以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、実施例としての木材プレカット加工装置10の平面図であり、図2は、図1の木材プレカット加工装置10を側面側から見た図である。
木材プレカット加工装置10は、木造住宅に使用される柱や梁、羽柄材などの木材を加工する装置であり、例えば、木造住宅の平面図や立面図等をCADにより製図することで生成される加工データを利用して木材の機械加工が行われる。この木材プレカット加工装置10は、木材加工装置20と、複数種類の刃物を備えた複数の木材加工用装置11,11・・・を保管するツールストッカ12と、加工対象物としての木材(ワーク)を搬送する搬送装置30と、木材加工装置20および搬送装置30の動作を制御する制御装置13とを備えている。
木材加工装置20は、1つの木材加工用装置11(チェーン加工装置100)と、その木材加工用装置11の位置及び姿勢を制御する多関節ロボット20Aとを備えている。多関節ロボット20Aには、チェーン101を刃物とするチェーン加工装置100や、ツールストッカ12に備えられるチェーン101とは別の刃物を有する木材加工用装置11が先端部に取り付けられる。この刃物の種類を選択することで、木材加工装置20によって、加工内容に適した大きさ、形状の刃物を用いて木材を加工可能に構成されている。
多関節ロボット20Aは、木材加工用装置11の位置及び角度(姿勢)を変化させることが可能に動作する変位動作部としての複数のアーム21〜23と回動部24とを備えている。複数のアーム21〜23および回動部24は、床面に設置されるベース体25に対して複数の回動軸(本実施例では回動軸Ra〜Rfの6軸であり、一点鎖線と黒点で示した箇所)を中心に回動可能に連結され、これにより、3次元空間における木材加工用装置11の位置と姿勢とが自在に制御可能に構成されている。
木材加工装置20は、モータ等の電気制御や油圧、空圧等の流体が通過する電磁弁の制御等によって動作し、この動作制御は、木材加工装置20を制御する制御装置13によって行われる。なお、木材加工装置20は、必ずしも、木材加工用装置11の位置と姿勢とを、複数の軸によって回動自在に動作する機構を含む構成とする必要はなく、1つの回動軸を中心に木材加工用装置11の姿勢を変化可能にしてもよく、回動軸を中心にした回動動作する構成に代えて、又は、回動動作する構成に加えて、木材加工用装置11が直線的にスライド移動する機構を含むように構成してもよい。また、木材プレカット加工装置10は、1つの木材加工装置20を備える構成に限らず、2以上の木材加工装置を備える構成としてもよく、この場合には、木材加工用装置11の交換をすることなく複数種類の刃物を用いた異なる加工を可能とするなど、加工時間の短縮を図ることができる。
ツールストッカ12は、多関節ロボット20Aに装着可能な複数種類の刃物(例えば、カッター,キリ,鋸,ルータビットなど)に各々対応した複数種類の木材加工用装置11,11・・・を、予め設定された待機位置に並んで支持された状態で保管するための装置である。多関節ロボット20Aは、制御装置13の制御によって動作が制御され、多関節ロボット20Aに対して、ツールストッカ12に保管された複数の木材加工用装置11,11・・・の中から木材の加工内容に対応した木材加工用装置11が選択されて装着される。なお、木材プレカット加工装置10が必ずしもツールストッカ12を備える必要はなく、必要に応じて作業者が手作業で、木材加工用装置11を取り替える構成としてもよい。
搬送装置30は、木材加工装置20によって加工可能な加工位置に加工前の木材を移送し、加工が終了した後には、加工位置から木材を移送する装置である。この搬送装置30として、図1及び図2には、ワークの移動する進行方向に沿って床面に配置された複数の枕木部材31,31・・・の上に2条のガイドレール32,32が設置され、ガイドレール32,32の上には、進行方向に沿って移動可能な複数台のサドル33,33,・・・が設けられる構成を例示している。
各サドル33は、図2に示すように、ガイドレール32,32に沿った搬送方向に移動可能な支持体34と、支持体34に対して傾斜動作が可能な木材載置用のテーブル35と、テーブル35の上に載置された木材を挟み込む2つのクランプ36と、クランプ36を動作させるモータ37とを備え、制御装置13の制御によって、支持体34、テーブル35およびクランプ36の動作が制御される。複数のサドル33,33,・・・を利用して木材のクランプ位置を変化させつつ木材を搬送することにより、木材加工装置20に対して、加工前の木材の加工位置への搬送、加工中における木材の移動、加工後における木材の取出位置への搬送などが行われる。
ここで、搬送装置30のサドル33を含む動作部分は、モータ等の電気的な制御によって動作するようにしてもよいし、油圧、空圧等の流体が通過する電磁弁の制御等によって動作するようにしてもよい。また、搬送装置30は、図示した1つの装置に限らず、2以上のものを組み合わせて構成してもよく、また、一方向への搬送に限らず、上方側への移動などを含む他の方向への搬送を含む構成としてもよい。
制御装置13は、木材プレカット加工装置10を制御する装置であり、木造住宅を設計して生成された木材の加工データを入力する入力部(例えば、記憶媒体としてのCD−ROMのデータを読み出し可能なドライブ装置)や作業者によって操作される操作部等を備えている。制御装置13は、入力部を介して入力された加工データに基づいて作業者の指示に従った順序で木材が加工されるように、木材加工装置20と搬送装置30とを含む各部位の動作を制御し、必要な木材加工を木材プレカット加工装置10に行わせる。制御装置13には、木材加工用装置11の刃物やアーム21〜23、回動部24、搬送装置30の動作部などを含む複数の動作部の駆動力を発生する複数のモータやエアシリンダ、動作部の位置を検出する多数のセンサなどが接続され(図1には、矢印を付加した線で模式的に表示)、センサの位置検出によって動作部の位置や角度を制御する等して、必要な木材加工の制御を実行する。なお、木造住宅を設計して生成されたCADデータを制御装置13が読み出し、木材の加工データを生成する機能を制御装置13が備え、制御装置13によってCADデータから加工データを生成する構成としてもよい。
木材プレカット加工装置10による木材の加工は、例えば、次のようにして行われる。まず、搬送装置30のサドル33の内の2つ以上によって加工前の木材がクランプされるように、木材を加工前の初期位置にセットする。このセット作業は、図示しない別の搬送装置や作業者の手によって実行される。このセット作業の後に、木材加工装置20の前に設定された加工位置へとサドル33が進行し、木材の進行方向における先端側の加工、途中部分の加工、後端側の加工が順に行われる。木材加工装置20による加工の終了後には、木材をクランプしたサドル33が加工位置から更に進行し、木材加工装置20の前側から一定以上離れた取出位置へとサドル33が移動する。取出位置へサドル33が移動した後には、サドル33による木材のクランプが解除され、図示しない別の搬送装置や作業者の手によって、加工終了後の木材が木材加工装置20から取り出される。
次に、木材加工装置20における多関節ロボット20Aの構成と、多関節ロボット20Aに装着される木材加工用装置11の取付部分の構成について、図2及び図3を参照して説明する。図3は、チェーン加工装置100を備えた木材加工装置20の一部を拡大して示した図である。
多関節ロボット20Aには、図2に示すように、ベース体25に対して、回動部24と複数のアーム21〜23とが連結された先端部分に、木材加工用装置11が取付可能に構成されている。多関節ロボット20Aのアーム21の先端側には、木材加工用装置11を回動させる駆動力を発生させる駆動手段としての電動モータ41が固定されている。電動モータ41は、図3に示すように、そのケース42からアーム21側に延びる連結部43の端面がアーム21の先端部に設けられる取付面21Aに対面するように接触し、この端面と取付面21Aとが、例えば、固定手段としての複数のボルトによってネジ止めして固定されている。
電動モータ41のケース42の内側には、図3に示すように、制御装置13の制御によって回動方向および速度が制御される出力軸44が設けられている。出力軸44は、例えば、アーム21に接続される方向(図3の左右方向)と略直交する方向(図3の上下方向)を回動中心軸(図3の一点鎖線)として回動可能に設けられている。
電動モータ41に対してアーム21とは別の方向側であって電動モータ41の出力軸44に沿った一方側には、装着部45が設けられている。装着部45は、木材加工用装置11が設置される一方側が開口した略円筒状のケース46を備え、このケース46の中に、木材加工用装置11を交換可能とする装着機構が収容されている。装着部45のケース46は、電動モータ41のケース42に一体化され、例えば、固定手段としての複数のボルトをネジ止めすることによって一体化されている。
装着部45の装着機構は、木材加工用装置11の固定状態と、固定解除状態とが切り替え可能に構成される。例えば、木材加工用装置11の一部を内部に収容した状態で外周側から締め込み固定して木材加工用装置11を電動モータ41に連結した固定状態と、締め込み固定を解除して木材加工用装置11を電動モータ41から離間可能にした固定解除状態とに切り替える動作を行うロック体(図示せず)が、装着機構の一部としてケース46に収容されている。
装着部45の装着機構としては、種々の機構を用いることができ、例えば、油圧や空圧によって移動可能なロック体の動作によって、木材加工用装置11の一部をクランプする(締め込む)ように固定される構成としてもよいし、これに代えて、又は、これに加えて、電磁力を用いて装着する機構を含むようにしてもよいし、螺旋状のおねじとめねじとによって一方側を回動させることによる締結や、ボルトなどの他の締結部材を用いた締結の少なくともいずれかを含む構成としてもよい。また、木材加工装置20として、必ずしも複数種類の木材加工用装置11が多関節ロボット20Aに対して交換可能な装着機構を有する構成とする必要はなく、1種類の木材加工用装置11が固定手段としてのボルトや溶接などによって多関節ロボット20Aに固定されて取り付けられてもよい。装着部45の装着機構の状態を切り替える制御は、モータ等の駆動手段の電気的な制御や油圧、空圧等の流体が通過する電磁弁の制御等によって制御され、この動作制御は、例えば、木材プレカット加工装置10を制御する制御装置13によって制御される。
なお、木材加工用装置11の駆動手段(例えば、電動モータ41)は、必ずしも木材加工用装置11とは別に設けられる必要はなく、木材加工用装置11が駆動手段を含んで一体化されてツールストッカ12に配備される構成とし、駆動手段とアーム21との間に、装着部45が設けられて複数種類の刃物を交換可能に構成してもよい。
次に、木材加工用装置11の1つであるチェーン加工装置100の構成について、図3に加えて、図4および図5を参照して説明する。図4は、チェーン加工装置100を分解して示した斜視図であり、図5は、チェーン加工装置100の動力伝達機構を示した断面図である。なお、装着部45の装着機構の具体的な構成については図示を省略し、また、平歯車154,156、スプロケット158およびチェーン101等の一部の形状は外形のみを模式的に図示している。
チェーン加工装置100は、複数の刃部102が設けられたチェーン101が回動することによって木材を加工可能な木材加工用装置11である。チェーン加工装置100は、他の部材としての多関節ロボット20Aと一体化される装着部45に取り付け可能に構成されたベース体110と、ベース体110に対して回動可能に設けられる軸回動体120と、ベース体110に固定されてチェーン101が外周縁部分に掛けられるチェーンガイド130と、軸回動体120を一方側へ回動させる付勢力を発生する付勢力発生機構140と、チェーン101を駆動する側の一部を覆う薄板金属製のチェーンケース103と、電動モータ41の駆動力によって回動するチェーン101と、チェーン101に電動モータ41の駆動力を伝達する動力伝達機構としてのモータ側回動部材151とチェーン側回動部材152とを備えている。
ベース体110は、複数の部材を組み合わせて構成された金属製の部材であり、電動モータ41側の装着部45に固定される被固定部111と、被固定部111に取り付けられるモータ側回動支持部112と、モータ側回動支持部112とチェーンガイド130との間を連結する連結部113およびガイド側回動支持部114とを備え、これらが図示しないボルト等の固定手段によって一体化されている。なお、ベース体110は、必ずしも上記した複数の部材の組合せとする必要はなく、一体成形して構成してもよいし、2以上の部材を組み合わせて構成してもよい。
モータ側回動部材151は、図5に示すように、ベース体110の被固定部111の内部に設けられる複数の円環状のベアリング115,116を介して被固定部111に回動可能に支持されている。また、モータ側回動部材151は、電動モータ41の出力軸44の端部に係合して電動モータ41の駆動力をモータ側回動部材151に伝達する出力軸連結部材153と、出力軸連結部材153が一端側に設けられて他端側に平歯車154が固定されたモータ連結軸155とを備え、出力軸連結部材153と平歯車154とモータ連結軸155とが一体化されている。このため、モータ側回動部材151は、電動モータ41の出力軸44と一体的に、同一の回動中心軸(図3の一点鎖線)を基準に回動する。従って、電動モータ41の出力軸44が回動すると、その回動に同期(一致)して出力軸連結部材153が回動し、出力軸連結部材153の回動動作がモータ連結軸155を介して平歯車154に伝達されて平歯車154も回動する。なお、平歯車154と、後述する平歯車156は、円柱状の回動部の周面に多数の歯を設けて構成されるものであり、図4及び図5では、その外形を円柱形状によって模式的に示している。
ここで、ベース体110の被固定部111は、モータ側回動部材151のモータ連結軸155の周囲を全周で囲う筒状に形成され、被固定部111の周囲が装着部45の装着機構によってクランプされることで、被固定部111と装着部45のケース46とが一体化されている。また、電動モータ41および装着部45のケース42,46についても、電動モータ41の出力軸44が内側に位置し、電動モータ41の出力軸44を囲う筒状に形成されている。このため、電動モータ41のケース42と、装着部45と、被固定部111とによって、電動モータ41の出力軸44とモータ側回動部材151とが一体化された駆動軸の外周を囲う筒状の部位を構成することとなり、これにより、チェーン加工装置100のチェーン101に木材を加工する際の抵抗力が作用してチェーン101の回動が一時的に阻害されても、回動する駆動軸の全周を囲う構造によって剛性を高く維持し、多関節ロボット20Aを制御して木材を加工するチェーン101を精度良く位置決めすることができる。
また、被固定部111と、電動モータ41及び装着部45のケース42,46は、電動モータ41の出力軸44の回動中心軸(図3及び図5の一点鎖線)を中心とした円筒状の部位が当該出力軸44の連続する方向に沿った形状に形成されている。このため、被固定部111と、電動モータ41及び装着部45のケース42,46とを、電動モータ41の出力軸44とモータ側回動部材151との外形に対して外形の大型化を抑えつつ、剛性を高く確保可能とすることができる。これにより、小型で軽量に構成し易いチェーン加工装置100によって高速移動や加工可能な位置の自由度を高めつつ、チェーン101を精度良く位置決めすることができる。
被固定部111と装着部45とが対面する部分は、電動モータ41の出力軸44の軸方向に略垂直な平面状に形成されて取付面を構成している。装着部45の取付面47には、電動モータ41の出力軸44の回転軸を中心として、回動方向側における位置を定めるための位置決め部48が設けられている。この位置決め部48は、一例として、一方側である装着部45の取付面47において出力軸44の軸方向に突出し、他方側(被固定部111)の取付面において、その突出部分より僅かに大きく凹んだ部分が形成され、これらが嵌まり合うことで位置決めされる構成としている。
被固定部111および装着部45の取付面47と、位置決め部48とによって、装着部45と、チェーン加工装置100との相対位置(電動モータ41の出力軸44の軸方向に沿った相対位置と、回動中心軸周りの相対位置)が位置決めされる。これにより、多関節ロボット20Aの変位動作部の位置及び角度を制御することによって、チェーン101を精度良く位置決めすることができる。
ここで、多関節ロボット20Aからチェーン101に対しては、オイルを供給することが好ましく、このオイルを供給するためのオイル供給穴(図示せず)を、装着部45の取付面47に設け、被固定部111の取付面におけるオイル供給穴に対面する位置には、オイル注入穴を設け、オイル注入穴からチェーンガイド130が設けられる位置まで、屈曲可能なオイルチューブを接続するなどして、チェーン101にオイルを供給可能とすることが好ましい。これにより、装着部45へのチェーン加工装置100の装着により、チェーン101へのオイルの供給を可能とすることができる。
チェーン側回動部材152は、図5に示すように、軸回動体120の内部に設けられる円環状のベアリング121と回動支持部122とによって、軸回動体120に回動可能に支持されている。また、チェーン側回動部材152は、モータ側回動部材151の平歯車154と噛み合ってモータ側回動部材151の駆動力をチェーン側回動部材152に伝達する平歯車156と、平歯車156が一端側に設けられるチェーン回動軸157と、チェーン回動軸157の他端側に設けられてチェーン101が掛けられるスプロケット158と、を備え、これら平歯車156とチェーン回動軸157とスプロケット158とが一体化されて一体的に回動可能に構成されている。このため、電動モータ41の出力軸44の回動と共にモータ側回動部材151が回動すると、その回動に同期してチェーン側回動部材152が回動し、チェーン側回動部材152のスプロケット158の回動によってチェーン101が回動する。
ここで、電動モータ41の出力軸44、モータ側回動部材151、および、チェーン側回動部材152の間で動力を伝達する機構は、上記した構成に限らず、他の機構を用いてもよい。例えば、モータ側回動部材151とチェーン側回動部材152との間で、平歯車154,156によって駆動力を伝達する機構に代えて、かさ歯車などの他の機構を用いてもよく、モータ側回動部材151と、チェーン側回動部材152との回動中心軸の軸方向が異なるようにしてもよい。また、歯車に代えてベルト等の他の機構を用いてもよいし、また、駆動力を伝達する部分を、1カ所に限らず、他の回動軸を介在させた複数箇所に設けてもよい。すなわち、3つ以上の回動中心軸を中心として回動する部材を通じて電動モータ41からチェーン101に駆動力が伝達されるようにしてもよい。
軸回動体120は、モータ側回動部材151の平歯車154側の一部分と、チェーン側回動部材152の平歯車156側の部分とを内部に収容可能な収容空間を内部に形成し、モータ側回動部材151とチェーン側回動部材152との動力伝達部分の外形形状を一回り大きくした外形形状に形成されている。このため、チェーン側回動部材152とモータ側回動部材151との動力伝達部分に対しては、切削により飛散する切り屑の進入が軸回動体120によって阻止される。
また、電動モータ41の出力軸44の回動中心軸(図3及び図5の一点鎖線)に一致する回動中心軸を基準にして、軸回動体120は、回動可能に、ベース体110に支持されている。電動モータ41の出力軸44の回動中心軸は、モータ側回動部材151(モータ連結軸155)の回動中心軸と同一直線上に位置するものであるので、軸回動体120は、モータ側回動部材151にも回動中心軸が一致する構成とされている。なお、電動モータ41の出力軸44の回動中心軸と、モータ側回動部材151の回動中心軸とは、必ずしも同一直線上に配置される構成とする必要はなく、電動モータ41の出力軸44の回動中心軸とモータ側回動部材151の回動中心軸とが所定の角度で交わるように配置し、自在継手(例えば、フック自在継手など)を介して動力が伝達されるようにしてもよく、この場合に、軸回動体120は、モータ側回動部材151(モータ連結軸155)の回動中心軸を基準にして回動可能にベース体110に支持され、電動モータ41の出力軸44の回動中心軸とは異なる回動中心軸を基準にして回動する構成としてもよい。
一方、チェーン側回動部材152(チェーン回動軸157)の回動中心軸は、モータ側回動部材151(モータ連結軸155)の回動中心軸と略平行となるように設けられている。すなわち、チェーン回動軸157とモータ連結軸155とは略同一の方向側が軸方向となるようにして、チェーン側回動部材152が軸回動体120に支持されている。このため、電動モータ41の出力軸44の回動中心軸を基準にして、軸回動体120が回動しても、チェーン回動軸157とモータ連結軸155との距離は変わらず、チェーン回動軸157とモータ連結軸155とに設けられる2つの平歯車154,156は噛み合った状態を維持し、動力を伝達可能な状態が維持される。
ベース体110のモータ側回動支持部112は、モータ側回動部材151の軸方向を厚み方向とする板状に形成され、モータ側回動部材151が挿通される挿通穴を有している。その挿通穴の周りには、軸回動体120を回動可能に連結するためのベアリング117が設けられている。ベアリング117は、円環状に形成され、断面略円形状の内面部分に軸回動体120の一端側から突出する円筒状のフランジ部が嵌め込み固定され、外周面側がモータ側回動支持部112に圧入されて嵌め込み固定されている。ベアリング117は、内周面側と外周面側とが別部材によって各々円環状に構成され、それらの間部分がころがり軸受によって相対移動可能に構成されている。これにより、軸回動体120は、モータ側回動支持部112によって、電動モータ41の出力軸44の回動中心軸を基準に、周方向に回動可能に支持される。なお、軸回動体120がモータ側回動支持部112によって回動可能に支持される構成は、上記構成に限らず、他の機構によって回動可能に支持してもよく、例えば、すべり軸受を利用して回動可能に支持しても良い。
軸回動体120は、ベース体110のモータ側回動支持部112によって一方側(電動モータ41側)が支持され、他方側(チェーン101側)がベース体110のガイド側回動支持部114によって回動可能に支持されている。具体的には、ガイド側回動支持部114には、軸回動体120の回動中心軸に一致するように、軸支持部としてのボルト104の軸部分が挿通可能な挿通穴118が設けられ、このボルト104の先端部分が軸回動体120の回動中心軸に沿って設けられる固定穴123に固定されている。これにより、軸回動体120は、モータ側回動支持部112と、ガイド側回動支持部114とによって両端側が支持され、チェーン101による木材加工の際に、チェーン101を通じて軸回動体120に抵抗力が伝達されても変位量を少なく抑えて、チェーン101を精度良く位置決めし易くすることができる。なお、必ずしも、軸回動体120を、ベース体110によって両側で回動可能に支持する構成とする必要はなく、モータ側回動支持部112とガイド側回動支持部114とのうち一方側のみによって軸回動体120を回動可能に支持するようにしてもよい。
チェーンガイド130は、図4に示すように、ベース体110のガイド側回動支持部114の固定穴119に、固定手段としての複数のネジ105によって固定される。チェーンガイド130は、チェーン側回動部材152の回動中心軸の軸方向に沿った方向側に厚みを有する板状に形成されている。また、チェーンガイド130は、チェーン側回動部材152のスプロケット158に近い側(駆動側)を基端側としてチェーン側回動部材152から離間する方向側(図4のx方向側)に先端側が位置し、x方向側が長手方向となるように連続している。チェーンガイド130の外周縁部分には、スプロケット158の外周の一部と共に、チェーン101が掛けられ、スプロケット158が回動することによってチェーンガイド130の外周に沿ってチェーン101が回動する。
チェーンガイド130の外周縁部分の形状は、先端側の曲率半径が小さく、長手方向に沿った中央側の外周縁部分に向かって曲率半径が徐々に大きくなるように、すなわち、複数の曲率半径を有するように形成されている。また、チェーンガイド130の外周縁部分の形状は、その長手方向に交差する幅(図4のy方向の長さ)に比べて長手方向に大きく突出するように連続して構成されている。このため、チェーンガイド130の先端側の縁部分を利用して幅の狭い部分の加工や曲率半径の小さな加工をしたり、チェーンガイド130の長手方向に沿った縁部分を利用して直線に近い形で長い範囲に対しての加工をするなど、必要に応じた形状および大きさの異なる種々の加工を、1つのチェーン加工装置100を利用して行うことができる。よって、回動軸を中心とする略円形の外形部分で木材を加工する丸鋸などと比べて加工の自由度を高くすることができ、木材加工用装置11の交換回数を少なくして木材の加工を効率よく行うことができる。
チェーン101には、その外周側において一定距離離間した複数箇所に複数の刃部102が設けられている(図4においては、一部のみを模式的に表示)。複数の刃部102は、図4に示すように、木材を加工する加工方向Kがチェーン101の周方向の一方側となるように構成されている。この刃部102の加工方向(すなわち、木材を切削加工するための回動方向)は、チェーン側回動部材152のスプロケット158に対して軸回動体120の回動中心軸に近い側(図4の下側)において木材が加工される向きとなるように設定され、この向きとなるように、チェーン101がチェーンガイド130に掛けて取り付けられる。
ここで、チェーンガイド130、スプロケット158およびチェーン101は、チェーンを用いて木材加工を行うチェーンソーに用いられる種々の構成を適用することができる。例えば、チェーンガイド130は、その外周縁部分に溝が設けられ、その溝に、チェーン101の内周側に突出する一部分(ドライブリンク)が入り込んだ状態でチェーンガイド130にチェーン101が掛けられる構成が例示される。また、チェーン101についても、従来のソーチェーンを適用することができ、チェーン101の刃部102を板状のトッププレートとサイドプレートとを組み合せた略L字状の断面形状としたり、刃部102による加工量を設定するためのデプスゲージを刃部102と一体的に設ける構成などが例示される。
チェーンガイド130には、ベース体110との相対位置を調整可能な調整機構が設けられている。具体的には、チェーンガイド130を取り付けるためのネジ105の軸部分が挿通される長穴が、チェーンガイド130の長手方向に沿ってネジ105の取り付けに必要な長さより長く形成され、その長く形成した長さ分は、チェーンガイド130の位置を移動することができる。これにより、チェーンガイド130から外側に突出する高さが異なる別のチェーン101をチェーンガイド130に取り付けた場合でも、チェーン101のx方向における先端側の位置を調整可能としたり、チェーン101の張りや弛みを調整可能とすることができる。このチェーンガイド130とベース体110との相対位置を調整する構成としては、上記に限らず、他の構成を適用してもよく、例えば、位置調整の方向をx方向に限らず、y方向にも一定範囲内で移動可能となるようにしてもよく、例えば、長穴のy方向における幅を、ネジ105の軸部分よりも広げて構成してもよいし、ネジの締め込み量によってベース体110との距離(すなわち、図4のz方向における位置)が調整可能となるようにするスペーサーを介在させるなど、他の機構を組み合わせて構成してもよい。
ベース体110の連結部113には、付勢力発生機構140が設けられている。付勢力発生機構140は、軸回動体120をチェーン101が張る方向となる一方側へ回動させる付勢力を発生するものである。具体的には、付勢力発生機構140として、金属製の作用ピン141と、コイルバネ142とを備えている。
作用ピン141は、軸回動体120の回動中心軸からずれた高さに接触可能な先端部を有する略円柱状の外形を有して連結部113が位置する一方側が開口した筒状に形成されている。この作用ピン141の開口部分に、コイルバネ142が内挿される。コイルバネ142は、連結部113に対して軸回動体120が位置する方向側(図4の左上側)に作用ピン141を突出させる付勢力を発生するようにして取り付けられる。
作用ピン141は、連結部113の厚み方向に沿って移動可能となるように、作用ピン141の外周を支持する略筒状の支持部材143に装着されている。作用ピン141には、作用ピン141の一定量以上の突出を制限するストッパネジ144が係合する溝145が設けられ、このストッパネジ144が溝145の縁部分に引っ掛かって作用ピン141が支持部材143から抜け出さないように取り付けられている。この支持部材143は、作用ピン141の移動方向に沿って、一定の範囲内で移動可能に、例えば、支持部材143の外形を円柱状にし、その外周の一部におねじを設け、支持部材143の取り付けられる連結部113の穴部分にめねじを設けて、ネジ込み量によって取付位置を異ならせるようにしてもよく、これにより、コイルバネ142による付勢力の大きさを変化させることができる。
付勢力発生機構140によって軸回動体120が連結部113から離間する方向側に移動すると、軸回動体120に支持されるチェーン側回動部材152のスプロケット158がチェーンガイド130から離間するように移動し、これにより、チェーン101が掛けられた内周部分の長さが長くなることでチェーン101が張られた状態となる。これにより、チェーン101が回転することによる遠心力やチェーン101の伸びなどによって外側(チェーンガイド130から離れる側)へチェーン101の外周部分が移動してしまう事態を抑制し、チェーン101を精度良く位置決めすることができる。
また、付勢力発生機構140として、支持部材143の位置を変化させることなく、作用ピン141が軸回動体120に付加する付勢力を調整可能とする調整機構が設けられている。この調整機構の例として、支持部材143の内部には、コイルバネ142を支える面を構成するバネ支持面が作用ピン141の移動する方向に沿って移動可能とされ、そのバネ支持面の位置は、エアチューブ146によって供給される空気の圧力が一定以上に高められると、作用ピン141が突出する方向側へ移動(進行)する。空圧の圧力は、制御装置13の制御によって制御され、例えば、チェーン101の回動速度が一定以上の高速になった場合に、空気の圧力が高められてバネ支持面が進行し、その分、チェーン101の張力が高められるように制御される。また、チェーン101の回動速度が予め設定された圧力低下速度まで低下すると空気の圧力が低く調整されてバネ支持面が移動(後退)し、その分、チェーン101が弛む状態となるように制御される。これにより、チェーン101が高速に回転しても、チェーンガイド130の先端に掛けられたチェーン101が遠心力やチェーンの伸びなどによって外側(チェーンガイド130から離れる側)へ移動してしまう事態を抑制し、高速回転中のチェーン101を精度良く位置決めすることができる。
なお、付勢力発生機構140は、チェーンが張った状態となるように軸回動体120が回動する方向側へ作用する力(以下、軸回動体120への作用力ともいう)を生じさせる機構であれば、必ずしも上記した構成とする必要はなく、制御装置13に制御されるモータによって軸回動体120への作用力を発生させるなど他の機構を用いてもよい。また、必ずしも2種の組合せとする必要はなく、3種以上の機構の組合せにしてもよいし、コイルバネ142と空気の圧力とによる2つの機構のうちの一方の機構のみとするなど1つの機構によって構成してもよい。
この場合において、少なくともいずれか1つの機構は、制御装置13の制御によらず軸回動体120への作用力を生じさせることが可能なバネに代表される機構とすることが好ましく、また、少なくともいずれか1つの機構はチェーン101の回動速度に応じて軸回動体120への作用力を変化させるなど軸回動体120への作用力を変動可能な構成とすることが好ましい。軸回動体120への作用力を変動可能な構成とした場合には、上記した作用力の調整の制御に限らず、チェーン101の回動速度に比例して当該作用力を制御するなど、他の制御により軸回動体120への作用力を調整する制御を行ってもよい。
軸回動体120とベース体110には、軸回動体120の回動範囲を制限するための回動範囲制限機構が設けられている。回動範囲制限機構は、ベース体110によって回動可能に支持される軸回動体120の回動可能な範囲を一定範囲に制限したり、軸回動体120が回動しないようにベース体110と軸回動体120とを一体化させる。
図4には、回動範囲制限機構の一例として、ベース体110のガイド側回動支持部114に、軸回動体120の回動中心軸を中心とする円弧状の長穴161が設けられ、軸回動体120におけるガイド側回動支持部114に対面する側面には、回動範囲を制限するためのボルト106の先端部が螺入されるボルト孔124が設けられ、そのボルト孔124に、ボルト106の軸部分が長穴161に挿通された状態で固定される機構を例示している。これにより、軸回動体120の回動可能な範囲は、ボルト106の軸部分が長穴161の形成された範囲内に限って回動可能となり、長穴161の両端にボルト106が当接することで回動位置が制限される。また、ボルト106を一定以上のトルクで締め込み固定した場合には、ボルト106の頭部と軸回動体120とによってガイド側回動支持部114が挟み込まれた状態で固定され、その固定位置からは、軸回動体120がいずれの方向にも回動しない状態とすることができる。
なお、回動範囲制限機構としては、上記構成に限るものでなく、他の機構を適用してもよく、例えば、必ずしも位置決め固定する機能を付加する必要はなく、位置決め固定する機能は省略してもよいし、また、軸回動体120の回動可能な範囲を変化可能に構成してもよく、例えば、円弧状の長穴161の端部位置を変化させることが可能な板状の部材を長穴161に重なるように設置し、その重なり量を調整することで回動範囲を変化させるようにしてもよい。
ベース体110の連結部113は、軸回動体120に対してチェーンガイド130が連続して設けられる一方側(図4の右下側)に設けられている。すなわち、連結部113は、電動モータ41の出力軸44、モータ側回動部材151および軸回動体120の回動中心軸に対して、チェーンガイド130が連続して設けられる側に位置し、チェーン101による加工の際に、チェーン101およびチェーンガイド130に入力される抵抗力などの作用する位置に近い部分でチェーンガイド130を支持し易くしている。これにより、連結部113に作用する回転力(回転モーメント)を抑制し、チェーン101の位置ずれを少なくすることができる。
なお、連結部113は、軸回動体120の周りの全周を囲う筒状に形成してもよい。この場合には、剛性は高くすることができるが、その分、連結部113を含めたベース体110の重量が嵩んでチェーン加工装置100の移動可能な速度が制限されたり、狭い箇所への加工が困難となる可能性がある。本実施例のように、連結部113を、軸回動体120の一方側のみに形成することで、チェーン加工装置100の軽量化と小型化を可能としチェーン101の高速移動や加工可能な位置の自由度を高めることができる。
また、軸回動体120の周りの一部に連結部113が設けられる場合、連結部113は、チェーンガイドの連続する方向側に位置するように設けられることが好ましく、また、軸回動体120の外形に沿った方向側へ連続する形状とすることが好ましい。本実施例では、軸回動体120に対して一方側(図4の右下側)にて、軸回動体120が回動中心に対して大きく形成されるチェーン側回動部材152の設けられる方向側(図4の上下方向側)に連続する形状とされており、これにより、チェーン101が駆動する駆動側に相当するスプロケット158を中心としてチェーン101に回動力が伝達され、チェーンガイド130が回転する方向側に木材の抵抗力が作用しても、変形する量を抑えつつ、外形を小型に形成することができる。
ここで、チェーン加工装置100の位置および姿勢を制御装置13によって制御するための基準位置(加工基準位置)について説明する。木材加工装置20の制御装置13は、木材加工用装置11としての多関節ロボット20Aの変位動作部としての複数のアーム21〜23および回動部24(図2参照)を制御し、チェーンガイド130の位置及び角度を変化させることで、チェーン101の位置及び角度を変化させる。この場合に、チェーンガイド130の長手方向に沿った先端位置(図4の座標配置位置)か、チェーンガイド130の先端側における所定の位置(例えば、チェーンガイド130の先端位置に対して、チェーン101の厚み分、さらに、チェーンガイド130の長手方向(図4のx方向)にずれたチェーンの加工位置を加工基準位置として多関節ロボット20Aの変位動作部の動作を制御することが好ましい。
具体的な設定例としては、図2に示すように、多関節ロボット20Aのベース体25における所定の位置(例えば、ベース体25が回動部24を支持する面における回動中心位置W)に、制御装置13の制御における絶対的な座標系(ワールド座標系)を設定する。そして、このワールド座標系に対して、チェーン加工装置100が取り付けられる位置、または、最も先端側に設けられるアーム21の先端側における所定の位置(例えば、電動モータ41の取付面におけるアーム21先端の回動中心位置M)に第1の座標系(メカニカルインタフェース座標系)を設定し、この第1の座標系に対してチェーンガイド130の長手方向に沿った先端位置Tまたは先端位置側の所定の位置を加工基準位置とし、その加工基準位置に第2の座標系(ツール座標系)を設定する。これら3つの座標系を制御装置13に設定し、チェーン101による加工位置の制御に利用することで、チェーン加工装置100を用いた木材加工の制御を好適に行うことができる。
次に、軸回動体120の回動範囲と、軸回動体120の回動動作とについて、図6を参照して説明する。図6(a)は、軸回動体120が回動範囲内の基準位置(回動基準位置)に位置した状態におけるチェーン101の配置を示した図であり、図6(b)は、図6(a)よりチェーンが張る方向側に軸回動体120が回動した状態を示した図であり、図6(c)は、図6(a)よりチェーン101が弛む方向側に軸回動体120が回動した状態を示した図である。なお、図6の各図においては、チェーン101の内周側における基準線と、スプロケット158の基準となる外形(ピッチ円)と、モータ側回動部材151およびチェーン側回動部材152の平歯車154,156の基準となる外形(ピッチ円)とを一点鎖線で示し、チェーンガイド130の外形の一部と、軸回動体120と、付勢力発生機構140を構成する作用ピン141を実線で示し、モータ側回動部材151(モータ連結軸155)とチェーン側回動部材152(チェーン回動軸157)を回動中心軸の位置のみ黒点で示している。また、図6(a)には、チェーンケース103の外形と、回動範囲制限機構を構成する長穴161とボルト106の軸部分とを実線で示している。
図6(a)に示すように、軸回動体120の回動基準位置は、チェーンガイド130の長手方向(図6のx方向)と、モータ側回動部材151に対してチェーン側回動部材152の中心が位置する方向とが略直交する位置としている。これにより、軸回動体120の回動動作を、チェーンガイド130の長手方向に一致し易くすることができ、チェーンガイド130に適切にチェーン101が掛けられた状態を維持し易くすることができる。すなわち、当該回動基準位置となるように、チェーンガイド130の位置、チェーン101の長さ、スプロケット158の外形などを設定することが好ましい。なお、図6(a)から図6(c)には、回動基準位置を示す線として、モータ側回動部材151とチェーン側回動部材152の回動中心軸を結んだ直線を図示している。
図6(a)に示すように、軸回動体120には、作用ピン141によって軸回動体120がチェーン101を張る方向側(図6のモータ側回動部材151を基準とした左回り方向)への付勢力が作用している。チェーン101の伸びが使用によって生じた場合には、図6(b)に示すように、軸回動体120がチェーン101が張る方向に回動することとなる。このため、チェーン101が張った状態を長い期間にわたって維持し易くすることができる。
また、図6(a)に示すように、回動範囲制限機構を構成する長穴161とボルト106は、チェーンケース103の外形より外側に位置するように配置されている。これは、回動範囲制限機構の回動範囲を調整するためのボルト106の頭部を、チェーン加工装置100において外面に露出する位置に配置するためである。これにより、チェーン101による加工の途中で、軸回動体120をベース体110に固定したり、固定を解除したりする必要が生じた場合に、チェーンケース103を取り外すなどの他の操作を行うことなく容易にボルト106のネジ込み量を調整し、回動範囲の設定変更をすることができる。
チェーン101を新規で取り付ける場合や、チェーン101のメンテナンスの目的でチェーン101の取り外しや取り付け作業を必要とする場合には、図6(c)に示すように、チェーン101が弛む方向側へ軸回動体120を移動する。この移動の際には、付勢力発生機構140による作用ピン141の付勢力が弱まるようにすることで、軸回動体120を容易に移動することができる。この付勢力の調整は、作用ピン141を支持する支持部材143(図4参照)を軸回動体120から離間するように移動したり、付勢力発生機構140に作用する空圧を低くする操作を行うことで実現することができ、これにより、チェーン101のメンテナンスや交換を容易に行うことができる。
次に、チェーン101の回動する位置と、チェーン側回動部材152およびモータ側回動部材151の回動する位置との関係について、図7を参照して説明する。図7(a)は、モータ側回動部材151とチェーン側回動部材152の回動によってチェーン101に動力が伝達する状態を示した図であり、図7(b)は、チェーン101の刃部102に抵抗力(反力)が負荷された状態を示した図であり、図7(c)は、チェーン101の刃部102に抵抗力が負荷された場合において軸回動体120が回動している状態を示した図である。なお、図7の各図においては、チェーン101の模式的な形状と、スプロケット158の基準となる外形(ピッチ円)と、チェーンガイド130の外形を実線で示し、モータ側回動部材151およびチェーン側回動部材152の平歯車154,156の基準となる外形(ピッチ円)を一点鎖線で示し、モータ側回動部材151(モータ連結軸155)とチェーン側回動部材152(チェーン回動軸157)を回動中心軸の位置のみ黒点で示し、チェーン101の先端側に設定される加工基準位置の座標を例示している。
電動モータ41の駆動力は、図7(a)に示すように、モータ側回動部材151とチェーン側回動部材152の平歯車154,156を通じて、チェーン側回動部材152のスプロケット158を介してチェーン101に伝達される。これにより、チェーン101は、図7の矢印で示す加工方向Kに沿って回動する。
チェーンガイド130の外周縁部分には、チェーンガイド130の長手方向に沿った方向側に連続する外縁部G1,G2が、チェーンガイド130の幅方向における両側に設けられている。これら外縁部G1,G2のうち、図7(a)の下側の外縁部G1に掛けられているチェーン101は、加工方向Kに沿った回動によってスプロケット158に近づくように移動(図7(a)の左側へ移動)する。また、図7(a)の上側の外縁部G2に掛けられているチェーン101は、スプロケット158から離間するように移動(図7(a)の右側へ移動)する。
ここで、外縁部G2に掛けられている部分は、スプロケット158がチェーン101を引く力がチェーンガイド130の先端側を経由して伝達される。このため、外縁部G2を利用してチェーン101で加工を行うと、スプロケット158がチェーン101を引く力がチェーンガイド130の先端部分に作用し、チェーンガイド130を座屈させる方向の力が生じてしまう。よって、外縁部G2を利用した加工では、チェーンガイド130の変形や破損を考慮することが好ましい。
チェーン101による加工に際しては、加工基準位置に近いチェーンガイド130の先端部分を利用して幅の狭いスリットなどを加工する。一方、加工の長さが大きく取りやすい長手方向に沿った位置であって、チェーン101がスプロケット158に近づくように引っ張って加工可能な範囲(図7(a)の下側の外縁部G1に掛けられるチェーン101の一部)では、チェーンガイド130の先端側を経由させることなく、チェーン101をスプロケット158で直接的に引っ張るように加工することができる。このため、大きな範囲の加工を効率よく行うことができる。
この場合において、木材の加工範囲が大きくなる(すなわち、加工される長さが長くなる)と、加工される部分の堅さなどによって大きな抵抗力が発生する可能性が高くなり、その場合には、チェーン101の刃部102が木材に一時的に引っ掛かってしまう状況が生じ得る。この状況においては、電動モータ41の駆動力によってチェーン加工装置100に回転する方向側への抵抗力が作用し、加工位置がずれてしまう可能性がある。
この場合に、チェーン加工装置100においては、電動モータ41の出力軸44およびモータ側回動部材151の回動中心軸からずれた位置にチェーン側回動部材152の中心位置が配置されている。そして、そのずれた分だけ、チェーン101の刃部102が木材と接触してチェーン加工装置100を引っ張るように作用する反力Fのベクトルは、電動モータ41の駆動力によって回動するモータ側回動部材151のモータ連結軸155に近い位置を通過することとなる。
図7(b)に示すように、チェーンガイド130の外周縁部分として、チェーンガイド130の長手方向に沿った両側の外縁部G1,G2のうち一方の外縁部G1は、チェーンガイド130の長手方向における略中央部に位置するチェーンの連続する方向に沿った仮想線V1が他方の外縁部G2における仮想線V2よりもモータ連結軸155(詳細には、モータ連結軸155の回動中心)に近くなる。よって、反力Fがチェーン101を通じてチェーン加工装置100に作用しても、モータ連結軸155を中心にしてチェーン加工装置100が回転する方向側への回転力を小さくすることができる。従って、モータ連結軸155を中心にした回転方向への変位量(変形量)を小さくし、高精度の加工を短時間で実行し易くすることができる。特に、多関節ロボット20Aのアーム21に対して電動モータ41と装着部45とを介してチェーン加工装置100が接続される場合に、モータ連結軸155および電動モータ41の出力軸44の周りを筒状の部位で連結する構成によって、チェーン加工装置100、装着部45および電動モータ41を小型に構成しつつ、回転方向への変位量(変形量)は小さく抑えることができて好ましい。
また、上記したように、チェーン101が木材に引っ掛かってしまう状況が生じた場合、スプロケット158とチェーン101とが一時的に動作を止められそうになる可能性がある。この場合であっても、図7(c)に示すように、モータ側回動部材151(モータ連結軸155)の回動中心軸を中心にして、チェーン側回動部材152を支持する軸回動体120が回動可能に構成されているので、モータ側回動部材151の回動力(図7(c)の矢印S1の方向への回動力)は、図7(c)の矢印S2の方向に、軸回動体120と共にチェーン側回動部材152を回動させるように作用する。すなわち、図7(c)のチェーン101に沿って付した矢印C1の方向側へチェーン101を引く方向にモータ側回動部材151の回動力が作用する。この引っ張り力は、スプロケット158の外形を平歯車156の外形より大きく設定したり、チェーン側回動部材152の回動中心近くをチェーン101が経由する配置に設定するほど大きな力を発生させることができる。これにより、一時的に刃部102が木材へ引っ掛かってしまう状況を容易に解消可能とすることができる。
以上説明したように、本実施形態のチェーン加工装置100を多関節ロボット20Aに取り付けることによって、木材を様々な形状に加工したり、狭い幅しかないスペースに対しての加工を可能とする等、木材を加工する自由度を向上させることができる。
また、チェーン回動軸157を回動可能に支持する軸回動体120は、チェーンガイド130が固定されるベース体110に対して、チェーン回動軸157がチェーンガイド130の長手方向に沿った所定の範囲内で移動可能となるように回動可能に設けられ、付勢力発生機構140は、チェーンガイド130の突出方向とは逆の方向にチェーン回動軸157が向かうことでチェーンが張った状態となるように軸回動体120が回動する方向側への力を生じさせる。
このため、チェーン101が伸びた場合、チェーンガイド130の先端側の位置を移動させることなく当該先端側の端部からモータ連結軸155が離間する方向側への力が生じるように、付勢力発生機構140が軸回動体120に作用し、チェーンが張った状態で回動し易く構成されている。このため、他の部材に取り付けられるベース体110の被固定部111と、チェーンガイド130の先端側に位置するチェーン101先端側の位置との相対的な位置関係を一定に維持し易くすることができる。よって、ベース体110の被固定部111を介してチェーン101の位置や姿勢を制御して木材を加工する場合に、チェーン101を精度良く位置決めすることができる。
また、複数の刃部102を有するチェーン101を、長手方向に沿って連続するチェーンガイド130で支持して木材加工を行う場合には、チェーン加工装置100が取り付けられる位置(取付位置)から、木材加工が行われ得る最も遠い位置(チェーン101の先端部)は、他の刃物(例えば、丸鋸)と比べて遠くに位置し易い。また、チェーン101に伸びが生じた場合には、チェーン加工装置100の取付位置から木材加工が行われ得るチェーン101の先端部(ガイド部材の先端部に掛けられた部分)までの距離が変化することとなって、チェーン101の先端部における加工を高精度で実行することが難しい。この場合において、従来では、チェーンガイドの先端側を駆動軸から離れる側に移動することでチェーンを張るように対応する場合があるが、その移動分、チェーン加工装置の基準位置(加工基準位置)を再設定しなければならず、木材加工以外の調整時間や設定時間が多く必要となり易い。
この点について、本実施形態に係るチェーン加工装置100が取り付けられた多関節ロボット20A(木材加工装置20)の制御装置13においては、チェーン加工装置100のチェーンガイド130の先端位置又はチェーンガイド130の先端側における所定の位置を基準位置として、複数のアーム21〜23および回動部24の動作が制御される。チェーンガイド130の先端は、チェーン加工装置100の取付位置から遠くに位置する部位であるので、この部位を基準位置にして加工を行うことによって、チェーンの先端部を利用した細かな加工(例えば、スリット加工など)を実行し易くすることができ、加工をするために必要となる設定作業を簡易に行い易くすることができる。
また、チェーン101に伸びが生じた場合、付勢力発生機構140によってチェーン回動軸157が移動することによりチェーン101を張るようにすることができるので、チェーン101による木材の加工位置は、チェーン101に伸びが生じるような長い期間においても変化し難く、長期にわたって高い加工精度を維持し易くすることができる。よって、木材加工に伴ってチェーン101が伸びても、多関節ロボット20Aの動作を制御するためのチェーン加工装置100の基準位置は再度の設定を行う必要を少なくし、多関節ロボットの制御を簡易にしつつ高い加工精度を有するものとすることができる。
また、チェーン101の長手方向に沿った部分を利用して大きな範囲で木材加工する場合において過大な抵抗力(反力)がチェーン101に作用する状況であっても、チェーン101とモータ連結軸155との位置関係と、チェーン101の加工方向との設定によって、チェーン加工装置100がモータ連結軸155を中心にして回転する方向側への回転力を小さくすることを可能としている。よって、チェーン101が掛けられるチェーンガイド130の先端位置又はチェーンガイド130の先端側における所定の位置は変化し難くすることができ、チェーンガイド130の先端側に基準位置を設定しても、設定した位置と実際の位置とのずれを少なくすることができ、高い加工精度を有するものとすることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られることはなく、例えば、以下に記載するように変形して実施してもよく、この場合に、以下に記載する各構成を上記実施形態に対して適用してもよく、以下に記載する複数の構成を組み合わせて上記実施形態に対して適用してもよい。
例えば、軸回動体120は、必ずしも電動モータ41の出力軸44の回動中心と一致するようにして回動可能に構成する必要はなく、チェーン101の張る方向へ移動可能であれば、他の位置を回動中心にして回動可能にベース体110に支持される構成としてもよい。また、軸回動体120が回動する範囲の中に、必ずしもチェーンガイド130の長手方向と軸回動体120の回動する方向とが一致する区間が含まれるように構成する必要はない。チェーンガイド130の長手方向の成分を含む方向側に軸回動体120が回動可能であればよく、チェーンガイド130の長手方向に対して傾いた方向側のみに軸回動体120が回動する構成としてもよい。
また、チェーンガイド130は、必ずしも先端側にて曲率半径が小さく、長手方向に沿った部分に近づくほど曲率半径が大きくなるように構成する必要はなく、先端側に曲率半径の大きな部位を含むようにしてもよいし、長手方向に沿った部分において一部に直線の区間が設けられるなど、他の形状を含む外形によってチェーンガイド130を構成してもよい。
また、チェーン101の加工方向は、必ずしも上記した実施形態と同一の方向とする必要はなく、逆方向に設定してもよく、この場合であっても、チェーン101が付勢力発生機構140によって張った状態で回動し易くすることができる。