JP6635768B2 - 定着部材、定着装置、及び画像形成装置 - Google Patents

定着部材、定着装置、及び画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、記録媒体上に付与された記録材を記録媒体上に定着させるために用いられる定着部材に関する。また、本発明は、前記定着部材を備える定着装置に関する。また、本発明は、前記定着装置を備える画像形成装置に関する。
画像形成装置は、画像形成プロセス手段で記録媒体上に形成されたトナー像を記録媒体上に永久画像として加熱定着させる定着装置を備える。この定着装置として、加熱加圧方式を採用する定着装置が広く用いられている。加熱加圧方式を採用する定着装置は、定着部材(例えば定着ベルトや定着ローラ)と加圧部材(例えば加圧ベルトや加圧ローラ)を有する。この2つの部材間にトナー像等の未定着画像を有する記録媒体を搬送することにより未定着画像が加熱及び加圧され、永久固着画像を得ることができる。
この定着装置に用いられる定着部材として、特許文献1には、ポリイミド等の耐熱性樹脂材料やSUS、Niなどの金属材料等の基材上にフッ素樹脂からなる離型層が形成された定着ベルトが開示されている。また、特許文献2には、耐熱基材上にシリコーンゴムやフッ素ゴムからなる弾性層が形成され、最表層としてフッ素樹脂からなる離型層を備える定着部材が開示されている。
また、特許文献3には、ポリイミド等の耐熱性樹脂材料の基材上に、前記トナー層と接触する離型層側からのナノインデンテーションにより測定される表面硬度が0.35〜2[GPa]であり、かつ、前記トナー像と接触する離型層側の接触角が80〜130[°]である離型層を有する定着ベルトが開示されている。
特許第3054010号 特開2002−268423号公報 特開2012−93621号公報
「日本接着協会誌」、日本接着学会、1972年、第8巻、第3号、p.131−141
特許文献1又は2に記載されるように、トナーの固着を防止する観点から、定着部材の最表層として離型性の良いフッ素樹脂が用いられている。しかし、特許文献1や2に開示されるようなフッ素樹脂からなる離型層は、通紙によるアタック(紙が与えるダメージ)や、紙粉、オフセットトナーの汚れ等によって徐々に荒れる傾向があり、定着画像の品位が低下する場合があった。
また特許文献3に記載されるように、トナーとの離型性を高めるために、ポリイミド等の耐熱性樹脂材料の基材上に高硬度な離型層を付与した定着部材により、熱圧時のトナーとの接触面積を低減することが可能とされている。また上記部材の表層硬度は、0.35〜2.5GPaと通常用いられるフッ素樹脂と比べて高いため、通紙によるアタックへの耐久性も高く、通紙耐久性が優れていると考えられる。
しかしながら、上記の定着部材をそのまま普通紙のような凹凸のある紙の定着に適用すると、紙の凹凸に対する追従性が悪く、特にカラー画像の品位が低下してしまう。また追従性を向上するために基材上に弾性層を設け、その上に高硬度離型層を付与したとしても、通紙による熱圧の繰り返しにより離型層表面において無数の微小なクラック発生や剥がれが生じ、定着画像の品位が低下する場合があった。
そこで、本発明の一態様は、高品位な電子写真画像に形成に資する、耐久性に優れた定着部材の提供に向けたものである。また、本発明は、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資する定着装置および高品位な電子写真画像を形成することのできる画像形成装置の提供に向けたものである。
本発明の第一の形態は、基材と、弾性層と、樹脂層と、離型層と、をこの順に有する定着部材であって、該離型層の表面におけるMD−1TypeC硬度が65以上90以下であり、該定着部材から該基材と該弾性層を除いて得られる積層体の該離型層の表面におけるナノインデンター法による硬度が0.3GPa以上2.5GPa以下であり、かつ、該樹脂層の線膨張係数が1.0×10−4/℃以下であることを特徴とする定着部材である。
本発明の第二の形態は、前記定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱手段と、前記定着部材とともに、記録材を有する記録媒体を加熱及び加圧するニップ部を形成する加圧部材と、を備える定着装置である。
本発明の第三の形態は、上述の定着装置を備える画像形成装置である。
本発明の構成によれば、優れた画像品位と通紙耐久性を有する定着部材を提供することができる。また、本発明の構成によれば、長期にわたり高品位な定着画像を得られる定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る定着部材の構成を説明するための概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る定着装置を備える画像形成装置の構成例を説明するための模式図である。 画像形成装置の画像出力機構部の構成例を説明するための模式図である。 本発明の一実施形態に係る定着装置の構成例を説明するための概略断面図である。 実施例と効果の関係を説明するための相関図である。
本発明の一形態に係る定着部材は、記録媒体上に付与された記録材を前記記録媒体上に定着させるために用いられる定着部材である。また、本形態に係る定着部材は、基材と、弾性層と、樹脂層と、離型層とを有し、この順に積層されている。前記離型層の表面におけるMD−1TypeC硬度が65以上90以下である。また、前記部材における前記基材と前記弾性層を除いた積層体の離型層側からナノインデンター法により測定した該離型層の硬度が0.3GPa以上2.5GPa以下である。さらに、前記樹脂層の線膨張係数が1.0×10−4/℃以下である。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る定着部材について説明する。
<定着部材>
図1は、本実施形態に係る定着部材の構成を説明するための概略断面図である。定着部材の形態としては、例えば、定着ベルト(ベルト形状を有する定着部材)や定着ローラが挙げられる。本実施形態に係る定着部材は、基材901aと、該基材901aの上に配置された弾性層901bと、該弾性層901bの上に配置された樹脂層901cと、該樹脂層901cの上に配置された離型層901dと、を有する。
(基材)
基材901aの材料は、特に制限されるものではないが、耐熱性と機械的強度を考慮して選択されることが望ましい。基材の材料としては、例えば、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PES(ポリエーテルスルホン)等の樹脂材料や、SUS、Ni等の金属材料を挙げることができる。
定着部材が定着ローラ(ローラ形状を有する定着部材)である場合、基材としては、金属材料からなる芯金を用いることができる。
基材材料としての樹脂材料や金属材料は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、基材は、積層構造を有しても良い。
(弾性層)
本実施形態の定着部材は、離型層901cと基材901aの間に弾性層901bを有する。弾性層は、定着時にトナーを押しつぶさない弾性を定着部材に担保する層として機能する。
弾性層901bの材料としては、耐熱性と柔軟性を有する弾性材料を用いることが望ましく、以下に限定されることはないが、例えば、シリコーンエラストマーやフルオロエラストマーなどを挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、加熱手段からの熱を効率よく伝達するために、弾性層中にカーボンブラックやアルミ等のフィラーを混合しても良い。
(樹脂層)
本実施形態の定着部材は、弾性層901bと離型層901dの間に樹脂層901cを有する。樹脂層901cは、下層の表面粗さを緩和する機能、通紙時における離型層に対する応力を緩和する機能、又は離型層の密着性を向上させる機能等を有すると考えられる。
樹脂層901cの材料としては、耐熱性と高機械強度、平滑性を有し、さらに線膨張係数の低い材料を用いることが望ましい。以下に限定されることはないが、例えば、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、BMI(ビスマレイミド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PES(ポリエーテルサルホン)、PAR(ポリアリレート)等の樹脂材料が挙げられる。樹脂層は、PI、PAI、PAR、PESからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含むことが好ましく、中でも耐熱性、機械特性の観点からPI、PAIがより好ましい。また、溶剤可溶性の熱可塑性樹脂、例えば、溶剤可溶性のPIやPAI等がより好ましい。これらの材料を用いることにより、定着画像の平滑性が高まり、高光沢で良好な画像を得ることができる。また、本実施形態における離型層は、架橋度を向上させることで硬度を高めることができるものの、線膨張係数は一般的な樹脂と比較して小さく、1.0×10−5/℃程度である。そのため、加熱による応力を下げるために、樹脂層901cの線膨張係数は1.0×10−4/℃以下であることが好ましい。線膨張係数が小さく、ある程度の機械強度を有するため、定着時のような高温時の基材、弾性層等の熱膨張を抑え、離型層の熱応力によるクラック発生を抑制することが可能となる。また、小さすぎると圧縮応力が離型層表面にかかるため、樹脂層901cの線膨張係数は1.0×10−6/℃以上であることが好ましい。
また、本実施形態における樹脂層901cは、弾性層901bよりも硬く、加圧時の弾性層901bの伸びに対してある程度耐性を持ちつつ、画質向上のために紙繊維への追従性を高める機能を有することが好ましい。そのため、後述する測定方法で測定される樹脂層の押込み弾性率は1.0GPa以上10.0GPa以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは2.0GPa以上5.0GPa以下が好ましい。1.0GPa以上であれば、紙繊維に追従した際に離型層の伸びが抑制でき、クラックの発生を抑制することができる。また、10.0Gpa以下であれば、紙繊維への追従性不良による濃度ムラや光沢ムラが発生することがなく、画像不良の発生を防止できる。また厚さとしては1μm以上50μm以下の範囲が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。
また鋭意検討から、樹脂層の押込み弾性率E2[GPa]と樹脂層の層厚t2[μm]の積を以下式(A)の範囲となるようにすることで、通紙時における離型層に対する応力を緩和する機能と紙へ適度に追従する機能を両立することが可能であった。メカニズムは明らかでないが、弾性率と厚さの積は、樹脂層901cの変形に対する耐性を表しており、ある一定の範囲に収めることで離型層表層のクラック発生を抑制しつつ、紙繊維への追従性も確保することが可能になったと考えられる。
250≧E2×t2≧10 式(A)
E2:樹脂層の押込み弾性率[GPa]、t2:樹脂層の層厚[μm]
(離型層)
本実施形態の定着部材は、その最外層として、離型層901dを有し、前記部材における基材と弾性層を除いた積層体の該離型層の表面のナノインデンター法による硬度が0.3GPa以上2.5GPa以下である。
以下に本発明のメカニズムについて推察を述べるが、本発明は以下の推察によって限定されるものではない。
定着部材に求められる主な機能としては、溶融トナーの離型性と紙への追従性、通紙によるアタックに対する耐性が挙げられる。溶融トナーの離型性は、一般的に、離型層の表面自由エネルギーに関係しており、表面自由エネルギーが低いほど離型性が良くなると考えられている。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は全炭素にC−F結合を有するので表面自由エネルギーが低くなり、その表面自由エネルギーは約18mJ/mである。そのため、PTFEはトナーの離型性が非常に良く、定着部材の離型層として広く用いられてきた。しかしながら、表面自由エネルギーが低いということは、分子間力が小さいことも意味し、PTFEは機械的強度が弱く、通紙における耐久性に問題がある場合がある。
そこで、本発明者らは、低い表面自由エネルギーと優れた機械的強度とを両立する離型層を得るべく、架橋構造を有する材料に着目した検討を進めた結果、本発明における部材構成に関する着想を得るに至った。すなわち、本実施形態に係る定着部材は、基材と、弾性層と、樹脂層と、離型層とを有し、この順に積層されている。離型層はケイ素がメチル基に結合しているケイ素原子(Si−CH)を含むポリシロキサンもしくは、フッ素系重合体の少なくとも一方を含む。また、該離型層の表面におけるMD−1TypeC硬度が65以上90以下である。また、前記部材における基材と弾性層を除いた積層体の該離型層の表面におけるナノインデンター法による硬度(以下、ナノインデンター硬度とも称す)が0.3GPa以上2.5GPa以下である。さらに、前記樹脂層の線膨張係数が1×10−4/℃以下である。上記構成の定着部材は、優れた離型性及び通紙耐久性を有する。優れた離型性のメカニズムとしては、本発明における離型層は、メチル基及び/又はフッ素原子が表出しており、低い表面自由エネルギーを有するため、トナー離型性に優れると考えられる。通紙耐久性の向上については、本発明における離型層は、Si−Oの高次ネットワーク構造や活性エネルギー線の照射により硬化反応する官能基を1分子当たり複数有する多官能分子を有するため、架橋密度が高く、低表面自由エネルギーでありながら、高い硬度を有する。そのため、本発明における離型層は一般的に用いられる記録媒体よりも硬くなるため、傷が発生し難くなると考えられる。
離型層の厚さは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、離型層の厚さは、10μm以下であることが好ましい。離型層をこの程度の薄膜にすると、基材や弾性層、樹脂層の表面粗さの影響や、残留応力の影響を離型層が受け難くなり、耐久性がさらに高まる傾向がある。
本発明における離型層は、普通紙のような比較的凹凸の多い紙に対しても良好な画像を記録できる。この理由は、上記ナノインデンター硬度が0.3GPa以上2.5GPa以下であり、下層に樹脂層901c、弾性層901bと、を有するためと考えられる。ナノインデンター硬度が0.3GPa以上であるため、記録媒体よりも強度が高いと考えられ、また樹脂層901cを有するため、通紙時のクラック発生などが抑制され、良好な耐久性を得ることができる。またナノインデンター硬度が2.5GPa以下であり、樹脂層901c、弾性層901bを有するため、比較的凹凸の多い紙に対しても定着部材の表面に良好に追従することができ、クラック発生も抑制される。
本発明における離型層は、Si−CHを含むポリシロキサン及びフッ素系重合体の少なくとも一方を含む。
Si−CHを含むポリシロキサンは、少なくともSiO1.5R1で示される第1のユニットと、SiO1.0R2R3で示される第2のユニットを有するポリシロキサン化合物であることが好ましい。フッ素系重合体は、(a)少なくともC−F結合に由来するフッ素を有する炭素鎖と活性エネルギー付与により重合可能な基を有する化合物と(b)活性エネルギー付与により重合可能な基を複数有する化合物から得られることが好ましい。これらをまとめて離型層用の高分子材料という。
なお、上記の「SiO1.5R1で示される第1のユニット」とは、下記式(1)に示すようなポリシロキサン構造のうちの四角で囲んだ範囲A1を意味する。範囲A1の中の、アルコキシ基の酸素原子でない酸素原子(Si−O−SiのO)は、2個のケイ素原子と結合しているため、ケイ素原子1個あたりが結合している酸素原子(Si−O−SiのO)の数は0.5個と考える。
Figure 0006635768
上記の「SiO1.0R2R3で示される第2のユニット」も、「SiO1.5R1で示される第1のユニット」と同様であり、具体的には、下記式(2)に示すようなポリシロキサン構造のうちの四角で囲んだ範囲A2を意味する。
Figure 0006635768
ここでR1は、開裂によってオキシアルキレン基を生成しうるカチオン重合可能な基もしくは、開裂によってエステル基を生成しうるラジカル重合可能な基を示す。R2,R3は、R1と同様の基またはアルキル基を示し、R2,R3の少なくとも一方はメチル基を示す。R2,R3は共にメチル基であることが好ましい。
前記ポリシロキサンは、例えば、加水分解性シラン化合物と、活性エネルギー付与により重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させる縮合工程を経て得られる。
上記工程では、上記加水分解性シラン化合物及び活性エネルギー付与により重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物を少なくとも含んだ混合物を水の存在下で加水分解反応させることによって加水分解性縮合物を得る。加水分解反応の際、温度やpHなどを制御することで、所望の縮合度の加水分解性縮合物を得ることができる。
また、加水分解反応の際、加水分解反応の触媒として金属アルコキシドなどを利用し、縮合度を制御してもよい。金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドなど、又はこれらの錯体(アセチルアセトン錯体など)が挙げられる。
前記工程の縮合工程で、加水分解に用いる水の量は、縮合工程に用いる加水分解性シラン化合物の総量に対して10〜50質量%の範囲にあることが好ましい。また、前記加水分解性シラン化合物としては、水またはアルコールと縮合反応性を有する変性タイプのポリジメチルシロキサンが好ましい。
上記変性タイプのポリジメチルシロキサンとしては、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製や信越化学工業(株)製やGE東芝シリコーン(株)製のシラノール変性シリコーンオイルなどが挙げられ、適宜選択すればよく、1種類又は複数を混合して用いてもよい。
前記活性エネルギー付与により重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記式(3)で示される化合物が好ましい。
Figure 0006635768
上記式(3)のR4は開裂によってオキシアルキレン基を生成しうるカチオン重合可能な基もしくは、開裂によってエステル基を生成しうるラジカル重合可能な基を示す。R4のカチオン重合可能な基の具体例としては、例えば、グリシドキシ基、エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、又はビニルエーテル基などの官能基を含む基が挙げられる。中でも、入手の容易性及び反応制御の容易性の観点から、R4はグリシドキシ基またはエポキシ基を含む基が好ましい。また、前記オキシアルキレン基とは、−O−R−(−R−:アルキレン基)で示される構造を有する2価の基(「アルキレンエーテル基」と呼ばれることもある。)である。また、R4のラジカル重合可能な基の具体例としては例えば、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基などの開裂によってエステル基を生成しうる官能基を含む基が挙げられる。R4は上記官能基単独でもよいが、Si原子との間に炭化水素基を介する基であることが好ましい。炭化水素基としては炭素数1〜6の直鎖、分岐、環状又はこれらの組み合わせになるアルキレン基であることが好ましい。また、エポキシ基がシクロヘキシル基に縮合したエポキシシクロヘキシル基も好ましく、その場合エポキシ基に共有される2つの炭素原子は炭化水素基の炭素数から除外する。
前記式(3)中のR5からR7は、それぞれ独立に、アルキル基を示す。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシルなどの炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。その中でも、メチル基、エチル基がより好ましい。
上記式(3)の活性エネルギー付与により重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物としては、種々のシランカップリング剤から適宜選択すればよい。例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
前記活性エネルギー付与により重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物は、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物同士を、1種又は2種以上混合して用いてもよく、ラジカル重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物同士を、1種又は2種以上混合して用いてもよい。
また、前記活性エネルギー付与により重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物としては市販のものを用いてもよい。例えば、AC−SQ SI−20(東亞合成株式会社製)、MAC−SQ SI−20(東亞合成株式会社製)、OX−SQ SI−20(東亞合成株式会社製)などの紫外線硬化可能な官能基とジメチルシロキサン骨格を有するシルセスキオキサン誘導体が挙げられる。
また後述するフッ素系重合体における(a)C−F結合に由来するフッ素を有する炭素鎖と活性エネルギー付与により重合可能な基を有する化合物と混合してもよい。
離型層を構成するフッ素系重合体は、少なくとも(a)C−F結合に由来するフッ素を有する炭素鎖と活性エネルギー付与により重合可能な基を有する化合物(以下化合物(a)という)と(b)活性エネルギー付与により重合可能な基を複数有する化合物(以下、化合物(b)という)から得られるフッ素系重合体を用いることができる。
化合物(a)は、パーフルオロアルキレン鎖、もしくは部分的にフッ素化されたアルキレン鎖、もしくはパーフルオロポリエーテル鎖、もしくは部分的にフッ素化されたポリエーテル鎖を含み、さらに上記式(3)のR4と同様に、開裂によってオキシアルキレン基を生成しうるカチオン重合可能な基もしくは、開裂によってエステル基を生成しうるラジカル重合可能な基を有することが好ましい。
カチオン重合可能な基の具体例としては例えば、グリシドキシ基、エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、又はビニルエーテル基などが挙げられる。中でも、入手の容易性及び反応制御の容易性の観点から、グリシドキシ基またはエポキシ基が好ましい。また、前記オキシアルキレン基とは、−O−R−(−R−:アルキレン基)で示される構造を有する2価の基(「アルキレンエーテル基」と呼ばれることもある。)である。また、ラジカル重合可能な基の具体例としては例えば、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基が挙げられる。化合物(a)は、一般的な表面改質剤として市販されているものを入手可能であり、例えば、DIC株式会社製の商品名「メガファックシリーズ」などが挙げられる。
化合物(b)は、化合物(a)と同様の重合可能な基を1分子中に3つ以上有することが好ましい。これにより、硬度が高まり、通紙によるアタックに対する耐性が高まり、傷が付きにくくなる。化合物(a)が2官能以下である場合、3官能以上の化合物(b)を用いることにより架橋構造が形成され、硬度が高く、傷が発生し難くなり、画像不良の抑制が可能となる。化合物(b)の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどのラジカル重合可能な基を有するものや、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌラートなどのカチオン重合可能な基を有するものが挙げられる。
化合物(a)と化合物(b)の混合物も市販されており、例えば、DIC株式会社製の商品名「ディフェンサシリーズ」などが使用できる。このような市販品は、重合開始剤を含有するものがあり、そのまま使用することができる。
次に、得られたポリシロキサン及びフッ素系重合体の少なくとも一方の離型層用高分子材料を含む離型層形成用の塗布液を調製し、離型層の直下となる層、すなわち、樹脂層上に当該塗布液の塗膜を形成し、活性エネルギーを付与する工程について説明する。
まず、塗布液を調製する。その際、塗布性向上のために、離型層用の高分子材料以外に、溶剤を用いてもよい。溶剤としては、例えば、エタノール若しくは2−ブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン又はこれらを混合したもの等が挙げられる。また、離型層用塗布液を樹脂層上に塗布する際には、塗布液と樹脂層との濡れ性を高めるために、UVオゾン処理やプラズマ処理、大気圧プラズマ処理などの表面処理を適宜行うことが好ましい。表面処理後の樹脂層上への塗布液の塗布には、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などの従来既知の種々の方法を採用することができる。また溶剤等で希釈している場合は、塗布した後にオーブンにて溶剤を揮発、乾燥させることが望ましい。
次に、塗膜に活性エネルギー線を照射する。すると、塗膜に含まれる重合可能な基は開裂する。これによって、該表面塗布液層中の離型層用の高分子材料を架橋させることができる。離型層用の高分子材料は架橋によって硬化し、これを乾燥すると離型層が形成される。
前記活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。架橋反応に紫外線を用いた場合、短時間(15分以内)に離型層用の高分子材料を架橋することができる。加えて、熱の発生も少なく、離型層のシワやクラックが発生しにくい。また、架橋反応を熱の発生が少ない紫外線によって行えば、さらにシワやクラックを抑制できる。紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150〜480nmの光を豊富に含む紫外線源が好ましく用いられる。
なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm]=紫外線強度[mW/cm]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離などで行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計「UIT−150−A」(商品名)や「UVD−S254」(商品名)を用いて測定することができる。エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計「UIT−150−A」(商品名)や「VUV−S172」(商品名)を用いて測定することができる。
また、架橋反応の際、架橋効率向上の観点から、適宜、カチオン重合やラジカル重合に適した重合開始剤を共存させておくことが好ましい。カチオン重合系の開始剤としては、例えば、ルイス酸のオニウム塩、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物などが挙げられる。各種カチオン重合触媒の中でも、感度、安定性及び反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特に、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(4)で示される構造を有する化合物(商品名:「アデカオプトマ−SP150」、(株)ADEKA製)がより好ましい。また、下記式(5)で示される構造を有する化合物(商品名:「イルガキュア261」、チバスペシャルティーケミカルズ社製)もより好ましい。さらに3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:「セロキサイド 2021P」(株)ダイセル製)もより好ましい。
Figure 0006635768
カチオン重合触媒の使用量は離型層用の高分子材料に対して0.1〜3質量%が好ましい。
ラジカル重合系の開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィドなどが挙げられる。特に、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティーケミカルズ社製)や2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバスペシャルティーケミカルズ社製)が好ましい。
<画像形成装置>
以下、画像形成装置の構成を説明する。
図2は、本実施形態の定着装置90を備える画像形成装置の構成例を示す概略模式図である。画像形成装置200は、例えば、転写式電子写真プロセスを利用する、レーザ走査露光方式のデジタル画像形成装置(複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機能機等)等である。
201は原稿読取装置(イメージスキャナー)を示し、202は操作部を示し、何れも画像形成装置200の上面側に配設されている。原稿読取装置201は、画像形成装置の原稿台上に載置した原稿面を、内部に設けた光源等からなる走査照明光学系により走査して読み取ることができる。走査照明光学系は、原稿面からの反射光をCCDラインセンサ等の光センサにより検出し、得られた画像情報を時系列電気デジタル画素信号に変換することができる。操作部202は操作者による処理実行内容の入力や操作者に対する処理に関する情報及び警告等の通知のためのタッチパネル付き液晶により構成されることができる。203はプリントコントローラーを示し、プリントコントローラー203は不図示のパソコン等の画像データに基づくプリント信号を出力することができる。204は原稿読取装置201、操作部202、プリントコントローラー203等からの信号を受けて、画像出力機構の各部に指令を送る信号処理及び種々の作像シーケンス制御を行う制御部(CPU)を示す。
次に、図3に示す画像出力機構部(画像形成ユニットとも称す)18Y,18C,18M,18Bkの構成について説明する。以下の説明では、黒色のトナー像を形成する画像形成ユニット18Bkを例に挙げて説明するが、他の画像形成ユニット18Y,18C,18Mも同様の構成を有する。20Bkは像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと称す)であり、反時計方向に所定の周速度にて回転駆動される。感光ドラム20Bkはその回転過程で、帯電装置206Bkにより所定の極性・電位の帯電処理を受ける。そして、帯電面は画像書き込み装置21(21Y,21C,21M,21Bk))により像露光Lを受けることで帯電面の露光明部の電位が減衰し、感光ドラム20Bkの面に露光パターンに対応した静電潜像が形成される。画像書き込み装置21は、例えば、レーザスキャナーであり、制御部(CPU)204において信号処理された画像データに従って変調されたレーザ光Lを出力する。そして、画像書き込み装置21Bkにより回転する感光ドラム20Bkの帯電面が走査露光され、原稿画像情報に対応した静電潜像が形成される。
次いで、得られた静電潜像が現像装置208Bkによりトナー画像として現像される。そのトナー画像が転写帯電装置209Bkの位置において、支持ローラ14,15,16に張架された中間転写ベルト10と感光ドラム20Bkの接する部分T1にて、一次転写される。なお、図3に示される中間転写ベルト10は時計回り方向に回転駆動される。
一方、中間転写ベルト10に一次転写後の感光ドラム20Bk面はクリーニング装置213Bkにより転写残りトナー等の付着汚染物が除去される。清掃された感光ドラムは繰り返して作像される。
中間転写ベルト10と転写ローラ22が接する部分T2にて給紙機構部56側から所定のタイミングにて搬送された記録媒体Pにトナー画像が2次転写される。そして、未定着トナー像が二次転写された記録媒体は定着装置90へ搬送され、定着装置90によって記録媒体へトナー像が定着される。トナー像が定着した後、記録媒体は排紙トレイ57に排出される。
<定着装置>
次に、本実施形態に係る定着装置90の構成について説明する。以下の説明において、定着装置及びこの定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録媒体の面における記録媒体の搬送方向と直交する方向である。短手方向とは、記録媒体の面における記録材搬送方向と平行な方向である。幅とは短手方向の寸法である。図4(a)は定着装置90の構成を示す断面模式図である。定着装置90は、定着部材900及び加圧部材910を備える。また、定着装置90は、必要に応じて定着部材や加圧部材に対して紙粉等を取り除くクリーニング部材を有することもできる。また、本明細書では、定着部材がベルトタイプの場合を主に例に挙げて説明しているが、本発明の定着部材はベルトタイプに限定されるものではない。定着部材は、ベルトタイプの他にも、例えばローラタイプやパッドタイプの形態を採用することができる。また、定着装置は、複数の定着部材を備えてもよい。
定着装置は、少なくとも定着部材及び加圧部材を備える。図4(a)に示す定着装置は、定着部材、加圧部材、定着部材ガイド及び加熱手段を備える構成を有する。以下、これらの構成要素について説明する。
(定着部材)
図4(a)に示される定着部材900はベルトタイプである。以下、ベルトタイプの定着部材を定着ベルト901とも称す。図4(a)に示される定着ベルト901は、長手方向に長いエンドレスベルト状(円筒状)に形成されており、加熱手段903を支持するベルトガイド902にルーズに外嵌されている。図4(a)に示される定着ベルト901は、耐熱性を有する基材901aの上に、弾性層901bが形成され、さらに、図1に示すように弾性層901bの上に樹脂層901c、離型層901dが形成されている。図4(a)においては、樹脂層901c、離型層901dは省略している。
定着ベルト901は、加圧ローラ910とともに記録材Tを有する記録媒体Pを加熱及び加圧するニップ部Nを形成する。より具体的には、加圧機構(不図示)により後述の加圧ローラ910を、定着ベルト901を挟んで加熱手段903に対して所定の圧力で押しつけることで、加圧ローラ910と定着ベルト901との間にニップ部N(定着ニップ部)を形成する。このニップ部Nに記録材Tを有する記録媒体Pを矢印A3から挿入することで加熱及び加圧して、記録材Tを記録媒体Pに定着する。
定着ベルト901としての複合ベルトの総厚は、熱容量を小さくし、定着装置のクイックスタート性を向上させる観点から、1000μm以下であることが好ましく、300μm以上600μm以下であることがより好ましい。
(加圧部材)
加圧部材は、定着部材900と共に記録材Tを有する記録媒体Pを加熱及び加圧するニップ部Nを形成する。加圧部材は、例えば、加圧ローラの形態を採用することができる。図4(a)に示される定着装置は、加圧部材として加圧ローラ910を有する。加圧ローラ910は、図4(a)に示すように、例えば、基材911と、該基材の上に弾性層913と、該弾性層913の上に加圧部材の離型層912と、を有することができる。
加圧ローラ910の外径は例えばφ30mmであり、φ24mmのアルミ製芯金からなる基材911の上にシリコーンゴムからなる弾性層913が形成できる。例えば、弾性層913の上には、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)からなる離型層912が30μmの厚さで形成できる。加圧部材の離型層912は、耐熱性と離型性を有する材料によって形成されることが望ましい。加圧部材の離型層の材料としては、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)の他には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂(FEP)などのフッ素樹脂が挙げられる。また、加圧部材の離型層として、本実施形態の定着部材に用いる離型層と同じ材料を用いてもよい。加圧部材の離型層の厚みは、フッ素樹脂から構成される場合、耐久性及び熱抵抗などの観点から、5〜500μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。また、ローラ長手方向への伝熱性を高めるために加圧部材の離型層の熱伝導率を向上させることを目的として、加圧部材の離型層はカーボンなどの導電材を含有することもできる。加圧ローラ910は、不図示の回転手段により、例えば表面速度180mm/secで回転するように構成されている。
本実施形態では、ローラタイプの加圧部材について主に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。加圧部材としては、例えば、ベルトタイプやパッドタイプのものも挙げられる。また、加圧部材は、定着部材とともに形成するニップ部の形状を制御するために、適宜、外径やゴム硬度等を変更することができる。
(定着部材ガイド)
定着装置は定着部材の回転駆動をガイドする定着部材ガイドを有することができる。図4(a)に示される定着装置は、定着部材ガイドとしてベルトガイド902を有する。ベルトガイド902は、断面略半円弧状の樋型に形成されたガイド部材である。ベルトガイド902は、図面に対し垂直な方向(奥行き方向)を長手方向とする横長の部材である。また、ベルトガイド902は定着部材の内面側に配置されている。
ベルトガイド902の材料としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイト)や液晶ポリマー等の耐熱性樹脂を用いることができる。
(加熱手段)
定着装置90は、定着部材900を加熱する加熱手段を有することができる。図4(a)に示される加熱手段は、ベルトガイド902の下面の中央付近に長手方向に沿って形成された溝内に配置されている加熱体903である。加熱体903はベルトガイド902に支持されている。加熱体903は、図4(b)の拡大図に示すように、ヒータ基板903a、通電発熱体903b、表面保護層903cを有し、低熱容量で且つ長手方向に細長いヒータである。ヒータ基板903aは、長手方向に細長い、薄板状の基板である。ヒータ基板903aは例えばアルミナ製である。そして、このヒータ基板903aの表面(ニップ部N側の面)には、ヒータ基板903aの長手方向に沿って通電発熱体(抵抗発熱体)903bが形成されている。通電発熱体903bは、例えば、線状あるいは細帯状に形成されることができる。そして、この通電発熱体903bは、通電発熱体903bを覆うように形成された表面保護層903cによって保護されている。表面保護層903cは、例えばガラスによって形成できる。ヒータ基板903aの長手方向の略中央の裏面(ニップ部N側の面とは反対側の面)には、温度検知部材904(例えば検温素子)が設けられている。温度検知部材904は、不図示の温度調節回路を介して加熱体903への電圧を制御することにより、定着部材900の温度調節が行われる。また、異常に温度が上がったときに強制的に加熱体903への電力供給を遮断するサーモスタット(不図示)も設けることができる。これらの温度検知部材やサーモスタット、温度調節回路は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な定着装置で用いられているものを用いることができる。
以下に、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(定着部材の分析方法)
<元素組成の分析>
離型層の元素組成は、X線光電子分光(XPS)装置(アルバック・ファイ社製、商品名「PHI1800」)を用いて分析した。離型層の表面に付着する付着物(不純物)の影響を避けるために、離型層の表面から5nmの深さまでアルゴン・エッチング処理を行い得られたエッチング面の直径0.8mmの領域について測定を行い、X線光電子分光スペクトルを得た(測定時真空度1×10−6Pa)。得られたスペクトルのC1s軌道、O1s軌道、Si2p軌道、F1s軌道の結合エネルギーに起因するピークから、炭素原子、酸素原子、ケイ素原子、フッ素原子の濃度(%)を求めた。なお、濃度の算出は、装置に付属するソフトを用いて行った。
<分子振動の分析>
離型層におけるSi−CHの存在は、フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)装置により測定した離型層表面の赤外吸収スペクトルにおけるSi−CHの変角振動ピーク(1250cm−1〜1260cm−1付近)の有無により確認できる。また、アクリロイルオキシ基の存在は、C=Oの伸縮振動ピーク(1650〜1850cm−1付近)の有無により確認できる。
なお、Si−C結合の存在は、Si−Cの伸縮振動ピーク(810cm−1〜840cm−1付近)より確認できる。また、Si−O結合の存在は、Si−Oの伸縮振動ピーク(1020cm−1〜1090cmcm−1付近)より確認できる。
離型層の赤外吸収スペクトルは、FT−IR装置(パーキンエルマー社製、商品名「SpectrumOne」)を用い、ATR法により測定した(測定雰囲気:温度23℃、相対湿度55%)。
<表面自由エネルギーの測定>
離型層の表面自由エネルギーは、非特許文献1に記載されている「北崎・畑の方法」で算出することができる。まず、水、n−ヘキサデカン、ジヨードメタンを標準液体として、定着ベルトの離型層の接触角を測定した(測定環境:温度23℃、相対湿度55%)。次いで、各接触角の測定結果を用いて、北崎・畑の理論(非特許文献1)に従って、「拡張Fowkesの式」から表面自由エネルギーを求めた。
測定には接触角計(協和界面科学製、商品名「DM−501」)を使用し、表面自由エネルギー解析には解析ソフトウェア(協和界面科学製、商品名「FAMAS」)を使用した。
<ナノインデンター硬度の測定>
定着ベルトのナノインデンター硬度(NI硬度)は、定着ベルトの弾性層/基材を除いた離型層/樹脂層の膜を離型層側からのナノインデンター硬度を測定することにより求めた。除く方法としては以下に限定されることはないが、例えば、弾性層がシリコーンゴムであればシリコーン樹脂溶解剤(株式会社カネコ化学製 商品名「eソルブ21RS」)を用いることで離型層、樹脂層、基材を溶かすことなく弾性層を除去して離型層/樹脂層の膜を得ることができる。溶解剤が利用できない場合は、離型層/樹脂層の膜を基材から引き剥がし、極力弾性層をはぎ取ることで対応してもよい。このような方法でナノインデンター硬度を測定した理由は、各種成膜条件における定着ベルト離型層の機械的強さを、弾性層の影響を受けずに測定できると考えたからである。
<押込み弾性率の測定>
樹脂層の押込み弾性率は、定着ベルトの弾性層/基材を除いた離型層/樹脂層の膜において樹脂層側からのナノインデンター法の測定により求めた。除く方法としては上記と同様である。このような方法で押込み弾性率を測定した理由は、引張試験等では樹脂層の影響を受けるためである。
ナノインデンター法の測定条件は以下である。
<測定条件>
測定機:ENT−1100(エリオニクス社製)
測定圧子:先端形状が正三角形のダイヤモンドBerkovich圧子
測定環境:23℃、55%RH
測定試料:5cm×5cmの大きさに離型層/樹脂層の膜を切断して試料を作製
最大荷重設定:50μN
最大荷重保持時間:1sec
押込み速度:最大荷重50μNに10secで達する速度で、時間に比例して加重を印加する
上記測定条件にてナノインデンター硬度(押込み硬さ)及び押込み弾性率をISO14577に準拠した方法で、付属ソフトを用いて求めた。なおそれぞれの計測値は、作製した測定サンプルにおいて、表面層の表面の任意の12点の測定を行い、最も高い点と低い点の2点を除いた、10点の算術平均とした。
<線膨張係数>
熱機械分析(TMA)法を用いて測定する。線膨張係数の測定は、試料を3mm×15mmの長方形とし、測定寸法を10mmとする試験片を作製し、昇温速度5℃/min、荷重2.0gの条件下で10℃から100℃まで昇温し、1℃辺りの試験片の伸び率を測定することで求めた。本実施例では、試験片としては、樹脂層単層を別途50μm厚で成膜して測定した。本例では樹脂層を別途作製したが、上記で得られた離型層/樹脂層の膜を試験片として用いても構わない。また、文献値を代用してもよい。
<マイクロゴム硬度>
定着部材表面のタイプCマイクロ硬度は、マイクロゴム硬度計(高分子計器株式会社製、商品名:マイクロゴム硬度計MD−1 capa タイプC)を用いて測定した。
<層厚の測定>
離型層の膜厚は、分光式膜厚計(ラムダビジョン製、商品名「TFW−100」)を用いて測定した。
(実施例1−1)
本実施例において、定着部材としてシームレスベルト形状の定着ベルトを作製した。本実施例では、PFAを樹脂層の材料として用い、その表面に離型層を形成した。
<定着ベルトの作製>
基材の原料として、表1に記載の材料を含む混合液を羽根型ミキサーで10分間予備攪拌した。
Figure 0006635768
次いで、三本ロールミルを用い、ロールを温度60℃の温水で加温しながら1時間前記混合液を混練して分散液を得た。得られた分散液を密閉式脱泡ミキサーを用いて脱泡したのち、円筒金型の内側に展開し、回転させながら段階的に温度350℃まで昇温させて溶媒を蒸発させた。最終的に温度350℃で30分間加熱することで、基材としてのポリイミド(PI)樹脂製シームレスベルト(厚み65μm、内径φ35mm)を作製した。このポリイミド樹脂製シームレスベルトを実施例1の基材として用いた。
平均粒径14.4μmの窒化アルミ粉末(東洋アルミニウム社製TOYALNITEFLAの分級品)をビニルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、商品名:TSL8311)を0.5質量%の濃度で含む水溶液中に浸した後、ろ過して水を除き、120℃で充分に乾燥させ、表面ビニル処理窒化アルミ粉末(付加型シリコーンとの反応性を有する不飽和基を含有するシラン化合物で表面処理された窒化物粉末)を準備した。続いて、この表面ビニル処理窒化アルミ粉末を、液状付加型シリコーンゴム組成物「DY35−561A/B」(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)に45vol%になるよう万能混合攪拌機を用いて混合し、弾性層として用いる液状付加型シリコーンゴム組成物を得た。
上記で作製した基材の外周面に、シリコーン系プライマー(商品名:DY35−067、東レダウコーニングシリコーン社製)を塗布、乾燥し、約1μmの厚さでプライマー層を形成した。続いて、このプライマー層の上に、上記液状付加型シリコーンゴム(Siゴム)組成物を塗布した後加熱硬化し、厚さ300μmの弾性層を形成し、定着ベルト下層1を得た。
次に、上記定着ベルト下層1の表面をUV処理した。具体的にはエキシマUV装置にて約100秒間の処理を行った。これによりシリコーンゴムである弾性層の表面の撥水性が変化し親水性になった。上記UV処理後、溶媒可溶型ポリイミド(商品名:TP003、ソマール株式会社製)をγ−ブチロラクトン(商品名:B0767、東京化成工業製)にて質量比5倍に希釈した液を上記UV処理後の弾性層上に塗布した後、210℃のオーブンにて10分間放置して溶剤を乾燥させて、厚さ10μmの樹脂層を形成した。
次に、下記表2に示す原料のうち、KBE−5103(38.0g)とX−21−584(3.7g)とIPA(40.0g)を室温にて撹拌しながら、6.8gのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(5wt%)を加えた。室温で24時間撹拌放置した後、上記溶液にトルエン200mlを加え、分液ロートにより反応溶液を飽和食塩水により洗浄した。その後、分液ロート内の水層が中性となるまで水洗を繰り返し、有機層を分取、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、減圧下でトルエンなどを留去させることで、加水分解性シラン化合物の縮合物1を得た。
Figure 0006635768
次に、前記樹脂層の表層をUV処理した。具体的にはエキシマUV装置にて約100秒間の処理を行った。これにより可溶型ポリイミドである樹脂層の表面の撥水性が変化し親水性になった。上記UV処理後、加水分解性シラン化合物の縮合物1を上記樹脂層上に塗布し、80℃のオーブンにて10分間放置して溶剤を乾燥させた。そして、前記定着ベルト下層1上の加水分解性シラン化合物の縮合物1の塗膜に対して、波長365nmの紫外線を積算光量が6400mJ/cmになるように照射して、縮合物1中のアクリロイルオキシ基を開裂させ、架橋させることにより、厚さ5μmの離型層を形成した。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
得られた定着ベルト(1−1)を図4に示した定着装置90に組み込んで、トナー離型性、画質、印字耐久性の評価を行った。トナーは一例として、懸濁重合法により製造された、ワックス成分を内包した略球形形状を有する粒径6μmの非磁性1成分ケミカルトナーを使用した。
<離型性の評価>
図4に示した定着装置に上記定着ベルト(1−1)を定着部材900として装着し、図2及び3に示した画像形成装置に該定着装置を組み込んだ。
常温常湿度環境下(23℃/60%)において、記録媒体上の前記トナー載り量を、ベタ画像出力時に、0.6mg/cmになるよう現像コントラストを調整した。次に、先端余白を5mmとして、そこから画像面積比率が25%となる部分まで、A4サイズ紙上に2色重ねの未定着ベタ画像(全トナー載り量:1.2mg/cm)を作製した。
定着条件は以下のようにした。加圧バネ(不図示)により加圧ローラ910側から約300Nの圧力をローラ両端に対して印加し、定着ベルト901の離型層との間に定着ニップ部Nを形成した。定着ベルト901の表面温度は150℃となるように加熱体903の温度調整を行い、180mm/secの速度で加圧ローラを回転させ、上記未定着ベタ画像を定着ニップ部Nに搬送することで定着した。この際、目視によりトナー離型性と画質を評価した。
本実施例の定着ベルトの周長はA4用紙の横長さ210mmの約半分程度であるため、定着ベルトはA4用紙上を約2周する。定着ベルトの離型層の離型性が悪い場合、1周目に定着部材側へ移動するトナー(以降オフセットトナー)が発生する場合がある。そして、定着部材側に移動したオフセットトナーは、2周目において、未定着トナーが存在しない白紙部分に定着して汚れとなり、その結果、画像不良を引き起こす。この汚れを目視で確認することにより、以下の基準で離型性を評価した。結果を表5に示す。
A:全くオフセットトナーが発生しない。
B:ごく軽微にオフセットトナーが発生するが、実用上問題無いレベルである。
C:オフセットトナーが画像不良として若干視認される程度に発生した。
D:オフセットトナーが著しく発生した。
<画質評価>
図4に示した定着装置に上記定着ベルト(1−1)を定着部材900として装着し、図2及び図3で示した画像形成装置に該定着装置を組み込んで検討を行った。
単色モードで常温常湿度環境下(23℃/60%)において、記録媒体上の前記トナー載り量を、ベタ画像出力時に、0.6mg/cmになるよう現像コントラストを調整し、先端余白を5mmとして、そこから画像面積比率が25%となる部分まで、A4サイズ紙上に、2色重ねの未定着ベタ画像(全トナー載り量:1.2mg/cm)を作成した。
本実施形態における定着条件に関しては、トナー離型性評価で用いた定着条件と同様の条件で行った。
上述の如くにして得られた定着画像を担持する転写紙を用いて、定着装置900を通過させた際の画質を、画像の濃度ムラや光沢ムラを目視で確認することにより、以下の基準で評価した。結果を表5に示す。
A:全く濃度ムラ、光沢ムラが視認できない。
B:ごく軽微に濃度ムラ、光沢ムラが発生するが実用上問題無いレベル。
C:濃度ムラ、光沢ムラが発生。
<通紙耐久性の評価>
印字耐久試験の定着条件は、評価用紙、未定着画像以外は、トナー離型性の評価と同様の条件とした。評価用紙としては、当該試験が加速耐久試験となるように、厚紙を使用した。厚紙上には、全面ベタ画像出力した際のトナー使用量の5%のトナー使用量となるような未定着画像を連続印字し、5000枚毎に定着ベルトの傷を確認した。定着ベルトの傷の確認は、普通紙と光沢紙を用いてベタ画像上の傷が要因と思われる光沢ムラ、濃度ムラの有無を視認することで確認し、以下のように基準で評価した。B以上であれば実用上は問題が無いレベルである。結果を表5に示す。
A:10万枚まで傷の発生がない。
B:5万枚まで傷の発生がない。
C:3万枚まで傷の発生がない。
D:1万枚以下で傷の発生がある。
<実施例1−2>
離型層を厚さ10μmで形成したこと以外は、実施例1−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。評価結果を表5に示す。
<実施例1−3>
離型層を厚さ3μmで形成したこと以外は、実施例1−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。評価結果を表5に示す。
<実施例1−4>
離型層を厚さ1μmで形成したこと以外は、実施例1−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。評価結果を表5に示す。
<実施例1−5>
離型層をフッ素含有紫外線硬化型のアクリレート混合物1(DIC株式会社製、商品名「ディフェンサFH−700」)とし、波長365nmの紫外線の積算光量を500mJ/mとし、厚さを5μmで形成したこと以外は、実施例1−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。評価結果を表5に示す。
<実施例1−6>
離型層の厚さを10μmで形成したこと以外は、実施例1−5と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。評価結果を表5に示す。
<実施例1−7>
離型層の厚さを3μmで形成したこと以外は、実施例1−5と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。評価結果を表5に示す。
<実施例1−8>
離型層の厚さを1μmで形成したこと以外は、実施例1−5と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。評価結果を表5に示す。
実施例1−1〜実施例1−8で作製した定着ベルトの構成および特性を表4に示す。
<比較例1−1>
下記表3に示す原料を室温にて撹拌して作成したアクリレート混合物2を用いて、実施例1−5と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表4に、評価結果を表5に示す。
Figure 0006635768
<比較例1−2>
離型層として、厚み30μmのPFA(三井デュポンフロロケミカル社製商品名:「テフロン」(登録商標)451HP−J)チューブを被覆し、その後、PFAチューブを加熱して接着したこと以外は実施例1−1と同様に、定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表4に、評価結果を表5に示す。
Figure 0006635768
Figure 0006635768
実施例1−1〜1−8で得られた定着ベルトの離型性は、すべて良好であった。この理由としては、離型層がSi−CHもしくはフッ素を含んでいるためと考えられる。
画質に関しては、どの定着ベルトも実用上問題無いレベルであった。
通紙耐久性に関しては、離型層のナノインデンター硬度が0.3GPa以上で、離型層の硬度が高いため、どの定着部材も良好な結果を示した。離型層の厚さが1μm以上であれば、優れた通紙耐久性が得られた。
比較例1−1〜1−2では、ナノインデンター硬度が0.3GPa未満と低いため、1万枚以下で表層に傷が発生し、耐久性が悪く、画像不良を起こした。
<実施例2−1>
実施例1−1で用いた定着ベルト下層1の表面をUV処理した。具体的にはエキシマUV装置にて約100秒間の処理を行った。上記UV処理後、溶媒可溶型ポリアミドイミド(商品名:HR−11NN、東洋紡(株)製、PAIと表記する。)をN−メチル−2−ピロリドン(商品名:M0418、東京化成工業(株)製)にて質量比5倍に希釈した液を上記UV処理後の弾性層上に塗布した後、210℃のオーブンにて10分間放置して溶剤を乾燥させて、厚さ10μmの樹脂層を形成した。
上記樹脂層上にフッ素含有紫外線硬化型アクリレート混合物1を厚さ5μmで、実施例1−5と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<実施例2−2>
樹脂層の厚さを2μmで形成したこと以外は、実施例2−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<実施例2−3>
樹脂層の厚さを5μmで形成したこと以外は、実施例2−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<実施例2−4>
樹脂層の厚さを30μmで形成したこと以外は、実施例2−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<実施例2−5>
樹脂層の厚さを50μmで形成したこと以外は、実施例2−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<実施例2−6>
樹脂層の厚さを1μmで形成したこと以外は、実施例2−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<実施例2−7>
弾性層の厚さを500μm、樹脂層の厚さを75μmで形成した以外は、実施例2−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<実施例2−8>
実施例1−1で用いた定着ベルト下層1の表面をUV処理した。具体的にはエキシマUV装置にて約100秒間の処理を行った。上記UV処理後、下記構造式で示される構成単位を有するポリアリレート樹脂(重量平均分子量:115000、テレフタル酸骨格とイソフタル酸骨格のモル比:テレフタル酸骨格/イソフタル酸骨格=50/50、PARと表記する。)50部を、モノクロルベンゼン300部へ溶解した液を上記UV処理後の弾性層上に塗布した後、140℃のオーブンにて10分間放置して溶剤を乾燥させて、厚さ10μmの樹脂層を形成した。
Figure 0006635768
上記樹脂層上にフッ素含有紫外線硬化型アクリレート混合物1を厚さ5μmで、実施例1−5と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<実施例2−9>
実施例1−1で用いた定着ベルト下層1の表面をUV処理した。具体的にはエキシマUV装置にて約100秒間の処理を行った。上記UV処理後、ポリエーテルサルホン樹脂(商品名:スミカエクセル4800G、住友化学株式会社製、PESと表記する。)50部を、ジメチルスルホキシド300部へ溶解した液を上記UV処理後のシリコーンゴム上に塗布した後、200℃のオーブンにて10分間放置して溶剤を乾燥させて、厚さ10μmの樹脂層を形成した。
上記樹脂層上にフッ素含有紫外線硬化型アクリレート混合物1を厚さ5μmで、実施例1−5と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<比較例2−1>
樹脂層の厚さを75μmで形成したこと以外は、実施例2−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<比較例2−2>
弾性層の厚さを500μm、樹脂層の厚さを2μmで形成した以外は、実施例2−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<比較例2−3>
実施例1−1で用いた定着ベルト下層1に、厚み30μmのPFAチューブを被覆、加熱接着した後、表面をUV処理した。具体的にはエキシマUV装置にて約600秒間の処理を行った。上記UV処理後、上記PFA層上にフッ素含有紫外線硬化型アクリレート混合物1を厚さ5μmで、実施例1−5と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
<比較例2−4>
実施例2−1と同様にして厚さ10μmの樹脂層までを形成した後、離型層として従来公知の方法である直流方式のプラズマCVD法によりダイヤモンドライクカーボン膜(DLC)1μmを上記樹脂層上に成膜し、定着ベルトを作製、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表6に、評価結果を表7に示す。
Figure 0006635768
Figure 0006635768
実施例2−1〜2−9、比較例2−1〜2−4で作製された定着ベルトの離型性は、すべて実用上問題無いレベルであった。また、画質に関しても、実施例2−1〜2−9の定着ベルトは実用上問題無いレベルであった。実施例1と同様に、離型層のナノインデンター硬さが0.3GPa以上と高く、MD−1typeC硬度が65〜90の間にあったためと考えられる。また、樹脂層の厚さ:t2[μm]×押込み弾性率:E2[GPa]の値が10以上250以下の範囲の場合、通紙耐久性も維持しつつ、画質もさらに良好であった。
一方、比較例2−1では、ナノインデンター硬度は1.1GPaと高く、通紙耐久性は良好なものの、MD−1typeC硬度も95と高い値であった。そのため紙の繊維に対しての追従性が低く、普通紙上のカラー画質において濃度ムラ、光沢ムラが視認され、画質に劣る結果となった。
比較例2−2では、ナノインデンター硬度は0.7GPaと高く、樹脂層の厚さ[μm]×押込み弾性率[GPa]の値(t2E2)も10であったが、MD−1typeC硬度が62と低かった。そのため、通紙時に表層が大きく変形し、表層にクラックが発生し、画像不良を起こした。
比較例2−3では、ナノインデンター硬度は0.7GPaと高いものの、樹脂層の線膨張係数が1.0e−4/℃より高く、定着時の熱により表層にクラックが発生して耐久性が低く、画像不良を起こした。
比較例2−4では、ナノインデンター硬度は10.0GPaと高すぎるため、MD−1typeC硬度が83であったが、通紙時の表層の変形によりクラックが発生し、画像不良を起こした。あまりに硬いと紙繊維へ追従する際にクラックが発生してしまうと考えられる。
<実施例3−1>
実施例2−1と同様にして厚さ10μmの樹脂層までを形成した。上記樹脂層上に下記表8に示す原料を室温にて撹拌して作成したアクリレート混合物3を用いて厚さ5μmで、実施例2−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表9に、評価結果を表10に示す。
Figure 0006635768
<実施例3−2>
樹脂層の厚さを50μmで形成したこと以外は、実施例3−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表9に、評価結果を表10に示す。
<実施例3−3>
樹脂層の厚さを5μmで形成したこと以外は、実施例3−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表9に、評価結果を表10に示す。
<実施例3−4>
樹脂層の厚さを25μmで形成したこと以外は、実施例3−1と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表9に、評価結果を表10に示す。
<比較例3>
実施例1−1で作成した基材としてのポリイミド樹脂製シームレスベルトの表面をUV処理した。具体的にはエキシマUV装置にて約100秒間の処理を行った。上記UV処理後、上記基材上に直接フッ素含有紫外線硬化型アクリレート混合物1を厚さ5μmで塗布した以外は、実施例1−5と同様にして定着ベルトを作製し、評価した。作製した定着ベルトの構成および特性を表9に、評価結果を表10に示す。
Figure 0006635768
Figure 0006635768
実施例3−1〜3−4、比較例3で作製された定着ベルトの離型性及び耐久性は、すべて実用上問題無いレベルであった。一方、画質に関しては、実施例3−1〜3−4で作製された定着ベルトは実用上問題無いレベルであった。実施例1と同様に、離型層のナノインデンター硬さが0.3GPa以上2.5GPaの範囲であり、MD−1typeC硬度が65〜90の間にあったためと考えられる。さらに樹脂層の厚さ:t2[μm]×押込み弾性率:E2[GPa]の値が10以上250以下であったためと考えられる。
一方比較例3では、ナノインデンター硬度は1.2GPaと高く、直接基材上に離型層を塗布しているため、通紙耐久性には優れるものの、樹脂層及び弾性層を有さないため、MD−1typeC硬度が98と高い。そのため、紙の繊維凹凸に対しての追従性が低く、普通紙上のカラー画質において濃度ムラ、光沢ムラが視認される結果となった。
図5に離型層のナノインデンター硬度が0.3GPa以上2.5GPa以下の実施例及び比較例について、横軸を樹脂層の厚さ:t2[μm]×押込み弾性率:E2[GPa]、縦軸をMD−1typeC硬度として、整理した。図中の○は離型性、耐久性、画質のすべてにおいてAの判定を得たものである。△はいずれかの指標においてBの判定があるものの、実用上問題のないレベルの実施例である。×はいずれかの指標において実用上問題のあるレベルにある比較例である。図5から、離型層のナノインデンター硬度が0.3GPa以上2.5GPa以下において、MD−1typeC硬度が65以上90以下であれば、実用上問題のない優れた離型性、耐久性、画質を達成できることが分かる。さらに、樹脂層の厚さ:t2[μm]×押込み弾性率:E2[GPa]の値(t2E2)が10以上250以下とすることで、紙繊維への追従性を良好に制御でき、すぐれた耐久性、画質を達成できることが分かる。
10 中間転写ベルト
14,15,16 支持ローラ
18Y,18C,18M,18BK,118 画像形成ユニット
20Y,20C,20M,20BK,120 感光体ドラム
21 画像書き込み装置(露光装置)
22 転写ローラ
56 給紙機構部
57 排紙トレイ
200 画像形成装置
201 原稿読取装置(イメージスキャナー)
202 操作部(領域指定装置)
203 プリンタコントローラー
204 制御部(CPU)
206Y,206C,206M,206Bk,1206 帯電装置
208Y,208C,208M,208Bk,1208 現像装置
209Y,209C,209M,209Bk 転写帯電装置
213Y,213C,213M,213Bk,1213 クリーニング装置
90 定着装置
900 定着部材
901 定着ベルト
901a 基材
901b 離型層
901c 弾性層
901d 樹脂層
902 ベルトガイド
903 加熱体
903a ヒータ基盤
903b 通電発熱体
903c 表面保護層
904 温度検知部材(検温素子)
910 加圧部材(加圧ローラ)
911 基材
912 離型層
913 弾性層
P 記録媒体

Claims (6)

  1. 基材と、弾性層と、樹脂層と、離型層と、をこの順に有する定着部材であって、
    該離型層の表面におけるMD−1TypeC硬度が65以上90以下であり、
    該定着部材から該基材と該弾性層とを除いて得られる積層体の該離型層の表面におけるナノインデンター法による硬度が0.3GPa以上2.5GPa以下であり、かつ、
    該樹脂層の線膨張係数が1.0×10−4/℃以下であることを特徴とする定着部材。
  2. 前記樹脂層が下記式を満たす請求項1に記載の定着部材:
    250≧層厚t2[μm]×押込み弾性率E2[GPa]≧10。
  3. 前記離型層がフッ素系重合体およびケイ素原子にメチル基が結合しているケイ素原子を含むポリシロキサンの少なくとも一方を含む請求項1〜2のいずれか1項に記載の定着部材。
  4. 前記樹脂層がポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエーテルサルホンからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の定着部材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着部材と、
    前記定着部材を加熱する加熱手段と、
    前記定着部材とともに、記録材を有する記録媒体を加熱及び加圧するニップ部を形成する加圧部材と、を備える定着装置。
  6. 請求項5記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
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