[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工機(レーザ加工装置)1は、図1で示すように、第1のAOミラー(曲率可変ミラー)3と、第2のAOミラー5と、集光レンズ7と、制御部9とを備えて構成されている。
第1のAOミラー3は、レーザ発振器(図示せず)から発振(出射)されたレーザ光LBを反射するようになっている。図1では、第1のAOミラー3で反射されたレーザ光を、参照符号LB1または参照符号LB3で示している。
第1のAOミラー3は、レーザ発振器に向かう方向とは交差する方向にレーザ光LBを反射するようになっている。すなわち、レーザ発振器から発振されたレーザ光LBの光軸OPと、第1のAOミラー3で反射されたレーザ光LB1,LB3の光軸OP1とはお互いが交差している。
第1のAOミラー3に入射する直前のレーザ光LBは、たとえば、平行光もしくは平行光に近い発散光もしくは平行光に近い収束光になっている。
また、第1のAOミラー3は、たとえば、第1のAOミラー3の内部空間に供給される流体の圧力を変えることで反射面11の曲率半径を変え、変更した流体の圧力を維持することで変更した曲率半径の値を維持することができるように構成されている。
第1のAOミラー3の反射面11は、たとえば、凹面11Bもしくは平面11Aになる。ここで、流体の圧力を上げて凹面11Bの曲率半径の値が大きくなると、凹面11Bの凹み量(平面11Aからの凹み量の最大値)が減少し、流体の圧力を下げて凹面11Bの曲率半径の値が小さくなると、凹面11Bの凹み量(平面11Aからの凹み量の最大値)が増すようになっている。流体の圧力を上げることで反射面11の曲率半径の値が無限大になると、反射面11は平面11Aになる。なお、流体の圧力をさらに上げたときに、反射面11が凸面になるように構成されていてもよい。
第2のAOミラー5は、第1のAOミラー3で反射されたレーザ光LB1,LB3を反射するようになっている。図1では、第2のAOミラー5で反射されたレーザ光を、参照符号LB2または参照符号LB4で示している。
また、第2のAOミラー5は、第1のAOミラー3とほぼ同様に構成されており、第2のAOミラー5も、第1のAOミラー3に向かう方向とは交差する方向にレーザ光を反射するようになっている。すなわち、第1のAOミラー3で反射されたレーザ光LB1,LB3の光軸OP1と、第2のAOミラー5で反射されたレーザ光LB2,LB4の光軸OP2とはお互いが交差している。
第1のAOミラー3で反射されて第2のAOミラー5に入射するレーザ光LB1,LB3は、第1のAOミラー3の反射面11の形状によって変化するが、たとえば、平行光もしくは平行光に近い収束光になっている。
すなわち、第1のAOミラー3の平面11Aで反射されて第2のAOミラー5に入射するレーザ光LB1はほぼ平行光になっており、第1のAOミラー3の凹面11Bで反射されて第2のAOミラー5に入射するレーザ光LB3は平行光に近い収束光になっている。なお、第1のAOミラー3で反射されて第2のAOミラー5に入射するレーザ光を発散光とすることも可能である。
また、レーザ光LB1の径(第2のAOミラー5の反射面13における径)D1は、レーザ光LB3の径(第2のAOミラー5の反射面13における径)D3よりも大きくなっている。
第2のAOミラー5の反射面13は、たとえば、平面13Aもしくは凸面13Bになる。流体の圧力を下げて凸面13Bの曲率半径の値が大きくなると、凸面13Bの突出量(平面13Aからの突出量の最大値)が減少し、さらに、流体の圧力を下げると平面13Aになり、流体の圧力を上げて凸面13Bの反射面の曲率半径の値が小さくなると、凸面13Bの突出量(平面13Aからの突出量の最大値)が増すようになっている。なお、第2のAOミラー5の反射面13が凹面になるように構成されていてもよい。
第2のAOミラー5で反射されて集光レンズ7に入るレーザ光LB2,LB4は、第2のAOミラー5の反射面13の形状によって変化するが、たとえば、平行光もしくは平行光に近い発散光になっている。
すなわち、第2のAOミラー5の平面13Aで反射されて集光レンズ7に入るレーザ光LB2はほぼ平行光になっており、第2のAOミラー5の凸面13Bで反射されて集光レンズ7に入るレーザ光LB4は平行光に近い発散光になっている。なお、第2のAOミラー5で集光レンズ7に入るレーザ光を収束光(平面13Aで反射されたレーザ光LB2よりも平行光に近い収束光)とすることも可能である。
また、レーザ光LB2の径(集光レンズ7に入る直前の径)D2は、レーザ光LB4の径(集光レンズ7に入る直前の径)D4よりも大きくなっている。
集光レンズ7は、凸レンズになっており、第2のAOミラー5で反射されたレーザ光LB2,LB4を集光するようになっている。集光レンズ7を透過したレーザ光(収束光)が、ワークW(図4参照)に照射されるようになっている。ワーク(被加工物)Wは、たとえば、鋼等の板状の金属で構成されており、レーザ光LB2,LB4の光軸OP2は、ワークWの厚さ方向に延びている。
制御部9は、CPU15と、メモリ17とを備えて構成されており、たとえば、メモリ17に予め格納されている動作プログラムにしたがって、レーザ加工機1の動作を制御するようになっている。
制御部9は、ワークWにピアス加工をするときに、第1のAOミラー3の反射面11の曲率を制御し、第1のAOミラー3の反射面11の形状を、ワークWを切断加工する場合よりも凹方向に湾曲変形し、第2のAOミラー5に入射するレーザ光のビーム径を、ワークWを切断加工する場合よりも小さくするようにしている。すなわち、図1で示すように、反射面11の形状を、参照符号11Aで示す状態から参照符号11Bで示すように凹ます側に移行することで、レーザ光LB1を、収束光としてのレーザ光LB3の側に移している。
さらに、制御部9は、ワークWにピアス加工をするときに、第2のAOミラー5の曲率を制御し、第2のAOミラー5の反射面13の形状を、ワークWを切断加工する場合よりも凸方向に湾曲変形して、集光レンズ7の入射されるレーザ光をたとえば発散光LB4に変形する。そして、集光レンズ7を透過したレーザ光の焦点位置19を、集光レンズ7から離れる方向に補正して適正位置にしている。
すなわち、ワークWにピアス加工をするときに、図1で示すように、反射面13の形状を、たとえば、参照符号13Aで示す平面状態から参照符号13Bで示すように凸側に移行する(凸面となるように変形する)ことで、レーザ光を、レーザ光LB4で示すような発散光に変形して、焦点距離を長くしている。そして、集光レンズ7と焦点位置19との間の距離L1が、加工ヘッド(図1等では図示せず)を上昇したにもかかわらず、ワークWを切断加工する場合とほぼ等しくなるようにしている。
換言すれば、ワークWにピアス加工を行うために、加工ヘッドをワークWに対して、より上方に移動した場合であっても、ワークWの切断加工時における焦点位置とピアス加工時の焦点位置とがお互いにほぼ等しくなるように、各AOミラー3、5の反射面11,13の曲率を調節している。
制御部9による第1のAOミラー3と第2のAOミラー5との上記制御は、ピアス加工をするときに溶融させるワークWの部位の体積(金属の体積;ピアス加工における貫通孔21の体積)を減少させることで、ピアス加工における貫通孔21(図4参照)の形成に要する時間(ピアス貫通時間)を短くするためになされるものである。
なお、レーザ加工機1では、加工ヘッド(図1等では図示せず)を構成する集光レンズ7、第1のAOミラー3、第2のAOミラー5およびノズル23は、ハウジング(図示せず)に一体的に設けられており、集光レンズ7、第1のAOミラー3、第2のAOミラー5およびノズル23間の相対的な位置関係は、たとえば、一定になっている。また、集光レンズ7を透過したレーザ光LB4の光軸OP2の延伸方向とワークWの厚さ方向とは、上述したように、お互いが一致しており、たとえば、上下方向になっている(図4参照)。また、ワークWにピアス加工や切断加工を行う場合、アシストガスを用いる。
板状のワークWを切断加工する場合、切断加工に先立ってピアス加工によってワークWに小さな貫通孔21を形成し、この形成された貫通孔21を起点としてワークWに切断加工を行うことは周知の事実であるが、ワークWを切断加工するときには、上述したように、第1のAOミラー3の反射面11と、第2のAOミラー5の反射面13とは平面11A,13Aになっており(曲率半径が無限大になっており)、ワークWにピアス加工をするときには、第1のAOミラー3の反射面11は所定の曲率半径の凹面11Bになっており、第2のAOミラー5の反射面13は所定の曲率半径の凸面13Bになっている。
これにより、ワークWにピアス加工をするときには、第1のAOミラー3で反射されて第2のAOミラー5に入射するレーザ光(たとえば収束光)LB3のビーム径D3が、ワークWを切断加工する場合のレーザ光(たとえば平行光)LB1のビーム径D1よりも小さくなる。
また、第1のAOミラー3の反射面11Bの形状がワークWを切断加工する場合よりも凹方向に変形していることで、第2のAOミラー5の反射面13Bが凸方向に変形しているにもかかわらず、第2のAOミラー5で反射されて集光レンズ7の入るレーザ光LB4(たとえば発散光)のビーム径D4が、ワークWを切断加工する場合のレーザ光(たとえばほぼ平行光)LB2のビーム径D2よりも小さくなる。
また、第2のAOミラー5で反射されるレーザ光LB4を発散光とすることによって、加工ヘッド(集光レンズ7)を、ワークWに切断加工を行う場合よりも上昇させたにもかかわらず、第2のAOミラー5で反射されて集光レンズ7を透過したレーザ光LB4の焦点位置19がワークWに到達する前に焦点を結んでしまうことが回避され、ワークWに切断加工を行う場合と同様になる。
そして、第2のAOミラー5で反射されて集光レンズ7を透過したレーザ光LB4の焦点位置19がワークWの表面もしくは表面の近傍(ワークWの外部の近傍)もしくはワークWの表面の近傍(ワークWの内部の近傍)になる。すなわち、ピアス加工をするときにおいて、集光レンズ7を透過したレーザ光を収束光として焦点距離を大きくすることができる。
さらに説明すると、図5に示す従来のレーザ加工機でワークWを切断加工するときには、AOミラー203の反射面207が平面207Bになっており、図7(a)で示すように、ビーム径DBのレーザ光LBBが集光レンズ205に入射し、集光レンズ205で集光された収束光(スポット径)dBのレーザ光(集光レンズ205の焦点位置19)が、ワークWの上面の近傍に位置している。
また、従来のレーザ加工機でピアス加工をするときに、図7(b)で示すようにレーザ加工ヘッド(図7では図示せず)を上方に移動しただけでは、ビーム径DBのレーザ光LBBが集光レンズ205に入射するが、集光レンズ205で集光されたスポット径dBのレーザ光(集光レンズ205の焦点位置19)が、ワークWの上面の上方に位置してしまう(図7(a)に比べてレーザ加工ヘッドを上方に移動した距離だけ上方に位置してしまう)。
そこで、従来のレーザ加工機201でピアス加工をするときには、図7(c)で示すように、レーザ加工ヘッドを上方にしかも図7(b)で示す場合と同様に移動してノズルギャップを大きくするとともに、AOミラー203の反射面207Cを凸面(図5参照)にして、ビーム径DCのレーザ光LBCが集光レンズ205に入射し、集光レンズ205で集光されたスポット径dCのレーザ光(集光レンズ205の焦点位置19)が、ワークWの中(板厚方向の中間部)に位置するようにしている。
図7(c)で示す状態では、ビーム径DCが大きいことでスポット径dCが小さくなり、集光レンズ205の焦点位置19がワークWの中に存在しているので、ピアス加工をするときに溶融させる貫通孔21の体積を減少させることができる。なお、スポット径dCは、「dC≒M2×4λf/πDC」という式(式1)で表すことができる。なお、上記式における「λ」は、レーザ光の波長であり、「f」は集光レンズ7,205の焦点距離であり、「π」は円周率であり、「M2」はモード係数(ビーム品質を表すパラメータ)である。
しかし、図7(c)で示す状態では、ビーム径DCが大きいことで発散角Ψ0が大きくなってしまい。スポット径dCを小さくしたにもかかわらず、ピアス加工をするときに溶融させる貫通孔(ワークWに形成される貫通孔)21の体積が多くなってしまう。
これに対して、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工機1では、2つのAOミラー3,5の曲率を調節することで集光レンズ7に入射されるレーザ光をより小径の発散光に調節することができる。そして、図4(c)で示すように、レーザ光のビーム径D4を小さくすることで、レーザ光LB4の発散角Ψを小さくし、ピアス加工をするときに溶融させる貫通孔21の体積を小さくすることができる。
また、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工機1では、ワークWを切断加工するとき、第1のAOミラー3の反射面11と、第2のAOミラー5の反射面13とは平面11A,13Aになっており、図1に参照符号LB1,LB2で示すレーザ光によってワークWの切断加工がなされる。そして、良好なワークWの切断加工を行うことができる。
次に、発明の第1の実施形態に係るレーザ加工機1を用いてワークWにピアス加工をしようとするときについて説明する。
図1のレーザ光LB1,LB2の状態(第1のAOミラー3の反射面11と、第2のAOミラー3の反射面13とは平面11A,13AになっていてワークWに切断加工を行う状態)から加工ヘッドを上昇させて第2のAOミラー5の反射面13を凸面13Bにする。これによって、図4(a)(=図7(c))で示す状態になる。
図4(a)で示す状態では、集光レンズ7に入射するレーザ光のビーム径DCが大きいので、集光レンズ7で集光されたレーザ光のスポット径dCが小さくなっており、集光レンズ7で集光されたレーザ光の焦点位置19がワークWの上面近傍でワークWの内部に存在している。
しかし、図4(a)で示す状態でピアス加工すると、レーザ光のビーム径DCが大きいことでレーザ光の発散角Ψ0が大きくなっており、ピアス加工をするときに溶融させる貫通孔21の体積が大きくなってしまう。
貫通孔21の体積が大きくなってしまうことを回避すべく、図4(a)で示す状態から、仮に、第2のAOミラー5の反射面13を凹面(図1では凹面を図示していない)にすると、図4(b)で示すように、レーザ光のビーム径DSが小さくなることでレーザ光のスポット径dSはやや大きくなるが発散角Ψ1は小さくなる。しかし、集光レンズ7で集光されたレーザ光の焦点位置19が、ワークWの上面の上方に位置してしまい、これでは、溶融させる貫通孔21の体積が増し、ワークWに良好なピアス加工を行うことができない。
そこで、図1のレーザ光LB1,LB2の状態(第1のAOミラー3の反射面11と、第2のAOミラー3の反射面13とは平面11A,13AになっていてワークWに切断加工を行う状態)から加工ヘッドを上昇させて第2のAOミラー5の反射面13を凸面13Bにするとともに、第1のAOミラー3の反射面11を凹面11Bにする。これによって、図4(c)で示す状態になり、図1で示すレーザ光LB3,LB4でワークWにピアス加工がなされるようになっている。
図4(c)で示す状態では、発散光であるレーザ光LB4が集光レンズ7入射する時のビーム径D4をより小さくして、このビーム径D4に応じたレーザ光のスポット径d4を得ることができ、発散角Ψを小さくしたままで、集光レンズ7で集光されたレーザ光LB4の焦点位置19をワークWの上面近傍でワークWの内部に存在させることができる。
以上により、集光レンズ7に入射するレーザ光を発散光に調節するとともに、入射時の径を通常の切断加工(レーザ切断加工)を行う場合の入射光の径よりも小径にして、発散角Ψを発散角Ψ0よりも小さくすることで、ワークWにピアス加工をするときに溶融させる貫通孔21の体積を、図4(a)で示す場合よりも、図4(c)で示す場合において少なくすることができ、ピアス加工するときの加工時間をさらに短縮することができる。
なお、発散角Ψを小さくすることで減少させることができる貫通孔21の体積(ワークWにピアス加工をするときに溶融させる貫通孔21の体積)は、ワークWが厚いほど減少させることができる。
次にレーザ加工機1の動作について説明する。
まず、第1のAOミラー3の反射面11を凹面11Bにし、第1のAOミラー3で反射されるレーザ光を収束光LB3にする。また、第2のAOミラー5の反射面13を凸面13Bにしておいて、第2のAOミラー5で反射され集光レンズ7に入射する前のレーザ光を発散光LB4にする。これにより、ワークWにピアス加工をする。このとき、レーザ光の焦点位置19は、ワークWの表面(たとえば、上面)もしくはこの近傍に位置しており、ノズル23からはアシストガスが適宜噴出されている。また、集光レンズ7に入射する直前のレーザ光LB4のビーム径(図1における集光レンズ7上面におけるレーザ光LB4のビーム径)D4は、12mm〜15mm程度になっている。なお、ビーム径D4が、12.5mm〜14.5mm程度になっていてもよいし、ビーム径D4が、13.0mm〜14.0mm程度になっていてもよいし、ビーム径D4が、13.0mmになっていてもよい。
ピアス加工が終わった後に、第1のAOミラー3の反射面11を平面11Aにし、第1のAOミラー3で反射されるレーザ光をほぼ平行光LB1にする。また、第2のAOミラー5の反射面13を平面13Aにし、第2のAOミラー5で反射され集光レンズ7に入射する前のレーザ光をほぼ平行光LB2にする。そして、加工ヘッドをワークWに近づけて、貫通孔21を起点とし、ワークWに対して加工ヘッドを相対的に適宜移動し、ワークWの切断加工を行う。このとき、レーザ光の焦点位置19は、ワークWの表面(たとえば、上面)もしくはこの近傍に位置しているものとする。また、ノズル23からはアシストガスが適宜噴出されている。
レーザ加工機1によれば、ワークWにピアス加工をするときに、第1のAOミラー3の反射面11の形状を、ワークWを切断加工する場合よりも曲率半径が小さな凹曲面にして、第2のAOミラー5の反射面13の形状を、ワークWを切断加工する場合よりも曲率半径が小さな凸曲面にするので、ワークWを加工するときにおけるピアス加工の加工時間をさらに短縮することができ、ワークWの切断加工を良好な状態で行うことができる。
すなわち、ワークWにピアス加工をするときに、各AOミラー3,5の反射面11,13を上述したように調節することで、第2のAOミラー5に入射するレーザ光LB3のビーム径D3がワークWを切断加工する場合のビーム径D1よりも小さくなり、第2のAOミラー5で反射されて集光レンズ7に入るレーザ光LB4のビーム径D4が、ワークWを切断加工する場合のビーム径D2よりも小さくなる。これによって、集光レンズ7で集光されたレーザ光のスポット径(集光レンズ7の焦点位置19におけるレーザ光の最小ビーム径)は、ワークWを切断加工する場合よりも大きくなる(上記式1参照)。
しかし、ワークWにピアス加工をするときに、第2のAOミラー5で反射されて集光レンズ7に入るレーザ光LB4のビーム径D4を小さくしていることで、レーザ光の発散角(集光レンズ7透過後のレーザ光の発散角)Ψが、ワークWを切断加工する場合よりも小さくなる。
ピアス加工をするときに溶融させる貫通孔21の体積は、集光レンズ7で集光されたレーザ光のスポット径が小さくなるにしたがって小さくなり、また、ピアス加工をするときに溶融させる貫通孔21の体積は、レーザ光の発散角Ψが小さくなるにしたがって小さくなる。
ピアス加工をするときに溶融させる貫通孔21の体積に与える影響は、レーザ光のスポット径の値よりも、レーザ光の発散角Ψのほうが大きい。特に、ワークWが厚くなるほど、レーザ光の発散角の影響が大きくなる。
したがって、ピアス加工をするときに第1のAOミラー3と第2のAOミラー5とに上記制御をすることで、集光レンズ7で集光されたレーザ光のスポット径が大きくなっても、ピアス加工をするときに溶融させる貫通孔21の体積を小さくすることができる。
なお、ピアス加工をするときにおける焦点位置19の位置を、ワークWの板厚に応じて適宜変更してもよい。たとえば、焦点位置19の位置をワークWの板厚の中央部もしくは中間部にしてもよい。
図3に示すグラフは、横軸がワークWの厚さを示しており、縦軸がピアス加工での貫通孔21の形成に要する時間を示している。図3の線図G2は、集光レンズ7に入射されるレーザ光のビーム径を従来のレーザ加工機の場合と同一径に調節してのピアス加工における貫通孔21の形成に要する時間を示しており、図3の線図G1は、本発明の実施形態に係るレーザ加工機1でのピアス加工における貫通孔21の形成に要する時間を示している。すなわち、集光レンズ7に入射されるレーザ光は、従来の場合のレーザ光よりも小径であってかつ発散光に調節してある。したがって、レーザ光の発散角を従来よりも小さくすることができ、本発明の実施形態に係るレーザ加工機1でのピアス加工における貫通孔21の形成に要する時間は、従来のものに比べて少なくなっている。
なお、上記説明では、ワークWの切断加工時には、各AOミラー3,5の反射面11,13が平面11A,13Aになっており、ワークWのピアス加工時には、第1のAOミラー3の反射面11が凹面11Bになり、第2のAOミラー5の反射面13が凸面13Bになっているが、反射面11、13の態様が必ずしも上述した態様になっている必要は無い。
たとえば、第1のAOミラー3に入射するレーザ光の態様等によって、ワークWの切断加工時に第1のAOミラー3の反射面11が凹面になっており、ワークWのピアス加工時に第1のAOミラー3の反射面11が、切断加工時よりも曲率半径の絶対値が小さい凹面になるようにしてもよいし、ワークWの切断加工時に第1のAOミラー3の反射面11が凸面になっており、ワークWのピアス加工時に第1のAOミラー3の反射面11が凹面(平面でもよい)になるようにしてもよいし、ワークWの切断加工時に第1のAOミラー3の反射面が凸面になっており、ワークWのピアス加工時に第1のAOミラー3の反射面11が、切断加工時よりも曲率半径の絶対値が大きい凸面(平面でもよい)になるようにしてもよい。
また、ワークWの切断加工時に第2のAOミラー5の反射面13が凸面になっており、ワークWのピアス加工時に第2のAOミラー5の反射面13が、切断加工時よりも曲率半径の絶対値が小さい凸面になるようにしてもよいし、ワークWの切断加工時に第2のAOミラー5の反射面13が凹面になっており、ワークWのピアス加工時に第2のAOミラー5の反射面13が凸面(平面でもよい)になるようにしてもよいし、ワークWの切断加工時に第2のAOミラー5の反射面13が凹面になっており、ワークWのピアス加工時に第2のAOミラー5の反射面13が、切断加工時よりも曲率半径の絶対値が大きい凹面(平面でもよい)になるようにしてもよい。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るレーザ加工機1Aは、図2で示すように、第1のAOミラー3に代えて、コリメートレンズ25を用いる点が、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工機1と異なり、その他の点は、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工機1とほぼ同様構成され、動作し、ほぼ同様の効果を奏し、同様に変形が可能である。
すなわち、本発明の第2の実施形態に係るレーザ加工機1Aは、コリメートレンズ25と、AOミラー(第1の実施形態に係るレーザ加工機1の第2のAOミラー5と同様のAOミラー)5と、集光レンズ7と、制御部9とを備えて構成されている。なお、集光レンズ7と制御部9とは、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工機1のものと同様に構成されている。
レーザ加工機1Aでは、コリメートレンズ25を、レーザ発振器(図示せず)から発振(出射)されたレーザ光LBが透過するようになっており、この透過するレーザ光LBの光軸OP1の延伸方向でコリメートレンズ25が移動位置決め自在になっている。
すなわち、コリメートレンズ25は、リニアガイドベアリング(図示せず)によってハウジング27に支持されており、リニアモータ等のアクチュエータ(図示せず)によって、移動位置決め自在になっている。なお、コリメートレンズ25は、たとえば、凸レンズで構成されており、コリメートレンズ25に入る直前のレーザ光LBは、たとえば、平行光に近い発散光になっている。
AOミラー5は、コリメートレンズ25を透過したレーザ光を反射するようになっている。すなわち、AOミラー5は、第1の実施形態に係るレーザ加工機1の第2のAOミラー5と同様にして、コリメートレンズ25に向かう方向とは異なる方向(交差する方向)にレーザ光を反射するようになっている。
なお、コリメートレンズ25が上述したように移動位置決め自在であることで、コリメートレンズ25とAOミラー5との間の距離を変更することができるようになっている。
コリメートレンズ25を透過してAOミラー5に入射するレーザ光LB1,LB3は、コリメートレンズ25の位置によって変化するが、たとえば、平行光もしくは平行光に近い収束光になっている。AOミラー5の反射面13は、たとえば、平面13Aや凸面13Bになっている。
集光レンズ7は、凸レンズになっており、AOミラー5で反射されたレーザ光LB2,LB4を集光するようになっている。そして、集光レンズ7を透過したレーザ光がワークWに照射されるようになっている。
制御部9は、ワークWにピアス加工をするときに、コリメートレンズ25の位置を、ワークWを切断加工する場合よりも、AOミラー5側(マイナス側)に位置調整して、AOミラー5に入射するレーザ光LB3のビーム径D3を、ワークWを切断加工する場合よりも小さくし、AOミラー5の反射面13の形状を、ワークWを切断加工する場合よりも凸方向に変形して、集光レンズ7を透過したレーザ光LB4の焦点位置を補正して適正位置にするように、コリメートレンズ25の位置と、AOミラー5とを制御するようになっている。
ところで、上記実施形態に説明されている内容をレーザ加工方法の発明として把握してもよい。
すなわち、レーザ発振器から発振されたレーザ光を反射する第1のAOミラーと、前記第1のAOミラーで反射されたレーザ光を反射する第2のAOミラーと、前記第2のAOミラーで反射されたレーザ光を集光する集光レンズとを用いるレーザ加工方法であって、ワークにピアス加工をするときに、前記第1のAOミラーの反射面の形状を、前記ワークを切断加工する場合よりも凹方向に変形して、第2のAOミラーに入射するレーザ光のビーム径を、ワークを切断加工する場合よりも小さくし、前記第2のAOミラーの反射面の形状を、前記ワークを切断加工する場合よりも凸方向に変形して、集光レンズを透過したレーザ光の焦点位置を補正して適正位置にするレーザ加工方法の発明として把握してもよい。
また、レーザ発振器から発振されたレーザ光が透過し、この透過するレーザ光の光軸の延伸方向で移動位置決め自在であるコリメートレンズと、前記コリメートレンズを透過したレーザ光を反射するAOミラーと、前記AOミラーで反射されたレーザ光を集光する集光レンズとを用いるレーザ加工方法であって、ワークにピアス加工をするときに、前記コリメートレンズの位置を、前記ワークを切断加工する場合よりも、前記AOミラー側(マイナス側)に位置調整して、AOミラーに入射するレーザ光のビーム径を、ワークを切断加工する場合よりも小さくし、前記AOミラーの反射面の形状を、前記ワークを切断加工する場合よりも凸方向変形にして、集光レンズを透過したレーザ光の焦点位置を補正して適正位置にするレーザ加工方法の発明として把握してもよい。