JP6639964B2 - 道路橋の伸縮装置及びその設置方法 - Google Patents

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Description

本発明は、道路橋の伸縮装置に関し、詳しくは、道路除雪用の板が引っ掛からないように上方へ誘導する誘導板を備えた除雪対応型伸縮装置に関するものである。
橋梁などのコンクリート構造物は、桁の温度伸縮の吸収や耐震性等の観点からあるブロックごとにコンクリートの躯体同士が離間するように伸縮目地が設けられる。また、道路橋においては、その伸縮目地上を安全で円滑に車両が走行できるようにするために、伸縮目地に伸縮装置が設置されている。
そして、従来、この種の伸縮装置が多雪地域に設置される場合、除雪車のスノウプラウやブレードなどと呼ばれる道路除雪用の板が、伸縮装置に引っかかって破損しないようにするために、道路除雪用の板を上方へ誘導する誘導板が設置されている。
例えば、特許文献1には、道路橋本体の伸縮を許容し、且つ車輪が道路橋継目部を支障なく走行できるようにする道路橋用伸縮継手(伸縮装置)において、除雪車のスノウプラウを保護板16及び伸縮継手3の上を通過するように誘導する複数のプラウ誘導部材17を備え、プラウ誘導部材17は、橋軸方向に延び、上面に前端に行くに従って漸次高くなるように傾斜した傾斜誘導部を有しており、前端面が保護板16に結合され、前記傾斜誘導部の前端が保護板16の上面と同じ高さに設けられている道路橋用伸縮継手3の保護装置4が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0021]〜[0027]、図面の図1、図2等参照)。
また、特許文献2には、本願の出願人が出願した、櫛形状荷重支持部材18A、19Aの外方側面に、所定間隔L2をおいて複数の略釣針状リブプレート18B、19Bが垂設された道路橋用の伸縮装置18、19が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0019]〜[0028]、図面の図1〜図5等参照)。
しかし、特許文献1に記載の道路橋用伸縮継手の保護装置や特許文献2に記載の道路橋用の伸縮装置は、道路橋の伸縮目地が車両進行方向と60度未満の鋭角に交差する場合は、溶接欠陥が生じる可能性が高いため、そのまま適用することができず、誘導板やリブプレートに開先を設けて、その基端面を保護板や櫛形状荷重支持部材の側面に、完全溶け込み溶接により溶接しなければならなかった。このため、すみ肉溶接や部分溶け込み溶接と比べて、難易度が高く可能な作業員が限定されるうえ、溶接に時間が掛かるため、伸縮装置の設置コストが嵩んでしまういという問題があった。
特開2003−253609号公報 特開2012−241470号公報
そこで本発明は、前記問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、道路橋の伸縮目地が車両進行方向と60度未満の鋭角に交差する場合であっても適用することができ、溶接等の作業時間を削減して設置コストを低減することができる道路橋の伸縮装置を提供することにある。
第1発明に係る道路橋の伸縮装置は、道路橋の車両進行方向と鋭角に交差する伸縮目地間に設置される伸縮装置であって、表面に互いに凹凸が対向する一対の櫛形状のフェイスプレートを有する伸縮装置本体と、この伸縮装置本体の外側面から外側へ向け所定間隔をおいて突設され、上端が傾斜することにより道路除雪用の板の下端を上方へ誘導して保護する複数の誘導板と、を備え、前記誘導板は、くの字状に成形されているとともに、前記誘導板の基端部は、前記伸縮装置本体の外側面に直交するように取り付けられ、且つ、前記誘導板の先端部は、前記車両進行方向に沿って取り付けられていることを特徴とする。
第2発明に係る道路橋の伸縮装置は、第1発明において、前記誘導板は、前記先端部が曲げ加工により前記基端部に対して曲げられているか、又は、前記先端部が前記基端部に突き合わせ溶接により溶接されていることを特徴とする。
第3発明に係る道路橋の伸縮装置の設置方法は、車両進行方向と60度未満の鋭角に交差する道路橋の伸縮目地に伸縮装置を設置する道路橋の伸縮装置の設置方法であって、前記伸縮装置は、表面に互いに凹凸が対向する一対の櫛形状のフェイスプレートを有する伸縮装置本体と、この伸縮装置本体の外側面から外側へ向け所定間隔をおいて突設され、上端が傾斜することにより道路除雪用の板の下端を上方へ誘導して保護する、くの字状に成形された複数の誘導板と、を備え、前記くの字状の誘導板を、先端部が車両進行方向に略平行となるように前記伸縮装置本体にすみ肉溶接又は部分溶け込み溶接により溶接する誘導板溶接工程を有することを特徴とする。
第1発明〜第3発明によれば、道路橋の伸縮目地が車両進行方向と60度未満の鋭角に交差する場合であっても設置することができるとともに、開先を設けて完全溶け込み溶接とする必要がなく、溶接等の作業時間を削減して設置コストを低減することができる。また、完全溶け込み溶接で誘導板を接合する必要がないので、接合が容易で溶接欠陥が生じるおそれを低減することができる。
本発明の実施形態に係る道路橋の伸縮装置が設置される伸縮目地及び本発明の実施形態に係る道路橋の伸縮装置を示す斜視図である。 同上の伸縮目地及び伸縮装置を示す平面図である。 同上の伸縮目地及び伸縮装置を目地に直交する鉛直面で切断した状態を示す鉛直断面図である。 同上の伸縮装置の一部を拡大して示す拡大斜視図である。 本発明の実施形態に係る道路橋の伸縮装置の施工手順を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態に係る道路橋の伸縮装置について、図面を参照しながら説明する。
<道路橋の伸縮装置>
先ず、図1〜図4を用いて、本発明の実施形態に係る道路橋の伸縮装置について説明する。図1は、道路橋の伸縮目地及びその伸縮目地に設置される本発明の実施形態に係る道路橋の伸縮装置を示す斜視図、図2は、その伸縮目地及び伸縮装置を示す平面図、図3は、その伸縮目地及び伸縮装置を目地に直交する鉛直面で切断した状態を示す鉛直断面図である。図1〜図3に示すように、本発明の実施形態に係る道路橋の伸縮装置1は、橋梁である道路橋Bのコンクリート床版B1,B2目地D間に設置され、この目地D上を車両が安全に走行可能にする機能を有している。
図1に示すように、図上に例示する目地Dは、矢印で示す道路橋Bの上を走行する車両の車両進行方向Xと60度未満の鋭角θ1に交差する伸縮目地である。即ち、通常の伸縮目地のように、車両進行方向Xと直交する方向走る目地ではなく、30度以上の角度θ2だけ傾斜している目地である。
また、伸縮装置1は、図1〜図3に示すように、道路橋Bを構成するコンクリート構造物であるコンクリート床版B1,B2同士の継ぎ目である目地Dの上に架け渡されて設置され、アスファルト舗装ACの厚み分またはそれ以上、後打ちコンクリートC1,C2が打設されて固定される。
図4は、本実施形態に係る道路橋の伸縮装置の長手方向の一部を切り出して拡大して示す部分拡大斜視図である。図4に示すように、本実施形態に係る道路橋の伸縮装置1は、主に、一般構造用圧延鋼材(SS400)または溶接構造用圧延鋼材(SM400)からなる伸縮装置本体2と、この伸縮装置本体2の外側面から外側へ向け突設された複数の誘導板3などから構成されている。
(伸縮装置本体)
伸縮装置本体2は、図1〜図4に示すように、アスファルト舗装ACと面一となって路面の表面を形成する一対の櫛形状のフェイスプレート20,21と、このフェイスプレート20,21下面に垂設されたウェブプレート22,23など、から構成されている。これらのフェイスプレート20,21は、図2等に示すように、櫛形状(フィンガー状)の互いに対向する端面の凹凸が所定間隔の遊間D1だけ離間した状態で?合うように設置され、外側の端面は一直線状となった目地Dに沿って長い長尺なプレートである。本実施形態に係る伸縮装置本体2の遊間D1は、5mm〜125mm程度まで設置可能となっている。
(誘導板)
誘導板3は、図4等に示すように、伸縮装置本体2のウェブプレート22,23から外側へ向け突設され、伸縮装置本体2の長手方向に沿って所定間隔をおいて複数設けられている。この誘導板3は、溶接構造用圧延鋼材(SM400)の板厚12mmの板材からなり、下端面が平坦な底辺部30と、この底辺部30から立ち上がる伸縮装置本体2側の基端面が平坦な立上り部31と、上端面が傾斜して外側に行くに従って下降する上辺部32と、からなる十手状に加工された板材である。
この誘導板3は、上辺部32の傾斜する上端面により、除雪車のスノウプラウやブレードなどの道路除雪用の板の下端を上方へ誘導して伸縮装置1を保護する機能を有している。この上辺部32に道路除雪用の板等から伝達される応力は、立上り部31を介してする底辺部30に伝達され、伸縮装置1が設置されるコンクリート床版B1,B2から底辺部30の下端面を介して反力を得る仕組みとなっている。
また、本実施形態に係る誘導板3の上辺部32は、伸縮装置本体2側の基端部32aと、基端部32aより外側の先端部32bと、からなる。この上辺部32の基端部32aと、立上り部31及び底辺部30は、ウェブプレート22,23の板面に対して直交するように取り付けられ、先端部32bは、車両進行方向Xに沿って取り付けられている。即ち、上辺部32は、先端部32bが基端部32aに対して前述の車両進行方向Xと目地Dとが交差する角度θ1に応じて、くの字状に屈曲成形されている(図2参照)。但し、基端部32aのウェブプレート22,23の板面に対する取付角度は、90度に限定されるものではない。
勿論、上辺部32は、曲げ加工により、先端部32bが基端部32aに対して、くの字状に屈曲成形されていてもよいし、先端部32bと基端部32aを溶接により接合されて、くの字状に屈曲成形されていてもよい。要するに、伸縮装置1を橋梁の目地Dに設置する前に、工場等により、上辺部32が所定角度に屈曲成形されていればよい。
一方、特許文献1に記載された道路橋用伸縮継手や、特許文献2に記載の道路橋用の伸縮装置などの従来の伸縮装置では、本実施形態に係る伸縮装置1の誘導板3に相当する部材は、直線状の板材であった。また、誘導板は、上端の傾斜によりスノウプラウ等が引っかからないように上手く誘導するには、誘導板が車両進行方向Xに沿って設けられている必要がある。このため、車両進行方向Xと直交せずに傾斜して交差する目地Dに伸縮装置を設置する場合、従来の伸縮装置では、伸縮装置本体と誘導板と交差角度が鋭角となり、溶接が困難であるという問題があった。特に、交差角度が60度未満になると誘導板の基端部に開先を設けて完全溶け込み溶接で接合する必要があった。
しかし、本実施形態に係る伸縮装置1は、車両進行方向Xと60度未満の鋭角θ1に交差する目地Dに設置する場合であっても、誘導板3の基端部32aは、必ず、ウェブプレート22,23に対して直交するように設けられる。このため、誘導板3の基端部32aに開先を設けて完全溶け込み溶接により誘導板3を伸縮装置本体2に接合する必要がなくなる。よって、開先加工の加工費用を削減することができるとともに、溶接時間を短縮して、伸縮装置1の設置コストを低減することができる。
また、誘導板3の伸縮装置本体2への接合が、すみ肉溶接又は部分溶け込み溶接により接合することができ、溶接が容易となって溶接欠陥が生じるおそれを低減することができる。それに加え、溶接が容易になるため、高技能の溶接作業員でなくても溶接が可能となり、作業員の確保が容易となり、作業員不足よるコスト高騰を防ぐことができる。
なお、図3に示すように、伸縮装置本体2には、ウェブプレート22,23の内面同士の間に、弾性シーリング材からなる止水材SGが2面接着により設置されている。このため、フェイスプレート20,21の遊間D1から雨水等が漏水して水が回り込み、伸縮目地の下に設置されている支承等の構造部材が腐食すること防止することができる。
そして、万一止水材SGが劣化して接着切れが生じた場合にも遊間Dからの漏水を確実に防止させるには、図3の一点鎖線で示すように、高耐食溶融めっき鋼板からなるアングル材P1を介して繊維強化ゴムシートからなる二重止水材G1を設置して二重に止水するようにしてもよい。そうすることで、フェールセーフ機能として伸縮装置1の漏水防止機能を補完させることができる。
以上のように、本実施形態に係る道路橋の伸縮装置1によれば、道路橋の目地Dが車両進行方向と60度未満の鋭角に交差する場合であっても容易に伸縮装置1を設置することができるとともに、誘導板3の基端部32aに開先を設けて完全溶け込み溶接とする必要がなく、溶接等の作業時間を削減して伸縮装置1の設置コストを低減することができる。また、完全溶け込み溶接で誘導板を接合する必要がないので、接合が容易で溶接欠陥が発生するおそれを低減することができる。
<伸縮装置の施工手順>
次に、図5、及び図1〜図3を用いて、本発明の実施形態に係る道路橋の伸縮装置1の設置方法である施工手順について説明する。図5は、伸縮装置の施工手順を示すフローチャートである。
(1)前処理工程
先ず、伸縮装置の取替の場合は、カッターや斫り機等を用いて、アスファルト舗装ACや、旧ジョイントである伸縮装置を撤去し、図3に示す目地D周りのコンクリート床版B1,B2が露出するようにする。
(2)型枠設置工程
次に、後工程であるコンクリート打設工程において打設したフレッシュコンクリートが漏れないように、床版の目地Dに型枠を挿入して設置する。勿論、型枠を設置するのではなく、発泡スチロール等を目地Dに挿置してもよい。
(3)誘導板溶接工程
次に、目地Dに伸縮装置1の伸縮装置本体2及び誘導板3を搬入して、図2等に示すように、車両進行方向Xに先端部32bが沿って略平行となるように、伸縮装置本体2に誘導板3をすみ肉溶接により接合し、伸縮装置1を組み立てる。このとき、すみ肉溶接により接合するため、溶接時間を短縮することができる。また、必要に応じて、伸縮装置本体2と誘導板3との接合は、部分溶け込み溶接としても構わない。なお、この工程は、予め工場等で行うことが好ましい。
(4)配筋工程
次に、図1、図3に示すように、異形鋼棒DSなど所定の鉄筋を配筋して、スペーサ等を挿置し、所定のかぶり厚さを確保したうえ、U字アンカーUA等に溶接や結束線等で固定する。
(45)伸縮装置のレベル調整
次に、図3等に示すように、伸縮装置1の高さのレベル調整をした上、U字アンカーUAや後施工アンカー等を利用して誘導板3及び伸縮装置本体2を所定高さ、所定位置に固定する。
(5)配筋工程
次に、図1、図3に示すように、異形鋼棒DSなど所定の鉄筋を配筋して、スペーサ等を挿置し、所定のかぶり厚さを確保したうえ、U字アンカーUA等に溶接や結束線等で固定する。
(6)コンクリート打設工程
次に、図1〜図3等に示すように、後打ちコンクリートC1,C2部分にフレッシュコンクリートを打設して、締固め、左官鏝等で表面を平滑に仕上げる。そして、適切な条件で養生期間を取ってコンクリートを硬化させると、伸縮装置の施工手順が終了し、伸縮装置1が完成する。
このように、本実施形態に係る道路橋の伸縮装置1の施工手順によれば、車両進行方向Xと直交せずに傾斜して交差する目地Dにも除雪車のスノウプラウ等が引っ掛からない耐久性の高い伸縮装置1を短時間で設置することができる。
以上、本発明の実施形態に係る道路橋の伸縮装置及びその施工手順について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
1 :道路橋の伸縮装置
2 :伸縮装置本体
20,21 :フェイスプレート
22,23 :ウェブプレート
3 :誘導板
30 :底辺部
31 :立上り部
32 :上辺部
32a :基端部
32b :先端部
AC :アスファルト舗装
B :道路橋(橋梁)
B1,B2 :コンクリート床版
D :目地
D1 :遊間
DS :異形鋼棒(鉄筋)
G1 :クローザー(止水材)
P1 :アングル材
SG :止水材
UA :U字アンカー(アンカー)
X :車両進行方向

Claims (3)

  1. 道路橋の車両進行方向と鋭角に交差する伸縮目地間に設置される伸縮装置であって、
    表面に互いに凹凸が対向する一対の櫛形状のフェイスプレートを有する伸縮装置本体と、この伸縮装置本体の外側面から外側へ向け所定間隔をおいて突設され、上端が傾斜することにより道路除雪用の板の下端を上方へ誘導して保護する複数の誘導板と、を備え、
    前記誘導板は、くの字状に成形されているとともに、前記誘導板の基端部は、前記伸縮装置本体の外側面に直交するように取り付けられ、且つ、前記誘導板の先端部は、前記車両進行方向に沿って取り付けられていること
    を特徴とする道路橋の伸縮装置。
  2. 前記誘導板は、前記先端部が曲げ加工により前記基端部に対して曲げられているか、又は、前記先端部が前記基端部に突き合わせ溶接により溶接されていること
    を特徴とする請求項1に記載の道路橋の伸縮装置。
  3. 車両進行方向と60度未満の鋭角に交差する道路橋の伸縮目地に伸縮装置を設置する道路橋の伸縮装置の設置方法であって、
    前記伸縮装置は、表面に互いに凹凸が対向する一対の櫛形状のフェイスプレートを有する伸縮装置本体と、この伸縮装置本体の外側面から外側へ向け所定間隔をおいて突設され、上端が傾斜することにより道路除雪用の板の下端を上方へ誘導して保護する、くの字状に成形された複数の誘導板と、を備え、
    前記くの字状の誘導板を、先端部が車両進行方向に略平行となるように前記伸縮装置本体にすみ肉溶接又は部分溶け込み溶接により溶接する誘導板溶接工程を有すること
    を特徴とする道路橋の伸縮装置の設置方法。
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