JP6635581B2 - ケイ素及びテルルをドープしたスクッテルダイト熱電変半導体、その製造方法及びそれを用いた熱電発電素子 - Google Patents

ケイ素及びテルルをドープしたスクッテルダイト熱電変半導体、その製造方法及びそれを用いた熱電発電素子 Download PDF

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Description

本発明は、スクッテルダイト(skutterudite)化合物からなる熱電半導体に関し、とりわけその原子籠状構造への二重ドーピングによって、通常の高性能化メカニズムの一つである籠状構造の空間内への希土類原子挿入によるラットリング(rattling)に頼ることなく、希土類なしで高い熱電性能を実現した熱電半導体に関する。本発明は更にそのような希土類を含まない高性能なスクッテルダイト熱電半導体の製造方法及びそれを用いた熱電発電素子にも関する。
従来、熱電半導体については、現代社会で効率的にエネルギーを使用するために盛んな材料研究が行われており、信頼性の高い静かな冷却装置や発電機に使用するための大きな需要が築かれた。
また、廃熱回収の分野においては、世界での省エネルギーが進んだ我が国でも、一次供給エネルギーの約3/4が熱エネルギーとして廃棄されているのが現状である。そのような社会情勢で、熱電発電素子は熱エネルギーを回収して有用な電気エネルギーに直接変換できる唯一の固体素子として注目される。しかし、このような発電に用いるには希少で高価で資源が特定地域に偏在している傾向のある希土類元素を含まないで素子を形成することが望ましい場合が多い。
スクッテルダイト化合物は、非特許文献1、2に示されるように、中高温域できわめて高い熱電性能を示す系として知られている。しかしながら、その高性能のメカニズムは、原子の籠状構造の空間内に希土類原子やBaを挿入することで、その希土類原子やBaが非特許文献3に示されるように、ラットリングと呼ばれる現象を起こして、周波数の低いアインシュタイン振動子として作用し、熱を伝番する音響フォノンを散乱して熱伝導率を下げることにあった。そのため、高性能のスクッテルダイト熱電材料は構成元素に元素戦略的に望ましくない希土類原子や酸化に対してきわめて敏感なBaを含むことが不可欠であった。更には、Baだけでなく、希土類元素を含む材料は耐酸化性が低いため、高温環境下で使用されることが前提の熱電半導体としては、希土類の使用を回避できれば好都合である。また、スクッテルダイト化合物に関しては、挿入原子ではなく、非特許文献4に示されるように、Sbの置換ドープもTeなど様々行われたが、籠状構造の空間内への挿入原子無しで十分大きな性能指数ZTを達成できるような材料は得られていない。そして、Siの置換ドープ、ましてやSiを含む他の元素の二重ドープに成功した例も報告されていない。
本発明の課題は、上述の従来の問題点を解消し、スクッテルダイトからなる化合物に対しケイ素(Si)とテルル(Te)とを同時にドープすることにより希土類フリーの高性能熱電半導体を提供すること、更にはそのようなスクッテルダイト熱電半導体を利用した熱電発電素子を提供することにある。
本発明の一側面によれば、以下の組成を有するスクッテルダイト熱電半導体が与えられる。
CoSb3−x−ySiTe(ここで、0.003<x<0.25、0.025<y<0.40)
ここで、0.025<x<0であってよい。
また、Coの一部を遷移元素で置換してよい。
また、前記遷移元素はNiまたはZnであり、Coの0〜7.5原子%が置換されていてよい。
また、前記遷移元素はFeであり、Coの0〜15原子%が置換されていてよい。
また、0.025<y<0.25であってよい。
また、内部に空孔を含んでよい。
また、前記空孔のうちの80%のもののサイズは1〜15μmの範囲であってよい。
また、相対密度が82〜92%の範囲であってよい。
また、熱電性能指数が1.2以上であってよい。
本発明の他の側面によれば、n型熱電半導体として上記何れかのスクッテルダイト熱電半導体を使用した熱電発電素子が与えられる。
本発明の更に他の側面によれば、Co源、Sb源、Si源及びTe源を混合した原料混合物を準備し、前記原料混合物を焼成するステップを有する、以下の組成を有するスクッテルダイト熱電半導体の製造方法が与えられる。
CoSb3−x−ySiTe(ここで、0.003<x<0.25、0.025<y<0.40)
ここで、0.025<x<0.25であってよい。
また、前記Co源、Sb源、Si源及びTe源の少なくとも一つは当該元素の単体であってよい。
また、前記Co源、Sb源、Si源及びTe源はコバルトアンチモン化合物、コバルトシリサイド、コバルトテルライド、アンチモンテルライド及びシリコンテルライドからなる群から選択された少なくとも一つを含んでよい。
また、更にNi、Zn、Fe等の遷移元素を含む遷移元素源を前記原料混合物に含み、前記CoSb3−x−ySiTe中のCoの一部を前記遷移元素で置換してよい。
また、0.025<y<0.25であってよい。
また、前記焼成は真空または不活性雰囲気中にて550℃〜1150℃の温度範囲で行ってよい。
また、前記焼成は1時間以上行ってよい。
また、前記焼成後、粉砕して再度焼成を行う追加焼成を少なくとも1回行ってよい。
また、前記焼成または前記追加焼成の後、アニーリングを行ってよい。
また、前記アニーリングは550℃〜750℃の温度範囲で行ってよい。
また、前記アニーリングは1時間〜15時間の範囲で行ってよい。
本発明によれば、高い熱電性能を有する希土類を含まないスクッテルダイト熱電半導体を提供することができる。
実施例の希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体のX線回折パターンを示す図。 実施例の希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体の導電率を示すグラフ。右側のグラフはアニーリングをした試料についての値を示す。 実施例の希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体のゼーベック係数を示すグラフ。右側のグラフはアニーリングをした試料についての値を示す。 実施例の希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体の熱電パワーファクターを示すグラフ。右側のグラフはアニーリングをした試料についての値を示す。 実施例の希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体の熱伝導率を示すグラフ。右側のグラフはアニーリングをした試料についての値を示す。 実施例の希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体の性能指数を示すグラフ。右側のグラフはアニーリングをした試料についての値を示す。 希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体試料の実物の写真。 希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体試料のSEM像。左がアニーリングをしたもので、空孔が存在している。 本発明の追加の実施例の希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体(アニーリング前)の導電率を示すグラフ。 本発明の追加の実施例の希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体(アニーリング前)のゼーベック係数を示すグラフ。 本発明の追加の実施例の希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体(アニーリング前)の熱伝導率を示すグラフ。 本発明の追加の実施例の希土類を含有しないスクッテルダイト熱電半導体(アニーリング前)の性能指数を示すグラフ。 本発明の熱電発電素子の概念的な構造を示す側面図。
本発明によれば、SiとTeとが共にドープされたスクッテルダイト化合物からなるn型熱電半導体が与えられる。この熱電半導体は下式に示す組成を有する立方晶系である。
CoSb3−x−ySiTe
(ここで、0.003<x<0.25かつ0.025<y<0.40、好ましくは0.025<x<0.25、更に好ましくは0.025<y<0.25)
この熱電半導体はスクッテルダイトからなる化合物にSiとTeとを共にドープしたものである。リートベルト解析と各種の測定結果等から、スクッテルダイトの籠状構造に対してSiとTeとを共にドープした構造であると考えられる。そして、この構造により、非特許文献1にあるような通常の高性能化メカニズムの一つである籠状構造の空間内への希土類原子挿入によるラットリングに頼ることなく、導電率を比較的損なわず効果的に籠状構造内に熱伝導率を低減する乱れを導入することができ、そのため、本発明の熱電半導体においては、上述の二重ドーピングを行うことで、希土類や酸化に対してきわめて敏感なBaを含まないにも関わらず高熱電性能が得られるという効果が発現すると考えるのが合理的である。また、希土類元素やBaを含有している材料は酸化し易いという問題もあるが、本発明の熱電半導体は希土類やBaを使用しないため、この面でも有利である。
また、この熱電半導体CoSb3−x−ySiTeはSiとTeとの組み合わせの結果、原子結合が適度に弱くなるために、例えば550℃〜750℃のアニーリングによって容易に適度な空孔を有する試料が作成でき、電気伝導をそれほど損なわずに、熱伝導率の一層大きな低減が可能となる。従って、本発明の熱電半導体において、アニーリングによりさらなる高性能化を実現することができ、具体的には1.2以上の熱電性能指数ZTを達成できた(図6参照。ここで、グラフ中の水平の破線がZT=1.2を示す)。
本発明の希土類を含まない高性能スクッテルダイト熱電半導体の製造に当たっては、先ず、組成がCoSb3−x−ySiTe(原料組成)となるように原料を混合する。原料は、Co、Sb、Si及びTeのそれぞれ単体としてもよいし、あるいは出発原料としてコバルトアンチモン化合物、コバルトシリサイド、コバルトテルライド、アンチモンテルライド、シリコンテルライド等を使用してもよい。追加の実施例の結果まで考えれば、0.003<x<0.25かつ0.025<y<0.40とすることが好ましく、更に好ましくは0.025<x<0.より一層好ましくは0.025<y<0.25とする。xが0.003以下あるいはyが0.025以下である場合には高い熱電性能が得られない。また、xが0.25以上の場合においては、その製造過程で不純物としてSi等の第二相が現れ、粉末試料(つまり、所望の構造を有するスクッテルダイト化合物)の収率が悪くなる。また、yに関しては、0.40以上だと、SbTe等の第二相が現れ、粉末試料(つまり、所望の構造を有するスクッテルダイト化合物)の収率が悪くなる。
この混合物を真空またはアルゴンなどの不活性雰囲気中にて焼成する。焼成温度は550℃〜1150℃であり、1時間以上焼成することが好ましい。更に長時間焼成を行っても問題はないが、時間と消費電力の浪費となる。例えば100時間超等の技術常識を外れた長時間の焼成は無意味である。繰り返しの焼成(ここでは焼成後に粉砕するというサイクルを繰り返す)やアニーリングによって、特にSiがスクッテルダイト構造中により良好に取り込まれてSbを置換するので、ドーピングを更に完全に達成できるようにするという点で、これらの処理を行うことが好ましい。また、アニーリングにより、本発明の熱電半導体中に空孔を形成することで、導電率の大きな変化を伴うことなく熱伝導率を低下させることができる。アニール前の試料は相対密度が95%〜97%で、図8右側のように、空孔が少ない状態である。アニーリングによって図8左側のように顕著な空孔が形成された。全空孔の80%のサイズが1〜50μmの範囲に入り、アニーリング後の相対密度は好ましくは82〜92%である。このアニーリングは1時間以上行うことが望ましい。これより短時間では熱電性能の向上は達成できない。また、アニーリングによる熱電性能の向上は10時間程度でほぼ飽和し、15時間まで延長した場合でも更なる性能向上はほとんど見られなかった。従って、10時間を大きく超えるアニーリングを行うことはあまり意味がない。
なお、上で本発明のスクッテルダイト熱電半導体の組成をCoSb3−x−ySiTeとしたが、Coの一部をNi、Zn、Fe等の遷移元素で置換してもほぼ同等な熱電性能が得られる。この場合、Ni及びZnはCoの最大7.5原子%を置換でき、またFeはCoの最大15%を置換できることが判った。すなわち、本発明のスクッテルダイト熱電半導体の組成式は以下のように更に一般化することができる。
(Co1−z,T)Sb3−x−ySiTe
(ここで、0.003<x<0.25、0.025<y<0.40(好ましくは0.025<x<0.25、一層好ましくは0.025<y<0.25)、0≦z≦0.15、TはNi、Zn、Fe等の遷移元素)
上述した本発明のn型のスクッテルダイト熱電半導体を使用することにより、従来は不可能とされていた廃棄熱からのエネルギー回収が可能になる。具体的には、これら両熱電半導体を使用して、これに限定する意図はないが、例えば図13に概念的に示す構造の熱電発電素子を構成することができる(特許文献3の熱電発電素子も参照されたい)。
図13において、熱電発電素子31の構成は、低温となる側の電極35に、例えば半田等によって熱電材料チップであるn型半導体32が接合され、n型半導体32の反対側の端部と高温となる側の電極34とが同じく半田等によって接合されるようになっている。さらに同じ高温側電極34と熱電材料チップであるp型半導体33とが接合され、p型半導体33の反対側の端部は別のn型半導体32が接合された別の低温側電極35に接合されている。このような構成にすることによって電気的に直列した接続が完成する。
電極34が高温、電極35がそれに較べて低温となるような環境に熱電発電素子31を設置して端部の電極を電気回路等に接続すると、ゼーベック効果によって電圧が発生し、矢印で示すように、電極35→n型半導体32→電極34→p型半導体33と電流が流れる。つまり、n型半導体32内の電子が高温の電極34から熱エネルギーを得て低温の電極35へ移動してそこで熱エネルギーを放出し、それに対してp型半導体の正孔が高温の電極34から熱エネルギーを得て低温の電極35へ移動してそこで熱エネルギーを放出するという原理によって電流が流れる。
このような構造を有する熱電発電素子中のn型半導体32として、本発明により提供されるところの、例えば実施例で例示するようなn型のスクッテルダイト熱電半導体を用いることで、従来以上に良好な熱回収が可能となる。
以下では実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、この実施例はあくまで本発明の理解を助けるためにここに挙げたものであり、本発明をこれに限定するものでないことを理解しなければならない。
下式の組成から出発して希土類を含まないスクッテルダイト熱電半導体を合成し、その特性を評価した。
CoSb3−x−ySiTe
(ここで、0.025<x<0.25、0.025<y<0.40)
製造に当たっては、目的物質を構成する各元素の単体(Co、Sb、Si及びTe)の粉末を混合した混合物をプレス成型(CIP)し、石英管に内包して真空中にて焼成を行った。この真空中での焼成は1050℃にて5時間行った。その後は、800Cまで冷やし2時間保持したあとは600Cまで冷やして15時間保持したあと室温まで自然冷却した。このプロセスは相の合成には必須ではないが、これによってより均一な良い試料が得られた。得られた試料を粉砕し、上記の成形・加熱・反応プロセスをもう一度行った。上記xとyの範囲内の各種の原料組成で、かつ上記温度範囲内の各種の温度、各種の処理条件の組合せの下で合成を行い、その結果、CoSb3−x−ySiTe(試料番号2AK062、(x,y)=(0.175,0.075);試料番号3AK129、(x,y)=(0.075,0.175))の試料が得られた。また、上述したところの、Coの一部(ここでは1.25%)のNiによる置換を行った試料(試料番号2AK092)、及びTeを試料番号3AK129よりも増加させた試料(試料番号2AK091、(x,y)=(0.075,0.300))も実施例の一部として作製し、その測定結果も示した。なお、比較例としてのSiのみをドープしたy=0(x=0.125)の試料(試料番号2AK082)及びTeのみをドープしたx=0、y=0.175の試料(試料番号2AK095)についての結果も示した。以下の表に、上記実施例及び比較例の試料番号と組成をまとめて示す。
仕込み組成と結果物の組成に大きな差はないと思われる。化学分析によって、例えば3AK129を調べた結果、仕込み組成のCoSb2.75Si0.075Te0.175に対して結果物の組成はCoSb2.76±0.04Si0.05±0.04Te0.16±0.04と求められた。
焼成後の試料を用いて、X線回折パターン、熱電特性等の測定を行った。なお、X線回折パターン測定以外は、焼成終了後に一度粉砕し、それを熱伝測定のために再度成型した試料で測定を行ったが、この再成型の際に放電プラズマ焼結(SPS)を使用した。図1に、CoSb3−x−ySiTe(試料番号2AK062、(x,y)=(0.175,0.075))のX線回折パターンを示す。このX線回折パターンに基づき、Rietveldt解析によって、ほぼ単相のスクッテルダイト試料が得られていることを確認した。すなわち、図1中の下部以外の部分には、所々に鋭いピークを有するグラフが2つ、それぞれ淡色及び濃色で描かれている。これらのうち濃色のグラフYcalcは、試料がスクッテルタイトの結晶構造を有すると仮定して回折パターンをフィッテングして求めた計算結果のグラフであり、淡色のグラフYobsは実際の観測値である。図1から明らかなように両者はほとんど一致し、また図1中の下部に示した両者の差Yobs−Ycalcが非常に小さいことから、上述の結論が得られた。
また、図2〜図6にはそれぞれ実施例及び比較例の希土類を含まないスクッテルダイト熱電半導体の導電率、ゼーベック係数、パワーファクター、熱伝導率及び熱電性能指数を示す。これらの図中の左側のグラフはアニーリングを行っていない試料の測定結果を示し、右側のグラフはアニーリング後の試料についての測定結果を示す。このアニーリングの具体的な条件は、再成型して図2〜図6の左側のグラフに示す特性の測定後の試料を真空中で石英管に封入して、600℃で15時間の処理を行ったものである。
図3からわかるように、Teのドーピングによって電子注入が行われて全温度域でn型(ゼーベック係数が負)になっており、また、Siのみの試料に関しては、Siのドーピング効果はホール注入であるので、唯一p型を示すことにより、それぞれが籠状構造内のSbと置換ドーピングされていることが示唆された。また、Siのみの試料のアニーリングによって、全温度域で完全にp型になっており、アニーリングによって置換ドーピングが促進されたことが分かり、これがSiドープの初めての成功例である。また、SiとTeの両方のドーピングによって、図2に示す導電率に比べて図5に示す熱伝導率が大きく低減する効果があることも分かる。なお、図2〜図6の右側に示されているアニーリング後の特性から、SiとTeの両方のドーピングによってボンディングが弱くなり、その結果、アニーリングによる構造変化を生起させてこのような特性変化をもたらしたことが示唆される。またこのアニーリングにより、図8の左側(アニーリング後)と右側(未アニーリング)との比較からわかるように細孔が形成され、導電率を大きく損なわないが、熱伝導率のさらなる低下(図5)、またこれによる熱電性能指数ZTの向上(最大値ZT=1.23)(図6)につながっていることが分かる。この効果は他のスクッテルダイトでは報告されたことがなく、SiとTeの同時ドーピングにより発現することを本願発明者が初めて見出した。
更に、Coの一部を遷移金属(ここではNi)で置換しても悪影響はほとんど出ないことも,試料2AK092により確認した。なお、データは省略したが、Ni以外にZn及びFeによる置換についても実験済みであり、同様な結果を得た。また、上述の実施例では真空中での焼成を行ったが、これに限定されるものではなく、不活性雰囲気中での焼成を行ってもよい。例えば、Ar中で600℃、1時間の焼成を行うことで、ほぼ同等のスクッテルダイト熱電半導体を製造することができた。
[追加の実施例]
本願発明者が更に実験を進めた結果、組成式
CoSb3−x−ySiTe
において、yの範囲はそのままでxを0.003<x≦0.25の範囲まで減少させて得られるスクッテルダイト熱電半導体も良好な性能を発揮することを見出した。例として、上記実施例と同じ処理条件で製造したスクッテルダイト熱電半導体CoSb3−x−ySiTe((x,y)=(0.005,0.175))の熱電的性質を測定した結果である導電率、ゼーベック係数、熱伝導率及び性能指数をそれぞれ図9〜図12に示す。なお、図9〜図12に示した値は全てアニーリング前の値である。この実施例の試料に対して上記実施例と同じアニーリングを行うことで、同様な細孔の生成とそれによる熱伝導率の低下が起こり、その結果として当然性能指数が向上する。
なお、上に書いたように、試料をSPS焼結させたが、これは試料を緻密にし、また成型することが目的である。このような成型を行った結果の写真を図7に示す。これにより電気抵抗が下がり、熱電性能が向上する。従って、本発明においてはSPS焼結は必須のものではないことに注意されたい。
以上、詳細に説明したように、本発明は、廃熱回収など、産業上大いに利用されることが期待される。
31:熱電発電素子
32:n型半導体
33:p型半導体
34:電極
35:電極
1442540840959_1.mst&sTime=0号公報 1442540840959_2.mst&sTime=0号公報 特開2008−177356号公報
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Claims (21)

  1. 以下の組成を有し、n型である、スクッテルダイト熱電半導体。 CoSb3−x−ySiTe(ここで、0.003<x<0.25、0.025<y<0.40)
  2. 0.025<x<0.25である、請求項1に記載のスクッテルダイト熱電半導体。
  3. Coの一部を遷移元素で置換した、請求項1または2に記載のスクッテルダイト熱電半導体。
  4. 前記遷移元素はNiまたはZnであり、Coの0〜7.5原子%が置換されている、請求項3に記載のスクッテルダイト熱電半導体。
  5. 前記遷移元素はFeであり、Coの0〜15原子%が置換されている、請求項3に記載のスクッテルダイト熱電半導体。
  6. 0.025<y<0.25である、請求項1から5の何れかに記載のスクッテルダイト熱電半導体。
  7. 内部に空孔を含む、請求項1から6の何れかに記載のスクッテルダイト熱電半導体。
  8. 前記空孔のうちの80%のもののサイズは1〜15μmの範囲である、請求項7に記載のスクッテルダイト熱電半導体。
  9. 相対密度が82〜92%の範囲である、請求項1から8の何れかに記載のスクッテルダイト熱電半導体。
  10. 熱電性能指数が1.2以上である、請求項1から9の何れかに記載のスクッテルダイト熱電半導体。
  11. Co源、Sb源、Si源及びTe源を混合した原料混合物を準備し、
    前記原料混合物を焼成するステップを有する、請求項1〜10のいずれかに記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
  12. 前記Co源、Sb源、Si源及びTe源の少なくとも一つは当該元素の単体である、請求項11に記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
  13. 前記Co源、Sb源、Si源及びTe源はコバルトアンチモン化合物、コバルトシリサイド、コバルトテルライド、アンチモンテルライド及びシリコンテルライドからなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項11または12に記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
  14. 更にNi、Zn及びFeからなる群から選択される遷移元素を含む遷移元素源を前記原料混合物に含む、請求項11から13の何れかに記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
  15. 前記焼成は真空または不活性雰囲気中にて550℃〜1150℃の温度範囲で行う、請求項11から14の何れかに記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
  16. 前記焼成は1時間以上行う、請求項11から15の何れかに記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
  17. 前記焼成後、粉砕して再度焼成を行う追加焼成を少なくとも1回行う、請求項11から16の何れかに記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
  18. 前記焼成の後、アニーリングを行う、請求項11から17の何れかに記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
  19. 前記追加焼成の後、アニーリングを行う、請求項17に記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
  20. 前記アニーリングは550℃〜750℃の温度範囲で行う、請求項18または19に記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
  21. 前記アニーリングは1時間〜15時間の範囲で行う、請求項18から20の何れかに記載のスクッテルダイト熱電半導体の製造方法。
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