JP5166889B2 - 眼底血流量の定量測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、眼底血流量の定量測定装置に関し、詳細には、ドップラー光コヒーレンス血管造影手段(ドップラーOCT)によって網膜血管構造の抽出(セグメンテーション)を行うことで網膜血管の血流量の定量化をおこなう眼底血流量の定量測定装置に関する。
網膜の血流測定は病理上、血行異常の診断のために必要とされている。従来、 網膜血管に適用されるいくつかの血流測定手段が報告されている。
例えば、血管に注入された色素の蛍光強度をモニターすることによって、網膜血管の流量を追跡する手段がある。しかしながら、色素の注射は患者の負担になる。また、レーザードップラー速度測定(LDV)手段によって網膜血管の血流量を測ることができるが、2方向から散乱光を計測する必要があるという煩わしさがある。
また、光断層画像装置「光コヒーレンストモグラフィー」(OCT)を用いて血流のイメージを観察する手段も知られている。
基本的なOCT43は、マイケルソン干渉計を基本としており、その原理を図7で説明する。光源44から射出された光は、コリメートレンズ45で平行化された後に、ビームスプリッター46により参照光と物体光に分割される。物体光は、物体アーム内の対物レンズ47によって被計測物体48に集光され、そこで散乱・反射された後に再び対物レンズ47、ビームスプリッター46に戻る。
一方、参照光は参照アーム内の対物レンズ49を通過した後に参照鏡50によって反射され、再び対物レンズ49を通してビームスプリッター46に戻る。このようにビームスプリッター46に戻った物体光と参照光は、物体光とともに集光レンズ51に入射し光検出器52(フォトダイオード等)に集光される。
OCTの光源44は、時間的に低コヒーレンスな光(異なった時刻に光源から出た光同士は極めて干渉しにくい光)の光源を利用する。時間的低コヒーレンス光を光源としたマイケルソン型の干渉計では、参照アームと物体アームの距離がほぼ等しいときにのみ干渉信号が現れる。この結果、参照アームと物体アームの光路長差(τ)を変化させながら、光検出器52で干渉信号の強度を計測すると、光路長差に対する干渉信号(インターフェログラム)が得られる。
そのインターフェログラムの形状が、被計測物体48の奥行き方向の反射率分布を示しており、1次元の軸方向走査により被計測物体48の奥行き方向の構造を得ることができる。このように、OCT43では、光路長走査により、被計測物体48の奥行き方向の構造を計測できる。
このような軸方向の走査のほかに、横方向の機械的走査を加え、2次元の走査を行うことで被計測物体の2次元断面画像が得られる。この横方向の走査を行う走査装置としては、被計測物体を直接移動させる構成、物体は固定したままで対物レンズをシフトさせる構成、被計測物体も対物レンズも固定したままで、対物レンズの瞳面付近においたガルバノミラーの角度を回転させる構成等が用いられている。
以上の基本的なOCTが発展したものとして、分光器を用いてスペクトル信号を得るスペクトルドメインOCT(SD−OCT)と、光源の波長を走査してスペクトル干渉信号を得る波長走査型OCT(Swept Source OCT、略して「SS−OCT」という。)がある。SD−OCTには、フーリエドメインOCT(Fourier Domain OCT、略して「FD−OCT」という。特許文献2参照)、及び偏光感受型OCT(Polarization-Sensitive OCT、略して「PS−OCT」という。特許文献3参照)がある。
フーリエドメインOCTは、被計測物体からの反射光の波長スペクトルを、スペクトロメーター(スペクトル分光器)で取得し、このスペクトル強度分布に対してフーリエ変換することで、実空間(OCT信号空間)上での信号を取り出すことを特徴とするものであり、このフーリエドメインOCTは、奥行き方向の走査を行う必要がなく、x軸方向の走査を行うことで被計測物体の断面構造を計測可能である。
波長走査型OCTは、高速波長スキャニングレーザーにより光源の波長を変え、スペクトル信号と同期取得された光源走査信号を用いて干渉信号を最配列し、信号処理を加えることで3次元光断層画像を得るものである。なお、光源の波長を変える手段として、モノクロメーターを利用したものでも、波長走査型OCTとして利用可能である。
ドップラー光コヒーレンストモグラフィー(ドップラーOCT)による、網膜の血流の分布の計測が知られている。これは、上記フーリエドメインOCT等を用いて、網膜の血流の分布が計測を行うことのできる手段であり、同様に、スペクトルドメインOCTを使うことによって、横断面網膜血流画像形成が得られ、また次元の網膜の脈管構造も観察することができる。
特開2002−310897号公報 特開平11−325849号公報 特開2004−028970号公報
ドップラーOCTを用いた血流の定量測定において、例えば、光軸方向と横方向の速度計測法、複数角度からの計測についていくつか報告されている。しかしながらこれらの計測は生体人眼計測に適用することは困難である。またスペクトルドメインOCTでは光軸方向の測定レンジの問題もある。
本発明は、光コヒーレンストモグラフィーの2次元en−face像と2次元断層血流像を用い、2ステップで簡便に網膜血管の抽出し、定量的にその血流量を求めることを可能とする眼底血流量の定量測定装置を実現することを課題とする。
本発明は上記課題を解決するために、ドップラー光コヒーレンス血管造影手段によって網膜血管構造の抽出を行い網膜血管の血流量の定量化が可能な眼底血流量の定量測定装置であって、前記ドップラー光コヒーレンス血管造影手段は、光コヒーレンストモグラフィーの構成を有し、複素OCTデータの周波数シフトを解析することで、眼底血流の流速を計測可能な構成であることを特徴とする眼底血流量の定量測定装置を提供する。
前記光コヒーレンストモグラフィーは、en−face血管像および血流像を形成し、該en−face血管像と血流像の2枚とから血管の直径、方向及び位置が得られ、該血管の直径、方向及び位置から、前記血流量が決められる構成としてもよい。
前記血流量の絶対値は、ドップラー周波数シフトの値と血管の直径、方向及び位置から求められる構成としてもよい。
本発明に係る眼底血流量の定量測定装置によれば、光コヒーレンストモグラフィーの2次元en−face像と2次元断層血流像を用い、2ステップで簡便に網膜血管の抽出し、定量的にその血流量を求めることができる。
本発明に係る眼底血流量の定量測定装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
まず、本発明に係る眼底血流量の定量測定装置を実施するために必要なドップラー光コヒーレンス血管造影手段(ドップラーOCT)として使用するフーリエドメインOCT(FD−OCT)を及び波長走査型OCT(SS−OCT)を概略説明する。
図1は、FD−OCT1の全体構成を示す図である。広帯域光源2、低コヒーレンス干渉計3、及び分光器4(スペクトロメーター)とを備えている。このFD−OCT1は、低コヒーレンス干渉の原理を用いて奥行き方向の分解能を得ているため、光源として、SLD(スーパールミネツセントダイオード)や超短パルスレーザー等の広帯域光源2が用いられる。
広帯域光源2から出た光は、まずビームスプリッター5で物体光と参照光に分割される。このうち物体光は、レンズ6を通してガルバノミラー7で反射され被計測物体8(眼底などの生体試料)を照射し、そこで反射、散乱された後に分光器4に導かれる。一方、参照光はレンズ9を通して参照鏡10(平面鏡)で反射された後に物体光と並行に分光器4に導かれる。これらの二つの光は分光器4の回折格子11によって同時に分光され、スペクトル領域で干渉し、結果、スペクトル干渉縞がCCD12によって計測される。
このスペクトル干渉縞に対して適当な信号処理を行うことで、被計測物体8のある点における深さ方向1次元の屈折率分布の微分、つまり、反射率分布を得ることが可能となる。さらに、被計測物体8上の計測点をガルバノミラー7を駆動し1次元走査することにより2次元断層画像(FD−OCT画像)を得ることができる。
通常のOCTでは、2次元断層画像を得るために、深さ(光軸)方向の走査(この走査を「A−スキャン」と言い、この方向を「A−方向」、「Aスキャン方向」とも言う。)と、縦方向の操作(この走査を「B−スキャン」と言い、この方向を「B−方向」、「Bスキャン方向」とも言う。)の2次元の機械的走査が必要なのに対して、FD−OCT1では、A−スキャンは不要で一回の測定で深さ方向の後方散乱データを取得することができるから、B−スキャンの1次元の機械的走査しか必要とされない。
なお、A−方向とB−方向で形成される平面に垂直な方向のスキャンを「C−スキャン」と言い、この方向を「C−方向」、「Cスキャン方向」とも言う。要するに、FD−OCT1では、面内に2次元走査(B−スキャンおよびC−スキャン)をすることにより高速な断層計測が可能で、被計測物体8内部の2次元および3次元情報を得ることができる。
図2は、波長走査型OCT(SS−OCT)24の全体構成を示す図である。波長走査型光源25から出射された出力光を、ファイバー26を通してファイバーカップラー27に送る。この出力光を、ファイバーカップラー27において、ファイバー28を通して被計測物体29への照射する物体光と、ファイバー30を通して固定参照鏡31に照射する参照光に分割する。
物体光は、ファイバー28、レンズ32、角度が可変な走査鏡33及びレンズ34を介して、被計測物体29に照射、反射され、同じルートでファイバーカップラー27に戻る。参照光は、ファイバー30、レンズ35及びレンズ36を介して固定参照鏡31に照射、反射されて同じルートでファイバーカップラー27に戻る。
そして、これらの物体光と参照光はファイバーカップラー27で重ねられ、ファイバー37を通して光検知器38(PD(フォトダイオード)等のポイントセンサが使用される。)に送られ、スペクトル干渉信号として検出され、コンピュータ39に取り込まれる。光検知器38における検知出力に基づいて、被計測物体29の奥行き方向(A方向)と走査鏡の走査方向(B方向)の断面画像が形成される。コンピュータ39にはディスプレー40が接続されている。
ここで、波長走査型光源25は、時間的に波長を変化させて走査する光源であり、即ち波長が時間依存性を有する光源である。これにより、固定参照鏡31を走査(移動。A−スキャン)することなく、 被計測物体29の奥行き方向の反射率分布を得て奥行き方向の構造を取得することができ、1次方向の走査(B−スキャン)をするだけで、二次元の断層画像を形成することができる。
本発明に係る眼底血流量の定量測定装置では、以上説明したフーリエドメインOCT(FD−OCT)や波長走査型OCT(SS−OCT)を、ドップラー光コヒーレンス血管造影(Doppler optical coherence angiography:ドップラーOCA) 手段用のOCT(以下、「ドップラーOCT」という。)として適用する。
そして、このようなOCTにより、被計測物体である眼底の網膜血管像の3次元複素OCT像をコンピュータに取り込み、そのデータに基づき血管構造の抽出(セグメンテーション)、その抽出データに基づきコンピュータの定量化手段(具体的には定量化ソフトの機能手段)によって網膜血管の血流速度の定量化をおこない、抽出データから求められた血管内腔直径を用いて、眼底血流量の定量測定を行うものである。
以下において、本発明における定量化手段の構成、具体的には、ドップラーOCTで抽出した網膜血管構造のデータに基づき、コンピュータの定量化手段が行う網膜血管の血流量の定量化を行う内容(ステップ)について説明する。
本発明に係る眼底血流量の定量測定装置において、血流量の定量化を行うためには、コンピュータの定量化手段により、絶対的な血流速度と血管の内腔(直径)を求める必要がある。
ドップラーOCTを用いて絶対的な血流速度を求めるためには、まずドップラー角が必要である。従って、まず、コンピュータの定量化手段(具体的には定量化ソフトの機能手段)における血管抽出アルゴリズムにより、血管の方向と直径を求める血管構造分析が必要となる。
そして、OCT画の3次元像において、光軸に垂直な面(Aスキャン方向に垂直な面、BスキャンとCスキャン方向を含む面)をエンフェース(en−face)と言う。網膜血管のネットワークが、網膜の表面付近に、網膜とほとんど平行に走っているので en−faceの網膜血管像は、ほぼ網膜の血管構造(配置)と見なすことができる。したがって血管構造分析は、後記する2つのステップでおこなう。
図3は、en−face投影像の投影面と、投影面に直交し、互いに直交する2つの面A、Pに対する、血管壁Sの配置を示す図である。血管壁Sの配置のパラメータとしては、第1のステップでは、方位角θ(アジムス角θ)と血管の直径Dを求める。これらの値はen−face像の投影面である、光軸(z軸)に垂直な面E内で求める。
第2のステップでは、血管の天頂角φを求める。この値は光軸(z軸)と血管を含む面A内で求める。面Pは面Aに垂直で光軸を含む面である。
これら第1及び第2のステップで血管壁Sの位置が決まる。通常の手段では血管壁の位置を決めるためには3次元データすべて(100×100×100の画像なら百万個)スキャンし血管壁の特徴を持つ画素を抽出してつなげるが、本発明では上記θ、D,φの3つのパラメータのみを求めればいいので、計算時間を短縮化することができる。
En−face血管像の2次微分から、血管の曲線構造を求めることができる。2次微分像Hは、適当な分散σを持つガウス関数G(r,σ)の2回微分L=[∂/∂x,∂/∂y]T[∂/∂x,∂/∂y]G(r,σ)でEn−face血管像Iをラインフィルタリングすることで高速に得ることができる(HはLとIの相関)。
注目している画像が血管であるかどうか半自動的に判定するために“血管らしさ”を定義し、その値の大きさを用いて判定をおこなう。血管らしさFは、行列Hの固有値Λ1およびΛ2から定義される。F={|Λ2|(|Λ2|+Λ1)}1/2 , (Λ21≦0のとき)、{|Λ2|(|Λ2|+αΛ1) }1/2 , (Λ2<0<|Λ2|/αのとき)、および 0, (それ以外)となる。
たとえば、|Λ1|〜|Λ2|>>0のときFはゼロで、これは画像では斑点状の構造に相当している。また、Λ2<0<Λ1のときFは大きな値になりこれは連続した曲線構造に相当している。したがって、この手段では、連続した曲線構造と斑点状の構造を分離するものであり、線上の不連続構造(斑点状の構造)に敏感なものになっていて、血管構造の抽出に有効である。αは不連続構造の抽出感度で、たとえば、0.25などにセットされる。
本発明に係る眼底血流量の定量測定装置においては、抽出される血管像は周囲より明るいと仮定している。通常のOCTのen−face像では血管は陰として暗く計測されるため、解析するための画像は明暗を反転して血管部分の明るい像を用いる必要がある。そのため事前に画像強度の反転が必要である。
行列Hの固有値Λ1およびΛ2は、画像中の線構造の方向を表しているため、固有ベクトルの指し示す方向は方位角θの方向となる。上記ラインフィルタリングにおいて用いたラインフィルターの基となるガウス関数G(r,σ)の分散σを変えることでスケールの異なる線構造を抽出することができる(マルチスケールラインフィルタリング法)。ここでいうスケールとは、注目している血管構造のたとえば直径が何画素で構成されているかというような、画素と構造の大きさの関係である。
血管らしさFはガウス関数の分散σで規格化されてσF(σ)と表す。ある点での血管らしさは規格化された血管らしさの最大値F’=max[σF(σ)]で表す。血管の直径はD=4σmaxで表されその時、F’=σmax F(σmax)となる。これらの処理は、コンピュータの定量化手段(具体的にはソフトの機能手段)により、行うことが可能である。
En−face像において、網膜血管の抽出は、シルクハット(トップハット)型の関数と相関をとり(フィルターリング処理)、その相関の値に閾値処理をおこなうことで半自動的に抽出される。網膜血管の交差する部分については上記の自動抽出は行うことができないため、オペレーターは網膜血管の交差する部分を示す必要がある。抽出された血管について、血管らしさF’の最大値となる画素を線で結ぶことにより血管の中心部分を決めることができる。
血管の方位角θと血管の中心線がわかると、その血管の中心線を含む血管の長手方向に平行な断面(図3の面A)における血流像と、その軸方向が、3次元血流像から求められる。血管の天頂角φは前段落において説明したようにして決められた血管中心を結びその線と、光軸との角度を形算することで求めることができる。
血管横断面(図3の面P参照)の深度(光軸方向の深さ位置)と内腔の直径Dから双方向血流が3次元血流像から求められる。この血管横断面の深度は、面PのOCT像と直径Dの円との相関の最大値から得ることができる。
血管の天頂角φは、すべての血流ベクトルが平行であるとすると、ドップラー角(以下、「ドップラー角φ」とする)と考えることができる。ドップラー流速計測においては、光軸方向(z方向)の速度成分にのみ感度があり、光軸に垂直な流れには感度を持たない。ドップラー角とは、光軸と血流ベクトルのなす角のことであり天頂角φに相当する。ドップラー流速計測では、ドップラー角φとドップラー周波数シフトΔfから、血流速は補正することができる。
絶対的な血流速VはV=λ0Δf/(2n・ cosφ)で表される。ここで、λ0は光源の中心波長、nはサンプルの屈折率を表す。ドップラー周波数シフトが測定限界以下となるため、この式はφが90°付近になると使うことができない。
これらの血管のパラメータにより、面Pにおける断面血流像における血管内腔楕円Sを見積もることができる。血流量Jは、血管内腔S内で、ドップラー周波数シフトとドップラー角を考慮しJ=ΣS0Δf)/(2n) tanφΔsのように横方向の血流速を積分する(和をとる)ことで得られる。ここでΔsは断面血流像の1画素の面積である。
本発明に係る眼底血流量の定量測定装置の実施例を以下、説明する。この実施例における眼底血流量の定量測定装置では、ドップラーOCTとして、27.7kHzの軸方向走査速度、生体内での軸方向分解能約3μmの超高分解能SD−OCTを用い、その計測例としては、網膜動脈の分岐部分(図5参照、特に図5Aの白い四角内の領域参照)における血流量の保存の計測とする。
なお、計測対象として網膜静脈ではなく網膜動脈とした理由は次のとおりである。網膜血管のほとんどすべてが入射ビームと垂直に交わるため、ドップラー周波数シフトは小さい。このことは血管の抽出に誤差をもたらす。このような状況を避けるために、動脈のドップラー周波数シフトが静脈のそれより大きいため、静脈よりむしろ動脈を対象とするほうがよい。
ドップラーシフトが起こっている部分は血流があると考えられ、それらの部分は血流像を構成する。血流像において、ドップラーシフトによる周波数変化はごくわずかなので、光波の周波数変化はその位相変化として観測される。位相変化は0〜2πとそのレンジが限られているために、2πの位相不確定が生じる。それを補正し、正しい周波数シフト量を求めるために、位相飛びが起こった部分については、2次元的に2πの位相接続アルゴリズムを用いる。
血流像のモーションアーチファクトの除去は、ヒストグラムによる手段を用いた(特開2007−127425号公報参照)。計測中に測定対象が動く(バルクモーション)ことによって像がゆがむ現象であるところの、バルクモーションによる像の歪みは、像の連続性を考慮して、数値的に補正した(S. Makita, Y. Hong, M. Yamanari, T. Yatagai, and Y. Yasuno, “Optical coherence angiography,” Opt. Express 14, 7821−7840 (2006)参照)。
網膜色素上皮(RPE)の周りの3次元OCT対数像の最大値投影(MIP)を計算することによって、図5Bのようなコントラストの高いen−face血管像を得ることができる。段落0045〜0047にしたがってマルチスケールラインフィルターを行ったen−face網膜血管像が図4であり、それに基づき血管抽出を行った結果が図5である。図4Aはen−face血管像、図4Bは血管らしさF’の分布、図4Cは方位角の分布、図4Dは血管直径をそれぞれ示す。
SD−OCTによる上記軸方向の走査で、血管抽出と抽出された3つの血管(図5A、Bに示す分岐を構成する3つの血管)の流量計算時間は、コンピュータ(AMD Athlon64 3500+, 2Gb RAM)を用いて約3分で算出可能であった。
また、SD−OCTによる上記軸方向の走査で、半自動的に抽出された像と眼底写真(図5A)が得られた。解析領域(対象とする分岐部分を含む領域)は、図5Aの白い四角内である。図5B(図5Aの白い四角内の領域に対応する。)の血管61、62、63内の、血管61、62、63に沿う線と、この線に直交する線は、それぞれ、自動的に抽出された血管中心線と垂直横断線である。血管61では抽出された血管像がほとんど水平にもかかわらず、計算された方位角は小さい傾きを持っている。
しかしながら、眼底写真(図5A)でみると血管62は小さい方位角を持っていることがわかる。このことはマルチスケールフィルタリング手段は、画素以下の構造に敏感であることが考えられる。
血管の長手方向に直交する横断面(図3の面P参照)の血管内腔及び血流像が図5C、E、Gに示されている。また、血管の長手方向に平行断面(図3の面A参照)の血管内腔及び血流像が図5D、F、Hに示されている。図5D,F,Hの太線は血管像の中心において血管中心を示す補助線である。
測定の単位となるボクセル(3次元の格子点上の小さな立方体。その集合で形状を表すことを『ボクセル表現』という。)の大きさは異方的な(立方体ではない)ので、血管抽出の精度と血流の測定精度は方位角に依存する。血流のパラメータを20セットすべてについて求め、ピーク血流速度Vpeak、血管直径D、体積流量Jを求めた。これを表1(図5Bの血管61〜63について)に示す。
表1において、流速と流量の符号は、分岐に流れ込むものを+、分岐から出て行くものを−とし、流れの方向を示している。図5Bにおいて、血管1の総流量と、血管2と血管3の流量和をプロットしたものが図6である。
血液の流入量と流出量は正比例の関係にあり、その相関係数は0.75となっている。流入血流量3.41μl/minは流出血流量3.23μl/mimとほぼ一致している。従って、本発明に係る眼底血流量の定量測定装置は精度及び信頼性がある点が確認できた。
以上、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
本発明に係る本発明に係る眼底血流量の定量測定装置、以上のような構成であるから、眼底血流量の定量測定はもちろんのこと、医療用検査装置一般に、さたに高精度な分解能が要求される各種の技術分野、例えば、動植物物の生体、構造観察等にも適用可能である。
本発明のドップラーOCTに使用するFD−OCTの全体構成を説明する図である。 本発明のドップラーOCTに使用するSS−OCTの全体構成を説明する図である。 本発明の原理を説明する図である。 本発明の実施例を説明する図である。 本発明の実施例を説明する図である。 本発明の実施例を説明する図である。 従来の基本的なOCTを説明する図である。
符号の説明
1 FD−OCT
2 広帯域光源
3 低コヒーレンス干渉計
4 分光器
5 ビームスプリッター
6、9、32、34、35、36 レンズ
7 ガルバノミラー
8 被計測物体
10 参照鏡
11 回折格子
12 CCD
13、21 画像処理装置
14 CCD光検出器
15 OCT干渉信号入力部
16 OCT干渉信号平滑化手段
17 エンベロープ検出手段
18 逆フィルター作成手段
19 エンベロープ補正手段
20 OCT干渉信号出力部
22 干渉信号変換エンベロープ検出手段
24 波長走査型OCT
25 波長走査型光源
26、28、37 ファイバー
27 ファイバーカップラー
29、48 被計測物体
30 ファイバー
31 固定参照鏡
33 走査鏡
38 光検知器
39 コンピュータ
40 ディスプレー
43 OCT
44 光源
45 コリメートレンズ
46 ビームスプリッター
47 物体アーム内の対物レンズ
49 参照アーム内の対物レンズ
50 参照鏡
51 集光レンズ
52 (フォトダイオード等)光検出器
61〜63 血管

Claims (2)

  1. ドップラー光コヒーレンス血管造影手段によって網膜血管構造の抽出を行い網膜血管の血流量の定量化が可能な眼底血流量の定量測定装置であって、
    前記ドップラー光コヒーレンス血管造影手段は、光コヒーレンストモグラフィーの構成を有し、複素OCTデータの周波数シフトを解析することで、眼底血流の流速を計測可能な構成であり、
    前記光コヒーレンストモグラフィーは、光軸に垂直な面への血管の投影像であるen−face血管像および血管の中心線を含む血管の長手方向に平行な断面における血管像を形成し、該en−face血管像と前記血管の長手方向に平行な断面における血管像の2枚とから血管の直径、方向及び位置が得られ、該血管の直径、方向及び位置と、前記眼底血流の流速とから、前記血流量が決められることを特徴とする眼底血流量の定量測定装置。
  2. 前記血流量の絶対値は、ドップラー周波数シフトの値と血管の直径、方向及び位置から求められる構成であることを特徴とする請求項1記載の眼底血流量の定量測定装置。
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