JP6638479B2 - イオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置 - Google Patents

イオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置 Download PDF

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この発明は、例えばイオンミリング装置、イオン注入装置等のイオンビーム照射装置において、真空容器内の基板にイオンビームを照射して処理を施すイオンビーム照射方法おびイオンビーム照射装置に関し、より具体的には、基板のスキャン数および回転数を的確に決定して均一性の良いイオンビーム照射等を行う方法および装置に関する。
特許文献1には、イオンビーム引出し口径が基板寸法よりも小さいイオン源を使用し、かつ基板の回転(自転)および往復直線駆動(スキャン)を併用して、基板の全面にイオンビームを照射することによって、ビーム密度を基板上で平均化してビーム照射量(エッチング)を均一化するイオンビーム照射方法(イオンビームミリング方法)および装置が記載されている。
特許文献2には、複数のスリットを並設したマルチスリット電極を有しているイオン源から引き出したイオンビームを基板に照射する際に、基板を、マルチスリット電極のスリット配置ピッチ程度の振動幅で振動させることによって、マルチスリット電極に起因するビーム強度の脈動分布を基板上で平均化してビーム照射量(イオン注入量)を均一化するイオンビーム照射方法を採用しているイオン注入装置が記載されている。
特開平8−134668号公報(段落0011−0016、図1、図3) 特開平8−287863号公報(段落0010−0013、図1)
特許文献1に記載の技術では、基板のスキャンおよび回転を併用することによって、基板上でのビーム照射量の均一性をある程度は向上させることができると考えられるけれども、ビーム照射量の良好な均一性を得るために、基板のスキャン数と回転数とをどのようにして決定すれば良いかについては、上記特許文献1には記載されていない。
これを詳述すると、特許文献1には例えば「基板6の移動範囲内の中心の狭い部分で高いイオンビーム密度をもつ分布のイオンビームミリング装置とすると、基板6の移動を等速度としてもかなり均一の照射量を得られる」と記載されているけれども(段落0021)、基板は1次元ではなく2次元のものであるから、単に基板のスキャンおよび回転を等速度で行うだけでは、基板上のビーム照射量分布はあまり均一にはならない。ビーム照射量分布は、基板のスキャン数および回転数の組み合わせによって大きく変わるからである。
その一例を図1、図2を参照して説明する。図1は、基板6のスキャンおよび回転が共に等速度であり、かつ基板6のスキャン数と回転数が1対1(即ち、1スキャンの間に1回転する)の場合の基板6上の円形のビーム照射領域3a〜3iの時間変化の例を示す概略平面図である。(A)→(B)→(C)→・・・→(H)→(I)へと時間が経過している。
この図では、基板6の回転位置を分かりやすくするために、基板6がノッチ(切り欠き)7を有するものとしている。(A)を初期状態とし、(B)以降の各状態は、基板6を矢印C方向に1/8回転(45度回転)および矢印D方向に1/8スキャンずつ変化させており、(I)で(A)と同じ初期状態に戻っている。イオンビームの位置は変わらないので、ビーム照射領域3a〜3iの絶対的な位置は変わらないが、基板6のスキャンに伴って基板上での相対的な位置が変化している。
図2に、図1中の(B)〜(I)の状態による基板6上のビーム照射領域3b〜3iを重ね合わせたものを拡大して示す。この図からも分かるように、基板6上のビーム照射領域3b〜3iは大きく偏っており、この場合は基板6上のビーム照射量分布は均一にはならない。
一方、特許文献2に記載の技術は、イオン源から引き出されるイオンビームが脈動する電流密度分布を有しているので、基板を振動させない場合に比べて、基板を振動させることによって基板上のビーム照射量の均一性をある程度は向上させることができるけれども、基板の回転を併用するものではないので、ビーム照射量の均一性の向上には限りがある。
そこでこの発明は、イオン源から引き出されるイオンビームが脈動する電流密度分布を有しており、かつ基板のスキャンおよび回転を併用する装置において、基板に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる基板のスキャン数および回転数を的確に決定して、均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる方法および装置を提供することを一つの目的としている。
この発明に係るイオンビーム照射方法の一つは、
真空に排気される真空容器と、
前記真空容器内に収納されていて基板を保持するホルダと、
前記ホルダおよびそれに保持された基板を当該基板の中心部周りに回転させる回転機構と、
プラズマを生成するプラズマ生成部および当該プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出す引出し電極系を有していて、引き出したイオンビームを前記ホルダに保持された基板に照射するイオン源であって、前記引出し電極系は、イオンビームが引き出される領域とイオンビームが引き出されない領域とをX方向に所定の周期で交互に配列しており、かつ前記イオンビームが引き出される領域から、前記基板の位置において、前記X方向と実質的に直交するY方向において前記基板の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビームを引き出すイオン源と、
前記ホルダ、それに保持された基板および前記回転機構を、所定のスキャン波形で実質的に前記X方向に機械的に往復でスキャンするスキャン機構と、
前記X方向における前記イオンビームの電流密度分布を測定するビーム測定器とを備えているイオンビーム照射装置において、
前記ビーム測定器で測定した前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求め、
前記求めた電流密度分布および前記基板のスキャン波形を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記基板上の複数点におけるイオンビームの照射量密度を計算し、かつ当該照射量密度に基づいて前記基板上でのビーム照射量密度の均一性を計算し、
前記計算した均一性に基づいて、所望の均一性が得られる前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを決定し、
前記決定したスキャン数および回転数の組み合わせで前記基板にイオンビームを照射することを特徴としている。
このイオンビーム照射方法によれば、基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、基板上の複数点におけるイオンビームの照射量密度を計算し、かつ当該照射量密度に基づいて基板上でのビーム照射量密度の均一性を計算し、当該計算した均一性に基づいて、所望の均一性が得られる基板のスキャン数および回転数の組み合わせを決定し、当該決定したスキャン数および回転数の組み合わせで基板にイオンビームを照射するので、基板に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる基板のスキャン数および回転数を的確に決定して、基板に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる。
この発明に係るイオンビーム照射装置の一つは、少なくとも前記回転機構および前記スキャン機構を制御する機能を有している制御装置を備えていて、当該制御装置は、
(a)前記ビーム測定器で測定した前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求める電流密度分布演算手段と、
(b)前記求めた電流密度分布および前記基板のスキャン波形を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記基板上の複数点におけるイオンビームの照射量密度を計算し、かつ当該照射量密度に基づいて前記基板上でのビーム照射量密度の均一性を計算して、前記基板のスキャン数および回転数の各組み合わせ時の前記計算したビーム照射量密度の均一性の全てを出力する均一性演算手段と、
(c)前記ビーム照射量密度の均一性が出力された後、前記基板のスキャン数および回転数の複数の組み合わせの内の所定の組み合わせを選択する入力を受けて、当該選択された組み合わせを記憶する組み合わせ記憶手段と、
(d)前記基板へのイオンビーム照射時に、前記組み合わせ記憶手段に記憶している前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせになるように、前記スキャン機構および前記回転機構を制御する駆動制御手段とを有している。
この発明に係るイオンビーム照射方法の一つは、
真空に排気される真空容器と、
前記真空容器内に収納されていて基板を保持するホルダと、
前記ホルダおよびそれに保持された基板であってその上に複数の円柱状体が並べて形成されている基板を当該基板の中心部周りに回転させる回転機構と、
プラズマを生成するプラズマ生成部および当該プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出す引出し電極系を有していて、引き出したイオンビームを前記ホルダに保持された基板に照射するイオン源であって、前記引出し電極系は、イオンビームが引き出される領域とイオンビームが引き出されない領域とをX方向に所定の周期で交互に配列しており、かつ前記イオンビームが引き出される領域から、前記基板の位置において、前記X方向と実質的に直交するY方向において前記基板の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビームを引き出すイオン源と、
前記ホルダおよびそれに保持された基板を傾けて、前記基板の垂線と前記イオンビームの進行方向との成す角度である基板傾斜角を0度以上にすることのできる基板傾斜機構と、
前記ホルダ、それに保持された基板、前記回転機構および前記基板傾斜機構を、所定のスキャン波形で実質的に前記X方向に機械的に往復でスキャンするスキャン機構と、
前記X方向における前記イオンビームの電流密度分布を測定するビーム測定器とを備えているイオンビーム照射装置において、
前記基板傾斜機構を用いて前記基板傾斜角を0度を除く所定の角度に設定し、
前記ビーム測定器で測定した前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求め、
前記求めた電流密度分布、前記基板のスキャン波形および前記所定の基板傾斜角を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記複数の円柱状体のそれぞれの全側面に対する前記イオンビームによる処理量を計算し、かつ当該処理量に基づいて、前記複数の円柱状体の側面に対する処理量均一性を計算し、
前記計算した処理量均一性に基づいて、所望の処理量均一性が得られる前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを決定し、
前記決定したスキャン数および回転数の組み合わせで前記基板にイオンビームを照射することを特徴としている。
このイオンビーム照射方法によれば、基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、基板上の複数の円柱状体のそれぞれの全側面に対するイオンビームによる処理量を計算し、かつ当該処理量に基づいて、前記複数の円柱状体の側面に対する処理量均一性を計算し、当該計算した処理量均一性に基づいて、所望の処理量均一性が得られる基板のスキャン数および回転数の組み合わせを決定し、当該決定したスキャン数および回転数の組み合わせで基板にイオンビームを照射するので、基板上の円柱状体の側面に対して均一性の良い処理を施すことができる基板のスキャン数および回転数を的確に決定して、基板上の円柱状体の側面に対して均一性の良い処理を施すことができる。
この発明に係るイオンビーム照射装置の他の一つは、少なくとも前記回転機構、前記スキャン機構および前記基板傾斜機構を制御する機能を有している制御装置を備えていて、当該制御装置は、
(a)前記基板傾斜機構を制御して、前記基板傾斜角を0度を除く所定の角度に制御する基板傾斜角制御手段と、
(b)前記ビーム測定器で測定した前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求める電流密度分布演算手段と、
(c)前記求めた電流密度分布、前記基板のスキャン波形および前記所定の基板傾斜角を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記複数の円柱状体のそれぞれの全側面に対する前記イオンビームによる処理量を計算し、かつ当該処理量に基づいて、前記複数の円柱状体の側面に対する処理量均一性を計算して、前記基板のスキャン数および回転数の各組み合わせ時の前記処理量均一性を出力する均一性演算手段と、
(d)前記処理量均一性が出力された後、前記基板のスキャン数および回転数の複数の組み合わせの内の所定の組み合わせを選択する入力を受けて、当該選択された組み合わせを記憶する組み合わせ記憶手段と、
(e)前記基板へのイオンビーム照射時に、前記組み合わせ記憶手段に記憶している前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせになるように、前記スキャン機構および前記回転機構を制御する駆動制御手段とを有している。
前記ビーム測定器を設ける代わりに、予め実験等で測定したX方向におけるビーム電流密度分布を記憶手段に記憶しておいて、当該記憶しているビーム電流密度分布に基づいて、前記基板の位置でのイオンビームのX方向における電流密度分布を求めてそれを使用するようにしても良い。
前記イオン源は、前記ホルダに保持された基板に対して、当該基板の位置における寸法が、当該基板および当該基板がスキャンされる領域を包含する大きさよりも大きい寸法のイオンビームを照射するものであっても良い。
その他の変形例を採用しても良い。
請求項1または2に記載の発明によれば、基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、基板上の複数点におけるイオンビームの照射量密度を計算し、かつ当該照射量密度に基づいて基板上でのビーム照射量密度の均一性を計算し、当該計算した均一性に基づいて、所望の均一性が得られる基板のスキャン数および回転数の組み合わせを決定し、当該決定したスキャン数および回転数の組み合わせで基板にイオンビームを照射するので、基板に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる基板のスキャン数および回転数を的確に決定して、基板に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる。
請求項3に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、基板のスキャン波形が実質的に三角波の場合、基板のスキャン数および回転数が互いに同じである組み合わせでは均一性は良くないことが計算結果で確かめられているので、この組み合わせを予め除外しておくことによって、不要な計算をしなくて済み、前記イオンビームの照射量密度および均一性の計算を簡単にすることができる。
請求項4または5に記載の発明によれば、基板のスキャン数および回転数の各組み合わせについて、基板上でのビーム照射量密度の均一性を計算して出力する均一性演算手段等を有する制御装置を備えているので、基板に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる基板のスキャン数および回転数を的確に決定することが容易になる。その結果、基板に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことが容易になる。
請求項6または7に記載の発明によれば、基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、基板上の複数の円柱状体のそれぞれの全側面に対するイオンビームによる処理量を計算し、かつ当該処理量に基づいて、前記複数の円柱状体の側面に対する処理量均一性を計算し、当該計算した処理量均一性に基づいて、所望の処理量均一性が得られる基板のスキャン数および回転数の組み合わせを決定し、当該決定したスキャン数および回転数の組み合わせで基板にイオンビームを照射するので、基板上の円柱状体の側面に対して均一性の良い処理を施すことができる基板のスキャン数および回転数を的確に決定して、基板上の円柱状体の側面に対して均一性の良い処理を施すことができる。
請求項8に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、イオン源は、基板の位置における寸法が、当該基板および当該基板がスキャンされる領域を包含する大きさよりも大きい寸法のイオンビームを照射するものであるので、基板のスキャン幅を大きくしなくても、基板の全面にイオンビームを照射して、均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる。その結果、基板のスキャン時間を短縮して、基板処理に要する時間を短縮することができ、それによって基板の処理効率を向上させることができる。
請求項9または10に記載の発明によれば、基板のスキャン数および回転数の各組み合わせについて、基板上の複数の円柱状体の側面に対する処理量均一性を計算して出力する均一性演算手段等を有する制御装置を備えているので、基板上の円柱状体の側面に対して均一性の良い処理を施すことができる基板のスキャン数および回転数を的確に決定することが容易になる。その結果、基板上の円柱状体の側面に対して均一性の良い処理を施すことが容易になる。
基板のスキャンおよび回転が共に等速度であり、かつ基板のスキャン数と回転数が1対1の場合の基板上のビーム照射領域の時間変化の例を示す概略平面図であり、(A)→(B)→(C)→・・・→(H)→(I)へと時間が経過している。 図1中の(B)〜(I)の状態による基板上のビーム照射領域を重ね合わせたものを拡大して示す概略平面図である。 この発明に係るイオンビーム照射方法を実施するイオンビーム照射装置の一実施形態を示す概略断面図である。 基板の位置におけるイオンビームの寸法の一例を示す概略平面図である。 イオン源の一例を拡大して示す概略断面図である。 図5に示す引出し電極系を構成するプラズマ電極のイオンビーム引出し領域部分の一例を示す概略平面図である。 図5に示す引出し電極系を構成するプラズマ電極のイオンビーム引出し領域部分の他の例を示す概略平面図である。 基板の位置におけるイオンビームの電流密度分布の一例を示す概略図である。 基板の位置におけるイオンビームの電流密度分布を単純化した例を示す概略図である。 基板のスキャンと回転を簡略化して示す概略図である。 三角波のスキャン波形の一例を示す概略図である。 規格化したビーム電流密度分布の一例を示す概略図である。 この発明に係るイオンビーム照射方法の一実施形態を示す工程図である。 図3に示すイオンビーム照射装置を構成する制御装置の構成の一例を示すブロック図である。 イオンビーム照射装置を構成する制御装置の構成の他の例を示すブロック図である。 基板を傾けた場合の当該基板上の角柱側面の、基板スキャンおよび基板回転に伴う方向の変化とイオンビーム分布との関係の例を示す概略図であり、(A)はイオンビーム分布を示し、(B)は基板スキャンの時間経過を示し、(C)は基板回転の時間経過を示す。 この発明に係るイオンビーム照射方法を実施するイオンビーム照射装置の他の実施形態を示す概略断面図である。 この発明に係るイオンビーム照射方法の他の実施形態を示す工程図である。 基板を角度θ傾けた場合の当該基板の回転とスキャンを簡略化して示す概略図であり、(A)は基板面における平面図、(B)は側面図である。 入射角αの場合のイオン照射によるターゲット材料のスパッタ率を、公開ソフトSRIMで計算した結果の一例を示すグラフである。 角度θ傾けた基板上の角柱側面に対するビーム入射角β等を示す概略図である。 (X,Y,Z)座標系の基本ベクトル(i,j,k)と、角度θ傾けた基板上の座標系(X’,Y’,Z’)の基本ベクトル(i’,j’,k’)との関係を示す概略図である。 基板上の多角柱の側面番号Sn および初期角ηp 等を示す概略図である。 角度θ傾けた基板上の円柱状体の側面に対するビーム入射角β等を示す概略図である。 規格化したビーム電流密度分布の他の例を示す概略図である。 スキャン数が1回の場合に、基板回転数を変えて円柱状体側面のミリング均一性を計算した結果の一例を示すグラフである。 図17に示すイオンビーム照射装置を構成する制御装置の構成の一例を示すブロック図である。 イオンビーム照射装置を構成する制御装置の構成の他の例を示すブロック図である。
(1)イオンビーム照射装置の一実施形態
図3に、この発明に係るイオンビーム照射方法を実施するイオンビーム照射装置の一実施形態を示す。方向の理解を容易にするために、各図中に、1点で互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を図示している。例えば、Y方向およびZ方向は水平方向であり、X方向は垂直方向である。イオンビーム28は、この例では−Z方向(即ちZ方向と反対方向)に進行する。
このイオンビーム照射装置は、真空雰囲気中で基板6にイオンビーム28を照射する装置であり、図示しない真空排気装置によって真空に排気される真空容器4と、この真空容器4内に収納されていて処理しようとする基板6を保持するホルダ8と、ホルダ8およびそれに保持された基板6を当該基板6の中心部6a周りに回転させる回転機構10とを備えている。基板6等の回転方向Cの一例を図中に示すが、これと逆方向でも良い。当該回転は、連続回転でも良いし、所定の角度ごとのステップ回転でも良い。
基板6は、例えばシリコンウェーハ等の半導体基板、半導体基板の表面に磁性体膜等の膜が形成された基板等であるが、これに限られるものではない。
基板6の形状は、例えば円形(円周の一部分にオリエンテーションフラットやノッチを有するものもこれに含むものとする)であるが、これに限られるものではない。
イオンビーム照射装置は、この例のように、ホルダ8、それに保持された基板6等を矢印Eで示すように回転させることによってそれらを傾けて、基板6の垂線とイオンビーム28の進行方向との成す角度である基板傾斜角(図17中の基板傾斜角θ参照)を0度以上にすることのできる基板傾斜機構12を備えていても良い。これについては後で更に説明する。
このイオンビーム照射装置は、更に、プラズマ23を生成するプラズマ生成部22および当該プラズマ23から電界の作用でイオンビーム28を引き出す引出し電極系24を有していて、引き出したイオンビーム28をホルダ8に保持された基板6に照射するイオン源20を備えている。引出し電極系24は、例えば図6、図7に示す例のように、イオンビーム28が引き出される領域A1 とイオンビーム28が引き出されない領域B1 とをX方向に所定の周期P1 で交互に配列した構成を有しており、かつイオンビームが引き出される領域A1 から、基板6の位置において、X方向と実質的に直交するY方向において基板6の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビーム28を引き出すものである。この引出し電極系24については後で更に説明する。
このイオンビーム照射装置は、更に、軸16を介して、ホルダ8、それに保持された基板6および回転機構10を、更にこの例では基板傾斜機構12を、矢印Dで示すように、所定のスキャン波形で実質的にX方向に機械的に往復でスキャン(即ち、機械的往復走査)するスキャン機構14を備えている。この出願では、例えば1スキャンは1往復走査のことを言う。スキャン機構14は、この例では真空容器4外に設けているが、これに限られるものではない。
このイオンビーム照射装置は、更に、X方向におけるイオンビーム28の電流密度分布を測定するビーム測定器を備えている。当該ビーム測定器は、例えば、多数のビーム電流検出器(例えばファラデーカップ。以下同様)をX方向に配列した多点式のビーム測定器でも良いし、一つのビーム電流検出器をX方向に移動させる移動式のビーム測定器でも良い。図3中に示すビーム測定器52は、前者の場合の例である。
また、上記ビーム測定器は、基板6の位置に、基板6と干渉しないように基板6と入れ替わりに移動させる移動式のものでも良いし、基板6の上流側または下流側の位置に設けられたものでも良い。図3中のビーム測定器52は、基板6の下流側に設けた例を示す。基板6の上流側に設ける場合は、基板6へのイオンビーム28の照射時は、それの邪魔にならない位置に移動させれば良い。
イオン源20は、ホルダ8に保持された基板6に対して、図4に示す例のように、当該基板6の位置における寸法が、基板6および当該基板6がスキャンされる領域を包含する大きさよりも大きい寸法のイオンビーム28を照射するものが好ましい。図4中に、基板6のスキャン方向Dおよびスキャン幅WS の例も示している。即ち、図4中に破線で示す基板6はスキャンの一方端に位置し、2点鎖線で示す基板6はスキャンの他方端に位置している場合の例を示している。このようなイオン源20にすると、基板6のスキャン幅WS を大きくしなくても、基板6の全面にイオンビーム28を照射して、均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる。その結果、基板6のスキャン時間を短縮して、基板処理に要する時間を短縮することができ、それによって基板6の処理効率を向上させることができる。
イオン源20の種類は特定のものに限定されない。例えば、イオン源20は、(a)多極磁界(カスプ磁界)を用いてプラズマ23の閉じ込め等を行う、いわゆるバケット型イオン源(多極磁界型イオン源とも呼ばれる)でも良いし、(b)高周波放電によってプラズマ23を生成する高周波イオン源でも良いし、(c)陰極と反射電極とを対向させ、かつ両者を結ぶ軸に沿う方向に磁界を印加してプラズマ23を生成する、いわゆるバーナス型イオン源でも良い。引出し電極系24を構成する電極の数も、特定のものに限定されない。
図3に示す例のイオン源20のより詳細例を、図5等を参照して更に説明する。プラズマ23を生成するプラズマ生成部22は、例えば、前述したバケット型イオン源、高周波イオン源、バーナス型イオン源等を構成する公知のプラズマ生成部であり、図5では簡略化して図示している。
図5に示す例のイオン源20は、上記引出し電極系24を構成するものとして複数枚(この例では3枚)の電極31〜33を有している。この出願では、当該3枚の電極の内、最もプラズマ23側の電極をプラズマ電極31と呼び、その下流側(イオンビーム28の進行方向における下流側。以下同様)の電極を引出し電極32と呼び、その下流側の電極を接地電極33と呼ぶ。例えば、プラズマ電極31には、図示しない直流電源から、正の加速電圧が印加される。引出し電極32には、図示しない直流電源から、負の引出し電圧が印加される。接地電極33は電気的に接地される。
引出し電極系24は、より具体的にはその各電極31〜33は、この例では、基板6および当該基板6がスキャンされる領域を包含する大きさよりも大きい寸法のイオンビーム引出し領域26(図6、図7参照)を有している。イオンビーム引出し領域26は、イオンビーム28を引き出す孔、スリット等の多数の開口(イオン引出し開口)を有している領域である。例えば、図6に示すイオンビーム引出し領域26は、多数の孔34を有しており、図7に示すイオンビーム引出し領域26は、多数のスリット37を有している。寸法の一例を挙げると、基板6の直径が300mm、そのスキャン幅WS が80mmの場合、イオンビーム引出し領域26の縦横の寸法は400mm×400mmである。但しこれに限られるものではない。
上記3枚の電極31〜33は、この例では、冷却パイプ40、41の部分を除いて、ほぼ同様の構成をしているので、プラズマ電極31で代表して、そのイオンビーム引出し領域26部分の平面図を図6または図7に示している。
各電極31〜33は、図5、図6に示す例のように、イオンビーム28引き出し用の多数の孔34を有していても良いし、図7に示す例のように、イオンビーム28引き出し用の多数のスリット37を有していても良い。
引出し電極系24を構成する電極に、例えば少なくともプラズマ電極31に、当該電極を冷却する冷却パイプを設けておいても良い。この例では、プラズマ電極31に複数の冷却パイプ40をX方向に一定のピッチで配置している。冷却パイプ40内には、例えば冷却水等の冷媒が流される。冷却パイプ40を設けた部分からイオンビーム28は引き出されないので、図6、図7に示す例のように、引出し電極系24は、複数の孔34(図6参照)または複数のスリット37(図7参照)を有していてイオンビーム28が引き出される領域A1 と、冷却パイプ40が設けられていてイオンビーム28が引き出されない領域B1 とが、X方向に所定の周期P1 で交互に配列された構造を有している。
プラズマ電極31よりも下流側の電極にも、必要に応じて、当該電極を冷却する冷却パイプを設けても良い。図5に示す例では、引出し電極32にも複数の冷却パイプ41を設けている。各冷却パイプ41は、この例では各冷却パイプ40の位置に対応させて配置している。冷却パイプ41内には、例えば冷却水等の冷媒が流される。
上記のような2種類の領域A1 、B1 を有する引出し電極系24を備えているイオン源20から引き出されるイオンビーム28の、基板6の位置における電流密度分布の一例を図8に示す。この電流密度分布は、一定の周期P2 で脈動している。山部分A2 は引出し電極系24のイオンビームが引き出される領域A1 に対応する部分であり、谷部分B2 は引出し電極系24のイオンビームが引き出されない領域B1 に対応する部分である。この周期P2 と引出し電極系24の上記周期P1 との関係は、特別な場合(例えばイオンビーム28の発散が大きい場合)を除いて、P1 ≒P2 と考えることができる場合が多い。
上記図8に示す電流密度分布はほんの一例であり、引出し電極系24の上記二つの領域A1 、B1 の幅の大小関係や、各領域A1 の各孔やスリットから引き出されるイオンビームの発散角の大小等によって、より脈動の小さい電流密度分布、より脈動の大きい電流密度分布、更にはその他の電流密度分布を実現することもできる。例えば後述する図12参照。
プラズマ電極31はプラズマ生成部22からの熱入力が最も大きいので、それの冷却能力をより高めるために、上記各イオンビームが引き出される領域A1 の中間部に、冷却パイプ40と平行に、冷却パイプ40よりも細い冷却パイプを更に配置しても良い。そのようにしても、大きくとらえた上記領域A1 の基本となる周期は依然としてP1 であると言うことができる。また、上記の付加的な冷却パイプを配置すると、当該冷却パイプ部分からイオンビームが引き出されなくなるので、イオンビーム28の電流密度分布の各山部分、例えば図8に示した電流密度分布の各山部分A2 が二山になるけれども、ビーム電流密度分布の基本となる(即ち大きくとらえた)周期は依然としてP2 であると言うことができる。
イオン源20の引出し電極系24は、それを構成する電極の内の少なくとも1枚に、分割構造の電極を有していても良い。ここで言う分割構造の電極は、多数のイオン引出し開口(例えば前記孔34またはスリット37に相当する開口)をそれぞれ有している複数枚の電極片であって、所定の方向(例えば図6等に示すY方向)に伸びる接続部をそれぞれ有している電極片を、X方向に所定の周期で並べて接続して1枚の電極を構成したものである。各接続部はイオン引出し開口を有していないので、当該接続部からイオンビームは引き出されない。従って引出し電極系24がこのような分割構造の電極を有している場合も、当該引出し電極系24は、イオンビーム28が引き出される領域(上記領域A1 に相当)とイオンビーム28が引き出されない領域(上記領域B1 に相当)とが所定の方向に所定の周期(上記周期P1 に相当)で交互に配列された構造を有している。
再び図3を参照して、このイオンビーム照射装置は、更に、前記スキャン機構14を制御して、前記イオンビーム28の照射領域内で基板6を、所定のスキャン波形に従ってスキャンして、基板6の全面にイオンビーム28を照射する機能を有している制御装置50を備えている。
基板6のスキャン波形は、例えば、実質的に三角波、実質的に正弦波等である。実質的に三角波とは、三角波、および三角波が幾分鈍っている鈍化三角波を含む意味である。実質的に正弦波とは、正弦波、および正弦波が幾分歪んでいる歪み正弦波を含む意味である。
従ってこのイオンビーム照射装置によれば、ホルダ8に保持された基板6の全面にイオンビーム28を照射して、当該基板6に処理を施すことができる。例えば、基板6にその表面を削る等のイオンミリング加工を施すことができる。また、基板6にイオン注入を行うこともできる。イオンビーム28の種類は、基板6に施す処理内容に応じて選定すれば良い。例えば、イオンミリングを行う場合は、イオンビーム28として、例えばアルゴンイオンビームのような不活性ガスイオンビーム等を用いれば良い。イオン注入を行う場合は、イオンビーム28として、所望のドーパントを含むイオンビームを用いれば良い。
制御装置50は、この例では更に、前記回転機構10および基板傾斜機構12を制御する機能を有している。この制御装置50には、この例では、前記ビーム測定器(例えばビーム測定器52)からそれによる測定データ、即ちX方向におけるイオンビーム28の電流密度分布の測定データが与えられる。制御装置50は、この例では、当該測定データ等を記憶する記憶装置(記憶手段)を有している。この制御装置50の構成のより具体的な例は後述する。
(2)イオンビーム照射方法の一実施形態
次に、上記のようなイオンビーム照射装置におけるイオンビーム照射方法の実施形態を説明する。このイオンビーム照射方法の要点は次のとおりである。なお、この実施形態では、図3に示すように、基板6はイオンビーム28に対して傾けていない(即ち基板傾斜角θ=0度である)。
(a)上記ビーム測定器(例えばビーム測定器52)で測定した上記電流密度分布に基づいて、基板6の位置でのイオンビーム28のX方向における電流密度分布を求める。この工程を、図13中に示すように、電流密度分布を求める工程101と呼ぶことにする。
(b)上記求めた電流密度分布および基板6のスキャン波形を用いて、かつ基板6のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、基板6上の複数点におけるイオンビーム28の照射量密度を計算し、かつ当該照射量密度に基づいて基板6上でのビーム照射量密度の均一性を計算する。この工程を、図13に示すように、均一性計算工程102と呼ぶ。
(c)上記計算した均一性に基づいて、所望の均一性が得られる基板6のスキャン数および回転数の組み合わせを決定する。この工程を、図13中に示すように、組み合わせ決定工程103と呼ぶことにする。
(d)前記決定したスキャン数および回転数の組み合わせで基板6にイオンビーム28を照射する。この工程を、図13中に示すように、イオンビーム照射工程104と呼ぶことにする。
なお、上記(a)〜(c)の工程は、処理する基板6の1枚ごとに行っても良いし、複数枚の基板6ごとに、例えば1ロットごとに行っても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
上記(a)〜(d)の各工程を以下に詳述する。
(a)電流密度分布を求める工程101
まず、上記ビーム測定器(例えばビーム測定器52)で測定した上記電流密度分布に基づいて、基板6の位置でのイオンビーム28のX方向における電流密度分布を求める。
例えば、基板6の位置でのイオンビーム28のX方向におけるビーム電流密度分布を構成する各山部分の電流密度分布I(x)を表す式、山部分の周期P2 および山部分の数を求めて、後述する数9に示すビーム電流密度分布f(x)に相当する分布を求める。上記各山部分の電流密度分布I(x)は、後述する例ではガウス分布の式で表されるものとしているが、それに限られるものではない。
なお、上記ビーム測定器を基板6の位置に設ける場合は、当該ビーム測定器で測定したビーム電流密度分布を、そのまま、基板6の位置でのビーム電流密度分布とすれば良い。
上記ビーム測定器を基板6の位置に設けない場合は、当該ビーム測定器の位置と基板6の位置との幾何学的配置関係およびイオンビーム28の発散状況等を用いた計算を行うことによって、基板6の位置でのビーム電流密度分布を求めれば良い。
基板6上でのビーム電流密度分布f(x)の概略例を図9に示す。この図は、以下の説明を分かりやすくするため、分布波形を非常に単純化すると共に谷部分B2 の電流密度を0にしている。実際のビーム電流密度分布は、通常は、例えば図8、図12等に示す例のように滑らかに脈動する分布を有している場合が多い。
(b)均一性計算工程102
次に、上記求めたビーム電流密度分布および基板6のスキャン波形を用いて、かつ基板6のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、基板6上の複数点におけるイオンビーム28の照射量密度を計算し、かつ当該照射量密度に基づいて基板6上でのビーム照射量密度の均一性を計算する。これを以下に詳述する。なおこの出願において、基板6のスキャン数は、基板6の機械的な往復走査数と同じ意味であり、例えば1スキャンは1往復走査のことである。
図10に簡略化して示すように、この例では、基板6の回転方向は矢印C方向であり、基板6のスキャン方向DはX方向であり、そのスキャンの時間周期をTS とする。また、時間t=0のときの基板6の中心点の時間変化x(t)を次式とする。ここで、g(t)は時間についての周期関数である。
[数1]
x(t)=g(t)
以下では、一例として、上記周期関数g(t)を、図11に示すような、振幅がP2 /2、周期がTS の三角波とする。この場合、基板6のスキャン幅WS は、上記周期P2 と等しくなる。
再び図10を参照して、基板6を回転だけさせる場合、基板6上の点Q(x,y)の時間的移動のX、Y座標上の位置x(t)、y(t)は、基板6上の初期位置(R,φ)を用いて表すと次式となる。ここで、Rは初期位置の半径、φは初期角(即ちスキャン方向であるX軸に対する時刻t=0での角度)、ωは基板回転の角速度である。
[数2]
x(t)=R・cos(ωt+φ)
y(t)=R・sin(ωt+φ)
従って、基板6をスキャンおよび回転させる場合の基板6上の点Q(x,y)の軌道は、上記スキャンの式である数1を加味して、次式で表される。
[数3]
x(t)=g(t)+R・cos(ωt+φ)
y(t)=R・sin(ωt+φ)
前述したように、イオン源20から引き出されるイオンビーム28のY方向における電流密度分布は、基板6の寸法以上の範囲で実質的に均一であるので、基板6上の各点のビーム照射量密度の均一性の評価に必要なのはx位置である。
基板6をスキャンおよび回転させる場合の、スキャン1回(即ち1往復走査)分のビーム照射量密度Wは次式で表される。
上記式に、基板6のスキャン数NS および回転数NR (NS 、NR は1以上の整数)を加味すると次のようになる。即ち、NS スキャンの時間t=NS ・TS において基板6はNR 回転しているとする。この場合、次式の関係が成立する。
[数5]
ω(NS ・TS )=2π・NR
∴ω=2π(NR /NS )(1/TS
これを上記数4に代入すると共に、積分の範囲を0〜NS ・TS にすることによって次式が得られる。これが、基板6をNS 回スキャンおよびNR 回回転させる場合のビーム照射量密度Wである。
基板6上におけるビーム照射量密度の均一性を計算するために、上記ビーム照射量密度を、上記半径Rおよび初期角φを所定の刻みで変化させて、基板6上の全面について計算する。この刻みの一例は次式であるが、これに限られるものではない。
[数7]
ΔR=R/20(即ち半径を20等分)
Δφ=2π/72(即ち1周を72等分)
なおかつ、基板6のスキャン数NS および回転数NR の組み合わせを複数の組み合わせで変えて(例えば、後述する表1、表2参照)、各組み合わせについて上記ビーム照射量密度Wの計算を行う。
なお、基板6上のビーム照射量密度Wの簡単な評価を行う場合は、例えば、初期角φを0(X軸上)またはπ/2(Y軸上)の二つに固定して、半径Rだけを変化させて計算を行っても良い。
基板6の位置でのイオンビーム28のX方向における各山部分の電流密度分布I(x)は、ここでは一例として、次式で表されるガウス分布であるとする(実際は、前記ビーム測定器52を用いる等して測定した電流密度分布I(x)を使用すれば良い)。ここで、xは基板6上のX方向の位置、I0 はピーク強度、dはピーク強度が1/eとなる幅(これを1/e幅と呼ぶことにする。eは自然対数であり、e=2.718)である。
[数8]
I(x)=I0 ・exp(−x2 /d2
なお、以下では、計算を単純化する等のために、上記式のビーム電流密度分布をI0 で規格化した(即ちI0 で割ってピーク強度を1とした)規格化ビーム電流密度分布を用いる。図12はそれを用いて図示している。なお、I0 で規格化することを行わないのであれば、下記数9の右辺全体を括弧に入れてその先頭にI0 を付ければ良い。
基板6上のスキャン方向におけるビーム電流密度分布の周期をP2 とし、距離の単位をP2 /2とする。図12に示すビーム電流密度分布は、基板6上における山部分が五つで、上記距離の単位での各中心がx=−4,−2,0,2,4にそれぞれある場合の例である。
各山部分の1/e幅(=d)は、d=1/3,2/3,4/5の3条件で計算を行った。これらは、イオン源20の引出し電極系24の各イオンビームが引き出される領域A1 から引き出されるイオンビームの発散角が、それぞれ小、中、大の場合の例を示している。
上記五つの山部分を有するイオンビーム28全体の基板6上でのビーム電流密度分布f(x)は次式で表すことができる。
[数9]
f(x)=exp{−(x+4)2 /d2 }+exp{−(x+2)2 /d2
+exp{−x2 /d2 }+exp{−(x−2)2 /d2
+exp{−(x−4)2 /d2
上記数9で表されるビーム電流密度分布f(x)を、上記各1/e幅についてグラフ化したものを図12にまとめて示している。
基板6のスキャン波形が前述した三角波で、基板6上におけるビーム電流密度分布が図12に示した3種類の場合について、基板6のスキャン数NS および回転数NR の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、基板6上の複数点におけるイオンビームの上記照射量密度Wを計算し、かつ当該照射量密度Wに基づいて基板6上でのビーム照射量密度の均一性Uを計算した結果の例を以下に説明する。
基板6上でのビーム照射量密度の均一性Uは、次式で表されるものである。ここで、Wmax はビーム照射量密度Wの最大値、Wmin はビーム照射量密度Wの最小値である。
[数10]
U=(Wmax −Wmin )/(Wmax +Wmin
均一性Uの計算は、この例では0≦R≦4として行った。この4は、上述したように距離の単位をP2 /2としたときのものであり、実際の寸法は(P2 /2)×4=2P2 である。
スキャン数NS と回転数NR の各組み合わせ時のビーム照射量密度の均一性Uの計算結果を表1および表2に示す。表1は1/e幅=1/3の場合(簡単に言えば、イオンビーム28の各山部分が鋭い場合)、表2は1/e幅=4/5の場合(簡単に言えば、イオンビーム28の各山部分がなだらかな場合)である。ここでは、スキャン数NS は1〜7回の範囲、回転数NR は1〜10回の範囲で計算している。
上記表1、表2中に、均一性Uが±0%〜±1%で特に良好な場合を、灰色に着色して他と区別しやすくしている。
上記表1、表2から、イオンビーム28の各山部分がなだらかになる場合(即ち1/e幅が大きくなる)と、均一性Uの良い組み合わせが多くなることが分かる。1/e幅=2/3の場合は、表1と表2の中間程度になるので、ここでは表を省略している。
(c)組み合わせ決定工程103
そして、上記のようにして計算した均一性Uに基づいて、所望の均一性Uが得られる基板6のスキャン数NS および回転数NR の組み合わせを決定する。
(d)イオンビーム照射工程104
そして、前記決定したスキャン数NS および回転数NR の組み合わせで基板6にイオンビーム28を照射する。
例えば、上記灰色に着色した均一性Uが得られるスキャン数NS および回転数NR の組み合わせの中から所望の組み合わせを決定し、当該決定したスキャン数NS および回転数NR の組み合わせで基板6にイオンビーム28を照射する。
以上のようにこのイオンビーム照射方法によれば、基板6のスキャン数NS および回転数NR の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、基板6上の複数点におけるイオンビームの照射量密度Wを計算し、かつ当該照射量密度Wに基づいて基板6上でのビーム照射量密度の均一性Uを計算し、当該計算した均一性Uに基づいて、所望の均一性Uが得られる基板6のスキャン数NS および回転数NR の組み合わせを決定し、当該決定したスキャン数NS および回転数NR の組み合わせで基板6にイオンビーム28を照射するので、基板6に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる基板6のスキャン数NS および回転数NR を的確に決定して、基板6に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる。
次に、イオンビーム照射方法の他の実施形態を幾つか説明する。以下においては、上記実施形態との相違点を主に説明する。
上記ビーム測定器(例えばビーム測定器52)を設ける代わりに、例えば上記イオンビーム照射装置と同等のイオンビーム照射装置を用いる等して、予め実験等で測定したX方向における上記ビーム電流密度分布を測定して、その結果を記憶手段、例えば制御装置50内の記憶装置に記憶しておき、上記電流密度分布を求める工程101において、当該記憶しているビーム電流密度分布に基づいて、上記基板6の位置でのイオンビーム28のX方向における電流密度分布f(x)を求めてそれを使用するようにしても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
また、イオンビーム28のエネルギー、電流値、イオン種等の各種条件(これはレシピと呼ばれる)を変化させて基板6へのイオンビーム照射処理が行われる場合は、レシピによって上記ビーム電流密度分布が変化することもあり得るので、その場合は、各レシピについて予め実験的に上記ビーム電流密度分布を測定して記憶しておいて、均一性Uの計算時には、レシピに応じたビーム電流密度分布を使用することにしても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
上記のようにして基板6の位置でのイオンビーム28のX方向における電流密度分布を求めた後は、上記実施形態の場合と同様である。
上記のようにすることによって、ビーム電流密度分布を測定するビーム測定器を実際のイオンビーム照射装置に設けなくて済むので、イオンビーム照射装置の構成の簡素化を図ることができる。後述する他の実施形態においても同様である。
また、前述したように、イオン源20は、基板6の位置における寸法が、当該基板6および当該基板6がスキャンされる領域を包含する大きさよりも大きい寸法のイオンビーム28を照射するもの(例えば図4参照)が好ましい。そのようにすると、基板6のスキャン幅WS を大きくしなくても、基板6の全面にイオンビーム28を照射して、均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる。その結果、基板6のスキャン時間を短縮して、基板処理に要する時間を短縮することができ、それによって基板6の処理効率を向上させることができる。後述する他の実施形態においても同様である。
基板6のスキャン波形が実質的に三角波の場合、上記表1、表2に示すように、基板6のスキャン数NS および回転数NR が互いに同じである組み合わせでは均一性Uは良くないことが計算結果で確かめられているので、上記イオンビーム照射量密度Wおよび均一性Uの計算をする際に、このNS =NR の組み合わせを予め除外しておいても良い。そのようにすることによって、不要な計算をしなくて済み、上記イオンビームの照射量密度Wおよび均一性Uの計算を簡単にすることができる。
(3)制御装置50のより具体例
上記制御装置50は、上記(2)のイオンビーム照射方法を実施する機能を有していても良い。その場合の制御装置50の構成の例を以下に説明する。なお、以下に説明する制御装置50は、コンピュータを用いて構成しても良い。また、以下に説明する機能以外に、当該イオンビーム照射装置全体を制御する機能を有していても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
図14に示す制御装置50は、電流密度分布演算部62(電流密度分布演算手段)、均一性演算部64(均一性演算手段)、組み合わせ記憶部66(組み合わせ記憶手段)および駆動制御部68(駆動制御手段)を有している。これらの演算部、記憶部等は、例えばバス60を経由して互いに信号をやり取りする。
電流密度分布演算部62は、前記ビーム測定器(例えばビーム測定器52)で測定した前記電流密度分布に基づいて、基板6の位置でのイオンビーム28のX方向における電流密度分布f(x)を求める。そのより具体的な内容は、図13中の電流密度分布を求める工程101について先に説明した内容と実質的に同じである。
均一性演算部64は、前記求めた電流密度分布f(x)および基板6のスキャン波形を用いて、かつ基板6のスキャン数NS および回転数NR の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、基板6上の複数点におけるイオンビームの前記照射量密度Wを計算し、かつ当該照射量密度Wに基づいて基板6上でのビーム照射量密度の均一性Uを計算して、基板6のスキャン数NS および回転数NR の各組み合わせ時のビーム照射量密度の均一性Uを出力する。そのより具体的な内容は、図13中の均一性計算工程102について先に説明した内容と実質的に同じである。
均一性演算部64からの出力は、例えば、ディスプレイに表示させる信号でも良いし、プリンタに印刷させる信号等でも良い。出力データの形式は、例えば、前記表1、表2に示したような表形式でも良いし、後述する図26のようなグラフ形式でも良いし、その他の形式でも良い。制御装置50は、上記出力を表示する表示装置を有していても良い。
組み合わせ記憶部66は、均一性演算部64から前記ビーム照射量密度の均一性Uが出力された後、基板6のスキャン数NS および回転数NR の複数の組み合わせの内の所定の組み合わせを選択する入力を受けて、当該選択された組み合わせを記憶する。例えば、基板6のスキャン数NS および回転数NR の複数の組み合わせの中から、所望の均一性が得られる組み合わせをオペレータが選択して、その選択した組み合わせを組み合わせ記憶部66に入力すれば良い。当該入力は、例えば、キーボード、タッチパネル等によって行っても良い。制御装置50は、このような入力装置を有していても良い。
駆動制御部68は、基板6へのイオンビーム28の照射時に、組み合わせ記憶部66に記憶している上記基板6のスキャン数NS および回転数NR の組み合わせになるように、前記スキャン機構14および回転機構10を制御する。
なお、上記電流密度分布演算部62、均一性演算部64および組み合わせ記憶部66における演算等の処理は、処理する基板6の1枚ごとに行っても良いし、複数枚の基板6ごとに、例えば1ロットごとに行っても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
上記のような制御装置50を備えているイオンビーム照射装置によれば、基板6に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことができる基板のスキャン数NS および回転数NR を的確に決定することが容易になる。その結果、基板6に対して均一性の良いイオンビーム照射を行うことが容易になる。
図15に示す例のように、制御装置50が電流密度分布記憶部70(電流密度分布記憶手段)を有していても良い。即ち、上記ビーム測定器(例えばビーム測定器52)を設ける代わりに、例えば上記イオンビーム照射装置と同等のイオンビーム照射装置を用いる等して、予め実験等で測定したX方向における上記ビーム電流密度分布を測定して、その結果を電流密度分布記憶部70に記憶しておいて、当該記憶しているビーム電流密度分布に基づいて、電流密度分布演算部62において、基板6の位置でのイオンビーム28のX方向における電流密度分布f(x)を求めてそれを使用するようにしても良い。
この場合も、前述したように、例えば各レシピについて予め実験的に上記ビーム電流密度分布を測定してそれを電流密度分布記憶部70に記憶しておいて、均一性Uの計算時には、レシピに応じたビーム電流密度分布を使用することにしても良い。
制御装置50のその他の部分は、図14に示した例と同様である。
上記のようにすることによって、ビーム電流密度分布を測定するビーム測定器を実際のイオンビーム照射装置に設けなくて済むので、イオンビーム照射装置の構成の簡素化を図ることができる。
なお、上記組み合わせ記憶部66および電流密度分布記憶部70の両方を、一つの記憶装置によって構成しても良い。換言すれば、一つの記憶装置を組み合わせ記憶部66と電流密度分布記憶部70とに共用しても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
(4)イオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置の他の実施形態に至る背景技術
当該他の実施形態に至る背景技術を以下に説明する。前記基板6として、基板上に複数の円柱状素子が並べて形成された基板を用いて、イオンビーム28の照射によって、各円柱状素子の側面にミリング等の処理を施す場合がある。
例えば、次の特許文献3、4には、MRAM(磁気ランダムアクセスメモリ)等の磁気抵抗効果素子の製造において、基板上の円柱状素子の一例であるMTJ素子(磁気トンネル接合素子)の側面にイオンビームを照射して処理を施す技術が記載されている。
特許文献3:特開2005−44848
特許文献4:特開2011−166157
より具体的には、特許文献3には、斜め入射によるイオンエッチングを用いることで、エッチングによって飛散された物質のMTJ素子側面への付着を抑制して、MTJ素子の不良率軽減を図る技術が記載されている(例えばその段落0095、0098、図7、図16参照)。
特許文献4には、斜め入射によって、MTJ素子の側壁のトリミングと残渣除去とにより、小型かつ特性の良いMTJ素子を形成する技術が記載されている(例えば、その請求項1、段落0006、0036、図2、図4参照)。
これらの応用においては、基板上の円柱状素子側面に対するビーム入射角を変化させるために、基板を傾けた状態で(即ち、前述した基板傾斜角θに相当する角度を0度以外にした状態で)イオンビーム照射が行われる。かつ、円柱状素子側面の全周に均一性良くイオンビームを照射するために、基板を回転させる。
円柱状素子側面のミリング等の処理は、基板上の実質的に全面に分散配置されている円柱状素子に対して均一性良く行う必要がある。仮に円柱状素子側面の処理が均一でないならば、処理後の素子形状が当該素子の中心軸に対して非対称となり、素子性能が低下する。また、基板上の実質的に全面に配置された複数の円柱状素子に対する処理が均一でないならば、素子性能にばらつきが生じることになり、デバイス生産に重大な悪影響を与えることになる。従って、これらの応用においては、円柱状素子の側面に均一性の良い処理を施すことが重要である。
このような応用において、本発明の前述した実施形態のイオンビーム照射方法またはイオンビーム照射装置をそのまま用いると、次のような課題が生じる場合がある。
例えば、前記表2において、基板のスキャン数NS が1回、基板の回転数NR が2回の組み合わせの場合に均一性Uが±0%になって良好な均一性が得られているが、この均一性Uは、前述したように、基板6の表面でのビーム照射量密度の均一性である。基板上の円柱状素子側面の処理に上記組み合わせを採用しても、ミリング等の処理が不均一になることを図16を参照して説明する。
図16(A)は、前記図12中の1/e幅=4/5の場合のイオンビーム28の分布であり、表2の条件に対応している。図16(B)は、傾けた基板6の矢印D方向のスキャンの時間経過を示すものであり、(a)から(e)まで1/4スキャンごとになっており、全部で1スキャンとしている。説明を簡略化するために、円柱状素子の代わりに、基板6上の中心に角柱(より具体的には四角柱)56が設けられている場合を模式的に示している。図を見やすくするために、角柱56の一つの側面56aを太線で示し、その反対側の側面56bを破線で示している。図16(C)は、基板6のC方向の回転の時間経過を示すものであり、1/4スキャンごとの基板回転位置を示し、全部で2回転としている。回転に伴う基板6の方向が分るように、ノッチ7を付けている。
(a)の0スキャン時は、角柱56の側面56aはイオンビーム28の照射を受け、その反対側の側面56bはイオンビーム28が当たらない陰になっている。この時、側面56aに照射されるイオンビーム分布は(A)に示すように山部分であり、イオンビーム強度(即ち、ビーム電流密度。以下同様)が大きい。
(b)の1/4スキャン時は、角柱56の側面56bはイオンビーム28の照射を受けるけれども、この時、側面56bに照射されるイオンビーム分布は(A)に示すように谷部分であり、イオンビーム強度は小さい。
(c)の2/4スキャン時は、(a)の場合と同じであり、側面56aが再びイオンビーム28の照射を受け、かつそのイオンビーム強度は大きい。
(d)の3/4スキャン時は、角柱56の側面56bが再びイオンビーム28の照射を受けるけれども、この時、側面56bに照射されるイオンビーム分布は(A)に示すように谷部分であり、イオンビーム強度は小さい。
(e)の4/4スキャン時は、(a)の状態に戻っており、側面56aが再びイオンビーム28の照射を受け、かつそのイオンビーム強度は大きい。
以上のように、図16に示す例では、基板6上の角柱56の側面56aは、イオンビーム28の照射を受ける方向に来る度にイオンビーム強度が大きく、反対側の側面56bは、イオンビーム28の照射を受ける方向に来る度にイオンビーム強度が小さい。従って、基板6上の角柱56の側面に対するイオンビーム照射強度は均一にはならず、従ってミリング等の処理も均一にはならない。以上は説明を簡略化するために角柱56を用いて説明したが、基板6上に円柱状素子が設けられている場合も上記と同様の結果になる。
従って、基板6上の円柱状素子の側面を均一に処理するためには、更なる工夫が必要である。
また、基板上には円柱状素子がまだ形成されておらず、基板上(即ち、基板の表面または当該表面に形成された膜(例えば多層膜)上。以下同様)に、円柱状素子を形成するための円柱状マスク(例えば円柱状メタルまたは円柱状レジストマスク)が形成されていて、当該円柱状マスクを用いて、イオンミリング等によって円柱状マスクの下の基板上に円柱状素子を形成する場合もあり、この場合も、当該円柱状マスクの形状が、その下に形成される円柱状素子の形状に影響するため、円柱状マスクの側面を、更にはその下の形成途上にある円柱状素子の側面を、均一に処理することが重要である。
上記のような(a)円柱状素子、(b)円柱状マスク、(c)円柱状マスクとその下の形成途上にある円柱状素子との組み合わせ、の三つを包含する上位概念の用語として、以下では円柱状体を用いる。
そして以下に、基板上の複数の円柱状体の側面に均一性の良い処理を施すことのできるイオンビーム照射方法およびイオンビーム照射装置の実施形態を説明する。なお、以下においては、先の実施形態と同一または相当する部分には同一符号を付し、先の実施形態との相違点を主に説明する。
(5)イオンビーム照射装置の他の実施形態
図17は、この発明に係るイオンビーム照射方法を実施するイオンビーム照射装置の他の実施形態を示す概略断面図であり、図3に対応している。
以下の実施形態では、ホルダ8に保持される基板6として、基板上に、例えば基板上の実質的に全面に、複数の円柱状体54(図19参照)が並べて形成されている基板6を扱う。但し図19では、説明を分かりやすくするために、円柱状体54を拡大して1個のみを表している。
円柱状体54は、基板6の表面に形成されていても良いし、基板6の表面に形成された膜(例えば多層膜)上に形成されていても良い。また円柱状体54は、上述したように、(a)円柱状素子でも良いし、(b)円柱状素子を形成するための円柱状マスク(例えば円柱状メタルまたは円柱状レジストマスク)でも良いし、(c)円柱状マスクとその下の形成途上にある円柱状素子との組み合わせでも良い。円柱状素子は、単層の素子でも良いし、複数層の素子でも良い。またこの出願において、「円柱状体」は、円柱、円錐台およびそれらに近い形状をしている素子を包含する意味で用いている。
図17に示すイオンビーム照射装置も、回転機構10、ホルダ8およびそれに保持された基板6を矢印Eで示すように回転させることによって、ホルダ8およびそれに保持された基板6を傾けて、基板6の垂線とイオンビーム28の進行方向との成す角度である基板傾斜角θを0度以上にすることのできる基板傾斜機構12等を備えている。
基板傾斜機構12は、例えば、基板傾斜角θを0°≦θ≦90°の範囲で変化させることができるものであるが、これに限られるものではない。例えば、角度θの可変範囲が0°≦θ≦60°程度のものでも良い。
このイオンビーム照射装置のその他の構成等は、例えばイオン源20の構成、イオンビーム28の寸法・電流密度分布、スキャン機構14、基板6のスキャン波形、ビーム測定器52等の例は、先に図3以降を参照して説明したものと実質的に同じである。但し制御装置50には違いがある。その相違点については後述する。
(6)イオンビーム照射方法の他の実施形態
次に、上記のようなイオンビーム照射装置におけるイオンビーム照射方法の実施形態を説明する。このイオンビーム照射方法の要点は次のとおりである。
(a)前記基板傾斜機構12を用いて前記基板傾斜角θを0度を除く所定の角度に設定する。この工程を、図18中に示すように、基板傾斜角設定工程100と呼ぶことにする。
(b)前記ビーム測定器(例えばビーム測定器52)で測定した前記電流密度分布に基づいて、基板6の位置でのイオンビーム28のX方向における電流密度分布f(x)を求める。この工程を、図18中に示すように、電流密度分布を求める工程101と呼ぶことにする。
(c)前記求めた電流密度分布f(x)、基板6のスキャン波形および前記所定の基板傾斜角θを用いて、かつ基板6の前記スキャン数NS および回転数NR の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、基板6上の前記複数の円柱状体54のそれぞれの全側面に対するイオンビーム28による処理量を計算し、かつ当該処理量に基づいて、複数の円柱状体54の側面に対する処理量均一性を計算する。この工程を、図18中に示すように、均一性計算工程102aと呼ぶことにする。
(d)前記計算した処理量均一性に基づいて、所望の処理量均一性が得られる基板6のスキャン数NS および回転数NR の組み合わせを決定する。この工程を、図18中に示すように、組み合わせ決定工程103と呼ぶことにする。
(e)前記決定したスキャン数NS および回転数NR の組み合わせで基板6にイオンビーム28を照射する。この工程を、図18中に示すように、イオンビーム照射工程104と呼ぶことにする。
上記(a)〜(e)の工程の内、基板傾斜角設定工程100は更なる説明を要しないであろう。電流密度分布を求める工程101、組み合わせ決定工程103およびイオンビーム照射工程104は、先に説明した図13中の対応する工程とそれぞれ実質的に同じであるので、ここでは重複説明を省略する。均一性計算工程102aは、先に説明した図13中の均一性計算工程102とは異なるので、これを以下に詳述する。
(6−1)基板6の回転およびスキャンについて
前記基板傾斜機構12、回転機構10およびスキャン機構14によって、図19に示すように、基板6を基板傾斜角θに傾けた状態で、例えば矢印C方向に回転および矢印D方向にスキャンすることができる。
図19に簡略化して示すように、基板6の回転方向は矢印C方向であり、基板6のスキャン方向DはX方向であり、そのスキャンの時間周期をTS とする。また、時間t=0のときの基板6の中心点の時間変化x(t)を次式とする。これは先の数1と同じ式である。ここで、g(t)は時間についての周期関数である。
[数11]
x(t)=g(t)
以下でも、一例として、上記周期関数g(t)を、図11に示したような、振幅がP2 /2、周期がTS の三角波とする。この場合、基板6のスキャン幅WS は、上記周期P2 と等しくなる。
(6−2)傾けた基板6の回転およびスキャンについて
基板6を回転だけさせる場合、基板6上の点Q(x,y)の、基板平面にとった座標系(X’,Y’,Z’)における時間移動(X'(t) ,Y'(t) )は、基板6上の初期位置(R,φ)を用いて表すと次式となる。ここで、Rは初期位置の半径、φは初期角(即ちスキャン方向であるX軸に対する時刻t=0での角度)、ωは基板回転の角速度である。
[数12]
x'(t)=R・cos(ωt+φ)
y'(t)=R・sin(ωt+φ)
次に、図19(B)に示すように、基板6を基板傾斜角θに傾けた場合、傾ける前の座標系を(X,Y,Z)とすると、この座標系(X,Y,Z)に対する基板6上の点Qの時間変化(x(t),y(t))は次式で表される。
[数13]
x(t)=R・cos(ωt+φ)・cos(θ)
y(t)=R・sin(ωt+φ)
従って、基板6をスキャンおよび回転させる場合の基板6上の点Q(x,y)の軌道は、上記スキャンの式である数11を加味して、次式で表される。
[数14]
x(t)=g(t)+R・cos(ωt+φ)・cos(θ)
y(t)=R・sin(ωt+φ)
前述したように、イオン源20から引き出されるイオンビーム28のY方向における電流密度分布は、基板6の寸法以上の範囲で実質的に均一であるので、基板6上の各点のビーム照射量密度の均一性の評価に必要なのはx位置である。
(6−3)イオンビーム照射時の処理速度について
傾けた基板6上の円柱状体54の側面にイオンビーム28を照射して処理を施す場合、当該側面に対するビーム入射角によって処理速度が異なるので、これについて以下に説明する。以下では、処理の例としてイオンミリングを取り上げている。
イオン照射によるターゲット材料のスパッタ率Yi は、公開ソフトSRIM(The Stopping and Range of Ions in Matter) 等によって、計算によって求めることができる。即ち、イオンの種類(例えばAr+ 、Ne+ 、He+ 、Kr+ 等)、イオンのエネルギー[eV]、ターゲット材料の種類(例えばCo 、Fe 、Ta 、Mg 等)に応じて、所定の入射角α[度]の場合のスパッタ率Yi を求めることができるのでそれを行う。
例えば、ターゲット材料がCo (コバルト)、イオンがAr+ 、そのエネルギーが500eVの場合の各入射角αにおけるスパッタ率Yi をSRIMで計算した結果の一例を図20に示す。入射角αによってスパッタ率Yi が変化していることが分る。
上記のようにして求めたスパッタ率Yi を用いて、イオンによるミリングレートRm を次式に従って計算する。ここで、ρはターゲット材料の密度、mi はターゲット材料原子の質量、Iはイオンビーム電流密度、eは素電荷である。
このように、基板6上の円柱状体54の側面に対するミリングレートRm の計算には、当該側面に対するイオンビームの入射角が必要であり、当該入射角の計算について次に説明する。なお、計算を簡略化するために、円柱状体54を正多角柱(例えば正20角柱)で近似しても良く、以下ではそのようにしている。
(6−4)円柱状体側面に対するビーム入射角βについて
角度θ傾けた基板6上の角柱(より具体的には四角柱)56の側面に対するビーム入射角βを図21に示す。ここでは、関係が見やすいように、前記円柱状体54の代わりに角柱56を使用している。ビーム入射角βは、当該角柱56の側面の面法線i'p とイオンビーム28の進行方向との成す角度である。pは側面番号である。円柱状体54の場合は、ビーム入射角βは、当該円柱状体54の側面の面法線i'p とイオンビーム28の進行方向との成す角度である。
基板6が回転する時(矢印C参照)、角柱56はZ’軸の周りに回転するので、面法線i'p は3次元的にその方向を変える。例えば、時刻tの時の面法線ベクトルをi'p (ωt)とすると、Δt時間経過後の面法線ベクトルはi'p{ω(t+Δt)}となり、ビーム入射角βも変化する。そこで、面法線を3次元のベクトルで表して、ビーム入射角βを計算によって求める。これを以下に説明する。
図22に示すように、(X,Y,Z)座標系の基本ベクトル(i,j,k)と、傾けた基板6上の基本ベクトル(i’,j’,k’)とを取る。符号80は単位円である。基板傾斜角がθのとき、両基本ベクトル(i,j,k)と(i’,j’,k’)の関係は次式となる。
[数16]
i' =i・cos(θ)+k・sin(θ)
j' =j
基板6が角速度ωで回転するとき、基板6上の基本ベクトルi’の時間tによる変化を(X,Y,Z)座標系の基本ベクトルで表すと次式となる。
[数17]
i'(ωt)=i' ・cos(ωt)+j' ・sin(ωt)
=i・cos(θ)・cos(ωt)+k・sin(θ)・
cos(ωt)+j・sin(ωt)
円柱状体54や角柱の別の側面の面法線ベクトルは、上記ベクトルi'(ωt)の位相をずらせば得られる。これを図23を参照して説明すると、円柱状体54を多角柱で近似した場合、その側面番号をp(pは1≦p≦nの整数、nは3以上の整数)とすると、側面Sp の面法線単位ベクトルi'p(ωt)は次式で表される。ηp は、側面pの初期角(即ちスキャン方向であるX軸に対する時刻t=0での角度)である。この例では側面S1 の初期角η1 を0度にしている。
[数18]
i'p(ωt)=i・cos(θ)・cos(ωt+ηp )+k・sin(θ)・
cos(ωt+ηp )+j・sin(ωt+ηp
一方、イオンビーム28は前述したようにこの実施形態では−Z方向に進むので、図22、図24に示すように、イオンビーム28の進行方向単位ベクトルは−kである(ここでは、イオンビーム28の発散角は小さいとして無視している)。
従って、イオンビーム28のSp 側面に対するビーム入射角βp については、上記面法線単位ベクトルi'p(ωt)とビーム進行方向単位ベクトル−kの内積から、途中の計算は省略するが、次式の関係が得られる。
[数19]
cos(βp )=sin(θ)・cos(ωt+ηp
従って、上記式から、イオンビーム28のSp 側面に対するビーム入射角βp は、次式によって求めることができる。ここで、符号は、イオンビーム28が側面の正面に入射する場合を+(プラス)、側面の裏面に入射する場合を−(マイナス)に取る。裏面の場合は、円柱状体54の陰になるので、ビーム入射は起こらないことになる。
[数20]
βp =acos{sin(θ)・cos(ωt+ηp )}
(6−5)ビーム入射角βによるビーム電流密度の変化について
次に、ビーム入射角βによるビーム電流密度の変化を計算する。イオンビーム28のビーム電流密度がIのとき、円柱状体54の、ビーム入射角がβp の側面に対するビーム電流密度I’は、図24を参照すれば分るように、次式で表される。
[数21]
I' =I/{1/cos(βp )}
=I・cos(βp
このように、円柱状体54の側面に対するビーム入射角βの変化は、(a)前述したスパッタ率Yi の変化と、(b)上記ビーム電流密度I’の変化とをもたらすので、円柱状体54の側面の処理量、例えばミリング厚の算出には、上記(a)、(b)を反映させる。
即ち、傾けた基板6をスキャンおよび回転させる場合のスキャン1回(即ち1往復走査)分の基板6上の円柱状体54の側面Sp に対するミリング厚Dp は、上記数21中の電流密度Iとして、先に図9等を参照して説明したビーム電流密度分布f(x)等を用い、これと上記数15とを用いて、次式で表される。
この式に上記数14のx(t)を代入すると、次式となる。これが、角度θ傾けた基板6をスキャンおよび回転させる場合のスキャン1回(即ち1往復走査)分の基板6上の円柱状体54の側面Sp に対するミリング厚Dp である。
上記式に、基板6のスキャン数NS および回転数NR (NS 、NR は1以上の整数または半整数)を加味すると次のようになる。即ち、NS スキャンの時間t=NS ・TS において基板6はNR 回転しているとする。この場合、次式の関係が成立する。これは先の数5と同じ式である。
[数24]
ω(NS ・TS )=2π・NR
∴ω=2π(NR /NS )(1/TS
これを上記数23に代入すると共に、積分の範囲を0〜NS ・TS にすることによって次式が得られる。これが、角度θ傾けた基板6をNS 回スキャンおよびNR 回転させる場合の基板6上の円柱状体54の側面Sp に対するミリング厚Dp である。
基板6上の複数の円柱状体54の側面に対する処理量の均一性、例えばミリング厚の均一性を計算するために、上記数25のミリング厚Dp を、上記側面番号p、半径Rおよび初期角φを所定の刻みで変化させて、基板6上に配置されている複数の円柱状体54の全部に対して、各円柱状体54の全側面について計算する。
この刻みの一例を次式に示すが、これに限られるものではない。また、次式は同心状に複数個の円柱状体54を配置している例であるが、これに限られるものではなく、格子状に配置していても良い。
[数26]
p=20(即ち円柱を正20角柱で近似)
ΔR=R/20(即ち半径を20等分)
Δφ=2π/72(即ち1周を72等分)
なおかつ、基板6のスキャン数NS および回転数NR の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて上記ミリング厚Dp の計算を行う。
基板6上の複数の円柱状体54の側面に対する処理量均一性、例えばミリング均一性Usmは、次式に従って計算する。ここで、Dpmaxは、基板6上に配置されている全円柱状体54の側面のミリング厚の最大値、Dpminは当該全円柱状体54の側面のミリング厚の最小値である。
[数27]
sm=(Dpmax−Dpmin)/(Dpmax+Dpmin
ミリング厚以外の処理量均一性についても、上記と同様にして計算することができる。
以上が、図18中の均一性計算工程102aの詳細な例である。それ以降の工程103、104については前述したとおりであるので、ここでは重複説明を省略する。
なお、細かく見ると、上記均一性計算工程102aによって求めた処理量均一性(例えばミリング均一性)は、イオンビーム照射に伴う飛散物質の円柱状体側面への再付着を考慮していないので、円柱状体側面の形状均一性とは必ずしも一致しない。
(6−6)ミリング均一性Usmの計算例について
次に、上記均一性計算工程102aに従ってミリング均一性Usmを計算したより具体例を説明する。
ここでは一例として、イオンビーム28はエネルギーが500eVのAr+ イオン、円柱状体54の材質はCo (コバルト)、基板傾斜角θは45度とした。
基板6の位置でのイオンビーム28のX方向における各山部分の電流密度分布I(x)は、ここでは一例として、次式で表されるガウス分布とした(実際は、前記ビーム測定器52を用いる等して測定した電流密度分布I(x)を使用すれば良い)。ここで、xは基板6上のX方向の位置、I0 はピーク強度、dはピーク強度が1/eとなる幅(これを1/e幅と呼ぶことにする。eは自然対数であり、e=2.718)である。
[数28]
I(x)=I0 ・exp(−x2 /d2
なお、以下では、計算を単純化する等のために、上記式のビーム電流密度分布をI0 で規格化した(即ちI0 で割ってピーク強度を1とした)規格化ビーム電流密度分布を用いる。図25はそれを用いて図示している。なお、I0 で規格化することを行わないのであれば、下記数29の右辺全体を括弧に入れてその先頭にI0 を付ければ良い。
基板6上のスキャン方向におけるビーム電流密度分布の周期をP2 とし、距離の単位をP2 /2とする。図25に示すビーム電流密度分布は、基板6上における山部分が五つで、上記距離の単位での各中心がx=−4,−2,0,2,4にそれぞれある場合の例である。
各山部分の1/e幅(=d)は、d=1/2,2/3,4/5の3条件で計算を行った。これらは、イオン源20の引出し電極系24の各イオンビームが引き出される領域A1 から引き出されるイオンビームの発散角が、それぞれ小、中、大の場合の例を示している。
上記五つの山部分を有するイオンビーム28全体の基板6上でのビーム電流密度分布f(x)は次式で表すことができる。
[数29]
f(x)=exp{−(x+4)2 /d2 }+exp{−(x+2)2 /d2
+exp{−x2 /d2 }+exp{−(x−2)2 /d2
+exp{−(x−4)2 /d2
上記数29で表されるビーム電流密度分布f(x)を、上記各1/e幅についてグラフ化したものを図25にまとめて示している。
基板6のスキャン波形が前述した三角波で、基板6上におけるビーム電流密度分布が図25に示した3種類の場合について、基板6のスキャン数NS を1回として、基板6の回転数NR を2回から10回まで、中間の半整数回も含めて変えて、上記ミリング均一性Usmを計算した。その結果を図26に示す。
この図から分るように、1/e幅が1/2以上のとき、基板6の回転数NR が6回以上の整数の場合に、ミリング均一性Usmは±10%以下であり、良好な結果が得られている。
このように上記イオンビーム照射方法によれば、基板6上の円柱状体54の側面に対して均一性の良い処理を施すことができる基板のスキャン数NS および回転数NR を的確に決定して、基板6上の円柱状体54の側面に対して均一性の良い処理を施すことができる。
なお、このイオンビーム照射方法の場合も、上記ビーム測定器(例えばビーム測定器52)を設ける代わりに、例えば上記イオンビーム照射装置と同等のイオンビーム照射装置を用いる等して、予め実験等で測定したX方向における上記ビーム電流密度分布を測定して、その結果を記憶手段、例えば制御装置50内の記憶装置に記憶しておき、上記電流密度分布を求める工程101において、当該記憶しているビーム電流密度分布に基づいて、上記基板6の位置でのイオンビーム28のX方向における電流密度分布f(x)を求めてそれを使用するようにしても良い。
上記のようにすることによって、ビーム電流密度分布を測定するビーム測定器を実際のイオンビーム照射装置に設けなくて済むので、イオンビーム照射装置の構成の簡素化を図ることができる。
(7)制御装置50の他のより具体例
上記制御装置50は、上記(6)のイオンビーム照射方法を実施する機能を有していても良い。その場合の制御装置50の構成の例を以下に説明する。以下においては、図14、図15に示した例と同一または相当する部分には同一符号を付し、図14、図15に示した例との相違点を主に説明する。
図27に示す制御装置50は、基板傾斜角制御部72(基板傾斜角制御手段)および均一性演算部64a(均一性演算手段)を有している。これら以外の構成は図14を参照して説明したものと同じであるので、ここでは重複説明を省略する。
基板傾斜角制御部72は、前記基板傾斜機構12を制御して、前記基板傾斜角θを0度を除く所定の角度に制御する。例えば、上記所定の基板傾斜角θをこの基板傾斜角制御部72に設定すれば良い。
均一性演算部64aは、前記のようにして求めた電流密度分布、基板6のスキャン波形および前記基板傾斜角θを用いて、かつ基板6の前記スキャン数NS および回転数NR の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記複数の円柱状体54のそれぞれの全側面に対するイオンビーム28による処理量を計算し、かつ当該処理量に基づいて、複数の円柱状体54の側面に対する処理量均一性を計算して、基板6のスキャン数NS および回転数NR の各組み合わせ時の処理量均一性を出力する。そのより具体的な内容は、図18中の均一性計算工程102aについて先に説明した内容と実質的に同じである。
上記のような制御装置50を備えているイオンビーム照射装置によれば、基板6上の円柱状体54の側面に対して均一性の良い処理を施すことができる基板のスキャン数NS および回転数NR を的確に決定することが容易になる。その結果、基板6上の円柱状体54の側面に対して均一性の良い処理を施すことが容易になる。
図28に示す例のように、制御装置50が電流密度分布記憶部70(電流密度分布記憶手段)を有していても良い。この電流密度分布記憶部70は、図15中のものと同じであるので、それについての先の説明を参照するものとし、ここでは重複説明を省略する。
制御装置50のその他の部分は、図27に示した例と同様である。
上記のようにすることによって、ビーム電流密度分布を測定するビーム測定器を実際のイオンビーム照射装置に設けなくて済むので、イオンビーム照射装置の構成の簡素化を図ることができる。
4 真空容器
6 基板
8 ホルダ
10 回転機構
14 スキャン機構
20 イオン源
22 プラズマ生成部
24 引出し電極系
26 イオンビーム引出し領域
28 イオンビーム
50 制御装置
52 ビーム測定器
54 円柱状体
62 電流密度分布演算部
64、64a 均一性演算部
66 組み合わせ記憶部
68 駆動制御部
70 電流密度分布記憶部
72 基板傾斜角制御部
100 基板傾斜角設定工程
101 電流密度分布を求める工程
102、102a 均一性計算工程
103 組み合わせ決定工程
104 イオンビーム照射工程
1 イオンビームが引き出される領域
1 イオンビームが引き出されない領域
S 基板のスキャン数
R 基板の回転数
θ 基板傾斜角

Claims (10)

  1. 真空に排気される真空容器と、
    前記真空容器内に収納されていて基板を保持するホルダと、
    前記ホルダおよびそれに保持された基板を当該基板の中心部周りに回転させる回転機構と、
    プラズマを生成するプラズマ生成部および当該プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出す引出し電極系を有していて、引き出したイオンビームを前記ホルダに保持された基板に照射するイオン源であって、前記引出し電極系は、イオンビームが引き出される領域とイオンビームが引き出されない領域とをX方向に所定の周期で交互に配列しており、かつ前記イオンビームが引き出される領域から、前記基板の位置において、前記X方向と実質的に直交するY方向において前記基板の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビームを引き出すイオン源と、
    前記ホルダ、それに保持された基板および前記回転機構を、所定のスキャン波形で実質的に前記X方向に機械的に往復でスキャンするスキャン機構と、
    前記X方向における前記イオンビームの電流密度分布を測定するビーム測定器とを備えているイオンビーム照射装置において、
    前記ビーム測定器で測定した前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求め、
    前記求めた電流密度分布および前記基板のスキャン波形を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記基板上の複数点におけるイオンビームの照射量密度を計算し、かつ当該照射量密度に基づいて前記基板上でのビーム照射量密度の均一性を計算し、
    前記計算した均一性に基づいて、所望の均一性が得られる前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを決定し、
    前記決定したスキャン数および回転数の組み合わせで前記基板にイオンビームを照射することを特徴とするイオンビーム照射方法。
  2. 真空に排気される真空容器と、
    前記真空容器内に収納されていて基板を保持するホルダと、
    前記ホルダおよびそれに保持された基板を当該基板の中心部周りに回転させる回転機構と、
    プラズマを生成するプラズマ生成部および当該プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出す引出し電極系を有していて、引き出したイオンビームを前記ホルダに保持された基板に照射するイオン源であって、前記引出し電極系は、イオンビームが引き出される領域とイオンビームが引き出されない領域とをX方向に所定の周期で交互に配列しており、かつ前記イオンビームが引き出される領域から、前記基板の位置において、前記X方向と実質的に直交するY方向において前記基板の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビームを引き出すイオン源と、
    前記ホルダ、それに保持された基板および前記回転機構を、所定のスキャン波形で実質的に前記X方向に機械的に往復でスキャンするスキャン機構と、
    前記X方向における前記イオンビームの電流密度分布であって前記基板のスキャン数および回転数の決定に用いるものを記憶しておく記憶手段とを備えているイオンビーム照射装置において、
    前記記憶している前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求め、
    前記求めた電流密度分布および前記基板のスキャン波形を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記基板上の複数点におけるイオンビームの照射量密度を計算し、かつ当該照射量密度に基づいて前記基板上でのビーム照射量密度の均一性を計算し、
    前記計算した均一性に基づいて、所望の均一性が得られる前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを決定し、
    前記決定したスキャン数および回転数の組み合わせで前記基板にイオンビームを照射することを特徴とするイオンビーム照射方法。
  3. 前記基板のスキャン波形は実質的に三角波であり、
    前記イオンビームの照射量密度および均一性の計算をする際に、前記基板のスキャン数および回転数が互いに同じである組み合わせを除外しておく請求項1または2記載のイオンビーム照射方法。
  4. (A)真空に排気される真空容器と、
    (B)前記真空容器内に収納されていて基板を保持するホルダと、
    (C)前記ホルダおよびそれに保持された基板を当該基板の中心部周りに回転させる回転機構と、
    (D)プラズマを生成するプラズマ生成部および当該プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出す引出し電極系を有していて、引き出したイオンビームを前記ホルダに保持された基板に照射するイオン源であって、前記引出し電極系は、イオンビームが引き出される領域とイオンビームが引き出されない領域とをX方向に所定の周期で交互に配列しており、かつ前記イオンビームが引き出される領域から、前記基板の位置において、前記X方向と実質的に直交するY方向において前記基板の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビームを引き出すイオン源と、
    (E)前記ホルダ、それに保持された基板および前記回転機構を、所定のスキャン波形で実質的に前記X方向に機械的に往復でスキャンするスキャン機構と、
    (F)前記X方向における前記イオンビームの電流密度分布を測定するビーム測定器と、
    (G)少なくとも前記回転機構および前記スキャン機構を制御する機能を有している制御装置とを備えているイオンビーム照射装置であって、
    前記制御装置は、
    (a)前記ビーム測定器で測定した前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求める電流密度分布演算手段と、
    (b)前記求めた電流密度分布および前記基板のスキャン波形を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記基板上の複数点におけるイオンビームの照射量密度を計算し、かつ当該照射量密度に基づいて前記基板上でのビーム照射量密度の均一性を計算して、前記基板のスキャン数および回転数の各組み合わせ時の前記計算したビーム照射量密度の均一性の全てを出力する均一性演算手段と、
    (c)前記ビーム照射量密度の均一性が出力された後、前記基板のスキャン数および回転数の複数の組み合わせの内の所定の組み合わせを選択する入力を受けて、当該選択された組み合わせを記憶する組み合わせ記憶手段と、
    (d)前記基板へのイオンビーム照射時に、前記組み合わせ記憶手段に記憶している前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせになるように、前記スキャン機構および前記回転機構を制御する駆動制御手段とを有している、ことを特徴とするイオンビーム照射装置。
  5. (A)真空に排気される真空容器と、
    (B)前記真空容器内に収納されていて基板を保持するホルダと、
    (C)前記ホルダおよびそれに保持された基板を当該基板の中心部周りに回転させる回転機構と、
    (D)プラズマを生成するプラズマ生成部および当該プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出す引出し電極系を有していて、引き出したイオンビームを前記ホルダに保持された基板に照射するイオン源であって、前記引出し電極系は、イオンビームが引き出される領域とイオンビームが引き出されない領域とをX方向に所定の周期で交互に配列しており、かつ前記イオンビームが引き出される領域から、前記基板の位置において、前記X方向と実質的に直交するY方向において前記基板の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビームを引き出すイオン源と、
    (E)前記ホルダ、それに保持された基板および前記回転機構を、所定のスキャン波形で実質的に前記X方向に機械的に往復でスキャンするスキャン機構と、
    (F)少なくとも前記回転機構および前記スキャン機構を制御する機能を有している制御装置とを備えているイオンビーム照射装置であって、
    前記制御装置は、
    (a)前記X方向における前記イオンビームの電流密度分布であって前記基板のスキャン数および回転数の決定に用いるものを記憶しておく電流密度分布記憶手段と、
    (b)前記記憶している前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求める電流密度分布演算手段と、
    (c)前記求めた電流密度分布および前記基板のスキャン波形を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記基板上の複数点におけるイオンビームの照射量密度を計算し、かつ当該照射量密度に基づいて前記基板上でのビーム照射量密度の均一性を計算して、前記基板のスキャン数および回転数の各組み合わせ時の前記計算したビーム照射量密度の均一性の全てを出力する均一性演算手段と、
    (d)前記ビーム照射量密度の均一性が出力された後、前記基板のスキャン数および回転数の複数の組み合わせの内の所定の組み合わせを選択する入力を受けて、当該選択された組み合わせを記憶する組み合わせ記憶手段と、
    (e)前記基板へのイオンビーム照射時に、前記組み合わせ記憶手段に記憶している前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせになるように、前記スキャン機構および前記回転機構を制御する駆動制御手段とを有している、ことを特徴とするイオンビーム照射装置。
  6. 真空に排気される真空容器と、
    前記真空容器内に収納されていて基板を保持するホルダと、
    前記ホルダおよびそれに保持された基板であってその上に複数の円柱状体が並べて形成されている基板を当該基板の中心部周りに回転させる回転機構と、
    プラズマを生成するプラズマ生成部および当該プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出す引出し電極系を有していて、引き出したイオンビームを前記ホルダに保持された基板に照射するイオン源であって、前記引出し電極系は、イオンビームが引き出される領域とイオンビームが引き出されない領域とをX方向に所定の周期で交互に配列しており、かつ前記イオンビームが引き出される領域から、前記基板の位置において、前記X方向と実質的に直交するY方向において前記基板の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビームを引き出すイオン源と、
    前記ホルダおよびそれに保持された基板を傾けて、前記基板の垂線と前記イオンビームの進行方向との成す角度である基板傾斜角を0度以上にすることのできる基板傾斜機構と、
    前記ホルダ、それに保持された基板、前記回転機構および前記基板傾斜機構を、所定のスキャン波形で実質的に前記X方向に機械的に往復でスキャンするスキャン機構と、
    前記X方向における前記イオンビームの電流密度分布を測定するビーム測定器とを備えているイオンビーム照射装置において、
    前記基板傾斜機構を用いて前記基板傾斜角を0度を除く所定の角度に設定し、
    前記ビーム測定器で測定した前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求め、
    前記求めた電流密度分布、前記基板のスキャン波形および前記所定の基板傾斜角を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記複数の円柱状体のそれぞれの全側面に対する前記イオンビームによる処理量を計算し、かつ当該処理量に基づいて、前記複数の円柱状体の側面に対する処理量均一性を計算し、
    前記計算した処理量均一性に基づいて、所望の処理量均一性が得られる前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを決定し、
    前記決定したスキャン数および回転数の組み合わせで前記基板にイオンビームを照射することを特徴とするイオンビーム照射方法。
  7. 真空に排気される真空容器と、
    前記真空容器内に収納されていて基板を保持するホルダと、
    前記ホルダおよびそれに保持された基板であってその上に複数の円柱状体が並べて形成されている基板を当該基板の中心部周りに回転させる回転機構と、
    プラズマを生成するプラズマ生成部および当該プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出す引出し電極系を有していて、引き出したイオンビームを前記ホルダに保持された基板に照射するイオン源であって、前記引出し電極系は、イオンビームが引き出される領域とイオンビームが引き出されない領域とをX方向に所定の周期で交互に配列しており、かつ前記イオンビームが引き出される領域から、前記基板の位置において、前記X方向と実質的に直交するY方向において前記基板の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビームを引き出すイオン源と、
    前記ホルダおよびそれに保持された基板を傾けて、前記基板の垂線と前記イオンビームの進行方向との成す角度である基板傾斜角を0度以上にすることのできる基板傾斜機構と、
    前記ホルダ、それに保持された基板、前記回転機構および前記基板傾斜機構を、所定のスキャン波形で実質的に前記X方向に機械的に往復でスキャンするスキャン機構と、
    前記X方向における前記イオンビームの電流密度分布であって前記基板のスキャン数および回転数の決定に用いるものを記憶しておく電流密度分布記憶手段とを備えているイオンビーム照射装置において、
    前記基板傾斜機構を用いて前記基板傾斜角を0度を除く所定の角度に設定し、
    前記記憶している前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求め、
    前記求めた電流密度分布、前記基板のスキャン波形および前記所定の基板傾斜角を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記複数の円柱状体のそれぞれの全側面に対する前記イオンビームによる処理量を計算し、かつ当該処理量に基づいて、前記複数の円柱状体の側面に対する処理量均一性を計算し、
    前記計算した処理量均一性に基づいて、所望の処理量均一性が得られる前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを決定し、
    前記決定したスキャン数および回転数の組み合わせで前記基板にイオンビームを照射することを特徴とするイオンビーム照射方法。
  8. 前記イオン源は、前記ホルダに保持された基板に対して、当該基板の位置における寸法が、当該基板および当該基板がスキャンされる領域を包含する大きさよりも大きい寸法のイオンビームを照射するものである請求項1、2、3、6または7記載のイオンビーム照射方法。
  9. (A)真空に排気される真空容器と、
    (B)前記真空容器内に収納されていて基板を保持するホルダと、
    (C)前記ホルダおよびそれに保持された基板であってその上に複数の円柱状体が並べて形成されている基板を当該基板の中心部周りに回転させる回転機構と、
    (D)プラズマを生成するプラズマ生成部および当該プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出す引出し電極系を有していて、引き出したイオンビームを前記ホルダに保持された基板に照射するイオン源であって、前記引出し電極系は、イオンビームが引き出される領域とイオンビームが引き出されない領域とをX方向に所定の周期で交互に配列しており、かつ前記イオンビームが引き出される領域から、前記基板の位置において、前記X方向と実質的に直交するY方向において前記基板の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビームを引き出すイオン源と、
    (E)前記ホルダおよびそれに保持された基板を傾けて、前記基板の垂線と前記イオンビームの進行方向との成す角度である基板傾斜角を0度以上にすることのできる基板傾斜機構と、
    (F)前記ホルダ、それに保持された基板、前記回転機構および前記基板傾斜機構を、所定のスキャン波形で実質的に前記X方向に機械的に往復でスキャンするスキャン機構と、
    (G)前記X方向における前記イオンビームの電流密度分布を測定するビーム測定器と、
    (H)少なくとも前記回転機構、前記スキャン機構および前記基板傾斜機構を制御する機能を有している制御装置とを備えているイオンビーム照射装置であって、
    前記制御装置は、
    (a)前記基板傾斜機構を制御して、前記基板傾斜角を0度を除く所定の角度に制御する基板傾斜角制御手段と、
    (b)前記ビーム測定器で測定した前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求める電流密度分布演算手段と、
    (c)前記求めた電流密度分布、前記基板のスキャン波形および前記所定の基板傾斜角を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記複数の円柱状体のそれぞれの全側面に対する前記イオンビームによる処理量を計算し、かつ当該処理量に基づいて、前記複数の円柱状体の側面に対する処理量均一性を計算して、前記基板のスキャン数および回転数の各組み合わせ時の前記処理量均一性を出力する均一性演算手段と、
    (d)前記処理量均一性が出力された後、前記基板のスキャン数および回転数の複数の組み合わせの内の所定の組み合わせを選択する入力を受けて、当該選択された組み合わせを記憶する組み合わせ記憶手段と、
    (e)前記基板へのイオンビーム照射時に、前記組み合わせ記憶手段に記憶している前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせになるように、前記スキャン機構および前記回転機構を制御する駆動制御手段とを有している、ことを特徴とするイオンビーム照射装置。
  10. (A)真空に排気される真空容器と、
    (B)前記真空容器内に収納されていて基板を保持するホルダと、
    (C)前記ホルダおよびそれに保持された基板であってその上に複数の円柱状体が並べて形成されている基板を当該基板の中心部周りに回転させる回転機構と、
    (D)プラズマを生成するプラズマ生成部および当該プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出す引出し電極系を有していて、引き出したイオンビームを前記ホルダに保持された基板に照射するイオン源であって、前記引出し電極系は、イオンビームが引き出される領域とイオンビームが引き出されない領域とをX方向に所定の周期で交互に配列しており、かつ前記イオンビームが引き出される領域から、前記基板の位置において、前記X方向と実質的に直交するY方向において前記基板の寸法以上の範囲で実質的に均一な電流密度分布のイオンビームを引き出すイオン源と、
    (E)前記ホルダおよびそれに保持された基板を傾けて、前記基板の垂線と前記イオンビームの進行方向との成す角度である基板傾斜角を0度以上にすることのできる基板傾斜機構と、
    (F)前記ホルダ、それに保持された基板、前記回転機構および前記基板傾斜機構を、所定のスキャン波形で実質的に前記X方向に機械的に往復でスキャンするスキャン機構と、
    (G)少なくとも前記回転機構、前記スキャン機構および前記基板傾斜機構を制御する機能を有している制御装置とを備えているイオンビーム照射装置であって、
    前記制御装置は、
    (a)前記基板傾斜機構を制御して、前記基板傾斜角を0度を除く所定の角度に制御する基板傾斜角制御手段と、
    (b)前記X方向における前記イオンビームの電流密度分布であって前記基板のスキャン数および回転数の決定に用いるものを記憶しておく電流密度分布記憶手段と、
    (c)前記記憶している前記電流密度分布に基づいて、前記基板の位置での前記イオンビームの前記X方向における電流密度分布を求める電流密度分布演算手段と、
    (d)前記求めた電流密度分布、前記基板のスキャン波形および前記所定の基板傾斜角を用いて、かつ前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせを複数の組み合わせで変えて、各組み合わせについて、前記複数の円柱状体のそれぞれの全側面に対する前記イオンビームによる処理量を計算し、かつ当該処理量に基づいて、前記複数の円柱状体の側面に対する処理量均一性を計算して、前記基板のスキャン数および回転数の各組み合わせ時の前記処理量均一性を出力する均一性演算手段と、
    (e)前記処理量均一性が出力された後、前記基板のスキャン数および回転数の複数の組み合わせの内の所定の組み合わせを選択する入力を受けて、当該選択された組み合わせを記憶する組み合わせ記憶手段と、
    (f)前記基板へのイオンビーム照射時に、前記組み合わせ記憶手段に記憶している前記基板のスキャン数および回転数の組み合わせになるように、前記スキャン機構および前記回転機構を制御する駆動制御手段とを有している、ことを特徴とするイオンビーム照射装置。
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