JP6634966B2 - 非水系電解質二次電池用正極電極とこれに用いられる正極材料、およびこれを利用した二次電池、ならびに非水系電解質二次電池用正極電極の製造方法 - Google Patents

非水系電解質二次電池用正極電極とこれに用いられる正極材料、およびこれを利用した二次電池、ならびに非水系電解質二次電池用正極電極の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、非水系電解質二次電池用正極電極とこれに用いられる正極材料、およびこれを利用した二次電池、ならびに非水系電解質二次電池用正極電極の製造方法に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発が強く望まれている。また、ハイブリット自動車を始めとする電気自動車用の電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。
リチウムイオン二次電池は、正極活物質を主要構成成分とする正極と、負極活物質を主要構成成分とする負極と、非水系電解液とから構成され、負極および正極活物質は、リチウムを脱離・挿入することの可能な材料が用いられている。
このようなリチウムイオン二次電池は、現在研究・開発が盛んに行われており、層状型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
これまで提案されている材料としては、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)やコバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)などを挙げることができる。
上記リチウム複合酸化物を自動車用途として開発するためには、現状よりも高出力が得られる材料に改良することすなわち正極材の低抵抗化が重要となる。
特許文献1には、Liイオンの吸蔵および放出が可能なリチウム複合酸化物粉末の表面にMoおよびWからなる少なくとも1種類の元素とLiとを含む表面層を有するリチウム二次電池用正極活物質が提案されている。この提案は、リチウムイオン二次電池の更なる高容量化・高エネルギー密度化や大型化に対応するため、高い初期放電容量を大きく劣化させずに、熱的安定性が良好な正極活物質を提供することを目的としたものであって、出力特性の改善については何ら言及されていない。
また、特許文献2には、リチウムニッケル複合酸化物粉末に、タングステン化合物を溶解させたアルカリ溶液を添加、混合してリチウムニッケル複合酸化物粒子表面にタングステン酸リチウムを形成させることで、正極抵抗が低減され、出力特性が改善されることが報告されている。
また、特許文献3には、リチウムニッケル複合酸化物粉末にタングステン酸リチウムを混合させることで、正極抵抗が低減し出力特性が改善されることが報告されている。
これらの提案は、タングステン酸リチウムにより出力特性の改善を可能としているが、高エネルギー密度や高出力を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発に対する要求から、更なる高出力化が望まれている。
特開2002−75367号公報 特開2013−125732号公報 特開2013−171785号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、高出力が得られる非水系電解質二次電池用正極電極ならびにその二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため、非水系電解質二次電池用正極活物質として用いられるリチウム金属複合酸化物の諸特性および電池の正極抵抗に対する影響について検討した結果、リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質と、正極活物質の表面に形成された非晶質状態のリチウムイオン伝導性酸化物からなる被覆層と、から、正極を構成することで、電池の電解液/正極界面抵抗を大幅に低減して出力特性を向上させることが可能となるとの知見を得て、本発明を完成した。
第1発明の非水系電解質二次電池用正極電極は、リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質の表面に、リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の被覆層が形成された正極を有し、該被覆層は前記リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の非晶質からなり、前記被覆層は、4価以上の価数の金属元素とリチウムとからなるリチウム含有酸化物により形成されており、前記リチウム含有酸化物は、タングステンとリチウムとからなるタングステン酸リチウムから形成されていることを特徴とする。
発明の非水系電解質二次電池用正極電極は、第発明において、前記タングステン酸リチウムは、LiWO、LiWO、Li、LiWO、7LiWO)・4HOからなる群から選択されるいずれか一の化合物を含むことを特徴とする。
発明の非水系電解質二次電池用正極電極は、第1発明または発明のいずれかにおいて、前記リチウム金属複合酸化物が、リチウムイオンの拡散方向がa軸方向に限定された層状構造を有することを特徴とする。
発明の非水系電解質二次電池用正極電極は、第1発明または発明のいずれかにおいて、前記正極活物質が粒子状であり、前記被覆層が、前記正極活物質の粒子の表面に形成されていることを特徴とする。
発明の非水系電解質二次電池用正極材料は、第発明の非水系電解質二次電池用正極電極に用いられる正極材料であって、前記正極活物質の粒子の表面に前記被覆層が形成されていることを特徴とする。
発明の非水系電解質二次電池は、第1発明から第発明のいずれかの非水系電解質二次電池用正極電極が用いられていることを特徴とする。
発明の非水系電解質二次電池用正極電極の製造方法は、リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質の表面に、リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の被覆層を、25〜200℃の範囲の雰囲気温度中で、物理的成膜法を用いて形成する工程を有することを特徴とする
第1発明によれば、非水系電解質二次電池用正極電極において、リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質の表面に、リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の被覆層が形成されることで正極界面抵抗が低減され出力特性が向上するが、該被覆層が非晶質を含むことにより、正極抵抗をさらに低減させることができる。このため、電池の電解液/正極界面抵抗を大幅に低減することが可能な非水系電解質二次電池用正極電極が得られる。また、高湿度環境下に置かれても優れた出力特性を有する正極活物質が得られる。
加えて、被覆層は、非晶質からなることによって、正極抵抗の低減および高湿度環境下に置かれた際の出力特性の改善に対してより高い効果が得られる。
さらに、被覆層が、4価以上の価数の金属元素とリチウムとからなるリチウム含有酸化物により形成されていることにより電気化学的酸化が安定に行われる。
合わせて、リチウム含有酸化物は、タングステンとリチウムとからなるタングステン酸リチウムから形成されていることにより、拡散パス方向を多くでき、電解質に対して安定で、タングステンの溶出等による電池への悪影響を低減できる。
発明によれば、タングステン酸リチウムは、LiWO、LiWO、Li、LiWO、7(LiWO)・4HOからなる群から選択されるいずれか一の化合物を含むことにより、被覆層に含まれる化合物の安定性を高くでき、電池に対する悪影響も排除することができる。
発明によれば、リチウム金属複合酸化物が、リチウムイオンの拡散方向がa軸方向に限定された層状構造を有することにより、リチウム金属複合酸化物を正極活物質として電池に用いた際に高い電池特性を有するものとすることができる。
発明によれば、正極活物質が粒子状であり、被覆層が、正極活物質の粒子の表面に形成されていることにより、正極活物質粒子と電解液との間に挿抜経路が確保され、正極活物質粒子を用いた電池の出力が高くなる。
発明によれば、第発明の電極に用いられる正極材料であって、正極活物質粒子の表面に被覆層が形成されていることにより、リチウムイオンの挿抜経路が確保される。これにより正極と電解液との間の頻度因子の低下が抑制され、正極界面抵抗が小さくなり、電池の出力が高くなる。
発明によれば、正極界面抵抗の小さい正極電極を用いるので、高い出力の二次電池が得られる。
発明によれば、非水系電解質二次電池用正極電極の製造方法が、リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質の表面に、リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の被覆層を、25〜200℃の範囲の雰囲気温度中で、物理的成膜法を用いて形成する工程を有することにより、被覆層を非晶質にすることができ、電池の電解液/正極界面抵抗を大幅に低減することが可能な非水系電解質二次電池用正極電極が、確実に得られる。
正極電極の構造を示す断面の概略図である。 コイン型セルの構造を示す断面の概略図である。 実施例のインピーダンススペクトルの測定図である。 解析に使用した等価回路の回路図である。 Tetragonal型のLiWOの結晶構造のモデル図である。 Rhombohedral型のLiWOの結晶構造のモデル図である。 実施例1aおよび比較例1aの高湿度環境後のレート特性を表したグラフである。
本発明に係る非水系電解質二次電池用正極電極(以下、単に「正極電極」という)は、リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質の表面に、リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の被覆層(以下、単に「多方向拡散層」という)が形成され、前記被覆層は前記リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の非晶質を含むことを特徴とする。
ここで、正極は、正極活物質、もしくは正極活物質と被覆層とを含む電池の構成要素であり、正極電極は、正極と正極集電体とから構成された電池の電極を意味する。
前記リチウム金属複合酸化物は、正極活物質として非水系電解質二次電池(以下、単に「電池」という)に用いられると高いエネルギー密度を有する電池が得られるが、電池を充放電させる際の電解液/正極界面抵抗(以下、単に「正極界面抵抗」という)が大きく、高い出力特性が得られない。
すなわち、前記リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質のみから正極を構成した場合、電池に用いると正極表面にリン酸塩などの電解液の分解成分の付着や、電解液との接触によって正極表面からのCoやNiなどの金属の溶出などの影響によって、電解液/正極界面でのリチウムイオンの拡散が阻害され、正極界面抵抗の増加を招く。一方、正極活物質と、この正極活物質の表面にリチウムイオンの拡散性の良いタングステン酸リチウムなどの化合物からなる被覆層と、から構成された正極では、正極と電解液との接触を抑えるリチウムイオンの透過性が良い保護膜として機能するため、正極界面抵抗が、リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質のみから正極を構成した場合と比較して低減され、出力特性を向上させることができる。
本発明の正極電極は、正極活物質の表面に多方向拡散層を形成した正極を用いることで、電池に用いられた際の正極界面抵抗が低減されて出力特性を向上させるものであるが、前記被覆層を前記リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の非晶質を含むものとすることで正極界面抵抗をさらに低減して出力特性を大幅に向上させるものである。非晶質は、結晶化状態では限られているリチウムイオンの拡散パス(以下、単に「拡散パス」という)の数が、大幅に増加して正極のリチウム拡散係数が高くなる。したがって、非晶質を含むものとすることで、正極界面抵抗が大幅に低減される。また、このような被覆層を形成することで拡散パスが増加するため、高湿度環境下に置かれても劣化することがなく、優れた出力特性を有するものとなる。
結晶状態は、原子同士の距離が一定の値で、原子が規則的に配置されるのに対し、非晶質状態では、原子同士の距離が一定でなく、原子が不規則に配置される。リチウムイオンは、原子同士の距離が大きい場所を経由しながら動作するため、結晶状態のように原子が規則的に配置された状態では、その拡散パスの数が限定されるのに対し、非晶質状態では、原子が不規則に配置されているため、拡散パスの数が大幅に増加する。このことから正極界面抵抗が大幅に低減される。
前記被覆層は非晶質を含むものであればよいが、非晶質からなることによって、拡散パスがさらに増加するため、正極抵抗の低減に対してより高い効果が得られる。また、高湿度環境下に置かれた際にも拡散パスが維持されるため、高湿度環境による出力特性の劣化が抑制され、出力特性の改善に対しより高い効果が得られる。
ここで、「非晶質からなる」とは、本願明細書に記載の実施例で用いたような形式の斜入射X線回折測定によって結晶面からの回折ピークが検出されない程度の状態であることを意味する。すなわち、得られたX線回折図形に対して自動のピークサーチを行ってもピークが検出されない状態、例えば実施例に記載のX線回折データ分析ソフトウェアと同等のソフトウェアによる自動のピークサーチを行ってもピークが検出されない状態を意味する。
前記リチウム金属複合酸化物は、一般的に電池の正極活物質として用いられるものであれば制限されないが、電池特性に優れた層状構造を有するものであることが好ましい。このような層状構造を有するリチウム金属複合酸化物は、層状構造のa軸方向にリチウムイオンが容易に拡散するため、高い充放電容量と出力特性を有し、電池特性に優れた正極活物質となる。層状構造を有するリチウム金属複合酸化物(以下、単に「リチウム金属複合酸化物」という。)としては、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn)などを挙げることができるが、高い充放電容量を有するLiCoO、LiNiOが好ましい。これらのリチウム金属複合酸化物は、4V級の高い電圧が得られるものであり、優れた特性を有する電池が得られる。
前記多方向拡散層は、拡散パス方向が前記リチウム金属複合酸化物より多い化合物で形成されることが好ましい。拡散パス方向が多い化合物は、リチウムイオンの伝導性が高い性質を有するが、非晶質化することでリチウムイオンの伝導性をさらに高めることができる。したがって、このような非晶質の多方向拡散層は、リチウムイオンをバイパス的に移動させる効果が大きく、出力特性をさらに向上させることが可能となる。
前記多方向拡散層は、上述のような拡散パスを有するものであればよいが、例えば、4価以上の価数の金属元素とリチウムとからなるリチウム含有酸化物により構成されているものが挙げられる。具体的にはTi、V、Nb、Ta、Mo、W、P、Siから選ばれる少なくとも1種類を含有するリチウム複合酸化物が好ましい。より具体的なリチウム複合酸化物として例えば、タングステン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、チタン酸リチウム、ニオブ酸リチウム等のリチウム複合酸化物が挙げられる。4価以上の価数の金属元素である場合、電気化学的酸化に対して安定であり、電池の安全性向上の観点からも好ましい。
前記リチウム含有酸化物は、タングステンとリチウムとからなるタングステン酸リチウムから形成されていることがより好ましい。タングステン酸リチウムは、拡散パス方向が多く、さらに、電解質に対しても安定であり、タングステンの溶出等による電池への悪影響を低減することができ、サイクル特性向上の観点からも好ましい。
タングステン酸リチウムには、多くの構造を有するものが存在するが、リチウムと価数が6価であるタングステンとから成るLiWO、LiWO、Li、LiWO、7(LiWO)・4HOからなる群から選択される1種類以上の化合物を含むことが好ましい。これらの化合物は、安定性が高く、電池に対する悪影響も排除することができる。
前記多方向拡散層の厚さは、リチウムイオンの移動を促進するため、2〜600nmとすることが好ましく、5〜500nmとすることがより好ましい。多方向拡散層の厚さが2nm未満になると、リチウムイオンの移動を促進する効果が有効に作用しないことがあり、600nmを超えると、多方向拡散層中の拡散経路が長くなり過ぎて、充放電容量や出力特性の向上が十分に得られないことがある。
本発明の電池は、上記正極電極と、セパレータおよび負極電極と、電解質とから構成される電池である。
本発明の正極電極は、例えば以下の方法で製造することが可能である。
リチウム金属複合酸化物材料の粉末を焼結しターゲットを作製した後、物理的製膜法、例えば、PLD(Pulse Laser Deposition)法により、Pt/Cr/SiOやPtなどの導電性基板の上にリチウム金属複合酸化物薄膜を堆積させることで正極活物質を形成する。PLD法以外も、スパッタ蒸着法、分子線エピタキシー法などの物理的製膜法を用いて、予め正極電極に適したサイズに裁断されたPt/Cr/SiOやPtなどの導電性基板の上にリチウム金属複合酸化物の薄膜を堆積させて正極活物質の薄膜を作製することができる。
次に、正極活物質膜上に多方向拡散層を形成するが、多方向拡散層は部分的に形成されていればよいが、電池特性を向上させるためには正極表面全体に形成されることがより好ましい。例えば物理的蒸着法であるPLD法により多方向拡散層を形成する場合、25〜200℃の範囲の雰囲気温度において、リチウム含有酸化物から成るターゲットをレーザーで蒸発させることで、リチウム含有酸化物からなる非晶質の多方向拡散層の膜厚を制御して、正極活物質の薄膜の表面全体に修飾させ、正極薄膜を形成することができる。ここで25℃未満の雰囲気温度である場合、原理的に物理的蒸着を行うことができず、また200℃を超える雰囲気温度の場合は、多方向拡散層は結晶質となるため、上記の温度範囲とすることが好ましい。この温度範囲とすることで、多方向拡散層を非晶質にすることができ、電池の電解液/正極界面抵抗を大幅に低減することが可能な非水系電解質二次電池用正極電極が得られる。
第1実施形態では、リチウム金属複合酸化物薄膜による正極薄膜を製造する例を示したが、第2実施形態として、正極が通常用いられている一次粒子、もしくは一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなる粒子状のリチウム金属複合酸化物により生成されていても、本発明の構成を満足するものであれば、同様の効果が得られる。例えば、粒子状のリチウム金属複合酸化物、すなわちリチウム金属複合酸化物粒子を用いて正極活物質を形成した後、多方向拡散層を形成する原料を溶液などの形態で添加し、熱処理などの処理により多方向拡散層を形成することができる。また、リチウム金属複合酸化物粒子からなる正極活物質粒子の表面に同様の方法により多方向拡散層を形成した正極材料を用いて、正極を形成することも可能である。
したがって、薄膜による正極電極のみならず、前記正極活物質粒子の表面に非晶質の前記多方向拡散層が形成されている正極材料を用いて正極電極を形成することでも、本発明の効果が同様に得られる。
本発明においては、上記の正極電極と合わせて、セパレータと負極電極、および電解質とにより、非水系電解質二次電池を提供できる。
本発明の電池は、正極電極に特徴を有するものであり、その他は、一般的な非水系電解質二次電池と実質同等の構成を有している。以下に、電池の各構成を詳細に説明する。
本発明の電池は、ケースと、このケース内に収容された正極電極、負極電極、非水系電解質およびセパレータとを備えた構造を有している。より具体的に言えば、セパレータを介して正極電極と負極電極とを積層させて電極体とし、得られた電極体に非水系電解液を含浸させ、正極電極の正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および負極電極の負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、それぞれ集電用リードなどを用いて接続し、ケースを密閉することによって、本発明の電池は形成されている。なお、本発明の電池の構造は、上記例に限定されないのはいうまでもなく、また、その外形も筒型や積層型など、種々の形状を採用することができる。
(正極電極)
まず、本発明の電池の特徴である正極電極について説明する。正極電極は、正極集電体上に正極を積層したものである。正極電極は、PLD法により集電体となるPt/Cr/SiOやPtなどの導電性基板の上にリチウム金属複合酸化物薄膜を堆積させて正極活物質を構成した正極電極以外にも、一般的なリチウム金属複合酸化物粒子を正極活物質粒子として用いた、本発明の正極材料で構成された正極も可能である。
本発明の正極材料で構成された場合、前記正極電極は、シート状の部材であり、本発明の正極材料を含有する正極合剤を、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布乾燥して形成することができるが、正極電極の作成方法はとくに限定されない。例えば、正極材料と結着剤とを含む正極合剤を、帯状の正極集電体に担持させることによって正極電極を作製することも可能である。
なお、正極電極は、使用する電池にあわせて適宜処理される。例えば、目的とする電池に応じて適当な大きさに形成する裁断処理や、電極密度を高めるためにロールプレスなどによる加圧圧縮処理などが行われる。
(正極合剤)
正極合剤は、粉末状になっている本発明の正極材料と、導電材および結着剤とを混合し、溶剤を添加して混練して形成することができる。
以下、正極材料以外の正極合剤を構成する材料について説明する。
(結着剤)
前記正極合剤の結着剤としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよいが、熱可塑性樹脂が好ましい。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは、Naイオンなどによる架橋体であってもよい。
(導電材)
正極合剤の導電材としては、電池内で化学的に安定な電子伝導性材料であればよく、とくに限定されない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料、フッ化カーボン等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、正極合剤に導電材を添加する量は、とくに限定されないが、正極合剤に含まれる正極活物質粒子に対して、0.5〜50重量%が好ましく、0.5〜30重量%がより好ましく、0.5〜15重量%がさらに好ましい。
(溶剤)
溶剤は、結着剤を溶解して、正極活物質や導電材等を結着剤中に分散させるものである。この溶剤はとくに限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を使用することができる。
(正極集電体)
正極集電体としては、電池内で化学的に安定な電子伝導体であればよく、とくに限定されない。例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、炭素、導電性樹脂等からなる箔又はシートを用いることができ、この中でアルミニウム箔、アルミニウム合金箔等がより好ましい。ここで、箔又はシートの表面には、カーボン又はチタンの層を付与したり、酸化物層を形成したりすることもできる。また、箔またはシートの表面に凹凸を付与することもでき、ネット、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群成形体等を用いることもできる。
正極集電体の厚みも、とくに限定されないが、例えば、1〜500μmが好ましい。
(正極電極以外の構成要素)
つぎに、本発明の電池の構成要素のうち、正極電極以外の構成要素について説明する。なお、本発明の電池は、上記正極活物質を用いる点に特徴を有するものであり、その他の構成要素は、その用途および要求される性能に応じて適宜選択することができ、後述するものに限定されない。
(負極電極)
負極電極は、負極集電体上に負極活物質を含む負極を積層したものである。負極活物質としては、リチウムを充放電することができるであればよく、とくに限定されない。例えば、負極活物質と結着剤を含み、任意成分として導電材や増粘剤を含む負極合剤を負極集電体に担持させたものを使用することができる。このような負極電極は、正極電極と同様の方法で作製することができる。
負極活物質としては、リチウムを電気化学的に充放電し得る材料であればよい。例えば、黒鉛類、難黒鉛化性炭素材料、リチウム合金等を用いることができる。このリチウム合金はとくに限定されないが、ケイ素、スズ、アルミニウム、亜鉛およびマグネシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む合金が好ましい。
また、負極活物質の平均粒径はとくに限定されず、例えば、1〜30μmが好ましい。
(結着剤)
負極合剤の結着剤としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよいが、熱可塑性樹脂が好ましい。かかる熱可塑性樹脂はとくに限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらは、Naイオンなどによる架橋体であってもよい。
(導電材)
負極合剤の導電材としては、電池内で化学的に安定な電子伝導性材料であればよく、とくに限定されない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等の黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、銅、ニッケル等の金属粉末類、ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料等を使用することができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
この導電材の添加量は、とくに限定されないが、負極合剤に含まれる負極活物質粒子に対して、1〜30重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。
(負極集電体)
負極集電体としては、電池内で化学的に安定な電子伝導体であればよく、とくに限定されない。例えば、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂等からなる箔またはシートを用いることができ、銅および銅合金が好ましい。箔またはシートの表面には、カーボン、チタン、ニッケル等の層を付与したり、酸化物層を形成したりすることもできる。また、箔またはシートの表面に凹凸を付与することもでき、ネット、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群成形体等を使用することもできる。
負極集電体の厚みも、とくに限定されないが、例えば、1〜500μmが好ましい。
(非水系電解質)
非水系電解質としては、リチウム塩を溶解した非水系溶媒が好ましい。かかる非水系溶媒はとくに限定されないが、エチレンカーボネ−ト(EC)、プロピレンカーボネ−ト(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒、または環状カーボネートと鎖状カーボネートと脂肪族カルボン酸エステルとの混合溶媒を使用することが好ましい。
非水系溶媒に溶解するリチウム塩としては、例えば、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCl、LiCFSO、LiCFCO、Li(CFSO、LiAsF、LiN(CFSO、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド塩等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、少なくともLiPFを用いることが好ましい。
また、非水系溶媒中のリチウム塩濃度はとくに限定されないが、0.2〜2mol/Lが好ましく、0.5〜1.5mol/Lがより好ましい。
(他の添加剤)
非水系電解質には、電池の充放電特性を改良する目的で、リチウム塩以外にも種々の添加剤を添加してもよい。添加剤はとくに限定されないが、例えば、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ピリジン、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、クラウンエーテル類、第四級アンモニウム塩、エチレングリコールジアルキルエーテル等を挙げることができる。
(セパレータ)
また、正極電極と負極電極との間には、微細な孔を有するセパレータを介在させる。このセパレータはとくに限定されないが、大きなイオン透過度と所定の機械的強度を持ち、かつ絶縁性である微多孔性薄膜が好ましい。とくに、微多孔性薄膜は、一定温度以上で孔を閉塞し、抵抗を上昇させる機能を持つものが好ましい。
微多孔性薄膜の材質もとくに限定されないが、例えば、耐有機溶剤性に優れ、疎水性を有するポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンを使用することができる。また、ガラス繊維等から作製されたシート、不織布、織布等も使用することができる。
セパレータが微多孔性薄膜の場合、セパレータに形成されている孔の孔径はとくに限定されないが、例えば、0.01〜1μmが好ましい。セパレータの空孔率もとくに限定されないが、一般的には30〜80%が好ましい。さらに、セパレータの厚みもとくに限定されないが、一般的には10〜300μmが好ましい。
さらに、セパレータは、正極電極および負極電極と別体のものを使用してもよいが、非水系電解質およびこれを保持するポリマー材料からなるポリマー電解質を正極電極または負極電極と一体化させてセパレータとして使用することもできる。このポリマー材料としては、非水系電解質を保持することができるものであればよくとくに限定されないが、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体が好ましい。
(実施例1)
図1には、本実施例の正極電極11の断面の概略図を示す。
正極活物質13としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)薄膜を用い、その表面に非晶質の多方向拡散層14としてLiWO薄膜を形成した正極薄膜を用いた。
まず、LiCoOの組成となるようにLiCOとCoを混合し、980℃の酸素雰囲気中で焼成してLiCoO粉末を合成した。得られたLiCoO粉末を1000℃でペレット状に焼結し、このペレットをターゲットとして、PLD法により、500℃の酸素雰囲気中において、正極集電体となるPt/Cr/SiOの基板12上に8mm×8mmの面積で300nmの厚みのLiCoO薄膜を形成した。
次に、多方向拡散層14を正極活物質13であるLiCoO薄膜上に積層した。LiOH・HOとWOとをモル比Li:W=4:1で混合した後、120℃で24時間乾燥させることにより、LiWO薄膜作製ターゲットの原料となるLi−W−O粉末を得た。この粉末を650℃で焼結してペレットにし、ターゲットとした。このターゲットを用いて、上記で得られたLiCoO薄膜の上にさらにLiWO薄膜を25℃の酸素雰囲気中において、300nmの厚みに形成し、正極薄膜からなる正極電極11を作製した。X線回折分析(XRD:パナリティカル社製 X‘Pert PRO)により斜入射X線回折法によりLiWOの状態を確認したところ、得られたX線回折図形を付属のソフトであるHigh Score Plusによりピークサーチを行ったが、LiとWとを含む化合物の回折ピークが検出されず、非晶質状態であることが確認された。
正極電極の評価には図2に示す2032型コイン型電池(以下、コイン型電池21という)を作製した。図2に示すように、コイン型電池21はケース22と、このケース22内に収容された電極23とから構成されている。
ケース22は、中空かつ一端が開口された正極缶22aと、この正極缶22aの開口部に配置される負極缶22bとを有しており、負極缶22bを正極缶22aの開口部に配置すると、負極缶22bと正極缶22aとの間に電極23を収容する空間が形成されるように構成されている。
電極23は、正極電極(評価用電極)23a、セパレータ23cおよび負極電極(リチウム金属負極)23bとからなり、この順に並ぶように積層されており、正極電極23aが正極缶22aの内面に接触し、負極電極23bが負極缶22bの内面に接触するようにケース22に収容されている。
なお、ケース22はガスケット22cを備えており、このガスケット22cによって、正極缶22aと負極缶22bとの間が非接触の状態を維持するように相対的な移動が固定されている。上記正極電極11を正極電極23aとして用いてコイン型電池21を以下のようにして作製した。
正極電極23aと、負極電極23bと、セパレータ23cおよび電解質とを用いて、上述したコイン型電池21を、露点が−60℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
なお、負極電極23bには、直径13mmの円盤状に打ち抜かれた0.5mmのリチウム金属を用いた。セパレータ23cには、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用い、電解質には1MのLiPFを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の等量混合液(宇部興産株式会社製)を用いた。
(評価)
上記コイン型電池21を作製してから24時間程度放置して開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極界面抵抗を測定した。コイン型電池21を25℃で充電電位4.0Vまで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を用い、電気化学的評価手法として一般的な交流インピーダンス法にて電池反応の周波数依存性について測定を行うことにより、溶液抵抗、負極抵抗と負極容量、および正極界面抵抗と正極容量に基づくナイキスト線図が得られた。図3に、本発明の実施形態に係る正極電極のインピーダンススペクトルの測定結果を示す。
電極における電池反応は、電荷移動に伴う抵抗成分と電気二重層による容量成分とからなり、これらを電気回路で表すと抵抗と容量の並列回路となり、電池全体としては溶液抵抗と負極、正極の並列回路を直列に接続した図4の等価回路で表される。図4に正極界面抵抗を解析で見積もる際に使用した等価回路を示す。この等価回路を用いて測定したナイキスト線図に対してフィッティング計算を行い、各抵抗成分、容量成分を見積もることができる。正極界面抵抗は、得られたナイキスト線図の低周波数側の半円の直径と等しい。ここで、Rsはバルク抵抗、R1は負極抵抗、Rctは正極界面抵抗(界面のLi+移動抵抗)、Wはワーブルグ因子、CPE1、CPE2は定相要素である。また、図3に示すインピーダンススペクトルの低周波領域に観測される直線領域は、電極内のリチウム拡散性を示し、式(1)を用いて、正極内のリチウム拡散係数を解析することができる。
[数1]
D = R/(2A4Fσ) (1)
ここで、D:正極内のリチウム拡散係数、R:気体定数、T:絶対温度、A:電極面積、n:酸化物1モル当たりの電子数、F:ファラデー定数、C:リチウムイオン濃度、σ:ワーブルグ因子を表す。(1)式より算出した正極のリチウム拡散係数を表1に合わせて示す。
(実施例2)
LiCoO薄膜の上にLiWO薄膜を100℃の酸素雰囲気中において、300nmの厚みに形成したこと以外は実施例1と同じである。このようにして作製された正極電極11を実施例1と同様に評価した。XRDによりLiWOの状態を確認したところ、LiとWとを含む化合物の回折ピークが検出されず、非晶質状態であることが確認された。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
LiOH・HOとWOとをモル比Li:W=2:1で混合し、LiWO薄膜作製ターゲットの原料となるLi−W−O粉末を得て、ターゲットとしたこと以外は実施例1と同じである。このようにして作製された正極電極11を実施例1と同様に評価した。XRDによりLiWOの状態を確認したところ、LiとWとを含む化合物の回折ピークが検出されず、非晶質状態であることが確認された。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
LiCoO薄膜の上にLiWO薄膜を形成しなかったこと以外は実施例1と同じである。このようにして作製された正極電極11を実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
LiCoO薄膜の上にLiWO薄膜を500℃の酸素雰囲気中において、300nmの厚みに形成したこと以外は実施例1と同じである。このようにして製作された正極電極11を実施例1と同様に評価した。XRDによりLiWOの状態を確認したところ、Tetragonal型のLiWOであることが確認された。この結晶構造のモデル図を図5に、評価結果を表1に示す。
(比較例3)
LiOH・HOとWOとをモル比Li:W=2:1で混合し、LiWO薄膜作製ターゲットの原料となるLi−W−O粉末を得て、ターゲットとしたこと、LiCoO薄膜の上にLiWO薄膜を500℃の酸素雰囲気中において、300nmの厚みに形成したこと以外は実施例1と同じである。このようにして製作された正極電極11を実施例1と同様に評価した。XRDによりLiWOの状態を確認したところ、Rhombohedral型のLiWOであることが確認された。この結晶構造のモデル図を図6に、評価結果を表1に示す。
実施例1〜3は、LiCoO薄膜状に非晶質のLiWOが形成されているため、正極内のリチウム拡散係数が大きく、正極界面抵抗が大きく低減され、優れた出力特性を有する電池が得られていることが確認された。
一方、比較例1は、LiWOが形成されていないため、正極内のリチウム拡散係数が小さく、正極界面抵抗が大きなものとなっている。
比較例2は、多方向にリチウムイオンの拡散パスが存在するTetragonal型のLiWOが形成されたため、比較例1よりは正極内のリチウム拡散係数が大きく、正極界面抵抗が低減されているものの、実施例1〜3と比較すると不十分な結果となっている。比較例3は、リチウムイオンの拡散パスが一方向に限定されているRhombohedral型のLiWOが形成されたため、リチウムイオンが拡散できるパスが大幅に減少し、リチウムイオン伝導性が低下したため、比較例1よりも正極界面抵抗が増加している。
(実施例1a)
表1において、出力特性に最も効果が見られた実施例1と同じ条件で作製した非晶質のLiWO被覆LiCoO正極薄膜11を85℃−65RH%の恒温恒湿槽中の環境下に24時間晒した。その後、実施例1と同じ方法でコイン型電池21を作製し、10cycle毎に充電放電の電流値を切り替えて、25℃で4.2Vまで充電し3.0Vまで放電する充放電サイクル試験を行った。その際、充放電におけるCレートを0.3C、0.6C、3.0C、10C、30Cと順番に切り替えた。評価結果を図7に示す。図7は、高湿度環境に置いた後のレート特性を表したグラフであり、横軸はサイクル数を、縦軸は容量維持率を表している。
(比較例1a)
比較例1と同じ条件で作製した未被覆のLiCoO正極薄膜11を実施例1aと同じ環境下に晒した後、実施例1aと同様にコイン型電池21を作製し評価した。評価結果を図7に示す。
実施例1aは、LiCoO薄膜上にリチウム拡散性に優れた非晶質のLiWOが形成されたことによって、30Cレートの高速充放電を行っても初期放電容量に対する容量維持率が70%以上あり、正極が高湿度環境下に置かれても優れた出力特性を有する電池が得られていることが確認された。
一方、比較例1aは、10Cレート以上の高速充放電を行うと容量維持率が大幅に低下し、電池性能が悪化することが確認された。これはLiWOが形成されていないため、露出したLiCoO表面が高湿度環境下に晒されたことで劣化したことが影響したと考える。
本発明の非水系電解質二次電池用正極材料および二次電池は、高出力が要求される電気自動車やハイブリッド自動車用電池に好適である。また、本正極材料は材料の溶解性などの諸特性に左右されることなく様々なリチウム複合酸化物、リチウムイオン伝導酸化物に適用でき、さらにリチウム複合酸化物の表面にリチウムイオン伝導酸化物を直接堆積させることができるため、非水系電界質二次電池用正極材料の開発にも応用が期待できる。また、様々な分析手法を組み合わせて解析を行うことで、リチウム複合酸化物とリチウムイオン伝導酸化物界面の現象を解明するのにも役立つものと考える。
11 正極電極
12 基板
13 正極活物質
14 多方向拡散層
21 コイン型電池
22 ケース
22a 正極缶
22b 負極缶
22c ガスケット
23 電極
23a 正極電極
23b 負極電極
23c セパレータ

Claims (7)

  1. リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質の表面に、
    リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の被覆層が形成された正極を有し、
    該被覆層は前記リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の非晶質からなり
    前記被覆層は、4価以上の価数の金属元素とリチウムとからなるリチウム含有酸化物により形成されており、
    該リチウム含有酸化物は、タングステンとリチウムとからなるタングステン酸リチウムから形成されている、
    ことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極電極。
  2. 前記タングステン酸リチウムは、LiWO、LiWO、Li、LiWO、7(LiWO)・4HOからなる群から選択されるいずれか一の化合物を含む、
    ことを特徴とする請求項記載の非水系電解質二次電池用正極電極。
  3. 前記リチウム金属複合酸化物が、リチウムイオンの拡散方向がa軸方向に限定された層状構造を有する、
    ことを特徴とする請求項1または請求項に記載の非水系電解質二次電池用正極電極。
  4. 前記正極活物質が粒子状であり、前記被覆層が、前記正極活物質の粒子の表面に形成されている、
    ことを特徴とする請求項1または請求項に記載の非水系電解質二次電池用正極電極。
  5. 請求項に記載の非水系電解質二次電池用正極電極に用いられる正極材料であって、
    前記正極活物質の粒子の表面に前記被覆層が形成されている、
    ことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極材料。
  6. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極電極が用いられている、
    ことを特徴とする非水系電解質二次電池。
  7. リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質の表面に、
    リチウムイオンが多方向に拡散可能な化合物の被覆層を、
    25〜200℃の範囲の雰囲気温度中で、物理的成膜法を用いて形成する工程を有する、
    ことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極電極の製造方法。
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