まず、配線基板の一形態について説明する。
図1は一形態に係る配線基板の一例を示す図である。図1には、一形態に係る配線基板の一例の要部断面を模式的に図示している。
半導体チップや半導体パッケージ等の電子部品の小型化、多機能化、高性能化、高密度化等に伴い、電子部品が搭載される配線基板においても、その回路の複雑化、配線密度の増加、多層化が進んでいる。配線基板では、絶縁層の両面に設けられるCu等の電極(配線やそのランド)間をビアによって接続する技術が知られており、このようなビアとして、導体と樹脂とを含む導電性ペーストを用いて形成するもの(ペーストビアとも称される)が知られている。
図1に示す配線基板500は、絶縁層510と、その両面にそれぞれ設けられた電極520及び電極530と、それらを接続(層間接続)するビア540とを有する。ビア540は、絶縁層510の貫通孔511に設けられる。ビア540は、樹脂541と導体542とを含む。このような配線基板500のビア540が、導電性ペーストを用いて形成される。
尚、図1の導体542の形状や、導体542と樹脂541との割合は、便宜上、模式的に図示したものである。
配線基板500において、高い電気的及び機械的な信頼性を得るためには、導電性ペーストを用いて形成されるビア540と、電極520及び電極530とを、十分に接続(結合)させることが重要になる。
ここで、ビア540の形成に用いる導電性ペーストの樹脂には、エポキシ樹脂等を用いることができる。ビア540の形成に用いる導電性ペーストの導体には、耐熱性及び導電性等の観点から、例えばCuを用いることができ、更に、ビア540と電極520及び電極530との接続温度の低温化の観点から、例えばSnを含有する半田を含ませることができる。
例えば、このようなSnを含有する半田とCuとを含む導電性ペーストと、Cuの電極520及び電極530とを接続する場合、導電性ペーストから形成されるビア540と、電極520及び電極530との接続部に、CuとSnとの金属間化合物(CuSn金属間化合物)が形成され得る。CuSn金属間化合物としては、Cu6Sn5やCu3Snが挙げられる。例えば、ビア540の電極520付近の導体542a、ビア540の電極530付近の導体542b、電極520の表層521、電極530の表層531に、CuSn金属間化合物が形成される。
導電性ペーストを用いて形成されるビア540と、電極520及び電極530との低抵抗な接続のためには、それらの接続部に、絶縁性の樹脂541内に含まれる導電性のCuSn金属間化合物を多く存在させることが好ましい。
ところで、上記のような配線基板500の形成時や形成後(試験時や電子部品実装時等)には、加熱が行われる。
CuSn金属間化合物の1種であるCu6Sn5は、その結晶構造が186℃で単斜晶(monoclinic)構造から六方晶(hexagonal)構造に変態する。この変態の際、Cu6Sn5には体積変化が生じる。また、Cu6Sn5がCu3Snに変化することでも体積変化が生じる。ビア540と電極520及び電極530との接続部では、そこに含まれるCu6Sn5に体積変化が生じると、ボイド550が生じる場合がある。配線基板500では、このような体積変化に起因して接続部に生じるボイド550によって、ビア540と電極520及び電極530との間の導電性部分の接触面積が減り、電気抵抗が上昇してしまう可能性がある。
配線基板500の絶縁層510に樹脂が用いられる場合、絶縁層510の熱膨張係数が、Cu、Sn、CuSn金属間化合物といった金属を含むビア540の熱膨張係数よりも大きくなる場合がある。この場合、配線基板500を加熱すると、ビア540に引っ張り応力がかかり、電極520及び電極530との接続部に、亀裂560の発生や進展、更には破断が生じたり、ボイド550の発生や拡大が生じたりすることがある。このような材料の熱膨張係数差に起因して接続部に生じる亀裂560又はボイド550によっても、ビア540と電極520及び電極530との間の導電性部分の接触面積が減り、電気抵抗が上昇してしまう可能性がある。
樹脂541を含むビア540では、例えば全体が金属で形成されたビアに比べ、電極520及び電極530と接続される導電性部分の面積が小さくなる。そのため、ビア540と電極520及び電極530との接続部に存在するCu6Sn5に生じる、上記のような亀裂560又はボイド550は、接続部の電気的及び機械的な性能への影響が大きくなり易い。
配線基板500において、ビア540と電極520及び電極530との接続部のCu6Sn5に生じる亀裂560又はボイド550で電気的、機械的に接続不良となった箇所は、Cu6Sn5の融点が415℃と高く、加熱により溶融して再接続することが難しい。再接続時の高温処理によって配線基板500の劣化等を招く可能性が高くなるためである。そのため、配線基板500では、ビア540と電極520及び電極530との接続部の、一度上昇してしまった電気抵抗や、破断してしまった箇所を、修復(リペア)することは極めて難しい。
以上のような点に鑑み、ここでは以下に実施の形態として示すような手法を用い、ビアと電極との接続部の電気抵抗の上昇を抑えることのできる配線基板、及びそのような配線基板を備える電子装置、電子機器を実現する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
図2は第1の実施の形態に係る配線基板の一例を示す図である。図2には、第1の実施の形態に係る配線基板の一例の要部断面を模式的に図示している。
図2に示す配線基板1は、絶縁層10と、その両面にそれぞれ設けられた電極20及び電極30と、それらを接続(層間接続)するビア40とを有する。
絶縁層10には、各種絶縁材料が用いられる。例えば、絶縁層10には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料、又はこのような樹脂材料にガラスクロス等の強化材が含まれるものを用いることができる。
電極20及び電極30には、各種導体材料が用いられる。例えば、電極20及び電極30には、Cuを用いることができる。電極20及び電極30には、Cu上にニッケル(Ni)、金(Au)等が積層されたものを用いることもできる。
ビア40は、絶縁層10に設けられた貫通孔11に設けられ、絶縁層10上に設けられた電極20と電極30とに接続される。ビア40は、樹脂41と導体42とを含む。樹脂41には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の各種樹脂材料が用いられる。導体42には、Cu、Sn、Bi等の元素が含まれる。導体42には更に、銀(Ag)等の他の元素が含まれてもよい。ビア40内には、例えば、Cu、Sn、Bi、Ag等の元素や粒子、CuとSn、SnとBi、CuとSnとAg等の合金、Cu6Sn5やCu3SnといったCuSn金属間化合物、等の導体42が含まれる。尚、導体42の形状や、導体42と樹脂41との割合は、便宜上、模式的に図示したものである。
ビア40は、上記のようなエポキシ樹脂等の樹脂41と、Cu、Sn、Bi等を含む導体材料、例えばCuと半田とを含む導体材料とを混合して得られる導電性ペーストを、絶縁層10の貫通孔11に充填して形成される。樹脂41には、硬化剤、フラックス等の添加剤が含まれてよい。
配線基板1は、ビア40と電極20との接続部に、ビア40の導体42(42a)と電極20の表層21とに接するBi部50を有する。同様に、配線基板1は、ビア40と電極30との接続部に、ビア40の導体42(42b)と電極30の表層31とに接するBi部60を有する。Bi部50及びBi部60は、Biを含有する部位であり、例えば、Bi元素、Bi粒子、Bi層等の形態を採る。
電極20は、ビア40に対応する表層21が、Bi部50を介して、表層21付近のビア40の導体42aと電気的に接続される。電極30は、ビア40に対応する表層31が、Bi部60を介して、表層31付近のビア40の導体42bと電気的に接続される。ビア40内で互いに接する導体42群により、両面の電極20と電極30とが電気的に接続(導通)される。また、電極20は、Bi部50を介した表層21と導体42aとの接続、及び表層21と樹脂41との接続によって、ビア40と機械的に接続される。電極30は、Bi部60を介した表層31と導体42bとの接続、及び表層31と樹脂41との接続によって、ビア40と機械的に接続される。
電極20及び電極30にCuを用い、ビア40の形成に、Snを含有する半田とCuとを含む導電性ペーストを用いた場合、ビア40と電極20及び電極30との接続部には、Cu6Sn5やCu3SnといったCuSn金属間化合物が形成される。例えば、導電性ペーストに含まれるCuとSnとによって、ビア40の電極20付近の導体42a、ビア40の電極30付近の導体42bに、CuSn金属間化合物が形成される。例えば、導電性ペーストに含まれるSnと、電極20の表層21及び電極30の表層31に含まれるCuとによって、電極20の表層21、電極30の表層31に、CuSn金属間化合物が形成される。
上記のように、ビア40と電極20及び電極30との接続部に形成されるCu6Sn5には、加熱による変態やCu3Snへの変化に伴う体積変化によって、亀裂又はボイドが生じる可能性がある。
これに対し、ビア40と電極20及び電極30との接続部に設けられる、Biを含むBi部50及びBi部60は、強固ではあるが、一定以上の応力に対しては、CuSn金属間化合物よりも先に亀裂等が生じ易い性質を有する。そして、このBi部50及びBi部60に含まれるBiは、200℃超で比較的低い温度の加熱、更に言えば200℃超であってCu6Sn5の融点よりも十分に低い温度の加熱で、CuSn金属間化合物と容易に反応する性質を有する。
CuSn金属間化合物とBiとの間では、200℃超の温度の加熱で、次式(1)のような反応が進行する。
Cu6Sn5+Bi⇔SnBi+Cu3Sn・・・(1)
上記温度の加熱では、式(1)の右方向の反応が進行し、Cu6Sn5及びBiから、SnとBiの合金(SnBi)、及びCu3Snが生成される。冷却されると、式(1)の左方向の反応が進行し、SnBi及びCu3Snから、Cu6Sn5及びBiが生成される。
図3はCu−Sn−Bi系状態図のシミュレーション結果を示す図である。
図3(A)〜図3(D)にはそれぞれ、20℃、150℃、200℃、210℃におけるCu−Sn−Bi系状態図のシミュレーション結果を示している。Cu6Sn5とBiとの界面の組成は、図3(A)〜図3(D)に太点線矢印Pで示している。液相が存在する領域は、図3(A)〜図3(D)に液相存在領域Qで示している。
図3(A)〜図3(C)より、20℃では液相は存在せず、150℃、200℃でも、Cu6Sn5とBiとの界面では液相が存在しない。一方、200℃超の温度、例えば210℃になると、図3(D)に示すように、Cu6Sn5はBiが僅かに含まれるだけでも液相になる。このことから、Cu6Sn5とBiとの界面は、200℃超の温度で溶融させることができ(図3(D))、また、冷却によって固相のCu6Sn5とBiとを生成させることができる(図3(A)〜図3(C))と言える。
図4及び図5は第1の実施の形態に係る配線基板のBi部を介したビアと電極との接続箇所の一例を示す図である。図4(A)は、加熱前及び冷却後の状態の要部断面を模式的に例示したものであり、図4(B)は、加熱時の状態の要部断面を模式的に例示したものである。図5(A)は、亀裂又はボイドが存在する場合における加熱前の状態の要部断面を模式的に例示したものであり、図5(B)は、亀裂又はボイドが存在する場合における加熱時の状態の要部断面を模式的に例示したものであり、図5(C)は、亀裂又はボイドが存在する場合における冷却後の状態の要部断面を模式的に例示したものである。
図4(A)及び図4(B)並びに図5(A)〜図5(C)では、上記配線基板1における、ビア40の電極20付近の導体42aと、電極20の表層21との、Bi部50を介した接続箇所を例にしている。
所定の導電性ペーストを用いて形成されるビア40と、電極20との接続部では、例えば図4(A)又は図5(A)に示すように、ビア40の導体42aに形成されるCu6Sn5と、電極20の表層21に形成されるCu6Sn5との間に、Bi部50のBiが介在された構造になる。ビア40の導体42aのCu6Sn5と、電極20の表層21のCu6Sn5とが、Bi部50のBiと接する。
この図4(A)又は図5(A)に示すような構造を含む配線基板1を、200℃超の温度で加熱すると(図3(D))、式(1)の右方向の反応が進行し、ビア40の導体42aのCu6Sn5、及び電極20の表層21のCu6Sn5と、それらに接するBi部50のBiとが反応する。これにより、図4(B)又は図5(B)に示すように、ビア40の導体42aと電極20の表層21との間に、液相のSnBi層53(SnBi)が生成される。例えば、SnBi層53と導体42a及び表層21との界面に、それぞれCu3Sn層52及びCu3Sn層51が生成される。加熱前に、導体42a及び表層21のCu6Sn5に亀裂又はボイド570が生じている場合、図5(B)に示すように、式(1)の反応で生成された流動性を有する液相のSnBi層53が、そのCu6Sn5の亀裂又はボイド570に入り込む。
この図4(B)又は図5(B)に示すような構造を含む配線基板1を、200℃以下の温度に冷却すると(図3(A)〜図3(C))、式(1)の左方向の反応が進行し、またCu6Sn5とBiとが生成される。例えば、図4(A)又は図5(C)に示すように、ビア40の導体42aと電極20の表層21との間に生成されたSnBi層53は、そのSnがCu3SnからのCu6Sn5の生成に消費され、残るBiが導体42aと表層21との間に生成される。また、図5(C)に示すように、加熱前に生じていた亀裂又はボイド570に入り込んだSnBi層53も同様に、そのSnがCu3SnからのCu6Sn5の生成に消費され、残るBiで亀裂又はボイド570が埋まる。図4(A)又は図5(C)に示すように、再びBiとCuSn金属間化合物とが接した状態が得られる。図5(C)に示すように、亀裂又はボイド570によって減少してしまったビア40の導体42aと電極20の表層21との間における導電性部分の接触面積を増加、回復させることができる。
このようにビア40と電極20との接続部では、加熱時には式(1)の右方向の反応が進行し、導体42a及び表層21のCu6Sn5の、Bi部50のBiとの界面が、SnBi層53となって溶融される。冷却されると、式(1)の左方向の反応が進行し、SnBi層53が、Cu3Snと反応し、またCu6Sn5とBiとが生成される。このような加熱と冷却を含む熱処理により、ビア40の導体42aと電極20の表層21とが再接続される。これにより、ビア40と電極20との間の、亀裂又はボイドによって一度上昇してしまった電気抵抗を、再び低下させることができる。
尚、Biを含むBi部50と、Cu6Sn5を含む導体42a及び表層21とでは、比較的Bi部50で亀裂等が生じ易く、このようなBi部50の亀裂等によって、ビア40と電極20との間の電気抵抗が上昇することも起こり得る。但し、配線基板1の200℃超の加熱時には、Bi部50のBiが、SnBi層53となって溶融され、SnBi層53は、配線基板1が200℃以下の温度に冷却される過程でBiに戻る。Bi部50の亀裂等でビア40と電極20との間の電気抵抗が上昇してしまった場合でも、上記のような配線基板1の熱処理の過程で、導体42aと表層21との間を再接続し、ビア40と電極20との間の電気抵抗を、再び低下させることができる。
尚、配線基板1を200℃超の温度で加熱する際の上限温度は、配線基板1に用いられている材料に基づき、熱処理によって配線基板1の劣化が抑えられるような温度に設定される。また、上限温度の設定には、熱処理コスト、配線基板1の製造コスト等も考慮され得る。上限温度は、例えば、300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは210℃以下に設定することができる。
上記の図4(A)及び図4(B)並びに図5(A)〜図5(C)では、ビア40の導体42aに形成されるCu6Sn5と、電極20の表層21に形成されるCu6Sn5との間に、Bi部50のBiが介在された構造を例にした。このほか、ビア40の導体42a及び電極20の表層21のいずれか一方にCu6Sn5が形成されるような構造でも同様に、ビア40と電極20との間が再接続される。
図6及び図7は第1の実施の形態に係る配線基板のBi部を介したビアと電極との接続箇所の別例を示す図である。図6(A)及び図7(A)は、加熱前及び冷却後の状態の要部断面を模式的に例示したものであり、図6(B)及び図7(B)は、加熱時の状態の要部断面を模式的に例示したものである。
図6(A)の例では、ビア40と電極20との接続部が、ビア40の導体42aと、電極20の表層21のCu6Sn5との間に、Bi部50のBiが介在された構造になっている。電極20の表層21のCu6Sn5が、Bi部50のBiと接する。ビア40の導体42aは、Cu6Sn5であることを要しない。
この図6(A)に示すような構造を含む配線基板1を、200℃超の温度で加熱すると、式(1)の右方向の反応が進行し、電極20の表層21のCu6Sn5と、それに接するBi部50のBiとが反応する。これにより、図6(B)に示すように、ビア40の導体42aと電極20の表層21との間に、液相のSnBi層53(SnBi)が生成される。例えば、SnBi層53と表層21との界面には、Cu3Sn層51が生成される。加熱前に、表層21のCu6Sn5に亀裂又はボイドが生じている場合、その亀裂又はボイドにSnBi層53が入り込む。
この図6(B)に示すような構造を含む配線基板1を、200℃以下の温度に冷却すると、式(1)の左方向の反応が進行し、またCu6Sn5とBiとが生成される。例えば、ビア40の導体42aと電極20の表層21との間に生成されたSnBi層53は、そのSnがCu3SnからのCu6Sn5の生成に消費され、残るBiが導体42aと表層21との間に生成される。加熱前に生じていた亀裂又はボイドに入り込んだSnBi層53も同様に、そのSnがCu3SnからのCu6Sn5の生成に消費され、残るBiで亀裂又はボイドが埋まる。これにより、再びBiとCuSn金属間化合物とが接した状態が得られる。その結果、亀裂又はボイドによって減少してしまったビア40の導体42aと電極20の表層21との間における導電性部分の接触面積が増加する。
このように、ビア40の導体42aと電極20の表層21のうち、電極20の表層21にCu6Sn5が存在するような場合でも、そのCu6Sn5に生じる亀裂又はボイドを埋め、導体42aと表層21とを再接続することができる。これにより、ビア40と電極20との間の上昇してしまった電気抵抗を、再び低下させることができる。
また、図7(A)の例では、ビア40と電極20との接続部が、ビア40の導体42aのCu6Sn5と、電極20の表層21との間に、Bi部50のBiが介在された構造になっている。ビア40の導体42aのCu6Sn5が、Bi部50のBiと接する。電極20の表層21は、Cu6Sn5であることを要しない。
この図7(A)に示すような構造を含む配線基板1を、200℃超の温度で加熱すると、式(1)の右方向の反応が進行し、ビア40の導体42aのCu6Sn5と、それに接するBi部50のBiとが反応する。これにより、図7(B)に示すように、ビア40の導体42aと電極20の表層21との間に、液相のSnBi層53(SnBi)が生成される。例えば、SnBi層53と導体42aとの界面には、Cu3Sn層52が生成される。加熱前に、導体42aのCu6Sn5に亀裂又はボイドが生じている場合、その亀裂又はボイドにSnBi層53が入り込む。
この図7(B)に示すような構造を含む配線基板1を、200℃以下の温度に冷却すると、式(1)の左方向の反応が進行し、またCu6Sn5とBiとが生成される。例えば、ビア40の導体42aと電極20の表層21との間に生成されたSnBi層53は、そのSnがCu3SnからのCu6Sn5の生成に消費され、残るBiが導体42aと表層21との間に生成される。加熱前に生じていた亀裂又はボイドに入り込んだSnBi層53も同様に、そのSnがCu3SnからのCu6Sn5の生成に消費され、残るBiで亀裂又はボイドが埋まる。これにより、再びBiとCuSn金属間化合物とが接した状態が得られる。その結果、亀裂又はボイドによって減少してしまったビア40の導体42aと電極20の表層21との間における導電性部分の接触面積が増加する。
このように、ビア40の導体42aと電極20の表層21のうち、ビア40の導体42aにCu6Sn5が存在するような場合でも、そのCu6Sn5に生じる亀裂又はボイドを埋め、導体42aと表層21とを再接続することができる。これにより、ビア40と電極20との間の上昇してしまった電気抵抗を、再び低下させることができる。
尚、図4〜図7では、ビア40の電極20付近の導体42aと、電極20の表層21との、Bi部50を介した接続箇所を例にしたが、ビア40の電極30付近の導体42bと、電極30の表層31との、Bi部60を介した接続箇所でも同様である。
以上のように、第1の実施の形態では、少なくとも一方にCu6Sn5が含まれるビア40の導体42aと電極20の表層21との間に、Biが含まれるBi部50を介在させる。また、少なくとも一方にCu6Sn5が含まれるビア40の導体42bと電極30の表層31との間に、Biが含まれるBi部50を介在させる。そして、200℃超の温度であってCu6Sn5の融点(415℃)よりも十分に低い温度の加熱で、式(1)の反応により、Cu6Sn5とBiとの界面を液相のSnBiを生成させて溶融し、その後の冷却で、再びCu6Sn5とBiを生成させる。
これにより、ビア40と電極20との接続部、ビア40と電極30との接続部に生じる亀裂又はボイドを電気的及び機械的に修復し、亀裂又はボイドによって上昇する電気抵抗を、再び低下させることができる。
上記構成を採用することで、亀裂又はボイドによって電気抵抗が上昇してしまった配線基板1を、所定の加熱と冷却を含む熱処理により、繰り返しリペアすることができる。
尚、式(1)において、加熱時にCu6Sn5とBiから生成されたSnBiとCu3Snは、冷却時に必ずしも全てがCu6Sn5とBiに戻ることを要しない。生成されたSnBiとCu3Snが全てCu6Sn5とBiに戻らず、一部のSnBiとCu3Snが残るとしても、ビア40と電極20及び電極30との間の電気的及び機械的な再接続が可能である。その後の再加熱時には、残ったSnBiとCu3Snから、或いは新たに生成されたSnBiとCu3Snと共に、Cu6Sn5とBiが生成される。
以上の点から、上記配線基板1において、ビア40の導体42a及び導体42b、並びに電極20の表層21及び電極30の表層31に含まれ、Bi部50及びBi部60のBiと接するCuSn金属間化合物には、Cu6Sn5、Cu3Snが含まれ得る。また、上記配線基板1において、Bi部50及びBi部60には、Bi、SnBiが含まれ得る。
次に、第2の実施の形態について説明する。
図8は第2の実施の形態に係る配線基板の一例を示す図である。図8には、第2の実施の形態に係る配線基板の一例の要部断面を模式的に図示している。
図8に示す配線基板1Aは、ビア40内の導体42群が、Biを含むBi部70を介して接続された構造を更に有している点で、上記第1の実施の形態に係る配線基板1と相違する。配線基板1Aのその他の構成は、上記配線基板1と同様である。
ビア40と電極20及び電極30との接続部のほか、この配線基板1Aのように、ビア40内において、或る導体42にBi部70が接し、そのBi部70に別の導体42又は導体42群が接するような構造を採用することもできる。共通のBi部70に接する導体42群の少なくともいずれかの導体42にCu6Sn5が含まれる場合、200℃超の加熱とその後の冷却を行うことで、式(1)の反応により、上記図4〜図7の例と同様にして、当該導体42群が再接続される。Cu6Sn5を含む導体42(群)に亀裂又はボイドが生じている場合であっても、それを電気的及び機械的に修復し、上昇してしまった電気抵抗を、再び低下させることができる。
第2の実施の形態に係る配線基板1Aによれば、ビア40と電極20及び電極30との接続部のほか、ビア40内についても、生じる亀裂又はボイドを修復し、ビア40を介した電極20と電極30との間の上昇した電気抵抗を、効果的に低下させることができる。上記構成を採用することで、亀裂又はボイドによって電気抵抗が上昇してしまった配線基板1Aを、所定の加熱と冷却を含む熱処理により、繰り返しリペアすることができる。
次に、第3の実施の形態について説明する。
図9は第3の実施の形態に係る配線基板のビアと電極との接続部の説明図である。図9(A)及び図9(B)にはそれぞれ、第3の実施の形態に係るビアと電極との接続部の一例の要部断面を模式的に図示している。
図9(A)及び図9(B)では、上記配線基板1における、ビア40と電極20との接続部を例にしている。
図9(A)に示す例では、ビア40の導体42aと電極20の表層21とが、粒状のBi部50を介して接続される。Bi部50は、この図9(A)に示すような、電極20の表層21上に点在する粒状の形態を採ってよい。粒状のBi部50に接する導体42aと表層21の少なくとも一方にCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。これにより、亀裂又はボイドで上昇した電気抵抗を、再び低下させることができる。
図9(B)に示す例では、ビア40の導体42aと電極20の表層21とが、層状のBi部50を介して接続される。Bi部50は、この図9(B)に示すような、電極20の表層21を被覆する層状の形態を採ってもよい。層状のBi部50に接する導体42aと表層21の少なくとも一方にCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。これにより、亀裂又はボイドで上昇した電気抵抗を、再び低下させることができる。
Bi部50は、ビア40の導体42aと電極20の表層21とに接すれば、このような粒状や層状に限らず、各種形態を採ってよい。
尚、ここでは、ビア40と電極20との接続部を例にしたが、ビア40と電極30との接続部についても同様である。
また、上記第2の実施の形態で述べた、ビア40内の導体42間に設けられるBi部70も同様に、粒状や層状等、各種形態を採り得る。
次に、第4の実施の形態について説明する。
図10は第4の実施の形態に係る配線基板の第1の例を示す図である。図10には、第4の実施の形態に係る配線基板の一例の要部断面を模式的に図示している。
図10に示す配線基板1Bは、コア層100と、その両面にそれぞれ設けられた配線層80及び配線層90とを有する、多層配線基板の一例である。
コア層100は、コア基板101と、スルーホールビア102(コンフォーマルビア)と、その内部に充填された樹脂103と、スルーホールビア102上に設けられた電極104及び電極105とを含む。コア基板101には、有機系又は無機系の絶縁基板、セラミック基板等、各種基板が用いられる、スルーホールビア102、電極104及び電極105には、Cu等の導体材料が用いられる。樹脂103には、エポキシ樹脂等の樹脂が用いられる。
配線層80は、コア層100上に設けられた絶縁層81と、絶縁層81の貫通孔82に設けられたビア83と、ビア83上に設けられた電極84とを含む。絶縁層81には、例えば、エポキシ樹脂にガラスクロスを含有させたプリプレグが用いられる。電極84には、例えば、Cu等の導体材料が用いられる。ビア83は、エポキシ樹脂等の樹脂と、Cu、Sn、Bi等を含む導体材料とを混合して得られる導電性ペーストを、絶縁層81の貫通孔82に充填して形成され、形成後のビア83には、樹脂83aと導体83bとが含まれる。配線層80の電極84とコア層100の電極104とは、ビア83を介して機械的に接続され、そのビア83の導体83bを介して電気的に接続される。尚、ここでは便宜上、電極84付近及び電極104付近の導体83bを層状に図示しているが、当該導体83bは、複数の粒状の形態を採り得る。
配線層90も同様に、コア層100上に設けられた絶縁層91と、絶縁層91の貫通孔92に設けられたビア93と、ビア93上に設けられた電極94とを含む。絶縁層91には、例えば、エポキシ樹脂にガラスクロスを含有させたプリプレグが用いられる。電極94には、例えば、Cu等の導体材料が用いられる。ビア93は、エポキシ樹脂等の樹脂と、Cu、Sn、Bi等を含む導体材料とを混合して得られる導電性ペーストを、絶縁層91の貫通孔92に充填して形成され、形成後のビア93には、樹脂93aと導体93bとが含まれる。配線層90の電極94とコア層100の電極105とは、ビア93を介して機械的に接続され、そのビア93の導体93bを介して電気的に接続される。尚、ここでは便宜上、電極94付近及び電極105付近の導体93bを層状に図示しているが、当該導体93bは、複数の粒状の形態を採り得る。
配線基板1Bにおいて、ビア83と電極84との接続部には、ビア83の導体83bと電極84の表層84bとの間に介在されたBi部110が設けられる。
ビア83と電極104との接続部には、ビア83の導体83bと電極104の表層104bとの間に介在されたBi部120が設けられる。
ビア93と電極94との接続部には、ビア93の導体93bと電極94の表層94bとの間に介在されたBi部130が設けられる。
ビア93と電極105との接続部には、ビア93の導体93bと電極105の表層105bとの間に介在されたBi部140が設けられる。
配線基板1Bでは、Biを含むBi部110に接する導体83bと表層84bの少なくとも一方にCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。
Biを含むBi部120に接する導体83bと表層104bの少なくとも一方にCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。
Biを含むBi部130に接する導体93bと表層94bの少なくとも一方にCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。
Biを含むBi部140に接する導体93bと表層105bの少なくとも一方にCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。
このように配線基板1Bでは、ビア83と電極84及び電極104との接続部、ビア93と電極94及び電極105との接続部に、それぞれBi部110,120,130,140が設けられる。これにより、ビア−電極間の接続部において、Cu6Sn5の亀裂又はボイドで電気抵抗が上昇しても、所定の加熱と冷却を含む熱処理により、上昇した電気抵抗を再び低下させることができる。
図11は第4の実施の形態に係る配線基板の第2の例を示す図である。図11には、第4の実施の形態に係る配線基板の一例の要部断面を模式的に図示している。
図11に示す配線基板1Cは、ビア83内の導体83b群が、Biを含むBi部150を介して接続され、ビア93内の導体93b群が、Biを含むBi部160を介して接続された構造を更に有した多層配線基板である点で、上記配線基板1Bと相違する。配線基板1Cのその他の構成は、上記配線基板1Bと同様である。
配線基板1Cでは、共通のBi部150に接する導体83b群の少なくともいずれかにCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。
共通のBi部160に接する導体93b群の少なくともいずれかにCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。
このように配線基板1Cでは、ビア83内の導体83b間、ビア93内の導体93b間に、それぞれBi部150,160が設けられる。これにより、ビア−電極間の接続部のほか、ビア内の導体間の接続部においても、Cu6Sn5の亀裂又はボイドで上昇する電気抵抗を、所定の加熱と冷却を含む熱処理により、再び低下させることができる。
図12は第4の実施の形態に係る配線基板の第3の例を示す図である。図12には、第4の実施の形態に係る配線基板の一例の要部断面を模式的に図示している。
図12に示す配線基板1Dは、コアの配線層170の両面に、配線層80及び配線層90が積層された構造を有する多層配線基板である点で、上記配線基板1Cと相違する。配線基板1Dのその他の構成は、上記配線基板1Cと同様である。
配線層170は、絶縁層171と、絶縁層171の貫通孔172に設けられたビア173と、ビア173の上下にそれぞれ設けられた電極174及び電極175とを含む。
絶縁層171には、例えば、エポキシ樹脂にガラスクロスを含有させたプリプレグが用いられる。電極174及び電極175には、例えば、Cu等の導体材料が用いられる。ビア173は、エポキシ樹脂等の樹脂と、Cu、Sn、Bi等を含む導体材料とを混合して得られる導電性ペーストを、絶縁層171の貫通孔172に充填して形成され、形成後のビア173には、樹脂173aと導体173bとが含まれる。配線層170の両面の電極174及び電極175は、ビア173を介して機械的に接続され、そのビア173の導体173bを介して電気的に接続される。尚、ここでは便宜上、電極174付近及び電極175付近の導体173bを層状に図示しているが、当該導体173bは、複数の粒状の形態を採り得る。
配線層170のビア173と電極174との接続部には、ビア173の導体173bと電極174の表層174bとの間に介在されたBi部180が設けられる。ビア173と電極175との接続部には、ビア173の導体173bと電極175の表層175bとの間に介在されたBi部190が設けられる。また、ビア173内の導体173b群は、Bi部200を介して接続される。
上記のような構成を有する配線層170の両面にそれぞれ、配線層80及び配線層90が設けられる。ビア83の導体83bと電極174の表層174cとの間にBi部120が介在され、ビア93の導体93bと電極175の表層175cとの間にBi部140が介在される。
配線基板1Dでは、Biを含むBi部180に接する導体173bと表層174bの少なくとも一方にCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。
Biを含むBi部190に接する導体173bと表層175bの少なくとも一方にCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。
共通のBi部200に接する導体173b群の少なくともいずれかにCu6Sn5が含まれ、200℃超の加熱とその後の冷却が行われると、式(1)の反応により、Cu6Sn5の亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。
このように配線基板1Dでは、配線層170についても、ビア173と電極174及び電極175との接続部、及びビア173内において、Cu6Sn5の亀裂又はボイドで上昇する電気抵抗を、所定の加熱と冷却を含む熱処理により、再び低下させることができる。
次に、第5の実施の形態について説明する。
ここでは、配線基板の製造方法の例を、第5の実施の形態として説明する。
図13は第5の実施の形態に係る配線基板製造方法の第1の例を示す図である。図13(A)〜図13(E)には、各工程の要部断面を模式的に図示している。
第1の例では、まず図13(A)に示すような、絶縁層310と、パターニング前又はパターニング後の電極320との積層体300Aaが準備される。絶縁層310には、例えば、エポキシ樹脂にガラスクロスを含有させたプリプレグが用いられる。電極320には、例えば、Cuが用いられる。準備された積層体300Aaの絶縁層310に、図13(B)に示すように、電極320に通じる貫通孔311が形成される。貫通孔311は、レーザー照射やエッチング等によって形成される。
貫通孔311の形成後、その貫通孔311から露出する電極320上に、図13(C)に示すように、Bi粉350aが設けられる。そして、このようにBi粉350aが設けられた貫通孔311内に、図13(D)に示すように、導電性ペースト340aが充填される。導電性ペースト340aには、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂材料と、Snを含有する半田及びCuを含む導体材料とを混合したものが用いられる。導電性ペースト340aの導体材料には、更にBiが含有されてもよい。
このようにして、貫通孔311内にBi粉350a及び導電性ペースト340aが設けられた積層体300Aaを、所定の温度、例えば250℃で加熱する。ここでは図示を省略するが、加熱前に、上層の電極等の導体部が導電性ペースト340a上に積層されてもよく、また、プリプレグ等の絶縁層上に電極等の導体部を設けた配線層が、その導体部側を導電性ペースト340a側に向けて積層されてもよい。この場合、加熱時には、加圧が行われ得る。
加熱により、例えば、導電性ペースト340aの樹脂が硬化され、導電性ペースト340aの導体が溶融され、図13(E)に示すようなビア340が形成される。ビア340は、樹脂341と導体342とを含む。ビア340と電極320との接続部には、ビア340の導体342と電極320の表層321との間に介在されたBi部350が形成される。図13(E)には、電極320付近のBi部350に接する導体342のみを図示するが、ビア340内には、電極320と、ビア340上に設けられる他の電極等の導体部とが電気的に接続されるように、導体群が設けられる。その導体群の間には、導電性ペースト340aの導体材料にBiが含有されている場合、Bi部が形成され得る。電極320は、ビア340の形成後にパターニングされてもよい。
ビア340の導体342と電極320の表層321の少なくとも一方には、Cu6Sn5が含まれる。例えば、導電性ペースト340aに含まれるCuとSnとによって、ビア340の電極320付近の導体342にCu6Sn5が形成される。例えば、導電性ペースト340aに含まれるSnと、電極320の表層321に含まれるCuとによって、電極320の表層321にCu6Sn5が形成される。図13(E)には、電極320の表層321に、電極320と導電性ペースト340aの導体342との材料によって合金又は金属間化合物が形成された状態を例示している。
図13(A)〜図13(E)に示すような方法により、Biに接するCu6Sn5を含む、ビア340と電極320との接続部が形成され、このような接続部を有する配線基板300A又はその基本構造が形成される。
図14は第5の実施の形態に係る配線基板製造方法の第2の例を示す図である。図14(A)〜図14(D)には、各工程の要部断面を模式的に図示している。
第2の例では、まず図14(A)に示すような、プリプレグ等の絶縁層310と、パターニング前又はパターニング後の電極320及びBi部350との積層体300Baが準備される。Bi部350は、電極320上へのめっき法等によるBiの堆積やBi箔の貼付によって、設けられる。準備された積層体300Baの絶縁層310に、図14(B)に示すように、Bi部350に通じる貫通孔311が形成される。貫通孔311は、レーザー照射やエッチング等によって形成される。
貫通孔311の形成後、電極320上のBi部350が露出するその貫通孔311内に、図14(C)に示すように、導電性ペースト340aが充填される。導電性ペースト340aには、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂材料と、Snを含有する半田及びCuを含む導体材料とを混合したものが用いられる。導電性ペースト340aの導体材料には、更にBiが含有されてもよい。
このようにして、貫通孔311内に導電性ペースト340aが設けられた積層体300Baを、所定の温度、例えば250℃で加熱する。ここでは図示を省略するが、加熱前に、上層の電極等の導体部が導電性ペースト340a上に積層されてもよく、また、プリプレグ等の絶縁層上に電極等の導体部を設けた配線層が、その導体部側を導電性ペースト340a側に向けて積層されてもよい。この場合、加熱時には、加圧が行われ得る。
加熱により、例えば、導電性ペースト340aの樹脂が硬化され、導電性ペースト340aの導体が溶融され、図14(D)に示すようなビア340が形成される。ビア340は、樹脂341と導体342とを含む。ビア340と電極320との接続部には、ビア340の導体342と電極320の表層321との間に介在されたBi部350が形成される。図14(D)には、電極320付近のBi部350に接する導体342のみを図示するが、ビア340内には、電極320と、ビア340上に設けられる他の電極等の導体部とが電気的に接続されるように、導体群が設けられる。その導体群の間には、導電性ペースト340aの導体材料にBiが含有されている場合、Bi部が形成され得る。電極320及びBi部350は、ビア340の形成後にパターニングされてもよい。
ビア340の導体342と電極320の表層321の少なくとも一方には、Cu6Sn5が含まれる。例えば、導電性ペースト340aに含まれるCuとSnとによって、ビア340の電極320付近の導体342にCu6Sn5が形成される。例えば、導電性ペースト340aに含まれるSnと、電極320の表層321に含まれるCuとによって、電極320の表層321にCu6Sn5が形成される。図14(D)には、電極320の表層321に、電極320と導電性ペースト340aの導体342との材料によって合金又は金属間化合物が形成された状態を例示している。
図14(A)〜図14(D)に示すような方法により、Biに接するCu6Sn5を含む、ビア340と電極320との接続部が形成され、このような接続部を有する配線基板300B又はその基本構造が形成される。
図15は第5の実施の形態に係る配線基板製造方法の第3の例を示す図である。図15(A)〜図15(D)には、各工程の要部断面を模式的に図示している。
第3の例では、まず図15(A)に示すような、貫通孔311が設けられたプリプレグ等の絶縁層310が準備される。貫通孔311は、例えば絶縁層310に対するレーザー照射やエッチング等によって形成される。
絶縁層310の貫通孔311内には、図15(B)に示すように、導電性ペースト340aが充填される。導電性ペースト340aには、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂材料と、Snを含有する半田及びCuを含む導体材料とを混合したものが用いられる。導電性ペースト340aの導体材料には、更にBiが含有されてもよい。
次いで、図15(C)に示すように、Bi部350及び電極320が積層される。電極320には、例えばCu箔が用いられる。Bi部350には、例えばBi層が用いられる。Bi部350は、例えば電極320上へのめっき法等によるBiの堆積やBi箔の貼付によって、電極320上に設けられる。Bi部350及び電極320は、加圧されながら加熱され、貫通孔311に導電性ペースト340aを充填した絶縁層310の両面に積層される。
尚、予め電極320上にBi部350が設けられたものを絶縁層310の両面にそれぞれ積層する方法のほか、別個のBi部350(Bi箔等)及び電極320(Cu箔等)を絶縁層310の両面にそれぞれ積層する方法を用いることもできる。また、電極320がプリプレグ等の絶縁層上に設けられ、その電極320上にBi部350が設けられた配線層を、そのBi部350側を導電性ペースト340a側に向けて、絶縁層310の両面にそれぞれ積層する方法を用いることもできる。
Bi部350及び電極320を積層する際の加熱、例えば250℃の加熱により、図15(D)に示すようなビア340が形成される。ビア340は、樹脂341と導体342とを含む。ビア340と電極320との接続部には、ビア340の導体342と電極320の表層321との間に介在されたBi部350が形成される。図15(D)には、電極320付近のBi部350に接する導体342のみを図示するが、ビア340内には、絶縁層310の両面にそれぞれ設けられた電極320間が電気的に接続されるように、導体群が設けられる。その導体群の間には、導電性ペースト340aの導体材料にBiが含有されている場合、Bi部が形成され得る。電極320及びBi部350は、ビア340の形成後にパターニングされてもよい。
ビア340の導体342と電極320の表層321の少なくとも一方には、Cu6Sn5が含まれる。例えば、導電性ペースト340aに含まれるCuとSnとによって、ビア340の電極320付近の導体342にCu6Sn5が形成される。例えば、導電性ペースト340aに含まれるSnと、電極320の表層321に含まれるCuとによって、電極320の表層321にCu6Sn5が形成される。図15(D)には、電極320の表層321に、電極320と導電性ペースト340aの導体342との材料によって合金又は金属間化合物が形成されている状態を例示している。
図15(A)〜図15(D)に示すような方法により、Biに接するCu6Sn5を含む、ビア340と電極320との接続部が形成され、このような接続部を有する配線基板300C又はその基本構造が形成される。
以上、第1〜第5の実施の形態で述べたように、配線基板において、ビア−電極間や、ビア内の導体間のように、少なくとも一方にCu6Sn5が生成される導体間に、それらと接するBiを設ける手法を用いる。この手法によれば、Biと接する少なくとも一方の導体に生成されるCu6Sn5に亀裂又はボイドが生じる場合でも、200℃超の加熱とその後の冷却を含む熱処理を行うことで、式(1)の反応により、亀裂又はボイドが電気的及び機械的に修復される。これにより、Cu6Sn5に生じる亀裂又はボイドによって上昇する電気抵抗を、再び低下させる、即ち配線基板をリペアすることができる。
式(1)によれば、所定の加熱時に、Cu6Sn5とそのSnに接するBiとが反応することで、界面が液相のSnBiとなって溶融する。その後の冷却時には、SnBiから、またCu6Sn5とBiとが生成される反応が進行する。Biは、CuやSnに殆ど固溶しないため、加熱後に冷却すると、加熱前のようなCu6Sn5とBiとが存在する状態に戻すことができる。そのため、繰り返し配線基板のリペアを行うことができる。
尚、Biと同様に、比較的低融点の金属材料として知られるインジウム(In)を、Biの代わりに用いた場合には、加熱と冷却を含む熱処理の過程で、InがCu6Sn5と反応し、Cu6(In,Sn)5が生成され、Inが消費されてしまう。上記手法のように、CuやSnに殆ど固溶しないBiを用いることで、繰り返し配線基板のリペアを行うことが可能になる。
以上、第1〜第5の実施の形態で述べた配線基板1,1A〜1D等には、半導体チップ(半導体素子)、半導体チップを用いた半導体パッケージ(半導体装置)、或いは別の配線基板等、各種電子部品が搭載可能である。
図16は電子装置の構成例を示す図である。
図16には、上記第4の実施の形態で述べた配線基板1D(図12)上に電子部品410が搭載された電子装置400Aを例示している。電子部品410は、半導体チップ、半導体パッケージ、配線基板等であって、例えば、その電極411が、半田等のバンプ420を介して、配線基板1Dの電極94と機械的及び電気的に接続される。
他の配線基板1,1A〜1C等についても同様に、電子部品が搭載され、電子装置が実現される。
上記のように配線基板1,1A〜1D等では、ビア−電極間の接続部や、ビア内において、Cu6Sn5の亀裂又はボイドで上昇する電気抵抗を、所定の加熱と冷却を含む熱処理により、再び低下させることができる。このような配線基板1,1A〜1D等を用いることで、電気抵抗の上昇が抑制可能な電子装置が実現される。
また、配線基板1,1A〜1D等に電子部品を搭載した電子装置は更に、各種電子機器(電子装置)に搭載可能である。例えば、コンピュータ(パーソナルコンピュータ、スーパーコンピュータ、サーバ等)、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、センサ、カメラ、オーディオ機器、測定装置、検査装置、製造装置といった、各種電子機器に用いることができる。
図17は電子機器の構成例を示す図である。
図17に示すように、例えば上記図16に示したような電子装置400Aが、先に例示したような各種の電子機器400Bに搭載(内蔵)される。電子装置400Aを搭載し、電気抵抗の上昇が抑制可能な電子機器400Bが実現される。
ここでは配線基板1Dを用いた電子装置400Aを例にしたが、他の配線基板1,1A〜1C等を用いた電子装置を搭載する各種電子機器も同様に実現される。
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた電極と、
前記絶縁層内に設けられ、前記電極と接続され、第1の導体と樹脂とを含むビアと、
前記電極と前記第1の導体とに接し、Biを含有する第1のBi部と
を含み、
前記電極及び前記第1の導体の少なくとも一方に、前記第1のBi部のBiと接する、CuとSnとの第1の金属間化合物を含むことを特徴とする配線基板。
(付記2) 前記第1の金属間化合物は、Cu6Sn5又はCu3Snであることを特徴とする付記1に記載の配線基板。
(付記3) 前記第1のBi部は、Bi単体、又はSnとBiとを含有する合金であることを特徴とする付記1又は2に記載の配線基板。
(付記4) 前記第1のBi部は、前記電極の前記ビア側の表面を被覆することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の配線基板。
(付記5) 前記第1のBi部は、前記電極の前記ビア側の表面に点在することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の配線基板。
(付記6) 前記第1の導体は、前記電極の前記ビア側の表面から距離的に離れて位置することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の配線基板。
(付記7) 前記第1の導体は、前記電極の前記ビア側の表面と接することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の配線基板。
(付記8) 前記ビア内に設けられた第2の導体及び第3の導体と、
前記第2の導体と前記第3の導体とに接し、Biを含有する第2のBi部と
を更に含み、
前記第2の導体及び前記第3の導体の少なくとも一方に、前記第2のBi部のBiと接する、CuとSnとの第2の金属間化合物を含むことを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載の配線基板。
(付記9) 前記第2の金属間化合物は、Cu6Sn5又はCu3Snであることを特徴とする付記8に記載の配線基板。
(付記10) 前記第2のBi部は、Bi単体、又はSnとBiとを含有する合金であることを特徴とする付記8又は9に記載の配線基板。
(付記11) 前記樹脂と前記電極とが接することを特徴とする付記1乃至10のいずれかに記載の配線基板。
(付記12) 絶縁層の貫通孔の一端側に、電極と、前記電極の前記貫通孔側の表面に設けられたBiとを有し、前記貫通孔内に導電性ペーストが充填された基板を形成する工程と、
前記基板に対する第1の熱処理により、前記電極に接し、Biを含有する第1のBi部を形成し、前記貫通孔内に、充填された前記導電性ペーストから、前記第1のBi部に接する第1の導体と、樹脂とを含むビアを形成する工程と
を含み、
前記第1の熱処理では、前記電極及び前記第1の導体の少なくとも一方に、前記第1のBi部のBiと接する、CuとSnとの第1の金属間化合物が形成されることを特徴とする配線基板の製造方法。
(付記13) 前記第1の熱処理後に、200℃超且つ250℃以下の温度での加熱と当該加熱後の冷却とを含む第2の熱処理により、前記第1の金属間化合物を、当該第1の金属間化合物と接する前記第1のBi部のBiと反応させる工程を更に含むことを特徴とする付記12に記載の配線基板の製造方法。
(付記14) 前記第2の熱処理前の前記電極及び前記第1の導体の少なくとも一方に、亀裂又はボイドが存在することを特徴とする付記13に記載の配線基板の製造方法。
(付記15) 前記第2の熱処理により、前記電極と前記ビアとの間の電気抵抗を、前記第2の熱処理前よりも低下させることを特徴とする付記13又は14に記載の配線基板の製造方法。
(付記16) 配線基板と、
前記配線基板に搭載された電子部品と
を備え、
前記配線基板は、
絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた電極と、
前記絶縁層内に設けられ、前記電極と接続され、第1の導体と樹脂とを含むビアと、
前記電極と前記第1の導体とに接し、Biを含有する第1のBi部と
を含み、
前記電極及び前記第1の導体の少なくとも一方に、前記第1のBi部のBiと接する、CuとSnとの第1の金属間化合物を含むことを特徴とする電子装置。