JP6640008B2 - 多重多相コイル - Google Patents
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Description
なお、電気特性が同じコイルを作成するためには、基準となるコイル(単位コイル)と磁心,電線(コイル線)の径,電線の巻き枠,巻方向,巻数などの仕様が同じくなるように留意した管理が行われる。
因みに、磁心の上に電線をn回巻回したコイルの“電流Iと磁束Φの関係”は次式で表される。
Φ=n×I/Rm
(磁路の断面積をA、磁路長をl、透磁率をμとするとRm=l/μ/Aとなる)
上記式から明らかなように、電流Iと磁束Φの変換効率を高めるためには磁気抵抗Rmを極力小さくすることが求められるが、コイル軸方向の磁路長lは大きくなるほど磁気抵抗Rmの増大を招き、電流Iと磁束Φとの変換効率悪化を招くことになる。
因みに、この多重コイルではコイル線の長さは“m本の単層コイルの線長の平均値”として捕らえることができる。
しかし、このような多重多相コイルには次の問題が指摘された。
即ち、前記多重コイルにおいて、その“複数の単層コイル層”を電流の相数に応じた区分数に区分けする際の、各区分に属せしめる単層コイルに関する「各区分間での電線長の差異が0乃至は最小となる組み合わせ(下層から上層に至るコイルの中から選択してなされる組み合わせ)」が存在しており、そのような組み合わせに基づいて区分けされた各区分内の単層コイルをそれぞれ並列結束して接続すると、各区分間の電気特性に殆ど差異の無い多相コイルが実現されるということが見出された。
1) 一体の磁心の上に電線の直径,巻方向及び巻数が同じ複数の単層コイルが重ね巻きされた多重コイルであり、単層コイルの層数が電流の相数の2倍以上の倍数となっていて、前記複数の単層コイル層が電流の相数に応じた区分数に、かつ各区分に属する単層コイルの電線長の差異が各区分間で0乃至は最小となるように区分されると共に、それら各区分内の単層コイルがそれぞれ並列結束されてなる多重多相コイル。
2) 単層コイルの層数(m)が3の2倍以上の倍数であって、その複数の単層コイル層が3つに区分されており、その区分は単層コイル層の下層から上層にかけて序数(1,2,・・,m)を付した際に各区分の序数の和が等しくなるようになされ、かつ各区分内の単層コイルがそれぞれ並列結束されてなる、前記1)項に記載の多重三相コイル。
3) 単層コイルの層数(m)が2の2倍以上の倍数であって、その複数の単層コイル層が2つに区分されており、その区分は単層コイル層の下層から上層にかけて序数(1,2,・・,m)を付した際に各区分の序数の和の違いが0乃至は1となるようになされ、かつ各区分内の単層コイルがそれぞれ並列結束されてなる、前記1)項に記載の多重二相コイル。
更に、層数が電流の相数の2倍以上の倍数である複数の単層コイル層が電流の相数に応じた区分数に分けられた“本発明に係る多重多相コイル”は、各区分に属する単層コイルの電線長の差異が各区分間で0乃至は最小となるように区分されると共に、それら各区分内の単層コイルがそれぞれ並列結束されてなる構成をとっているので、径の異なるコイルが多層巻きされた多重コイルであるにもかかわらずそれぞれの相を担うコイル間での電気抵抗の差異が実際上の支障を認識できない程に抑えられ、コイル間の電気特性バランスが安定していて多相コイルとして良好な性能を発揮する。
そして、本発明に係る多重コイル(層の数を仮にmとする)では、下層から上層にかけてのコイル層に序数(1,2,・・,m)を付した場合、その序数が1つ増える毎に一定の寸法(仮にhとする)差でコイル平均直径が規則正しく大きくなる。
例えば、単層コイルを6層重ね巻きされた多重コイルの場合、最下層のコイル(序数1が付されたコイル)の平均直径をDとすると、序数とそれが付されたコイルの平均直径の関係は次の通りとなる。
序数1・・・・平均直径はD
序数2・・・・平均直径はD+h
序数3・・・・平均直径はD+2h
序数4・・・・平均直径はD+3h
序数5・・・・平均直径はD+4h
序数6・・・・平均直径はD+5h。
つまり、前記序数とコイル線長の増加量は比例関係にある。
序数の和:1+6=7
コイル線長:(π×D×巻数)+{π×(D+5h)×巻数}
=π×(2D+5h)×巻数
序数の和:2+5=7
コイル線長:(π×(D+h)×巻数)+{π×(D+4h)×巻数}
=π×(2D+5h)×巻数
序数の和:3+4=7
コイル線長:(π×(D+2h)×巻数)+{π×(D+3h)×巻数}
=π×(2D+5h×巻数。
このように、本発明に係る多重コイルでは、単層コイル層”を電流の相数に応じた区分数に区分けする際の、各区分に属せしめる単層コイルに関する「各区分間での電線長の差異が0乃至は最小となる組み合わせ」、即ち「各区分間での電気抵抗の差異が殆ど認められなくなる組み合わせ」が存在しており、その組み合わせを上述した「序数」によって把握することが可能であるため、各区分間の電気特性バランス(均衡性)が良好な多相コイルを提供することができる。
そのため、多相コイルを作成する場合には、適用する多重コイルとして単層コイルの層数(m)が「対象とする相数」の2倍以上の倍数とされているものを準備する。
この場合、電気機器の仕様から用いるコイルに関して必要なコイル内径,導体径,絶縁電線外径,巻数,巻方向,巻線間隔が決まるので、これに従って“基準の単層コイル”を巻回する。
次いで、上記“基準の単層コイル”の上に、電線径,巻方向,巻数,巻線間隔が“基準の単層コイル”と同じ単層コイルの複数を順次重ね巻きする。
この時、各単層コイルの巻始め線,巻終わり線は、巻き枠の鍔部を経て外部に導出させるのが良い。
これによって、図1で示したような多重コイルが得られる。なお、図1において、符号1は巻き枠の軸部を、2は巻き枠の鍔部を、3は重なった複数の単層コイルを、そして4はコイル線の端末(巻始め線,巻終わり線)をそれぞれ示している。
そのため、コイルの巻き枠として、図2に示すように、鍔部2の間隔が“第2層目以降の単層コイルの巻き位置部分”では“基準の単層コイル(第1層目の単層コイル)5の巻き長さに電線直径の半分の寸法を加算した距離”に設定された段付きのものを使用するのが巻回作業上有利である。
この層分けは、各区分に属する単層コイルの電線長の差異が各区分間で0乃至は最小となるように行われ、各区分に属する単層コイルの端末線(引き出された巻始め線,巻終わり線)は区分毎に並列接続できるように結束される。
そして、この多重コイルには一体型の磁心が装着され多重多相コイルとされる。
まず、“基準の単層コイル”とこれに巻き重ねる複数の単層コイルに対し、下層から順に序数(1,2,・・・,m)を付し、mが3の2倍以上の倍数である多重コイルを作成する。
このmの数だけ重なった単層コイルを3分割して電気特性が同様の3組のコイル区分を形成するには、3組それぞれの電気抵抗を揃える必要がある。
そこで、単層コイルの序数とコイル径の増加量が比例していることを踏まえて、1〜mにわたるm個の数値を3つに区分した際の各区分に属する序数の和が等しくなるように複数の単層コイルを3分割に案分する。
この場合、各区分に組み入れる単層コイルの選択は、各区分に入る単層コイルの序数の和が何れも同じ「7」となるようになされている。これにより、UVW相の各相を担うコイル線の長さは何れも同じとなって電気抵抗が揃い、電気特性バランスが良好な三相コイルが得られる。
この場合、各区分に組み入れる単層コイルの選択は、各区分に入る単層コイルの序数の和が何れも同じ「15」となるようになされている。
例えば、m=6の場合には序数の総和は「21」となり、これを二分する各区分の序数の和は「10」と「11」になる。しかし、この程度の差であれば各区分に属するコイルの電気抵抗は何れも直径d×√mの電線をnタ−ン巻回した単層コイルと相似する(実質差の無い)領域を逸脱することがなく、各区分に属するコイル間には電気抵抗に忌避する程の差が生じないので、各区分に属するコイル間の電気特性バランスに実用上の支障は認められない。
2 巻き枠の鍔部
3 重なった複数の単層コイル
4 コイル線の端末(巻始め線,巻終わり線)
5 基準の単層コイル(第1層目の単層コイル)
Claims (3)
- 一体の磁心の上に電線の直径,巻方向及び巻数が同じ複数の単層コイルが重ね巻きされた多重コイルであり、
単層コイルの層数が6以上で電流の相数の2倍以上の倍数となっていて、前記複数の単層コイル層が電流の相数に応じた区分数に、かつ各区分に属する単層コイルの電線長の差異が各区分間で0乃至は最小となるように区分されると共に、それら各区分内の単層コイルがそれぞれ並列結束されてなる多重多相コイル。 - 単層コイルの層数(m)が3の倍数であって、その複数の単層コイル層が3つに区分されており、その区分は単層コイル層の下層から上層にかけて序数(1,2,・・,m)を付した際に各区分の序数の和が等しくなるようになされ、かつ各区分内の単層コイルがそれぞれ並列結束されてなる、請求項1に記載の多重三相コイル。
- 単層コイルの層数(m)が6以上で2の倍数であって、その複数の単層コイル層が2つに区分されており、その区分は単層コイル層の下層から上層にかけて序数(1,2,・・,m)を付した際に各区分の序数の和の違いが0乃至は1となるようになされ、かつ各区分内の単層コイルがそれぞれ並列結束されてなる、請求項1に記載の多重二相コイル。
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