッチング処理を実行する。
(再帰的相互相関法)
図8および図9は、パターンマッチング処理を表す図である。
図8(A)〜(C)は、再帰的相互相関法による処理過程を示す。各図にはOCTにより同時に撮影される断層画像が示されている。左側には1300波長帯域光の断層画像(Image1)が示され、右側には1400波長帯域光の断層画像(Image2)が示されている。
相互相関法とは、局所的なスペックル・パターンの類似度を下記式(9)に基づく相関値Rijより評価する方法である。そのため、図8(A)に示すように、撮影されたOCT画像について、1300波長帯域光の断層画像(Image1)に類似度の検査対象となる検査領域S1が設定され、1400波長帯域光の断層画像(Image2)に類似度の探査範囲となる探査領域S2が設定される。
Figure 0006648891
ここで、空間座標として、光軸方向にZ軸、光軸と垂直方向にX軸を設定している。f(X,Z)とg(X,Z)は、変形前後のOCT画像において設置された中心位置(X,Z)の検査領域S1(N×Nピクセル)のスペックル・パターンを表している。
探査領域S2(M×Mピクセル)内における相関値分布Ri,j(ΔX,ΔZ)を算出し、図8(B)に示すようにパターンマッチングを行う。実際には、下記式(10)に示すように、最大相関値を与える移動量Ui,jを2画像間のずれベクトルとして決定する。
Figure 0006648891
なお、fとgはf(X,Z)とg(X,Z)の検査領域S1内の平均値を表す。
本手法では、検査領域S1を縮小しながら相互相関処理を繰り返して空間解像度を高める再帰的相互相関法を採用している。なお、本実施例では解像度を上げる際に空間解像度が倍になるようにしている。図8(C)に示すように、検査領域S1を1/4に分割し、前階層にて算出された2画像間のずれベクトルを参照し、探査領域S2を縮小している。ここで探査領域S2も1/4に分割している。再帰的相互相関法を用いることで、高解像度において多発する過誤ずれベクトルの抑制を可能にしている。このような再帰的相互相関処理を施すことにより、2画像間のずれベクトルの解像度を高めることができる。
また、これに加え、下記式(11)により、演算中の座標を中心とする周囲8つの座標を含む合計9つのずれベクトルの平均偏差σを用いた閾値を設定し、過誤ずれベクトルの除去を行い再帰処理に伴う誤差伝播を抑制する。
Figure 0006648891
ここで、Umはずれベクトルの中央値を表し、閾値となる係数κは任意に設定した。
(隣接相互相関乗法)
本実施例では、スペックルノイズの影響を受けたランダム性の強い相関値分布から正確な最大相関値を決定する方法として、隣接相互相関乗法を導入している。下記式(12)により、隣接相互相関乗法では検査領域S1における相関値分布Ri,j(Δx,Δz)と、その検査領域S1にオーバーラップする隣接検査領域に対する相関値分布Ri+Δi,j(Δx,Δz)とRi,j+Δj(Δx,Δz)の乗算を行い、新たな相関値分布R'i,j(Δx,Δz)を用いて最大相関値を検索する。
Figure 0006648891
これにより、相関値同士の乗算によってランダム性を低減させることが可能になる。上述した検査領域S1の縮小と共に干渉強度分布の情報量も減少するため、スペックル・ノイズを原因とする複数相関ピークの出現がずれ量の計測精度の悪化を招いていると考えられる。一方、隣接境界同士の移動量には相関があるため、最大相関値座標付近では強い相関値が残存する。この隣接相互相関乗法の導入によって最大相関値ピークが明瞭化され、ずれ量の計測精度が向上し、正確なずれ座標を抽出することが可能となる。また、この隣接相互相関乗法をOCTの各ステージに導入することで、誤差伝播が抑制され、スペックル・ノイズに対するロバスト性が向上する。それにより、高空間解像度においても高精度なずれベクトル分布(ずれ量分布)の算出が可能となる。
(風上勾配法)
図9(A)〜(C)は、サブピクセル解析による処理過程を示している。各図にはOCTにより同時に撮影される各波長帯域光の断層画像が示されている。左側には1300波長帯域光の断層画像(Image1)が示され、右側には1400波長帯域光の断層画像(Image2)が示されている。
本実施例では、サブピクセル解析のために風上勾配法と画像変形法を採用する。最終的な移動量の算出は後述の画像変形法によるが、計算の収束性の問題から、画像変形法より先に風上勾配法を適用する。検査領域サイズが小さく高空間解像度の条件において、サブピクセルずれ量を高精度検出する画像変形法及び風上勾配法を適用している。画像変形法におけるサブピクセルずれ量の検出が困難な場合において、風上勾配法によりサブピクセルずれ量を算出する。
サブピクセル解析では、注目点における2画像間の輝度差が各成分の輝度勾配とずれ量によって表される。このため、検査領域S1内の輝度勾配データより最小二乗法を用いてサブピクセルずれ量を決定することができる。本実施例では、輝度勾配を求める際に、一方の波長帯の断層画像からもう一方の波長帯の断層画像にズレが発生したと考え、風上側の輝度勾配を与える風上差分法を採用している。すなわち、サブピクセル解析は様々な手法が存在するが、本実施例では検査領域サイズが小さく高空間解像度の条件においても、サブピクセルずれ量を高精度検出する勾配法を採用している。
風上勾配法は、検査領域S1内の注目点の移動を、図9(A)に示すピクセル精度に留まらず、図9(B)に示すサブピクセル精度にて算出するものである。なお、図中の各格子は1ピクセルを表している。実際には図示の断層画像と比較して相当小さいが、説明の便宜上、大きく表記している。この風上勾配法は、2画像間における微少なずれと変形における輝度分布の変化を輝度勾配と移動量によって定式化する手法であり、fを輝度とすると、2画像間における微小変形f(x+Δx,z+Δz)をテイラー展開する下記式(13)として表される。
Figure 0006648891
上記式(13)は、注目点の2画像間の輝度差が一方の波長帯の断層画像の輝度勾配とずれ量によって表されることを示している。なお、ずれ量(Δx,Δz)については上記式(13)のみでは決定できないため、検査領域S1内でずれ量が一定と考え、最小二乗法を適用して算出している。
上記式(13)を用いてずれ量を算出する際には、右辺の各注目点における2画像間の輝度差は一意にしか求まらない。そのため輝度勾配をどれだけ正確に算出するかが移動量の精度に直結する。輝度勾配の差分化では、一次精度風上差分を用いている。差分化において高次差分を適用すると、多くのデータが必要になり、ノイズが含まれていた際に影響を大きく受けてしまうためである。また、検査領域S1内の各点を基準とした高次差分では、検査領域S1外のデータを多く使用することとなり、検査領域S1そのもののずれ量ではなくなってしまうという問題点も存在するからである。
輝度勾配を求める際に、一方の波長帯の断層画像からもう一方の波長帯の断層画像にずれが発生したと考え、風上側の輝度勾配が移動することによって注目点の輝度差が生まれると考えることができるので、一方の波長帯の断層画像には風上側の差分を適用する。ここでいう風上は、実際のずれ方向ではなく、ずれ量に対するサブピクセルずれ量の向きのことであり、最大相関値ピークに放物線近似を施すことによって風上側を決定する。逆に、もう一方の波長帯の断層画像では風下側の輝度勾配が逆に移動することによって注目点の輝度差が生じると考えることができるため、もう一方の波長帯の断層画像には風下側の差分を適用する。
一方の波長帯の断層画像の風上差分ともう一方の波長帯の断層画像の風下差分を用いて2通りの解を求め、それらの平均をとった。さらに、実際にはずれ量が軸方向に沿わない場合には、2画像間における輝度勾配が注目点と同一軸上に無く、ずれた位置の勾配を求める必要がある。つまり、X方向の勾配を求めたい場合には、Z方向の移動も考慮して勾配を求めなければならない。そのため、輝度の内挿による輝度勾配の推定をすることで、精度向上を図っている。基本的には一方の波長帯の断層画像における位置を予測し、その位置での勾配を内挿により求める。
両画像の注目点の位置は放物線近似を施した際のサブピクセルずれ量により求める。その注目点位置が囲まれる8つの座標を用い、それらの比によって輝度勾配を算出する。具体的には、下記式(14)を用いる。そのようにして算出された輝度勾配と、輝度変化を用いて最小二乗法を適用してずれ量を決定した。
Figure 0006648891
(画像変形法)
上述した風上勾配法までは検査領域S1の形状は変更せず、正方形を保ったまま2画像間におけるずれベクトルの算出を行っている。しかし、現実には両波長帯の光学特性に依存して検査領域S1も変形している(ひずんでいる:ディストーション)と考えられるため、検査領域S1の微小変形を考慮したアルゴリズムを導入し、2画像間におけるずれと変形のベクトルを高精度にて算出する必要がある。このため、本実施例ではサブピクセル精度での変形ベクトルの算出に画像変形法を導入している。すなわち、一方の波長帯の断層画像における検査領域S1ともう一方の波長帯の断層画像の伸縮及びせん断変形を考慮した検査領域S1とで相互相関を実施し、相関値ベースの反復計算によってサブピクセル変形量を決定している。なお、検査領域S1の伸縮及びせん断変形は線形で近似している。
画像変形法は一般的に、材料の表面ひずみ計測法に用いられ、ランダムパターンを塗布した材料表面を高空間分解能なカメラで撮影した画像に対して適用される。一方、OCT断層画像はスペックルノイズを多く含み、また、複合材料での局所的な変形が発生するため、検査領域S1に変形が伴う場合には解の収束解が著しく低下する。本手法における検査領域S1の縮小は、局所的な変形を検出するために必要不可欠である。そこで画像変形法では、風上勾配法で得られたずれ量を収束計算の初期値として採用し、さらに、輝度分布の双三次関数補間によって検査領域S1を縮小した際でも低ロバスト性を実現している。なお、変形例においては、双三次関数補間以外の補間関数を用いてもよい。
より詳細には、以下の手順にて演算を実行する。まず、一方の波長帯の断層画像の輝度分布に双三次関数補間法を適用し、輝度分布の連続化を実施する。双三次関数補間法とは、sinc関数を区分的に三次関数近似した畳み込み関数を用い、輝度情報の空間連続性を再現する手法である。本来は連続的な輝度分布を画像計測する際には光学系に依存した点広がり関数が畳み込まれるため、sinc関数を用いた逆畳み込みを行うことにより、本来の連続的な輝度分布が復元される。離散的な一軸信号f(x)の補間をする場合、畳み込み関数h(x)は下記式(15)にて表される。
Figure 0006648891
なお、OCT計測条件および両波長帯の光学特性の違いによって輝度補間関数h(x)の形状も変更する必要がある。そこで輝度補間関数h(x)のx=1での微係数aを可変とし、aの値を変更することで輝度補間関数h(x)の形状を変更可能なアルゴリズムとした。本実施例では、擬似OCT断層画像を用いた数値実験による検証結果を元にし、aの値を決定した。以上のように画像補間をすることで、2画像間におけるずれと変形(ひずみ,ディストーション)による伸縮及びせん断変形を考慮した検査領域S1の各点にて、OCT輝度値を求めることが可能となる。
2画像間におけるずれと変形(ひずみ,ディストーション)による伸縮及びせん断変形を考慮して算出した検査領域S1は、図9(C)に示すように、移動とともに変形を伴う。一方の波長帯の断層画像におけるある検査領域S1内の整数ピクセル位置での座標(x,z)が変形後に座標(x,z)にずれて変形していると考えると、x,zの値は下記式(16)にて表される。
Figure 0006648891
ここで、Δx,Δzはそれぞれ検査領域S1中心から座標x,zまでの距離、u,vはそれぞれx,z方向への変形量、∂u/∂x,∂v/∂zはそれぞれx,z方向における検査領域S1の垂直方向への変形量、∂u/∂z,∂v/∂xはそれぞれx,z方向における検査領域S1のせん断方向への変形量である。数値解法にはNewton-Raphson法を用い、6変数(u,v,∂u/∂x,∂u/∂z,∂v/∂x,∂v/∂z)での相関値微係数が0となるように、すなわち最大相関値を得るように反復計算を行う。なお、反復計算の収束性を高めるため、x,z方向の2画像間のずれ量の初期値には風上勾配法で得られたサブピクセルずれ量を用いる。相関値Rに対するヘッセ行列をH、相関値対するヤコビベクトルを▽Rとすると、1回の反復で得られる更新量ΔPiは下記式(17)にて表される。
Figure 0006648891
収束の判定には、反復計算で随時得られる漸近解が収束解の近傍で十分小さくなることを用いる。しかし、スペックルパターンの変化が激しい領域においては、線形変形では追従できないために正しい収束解が得られない場合がある。その場合、本実施例では風上勾配法によって求めたサブピクセルずれ量を採用している。以上のようにして、サブピクセル精度にて両画像間のずれと変形ベクトル分布が得られる。
以上のように、両画像間におけるずれと変形が算出されたため、一方の波長帯の断層画像における座標と、もう一方の波長帯の断層画像の座標との対応をサブピクセル精度にて取得されたことになる。すなわち、両画像における各座標を対応させることにより、サブピクセル精度にて同一位置を検出し輝度比(干渉信号強度比)の算出が可能となる。なお,画像変形法によりサブピクセル精度にて、両画像間の座標の対応付けができているため、サブピクセル精度での輝度値を用いて輝度比を求めることが必要になる。このため,サブピクセル精度での対応座標における輝度値は,画像変形法にて用いられた輝度補間関数(双三次関数補間法)による連続化された輝度分布を用いて算出し、両画像間における同一位置での輝度比を算出することが可能である。
図10は、含水率の演算過程で得られる各パラメータの断層画像を示す図である。図10(A)は2つの波長帯域光の輝度比(光干渉信号の強度比)の断層分布を示し、図10(B)は吸収係数の断層分布を示す。
上述したパターンマッチング後に、上記式(7)に基づき、両波長帯域光の断層画像について輝度比を演算すると、図10(A)に示す断層分布が得られる。そして、上記式(8)に基づき、この輝度比の分布について自然対数をとり、空間微分を施すと、図10(B)に示す吸収係数μa 1400の断層分布が得られる。この断層分布に基づいて、図4(C)の演算マップを参照することにより、図10(C)に示すように、皮膚Sの含水率をマイクロ断層可視化することができる。
以下に本実施例による演算結果例を示す。
図11は、通常状態(湿度50%)で皮膚を断層計測した場合の演算結果を示す図である。図11(A)の左側は1300波長帯域光のOCT断層画像を示し、右側は1400波長帯域光のOCT断層画像を示す。図11(B)は、それらの断層画像に基づく含水率の演算結果を示す。図示のように、皮膚の奥行方向に含水率が変化する様子が認められる。上記式(7)を用いたことにより、皮膚が比較的乾燥した通常状態においても、角層と表皮生細胞層との境界部において演算上のオーバーシュートが低減され、含水率分布が精度良く可視化されている。
図12は、皮膚を水につけ、角層に水分を過剰に含浸させた場合の演算結果を示す図である。図12(A)の左側は1300波長帯域光のOCT断層画像を示し、右側は1400波長帯域光のOCT断層画像を示す。図12(B)は、それらの断層画像に基づく含水率の演算結果を示す。図示のように、通常状態と比較して含水率が高くなっていることが確認できる。
次に、制御演算部14が実行する具体的処理の流れについて説明する。
図13は、制御演算部14により実行される含水率可視化処理の流れを示すフローチャートである。制御演算部14は、光源2および光学機構8,10を駆動制御するとともに、複数の光源32,34によるOCT干渉信号を取得する(S10)。
制御演算部14は、周波数空間での演算のためにその光干渉信号にフーリエ変換を施して周波数解析する(S12)。続いて、光学機構10での変調周波数に対応づけるようにデジタルバンドパスフィルタにて各波長帯域光(1300波長帯域光および1400波長帯域光)のスペクトル(光干渉信号)に分離する(S14)。分離されたスペクトルに周波数領域でそれぞれヒルベルト変換を施し(S16)、逆フーリエ変換を施す(S18)。それにより得られた解析信号の包絡線(振幅)に基づき、各波長帯域光の干渉光強度を算出する(S20)。
制御演算部14は、こうして得られた各波長帯域光の断層画像について上述したパターンマッチング処理を実行する(S22)。その際、輝度補間も行う。そして、1300波長帯の干渉光強度と、1400波長帯の干渉光強度との比(強度比)を演算する(S24)。さらに、移動平均による平滑化処理を行った後(S26)、移動最小二乗法によりその強度比の空間勾配を算出し(S28)、吸収係数の断層分布を算出する(S30)。そして、上述した演算マップを用いて含水率の断層分布を表示する(S32)。
以上説明したように、本実施例ではOCTを用いたことにより、皮膚の含水率を高精度(高空間分解能かつ高時間分解能)に計測できる。特に、リファレンスアームを経由する参照光について波長ごとに異なる周波数変調をし、後に光検出装置にてデジタル周波数分離することで、光干渉信号を1チャンネルで得られるようにした。このため、光干渉信号の処理にノイズの影響が少ない。さらに、パターンマッチング処理を組み入れることにより、2つの波長帯域光の干渉光強度の輝度比(光干渉信号の強度比)を正確に得やすく、含水率を高精度に断層可視化することができる。また、1チャンネルとしたことで光検出装置の構成が簡素化され、システム全体を低コストに実現できる。
含水率の断層計測については、特に上記式(7)による強度比の演算により、光干渉信号に内在する散乱と吸収の光特性の分離を可能にした。それにより、組織性状や組織形態が急減に変化する部位での過誤検出を低減でき、そのような部位でのマイクロ断層計測が可能となる。
本実施例の手法は、例えばアレルギー性皮膚炎など、生体内の含水率の変動によって発症する様々な疾患の診断に適用が可能である。人工透析においては水分コントロールが重要である。これに関連して生体末梢(皮膚)における水分量を検出して透析制御を行うシステムに上記手法が適用可能である。同様に、手術医療機器においても生体末梢における水分制御は重要な案件であり、そのような医療機器への適用も考えられる。
スキンケアの分野では、老化に伴う皮膚のしわやたるみのアンチエイジング健康診断に水分量が計測される。コスメティックの分野では、化粧品の効能検査に関して皮膚組織内の水分動態の評価が行われることがある。これらの分野においても上記手法の適用可能性がある。さらに、再生医療分野においても、再生組織や培養組織内の水分量の把握は重要であり、拘束水と自由水のマイクロ断層可視化に上記手法が適用できる。
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はその特定の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施例では、特定の物質を「水」とし、測定対象である皮膚内の含水率(水分濃度)をマイクロ断層可視化する例を示した。変形例においては、軟骨その他の生体、再生組織や培養組織を測定対象としてもよい。また、水以外の化学物質の含有量を断層可視化してもよい。具体的には、創薬の分野においても上記マイクロ断層計測および可視化が有効となる。例えば、薬効の評価やドラックデリバリーの診断に際して、金ナノロッドや金ナノ粒子をキャリアとするデリバリーシステムで薬剤を生体に投与する場合、その薬剤の濃度を断層計測してもよい。金ナノロッドは、サイズやアスペクト比を変更することで、その光学特性(光吸収特性)を調整することができる。
ドラックデリバリーシステムによれば、例えば悪性新生物の治療において薬剤を患部へ集積でき、その過剰投与を抑制できる。また、循環器系疾患の治療において免疫抑制剤の溶出によって細胞増殖を抑え、再狭窄を抑制できる。このようなドラックデリバリーシステムを用いた治療では、一般に薬剤浸潤度を時空間的に把握することが困難である。この点、上記実施例の手法を用いることにより、生体組織における薬剤濃度断層分布を高空間分解能かつ高時間分解能(マイクロスケール)にて得ることができる。
上記実施例では、2つの光源32,34から2つの波長帯域光を出射する例を示した。変形例においては、1つの光源から複数の波長帯域光を出射してもよい。
図14は、変形例に係る物質含有量断層可視化方法を表す図である。図14(A)は光干渉信号の周波数スペクトルを示す。図14(B)は測定対象の光吸収スペクトルを示す。図14(C)は含有率計測方法を概念的に示す。
本変形例の装置は、単一の光源を有し、その光源から1つの波長帯域光を出射する。このため、図14(A)に示すように、周波数スペクトルのピークが一つ表れる。このような光干渉信号を取得したとしても、測定対象によっては(測定対象に含有される特定物質の種類によっては)、図14(B)に示すように、吸収スペクトル(吸収係数)のピーク値が複数現れることがある。
このような場合、図14(C)に示すように、特徴的な周波数帯にデジタルバンドパス(窓)を設けてもよい。本変形例では図示のように、吸収スペクトルのピーク値が2つある。本変形例では、第1のピーク値が属する周波数帯(中心周波数f1)に窓W1、ピーク値が属さない周波数帯(中心周波数f2)に窓W2、第2のピーク値が属する周波数帯(中心周波数f3)に窓W3を設ける。それぞれの窓の周波数幅をΔf1、Δf2、Δf3とする。これらの窓には、公知の窓関数やゼロパッディングなどの処理も施す。
このような設定のもと、各周波数帯の光干渉信号を抽出してその包絡波(envelope)から強度を求め、それらの強度比(輝度比)を算出することにより、特定物質の含有率をマイクロ断層可視化してもよい。
図示の例では、光吸収係数が小さい波長帯域光をベースとし、相対的に光吸収係数が大きい波長帯域光との干渉光強度比を算出し、特定物質の含有率を算出してもよい。例えば、特定物質がおかれる環境(濃度、温度、pH、酸素飽和度等)が変化したとき、窓W1の吸収ピークと窓3の吸収ピークとが相反する感度(逆の反応)を有している場合、窓W2を基準に窓1と窓3の反応を定量的に検出すれば、特定物質がおかれる環境を断層可視化することも可能である。
なお、窓の個数、各窓の中心周波数と周波数幅を調整することにより、隣接する窓のオーバラップの有無や、オーバラックの程度を調整できる。ただし、周波数幅が小さくなると、光干渉信号の空間分解能が劣化することにも留意する。
他の変形例では、3つ以上の光源から3つ以上の波長帯域光を出射してもよい。1つの光源から3つ以上の波長帯域光を出射してもよい。これらの複数の波長帯域の干渉光強度比(輝度比)に基づいて物質含有量を断層計測してもよい。複数の波長帯域光のうち、光吸収作用の大きいものを分母とする干渉光強度比の算出により、上記実施例と同様の演算処理を行うことができる。
上記実施例では、OCTによる断層画像を二次元で取得する例を示したが、三次元で取得してもよい。すなわち、奥行方向(Z方向)とX方向のみならず、Y方向に走査し、特定物質の含有量を断層可視化してもよい。
上記実施例では述べなかったが、互いの波長帯域が部分的にオーバラップするように複数の波長帯域光を設定してもよい。特に、単一光源で複数の波長帯域光に分離する場合には、両者をオーバラップさせておき、処理過程でそれらをデジタル周波数分離(波長分離)してもよい。
上記実施例では述べなかったが、上記式(7)に関し、仮に2つの波長帯域光のエネルギー反射率Rλcおよび散乱係数μs λcのいずれかが同等と言えない場合、あるいは、光吸収作用が小さい側の波長帯域光の吸収係数μa λが無視できない場合など、上記式(8)の成立が困難な場合には、しかるべき補償を行う。例えば、シングルパス型のRSODではリファレンスアームでの光強度の揺らぎにより、干渉光強度比の奥行きZ方向分布が発生することがある。この場合、対応する波長帯域光の干渉光強度比のキャリブレーション結果を用いるなどして補償できる。光吸収作用が小さい側の波長帯域光の吸収係数μa λが無視できない場合には、対応する波長帯域光の吸収係数の差や、もしくは光吸収作用が大きい側の波長帯域光の吸収係数μa λをメインに評価するなどしてもよい。
なお、本発明は上記実施例や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施例や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施例や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
1 OCT装置、2 光源、4 オブジェクトアーム、6 リファレンスアーム、8 光学機構、10 光学機構、12 光検出装置、14 制御演算部、16 表示装置、26 参照鏡、40 コリメータレンズ、42 ガルバノミラー、44 対物レンズ、50 コリメータレンズ、52 回折格子、54 レンズ、56 回転軸、S 皮膚、S1 検査領域、S2 探査領域。

Claims (7)

  1. 光コヒーレンストモグラフィーを用いる光学系を含み、測定対象における特定の物質の含有量分布を断層可視化する物質含有量可視化装置であって、
    前記物質による光吸収作用が互いに異なる波長帯域を包括する複数の波長帯域光を同時に出射可能な単一もしくは複数の光源と、
    前記測定対象を経由するオブジェクトアームに設けられ、前記光源からの光を前記測定対象に導いて走査させる第1光学機構と、
    前記測定対象を経由しないリファレンスアームに設けられ、前記光源からの光を参照鏡に導いて反射させる第2光学機構と、
    前記測定対象にて反射した物体光と前記参照鏡にて反射した参照光とが重畳された干渉光を検出する光検出装置と、
    前記第1光学機構および前記第2光学機構を駆動し、前記光検出装置から出力された光干渉信号を処理することにより、前記物質の含有量の断層分布を演算する制御演算部と、
    前記制御演算部の演算結果に基づいて、前記測定対象における前記物質の含有量分布を断層可視化する態様で表示する表示装置と、
    を備え、
    前記第2光学機構は、前記リファレンスアームを経由する前記複数の波長帯域光に対して互いに異なる周波数変調を施すための変調機構を含み、
    前記光検出装置は、複数の干渉光を単一チャンネルの光ファイバを介して入力し、
    前記制御演算部は、
    前記光検出装置から入力された光干渉信号に対して前記変調機構による変調周波数に基づくバンドパスフィルタ処理を実行し、各波長帯域に対応する光干渉信号に分離し、
    分離された光干渉信号の強度比に基づいて、その光干渉信号に内在する散乱と吸収の光特性を分離し、前記物質の含有量の断層分布を演算することを特徴とする物質含有量可視化装置。
  2. 前記制御演算部は、前記強度比の空間勾配に基づき、前記光吸収作用が相対的に大きい波長帯域の光の吸収減衰係数を演算し、その演算結果に基づいて前記物質の含有量の断層分布を演算することを特徴とする請求項1に記載の物質含有量可視化装置。
  3. 前記光源は、前記物質による光吸収作用が相対的に小さい波長帯域の第1の光と、前記物質による光吸収作用が相対的に大きい波長帯域の第2の光とを同時に出射可能であり、
    前記第1の光が、前記物質による光吸収作用を実質的に有しないものであり、
    前記制御演算部は、前記強度比に基づいて前記第2の光の吸収減衰係数を演算し、その演算結果に基づいて前記物質の含有量の断層分布を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の物質含有量可視化装置。
  4. 前記制御演算部は、前記強度比の算出に先立ち、前記分離された光干渉信号による複数の断層画像の断層位置を対応させるようパターンマッチング処理を実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の物質含有量可視化装置。
  5. 前記制御演算部は、前記光吸収作用が相対的に大きい波長帯域の光の吸収減衰係数と前記物質の含有量との対応関係が予め設定された演算マップを保持し、
    前記吸収減衰係数の断層分布を演算した後、その演算結果に基づいて前記演算マップを参照することにより前記物質の含有量の断層分布を演算することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の物質含有量可視化装置。
  6. 前記変調機構は、
    前記参照鏡を軸線周りに回転させるための回転機構と、
    前記単一もしくは複数の光源からの光に含まれる各波長光を、前記参照鏡において前記軸線からの距離が互いに異なる位置に照射させるための回折格子と、
    を含み、
    前記制御演算部は、前記回転機構による前記参照鏡を回転させることにより、前記各波長光の周波数をそれぞれ変調させ、複数の波長帯域に対応してそれぞれ異なる周波数に干渉信号を変調させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物質含有量可視化装置。
  7. 光コヒーレンストモグラフィーを用いて、測定対象における特定の物質の含有量分布を断層可視化する物質含有量可視化方法であって、
    光吸収作用が互いに異なる波長帯域を包括する複数の波長帯域光を同時に出射する出射工程と、
    出射された光を、前記測定対象を経由するオブジェクトアームと、参照鏡を経由するリファレンスアームとに分波する分波工程と、
    前記リファレンスアームを経由する前記複数の波長帯域光に対し、互いに異なる周波数変調を施す変調工程と、
    前記オブジェクトアームを経由する光と前記リファレンスアームを経由する光との干渉信号を単一チャンネルにて取得し、前記変調工程による変調周波数に基づいて各波長帯域に対応する光干渉信号にデジタル処理にて分離する分離工程と、
    分離された光干渉信号の強度比に基づいて、その光干渉信号に内在する散乱と吸収の光特性を分離し、前記物質の含有量の断層分布を演算する演算工程と、
    前記物質の含有量分布を断層可視化する表示工程と、
    を備えることを特徴とする物質含有量可視化方法。
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