JP6640577B2 - 硬質皮膜 - Google Patents

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Description

本発明は硬質皮膜に関する。
近年、自動車製造の分野において、安全性の向上や、車体の軽量化を目的として高張力鋼板が多用される傾向にある。
高張力鋼板は高張力、高強度を有するために、従来用いられてきたプレス鋼板に比べて、プレス成形加工時に高い加圧力が必要となる。従って、高張力鋼板のプレス加工においては、プレス用金型にかかる負担が著しく大きくなるために、金型寿命が短いという問題がある。
金型寿命を延ばす方法として、金型表面に硬質被膜を形成することが検討されている。しかし、プレス成形の条件が苛酷となるに従い、金型表面に形成する硬質皮膜には、高硬度である以外にも、高弾性率、低摩擦係数及び耐熱性等の様々な特性が求められている。このような特性を実現するために、アルミニウムとクロムとを含む窒化膜を用いることが検討されている(例えば、特許文献1〜3等を参照。)。アルミニウムを加えることによりクロムのみの窒化膜よりも耐酸化性が向上すると期待される。
特開平10−25566号公報 特開2000−271699号公報 特開2011−126009号公報
しかしながら、アルミニウムとクロムとを含む窒化膜は、その組成比によって特性が大きく変化してしまう。最適化について種々の検討がなされているが、いずれも十分な成果を上げているとはいえない。
特に、プレス金型等の表面に形成する硬質皮膜の場合、耐酸化性だけでなく、硬度と弾性率とのバランスが取れた破壊靱性の高い硬質皮膜であることが求められている。このような複数の特性を満たす組成についての検討は十分ではない。
本開示の課題は、耐酸化性を有しつつ、硬度と弾性率とのバランスの取れた硬質皮膜を実現できるようにすることである。
本開示の硬質皮膜の一態様は、アルミニウムの窒化物及びクロムの窒化物を含み、表面における、アルミニウムのアルミニウムとクロムとの合計に対するモル比が0.75以上、0.82以下であり、且つ表面における酸素の窒素と酸素との合計に対するモル比が0.25以上、0.35以下である。このような構成とすることにより、耐酸化性を維持しつつ、硬さと破壊靭性とを両立させることができる。
硬質皮膜の一態様において、表面における、アルミニウムの組成比が36at%以上、41at%以下であり、クロムの組成比が8at%以上、12at%以下とすることができる。
硬質皮膜の一態様において、表面における、窒素の組成比が34at%以上、40at%以下、酸素の組成比が5at%以上、18at%以下とすることができる。
硬質皮膜の一態様は、表面から深さ方向に連続的又は断続的に酸素比率が減少しており、表面から150nm以上の深さにおいて酸素の窒素と酸素との合計に対するモル比が0.15以下とすることができる。このような、構成とすることにより表面における酸化膜形成を抑えると共に、必要な硬度を得ることができる。
硬質皮膜の一態様において、全体の平均組成比として、アルミニウムが36at%以上、40at%以下であり、クロムが41at%以上、45at%以下であり、窒素が15%以上、19%以下とすることができる。
硬質皮膜の一態様において、111面の格子定数が2.38以下、ピーク角度が37.7°以上であり、200面の格子定数が2.06以下、ピーク角度が43.9°以上とすることができる。
硬質皮膜の一態様において、ナノインデンテーション硬度Hが28GPa以上であり、ナノインデンテーション弾性率Eとの比E/Hが10.0以上とすることができる。これにより、硬さと破壊靱性とを両立させることができる。
硬質皮膜の一態様において、硬質皮膜は中間層の上に形成されており、中間層は、第一層として厚さが2μm以下の金属膜を含み、第二層として厚さが0.5μm以上、4μm以下の窒化膜又は炭窒化膜を含むようにすることができる。
この場合において、第一層はCr膜であり、第二層はCrN膜である構成とすることができる。
本開示のプレス金型の一態様は、本開示の硬質皮膜が設けられている。
本開示の工具の一態様は、本開示の硬質皮膜が設けられている。
本開示の硬質皮膜によれば、耐酸化性を有しつつ、硬度と弾性率とのバランスの取れた硬質皮膜を実現できる。
ビード引き抜き試験に用いる金型を示す図である。 ビード引き抜き試験の実施方法を示す図である。
本実施形態の硬質皮膜は、アルミニウムの窒化物及びクロムの窒化物を含み、表面におけるアルミニウムのアルミニウムとクロムとの合計に対するモル比が0.75以上であり、表面における酸素の酸素と窒素との合計に対するモル比が0.25以上、0.35以下である。
本開示において、硬質皮膜表面及び内部の各元素の組成比は、実施例において示すように、X線蛍光分光分析(XPS)法により求めることができる。
本開示において、硬質皮膜の内部における各元素の組成比は、エネルギー分散型X線分析(EDX)法により求めることができる。
一般に硬質皮膜に含まれるアルミニウムの含有量が多いほど耐酸化性が向上し、硬度も向上する。本実施形態においては、十分な硬度を実現する観点から、硬質皮膜の表面におけるアルミニウムのアルミニウムとクロムとの合計に対するモル比(Al/Al+Cr)は、0.75以上、好ましくは0.78以上である。十分な弾性率を実現する観点から、Al/Al+Crは、0.82以下、好ましくは0.81以下である。
一般に、窒化クロム(CrN)はB1(立方晶)型構造であり、窒化アルミニウム(AlN)はB4(六方晶)であり、窒化クロムと窒化アルミニウムの混晶の場合、アルミニウムのモル比が0.772を越えるとB1型構造を維持できなくなり、硬度の著しい低下が生じるとされる。しかし、本上限値は成膜方法、温度や酸素の混入によって上下すると考えられ、理論値と差異のある報告があることも同時にいわれている(高温学会誌、第33巻、p50−59、2007年)。このため、B1型構造を維持しつつAl比率を高めることができれば、高い耐酸化性を有した上で、高い硬度と滑り性も得られる。
窒化クロム及び窒化アルミニウムのX線回折(XRD)分析のピーク角度(2θ)は、それぞれ111面が37.525°及び38.531°であり、200面が43.605°及び44.772°であると知られている。窒化クロムと窒化アルミニウムとの混晶の場合、アルミニウムの比率が高い方が高角度側にシフトする。このため、硬質皮膜内部のXRD分析における111面の2θの値が37.7°以上で、200面の2θの値が43.9°以上である硬質皮膜は、アルミニウムの比率が高い膜として好ましい。また、XRD分析により求めた、111面の格子定数が2.38以下、200面の格子定数が2.06以下である硬質皮膜は、B1型構造を維持して弾性率と硬度とのバランスが取れた皮膜として好ましい。
硬質皮膜の表面におけるアルミニウムの組成比は、好ましくは36at%以上、好ましくは41at%以下であり、クロムの組成比は、好ましくは8at%以上、好ましくは12at%以下である。
硬質皮膜の表面に予め酸化物の層を形成することにより、酸化の進行を抑えることができ、耐酸化性をさらに向上させることができる。このため、硬質皮膜の表面における酸素(O)の酸素(O)と窒素(N)との合計に対するモル比(O/(O+N))は、0.35以下であり、好ましくは0.32以下である。一方、硬質皮膜の硬度を高くする観点からは、酸化物よりも窒化物が多いことが好ましく、(O/(O+N))は0.25以上、好ましくは0.27以上である。 硬質皮膜の表面における窒素の組成比は、好ましくは34at%以上、好ましくは40at%以下であり、酸素の組成比は、好ましくは5at%以上、好ましくは18at%以下である。
酸化の進行を抑えるためには、酸化物の層は、硬質皮膜の表面にのみ存在していればよい。このため、硬質皮膜の内部において、表面よりも酸化物の比率が低くなっていることが好ましい。具体的には、表面から150nm以上の深さの位置におけるO/(O+N)は、好ましくは0.15以下である。
O/(O+N)の値は、表面から内部に向かって連続的に低下していても、層構造を形成するように階段状に低下していてもよい。
本実施形態の硬質皮膜を、プレス金型等を被覆する皮膜として用いる場合には、硬度は、好ましくは28GPa以上、より好ましくは30GPa以上であり、弾性率(E)と硬度(H)との比(E/H)は、好ましくは10.0以上、より好ましくは11.0以上である。また、高張力鋼板に対する摩擦係数は、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下である。さらに、大気雰囲気において900℃で1時間加熱した場合の酸化膜形成は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.9μm以下である。なお、硬度及び弾性率は、実施例において示すように、ナノインデンテンション法により測定することができる。摩擦係数は、実施例において示すように、ビード引き抜き試験により測定することができる。
本実施形態の硬質皮膜は、例えば、アークイオンプレーティング法により形成することができる。ターゲットとしては、アルミニウムとクロムとの合金を用いることができる。ターゲットにおけるアルミニウムとクロムとのモル比(Al:Cr)は75:25〜60:40程度とすることができる。アーク放電の電流、基盤バイアス電圧、放電距離及びチャンバ内の圧力を調整することにより、ターゲットから昇華するクロムとアルミニウムとの比率を調整することができる。一般的に、アーク放電の電流値を大きくすれば、クロムとアルミニウムとが均一に昇華しやすい。
硬質皮膜中の酸素の量は、製造プロセス中の酸素の量により制御することができる。硬質皮膜表面のO/(O+N)を0.25以上、0.35以下とするため、成膜プロセス中の酸素を一旦十分に除去することが好ましい。具体的には処理開始前にチャンバ内の大気及び吸着ガスを十分排気し、到達圧力を5.0×10−3Pa以下とする。その後、チャンバ内の圧力は、アウトガスや外部リーク等により上昇する。この際に酸素の混入が生じるため、排気後の圧力上昇量を調整することで硬質皮膜中の酸素の量を制御することができる。圧力上昇量が高くなるとO/(O+N)が上昇する。O/(O+N)を低く抑える観点から、上昇後の圧力は1.6×10-2Pa以下とすることが好ましい。酸素を除去するために、真空度を高くし、高純度のガスを用いることが好ましい。また、成膜後の冷却プロセスを、酸素の量が少ない雰囲気で行うことが好ましい。
さらに、基盤電圧を変化さて、金属イオンの酸素イオンに対する堆積性を変化させたり、酸素結合の切断を生じやすくしたりすることにより、硬質皮膜中の酸素の量を変化させることもできる。
硬質皮膜を形成する基材は、特に限定されず、プレス用金型として従来から用いられている各種材料を用いることができる。具体的には、SKD11及びSKD61等のダイス鋼、SKH51等の高速度鋼、SK5及びSKS3等の各種工具鋼、超硬材、並びにSUS440C、SUS420J2及びSUS304等のステンレス鋼材等を用いることができる。これらの中では、特に、高温焼き戻しにより、2次硬化が起こるSKD11等のダイス鋼及びSKH51等の高速度鋼が高い硬度が得られバックアップ力強化による耐摩耗性向上の点から好ましい。
本実施形態の硬質皮膜は、基材の表面に直接形成してもよいが、中間層を介して形成することもできる。中間層を設けることにより、密着性を向上させることができる。中間層は特に限定されないが、例えば、Cr、Ti、及びAlのいずれかを含む金属膜、窒化膜、又は炭窒化膜等とすることができる。具体的に、Al、Cr、Ti、AlCr、AlTi、TiCr、AlN、TiN、TiCN、CrN、CrCN、TiAlN、TiAlCN、AlCrN、AlCrCN、TiAlCrN、及びTiAlCrCN、並びにそれらにB、Si、V、Mn、Ni、Cu、Y、Nb、Mo、Zr、及びHf等を添加した1層以上で構成することができ、中でもCr、Ti、TiN、CrN、又はAlCrN等が特に好ましく、母材との密着性を高める観点から、金属膜を第一層とし、被膜硬度傾斜を設ける観点から、窒化膜又は炭窒化膜を第二層とした2層構造とすることがより好ましい。中でも第一層は、Cr膜又はTi膜とすることが好ましく、第二層はCrN、TiN又はAlCrNとすることが好ましい。第一層の厚さは、2μm以下とすることが好ましく、第二層の厚さは0.5μm以上、4μm以下とすることが好ましい。
硬質被膜の厚さは、特に限定されないが、十分な耐酸化性を得る観点から1.5μm程度以上とすることが好ましく、被膜の内部応力バランスを維持してより高い密着力を確保する観点から、4.5μm以下であることが好ましい。また、硬さと耐酸化性を両立するため、硬質皮膜の表面を酸化物を含む表面酸化層とし、その下層に酸化物を含まない又はほとんど含まない層を設けてもよい。この場合、表面酸化層の占める厚さは0.1μm以上、0.5μm以下であることが好ましい。
本実施形態の硬質皮膜は、弾性率と硬度とのバランスがよく、破壊靱性が高いだけでなく、滑り性及び耐酸化性も高いため、特にプレス金型の被覆とすることにより、プレス金型を高寿命化することができる。また、プレス金型に限らず、工具等の被覆として用いることもできる。
本開示について実施例を用いてさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定するものではない。
(評価方法)
−結晶構造−
被膜内部の結晶構造は、X線回折装置(リガク社製:RINT2500 VHF)を用いて測定した。X線入射角は2°とし、回折角(2θ)は20°〜120°の範囲でX線回折スペクトルを測定した。ターゲットには銅を用いた。(111)面及び(200)面のピークを用いて格子定数を算出した。
−組成解析−
硬質被膜表面の組成は、X線光電子分光(XPS)装置(日本電子製:JPS-9020)を用いて測定した。XPS測定の条件は、試料に対する検出角度を90度とし、X線源にはAlを用い、X線照射エネルギーを100Wとした。1回の測定時間は0.2msとし、1つの試料について32回測定を行った。炭素中を進む光電子の非弾性平均自由工程を考慮すると、表面から9nmまでの範囲について測定されると考えられる。さらに、光電子は表面から深くなるにつれて脱出しにくくなり、光電子の検出は表面から深くなるほど減衰する。従って、今回測定された情報の50%は表面からおよそ1.5nmまでの最表層の情報で占められていると考えられる。また、深さ方向の組成測定は、Ar雰囲気、圧力0.1Pa下、印加電圧500Vのエッチング処理を1分間実施後の測定する操作を20回繰り返した。このときエッチング後深さは、エッチング処理前後の膜厚差から算出したエッチングレートである9nm/minから算出した。
XPS測定により得られたクロム2p(Cr2p)ピーク、アルミニウム2p(Al2p)ピーク、チタン2p(Ti2p)ピーク、窒素1s(N1s)及び酸素1s(O1s)ピークから、クロム、アルミニウム、窒素及び酸素の組成比(at%)を求めた。
硬質皮膜内部における各元素の組成比は、エネルギー分散型X線分析(EDX)法によって、加速電圧15kVで測定を行った。このときの測定深さは1μm以上と考えられ、硬質皮膜全体の平均組成比を示す。
−耐酸化性−
得られた硬質皮膜を、大気雰囲気において、900℃で1.1時間加熱し、形成された酸化膜の膜厚を測定した。酸化膜の膜厚は、エネルギー分散型X線分析(EDX)による元素マッピングを行い、酸化層の厚さから算出した。
−物理特性−
被膜の硬度及び弾性率(ヤング率)は、ナノインデンテーション装置(Hysitron社製:TI-950 Triboindenter)により測定した。ダイヤモンドの圧子は稜線角が115°の三角錐のBerkovich型とし、ダイヤモンド圧子の押し込み加重を2600μNとして荷重−変位曲線を求め、得られた荷重−変位曲線から硬度及び弾性率を算出した。
−ビード引き抜き試験−
被膜を形成したプレス用金型の摩擦係数及び破断加圧荷重は、ビード引き抜き試験により測定した。具体的に、図1に示すオス側金型311及びメス側金型312からなるプレス用金型310を準備した。図2に示すように、20×300×1.4mmの高張力鋼材SPFC980Y(100k級ハイテン)からなる鋼板315を、プレス用金型310に挟み込んだ。鋼板315を挟み込んだプレス用金型310を小型プレス機にセットし、10kNの押し付け荷重を加えた状態で、挟み込まれた鋼板315の一端を500mm/minの一定速度で引っ張った。各距離における引抜荷重F及び押付荷重Pを測定し、「摩擦係数μ=引抜荷重F/押付荷重P/2」の式より各距離における摩擦係数を算出し、引張距離が20mm〜100mmの間の摩擦係数の平均値を、各サンプルの摩擦係数とした。
(実施例1)
まず、図1に示した形状及び寸法で、その表面がRa=0.05μm程度に鏡面仕上げされたSKD11からなるオス側金型母材及びメス側金型母材のセットを準備した。
オス側金型母材及びメス側金型母材の表面に、アークイオンプレーティングを用いた成膜装置を用いて、アークイオンプレーティング法により被膜を形成した。具体的にはまず、成膜装置のワークホルダの上に、オス側金型母材及びメス側金型母材を載置した。ターゲットには純クロムとアルミニウムクロム合金の2種を用いた。続いて、チャンバ内を5×10-3Paまで減圧し、圧力上昇量が0.6×10-3Pa/secの条件下でプロセスを開始した。オス側金型母材及びメス側金型母材の温度はヒーターによりそれぞれ420℃とした。続いて、ガス導入口からアルゴン(Ar)ガスを供給しつつ、排気することによりチャンバ内の圧力を所定の圧力に維持し、ワークとチャンバの間で放電させることにより、アルゴンボンバードを行い、金型母材の表面をクリーニングした。
次に、中間層の形成を行った。中間層第一層としてアルゴンガス雰囲気下で1.0Paに維持し、アーク放電を発生させクロムからなるターゲットを蒸発させ、Cr膜を形成した。このとき、アーク放電の電流は160Aであった。その後、窒素ガスを導入し、Arとの混合雰囲気下で圧力を4.0Paに維持し、中間層第二層としてCrN膜を形成した。得られたCr膜の厚さは0.5μm、CrN膜の厚さは1.0μmであった。
次に、ターゲットとしてアルミニウムとクロムとのモル比(Al:Cr)が70:30である合金を用い、アーク放電を発生させ、アルミニウム及びクロムの窒化膜膜(AlCrN)からなる硬質皮膜を形成した。このときアーク放電の電流値は180Aとし、基盤電圧は30Vとした。得られたAlCrN膜の膜厚は、表面酸化層を含めて約2μmであった。
得られた硬質被膜表面の組成比は、アルミニウムが39.3at%、クロムが9.9at%、窒素が36.1at%、酸素が14.7at%であった。従って、Al/(Al+Cr)は0.80、O/(N+O)は0.29である。また、エッチングによる深さ方向の組成について、深さ150nmにおけるO/(N+O)は0.12であった。硬度(H)は31.6GPa、弾性率(E)は352GPaであった。従って、E/Hは11.2である。摩擦係数(μ)は0.54であった。900℃での酸化膜形成は0.87μmであった。また、硬質被膜内部の(111)面における格子定数は2.37、ピーク角度は37.9°であり、(200)面における格子定数は、2.05、ピーク角度は44.1°であった。硬質被膜全体の平均組成比は、アルミニウムが38.7at%、クロムが43.1at%、窒素が17.7%であった。また、得られた中間層第一層であるCr膜の硬度は6GPaであり、中間層第二層であるCrN膜の硬度は18GPaであった。
(実施例2)硬質皮膜形成において導入ガスを窒素のみとし、アーク放電の電流を160Aとした以外は、実施例1と同様にした。
得られた硬質被膜表面の組成比は、アルミニウムが37.1at%、クロムが9.5at%、窒素が37.7at%、酸素が15.7at%であった。従って、Al/(Al+Cr)は0.80、O/(N+O)は0.29である。硬度(H)は32.1GPa、弾性率(E)は360GPaであった。従って、E/Hは11.2である。900℃での酸化膜形成は0.98μmであった。また、硬質被膜内部の(111)面における格子定数は2.37、ピーク角度は37.9°であり、(200)面における格子定数は、2.06、ピーク角度は44.0°であった。
(実施例3)硬質皮膜形成において、導入ガスを窒素のみとした以外は、実施例1と同様にした。
得られた硬質被膜表面の組成比は、アルミニウムが36.2at%、クロムが9.3at%、窒素が38.2at%、酸素が16.3at%であった。従って、Al/(Al+Cr)は0.80、O/(N+O)は0.30である。硬度(H)は29.3GPa、弾性率(E)は315GPaであった。従って、E/Hは10.8である。900℃での酸化膜形成は0.88μmであった。また、硬質被膜内部の(111)面における格子定数は2.38、ピーク角度は37.9°であり、(200)面における格子定数は、2.06、ピーク角度は44.0°であった。
(比較例1)圧力上昇量が2.0×10-3Pa/secの条件下でプロセス開始とした以外は、実施例1と同様にした。
得られた硬質被膜表面の組成比は、アルミニウムが35.3at%、クロムが6.1at%、窒素が25.1at%、酸素が33.5at%であった。従って、Al/(Al+Cr)は0.85、O/(N+O)は0.57である。また、エッチングによる深さ方向の組成について、深さ150nmにおけるO/(N+O)は0.15であった。硬度(H)は16.2GPa、弾性率(E)は199GPaであった。従って、E/Hは12.3である。
(比較例2)硬質皮膜形成において、使用ターゲットのモル比を変更し、アルミニウムとクロムとのモル比(Al:Cr)を50:50である合金を用いた。また、窒素ガスのみで圧力を3.5Paとし、アーク放電の電流を160Aとした。それ以外は、実施例1と同様にした。
得られた硬質被膜表面の組成比は、アルミニウムが37.1at%、クロムが9.5at%、窒素が37.7at%、酸素が15.7at%であった。従って、Al/(Al+Cr)は0.80、O/(N+O)は0.29である。硬度(H)は29.9GPa、弾性率(E)は345GPaであった。従って、E/Hは11.7である。また、硬質被膜内部の(111)面における格子定数は2.39、ピーク角度は37.6°であり、(200)面における格子定数は、2.07、ピーク角度は43.8°であった。
(比較例3)硬質皮膜形成において、基盤電圧を70Vとした以外は、実施例1と同様にした。
得られた硬質被膜表面の組成比は、アルミニウムが39.4at%、クロムが9.9at%、窒素が40.3at%、酸素が10.4at%であった。従って、Al/(Al+Cr)は0.80、O/(N+O)は0.21である。硬度(H)は37.1GPa、弾性率(E)は356GPaであった。従って、E/Hは9.6である。また、硬質被膜内部の(111)面における格子定数は2.39、ピーク角度は37.6°であり、(200)面における格子定数は、2.07、ピーク角度は43.7°であった。
(比較例4)硬質皮膜形成において、基盤電圧を50Vとした以外は、実施例1と同様にした。
得られた硬質皮膜表面の組成比は、アルミニウムが40.6at%、クロムが9.6at%、窒素が38.0at%、酸素が11.8at%であった。従って、Al/(Al+Cr)は0.81、O/(N+O)は0.24である。硬度(H)は34.9GPa、弾性率(E)は337GPaであった。従って、E/Hは9.7である。また、硬質被膜内部の(111)面における格子定数は2.39、ピーク角度は37.5°であり、(200)面における格子定数は、2.07、ピーク角度は43.7°であった。摩擦係数(μ)は0.60であった。
(比較例5)
ターゲットをチタンとし、供給ガスを窒素ガス雰囲気下で圧力4.0Paに維持し、基盤電圧を30V、アーク放電の電流を160Aとして中間層第一層である窒化チタン(TiN)膜を形成した。その後メタンガス(CH4)を導入し、圧力を2.7Pa、基盤電圧を200Vに変更し、中間層第二層である炭窒化チタン(TiCN)膜を形成した。その後、窒素ガスの供給を停止し、硬質被膜炭化チタン(TiC)膜を形成した。
得られた硬質被膜の硬度(H)は39.3GPa、弾性率(E)は350GPaであった。従って、E/Hは8.9である。摩擦係数(μ)は0.47であった。900℃で加熱したところ溶損した。
(比較例6)
中間層形成において、ターゲットをチタンとし、基盤電圧50Vにて窒化チタン(TiN)膜を形成した。また、硬質被膜形成において使用ターゲットをアルミニウムとチタン合金とし、そのモル比(Al:Ti)を50:50とした上で、基盤電圧を50Vとして窒化チタン、窒化アルミニウムからなる膜(TiAlN)とした以外は、実施例1と同様にした。
得られた硬質被膜表面の組成比は、アルミニウムが27.1at%、チタンが43.1at%、窒素が16.6at%、酸素が13.1at%であった。従って、O/(N+O)は0.28である。硬度(H)は35.0GPa、弾性率(E)は363GPaであった。従って、E/Hは10.4である。摩擦係数(μ)は0.52であった。900℃での酸化膜形成は2.34μmであった。
(比較例7)
硬質皮膜形成において、ターゲットをチタン、クロム及びアルミニウムの合金(比率10:45:45)とし、基盤電圧を50Vとして窒化チタン、窒化クロム及び窒化アルミニウムからなる膜(TiCrAlN)を形成した以外は、実施例1と同様にした。
得られた硬質被膜の硬度(H)は32.4GPa、弾性率(E)は329GPaであった。従って、E/Hは10.2である。摩擦係数(μ)は0.62であった。900℃での酸化膜形成は1.07μmであった。
表1に各実施例の製造方法及び特性を示し、表2及び表3に各比較例の製造方法及び特性を示す。
Figure 0006640577
Figure 0006640577
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本発明に係る硬質皮膜は、耐酸化性を維持しつつ、硬さと破壊靭性とを両立させることができ、金型及び工具等の分野において有用である。
310 プレス用金型
311 オス側金型
312 メス側金型
315 鋼板

Claims (9)

  1. アルミニウムの窒化物及びクロムの窒化物を含み、表面における、アルミニウムのアルミニウムとクロムとの合計に対するモル比が0.75以上、0.82以下であり、且つ表面における酸素の窒素と酸素との合計に対するモル比が0.25以上、0.35以下であり、
    111面の格子定数が2.38以下、ピーク角度が37.7°以上であり、200面の格子定数が2.06以下、ピーク角度が43.9°以上である、硬質皮膜。
  2. 表面における、アルミニウムの組成比が36at%以上、41at%以下であり、クロムの組成比が8at%以上、12at%以下である請求項1に記載の硬質皮膜。
  3. 表面における、窒素の組成比が34at%以上、40at%以下、酸素の組成比が5at%以上、18at%以下である請求項1又は2に記載の硬質皮膜。
  4. 表面から深さ方向に連続的又は断続的に酸素比率が減少しており、表面から150nm以上の深さにおいて酸素の窒素と酸素との合計に対するモル比が0.15以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬質皮膜。
  5. ナノインデンテーション硬度Hが28GPa以上であり、ナノインデンテーション弾性率Eとの比E/Hが10.0以上である請求項1〜のいずれかに記載の硬質皮膜。
  6. 中間層の上に形成されており、
    前記中間層は、第一層として厚さが2μm以下の金属膜を含み、第二層として厚さが0.5μm以上、4μm以下の窒化膜又は炭窒化膜を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の硬質皮膜。
  7. 前記第一層は、Cr膜であり、前記第二層は、CrN膜である、請求項に記載の硬質皮膜。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の硬質皮膜が設けられていることを特徴とするプレス用金型。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の硬質皮膜が設けられていることを特徴とする工具。
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