JP6646983B2 - 切羽前方探査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、切羽前方探査方法に関するものであり、詳しくは、孔間弾性波トモグラフィー技術を用いた切羽前方探査に関する発明である。
トンネル掘削を行う際には、安全で適切かつ迅速な工事を行うために、予め地山の状況を把握する必要がある。このため、トンネル掘削に先立ちあるいはトンネル掘削の進行に合わせて地山の状況を把握するための技術が種々提案されている。このような従来技術として、直接的手法ではボーリングによるもの(削孔検層法、先進ボーリング)がある。また、間接的手法では反射法による弾性波探査(HSP法、TSP法、反射トモグラフィー)がある。
例えば、地山状況を継続的にモニタリングし、異変が生じる可能性を事前に把握する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術は、坑壁から地山に打設される複数のロックボルトの打設孔の削孔状況をモニタリングするとともに、打設した複数のロックボルトを受振用探査子及び発振用探査子として利用する。そして、屈折法弾性波探査法によって坑壁奥の地山状況を把握する第1探査工程と、打設した複数のロックボルトを受振用探査子として、切羽を掘削する掘削機を発振源として利用した反射法弾性波探査法によって切羽前方の地山状況を把握する第2探査工程とを実施することにより、施工を中断することなく地山状況を把握し、その変化の兆候をとらえることができるとしている。
また、トンネル前方の地質状況を予測する技術が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載された技術は、掘削するトンネルの事前調査により、路線沿いに地山の弾性波速度を測定し破砕帯の概略位置や規模を推定する。そして、得られた情報から切羽の前方探査の必要区間を判断し、先ず弾性波探査反射法により切羽前方所定距離までの不連続面の存在を予測し、次いで、不連続面に切羽が近づいた時点で、ドリルジャンボによる孔を用いて削孔検層を行なって破壊エネルギー係数を求める。次いで、削孔検層を行なった孔で速度検層を行なって、弾性波速度により地質状況の予測を行なうとともに、弾性波速度と破壊エネルギー係数との相関関係が確認できれば、以後削孔検層だけで地質状況を予測するようになっている。
特開2015−90032号公報 特開平11−174046号公報
しかし、従来の切羽前方探査技術には、種々の問題点があった。特許文献1に記載された技術は、ロックボルトを必須の構成要件とするため、すべてのトンネル工法に対して適用できるわけではない。また、特許文献2に記載された技術は、弾性波探査反射法により切羽前方所定距離までの不連続面の存在を予測した後に、ドリルジャンボによる孔を用いて削孔検層を行なう必要があり、地山状況を把握するために手間がかかる。
また、反射法による弾性波探査技術では、トンネル横断方向に分布した不連続面を捉えることができるが、トンネル縦断方向に分布する不連続面を捉えることができない場合がある。すなわち、切羽前方に向かって発振した弾性波は、そのまま切羽前方へ向かって進むため反射波が返ってこない場合があり、このような状況下ではトンネル縦断方向における不連続面を探査することはできない。
また、反射法による弾性波探査技術では、切羽前方の掘削範囲に限定した反射波だけではなく、既設トンネル周辺の反射波も感知してしまうため、切羽前方に存在する不連続面と見誤ることがあり、地山状況の探査精度が劣ってしまう。
また、鉛直方向の孔間弾性波トモグラフィーの場合には、ボーリング孔内に水を溜めることにより、発振装置からの弾性波を地盤に伝え、地盤中を伝播されてきた弾性波を受振装置に伝えるようになっている。すなわち、鉛直方向の孔間弾性波トモグラフィーの場合では、ボーリング孔内に充填した水が、弾性波(振動)を伝達する役割を果たしている。しかし、水平ボーリング孔の場合には、ボーリング孔内に水を溜めることが困難である。さらに、鉛直ボーリングの孔壁に比べて、水平ボーリングの孔壁は崩れやすく、受振装置や発振装置の挿入が困難である。このため、鉛直方向の孔間弾性波トモグラフィーを、そのまま、水平方向の孔間弾性波トモグラフィーに適用することはできない。
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、孔間弾性波トモグラフィー技術を用いて、切羽前方の地山状況(弾性波速度分布)を容易かつ正確に探査することが可能な切羽前方探査方法を提供することを目的とする。
本発明の切羽前方探査方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の切羽前方探査方法は、トンネル切羽前方の地山状況を探査するための方法であって、切羽前方へ向かって略水平方向に発振装置または受振装置を設置するための複数のボーリング孔を削孔し、少なくとも受振装置を設置するボーリング孔内に挿入した削孔用の中空ロッドの先端部からゲル状の充填材を供給しながら当該中空ロッドを引き抜くことにより、当該ボーリング孔内にゲル状の充填材を充填し、ゲル状の充填材を充填したボーリング孔に受振装置を設置し、受振装置を設置したボーリング孔以外のボーリング孔に発振装置を設置し、発振装置で起振した弾性波を受振装置で直接受振して、発振装置と受振装置との距離及び弾性波の伝播時間に基づいて、発振装置と受振装置との間における地山の弾性波速度分布を分析することを特徴とするものである。
本発明に係る切羽前方探査方法では、発振装置及び受振装置を設置する水平ボーリング孔内に充填材(例えば、ゲル状の物質)を充填することにより、鉛直ボーリング孔と同様に、発振装置から発振され、受振装置で受振する弾性波を確実に伝播させることができる。すなわち、水平ボーリング孔では、鉛直ボーリング孔と異なり、水を充填しようとしても孔口から水が漏れ出してしまい、弾性波を確実に伝搬させることができなかった。この点、充填材(例えば、ゲル状の物質)は、適切な漏れ止めを行うことにより水平ボーリング孔の孔口から漏れ出すことがない。
したがって、本発明に係る切羽前方探査方法によれば、現在まで実現されていなかった水平ボーリング孔における孔間弾性波トモグラフィーの技術を用いて、切羽前方の地山状況(弾性波速度分布)を容易かつ適切に探査することができる。
本発明の実施形態に係る切羽前方探査装置の構成を示すブロック図。 本発明の実施形態に係る切羽前方探査装置の設置状態を示す模式図。 本発明の実施形態に係る切羽前方探査方法の手順を示す説明図。
以下、図面を参照して、本発明に係る切羽前方探査方法の実施形態を説明する。図1〜図3は本発明の実施形態に係る切羽前方探査方法を説明するもので、図1は切羽前方探査方法で使用する切羽前方探査装置の構成を示すブロック図、図2は切羽前方探査装置の設置状態を示す模式図、図3は切羽前方探査方法の手順を示す説明図である。
<切羽前方探査装置及び切羽前方探査方法の概要>
本発明の実施形態に係る切羽前方探査装置及び切羽前方探査方法は、孔間弾性波トモグラフィー技術を用いて、切羽前方の地山状況を探査するための技術であり、特に、切羽前方の地山内に水平ボーリング孔を削孔して、当該ボーリング孔を用いて孔間弾性波トモグラフィーにより地山の弾性波速度分布を探査する。本発明の切羽前方探査装置は、図1及び図2に示すように、ボーリング孔10及びこれに充填する充填材20と、弾性波を発振する発振装置30と、弾性波を受振する受振装置40と、発振装置30と受振装置40との距離及び弾性波の伝播時間に基づいて、発振装置30と受振装置40との間における地山の弾性波速度分布を分析する地質分析装置50とを備えている。
<ボーリング孔>
ボーリング孔10は、切羽前方に向かって略水平に削孔する。なお、略水平とは、完全な水平状態だけではなく、若干の傾斜を許容する状態である。ボーリング孔10の削孔本数は特に限定されないが、トンネル断面の大きさ、トンネルの屈曲状態、予め分かっている地山の状況等に応じて、適宜の本数を削孔する。ボーリング孔10を形成するには、例えば、図3(a)〜(c)に示すように、中空ロッド60の先端部から水を供給しながら、当該中空ロッド60を地山内に挿入すればよい。なお、ボーリング孔10を削孔する地山の状況に応じて、保孔管を用いる等の削孔方法を採用してもよい。
<充填材>
充填材20は、ボーリング孔10内に充填することにより、発振装置30から発振し受振装置40で受振する弾性波を、確実に地山に伝播するがことできる。なお、充填材20は、少なくとも受振装置40を設置したボーリング孔10内に充填するが、発振装置30の構成によっては、発振装置30を設置したボーリング孔10内にも充填する。また、充填材20は、孔壁保護、受振装置40や発振装置30の挿入時における推進力及び摩擦低減にも寄与する。また、孔壁の自立が困難であり、保孔管を建て込んだ際にも、保孔管外周に併せて充填材20を注入することで、弾性波の伝播が可能となる。また、充填材20は、ゲル状の物質を用いることが好ましい。
<発振装置>
発振装置30は弾性波を起振するための装置であり、振動源としては、どのようなものを用いてもよい。例えば、発破、機械的打撃、削孔時に起振する振動等により弾性波を起振させる。発振装置30を設置するボーリング孔10の数は、1つでもよいし、2つ以上であってもよい。
<受振装置>
受振装置40は、発振装置30で起振した弾性波を受振するための装置であり、例えば、圧電型加速度計等を用いることができる。特に、受振装置40に到達した弾性波の状態を正確に把握するために、直交3方向成分を受振可能な受振装置40を用いることが好ましい。この受振装置40は、例えば、図2及び図3(f)〜(i)に示すように、塩ビ管からなる支持ロッド42等に所定間隔で配設された複数の受振機41からなり、ボーリング孔10内に支持ロッド42を設置することにより、ボーリング孔10の長さ方向に沿って複数の受振機41を設置することができる。受振装置40を設置するボーリング孔10の位置や数は特に限定されないが、トンネル断面の大きさ、トンネルの屈曲状態、予め分かっている地山の状況等に応じて、適宜のボーリング孔10に受振装置40を設置する。受振装置40(受振機41)を複数設置することにより、発振装置30からの弾性波の伝播経路を複数設定することができ、より一層正確に、切羽前方の地山の弾性波速度分布を探査することができる。
<地質分析装置>
地質分析装置50は、発振装置30で起振した弾性波を受振装置40で受振して、発振装置30と受振装置40との距離及び弾性波の伝播時間に基づいて、発振装置30と受振装置40との間における地山の弾性波速度分布を分析するための装置であり、例えば、パーソナルコンピュータ及びこれにインストールされたアプリケーションプログラムと、パーソナルコンピュータの付属機器とにより構成することができる。パーソナルコンピュータの付属機器とは、キーボートやマウス等の入力装置、ディスプレイ装置やプリンタ等の出力装置、HDD等の記憶装置等、パーソナルコンピュータとともに稼働する周辺機器のことである。なお、孔間弾性波トモグラフィー技術は、既に確立された技術であり、本実施形態の地質分析装置50は、この孔間弾性波トモグラフィー技術における解析手法を用いて切羽前方の地山の地質を分析する。
<他の探査方法との併用>
本実施形態の切羽前方探査装置及び切羽前方探査方法では、発振装置30から発振された弾性波を直接、受振装置40で受振する孔間弾性波トモグラフィー技術を地質解析の主な要素とするが、これに加えて、発振装置30から発振され、地山内で反射された反射波の受振状況を加味して、切羽前方の地質を分析してもよい。この場合、直接波を利用した高精度の探査結果を固定することにより、反射法による探査精度を高めることができる。
さらに、水平ボーリング削孔時に得られる削孔検層データと、本実施形態の探査によって得られた弾性波速度分布とを用いることにより、同地点で2種類の情報を総合的に評価することができ、より一層、精度の高い切羽前方の地質予測が可能となる。
<探査方法の手順>
次に、図3を参照して、本発明の切羽前方探査方法の一例について説明する。本発明の切羽前方探査方法では、トンネル掘削に際して、上述した構成からなる切羽前方探査装置を用いて、切羽前方の地山状況(地質)を探査する。
本発明の切羽前方探査方法では、まず、切羽前方の地山内に略水平方向のボーリング孔10を削孔する。ボーリング孔10は、例えば、中空ロッド60を地山に設置するとともに、中空ロッド60の先端部から水を供給することにより形成する(a)。所定長までボーリング孔10を削孔したら、水の供給を停止する。この状態で、ボーリング孔10内に存在する水が岩盤亀裂や中空ロッド60の口元から逸水する(b)。
続いて、中空ロッド60の先端部から、ボーリング孔10内に充填材20を供給し(c)、充填材20の供給を継続しながら中空ロッド60を引き抜く(d)。中空ロッド60の引き抜きが完了すると、ボーリング孔10内が充填材20で充填された状態となる(e)。なお、ボーリング孔10内に受振装置40を設置した後に、充填材20を充填してもよい。
また、中空状の塩ビ管等からなる支持ロッド42の長さ方向に、所定間隔で受振機41を取り付けて受振装置40を形成しておく。そして、受振機41を取り付けた支持ロッド42の先端部をボーリング孔10内に挿入し(f)、支持ロッド42の中空部を介して、ボーリング孔10内から充填材20を吸引しつつ、支持ロッド42をボーリング孔10内に挿入して設置する(g)。この際、充填材20を吸引することによりボーリング孔10内に負圧が生じるとともに、充填材20による摩擦低減効果により、受振機41を取り付けた支持ロッド42をボーリング孔10内に推進させることができる(h)。ボーリング孔10の奥側の所定位置まで支持ロッド42を挿入すると、受振装置40の設置が完了する(i)。
この状態で、発振装置30から弾性波を発振し、地山内を伝播してきた弾性波を受振装置40により受振する。そして、地質分析装置50により、発振装置30と受振装置40との距離及び弾性波の伝播時間に基づいて、発振装置30と受振装置40との間における地山の弾性波速度分布(地山状況)を分析する(j)。
<従来技術との比較>
本発明の切羽前方探査装置及び切羽前方探査方法によれば、トンネル施工に最も重要な情報である、トンネル掘削地山およびトンネル周辺の弾性波速度分布を集中的に探査できることから、より具体的な掘削工法や掘削方式の検討、トンネル支保工及び補助工法の設計が可能となる。
従来の切羽前方探査では、先受け工や鏡ボルト工、止水注入計画時には、切羽前方の地質が不確定であることから、標準的な配置に基づいて施工範囲や仕様を決定していた。これに対して、本実施形態の切羽前方探査装置及び切羽前方探査方法では、不良地山部に最適な仕様を集中的に施工できることから、効果的な対策工を経済的に計画することが可能となる。また、孔位置や孔角度を正確に記録可能としてコンピュータ制御やナビゲーション機能を保有したドリルジャンボを併用することにより、探査精度が向上する。さらに、孔曲り計測を併用することにより、より一層、探査精度が向上する。
10 ボーリング孔
20 充填材
30 発振装置
40 受振装置
41 受振機
42 支持ロッド
50 地質分析装置
60 中空ロッド

Claims (1)

  1. トンネル切羽前方の地山状況を探査するための方法であって、
    切羽前方へ向かって略水平方向に発振装置または受振装置を設置するための複数のボーリング孔を削孔し、
    少なくとも前記受振装置を設置するボーリング孔内に挿入した削孔用の中空ロッドの先端部からゲル状の充填材を供給しながら当該中空ロッドを引き抜くことにより、当該ボーリング孔内にゲル状の充填材を充填し、
    前記ゲル状の充填材を充填したボーリング孔に受振装置を設置し、
    前記受振装置を設置したボーリング孔以外のボーリング孔に発振装置を設置し、
    前記発振装置で起振した弾性波を前記受振装置で直接受振して、前記発振装置と前記受振装置との距離及び弾性波の伝播時間に基づいて、前記発振装置と前記受振装置との間における地山の弾性波速度分布を分析する、
    ことを特徴とする切羽前方探査方法。
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