JP6632049B1 - ゲルベアルコールを製造する方法 - Google Patents

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Abstract

第一級又は第二級水酸基を有する1種又は2種以上の炭素数4〜16のアルコールを、遷移金属ナノ粒子、及び塩基の存在下で二量化させて、ゲルベアルコールを生成させる工程を備える、ゲルベアルコールを製造する方法が開示される。遷移金属ナノ粒子が、配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱することにより生成する粒子である。

Description

本発明は、ゲルベアルコールを製造する方法に関する。
ゲルベアルコールは、第1級水酸基又は第2級水酸基を有するアルコールを二量化するゲルベ反応により生成するβ−分岐アルコールであり、例えば工業用及び香粧用の原料として工業的に用いられている。ゲルベアルコールを得るためのゲルベ反応として、例えば、炭素等の担体に担持された金属触媒を不均一系の水素化触媒として用いる反応が特許文献1に記載されている。不均一系の金属触媒は、反応終了後に回収して容易に再利用できる点で、均一系の金属触媒よりも経済的に有利である。
特表2013−510105号公報
しかし、不均一系の金属触媒を用いる従来の方法では、ゲルベ反応を進行させるために、例えば250℃のような高温を要していた。そこで本発明の一側面の目的は、反応後に容易に回収することが可能な金属触媒を用いながら、より低温での反応によりゲルベアルコールを得ることを可能にする方法を提供することにある。
本発明の一側面は、第一級又は第二級水酸基を有する1種又は2種以上の炭素数4〜16のアルコールを、遷移金属ナノ粒子、及び塩基の存在下で二量化させて、ゲルベアルコールを生成させる工程を備える、ゲルベアルコールを製造する方法を提供する。前記遷移金属ナノ粒子は、配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱することにより生成する粒子である。
この方法に用いられる遷移金属ナノ粒子は、生成物の留去、ろ過等の通常の方法により反応終了後に容易に回収することができる。さらに、この方法によれば、より低温でのアルコールの二量化を進行させて、ゲルベアルコールを得ることができる。
本発明に係る方法によれば、反応後に容易に回収することが可能な触媒を用いながら、より低温での反応によりゲルベアルコールを得ることができる。
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
ゲルベアルコールを製造する方法の一実施形態は、第一級又は第二級水酸基を有する1種又は2種以上のアルコールを、遷移金属ナノ粒子及び塩基の存在下でゲルベ反応により二量化させて、ゲルベアルコールを生成させる工程を含む。ここでの二量化は、同種のアルコール分子同士、又は、異なる2種のアルコール分子が反応してゲルベアルコールを生成することを意味する。出発物質として1種のアルコールのみを用い、これを二量化してもよい。
出発物質のアルコールは、第一級又は第二級水酸基を有し、二量化してゲルベアルコールを生成し得る化合物であればよく、直鎖アルキルアルコールであってもよい。出発物質のアルコールの炭素数は、通常4〜16であるが、8以上であってもよい。
であってもよい。
出発物質のアルコールは、例えば下記式(1)で表される化合物であることができる。
Figure 0006632049
式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和脂肪族基を示し、R、R及びRの炭素数は合計で2〜14である。Rが炭素数2〜12の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和脂肪族基で、R及びRが水素原子であってもよい。ここでの脂肪族基は、直鎖アルキル基であってもよい。
式(1)で表される化合物の二量化により、例えば式(2)で表されるゲルベアルコールが生成する。式(2)中の各符号は式(1)中の符号と同義である。
Figure 0006632049
本実施形態に係る方法におけるゲルベ反応は、出発物質のアルコールが酸化されてカルボニル化合物が生成することと、2分子のカルボニル化合物のアルドール縮合により、カルボニル基及び炭素−炭素二重結合を有する二量体が生成することと、この二量体に水素が付加してゲルベアルコールが生成することとを含むと推定される。遷移金属ナノ粒子は、主に、アルコールの酸化、及び二量体への水素付加に関与すると考えられる。塩基は、主にアルドール縮合に関与すると考えられる。
出発物質のアルコールは、直鎖アルキルアルコールであってもよく、その具体例としては、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール及びこれらから選ばれる2種の組み合わせが挙げられる。
金属触媒として用いられる遷移金属ナノ粒子は、ナノサイズの粒径を有する粒子であり、金属クラスターの粒子であると考えられる。遷移金属ナノ粒子の平均粒子径は、例えば0.5〜4nmであり、2nm以下であってもよい。遷移金属ナノ粒子の粒子径は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)の像において観察される遷移金属ナノ粒子の最大幅を意味する。
この遷移金属ナノ粒子は、配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱することにより生成する粒子であることができる。この方法により生成する遷移金属ナノ粒子の表面上に配位性有機溶媒が配置され、それにより遷移金属ナノ粒子が保護されていると考えられる。この遷移金属ナノ粒子は、例えば特開2011−12097号公報に記載された方法を参照して、合成することができる。
遷移金属ナノ粒子を得るために用いられる遷移金属化合物は、例えば、遷移金属のハロゲン化物、硫酸化物、又は硝酸化物であることができる。遷移金属は、例えば、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、ロジウム及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよく、特に、ルテニウム又はイリジウムであってもよい。ルテニウム又はイリジウムを含む遷移金属ナノ粒子(ルテニウムナノ粒子又はイリジウムナノ粒子)は、配位性有機溶媒を含む溶媒中でルテニウム化合物又はイリジウム化合物を加熱することにより得ることができる。遷移金属化合物に含まれる遷移金属の価数は、特に限定されない。例えば、ルテニウムナノ粒子を得るために用いられるルテニウム化合物が、3価のルテニウム(Ru(III))、4価のルテニウム(Ru(IV))、又はこれらの両方を含んでいてもよい。
遷移金属ナノ粒子を得るために用いられる配位性有機溶媒は、遷移金属に配位することが可能な有機溶媒である。配位性有機溶媒は、例えば、アミド系溶媒、アミン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、スルホキシド系溶媒、又はこれらから選ばれる2種以上の組み合わせであることができる。アミド系溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のカルボン酸アミド、並びに、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)等のリン酸アミドが挙げられる。アミン系溶媒の例としては、トリエチルアミン、ピリジン及びエタノールアミンが挙げられる。アルコール系溶媒の例としては、イソプロパノール、及びプロピレングリコールが挙げられる。エーテル系溶媒の例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、及びテトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。ケトン系溶媒の例としては、アセトン、及び2−ブタノンが挙げられる。エステル系溶媒の例としては、酢酸エチル、及び酢酸メチルが挙げられる。ニトリル系溶媒の例としては、アセトニトリルが挙げられる。ニトロ系溶媒の例としては、ニトロメタンが挙げられる。スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドが挙げられる。配位性有機溶媒は、アミド系溶媒であってもよく、特にN,N−ジメチルホルムアミドであってもよい。
配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属ナノ粒子が生成した後、得られた分散液から、配位性有機溶媒で保護された遷移金属ナノ粒子を取り出し、これをゲルベ反応のための触媒として用いることができる。あるいは、分散液をそのまま、又は必要により濃縮してから、ゲルベ反応のための系中に投入してもよい。
ゲルベ反応に用いられる塩基は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド又は水素化物を含んでいてもよい。塩基の例としては、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。
アルコールを二量化させるゲルベ反応は、アルコール、遷移金属ナノ粒子及び塩基を含む無溶媒の反応混合物中で、又は、溶媒を含む反応液中で、行うことができる。無溶媒の反応混合物中でのゲルベ反応が、より高い収率及び選択性で目的とするゲルベアルコールを生成させる傾向がある。ただし、無溶媒の反応混合物は、微量の溶媒を含んでいてもよい。例えば、反応混合物の質量を基準とする溶媒の含有量は、3質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。
ゲルベ反応を溶媒を含む反応液中で行う場合、溶媒は、例えば、t−ブタノール、イソプロパノールのような、二量化しないアルコール系溶媒、又は、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒であることができる。反応液中の溶媒の含有量は、出発物質のアルコールの体積に対して、0〜200体積%であってもよい。
ゲルベ反応において用いられる遷移金属ナノ粒子の量は、出発原料のアルコールの合計量に対するルテニウム原子の比が0.01〜1モル%となるような量であってもよい。塩基の量は、出発原料のアルコールの合計量に対して、0.1〜50モル%であってもよい。
アルコールを二量化させるゲルベ反応の反応温度(反応混合物又は反応液の温度)が低いと、スチーム等の比較的安価な熱源を利用できるため、経済的に有利である。また、副生物が生成し難い傾向がある。そのため、反応温度は190℃以下、160℃以下、150℃以下、又は140℃以下であってもよい。本実施形態に係る方法によれば、そのような低温でも効率的にゲルベ反応を進行させることができる。反応温度が190℃以下であると、遷移金属ナノ粒子の熱分解を抑制しながら、反応を効率的に進行させることができる。反応温度は、40℃以上であってもよい。ゲルべ反応の工程において、反応温度を変化させてもよい。例えば、ゲルべ反応の工程が、比較的低温の第1段階と、比較的高温の第2段階とを含んでいてもよい。これにより、ゲルべアルコールの収率が更に向上する傾向がある。第1段階の反応温度は、原料のアルコールが融解又は溶解する温度以上であればよい。例えば、第1段階の反応温度が40℃以上100℃未満で、第2段階の反応温度が100℃以上190℃以下であってもよい。
出発原料のアルコールの全量を1度に遷移金属ナノ粒子及び塩基と混合してもよく、アルコールを複数回(例えば2回)に分けて遷移金属ナノ粒子及び塩基と混合してもよい。アルコールが導入される回数の上限は、特に制限されないが、例えば5回以下、4回以下又は3回以下であってもよい。アルコールを複数回に分けて導入すると、ゲルべアルコールの収率がより一層向上する傾向がある。例えば、1回目に導入されるアルコール、遷移金属ナノ粒子及び塩基を含む反応混合物又は反応液を攪拌後、2回目以降のアルコールを反応混合物又は反応液に導入してもよい。この場合、1回目のアルコールが導入された反応混合物又は反応液を低温(例えば40℃以上100℃未満)で攪拌し、2回目以降のアルコールが導入された反応混合物又は反応液を、より高温(例えば100℃以上190℃以下)で攪拌してもよい。1回目に導入されるアルコールの量が、2回目以降に導入されるアルコールの量よりも少なくてもよい。
アルコールを二量化させるゲルベ反応は、大気圧雰囲気下で行ってもよい。本実施形態に係る方法によれば、加圧を必要とすることなく、効率的にゲルベ反応を進行させることができる。
ゲルベ反応の反応時間は、反応が十分に進行する範囲で調整すればよく、例えば16時間以上、又は30時間以上であってもよく、72時間以下、又は48時間以下であってもよい。上述のように、ゲルべ反応の工程が、比較的低温の第1段階と、比較的高温の第2段階とを含む場合、第2段階の反応時間がこれら範囲内であってもよい。
反応終了後、ゲルベアルコールを必要により通常の方法で精製することができる。反応終了後の反応混合物又は溶媒を含む反応液から遷移金属ナノ粒子を取り出し、これを再度ゲルベ反応に用いることができる。あるいは、反応混合物又は反応液に出発物質のアルコールを更に加え、ゲルベ反応を再度行ってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<検討1:金属触媒の種類>
1−1.遷移金属ナノ粒子の合成
容量20mLのスクリューバイアル管に、塩化ルテニウム(III)水和物(和光純薬工業株式会社製)0.2614g(1mmol)、蒸留水9mL、及び濃塩酸(和光純薬工業株式会社製)1mLを入れ、室温で一晩放置して、塩化ルテニウムを濃度0.1Mで含む塩化ルテニウム水溶液を得た。
三口フラスコにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50mLを入れた。三口フラスコに還流管を取り付け、三口フラスコを140〜142℃に加熱したオイルバスで加熱し、DMFを撹拌した。加熱開始から5分経過した後、塩化ルテニウム水溶液500μLを加えた。10時間の加熱及び撹拌を継続し、DMF中に分散するルテニウムナノ粒子(ルテニウムナノクラスター)を生成させた。その後、ルテニウムナノ粒子及びDMFを含む分散液(ルテニウム濃度の計算値:1mM)を室温まで冷却した。
塩化ルテニウム(III)水和物に代えて、塩化イリジウム(III)水和物を用いたこと以外は上記と同様の手順で、イリジウムナノ粒子を含む分散液を得た。
1−2.遷移金属ナノ粒子を用いた1−ドデカノールの二量化反応(ゲルベ反応)
Figure 0006632049
遷移金属ナノ粒子(ルテニウムナノ粒子又はイリジウムナノ粒子)を含む上記分散液1mLをシュレンク管に入れ、エバポレーターによりDMFを留去した。DMFによって保護された遷移金属ナノ粒子が残存しているシュレンク管に、0.2mmolのカリウムtert−ブトキシド(tBuOK)を入れ、シュレンク管内の雰囲気をアルゴンで置換した。シュレンク管に1−ドデカノール(1)2mmolを入れ、反応混合物が入ったシュレンク管を、オイルバスにより130℃又は150℃で24時間加熱した。冷却後、反応液をジエチルエーテルで希釈し、内部標準としてのドデカンを加えて、試料液を調製した。この試料液をガスクロマトグラフィーにより分析し、得られたクロマトグラムにおけるピーク面積比に基づいて、出発物質の1−ドデカノールの消費率、及び生成したゲルベアルコール(2)の1−ドデカノール(1)に対する収率を算出した。更に、副生物を含む生成物全体に対する1−ドデカノールの割合(選択性)を、クロマトグラムのピークの面積比に基づいて求めた。
比較のため、遷移金属ナノ粒子に代えて、均一系の金属錯体触媒である[Ru(p-cymene)Cl2]2、又は塩化ルテニウム(III)水和物を用いて同様のゲルベ反応を行い、生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。
Figure 0006632049
表1に分析結果を示す。遷移金属ナノ粒子及び塩基の存在下の反応により、比較的低温の130℃又は150℃でも十分にゲルベ反応が進行して、ゲルベアルコールが得られることが確認された。表中、「n.d.」はピークが検出されなかったことを示す。
<検討2:塩基の種類>
塩基としてtBuOK、水酸化カリウム(KOH)、又は水酸化ナトリウム(NaOH)を用い、金属触媒としてルテニウムナノ粒子を用いて、検討1と同様の130℃の条件で1−ドデカノールのゲルベ反応を行った。出発物質の消費率と、生成物の収率及び選択性を検討1と同様にガスクロマトグラフィーによって測定した。結果を表2に示す。
Figure 0006632049
表2に分析結果を示す。いずれの塩基を用いた場合でも、130℃で十分にゲルベ反応が進行することが確認された。特にカリウム化合物は高い収率及び選択性をもたらす傾向が認められた。
<検討3:希釈溶媒>
ルテニウムナノ粒子を含む分散液1mLをシュレンク管に入れ、エバポレーターによりDMFを留去した。DMFによって保護されたルテニウムナノ粒子が残存しているシュレンク管に、0.2mmolのカリウムtert−ブトキシド(tBuOK)を入れ、シュレンク管内の雰囲気をアルゴンで置換した。シュレンク管に1−ドデカノール2mmolと、溶媒としてt−ブタノール(0.5mL)、又はトルエン(0.2mL)を入れた。反応液を撹拌しながら、シュレンク管を、オイルバスにより130℃で24時間加熱した。冷却後、反応溶液に内部標準としてのドデカンを加えて、試料液を調製した。この試料液をガスクロマトグラフィーにより分析して、出発物質の消費率と、生成物の収率及び選択性を測定した。
Figure 0006632049
表3は、検討1の無溶媒反応の結果とともに、分析結果を示す。溶媒を加えた反応液中の反応でも、無溶媒の反応と比較すると収率がやや低いものの、130℃の低温でゲルベ反応が進行することが確認された。
<検討4>
合成試験4−1
四口フラスコにDMF800mLを入れた。四口フラスコに還流管を取り付け、四口フラスコを140〜142℃に加熱しながら、DMFを攪拌した。四口フラスコの内温が140℃となった時点で、塩化ルテニウム溶液(田中貴金属工業社製、ルテニウム含量:8.35質量%)0.92gを加えた。24時間から48時間の加熱及び攪拌を継続し、DMF中に分散するルテニウムナノ粒子(ルテニウムナノクラスター)を生成させた。その後、ルテニウムナノ粒子及びDMFを含む分散液を室温まで冷却した。
ルテニウムナノ粒子及びDMFを含む分散液375mLを四口フラスコに入れ、120℃に加熱しながら、DMFを減圧留去した。DMFによって保護されたルテニウムナノ粒子が残存している四口フラスコに、135.5gの1−ドデカノール、及び4.13gの水酸化カリウム(フレーク、純度95%)を入れ、フラスコ内の雰囲気を窒素で置換した。フラスコ内の反応混合物を70〜80℃に加熱しながら3時間攪拌した。次いで、反応混合物を150℃に加熱しながら、24時間攪拌した。その後、反応混合物から採取した試料をメチル−tert−チルエーテルで希釈した。希釈液をガスクロマトグラフィー(GC)により分析し、得られたクロマトグラムにおける面積比に基づいて、生成したゲルベアルコールの1−ドデカノールに対する収率を算出した。
合成試験4−2
ルテニウムナノ粒子を含む分散液の量を75mLに変更したこと以外は合成試験4−1と同様の操作により反応を行い、生成したゲルベアルコールの1−ドデカノールに対する収率を算出した。
合成試験4−3
合成試験4−1と同様のルテニウムナノ粒子及びDMFを含む分散液75mLを、四口フラスコに入れ、120℃に加熱しながら、DMFを減圧留去した。DMFによって保護されたルテニウムナノ粒子が残存している四口フラスコに、27.1gの1回目の1−ドデカノール、及び4.13gの水酸化カリウム(フレーク、純度95%)を入れ、フラスコ内の雰囲気を窒素で置換した。フラスコ内の反応混合物を70〜80℃に加熱しながら3時間攪拌した。次いで、フラスコ内の反応混合物に108.4gの2回目の1−ドデカノールを加えてから、反応混合物を150℃に加熱しながら24時間攪拌した。その後、反応混合物から採取した試料をメチル−tert−ブチルエーテルで希釈した。希釈液をガスクロマトグラフィー(GC)により分析し、得られたクロマトグラムにおける面積比に基づいて、生成したゲルベアルコールの1−ドデカノールに対する収率を算出した。
試験例4−4〜4−8
アルコールの種類、及び2回目のアルコールの添加量を表4に示すように変更したこと以外は試験例4−3と同様にして、2回に分けてアルコールを添加する方法によってゲルべアルコールを生成させた。生成したゲルベアルコールの出発物質のアルコールに対する収率をGC分析によって求めた。
試験例4−9,4−10
2回目のアルコール投入後の反応混合物の温度を150℃から160℃に変更したこと以外は試験例4−7又は4−8と同様にして、ゲルべアルコールを生成させた。生成したゲルベアルコールの1−テトラデカノール又は1−ヘキサデカノールに対する収率をGC分析によって求めた。
Figure 0006632049
表4に結果を示す。合成試験4−1と上述の検討2の結果等との比較から、反応混合物を比較的低温で攪拌後、高温に昇温することにより、ゲルべアルコールの収率が向上する傾向が認められた。また、アルコールを2回に分けて反応混合物に導入することにより、ルテニウムナノ粒子の量が少ないときでも、より高い収率でゲルべアルコールが生成することも確認された。
<検討5>
合成試験5−1
合成試験4−1と同様のルテニウムナノ粒子及びDMFを含む分散液75mLを、四口フラスコに入れ、120℃に加熱しながら、DMFを減圧留去した。DMFによって保護されたルテニウムナノ粒子が残存している四口フラスコに、27.1gの1回目の1−デカノール、及び8.26gの水酸化カリウム(フレーク、純度95%)を入れ、フラスコ内の雰囲気を窒素で置換した。フラスコ内の反応混合物を70〜80℃に加熱しながら3時間攪拌した。次いで、フラスコ内の反応混合物に243.9gの2回目の1−デカノールを加えてから、反応混合物を150℃に加熱しながら48時間攪拌した。24時間後及び48時間の攪拌後の反応混合物から採取した試料を、メチル−tert−ブチルエーテルで希釈した。希釈液をガスクロマトグラフィー(GC)により分析し、得られたクロマトグラムにおける面積比に基づいて、生成したゲルベアルコールの1−デカノールに対する収率を算出した。
合成試験5−2,5−3
アルコールとして1−テトラデカノール(ミリスチルアルコール)、又は1-ヘキサデカノール(セタノール)を用い、ルテニウムナノ粒子分散液及びアルコールの仕込量を表5に示すように変更したこと以外は合成試験5−1と同様のゲルベ反応を行い、ゲルべアルコールの収率をGC分析によって求めた。
Figure 0006632049

Claims (6)

  1. 第一級又は第二級水酸基を有する1種又は2種以上の炭素数4〜16のアルコールを、遷移金属ナノ粒子、及び塩基の存在下で二量化させて、ゲルベアルコールを生成させる工程を備え、
    前記遷移金属ナノ粒子が、配位性有機溶媒を含む溶媒中でルテニウム化合物又はイリジウム化合物を加熱することにより生成する、ルテニウムナノ粒子又はイリジウムナノ粒子であり、
    前記配位性有機溶媒が、アミド系溶媒、アミン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、スルホキシド系溶媒、又はこれらから選ばれる2種以上の組み合わせである、
    ゲルベアルコールを製造する方法。
  2. 前記塩基が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド又は水素化物を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記アルコールを、前記アルコール、前記遷移金属ナノ粒子及び前記塩基を含む無溶媒の反応混合物中で二量化させる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記アルコールを、190℃以下の温度の条件で二量化させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記アルコールを、大気圧雰囲気下で二量化させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記アルコールが、複数回に分けて前記遷移金属ナノ粒子及び前記塩基と混合される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
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