以下に、本発明の作業車両の一実施の形態の苗移植機について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
まず、図1〜図6を用いて、本発明の作業車両の一実施の形態の乗用型田植機1の構成を説明する。
図1及び図2は本実施の形態にかかる苗移植機1の右側面図と平面図である。
この苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して植付装置52が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
図1、図2に示す通り、走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸14,14に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、他方、そのメインフレーム15の後端左右中央部に水平に設けた後輪上下動支点軸181を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に後輪11,11が取り付けられている。
尚、左右後輪ギヤケース18,18には、ミッションケース12の後壁から突出して設けられ、左右後輪ギヤケース18,18に連結された左右後輪伝動軸18a,18aにて動力が伝達される構成となっている。
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST(静油圧式無段階変速装置)23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内のトランスミッション(変速装置)により変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが左右後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右後輪11,11を駆動する。
また、ミッションケース12の右側側面より取出された外部取出動力は、植付伝動軸26によって植付装置52へ伝動される。尚、施肥装置5の肥料繰出し機構へは、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸にて取出されて伝動される。
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に操縦座席31が設置されている。操縦座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するステアリングハンドル34が設けられている。なお35はハンドルシャフトである。このフロントカバー32内には、リザーバタンク16を設け、HST23とパイプ19で連結して高い位置からオイルをHST23に供給するようになっている。
ステアリングハンドル34の右側には、植付装置52の上昇・停止(中立)・下降・植付入の各動作を設定するための植付昇降レバー33が設けられている。
また、ステアリングハンドル34の左側には、走行車体2の前進、停止(アイドリング)、後進、速度等を設定する変速レバー36が設けられている。また、操縦座席31の前方の足元には、走行車体2の走行速度を、路上での高速走行が可能な路上走行用(走行用)、走行停止用(中立用)、及び、圃場での低速走行が可能な植付作業用(植付用)の何れかに切替可能な副変速レバー500(図10参照)が設けられている。
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ37になっている。
フロアステップ37の左右前部には複数の貫通孔が形成されており、操縦座席31に着座して機体を操縦する操縦者が左右前輪10,10を見通せることができて操縦が容易な構成となっていると共に、該ステップ37を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した、背面視で門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、後部先端側には縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、植付装置52に回転自在に指示された連結軸が挿入連結され、連結軸を中心として植付装置52がローリング自在に連結されている。
メインフレーム15に基部を回動自在に枢支した昇降油圧シリンダ46の先端を、上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部に連結して設けており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、植付装置52がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
なお、昇降油圧シリンダ46の動作は、バルブ切替ユニット47により制御される。
尚、フロアステップ37の左右両側には、作業者が機体に乗り降りする時に足を載せる補助ステップ28,28が設けられている。
次に、図3〜図5を用いて、本実施の形態の苗移植機1の前部の内部構造を中心に説明する
図3は、本実施の形態の苗移植機1の前部の主要な内部構造を説明するための拡大右側面図である。図4は、図3に示す苗移植機1における、ステアリングアーム200及びその周辺の構造を示す概略平面図である。また、図5は、切替カム74及びその周辺の構造を説明するための概略斜視図である。
尚、図3では、植付装置52の上昇・停止・下降・植付入の各動作を設定するための植付昇降レバー33は、「植付入」の動作を設定する位置に設定されている状態を示している。
また、図5は部材の配置関係を理解しやすくするために描かれた図であって、寸法、配置、形状等誇張して描いた模式図である。
図3、図4に示す通り、ステアリングハンドル34の操舵を受けて前輪10、10を回動させる、平面視で左右線対称の略半円形状を成すステアリングアーム(ピットマンアーム)200が走行車体2の前方底側に設けられている。即ち、ステアリングハンドル34の回転に対応して、ハンドルシャフト35が回動し、ピニオン機構を介して、あるいはパワステ機構を介して、ステアリングアーム200が回動軸201を中心として回動する。
また、図4に示す通り、ステアリングアーム200の左右両端側には、左右一対のタイロッド60L、60Rが回動可能に取り付けられ、それぞれのタイロッド60L、60Rは左右の前輪ファイナルケース13,13に取り付けられているナックルアームに連結されている。
これによって、ステアリングハンドル34を操舵することによって、右及び左の前輪10を左右に走行操作できるようになっている。
また、ステアリングアーム200の後端突出部202には、図3、4に示す様に、上下方向に後端ピン203が固定されており、その後端ピン203の上端側には、オートリフトケーブル71の一端部71aが回動自在に連結されており、また、その後端ピン203の下端側には、オートディファレンシャルスプリング100の一端が連結されている。
ステアリングハンドル34を回してステアリングアーム200が回動軸201を中心として回動すると、オートディファレンシャルスプリング100が引っ張られ、それに連動してディファレンシャルアーム(図示省略)が回動し、左右一対の前輪10、10に対してディファレンシャル機構(図示省略)を作動させる。これにより、作業者がステアリングハンドル34を操作して、走行車体2が左右何れの方向に旋回を開始した場合でも、ディファレンシャル機構を自動的に作動させることが出来る。
なお、本実施の形態のディファレンシャル機構は、左右一対の前輪10、10のそれぞれの回転数の差を、左右一対の前輪10、10のそれぞれにかかる負荷に応じて調整する機構である。
このように、ステアリングアーム200の後端突出部202が、オートリフトケーブル71の一端部71aの連結と、オートディファレンシャルスプリング100の連結の両方を兼ねた構成としたことにより、部品点数の削減や総重量の削減を図ることが出来る。
また、ステアリングハンドル34を回してステアリングアーム200が回動軸201を中心として回動した場合のオートリフトケーブル71に関する動作については、図5等を用いて更に後述する。
また、ステアリングアーム200の前部の半円形の円周端部205近傍には、ステアリングアーム200の左右線対称の対称軸204を基準として、回動軸201を中心に左右方向にそれぞれ第1角度θ1だけずれた位置で、且つ回動軸201から等距離の位置に右第1回動軸211R、左第1回動軸211Lを有する左右一対の第1カム210L、210Rが回動可能に配置されている。
なお、第1角度θ1は、後述するステアリング切れ角θ2に比べて小さく設定されている(図7(c)参照)。
左右一対の第1カム210L、210Rは、平面視で前端部が半円形の細長形状の板状部材であり、右第1回動軸211R、左第1回動軸211Lの軸芯から前端部の先端までが、第1寸法L1(図7(a)参照)を有し、回動軸201の軸芯を中心として半円形の円周端部205の半径方向に沿ってステアリングアーム200上に配置されている。また、左右一対の第1カム210L、210Rの前端部の先端は、ステアリングアーム200の前部の半円形の円周端部205から第1突き出し寸法LL1(図7(a)参照)だけ突き出して配置されている。
また、ステアリングアーム200の上面には、左側の第1カム210Lの側面と右側の第1カム210Rの側面とが対向する側、即ち、左右線対称の対称軸204に面する側に、それぞれの回動を規制する左右一対の第1回動規制リブ212L、212Rが、左右一対の第1カム210L、210Rの側面に当接可能に立設されている。
また、ステアリングアーム200の上面には、左右一対の第1カム210L、210Rを基準として、左右一対の第1回動規制リブ212L、212Rの位置と反対側の位置に、左右一対の第1圧縮スプリング213L、213Rが配置されている。この左右一対の第1圧縮スプリング213L、213Rの一端は、左右一対の第1カム210L、210Rの側面に固定され、他端はステアリングアーム200の上面に固定されている。
また、左右一対の第1圧縮スプリング213L、213Rは、左右一対の第1カム210L、210Rを、左右一対の第1回動規制リブ212L、212Rに当接させる方向に常時押圧力を作用させており、左右一対の第1カム210L、210Rの、左右一対の第1回動規制リブ212L、212Rと反対側への回動により、更に圧縮可能に構成されている。
即ち、上記構成により、左第1カム210Lは、左第1回動軸211Lを回動中心として、平面視で、左第1圧縮スプリング213Lの弾性力に抗して反時計回りには回動可能であるが、左第1回動規制リブ212Lへの当接により時計回りには回動出来ない。
また、上記構成により、右第1カム210Rは、右第1回動軸211Rを回動中心として、平面視で、右第1圧縮スプリング213Rの弾性力に抗して時計回りには回動可能であるが、右第1回動規制リブ212Rへの当接により反時計回りには回動出来ない。
一方、ステアリングアーム200の対称軸204の延長線上であって、ステアリングアーム200の前方には、平面視で、細長板状の板状部材の後端部が半円形を成し、その板状部材の中央部に位置するアーム回動軸231により、時計回り及び反時計回りについて回動可能に支持された回動アーム230が、左右一対の第1カム210L、210Rに当接可能に配置されている。
また、この回動アーム230の前端部には、自動下降ケーブル240の一端部240aが連結されている。
即ち、上記構成により、ステアリングアーム200の回動に伴って、左第1回動規制リブ212L又は右第1回動規制リブ212Rの当接により回動が規制された左第1カム210L又は右第1カム210Rの先端側が、回動アーム230の後端部の先端側に当接することで、回動アーム230がアーム回動軸231を中心として、時計回り又は反時計回りに回動すると、回動アーム230の前端部に連結された自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られる。なお、自動下降ケーブル240については、更に後述する。
なお、図3において、71bは上述したオートリフトケーブル71の他端部である。また、このオートリフトケーブル他端部71bは旋回切替操作部73に回動可能に連結されている。また、74は切替カムであり、751はその切替カム74の位置決め溝であり、76はバックリフトアームであり、77は位置決めローラーであり、78は切替カム74を前方(図3では、右方向)へ、即ち、右側面視(図3参照)で軸80を回動中心として反時計回りに付勢するスプリングである。
また、99はケーブル固定プレートであり、その根本部が切替カム74の上端側に固定されると共に、先端部が走行車体2の前側に突き出している。ケーブル固定プレート99の先端側には、自動下降ケーブル240の他端部240bが連結されており、その後方には、オートリターンケーブル150の他端部150bが連結されている。なお、オートリターンケーブル150の一端部(図示省略)は、昇降油圧シリンダ46の伸縮自在に可動する可動軸46a(図1参照)側に連結されている。
なお、本実施の形態のステアリングハンドル34は、本発明の操舵部材の一例にあたり、本実施の形態のステアリングアーム200は、本発明の車輪方向変更部材の一例にあたる。また、本実施の形態の植付装置52は、本発明の植付装置の一例にあたり、本実施の形態の昇降リンク装置3と昇降油圧シリンダ46等を含む構成は、本発明の昇降装置の一例にあたる。
また、本実施の形態の植付昇降レバー33と切替カム74と軸80とブラケット81とケーブル固定プレート99等を含む構成は、本発明の操作レバー部の一例にあたる。また、本実施の形態のオートリフトケーブル71とバックリフトアーム76と位置決めローラー77とスプリング78等を含む構成は、本発明の自動上昇機構の一例にあたる。また、本実施の形態の自動下降ケーブル240は、本発明の連結部材の一例にあたる。
また、本実施の形態の左右一対の第1カム210L、210Rと左右一対の第1回動規制リブ212L、212Rと左右一対の第1圧縮スプリング213L、213Rと回動アーム230等を含む構成は、本発明の自動下降機構の一例にあたる。また、本実施の形態の左右一対の第1カム210L、210Rは、本発明の第1カムの一例にあたる。また、本実施の形態のオートディファレンシャルスプリング100は、本発明の第2連結部材の一例にあたる。
次に、図3、図5を用いて、切替カム74及びその周辺の構成を中心に更に説明する。
図3に示す通り、植付装置52の上昇・停止・下降・植付入の各動作を設定するための植え付け植付昇降レバー33の下端33aは、ブラケット81を介して、軸80に回動可能に取り付けられているとともに、このブラケット81には切替カム74の上端が固定されている。従って、植付昇降レバー33を移動させることによって、切替カム74を回動出来るようになっている。また、切替カム74は上述した通り前方方向にスプリング78(図3参照)によって付勢されている(図3、図5上、矢印A方向)。
また、図3、図5に示す通り、この切替カム74は中央に、横長形状の窓75が穿設されている。この窓75の上側端縁には、4個の位置決め溝751(図5中、左から順に第1溝751a、第2溝751b、第3溝751c、第4溝751d)が並んで形成されている。この窓75には、走行車体2の幅方向に水平に配置された位置決めローラー77の先端が挿入されている。
即ち、作業者が、植付昇降レバー33を、例えば、「上昇」、「停止」、「下降」、「植付入」の順に移動させることによって、位置決めローラー77の先端は、第1溝751a、第2溝751b、第3溝751c、第4溝751dの順に嵌合し、切替カム74を、植付昇降レバー33の「上昇」、「停止」、「下降」、「植付入」の4種類の位置に対応する位置に移動させることが出来る。
この切替カム74の移動は、ワイヤーやロッド、アーム等を介して、植付装置52の昇降油圧シリンダ46への油路を切り替えるバルブ切替ユニット47(図1参照)の切替動作に連動しているとともに、植付装置52に設けられた植付爪521(図1参照)等による植付動作を入切する植付クラッチ(図示省略)の入切動作に連動している。その結果、その連動によって、切替カム74の移動によって、植付装置52の昇降、停止、下降、植付入がそれぞれ制御されるようになっている。
尚、この位置決めローラー77は、後述するバックリフトアーム76に固定されており、バックリフトアーム76の後端部に位置する支持軸79によって回動可能に支持されている。
また、この位置決めローラー77は、上方方向にスプリング90で常時付勢されており、4個の位置決め溝751(第1溝〜第4溝751a、751b、751c、751d)のいずれかに上半分程度嵌められるが、後述する様々な力によってスプリング90の弾性力に対抗して下方方向へ移動しうるようになっている。尚、この様々な力には、例えば、後述するオートリフトケーブル71による引っ張り力、自動下降ケーブル240による引っ張り力などが含まれる(図3、図5参照)。
また、図5に示す通り、この位置決めローラー77は、走行車体2の左右方向に水平に配置されているが、切替カム74の内側(図5上では切替カム74の奥側)の部分には先ず、バックリフトアーム76が固定されている。さらに、その奥側にはバックリフト入切レバー82が回動可能に連結されている。そして、このバックリフトアーム76が支持軸79に回動可能に連結されているので、位置決めローラー77を介してバックリフトアーム76に連結されているバックリフト入切レバー82も支持軸79を軸中心として回動可能な構成となっている。
さらに、図5に示す通り、切替カム74とバックリフトアーム76との間の隙間には、旋回切替操作部73が配置されている。そして、この旋回切替操作部73と、バックリフトアーム76は、各後端部がそれぞれ共通の支持軸79に回動自在に連結されている。
そして、図3、図5に示す通り、この旋回切替操作部73の前端には、ピン721を介して、上述したとおり、オートリフトケーブル71の他端部であるオートリフトケーブル他端部71bが回動可能に連結されている。
従って、ステアリングアーム200の動きに連動して、オートリフトケーブル71を介して、旋回切替操作部73が支持軸79を中心として上下方向に移動するようになっている。さらに、この旋回切替操作部73の中央位置には第1孔732が開けられ、その第1孔732にロックピン731が通常嵌め込まれている(図3、図5参照)。このロックピン731はバックリフトアーム76に固定されている。従って、通常は、旋回切替操作部73の上下方向への移動に従って、バックリフトアーム76も支持軸79を中心として上下に移動するようになっている。
そして、そのバックリフトアーム76は位置決めローラー77に固定されているので、バックリフトアーム76の上下方向への移動に従って、位置決めローラー77も上下方向に移動することになっている。もちろん、この旋回切替操作部73は、作業者が手動によって走行車体2の左右方向(図3の紙面に垂直方向)に移動出来、任意にロックピン731から外すことが出来るようになっている。
尚、旋回切替操作部73をロックピン731から外すことによって、ステアリングアーム200の動きに連動して位置決めローラー77が下方へ移動するという自動連動機能が停止されるので、作業者がステアリングハンドル34を回転させて旋回走行する際に、自動的に植付装置52が上昇することは無い。
この位置決めローラー77が下方へ移動すると、位置決め溝751から外れるので、スプリング78の付勢力により、切替カム74は矢印A方向(図3、図5参照)に回動するようになっている。
他方、図3、図5に示す通り、バックリフト入切レバー82には、逆L字状の切り欠き孔84が穿設されている。即ち、縦長部分と横長部分とでこの逆L字状の切り欠き孔84は構成されている。その逆L字状の切り欠き孔84には、走行車体2の左右方向において略水平に配置されたバー83の先端が挿入されている。図6に示す通り、作業者の手動操作により変速レバー36が「停止位置」の後進側(後進アイドリング位置)に設定されたとき、その変速レバー36の移動に対応して回動するロッド36−1が引き上げられ、ケーブル36−2を通じて、バー83が下方向に移動するようになっている。ここで、図6は、変速レバー36の略示平面図と、変速レバーとバー83の関係を示す説明図である。
従って、このバー83が逆L字状の切り欠き孔84の横長部分に位置しているときは、バー83が下方向に移動することによって、バックリフト入切レバー82は押されて下方向に移動する。上述したように、このバックリフト入切レバー82は位置決めローラー77に連結されているので、位置決めローラー77は下方に移動することになる。
一方、このバー83が逆L字状の切り欠き孔84の縦長部分に位置しているときは、バー83が下方向に移動しても、縦長部分を移動するに止まるので、バックリフト入切レバー82を押し下げる力は働かず、位置決めローラー77も下方へ移動することにならない。
さらに、上述した通り、バックリフト入切レバー82は位置決めローラー77に回動可能に連結されているので、作業者が手でバックリフト入切レバー82を回動して適宜位置決め(図5の矢印Bに示す通り後方へ押し込むか、それとも図5の矢印Cに示す通り前方へ引き出す)することによって、上述した、後進走行の際、バックリフト入切レバー82を、そして、位置決めローラー77を自動的に下方へ押し下げるモード(図5の矢印Bに示す通り後方へ押し込んだときに対応するモード)と、押し下げないモード(図5の矢印Cに示す通り前方へ引き出したときに対応するモード)を、作業者が予め任意に選択できるようになっている。
次に、オートリターンケーブル150について更に説明する。
上記の構成により、例えば、植付作業中に、作業者がステアリングハンドル34の旋回操作を開始すると、ステアリングアーム200の旋回開始の動きに連動して、オートリフトケーブル71を介して、位置決めローラー77が下方へ移動する。これにより、位置決めローラー77が位置決め用の第4溝751dから外れるので、スプリング78の付勢力により、切替カム74は矢印A方向(図3、図5参照)に回動し、位置決めローラー77は、位置決め用の第1溝751aに嵌合すると共に、植付昇降レバー33は、自動的に「上昇」位置に移動する。
切替カム74の上記移動により、ワイヤーやロッド、アーム等を介して、バルブ切替ユニット47(図1参照)を切り替えることにより、昇降油圧シリンダ46の可動シャフト46aが縮む方向に移動する。この可動シャフト46aの動きに連動して、植付装置52が所定の高さまで上昇したことをセンサ(図示省略)で検知すると、昇降油圧シリンダ46の可動シャフト46aは自動停止される構成である。
一方、上述した通り、オートリターンケーブル150は、植付装置52が「最上げ状態」のとき、昇降油圧シリンダ46の可動シャフト46a(図1参照)が縮むことで、昇降油圧シリンダ46の可動軸46aと繋がっているオートリターンケーブル150の一端部(図示省略)が引かれ、植付昇降レバー33を「上昇」位置から「停止(中立)」位置に移動させる構成である。更に、オートリターンケーブル150の一端部が所定寸法だけ引っ張られることにより、ケーブル固定プレート99に連結された、オートリターンケーブル150の他端部150bが下方に引っ張られて、スプリング78の弾性力に対抗して、切替カム74が矢印D方向(図3参照)に回動し、位置決めローラー77が、位置決め用の第1溝751aから第2溝751bに移動する様に構成されている。
これにより、昇降油圧シリンダ46の可動シャフト46aが縮んで、植付装置52が上昇すると、可動シャフト46aが自動停止される直前において、オートリターンケーブル150が引っ張られて、植付昇降レバー33を自動的に「上昇」位置から「停止」位置に移動させることが出来ると共に、センサ(図示省略)により植付装置52の上昇が停止される。
次に、主として図7(a)〜図7(d)、図8を参照しながら、本実施の形態にかかる苗移植機1の動作を説明する。
図7(a)〜図7(d)は、左右一対の第1カム210L、210R、及び回動アーム230等の動作を説明する平面図である。図8は、苗移植機1の圃場における走行軌跡400を示した模式図であり、401は移植された苗の位置を示している。なお、図7(a)〜図7(d)では、図面を見易くするために、ステアリングアーム200の両側に連結された左右一対のタイロッド60L、60R(図4参照)の図示を省略した。
(A−I):旋回開始の動作
作業者は、走行車体2を変速レバー36を「前進」に入れて(図6参照)、圃場を走行させつつ、植付装置52を下降させた状態で苗を圃場に植え付けていく。この植付作業状態では植付昇降レバー33は図3に示す通り、「植付入」の位置に設定されている。従って、この植付昇降レバー33に連結されている切替カム74は図3に示す位置、即ち、位置決めローラー77が第4溝751d(図5)に入った状態の位置になっている。
ここで、旋回切替操作部73は、自動切替モードに設定されているものとする。即ち、図3、図5に示す通り、旋回切替操作部73の第1孔732に、バックリフトアーム76に固定されたロックピン731が嵌め込まれているとする(作業者が手動で、この旋回切替操作部73を左右に動かし、第1孔732にロックピン731を入れたり、外したりする)。なお、作業者が手動で、この旋回切替操作部73を左右に動かし、第1孔732からロックピン731を外しておくことで、植付装置52を旋回動作に連動して自動的に上昇させない様に設定することが可能である。
圃場の端に到達すると、図8に示す通り、作業者はステアリングハンドル34を右回に回し始める(図8の第1地点411参照)。そのステアリングハンドル34の回動動作に伴って、ハンドルシャフト35が回動し、ピニオン機構を介して、あるいはパワステ機構を介して、ステアリングアーム200が、回動軸201を中心に右回りに回動を開始する(図7(a)、図7(b)参照)。なお、このステアリングアーム200が、回動軸201を中心に右回りに回動を開始する動作は、本発明の「車輪方向変更部材の旋回開始の動作」の一例にあたる。
そのステアリングアーム200の回動によって、そのステアリングアーム200の両端に回動可能に取り付けられている2本のタイロッド60L、60R(図4参照)が移動し、それぞれのタイロッド60L、60Rが取り付けられている、左右の前輪ファイナルケース13,13のナックルアーム(図示省略)が回動する。
このように、ステアリングハンドル34を操舵することによって、右及び左の前輪10を回動させ、走行車体2の旋回を開始する。
このとき、ステアリングアーム200の、平面視で時計回りの回動に伴って(図7(b)の矢印E参照)、ステアリングアーム200の後端突出部202に連結されているオートリフトケーブル71の一端部71aが左前方向に移動する(図7(b)参照)。
その結果、オートリフトケーブル71が引っ張られて、オートリフトケーブル他端部71bが連結されている旋回切替操作部73(図3参照)が下方に移動すると共に、位置決めローラー77が下方へ移動する。これにより、位置決めローラー77が、それまで嵌め込まれていた位置決め用の第4溝751dから外れるので、スプリング78の付勢力により、切替カム74は矢印A方向(図3、図5参照)に回動し、位置決めローラー77は、位置決め用の第1溝751aに嵌合すると共に、植付昇降レバー33は、自動的に「上昇」位置に移動する。
またこのとき、ステアリングアーム200の、平面視で時計回りの回動に伴って、ステアリングアーム200の後端突出部202に連結されているオートディファレンシャルスプリング100が左前方に引っ張られ、それに連動してディファレンシャルアーム(図示省略)が回動し、左右一対の前輪10、10に対してディファレンシャル機構(図示省略)が自動的に作動状態となる。
これにより、旋回中において、自動的にディファレンシャル機構が作動するので、操作性が向上すると共に旋回性能が向上する。
その結果、切替カム74の回動(図3の矢印A参照)に伴い、ワイヤーやロッド、アーム等を介して、植付クラッチ(図示省略)が「切り」側へ切り替わり、植付装置52による植付動作が停止されるとともに、植付装置52の昇降油圧シリンダ46への油路を切り替えるバルブ切替ユニット47が「上昇」側へ切り換わり、植付装置52が上方へ移動する。植付装置52が所定の高さまで上昇したことをセンサ(図示省略)で検知すると、植付装置52の上昇は自動停止する。
更に、昇降油圧シリンダ46の可動シャフト46aが自動停止される直前において、その可動シャフト46a側に連結されたオートリターンケーブル150の一端部が所定寸法だけ引っ張られることにより、ケーブル固定プレート99に連結された、オートリターンケーブル150の他端部150bが下方に引っ張られて、スプリング78の弾性力に対抗して、切替カム74が軸80を中心に矢印D方向(図3参照)に回動し、位置決めローラー77が、位置決め用の第1溝751aから第2溝751bに移動する。また、これと同時に、植付昇降レバー33が自動的に「上昇」位置から「停止」位置に移動する。
一方、ステアリングアーム200が、回動軸201を中心に平面視で時計回りに回動を開始し始めると(図7(b)の矢印E参照)、左第1カム210Lが回動アーム230に接近し、左第1カム210Lの先端側が回動アーム230の後端部の先端側に当接すると、回動アーム230の押圧力で左第1圧縮スプリング213Lが圧縮される様に設定されていることにより、左第1カム210Lは、平面視で、左第1回動軸211Lを回動中心として反時計回りに回動する(図7(b)の矢印G参照)。
図8に示す走行軌跡400に沿って右回りに旋回させるために、作業者は、更に、ステアリングアーム200を右回りにステアリング切れ角θ2まで回動させる(図7(c)のθ2参照)。
ステアリングアーム200を右回りにステアリング切れ角θ2まで回動させることにより、左第1カム210Lは、回動アーム230との当接を終えて離れていくと共に、左第1圧縮スプリング213Lの弾性力により、左第1回動軸211Lを回動中心として時計回りに回動し(図7(c)の矢印H参照)、左第1回動規制リブ212Lに当接して、左第1回動軸211Lの回動を停止する。
これにより、回動アーム230は、左第1カム210Lと当接しても、回動アーム230の回動は回避され、自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られることは無い。
上記構成により、作業者が圃場の端でステアリングハンドル34を切り、旋回動作を開始すると(図8の第1地点411参照)、自動的に植付装置52の植付動作が停止するとともに、植付装置52が上昇する。これによって、作業者が一々植付昇降レバー33を操作しなくてもよくなる。
(A−II):旋回終了後の動作
作業者は、ステアリングアーム200のステアリング切れ角θ2(図7(c)のθ2参照)を一定期間維持した後、走行車体2が直進走行を開始する位置の手前で、即ち、第2地点412(図8参照)で、ステアリングハンドル34の左回りへの切り返し動作を開始する。
そのステアリングハンドル34の回動動作に伴って、ハンドルシャフト35が回動し、ピニオン機構を介して、あるいはパワステ機構を介して、ステアリングアーム200が、回動軸201を中心に左回りに回動を開始する(図7(c)、図7(d)の矢印F参照)。なお、このステアリングアーム200が、回動軸201を中心に左回りに回動を開始する動作は、本発明の「車輪方向変更部材の旋回終了後の動作」の一例にあたる。
そして、ステアリングアーム200の上記左回りの回動によって、そのステアリングアーム200の両端に回動可能に取り付けられている2本のタイロッド60L、60R(図4参照)が移動し、それぞれのタイロッド60L、60Rが取り付けられている、左右の前輪ファイナルケース13,13のナックルアーム(図示省略)が回動する。
このように、ステアリングハンドル34を操舵することによって、右及び左の前輪10を徐々に直進方向に回動させ、走行車体2の走行を直進方向に切り替えていく。
このとき、ステアリングアーム200が、回動軸201を中心に平面視で反時計回りに回動を開始し(図7(c)の矢印F参照)、ステアリングアーム200の切れ角が上述した第1角度θ1(図4、図7(d)参照)に近づくと、左第1カム210Lの先端側が回動アーム230の後端部の先端側に当接する(図7(d)参照)。このとき、左第1回動規制リブ212Lが左第1カム210Lの時計回りの回動を規制しているので、回動アーム230は、左第1カム210Lに押されて、平面視で、アーム回動軸231を中心として時計回りに回動する(図7(d)の矢印J参照)。これにより、回動アーム230の前端部に連結された自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られる。
これに連動して、自動下降ケーブル240の他端部240bが連結されたケーブル固定プレート99と、切替カム74とが、右側面視で、軸80を回動中心として時計回りに回動すると共に(図3の矢印D参照)、位置決めローラー77が、それまで嵌め込まれていた位置決め用の第2溝751bから第3溝751c(図5参照)に移動する。また、これと同時に、植付昇降レバー33が自動的に「停止」位置から「下降」位置に移動する。この様に、第1角度θ1が、ステアリング切れ角θ2に比べて小さく設定されていることにより(図7(c)参照)、植付装置52を、旋回後に下降させることが出来る。
その後、左第1カム210Lが回動アーム230の前を通過した後は、上記当接による自動下降ケーブル240の一端部240aの引っ張り状態は直ちに解消されるので、切替カム74の位置決めローラー77は、第3溝751cに位置した状態を維持する。そして、ステアリングアーム200は、直進走行時の位置(走行車体2を直進走行させる位置)に戻る(図7(a)参照)。
その結果、切替カム74の回動(図3の矢印D参照)に伴い、ワイヤーやロッド、アーム等を介して、植付装置52の昇降油圧シリンダ46への油路を切り替えるバルブ切替ユニット47が「下降」側へ切り換わり、植付装置52が下降位置まで移動する。
またこのとき、ステアリングアーム200の、平面視で反時計回りの回動に伴って、ステアリングアーム200の後端突出部202に連結されているオートディファレンシャルスプリング100が元の状態に戻るので、左右一対の前輪10、10に対してディファレンシャル機構(図示省略)が、自動的に、作動状態から非作動状態に切り替わる。
これにより、従来の苗移植機の様に、旋回終了後において、植付装置を下降位置まで移動させるために、植付昇降レバーを「下降」位置まで強制的に移動させる専用のモータ、及びそのモータの動作を制御するためのセンサなどを必要とせず、作業者によるステアリングハンドルの操作で、植付装置52を上昇及び下降させることが出来る。
また、自動下降ケーブル240の一端部240aを、ステアリングアーム200に直接つなぐ構成とせず、ステアリングアーム200上に回動可能に設けられた左右一対の第1カム210L、210Rが、回動アーム230に当接することで、自動下降ケーブル240の一端部240aを引っ張る構成としたことにより、自動下降ケーブル240により植付装置52が「下降」位置に位置している状態でも、作業者が、手動で、植付昇降レバー33を「停止」位置、或いは「上昇」位置に操作することが出来る。
また、左右一対の第1回動規制リブ212L、212R、及び左右一対の第1圧縮スプリング213L、213Rを設けたことにより、ステアリングハンドル34を切り始めたときは、左右一対の第1カム210L、210Rの何れかが回動アーム230に当接しても、回動アーム230の回動は回避され、ステアリングハンドル34を戻し始めたときに、左右一対の第1カム210L、210Rの何れかが回動アーム230に当接した場合にのみ、回動アーム230の回動を開始させることが出来るので、ステアリングハンドル34の旋回動作中(図8の第1地点411〜第2地点412の走行期間中)に植付装置52が自動的に下降することが無い。
また、非旋回中において、ディファレンシャル機構が自動的に非作動状態となるので、操作性が向上すると共に走行性能が向上する。
なお、旋回終了後の苗の植付開始位置が、隣接条の植付終了位置に一致する様に、走行車体2が第3地点413に達すると、作業者は、手動で植付昇降レバー33を「下降」位置から「植付入」位置に操作する。これにより、植付クラッチが入り、植付装置52に設けられた植付爪521が回転し始め、苗の植え付けが始まる。
(実施の形態2)
ここでは、本発明の作業車両の他の例としての苗移植機1について説明する。
上記実施の形態1では、ステアリングハンドル34の操作に連動させて、植付装置52を自動で下降させ、その後、植付昇降レバー33の「植付入」位置への操作は、作業者が手動で行う構成について説明したが、本実施の形態2では、図9(a)〜図9(d)に示す様に、ステアリングハンドル34の操作に連動させて、植付装置52を自動で下降させ、その後、植付装置52に自動で苗の植え付けを開始させる構成について説明する。
ここで、図9(a)〜図9(d)は、左右一対の第1カム210L、210R、左右一対の第2カム310L、310R、及び回動アーム230等の動作を説明する平面図である。図9(a)〜図9(d)では、図面を見易くするために、ステアリングアーム200の両側に連結された左右一対のタイロッド60L、60R(図4参照)、オートリフトケーブル71、及びオートディファレンシャルスプリング100の図示を省略した。
図9(a)〜図9(d)に示す構成例において、上記実施の形態1(図4、図7(a)〜図7(d)参照)との主なる相違点は、(1)ステアリングアーム200において、左右一対の第1カム210L、210Rの間であって、ステアリングアーム200の対称軸204に近い位置に左右一対の第2カム310L、310Rを回動可能に配置した点と、(2)右第2回動軸311R、左第2回動軸311Lの軸芯から前端部の先端までの第2寸法L2が、右第1回動軸211R、左第1回動軸211Lの軸芯から前端部の先端までの第1寸法L1よりも長く設定されている点である。
ここでは、上記実施の形態1と同じ構成には、同じ符号を付した。以下、図9(a)〜図9(d)を参照しながら相違点を中心に説明する。
図9(a)〜図9(d)に示す構成例では、左第2カム310Lは、左第2回動軸311Lを回動中心として、平面視で、左第2圧縮スプリング313Lの弾性力に抗して反時計回りには回動可能であるが、左第2回動規制リブ312Lへの当接により時計回りには回動出来ない。
また、図9(a)〜図9(d)に示す構成例では、右第2カム310Rは、右第2回動軸311Rを回動中心として、平面視で、右第2圧縮スプリング313Rの弾性力に抗して時計回りには回動可能であるが、右第2回動規制リブ312Rへの当接により反時計回りには回動出来ない。
また、右第1回動軸211R、左第1回動軸211L、右第2回動軸311R、及び左第2回動軸311Lは、ステアリングアーム200上において、その回動軸201の軸芯を中心に、平面視で同一半径上に、対称軸204を基準として左右対称の位置に配置されている(図9(c)参照)。
なお、この左右一対の第2カム310L、310Rは、本発明の左右一対の第2カムの一例にあたる。
次に、主として図9(a)〜図9(d)を参照しながら、同図に示す構成例にかかる苗移植機1の動作を説明する。
(B−I):旋回開始の動作
上記実施の形態と同様に、作業者は、走行車体2を変速レバー36を「前進」に入れて(図6参照)、圃場を走行させつつ、植付装置52を下降させた状態で苗を圃場に植え付けていく。この植付作業状態では植付昇降レバー33は図3に示す通り、「植付入」の位置に設定されている。従って、この植付昇降レバー33に連結されている切替カム74は図3に示す位置、即ち、位置決めローラー77が第4溝751d(図5)に入った状態の位置になっている。
圃場の端に到達すると、図8に示す通り、作業者はステアリングハンドル34を右回に回し始めると(図8の第1地点411参照)、上記実施の形態と同様に、ステアリングアーム200が、回動軸201を中心に右回りに回動を開始する(図9(a)、図9(b)参照)。
そのステアリングアーム200の回動によって、2本のタイロッド60L、60R(図4参照)及び前輪ファイナルケース13,13のナックルアーム(図示省略)を介して、左右の前輪10、10を回動させ、走行車体2の旋回を開始する。
なお、このとき、ステアリングアーム200の、平面視で時計回りの回動に伴って(図9(b)の矢印E参照)、ステアリングアーム200の後端突出部202に連結されているオートリフトケーブル71の一端部71aが左前方向に移動することにより、オートリフトケーブル71が引っ張られて、植付装置52が自動的に上昇する点も上記実施の形態と同じである。
また、ステアリングアーム200の後端突出部202に連結されているオートディファレンシャルスプリング100が左前方に引っ張られて、左右一対の前輪10、10に対してディファレンシャル機構(図示省略)が自動的に作動状態となる点も上記実施の形態と同じである。
また、自動的に上昇した植付装置52の上昇がセンサの働きにより自動的に停止すると共に、オートリターンケーブル150の作用により植付昇降レバー33が「上昇」位置から「停止」位置に移動する点も上記実施の形態と同じである。
一方、ステアリングアーム200が、回動軸201を中心に平面視で時計回りに回動を開始し始めると(図9(b)の矢印E参照)、左第2カム310Lが回動アーム230に接近し、左第2カム310Lの先端側が回動アーム230の後端部の先端側に当接すると、回動アーム230の押圧力で左第2圧縮スプリング213Lが圧縮される様に設定されていることにより、左第2カム310Lは、平面視で、左第2回動軸311Lを回動中心として反時計回りに回動する(図9(b)参照)。
このとき、回動アーム230は、左第2カム310Lと当接しても、回動アーム230の回動は回避され、自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られることは無い。
図8に示す走行軌跡400に沿って右回りに旋回させるために、作業者は、更に、ステアリングアーム200を右回りにステアリング切れ角θ2まで回動させる(図9(c)のθ2参照)。
ステアリングアーム200が、図9(b)に示す位置から、図9(c)に示す位置まで回動する間に、左第1カム210Lは、上述した図9(b)に示す左第2カム310Lと同様に、左第1カム210Lの先端側が回動アーム230の後端部の先端側に当接すると、回動アーム230の押圧力で左第1圧縮スプリング213Lが圧縮される様に設定されていることにより、左第1カム210Lは、平面視で、左第1回動軸211Lを回動中心として反時計回りに回動する(図7(b)の矢印G参照)。
このとき、回動アーム230は、左第1カム210Lと当接しても、回動アーム230の回動は回避され、自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られることは無い。
(B−II):旋回終了後の動作
作業者は、上記実施の形態と同様に、ステアリングアーム200のステアリング切れ角θ2(図9(c)のθ2参照)を一定期間維持した後、走行車体2が直進走行を開始する位置の手前で、即ち、第2地点412(図8参照)で、ステアリングハンドル34の左回りへの切り返し動作を開始する。
これにより、ステアリングハンドル34を操舵することによって、右及び左の前輪10を徐々に直進方向に回動させ、走行車体2の走行を直進方向に切り替えていく。
このとき、ステアリングアーム200が、回動軸201を中心に平面視で反時計回りに回動を開始すると(図9(c)の矢印F参照)、左第1カム210Lの先端側が回動アーム230の後端部の先端側に当接する(図7(d)参照)。そして、上記(A−II)で図7(d)を参照しながら説明した各部の動作と同様に、回動アーム230は、左第1回動規制リブ212Lにより回動を規制されている左第1カム210Lに押されて、平面視で、アーム回動軸231を中心として時計回りに回動する(図7(d)の矢印J参照)。
これにより、回動アーム230の前端部に連結された自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られて、上記(A−II)で説明した通り、自動下降ケーブル240の他端部240bが連結されたケーブル固定プレート99と、切替カム74とが、右側面視で、軸80を回動中心として時計回りに回動すると共に(図3の矢印D参照)、位置決めローラー77が、それまで嵌め込まれていた位置決め用の第2溝751bから第3溝751c(図5参照)に移動する。また、これと同時に、植付昇降レバー33が自動的に「停止」位置から「下降」位置に移動する。
その結果、切替カム74の回動(図3の矢印D参照)に伴う各部の動作、即ち、植付装置52の下降、及びディファレンシャル機構の非作動への切り替えの動作は上記(A−II)の説明と同じである。
ここで、上記(A−II)の動作と異なる点は、図9(d)に示す通り、ステアリングアーム200が直進走行時の位置(走行車体2を直進走行させる位置)に戻る手前で、左第2カム310Lが回動アーム230に当接することにより、回動アーム230が、左第2回動規制リブ312Lにより回動を規制されている左第2カム310Lに押されて、平面視で、アーム回動軸231を中心として時計回りに回動する(図9(d)の矢印J参照)点である。
これにより、回動アーム230の前端部に連結された自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られる。
これに連動して、自動下降ケーブル240の他端部240bが連結されたケーブル固定プレート99と、切替カム74とが、右側面視で、軸80を回動中心として時計回りに回動すると共に(図3の矢印D参照)、位置決めローラー77が、それまで嵌め込まれていた位置決め用の第3溝751cから第4溝751d(図5参照)に移動する。また、これと同時に、植付昇降レバー33が自動的に「下降」位置から「植付入」位置に移動する。
その後、左第2カム310Lが回動アーム230の前を通過し、ステアリングアーム200は、直進走行時の位置(走行車体2を直進走行させる位置)に戻る(図9(a)参照)。
その結果、切替カム74の回動(図3の矢印D参照)に伴い、ワイヤーやロッド、アーム等を介して、植え付けクラッチ(図示省略)が「入り」側へ切り替わり、植付装置52による植え付け動作が自動的に開始される。
なお、左右一対の第2カム310L、310Rの第2寸法L2が、左右一対の第1カム210L、210Rの第1寸法L1よりも長く設定されていることにより、回動アーム230が、左第2カム310Lに押されて、平面視で、アーム回動軸231を中心として時計回りに回動する回動角(植付昇降レバー33を自動で「下降」位置から「植付入」位置に回動させるために必要な自動下降ケーブル240の引っ張り寸法に対応)(図9(d)参照)は、回動アーム230が、左第1カム210Lに押されて、平面視で、アーム回動軸231を中心として時計回りに回動する回動角(植付昇降レバー33を自動で「停止」位置から「下降」位置に回動させるために必要な自動下降ケーブル240の引っ張り寸法に対応)(図7(d)参照)より、大きく設定されている。
これにより、簡単な構成で、且つ少ない部品点数により、回動アーム230の回動により、植付昇降レバー33を自動で「下降」位置から「植付入」位置に回動させるために必要な自動下降ケーブル240の引っ張り寸法を、植付昇降レバー33を自動で「停止」位置から「下降」位置に回動させるために必要な自動下降ケーブル240の引っ張り寸法より長く設定することが出来る。
なお、回動アーム230が、左第2カム310Lに押されて、平面視で、アーム回動軸231を中心として時計回りに回動する回動角(図9(d)参照)は、本発明の「前記2カムが、前記回動アームに当接してから離間するまでの前記回動アームの回動角度」の一例にあたり、また、回動アーム230が、左第1カム210Lに押されて、平面視で、アーム回動軸231を中心として時計回りに回動する回動角(図7(d)参照)は、本発明の「前記第1カムが、前記回動アームに当接してから離間するまでの前記回動アームの回動角度」の一例にあたる。
また、上記の構成により、ステアリングハンドル34を真っ直ぐの位置に設定しているときや(図7(a)、図9(a)参照)、ステアリングハンドル34を左右方向の何れかにいっぱいまで切っているときは(図7(c)、図9(c)参照)、回動アーム230は回動しない構成になっているので、自動下降ケーブル240が引っ張られた状態のままになることが回避出来る。
なお、上記実施の形態では、自動下降ケーブル240による、植付装置52の「停止」位置から「下降」位置への下降動作、及び植付クラッチの「入り」状態への切替動作が、ステアリングハンドル34の操作に連動して自動で行われる構成について説明した。図10では、更に、これらの動作をステアリングハンドル34の操作に連動させるか否かを作業者が選択出来る入切スイッチ600を設けると共に、副変速レバー500の切替位置に応じて、これらの動作をステアリングハンドル34の操作に連動させるか否かを自動的に切り替えることが出来る構成例を示す。図10は、自動下降ケーブル240による、植付装置52の下降動作及び植付クラッチの「入り」状態への切替動作についての入切スイッチ600の構成、及び、副変速レバー500の構成を説明する概略右側面図である。
図10に示す様に、自動下降ケーブル240は、中間部240cが、ケーブルをカバーしている円筒形状のアウターケーシング241から露出していると共に、回動アーム230に連結された一端部240aの近傍において弛み部240dが設けられている。また、入切スイッチ600は、側面視で、略L字状の長板状部材であり、中間回動部601が、フロアステップ37の下方において回動可能に支持されており、先端部に第1ローラー602が回動可能に設けられている。また、副変速レバー500は、側面視で、略L字状の長板状部材であり、中間回動部501が、フロアステップ37の下方において回動可能に支持されており、先端部に第2ローラー502が回動可能に設けられている。また、副変速レバー500の中間回動部501の近傍には、副変速レバー500の切替状態をミッションケース12側に伝達するための副変速用ロッド503が連結されている。
作業者が、入切スイッチ600を「切」位置に設定したときは、第1ローラー602は、自動下降ケーブル240の中間部240cを押圧しない位置に位置しているので、自動下降ケーブル240の回動アーム230側に設けられている弛み部240dは解消されることが無い。従って、ステアリングハンドル34の旋回操作により回動アーム230が回動して自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られても、弛み部240dが伸びるだけで、ケーブル固定プレート99が下方に引っ張られることは無い。よって、入切スイッチ600を「切」位置に設定したときは、自動下降ケーブル240による、植付装置52の「停止」位置から「下降」位置への下降動作、及び植付クラッチの「入り」状態への切替動作が、ステアリングハンドル34の操作に連動して自動で行われる機能は停止される。
一方、作業者が、入切スイッチ600を「入」位置に設定したときは、第1ローラー602は、中間回動部601を回動中心として上方に回動し、自動下降ケーブル240の中間部240cを上方に押圧するので、自動下降ケーブル240の回動アーム230側に設けられている弛み部240dが解消される。従って、ステアリングハンドル34の旋回操作により回動アーム230が回動して自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られると、自動下降ケーブル240を介してケーブル固定プレート99が下方に引っ張られる。よって、入切スイッチ600を「入」位置に設定したときは、自動下降ケーブル240による、植付装置52の「停止」位置から「下降」位置への下降動作、及び植付クラッチの「入り」状態への切替動作が、ステアリングハンドル34の操作に連動して自動で行われる機能は入り状態となる。
また、作業者が、副変速レバー500を「中立」位置、「植付」位置に設定したときは、第2ローラー502は、自動下降ケーブル240の中間部240cを押圧しない位置に位置しているので、自動下降ケーブル240の回動アーム230側に設けられている弛み部240dは解消されることが無い。従って、ステアリングハンドル34の旋回操作により回動アーム230が回動して自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られても、弛み部240dが伸びるだけで、ケーブル固定プレート99が下方に引っ張られることは無い。
よって、副変速レバー500を「中立」位置、「植付」位置に設定したときは、自動下降ケーブル240による、植付装置52の「停止」位置から「下降」位置への下降動作、及び植付クラッチの「入り」状態への切替動作が、ステアリングハンドル34の操作に連動して自動で行われる機能は停止される。これにより、作業者が、自動下降ケーブル240による上記各種動作をステアリングハンドル34の操作に連動させるか否かを選択出来るので、操作性の自由度が向上する。また、例えば、機体を倉庫に収納する場合など、上記各種動作をステアリングハンドル34の操作に連動させることが適切でない場合には、作業者の判断で、上記各種動作をステアリングハンドル34の操作に連動させない様に設定出来るので、操作の安全性が向上する。
一方、作業者が、副変速レバー500を「植付」位置に設定したときは、第2ローラー502は、中間回動部601を回動中心として上方に回動し、自動下降ケーブル240の中間部240cを上方に押圧するので、自動下降ケーブル240の回動アーム230側に設けられている弛み部240dが解消される。従って、ステアリングハンドル34の旋回操作により回動アーム230が回動して自動下降ケーブル240の一端部240aが引っ張られると、自動下降ケーブル240を介してケーブル固定プレート99が下方に引っ張られる。よって、副変速レバー500を「植付」位置に設定したときは、自動下降ケーブル240による、植付装置52の「停止」位置から「下降」位置への下降動作、及び植付クラッチの「入り」状態への切替動作が、ステアリングハンドル34の操作に連動して自動で行われる機能は入り状態となる。
これにより、例えば、機体を路上走行させる場合など、上記各種動作をステアリングハンドル34の操作に連動させることが適切でない場合には、作業者が判断しなくても、副変速レバー500の設定位置に連動して、上記各種動作をステアリングハンドル34の操作に連動させない様に自動的に設定されるので、操作の安全性がより一層向上する。
ここで、上記実施の形態の第2ローラー502、自動下降ケーブル240の中間部240c及び弛み部240dを含む構成は、本発明の伝達入切機構の一例にあたり、副変速レバー500と中間回動部501と副変速用ロッド503を含む構成は、本発明の副変速レバー部の一例にあたる。
また、図10の構成例では、入切スイッチ600と、副変速レバー500の設定位置に連動して、上記各種動作をステアリングハンドル34の操作に連動させない様に自動的に設定される機構の両方を備えた構成について説明したが、これに限らず例えば、何れか一方のみ備えた構成であっても良い。
次に、図11(a)、図11(b)を用いて、副変速部のシフタ軸のオイルシールリップ保護のための保護ブーツを装着した構成について説明する。
図11(a)は、副変速部340の部分断面図であり、図11(b)は、図11(a)に示すシフタ軸350及びその周辺の拡大図である。
図11(b)に示す様に、シフタ軸350の軸受け部としてのオイルシールベアリング351が、蛇腹部361を有した伸縮自在のゴム製の保護ブーツ360で覆われている。
また、保護ブーツ360の先端には、シフタ軸350に略直交する内周縁部361aと、シフタ軸350に略平行な「かえり」361bとが設けられている。これにより、シフタ軸350が縮んでいる状態では、内周縁部361aが、シフタ軸350の先端側に形成された溝部370に入り込んでいるが、シフタ軸350が最伸張状態にあるときは、内周縁部361aが溝部370から外れるように構成されている。
一方、保護ブーツ360の蛇腹根本部361cは、蛇腹根本部361cの内周面に形成された保護ブーツ側凸部362が、副変速部340が内蔵されているミッションケース12側のシフタ軸貫通部342の外周部に形成されたケース側凹部342aに引っ掛かる様に構成されており、且つ、保護ブーツ側凸部362の位置に対応する蛇腹根本部361cの外周面にハーネスバンド371を巻き付けてしっかり固定されている。
なお、保護ブーツ360の内側にはグリスが充填されている。
これにより、ミッションケース12の底部で泥が付着し易い場所に位置する、シフタ軸350が摺動するオイルシールベアリング351を、伸縮自在のゴム製の保護ブーツ360で覆う構成としたことで、オイルシールを保護し耐久性を向上させることが出来る。
また、シフタ軸350が最伸張状態にあるときは、内周縁部361aが溝部370から外れ、シフタ軸350が縮み状態にあるときは、内周縁部361aが溝部370に嵌るように構成されているので、保護ブーツが、最伸張状態にあるシフタ軸350を完全に覆う構成に比べて、保護ブーツ360の長さを小さく設定出来る。また、シフタ軸350が最伸張状態にあるときは、内周縁部361aが溝部370から外れることにより、保護ブーツ360の摩耗を軽減することが出来る。
なお、上記実施の形態では、第1カム210L、210Rは、左右一対設けられている構成について説明したが、これに限らず例えば、左右何れか一方にのみ設けられていても良い。
また、上記実施の形態では、第2カム310L、310Rは、左右一対設けられている構成について説明したが、これに限らず例えば、左右何れか一方にのみ設けられていても良い。
また、上記実施の形態では、ステアリングアーム200の後端突出部202に設けられた後端ピン203の上端側には、オートリフトケーブル71の一端部71aが回動自在に連結されており、また、その後端ピン203の下端側には、オートディファレンシャルスプリング100の一端が連結されている構成について説明したが(図3、図4参照)、これに限らず例えば、オートリフトケーブル71の一端部71aと、オートディファレンシャルスプリング100の一端との連結位置が、上下逆の位置であっても良い。
また、上記実施の形態では、本発明の作業車両の一例として4条型の苗移植機を構成した場合について説明したが、これに限らず例えば、5条植え、6条植え、或いは8条植えなどの構成であっても良く、条数に限定されない。
また、本発明の昇降装置、自動上昇機構としては、上記実施の形態で示した構成に限らず他の構成でも良い。