JP6631982B2 - 酵素培養液を用いた、発酵芋類食品の製造方法、発酵穀類食品の製造方法、発酵野菜食品の製造方法、及び発酵果実食品の製造方法 - Google Patents

酵素培養液を用いた、発酵芋類食品の製造方法、発酵穀類食品の製造方法、発酵野菜食品の製造方法、及び発酵果実食品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、酵素培養液を用いた、発酵芋類食品の製造方法、発酵穀類食品の製造方法、発酵野菜食品の製造方法、及び発酵果実食品の製造方法に関する。
麹菌に各種酵素を分泌生産させるための培養方法には、蒸煮等の処理後の原料に麹菌を接種して培養する固体培養方法と、水に原料及びその他の栄養源を添加して液体培地を調整し、その後に前培養した麹菌を調整した液体培地に接種し培養する液体培養方法がある。固体培養方法は、多種類の酵素を大量に大規模生産できる培養方法として確立されているが、製造設備の大型化及び温度や湿度の安定的な運転管理の困難性という問題がある。これに対し、液体培養方法は、培養制御や品質管理が容易であるとされている。
例えば、特許文献1には、麹菌の難分解性糖質である難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルラン等を含有する液体培地を用いた麹菌の培養方法が開示されている。
また、特許文献2には、麹菌を該麹菌の難分解性糖質である難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルラン等を含有する液体培地を用いた培養方法が開示されている。
特開2005−295871号公報 特許第4087624号公報
しかしながら、上述したような従来の培養方法では、十分な量の酵素を分泌生産させるには、予め麹菌の菌数を増やす目的で本培養に先立ち前培養を行うことが必要であり、長時間の培養を行う必要があるといった問題がある。
さらに、培地中のデンプンは、麹菌により生産されるアミラーゼにより分解、糖化されてしまい、それに伴い培地中のアミラーゼも消費されてしまうため、培地中のアミラーゼの生産性が低下し、その結果、発酵食品の栄養価を十分に高めることができないといった問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、菌増殖を目的とした前培養を行うことを必要とせず、高い発酵能力を有する酵素培養液を用いた、発酵芋類食品の製造方法、発酵穀類食品の製造方法、発酵野菜食品の製造方法、及び発酵果実食品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討した結果、以下の本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
本発明に係る第一の態様は、
(1)芋類を加熱する工程と、
(2)加熱された芋類を冷却する工程と、
(3)芋類を、下記(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液を添加し、発酵させる工程と、を含む、発酵芋類食品の製造方法である;
(i)調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つである第一の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
(ii)第一の麹を含有する調整液体培地を用いて第一の通気培養を10時間〜80時間、8℃〜50℃の温度で行う工程と、
(iii)第一の通気培養を行った調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、かつ、第一の麹と異なる種類の第二の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
(iV)第二の麹を含有する調整液体培地を用いて第二の通気培養を10時間〜30時間、8℃〜45℃の温度で行う工程と、
を含み、前培養工程を含まない。
本発明に係る第二の態様は、
(1)麦類を、上述した(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液に、添加して、グルテン、又は、グリアジンとグルテニンを含むグルテン類似成分、を分解させる工程と、
(2)酵素培養液を濾過して、麦類を取り出し、乾燥させる工程と、
を含む、グルテン含有量又はグルテン類似成分が低減された発酵穀類食品の製造方法である。
本発明に係る第三の態様は、
野菜を、上述した(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液に、添加する工程を含む、発酵野菜食品の製造方法である。
本発明に係る第四の態様は、
(1)果実類を、上述した(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液に、添加する工程を含む、発酵果実食品の製造方法である。
本発明によれば、菌増殖を目的とした前培養を行うことを必要とせず、高い発酵能力を有する酵素培養液を用いた、発酵芋類食品の製造方法、発酵穀類食品の製造方法、発酵野菜食品の製造方法、及び発酵果実食品の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
まず、本実施形態に係る製造方法では、酵素培養液を用いる。かかる培養液は、菌増殖を目的とした前培養を行わずとも得ることができ、かつ、高い発酵能力を有する。
<酵素培養液の製造方法1>
本実施形態で用いる酵素培養液は、以下の各工程を含む方法によって得ることができる。
(i)調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、及び稗麹からなる群より選ばれる少なくとも1つである第一の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
(ii)第一の麹を含有する調整液体培地を用いて第一の通気培養を10時間〜80時間、8℃〜50℃の温度で行う工程と、
(iii)第一の通気培養を行った調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、かつ、第一の麹と異なる種類の第二の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
(iV)第二の麹を含有する調整液体培地を用いて第二の通気培養を10時間〜30時間、8℃〜45℃の温度で行う工程と、を含む。
そして、本実施形態によれば、菌増殖を目的とした前培養を行うことを必要としない。
さらに、本実施形態によれば、第一及び第二の通気培養において、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランといった難消化性糖質を液体培地等に添加せずとも、酵素を生産させる酵素培養液を準備することができる。
従来、デンプン等を難消化性の物質、例えば難消化性のデンプン質、玄米、粟、稗、又はアマランサス等に置き換えなければならないといった制限があるが、本実施形態に係る製造方法は、必ずしもこのような難分解性物質を積極的に添加せずとも、炭素分として難消化性糖質の代わりに穀類麹や芋麹を用いることができる。その結果、酵素類を生産性高く製造することができ、これにより得られる酵素培養液は、高い酵素活性を有する。
ここで、本実施形態における「難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない」とは、第一及び第二の麹以外の成分として、これらを積極的に添加しないことをいう。そして、後述するように、地下茎デンプン類に由来する成分や穀類に由来する成分を添加する場合、「難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない」とは、地下茎デンプン類に由来する成分及び穀類に由来する成分並びに第一及び第二の麹以外の成分として、これらを積極的に添加しないことをいう。すなわち、第一及び第二の麹並びに上記成分(地下茎デンプン類及び穀類由来の成分)以外の、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しないことをいう。
さらに、第一及び第二の麹以外の難消化性糖質を実質的に添加しないことが好ましい。またさらに、後述するように、地下茎デンプン類に由来する成分や穀類に由来する成分を添加する場合、第一及び第二の麹や上記成分(地下茎デンプン類及び穀類由来の成分)以外の難消化性糖質を実質的に添加しないことが好ましい。
そして、本実施形態では、第一及び第二の通気培養において上述した難消化性糖質を積極的に添加しなければよく、以降の工程において別途新たに難消化性糖質を添加することは許容される。
以下、本実施形態において酵素培養液を準備する方法について詳細に説明する。
(穀類麹・芋麹)
本実施形態で用いる穀類麹や芋麹は、例えば、以下の(i)〜(V)の工程により得られる。
(i)穀類又は芋類を数個に分割(例えば、2分割〜4分割)すること、又は破砕すること。
(ii)穀類又は芋類を常温水に約12時間〜約48時間(冬季であれば、約48時間)浸漬し、その後約1時間水切りをすること。
(iii)水切りをした穀類又は芋類を後蒸しすることにより柔らかくし、その後に約20℃〜約40℃まで放冷すること。
(iV)放冷した穀類又は芋類に麹菌アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、アルペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、及びアルペルギルス・ソーヤの少なくとも1つから選定される麹菌を散布すること。
(V)麹菌を散布した穀類又は芋類を、約48時間〜約72時間、温度が40℃以下に管理された麹室内に静置し、その後に出麹すること。
本実施形態で用いる穀類麹や芋麹は、(i)〜(V)の工程以外の方法で製造されたものであってもよいし、商業的に入手可能なものでもよい。
本実施形態で用いる穀類麹としては、玄米麹、大豆麹、米糠麹、粟麹、及び稗麹等が挙げられる。穀類麹は、既に穀類中で麹菌を増殖させた状態にあるので、当該方法では、このような穀類麹を調整液体培地に添加することにより、前培養を行わずに酵素を生産させることが可能となる。
本実施形態で用いる芋麹としては、酵素活性の観点から、薩摩芋麹(例えば、紅赤麹、紅あずま芋麹、紅はるか芋麹等)が好ましく、その中でも、紅赤麹、紅あずま麹がより好ましい。芋麹は、既に芋中で麹菌を増殖させた状態にあるので、当該方法では、このような芋麹を調整液体培地に添加することにより、前培養を行わずに酵素を生産させることが可能となる。
本実施形態における麹菌は、菌糸の先端からデンプンやタンパク質等を分解する様々な酵素を生産・放出する。生産・放出された酵素は、培地中の炭素分を分解してグルコースやアミノ酸を生産する。麹菌は、ここで生産されたグルコースやアミノ酸を栄養源として増殖する。本実施形態にかかる麹菌は、アスペルギルス属に分類される不完全菌の一群であり、これらに限定されないが、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、アルペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、及びアルペルギルス・ソーヤ等が挙げられる。特に好ましい麹菌は、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、又はアスペルギルス・ニガーである。
(調整液体培地)
本実施形態における調整液体培地は、例えば、ポリペプトン(登録商標)、酵母エキスパウダー、シクロース、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄七水和物、及び水等の麹菌の繁殖に有効な成分を含んで成る濃縮培地組成に調整水等を加えることにより、培地中のpHが3〜6(より好ましくはpHが4〜5)になるように調整した培地であることが好ましい。
ポリペプトン(登録商標)は、日本製薬株式会社から販売されている大豆生成物を原料とする培養基材であり、植物性タンパク質の分解物を供給するために培地に添加される。これに限らず、他の植物由来又は動物由来のペプトン等も使用され得る。
酵素エキスパウダーは、酵母の自己消化物で、アミノ酸等を供給するために培地に添加される。これに限らず、他の植物由来又は動物由来のエキス等も使用され得る。
シクロースは、糖質を供給するために培地に添加される。
硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸マグネシウム、及び硫酸鉄七水和物は、ミネラル等を供給するために培地に添加される。これらに限らず、他の無機塩等のミネラル源も使用され得る。
例えば、20L用の調整液体培地は、表1に示す濃縮培地組成を、表2に示す調整液によりpH4.4に調整したものである。各成分の量、割合は、培養を阻害しない範囲で、適宜変更することができる。
Figure 0006631982
Figure 0006631982
本実施形態における調整液体培地は、上記以外の組成であってもよく、例えば一般的に麹菌の培養に用いられるCzapek−Dox(CD)培地等も使用され得る。
本実施形態における調整液体培地は、あらかじめ80℃〜95℃で、10分間〜40分間、好ましくは15分間〜35分間、より好ましくは20分間〜30分間加熱滅菌され、その後20℃〜50℃、好ましくは25℃〜45℃、より好ましくは30℃〜40℃に冷却されたものであり得る。
(通気培養)
本実施形態に係る製造方法では、第一の通気培養と第二の通気培養とを少なくとも行う。第一の通気培養では、第一の麹を用い、第二の通気培養では、第二の麹を用いる。本実施形態における通気培養とは、撹拌を伴う培養である。これによって、空気を麹菌に与えることができる。
第一の通気培養では、調整液体培地に、地下茎デンプン類又は穀類のいずれかに由来する成分と、第一の麹とを、添加してもよい。この場合、地下茎デンプン類又は穀類のいずれかに由来する成分の種類は限定されない。例えば、原料となる地下茎デンプン類としては、芋類(例えば、紅赤芋、紅東芋、小金千貫芋等の薩摩芋、ジャガ芋等)、ニンジン、大根、レンコン等が挙げられる。原料となる穀類としては、米、麦、稗、粟等が挙げられる。これらの中でも、芋類が好ましく、薩摩芋がより好ましい。そして、地下茎デンプン類又は穀類のいずれかに由来する成分は、例えば、濃縮培地や調整液体培地等の培地の含有成分として配合・使用させることができる。さらに、この成分は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルラン等の難消化性糖質でないことが好ましい。これらを第一及び第二の麹と併用することで、酵素を効率よく増殖させ、酵素培養液としての酵素活性を一層向上させることができる。さらにまた、必要に応じて、第二の通気培養等においても、これらを追加してもよい。
第一及び第二の麹の麹菌の種類は、特に限定されないが、アスペルギルス属に分類される麹菌により作られたものを用いることができる。本実施形態における麹菌は、これらに限定されないが、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、及びアスペルギルス・ソーヤからなる群より選ばれる少なくとも1つの麹菌であることが好ましい。これらの中でも、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、及びアスペルギルス・ニガーからなる群より選ばれる少なくとも1つの菌類であることがより好ましい。
第一及び第二の麹は、それぞれ玄米麹、大豆麹、米糠麹、粟麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つから選定され得る。そして、第二の麹は、第一の麹と異なる種類であることが好ましい。第一及び第二の麹の組み合わせは、特に限定されないが、第一の麹及び第二の麹の少なくともいずれかに大豆麹を用いることが好ましく、第一の麹は玄米麹、米糠麹、粟麹、稗麹、及び芋麹等の少なくとも1つから選定され、かつ、第二の麹は大豆麹であることがより好ましい。
第一及び第二の麹は、それ自体が調整液体培地において炭素分となるので、難消化性糖質等を炭素分として使用せずとも、酵素を生産させることができる。また、本実施形態により得られる培養液には、アミラーゼやプロテアーゼをはじめとする多くの種類の酵素、特にα−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、及びプロテアーゼ等が多く含まれる。
本実施形態における第一の麹の添加量は、特に限定されないが、調整液体培地の容積の2%〜15%であることが好ましく、3%〜12%であることがより好ましく、5%〜10%であることが更に好ましい。
本実施形態における第二の麹の添加量は、特に限定されないが、調整液体培地の容積の1%〜10%であることが好ましく、2%〜8%であることがより好ましく、3%〜5%であることが更に好ましい。
第一の通気培養を行う時間は、麹菌の繁殖状況に応じて、10時間〜80時間であり、好ましくは24時間〜60時間であり、より好ましくは24時間〜54時間であり、更に好ましくは24時間〜48時間である。そして、第二の通気培養を行う時間は、麹菌の繁殖状況に応じて、10時間〜30時間であり、好ましくは12時間〜30時間であり、より好ましくは12時間〜27時間であり、更に好ましくは12時間〜24時間である。
第一の通気培養の温度は、8℃〜50℃であり、好ましくは20℃〜40℃であり、より好ましくは25℃〜40℃であり、更に好ましくは30℃〜40℃である。そして、第二の通気培養の温度は、8〜45℃であり、好ましくは10℃〜40℃であり、より好ましくは15℃〜35℃であり、更に好ましくは20℃〜30℃である。例えば、大豆麹を用いる場合、雑菌に侵されないようにする観点等から、比較的低温領域で行うことが好ましく、培養温度の上限を40℃以下とすることが好ましく、30℃以下とすることがより好ましい。
上述のようにして得られる酵素培養液は、低分子から高分子までの麹菌生産物をはじめとして、多くの種類の酵素が含まれる。特に、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ及びプロテアーゼ等が多く含まれる。よって、後述するように、発酵芋類食品や発酵穀類食品や発酵野菜食品や発酵果実食品等の製造に好適に用いることができる。
さらに、この酵素培養液は、タンパク質、脂質、灰分、炭水化物、食物繊維等の栄養素を豊富に含有し、かつ、種々の酵素活性が高いレベルで維持されている。
そして、酵素培養液の含有成分は、タンパク質、脂質、食物繊維等の栄養素を豊富に含有し、かつ、種々の酵素活性が高いレベルで維持されている。かかる酵素培養液の好適な成分組成としては、タンパク質と、脂質と、食物繊維と、を含むものである。特に、タンパク質に対して脂質を一定の割合以上に含有すること、タンパク質に対して食物繊維を一定の割合以上に含有することが可能であり、かかることが可能であることで、一層栄養価の高いものとすることができる。例えば、タンパク質は、燃焼法によって計測することができる。脂質は、酸分解法によって計測することができる。食物繊維は、酵素−HPLC法によって計測することができる。
さらに、酵素培養液は、好ましくは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、及びビタミンEからなる群より選ばれる1種以上を更に含有するものとすることができる。
また、酵素培養液は、糖化力、α−アミラーゼ活性、酸性プロテアーゼ活性、中性プロテアーゼ活性、アルカリ性プロテアーゼ活性といった種々の酵素活性を高いレベルで両立させることができる。
糖化力は、好ましくは18U/g〜40U/gであり、より好ましくは20U/g〜40U/gであり、更に好ましくは23U/g〜40U/gであり、より更に好ましくは23U/g〜35U/gである。
α−アミラーゼ活性は、好ましくは125U/g〜300U/gであり、より好ましくは140U/g〜300U/gであり、更に好ましくは150U/g〜400U/gであり、より更に好ましくは150U/g〜350U/gであり、より一層好ましくは150U/g〜300U/gである。
酸性プロテアーゼ活性は、好ましくは4U/g〜20U/gであり、より好ましくは5U/g〜20U/gであり、更に好ましくは6U/g〜20U/gであり、より更に好ましくは6U/g〜15U/gである。
中性プロテアーゼ活性は、好ましくは5U/g〜20U/gであり、より好ましくは6U/g〜20U/gであり、更に好ましくは7U/g〜20U/gであり、より更に好ましくは7U/g〜15U/gである。
アルカリ性プロテアーゼ活性は、好ましくは5U/g〜20U/gであり、より好ましくは6U/g〜20U/gであり、更に好ましくは7U/g〜20U/gであり、より更に好ましくは7U/g〜15U/gである
とりわけ、この酵素培養液の好適な態様としては、酸性プロテアーゼ活性値が、5〜25U/gであり、かつ、中性プロテアーゼ活性値が、5〜25U/gであるものが挙げられる。酵素培養液のより好適な態様としては、糖化力、α−アミラーゼ活性、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ活性、及びアルカリ性プロテアーゼ活性のいずれもが、上述した範囲にあるものが挙げられる。
このように、本実施形態で用いる酵素培養液は種々の酵素活性を付与することができるため、タンパク質やグルテンといった種々の栄養素を分解させることができる。例えば、糖化力、α−アミラーゼ活性が高ければ、デンプンの分解酵素として好適に作用させることができる。また、プロテーゼ活性が高ければ、タンパク質やポリペプチドの分解酵素として好適に作用させることができる。
以下、上述した酵素培養液を用いた、発酵芋類食品、発酵穀類食品、発酵野菜食品、及び発酵果実食品の製造方法を夫々説明する。
<発酵芋類食品の製造方法>
本実施形態に係る発酵芋類食品の製造方法は、
(1)芋類を加熱する工程と、
(2)加熱された芋類を冷却する工程と、
(3)芋類を、上述した酵素培養液を添加し、発酵させる工程と、を含む。
従来、雑穀類が難消化性のデンプン質を多く含んでいる観点から、難消化性糖質として、穀類、特に雑穀類が多く使用されていた。例えば、芋類は加熱後自然放冷されると、含有されるデンプンの一部が難消化性のデンプンに変化する。この点、本実施形態の酵素培養液を用いれば、この難消化性のデンプンへと変性した芋デンプンを難消化性糖質として使用できる。その結果、本実施形態の方法によって得られた発酵芋類食品は、糖度が高く、甘みが増す食品とすることもできる。
芋類としては、特に限定されず、薩摩芋、ジャガ芋、里芋等を用いることができるが、これらの中でも、デンプン質の含有量が高いといった観点から、薩摩芋が好ましい。薩摩芋の品種は、特に限定されず、例えば、黄金千貫、ジョイホワイト、シロユタカ、ベニハヤト、ベニアズマ、ベニサツマ、紫系サツマイモ、サツマスターチ等であってもよい。また、これらは、加工品であってもよい。
まず、(1)芋類を加熱する方法としては、焼き芋としてもよいし、蒸し芋としてもよい。加熱条件は、例えば、70℃〜95℃であることが好ましく、85℃〜95℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、芋の中心温度が好ましい温度に達温後、30分〜60分であることが好ましい。
そして、(2)加熱後、芋類を冷却する方法としては、自然冷却等による方法を採用できる。その際、30℃程度まで冷却することが好ましい。そして、冷却後、必要に応じて、輪切りやサイの目状にカットしておくことが好ましい。これにより酵素反応を促進させることができる。
続いて、(3)芋類を、上述した酵素培養液を添加し、発酵させる。培養条件は、特に限定されないが、酵素活性の観点から、30℃〜65℃であることが好ましく、40℃〜55℃であることがより好ましく、45℃〜55℃であることが更に好ましい。また、培養時間は、1時間〜15時間であることが好ましく、10時間〜15時間であることがより好ましい。
本実施形態に係る製造方法により得られる発酵芋類食品は、例えば、各種食品、ペースト状にした低糖度のあんこ、粉末にした食品等や、牛乳等の飲料に溶かす粉末等とすることができる。
<発酵穀類食品の製造方法>
本実施形態に係る発酵穀類食品の製造方法は、
(1)麦類を、上述した(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液に、添加して、グルテン、又は、グリアジンとグルテニンを含むグルテン類似成分、を分解させる工程と、
(2)酵素培養液を濾過して、麦類を取り出し、乾燥させる工程と、を含む。
グルテン含有量又はグルテン類似成分が低減された発酵穀類食品の製造方法である。
本実施形態に係る製造方法により得られる発酵穀類食品は、麦粉を原料としたものでありながら、グルテン含有量又はグルテン類似成分が低減されたものである。したがって、グルテンアレルギーを引き起こすことがない安全な食材として、幅広く利用できる。
麦類としては、特に限定されず、例えば、小麦、デュラム小麦、ヒトツブ小麦、セモリナ小麦、スペルト小麦、ブルグア小麦、カムット小麦、ライ小麦、ライ麦、大麦、オーツ麦等が挙げられる。これらは、グルテンや、グリアジンとグルテニンとを含むグルテン類似成分等を含有するものであるが、本実施形態によれば、このような原料を用いた場合であっても、その含有量が低減することができる。また、麦類は、脱穀等の加工を施したものであってもよい。さらには、粉状であってもよい。
本実施形態で用いる酵素培養液中には多くの酵素類が高濃度に含有されている。例えば、酵素培養液が含有するプロテアーゼによって、麦類中に含まれるグルテンやグルテン類似成分を分解させることができ、その結果、これらの含有量を低減された食品とすることができる。また、その他の酵素により麦のデンプン質、タンパク質等が分解されアミノ酸類、糖類を多く含んだ麦粉の生産が可能となる。
(1)麦類を酵素培養液に添加することで、麦類の発酵を行う。麦類の発酵温度は、特に限定されないが、30℃〜50℃であることが好ましく、30℃〜45℃であることがより好ましく、30℃〜40℃であることが更に好ましい。また、発酵時間は、特に限定されないが、10分間〜3時間であることが好ましく、10分間〜1時間であることがより好ましく、15分間〜50分間であることが更に好ましい。
そして、(2)麦類が添加された酵素培養液を濾過して、麦類を取り出し、乾燥させる。濾過の方法は、特に限定されず、例えば、ふるいやフィルタ等を使用できる。乾燥の方法は、特に限定されず、例えば、自然乾燥であってもよい。加熱する際の乾燥条件としては、例えば、50〜80℃とすることが好ましく、60〜70℃であることがより好ましい。また、乾燥時間としては、例えば、5時間〜20時間であることが好ましく、10時間〜17時間であることがより好ましい。
また、必要に応じて、前処理として、麦類を破砕する工程や脱穀する工程等を行ってもよい。これによって、麦粉や脱穀麦としたものを発酵させることができる。
本実施形態に係る製造方法によって得られる発酵穀類食品は、例えば、各種パン類や麺類等の原料やグルテンアレルギー抑制食品等として使用できる。
<発酵野菜食品の製造方法>
本実施形態に係る発酵野菜食品の製造方法は、野菜を、上述した(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液に、添加して、発酵させる工程を含む。本実施形態に係る製造方法によれば、吸収性を高めた発酵野菜を得ることができる。
野菜の場合、本実施形態の酵素培養液の糖化力をもって糖質を分解させることができる。これによって、人体が野菜の栄養素を効率よく吸収することができる。よって、一日の野菜の摂取量を少なくすることができるため、例えば、食が細い病人や野菜嫌いの児童等であっても十分な栄養素を摂取することができる。
本実施形態で用いる野菜としては、例えば、ニンジン、カボチャ、アスパラガス、ピーマン、ほうれん草等の緑黄色野菜だけでなく、大根、ゴボウ等も用いることができる。また、これらは、加工品であってもよい。これらの中でも、例えば、アスパラガスのような繊維質を豊富に含有する野菜の場合、通常は吸収不可成分となってしまう成分も酵素培養液が分解することができ、栄養素として効果的に人体に吸収することが期待される。また、従来は、残渣部分として廃棄されているような不食部分もいっしょに酵素培養液に漬け込むことで、かかる不食部分も食することができる。
発酵条件は、野菜の種類や発酵目的等を考慮して好適な条件を選択することができる。発酵温度は、例えば、40℃〜50℃であることが好ましく、45℃〜55℃であることがより好ましい。発酵時間は、例えば、10時間〜18時間であることが好ましく、12時間〜15時間であることがより好ましい。
本実施形態に係る製造方法により得られる発酵野菜食品は、例えば、そのまま食してもよいし、用途に応じて粉末状として、添加食品等としてもよい、あるいは、野菜ジュース等の飲料としてもよい。
<発酵果実食品の製造方法>
本実施形態に係る発酵果実食品の製造方法は、果実類を、上述した(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液に、添加する工程を含む。
果実類を酵素培養液に浸すことで、果実類に含有されているタンパク質を分解させることができ、果実類が含有する酵素を失活させることができる。これによって、果実の風味を残しつつ、旨味のある加工果実を得ることができる。
従来、果実を加工する際は、加熱処理等を施すことがあるが、これによって風味が損なわれるといった問題がある。例えば、ヘイワード種等のキウイフルーツ、パイナップル、マンゴー、パパイヤ等は、アクチニジンやパパイン等のたんぱく質分解酵素類を含有している。その他にも、果実類は、種々の酵素類等を含有しており、これらがタンパク質を分解することで苦味等を生じさせ、果実類の風味を阻害している。こういった問題を防ぐ方法としては、果実を加熱処理することで酵素類の活性を失活させる方法等を採用しているのが現状である。
この点、本実施形態に係る製造方法によれば、加熱処理を行わずとも、果実類に含有されるタンパク質分解酵素を失活させることも可能であるので、自らを分解せず、風味を保つことができる。さらには、果実類の種類によっては、アレルギーの原因物質となるタンパク質を含有するものもあるが、こういった物質も分解することができるので、アレルギー発生を抑制することも期待される。
果実の種類は、特に限定されないが、例えば、糖質を多く含み、かつ、タンパク質も含む果実等が有用である。好適な具体例としては、例えば、キウイフルーツ、パイナップル、マンゴー、パパイヤ等が挙げられる。また、これらは、加工品であってもよいが、本実施形態の上述した利点の観点から、好ましくは加熱処理を施されていない果実類である。
発酵条件は、果実の種類や発酵目的等を考慮して好適な条件を選択することができる。発酵温度は、例えば、40℃〜50℃であることが好ましく、45℃〜55℃であることがより好ましい。発酵時間は、例えば、10時間〜18時間であることが好ましく、12時間〜15時間であることがより好ましい。
例えば、キウイフルーツの1種であるヘイワード種(グリーンキウイ)を用いた場合の具体例として、以下の方法を行うことができる。例えば、この品種はアレルギーの原因物質となるタンパク質を含有するものであるが、本実施形態の発酵処理を行うことで、このようなアレルギー物質を分解し、アレルギー発生を抑制することができる。
まず、ヘタを除去する前処理を行う。次に、キウイの皮剥きを行う。例えば、キウイを冷凍処理した上で、洗浄し、皮剥きを行ってもよい。その際、殺菌目的もかねて、10%高酸度ビネガー等に浸漬することが好ましい。
浸漬後、再度洗浄し、必要に応じて、2分の1や4分の1にスライスカットした上で、酵素培養液に漬込む。ここで用いる酵素培養液は、精密濾過等を行い無菌状態にしたものであることが好ましい。そして、上述したような条件で発酵処理する。
発酵処理後、必要に応じて、ピューレ状にしてキウイピューレとしてもよいし、そのままカットキウイとしてもよい。
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
(玄米麹の製造)
以下の要領にて玄米麹を準備した。まず、5kgの玄米を2分割〜4分割にした。この分割した玄米を常温水に48時間浸漬した後に約1時間水を切り、次いで、玄米が柔らかくなるまで後蒸しした。後蒸し終了後の玄米を約30℃まで放冷し、この玄米に麹菌アスペルギルス・オリゼーを散布した。その後、麹菌を散布した玄米を麹室に入れ、麹室内の温度が40℃以上にならないように6〜8時間毎に監視した。48時間後に5kgの玄米麹を出麹した。
(大豆麹の製造)
以下の要領にて大豆麹を準備した。まず、2kgの大豆を2分割〜4分割にした。この分割した大豆を常温水に24時間浸漬した後に約1時間水を切り、次いで、大豆を指でつぶせる程度にまで後蒸しした。後蒸し終了後の大豆を約20℃まで放冷し、この大豆に麹菌アスペルギルス・オリゼーを散布した。その後麹菌を散布した大豆を麹蓋にのせた状態で大豆麹箱に入れた。大豆麹箱内の温度が約25℃〜約27℃に保たれるように監視した。72時間後に2kgの大豆麹を出麹した。
(酵素含有液体の培養)
表3に示す濃縮培地組成を、表4に示す調整液によりpH4.4になるように調整して調整液体培地とした。
Figure 0006631982
Figure 0006631982
2000mLの調整液体培地をあらかじめ95℃で30分間加熱滅菌し、その後に35℃まで冷却した。この冷却した調整液体培地に第一の麹として200gの玄米麹を添加した。この玄米麹を添加した調整液体培地を撹拌しながら48時間、35℃〜37℃で第一の通気培養を行った。玄米麹の麹菌の繁殖が十分であることを確認した後に、第一の通気培養を行った調整液体培地に、さらに第二の麹として100gの大豆麹を添加した。この大豆麹を添加した調整液体培地を撹拌しながらさらに24時間、20℃〜30℃で第二の通気培養を行った。
(酵素培養液1及び酵素含有粉末1の製造)
上述した方法において得られた酵素を含む10Lの培養液(酵素含有液体)を300メッシュの濾布を用いて濾過することにより7Lの濾布濾過液を得た。この濾布濾過液を沈澱タンクに入れて、次いで冷蔵庫内で24時間静置することにより澱下げした。その後に、この濾布濾過液を孔径1μmのフィルタを用いて濾過し、さらに0.45μmカートリッジフィルタを用いてプレ濾過した。次いで、0.45μmメンブレンカートリッジフィルタを用いて精密濾過することにより6Lの精密濾過液(酵素培養液)1を得た。
精密濾過液1の一部(1L)を後述の酵素含有粉末2の製造で用いるために分取した。分取後、残りの5Lの精密濾過液1を限外濾過(分子量:6,000〜100,000)することにより500mLの濃縮液を得た。限外濾過の際には、液温が15℃を上回らないようにした。限外濾過後の濃縮液及び冷却した88%エチルアルコールを殺菌タンクに入れて穏やかに撹拌した。このときに殺菌タンク内のエチルアルコール濃度が70%以下にならないようにした。その後に殺菌タンク内のエチルアルコールと濃縮液の混合液を24時間冷蔵庫内で静置した。
このとき殺菌タンク内では、エチルアルコールと濃縮液の混合液中の酵素類、タンパク質、又はその他物質が結晶化して沈澱した。この沈殿物をエチルアルコールと濃縮液の混合液から分離した。さらに、この沈殿物を、3500回転で10分間遠心分離にかけることにより酵素等を含む層とエチルアルコールを含む上澄み層とに分離した。そして、酵素等を含む層から上澄み層を除去することにより固形分を得た。ここで得られた固形分を乾燥機内で常温乾燥させて、さらに粉砕することにより5gの酵素含有粉末1を得た。
(酵素含有粉末2の製造)
上述した酵素培養液1の製造において分取した1Lの精密濾過液(酵素培養液)1に、100gのおからパウダーを添加して撹拌することにより、おからパウダー添加液を得た。得られたおからパウダー添加液を冷蔵庫内で12時間静置することにより、沈殿物を得た。その後に沈殿物の上澄み液を除去し、ウェットな状態にある沈殿物を、3500回転で5分間遠心分離にかけることにより脱水した。その後に半乾燥状態にある遠心分離後の沈殿物を、乾燥機内で常温乾燥させて、さらに粉砕することにより95gの酵素含有粉末2を得た。
酵素培養液液1、酵素含有粉末1及び2には、低分子から高分子までの麹菌生産物をはじめとして、多くの種類の酵素、特にα−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ及びプロテアーゼが多く含まれていたことが確認された。
(酵素活性の測定)
実施例1において得られた精密濾過液1のグルコアミラーゼ活性、α−グルコシダーゼ活性、α−アミラーゼ活性、及び酸性・中性・アルカリ性プロテアーゼ活性を測定した。比較検証のため、玄米麹より得られた精密濾過液、大豆麹より得られた精密濾過液、及び比較検証用としての液体培養方法により得られた精密濾過液の各活性についてもそれぞれ測定した。
(参照例1)
(比較検証用の精密濾過液の調製)
玄米麹:
0.5%食塩水及び玄米麹を約5:1の容積比で混合した。この食塩水と玄米麹の混合液を冷蔵庫内で定期的に撹拌した後に約4時間静置した。その後に、この食塩水と玄米麹の混合液を、300メッシュの濾布及び孔径1μmのフィルタを用いて濾過し、次いで0.45μmメンブレンフィルタを用いて精密濾過することにより、比較検証用の精密濾過液を得た。
大豆麹:
0.5%食塩水及び大豆麹を約5:1の容積比で混合した。この食塩水と大豆麹の混合液を冷蔵庫内で定期的に撹拌した後に約4時間静置した。その後に、この食塩水と大豆麹の混合液を、300メッシュの濾布及び孔径1μmのフィルタを用いて濾過し、次いで、0.45μmメンブレンフィルタを用いて精密濾過することにより、比較検証用の精密濾過液を得た。
比較検証用としての液体培養方法:
麹菌アスベルギルス・オリゼーの前培養を行い、麹菌が十分に繁殖した後に前培養液を本培養液に混合した。混合した培養液を48時間撹拌しながら通気培養を行った。通気培養終了後に培養液を、300メッシュの濾布及び孔径1μmのフィルタを用いて濾過し、次いで0.45μmメンブレンフィルタを用いて精密濾過することにより比較検証用の精密濾過液を得た。
(測定結果)
糖化力:
キッコーマン糖化力測定キットにより、糖化力(グルコアミラーゼ活性及びα−グルコシダーゼ活性)の測定を行った。比較検証用としての液体培養方法により得られた精密濾過液は、16U/g〜19U/g、玄米麹より得られた精密濾過液は、15U/g〜17U/g、そして、実施例1により得られた精密濾過液1は、25U/g〜27U/gという結果であった。
α−アミラーゼ活性:
独立行政法人酒類総合研究所標準分析法により、α−アミラーゼ活性の測定を行った。比較検証用としての液体培養方法により得られた精密濾過液は、70U/g〜120U/g、玄米麹より得られた精密濾過液は、65U/g〜120U/gであった。そして、実施例1により得られた精密濾過液1は、180U/g〜200U/gという結果であった。
酸性・中性・アルカリ性プロテアーゼ活性:
独立行政法人酒類総合研究所標準分析法により、プロテアーゼの測定を行った。大豆麹より得られた精密濾過液は、酸性:1U/g〜3U/g、中性:8U/g〜10U/g、アルカリ性:7U/g〜9U/gであり、そして、実施例1により得られた精密濾過液1は、酸性:7U/g〜10U/g、中性:8U/g〜12U/g、アルカリ性:4U/g〜8U/gという結果であった。
上述の結果より、実施例1の精密濾過液1は、比較検証で用いたいずれの精密濾過液よりも高い酵素活性を有し、特に有意に高いα−アミラーゼ活性を有することが認められた。
そして、実施例1の精密濾過液1は、それだけで、糖化力、α−アミラーゼ活性、酸性プロテアーゼ活性、中性プロテアーゼ活性、アルカリ性プロテアーゼ活性といった種々の酵素活性の全てを高いレベルで両立させることができており、優れた効果を有する。
<実施例2>
続いて、上述した実施例1において、第一の通気培養だけでなく第二の通気培養を行ったことの酵素培養液の優位性を検証した。具体的には、第二の通気培養を行わない参照例2を用意し、その結果を実施例1と対比した。
(参照例2)
まず、第二の通気培養を行わなかった点以外は実施例1と同様の方法で、培養液Aを準備し、これを用いて精密濾過液Aを作製した。
そして、得られた精密濾過液Aについて、上述した実施例1の測定方法と同じ条件で、「糖化力」、「α−アミラーゼ活性」、「酸性・中性・アルカリ性プロテアーゼ活性」をそれぞれ測定した。その結果、精密濾過液Aの糖化力は14〜16U/gであり、α−アミラーゼ活性は58〜68U/gであり、酸性プロテアーゼ活性は1〜3U/gであり、中性プロテアーゼ活性は8〜9U/gであり、アルカリ性プロテアーゼ活性は8〜9U/gであった。
このことから、第一の通気培養と第二の通気培養を行った実施例1が、第二の通気培養を行わなかった参照例2よりも、酵素活性の全てを高いレベルで両立させることができており、優れた効果を有することが確認された。すなわち、第一の通気培養だけでなく第二の通気培養も行ったことの優位性が少なくとも確認された。
<実施例3>
さらに、芋麹を使用して、第一の通気培養だけでなく第二の通気培養を行った場合の効果を検証した。
(芋麹の製造)
以下の要領にて芋麹を準備した。まず、5kgの薩摩芋を貝殻焼成カルシウム溶液に15分間浸漬させた後、水洗いした。その後、薩摩芋を厚さ5mmにスライスカットし、次いで、90〜95℃の蒸気で45〜60分間蒸した。その後の約30℃まで放冷し、乾燥庫内で8時間常温乾燥させた。この薩摩芋に麹菌アスペルギルス・オリゼーを散布した。その後、麹菌を散布した薩摩芋を麹室に入れ、麹室内の温度35〜40℃で、48〜72時間培養した。こうして得られた芋麹(薩摩芋麹)を出麹した。
(酵素培養液3の製造)
まず、表3に示す濃縮培地組成を、表4に示す調整液によりpH4.4になるように調整して調整液体培地とした。そして、2000mLの調整液体培地をあらかじめ95℃で30分間加熱滅菌し、その後に35℃まで冷却した。この冷却した調整液体培地に第一の麹として200gの芋麹(薩摩芋麹)を添加した。この芋麹を添加した調整液体培地を撹拌しながら48時間、35℃〜37℃で第一の通気培養を行った。芋麹の麹菌の繁殖が十分であることを確認した後に、第一の通気培養を行った調整液体培地に、さらに第二の麹として100gの大豆麹を添加した。この大豆麹を添加した調整液体培地を撹拌しながらさらに24時間、20℃〜30℃で第二の通気培養を行った。
上述した方法において得られた酵素を含む10Lの培養液(酵素含有液体)を300メッシュの濾布を用いて濾過することにより7Lの濾布濾過液3を得た。この濾布濾過液3を沈澱タンクに入れて、次いで冷蔵庫内で24時間静置することにより澱下げした。その後に、この濾布濾過液を孔径1μmのフィルタを用いて濾過し、さらに0.45μmカートリッジフィルタを用いてプレ濾過した。次いで、0.45μmメンブレンカートリッジフィルタを用いて精密濾過することにより6Lの精密濾過液(酵素培養液)3を得た。
そして、得られた精密濾過液3について、上述した実施例1の測定方法と同じ条件で、「α−アミラーゼ活性」を測定したところ、13〜18U/gであった。
(酵素培養液4の製造)
第一の通気培養において、第一の麹として100gの芋麹(薩摩芋麹)と100gの玄米麹との混合麹を用いた点以外は、精密濾過液(酵素培養液)3の製造と同様にして、精密濾過液(酵素培養液)4を得た。
そして、得られた精密濾過液4について、上述した実施例1の測定方法と同じ条件で、「α−アミラーゼ活性」を測定したところ、15〜20U/gであった。
<実施例4>
上述した実施例1の酵素含有粉末1を用いて、小麦粉(強力粉)からパンを作製した。
(小麦粉パンの製造)
小麦粉(市販の強力粉)130g、ドライイースト3g、砂糖5g、食塩3g、ぬるま湯70g、当該酵素含有粉末(酵素含有粉末1)1gを加え、混錬して、パン生地を準備した。そして、パン生地を容器に入れ、35〜45℃で60分間の条件で発酵させた。発酵後、パン生地のガス抜きを行い、再度捏ねて、所定の形状に成型した。成型後のパン生地をオーブンに入れて、180℃で25分間焼いた。その後、パンをオーブンから取り出し、放冷した。
(参照例4)
上述した酵素含有粉末1を加えなかった点以外は、実施例3と同様にしてパンを作製した。
参照例4のパンと異なり、実施例4のパンではグルテンの残留が確認されなかった。このことから、上述した酵素含有粉末の添加によって小麦粉に含まれるグルテンが分解されたことが確認された。
<実施例5>
上述した実施例1の精密濾過液(酵素培養液)1を用いて、玄小麦(精麦していない小麦)からパンを作製した。
(玄小麦パンの製造)
まず、玄小麦を実施例1の精密濾過液1に一昼夜浸漬させた。この玄小麦130g、ドライイースト3g、砂糖5g、食塩3g、ぬるま湯70gを加え、混錬して、パン生地を準備した。そして、パン生地を容器に入れ、35〜45℃で60分間の条件で発酵させた。発酵後、パン生地のガス抜きを行い、再度捏ねて、所定の形状に成型した。成型後のパン生地をオーブンに入れて、180℃で25分間焼いた。その後、パンをオーブンから取り出し、放冷した。
(参照例5)
玄小麦を上述した酵素培養液1に浸漬させなかった点以外は、実施例4と同様にしてパンを作製した。
実施例4と同様にしてパンのグルテン含有量を分析したところ、参照例5のパンと比べて、実施例5のパンはグルテンが半減したことが確認された。
<考察>
以上から、上述した種々の酵素活性が高い本実施例の酵素培養液を用いることで、芋類や穀類や野菜や果実等の発酵を促進させ、栄養価が高い食品(発酵芋類食品、発酵穀類食品、発酵野菜食品、発酵果実食品等)を得ることができる。また、本実施例の酵素培養液を用いることで、麦粉等に含まれるグルテン等の分解を促進させることができる。そして、本実施例の方法によれば、栄養価の高い食品を簡便に製造することができる。

Claims (8)

  1. (1)芋類を加熱する工程と、
    (2)前記加熱された芋類を冷却する工程と、
    (3)前記芋類を、下記(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液を添加し、発酵させる工程と、を含む、発酵芋類食品の製造方法;
    (i)調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つである第一の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
    (ii)前記第一の麹を含有する前記調整液体培地を用いて第一の通気培養を10時間〜80時間、8℃〜50℃の温度で行う工程と、
    (iii)前記第一の通気培養を行った前記調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、かつ、第一の麹と異なる種類の第二の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
    (iV)前記第二の麹を含有する前記調整液体培地を用いて第二の通気培養を10時間〜30時間、8℃〜45℃の温度で行う工程と、
    を含み、前培養工程を含まない。
  2. (1)麦類を、下記(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液に、添加して、グルテン、又は、グリアジンとグルテニンを含むグルテン類似成分、を分解させる工程と、
    (2)前記酵素培養液を濾過して、前記麦類を取り出し、乾燥させる工程と、
    を含む、グルテン含有量又はグルテン類似成分が低減された穀類の製造方法;
    (i)調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つである第一の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
    (ii)前記第一の麹を含有する前記調整液体培地を用いて第一の通気培養を10時間〜80時間、8℃〜50℃の温度で行う工程と、
    (iii)前記第一の通気培養を行った前記調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、かつ、第一の麹と異なる種類の第二の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
    (iV)前記第二の麹を含有する前記調整液体培地を用いて第二の通気培養を10時間〜30時間、8℃〜45℃の温度で行う工程と、
    を含み、前培養工程を含まない。
  3. 野菜を、下記(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液に、添加する工程を含む、発酵野菜食品の製造方法;
    (i)調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つである第一の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
    (ii)前記第一の麹を含有する前記調整液体培地を用いて第一の通気培養を10時間〜80時間、8℃〜50℃の温度で行う工程と、
    (iii)前記第一の通気培養を行った前記調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、かつ、第一の麹と異なる種類の第二の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
    (iV)前記第二の麹を含有する前記調整液体培地を用いて第二の通気培養を10時間〜30時間、8℃〜45℃の温度で行う工程と、
    を含み、前培養工程を含まない、
  4. 果実類を、下記(i)〜(iV)工程により得られた酵素培養液に、添加する工程を含む、発酵果実食品の製造方法;
    (i)調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つである第一の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
    (ii)前記第一の麹を含有する前記調整液体培地を用いて第一の通気培養を10時間〜80時間、8℃〜50℃の温度で行う工程と、
    (iii)前記第一の通気培養を行った前記調整液体培地に、玄米麹、米糠麹、粟麹、大豆麹、稗麹、及び芋麹からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、かつ、第一の麹と異なる種類の第二の麹を添加し、かつ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性セルロース、及びプルランを実質的に添加しない、工程と、
    (iV)前記第二の麹を含有する前記調整液体培地を用いて第二の通気培養を10時間〜30時間、8℃〜45℃の温度で行う工程と、
    を含み、前培養工程を含まない。
  5. 前記第一の麹が、前記調整液体培地の容積の2%〜15%の量で添加され、かつ、前記第二の麹が、前記調整液体培地の容積の1%〜10%の量で添加される、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記第一及び第二の麹が、前記調整液体培地において炭素分となる、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記第一及び第二の麹が、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・カワチ、アルペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、及びアルペルギルス・ソーヤの少なくとも1つから選定される麹菌により生産される、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 前記酵素が、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、及びプロテアーゼの少なくとも1つである、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
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