図1に示すように、以下に説明する感知器10は、第1のセンサ111と第2のセンサ112と処理部12と報知部13とを備える。第1のセンサ111は、空気中における煙の濃度Csを計測し、第2のセンサ112は、空気中における一酸化炭素の濃度Ccを計測する。処理部12は、第1のセンサ111が計測した煙の濃度Csと第2のセンサ112が計測した一酸化炭素の濃度Ccとに関して所定の条件が成立するか否かを判定する。報知部13は、条件が成立したときに報知信号を出力する。処理部12は、第1の条件と第2の条件との一方を、煙の濃度Csに関して定めた切替条件の判定結果に基づいて前記条件として選択する。第1の条件は、煙の濃度Csと一酸化炭素の濃度Ccとの一方のみについて定められ、第2の条件は、煙の濃度Csと一酸化炭素の濃度Ccと両方について定められている。
処理部12は、前置判定部1200と第1の判定部1201と第2の判定部1202とを備えることが望ましい。前置判定部1200は、所定の基準時間に対する煙の濃度Csの差分と第1の判定値Vs2との大小を切替条件として判定する。第1の判定部1201は、一酸化炭素の濃度Ccを考慮せずに、煙の濃度Csが第2の判定値Vs1以上であることを含む第1の条件が成立するか否かを判定する。第2の判定部1202は、一酸化炭素に関する差分ΔCcが第3の判定値Vc2以上であることに加えて、煙の濃度Csが第2の判定値Vs1以上であることを含む第2の条件が成立するか否かを判定する。そして、前置判定部1200は、煙に関する差分ΔCsが第1の判定値Vs2未満であると判定した場合に第1の判定部1201を選択し、煙に関する差分ΔCsが第1の判定値Vs2以上であると判定した場合に第2の判定部1202を選択する。
また、前置判定部1200は、煙に関する差分ΔCsが第1の判定値Vs2以上である状態が第1の判定時間Td1継続した場合には、切替条件が成立するか否かにかかわらず第2の判定部1202を選択する状態に移行することが望ましい。この場合、前置判定部1200は、一酸化炭素に関する差分ΔCcが第3の判定値Vc2以上であることに加えて、煙の濃度Csが第2の判定値Vs1以上であることを含む条件が成立するか否かを第2の判定部1202に判定させる。さらに、前置判定部1200は、煙の濃度Csが所定の閾値Vs0未満である状態が第2の判定時間Td2継続した場合には、切替条件の判定結果に基づいて第1の判定部1201と第2の判定部1202との一方を選択する状態に復帰することが望ましい。この場合、第2の判定時間Td2は、第1の判定時間Td1よりも長い時間に設定されていることがさらに望ましい。
以下に説明する感知方法は、空気中における煙の濃度Csおよび一酸化炭素の濃度Ccをセンサ部11から取得し、取得した煙の濃度Csおよび一酸化炭素の濃度Ccについて所定の条件が成立するか否かを処理部12が判定する。さらに、この感知方法は、処理部12による判定の結果、条件が成立したときに報知部13から報知信号を出力する。処理部12が判定する条件は、煙の濃度Csに関して定めた切替条件の判定結果に基づいて第1の条件と第2の条件とから選択される。第1の条件は、煙の濃度Csと一酸化炭素の濃度Ccとの一方のみについて定められ、第2の条件は、煙の濃度Csと一酸化炭素の濃度との両方について定められている。
切替条件は、所定の基準時間に対する煙の濃度Csの差分と第1の判定値との大小である。また、第1の条件は、一酸化炭素の濃度Ccを考慮せずに、煙の濃度Csが第2の判定値Vs1以上であることを含む。さらに、第2の条件は、一酸化炭素に関する差分ΔCcが第3の判定値Vc2以上であることに加えて、煙の濃度Csが第2の判定値Vs1以上であることを含む。煙に関する差分ΔCsが第1の判定値Vs2未満である場合に処理部12が第1の条件を選択し、煙に関する差分ΔCsが第1の判定値Vs2以上である場合に処理部12が第2の条件を選択する。
以下、本実施形態についてさらに詳しく説明する。本実施形態では、感知器10として火災を検知する火災感知器を例示する。例示する火災感知器は、監視の対象である空間の天井などに取り付けて用いられる器体(図示せず)を備える。この火災感知器は、一酸化炭素(以下、「CO」という)の濃度と煙の濃度と温度との3種類の情報を用いて火災が発生しているか否かを検知する煙熱複合型として構成されている。すなわち、この火災感知器は、対象である空間において着目する成分がCOと煙とであり、さらに温度も合わせて監視することによって、火災が発生しているか否かを判断するように構成されている。
対象である空間について、温度を監視することは必須ではなく、また、本実施形態の技術は、COと煙との2種類の成分ではなく、COの濃度にのみ着目する感知器に適用することも可能である。さらに、火災感知器は、紫外線などを監視することによって炎を検出する構成が複合されていてもよい。
本実施形態の感知器10は、図1に示すように、センサ部11と処理部12と報知部13とを備える。センサ部11は、煙の濃度を計測する第1のセンサ111と、COの濃度を計測する第2のセンサ112と、温度を計測する第3のセンサ113とを備えている。処理部12は、以下に説明する処理を行うことによって、火災が発生しているか否かを判定する。
この感知器10は、報知器20との組み合わせにより、感知システムを構成する。すなわち、感知システムは、以下に説明する感知器10と、報知部13が出力する報知信号により報知を行う報知器20とを備える。すなわち、報知部13は、処理部12において火災が発生していると判定されたときに報知器20に報知信号を出力する。報知器20としては、ブザーまたは音声合成装置のような聴覚的報知を行う構成と、発光ダイオードまたは液晶表示器のような視覚的報知を行う構成との少なくとも一方が設けられる。つまり、処理部12において火災が発生したと判定されると、報知部13は報知器20を通して火災の発生を人に報知する。
火災感知器の器体は、煙が導入される空間を内部に形成している。第1のセンサ111は、当該空間に光を放射する発光素子と、当該空間からの光を受光する受光素子とを備えた光電式であって、煙による光の散乱を利用して煙の濃度を計測するように構成されている。ただし、第1のセンサ111は、煙の濃度として光の減光率に相当する値を出力するように構成されている。第1のセンサ111は、煙による光の散乱を利用する構成に限らず、光の透過を煙が妨げることを利用する構成であってもよい。また、第1のセンサ111は、光電式に限らず、イオン化式であることを妨げない。
第2のセンサ112は、COの濃度を計測することができる構成であれば、計測の原理
についてとくに制限はないが、低コストであることが望ましいから、ここでは、電気化学センサを想定する。電気化学センサは、触媒を備える検知極と、検知極に向かい合う対極と、検知極と対極とに挟まれるイオン伝導体とにより構成される。このセンサは、空気中の水蒸気とCOとが検知極の触媒で反応することにより、検知極と対極との間で電荷の移動が生じるように構成されている。
この種のセンサは、感度および精度が比較的低いから、COの濃度が小さい領域では検出精度を確保できないという問題を有している。すなわち、この種のセンサを用いる場合、COが低濃度である領域において、COの濃度を絶対値で判断することは難しい。また、他の原理でCOを計測するセンサには、低濃度でも精度よく計測可能な構成が知られているが、高価であるか大型であり、現状では採用することが難しい。以下に説明する感知器10は、COの濃度が小さい領域でもCOの存在を検出することを可能にしている。
第3のセンサ113は、50℃程度より高温を監視する構成であって、たとえば、サーミスタが採用される。
処理部12は、センサ部11が計測した情報を取得する取得部121を備える。取得部121は、センサ部11との間のインターフェイス部であって、センサ部11ごとに取得したアナログ値をデジタル値に変換する。以下では、第1のセンサ111に対応するデジタル値を煙の濃度、第2のセンサ112に対応するデジタル値をCOの濃度、第3のセンサ113に対応するデジタル値を温度値と呼ぶ。
処理部12は、プログラムに従って動作するプロセッサを備えたデバイスを主なハードウェア要素として備える。この種のデバイスは、メモリを一体に備えるマイコン(MicroController)のほか、プロセッサを備えるデバイスとは別にメモリを備える構成であってもよい。デバイスは、報知部13としても機能する。すなわち、このプログラムは、コンピュータを、処理部12および報知部13として機能させる。
プログラムは、ROM(Read Only Memory)にあらかじめ書き込んでおく構成を想定しているが、コンピュータのような支援装置を接続してROMに書き込む構成であってもよい。この場合、支援装置に提供するプログラムは、インターネットのような電気通信回線を通して提供するか、コンピュータで読取可能な記録媒体によって提供すればよい。
処理部12は、COの濃度、煙の濃度、温度値を用いて火災が発生したか否かを判定する判定部120を備える。さらに、処理部12は、時計部122、記憶部123、カウンタ124を備える。判定部120は、前置判定部1200と第1の判定部1201と第2の判定部1202とを備える(図1参照)。
時計部122は、単位時間Tuの計時を行い、処理部12は単位時間Tuに基づいてセンサ部11から情報を取得するタイミングを定める。単位時間Tuは、たとえば1秒に設定される。記憶部123は、取得部121がセンサ部11から取得した情報を必要に応じて記憶する。カウンタ124の機能は後述する。
処理部12に設けられた判定部120は、図2のように、読取処理S10と報知処理S20と火災判定処理S30との処理を行う。読取処理S10は、処理部12が取得部121を通してセンサ部11から情報を取得する処理であり、報知処理S20は、報知部13を通して火災の発生を報知する処理である。また、火災判定処理S30は、読取処理S10においてセンサ部11から取得した情報を用いて火災が発生しているか否かを判定する処理である。火災判定処理S30は、判定部120における前置判定部1200と第1の判定部1201と第2の判定部1202とが行う(図1参照)。
火災が発生していなければ、読取処理S10→報知処理S20→火災判定処理S30→読取処理S10という順番で各処理が循環する。つまり、リンクL11→リンクL12→リンクL13→リンクL11という循環する経路をたどる。この経路を1周する時間は、単位時間Tuよりやや長い程度になる。後述するように、読取処理S10と報知処理S20と火災判定処理S30とを循環する期間には、単位時間Tuの時間待ちを行う以外に、様々な処理を行う時間を含んでいるが、時間待ちを行う時間と比べて他の処理に要する時間は十分に短い。したがって、読取処理S10と報知処理S20と火災判定処理S30とを循環する期間は、単位時間Tuと同程度の時間になる。
一方、火災判定処理S30において、火災が発生していると判定された場合、火災が発生していると判定されたタイミングに応じて異なる経路が選択される。すなわち、火災判定処理S30→読取処理S10→報知処理S20という経路と、読取処理S10→報知処理S20→火災判定処理S30→報知処理S20という経路とのいずれかで、火災の発生が報知される。言い換えると、火災判定処理S30により火災が発生していると判定されると、リンクL13→リンクL11という経路と、リンクL11→リンクL12→リンクL14という経路とのいずれかで報知が行われる。報知処理S20で火災の発生が報知された後には、リンクL15を通して読取処理S10に復帰する。
以下、読取処理S10、報知処理S20、火災判定処理S30の各処理について、さらに詳しく説明する。図3に示すように、読取処理S10において、判定部120は、第3のセンサ113から取得部121を通して温度値θを取得し(S11)、第1のセンサ111から取得部121を通して煙の濃度Csを取得する(S12)。判定部120は、温度値θと煙の濃度Csとのどちらを先に取得してもよい。取得した煙の濃度Csは煙が存在しているか否かを判断する閾値Vs0(たとえば、1[%/m])と比較される(S13)。なお、本実施形態では、煙の濃度Csを1m当たりの減光率で表し、単位には[%/m]を用いている。
ここで、煙の濃度Csが閾値Vs0以上である場合には(S13:yes)、取得部121が第2のセンサ112からCOの濃度Ccを取得する(S15)。一方、煙の濃度Csが閾値Vs0未満でも(S13:no)、カウント値nが所定値Mcに達していれば(S14:yes)、取得部121が第2のセンサ112からCOの濃度Ccを取得する(S15)。判定部120は、COの濃度Ccを取得した後には(S15)、カウント値nを1にリセットする(S16)。また、煙の濃度Csが閾値Vs0未満であり(S13:no)、カウント値nが所定値Mcに達していなければ(S14:no)、判定部120は、カウント値nに1を加算する(S17)。
要するに、COの濃度Ccは、以下のいずれかのタイミングで取得部121が取得する。すなわち、煙の濃度Csが閾値Vs0以上である場合、取得部121は、COの濃度Ccをカウント値nに関係なく取得する。また、カウント値nが所定値Mcに達するまで煙の濃度Csが閾値Vs0未満である状態が継続している場合、取得部121は、カウント値nが所定値Mcに達した時点でCOの濃度Ccを取得する。言い換えると、煙の存在が検出されている場合は、ただちにCOの濃度Ccが取得され、煙の存在が検出されていない場合は、比較的長い時間間隔でCOの濃度Ccが取得される。煙の存在が検出されていない場合に、取得部121がCOの濃度を取得する時間間隔は、煙の存在が検出されている場合のMc倍であって、Mcはたとえば3〜10程度に設定される。
以上のように、煙の濃度Csが取得され、また必要に応じてCOの濃度Ccが取得されると、読取処理S10が終了する。読取処理S10の後には、報知処理S20に移行する。図4に示すように、報知処理S20において、判定部120は、火災判定処理S30ですでに火災と判定されているか否かを判断する(S21)。火災判定処理S30は、後述するように、火災が発生していると判定すると火災フラグF1を「1」に設定し、火災が発生していないと判定すると火災フラグF1を「0」に設定する。
ステップS21において、火災フラグF1が「1」でなければ(S21:no)、火災判定処理S30に移行する。一方、ステップS21において、火災フラグF1が「1」であれば(S21:yes)、火災が発生している可能性が高いから、判定部120は、ステップS12で取得した煙の濃度Csを(第2の)判定値Vs1と比較する(S22)。判定値Vs1は、閾値Vs0よりも大きい値(たとえば、3.5[%/m])に設定されている。
ここで、煙の濃度Csが判定値Vs1以上である場合(S22:yes)、報知部13を通して火災の報知を行う(S26)。すなわち、処理部12は、火災が発生している可能性が高いことが示され、かつ煙の濃度Csが判定値Vs1以上であるときには、報知部13を通して火災の報知が行われる。
一方、火災が発生している可能性が高いと判定されても(S21:yes)、煙の濃度Csが判定値Vs1未満である場合(S22:no)、火災フラグF1を「0」にしてリセットし(S23)、さらにカウント値Icを0にリセットする(S24)。カウント値Icは、火災判定処理S30においてCOの濃度Ccについて後述する判定を行った回数を計数するために用いられる。
以上のように、判定部120は、ステップS21において火災フラグF1が「1」であって、火災が発生している可能性があると判定された後、ステップS22において煙の濃度Csが火災の条件を満足しない場合、火災は発生していないと判定する。ステップS24の後には、火災判定処理S30に移行し、火災が発生しているか否かが判定される。
報知処理S20において、報知部13を通して火災の報知を行う条件には、火災判定処理S30の後に、火災フラグF1が「0」ではないという条件もある(S25:no)。したがって、判定部120は、以下のいずれかの条件が成立した場合に、報知部13を通して火災の報知を行う(S26)。すなわち、判定部120は、火災フラグF1が「1」かつ煙の濃度Csが判定値Vs1以上であるという条件と、火災判定処理S30の後に火災フラグF1が「0」でないという条件とのいずれかが成立した場合に、火災の報知を行う(S26)。
火災判定処理S30の後に火災フラグF1が「0」である場合は(S25:yes)、火災は発生していないと判断される。判定部120は、火災判定処理S30の後に火災フラグF1が「0」である場合(S25:no)、単位時間Tuの経過後に(S27)、読取処理S10に復帰する。単位時間Tuは、たとえば1秒などに設定される。単位時間Tuが1秒に設定されていれば、煙の濃度Csが閾値Vs0未満である状態が継続している期間に、ステップS15でCOの濃度Ccが取得される時間間隔は、Mc秒程度になる。実際には、読取処理S10と報知処理S20と火災判定処理S30との処理時間をTpとすれば、(1+Tp)×Mc秒であるが、Tp≪1であるから、COの濃度Ccが取得される時間間隔はほぼMc秒になる。
ところで、図4に示す報知処理S20の例では、ステップS26において火災の報知を行った場合も、単位時間Tuの経過後に(S27)、読取処理S10に復帰している。したがって、判定部120は、ステップS26において火災の報知を行った場合、火災の報知を継続させた状態で読取処理S10に復帰する。すなわち、火災の報知が行われた後には、火災の報知が継続されることになる。
なお、報知処理S20は、火災の報知が誤報であった場合に、報知を停止させる処理を含んでいてもよい。つまり、読取処理S10に復帰した後に報知処理S20に移行したときに、火災判定処理S30が実施され、その火災判定処理S30において火災フラグF1が「0」になると報知を停止させるように構成してもよい。
次に、火災判定処理S30について、図5〜図8を用いて説明する。火災判定処理S30は、図5に示すように、大略すると3種類の処理に分けられる。前置処理S31は、第3のセンサ113から得られる温度値θのみで火災が発生している可能性を判断する。また、第1の処理S32は、煙の濃度Csのみを用いて火災が発生している可能性を判断する。さらに、第2の処理S33は、煙の濃度CsとCOの濃度Ccとを用いて火災が発生している可能性を判断する。前置処理S31は前置判定部1200が行い、第1の処理S32は第1の判定部1201が行い、第2の処理S33は第2の判定部1202が行う。
つまり、火災判定処理S30は、火災の発生を判定するために、温度値θのみを用いる前置処理S31と、煙の濃度Csのみを用いる第1の処理S32と、COの濃度Ccと煙の濃度Csとを組み合わせて用いる第2の処理S33とを含む。第2の処理S33は、COの濃度Ccと煙の濃度Csと温度値θとのいずれもが条件を満足しない場合に、火災が発生していないと判定するか、火災が発生しているか否かを後の火災判定処理S30に委ねるかを決める処理も含んでいる。図5において、「確定」は火災が発生していると確定したことを示し、「未確定」は、火災が発生している可能性があるが確定できないことを示している。
前置処理S31を行う前置判定部1200は、図6に示すように、第3のセンサ113から取得した温度値θを判定値Vt1と比較し、かつ所定の基準時間T1に対する温度値θの差分Δθを判定値Vt2と比較する(S311)。たとえば、時刻tにおける温度値をθ(t1)、時刻tにおける差分をΔθ(t)と表せば、Δθ(t)=θ(t)−θ(t−T1)になる。差分Δθは、基準時間T1だけ離れた時点で取得した2つの温度値θの差である。
差分Δθは、基準時間T1で除算すれば温度勾配を求めることができる。また、基準時間T1が適宜の単位時間(たとえば、60秒)に設定されていれば、差分Δθと温度勾配とは一致する。したがって、ステップS311の条件は、基準時間T1に対する差分Δに代えて温度勾配を用いてもよい。
温度値θに対する判定値Vt1は、たとえば60[℃]程度に設定され、基準時間T1は、たとえば1〜3分程度に設定される。つまり、判定値Vt1は火災の発生時以外には生じない程度の温度値に設定され、基準時間T1は、火災の発生時に温度の上昇が観測される期間の長さに基づいて設定される。
ところで、判定部120が第3のセンサ113から温度値θを取得する時間間隔は基準時間T1よりも短い(たとえば、1秒程度)。したがって、温度に関する差分Δθは、複数回の火災判定処理S30を行った後に求められる。処理部12は記憶部123を備えており、記憶部123は、取得部121が第3のセンサ113から温度値θを取得するたびに温度値θを保存する記憶領域を備える。記憶部123において、温度値θを記憶する記憶領域はシフトレジスタと等価に機能し、差分Δθは先頭のデータ(最古のデータ)と末尾のデータ(最新のデータ)との差として求められる。
ステップS311では、θ≧Vt1とΔθ≧Vt2との少なくとも一方の条件を満足している場合に、火災が発生していると判断し、火災フラグF1を「1」に設定する(S3
4)。一方、ステップS311において、θ≧Vt1とΔθ≧Vt2とのどちらの条件も満足しない場合、言い換えると、θ<Vt1かつΔθ<Vt2である場合、仮判定フラグF2が「1」か否かが判定される(S312)。
差分Δθを求める基準時間T1が比較的長く設定されているから、火災の発生に伴って温度値θが急激に上昇する期間の差分Δθと、温度値θの変化が比較的少ない期間の差分Δθとの大きさを区別しやすくなる。その結果、火災の発生に伴って温度値θが急激に上昇する期間と、温度値θの変動が少ない期間との判別が容易になる。
仮判定フラグF2は、火災の発生について未確定であって、後の火災判定処理S30に判定を委ねるという場合に「1」が設定される。つまり、仮判定フラグF2は、火災が発生していると確定できないが、火災が発生している可能性を否定できない場合に、「1」が設定される。一方、火災が発生していないと確定できる場合には、前置判定部1200は、仮判定フラグF2を「0」に設定する。
ステップS312において、仮判定フラグF2が「1」でなければ、前置判定部1200は、煙に関する濃度Csの差分ΔCsを(第1の)判定値Vs2と比較する(S313)。温度値θの差分Δθと同様に、時刻tにおける煙の濃度をCs(t)、時刻tにおける煙に関する濃度Csの差分をΔCs(t)と表せば、ΔCs(t)=Cs(t)−Cs(t−T2)になる。差分ΔCsは、基準時間T2だけ離れた時点の煙の濃度Csの差であるから、基準時間T2で除算すれば煙に関する濃度勾配を求めることができる。すなわち、基準時間T2が適宜の単位時間(たとえば、60秒)に設定されていれば、差分ΔCsは煙に関する濃度勾配と等価になる。したがって、ステップS312は基準時間T2に対する差分ΔCsに代えて濃度勾配を用いてもよい。
基準時間T2は、30秒〜2分程度に設定されている。つまり、読取処理S10で取得部121が煙の濃度Csを取得する時間間隔よりも十分に長い時間に設定されている。ただし、差分ΔCsは火災判定処理S30ごとに更新される。
煙の濃度Csと基準時間T2と差分ΔCsとの関係を図9に示す。図中には煙の濃度Csの濃度勾配α2も示している。図に示すように、基準時間T2が比較的長く設定されているから、時間経過に伴って煙の濃度Csが変動したとしても、煙の濃度Csの変化の傾向は判別できる。
ここで、基準時間T2に対する煙に関する濃度Csの差分ΔCsを求めるために、取得部121が取得した煙の濃度Csは、温度値θの差分Δθを求める場合と同様に、記憶部123に格納される。すなわち、記憶部123は、取得部121が第1のセンサ111から濃度Csを取得するたびに濃度Csを保存する記憶領域を備える。記憶部123において、煙の濃度Csを保存する記憶領域はシフトレジスタと等価に機能し、差分ΔCsは先頭のデータ(最古のデータ)と末尾のデータ(最新のデータ)とから求められる。
ところで、ステップS312において、仮判定フラグF2が「1」である場合、火災が発生しているか否かが未確定であるから、以後の処理において火災が発生しているか否かを確定する必要がある。そこで、煙の濃度Csが閾値Vs0未満である状態が、(第2の)判定時間Td2にわたって継続していれば(S314:yes)、仮判定フラグF2を「0」にし(S315)、火災が発生していないことを確定する。つまり、判定時間Td2に相当する回数の火災判定処理S30が行われる期間において、煙の濃度Csが閾値Vs0未満である状態が継続していると(S314:yes)、前置判定部1200は仮判定フラグF2を「0」にする(S315)。
判定時間Td2は、判定部120が第1のセンサ111から煙の濃度Csを取得する周期(たとえば、1秒程度)よりも十分に長い時間に設定され、たとえば60秒に設定される。読取処理S10と報知処理S20と火災判定処理S30とが1秒程度の周期で繰り返されるとすれば、判定時間Td2は、60回程度の火災判定処理S30が行われる時間に相当する。閾値Vs0は、煙が発生していると判定するための下限値であって、火災の発生を判定する際に用いる判定値Vs1よりも十分に小さい値が用いられる(たとえば、Vs0≒0.3・Vs2)。
ステップS314において、煙の濃度Csが閾値Vs0未満である状態が、判定時間Td2にわたって継続していない場合は(S314:no)、第2の処理S33に移行する。つまり、判定時間Td2の経過前に濃度Csが閾値Vs0以上になった場合は、第2の処理S33に移行する。ステップS313では、煙に関する濃度Csの差分ΔCsが判定値Vs2未満である場合(または、煙に関する濃度勾配α2が比較的小さい場合)は第1の処理S32に移行する。また、ステップS313では、差分ΔCsが判定値Vs2以上である場合(または、煙に関する濃度勾配α2が比較的大きい場合)は第2の処理S33に移行する。
要するに、前置処理S31におけるステップS313の条件[ΔCs≧Vs2]は第1の処理S32と第2の処理S33とのどちらを選択するかを決める切替条件になる。処理部12は、ステップS313の条件が満たされないと(S313:no)、第1の処理S32を選択し、ステップS313の条件が満たされると(S313:yes)、第2の処理S33を選択する。
第1の処理S32および第2の処理S33は、後述するように、カウント値を用いる。したがって、処理部12は、カウント値を計数するカウンタ124を備える。このカウンタ124は、加算と減算とが可能であって、カウント値の最小値は0である。また、報知処理S20において火災フラグF1が「0」に設定されるか(S23)、火災判定処理S30において仮判定フラグF2が「0」に設定されると(S315)、カウンタ124のカウント値は0に戻される。カウンタ124は、煙が検出され続けている継続時間に相当するカウント値と、COが検出され続けている継続時間に相当するカウント値との計数を行うように構成されている。
図7に示す第1の処理S32を行う第1の判定部1201は、上述したように、煙の濃度Csのみを用いて火災の発生を判定する。第1の判定部1201は、仮判定フラグF2が「0」であり(S312:no)、かつ煙に関する濃度Csの差分ΔCsが判定値Vs2未満(ΔCs<Vs2)であること(S313:no)を前提条件にしている。この前提条件は、火災は発生しておらず、かつ判定時間Td2において煙の濃度Csの変化が認識されなかったことを意味している。言い換えると、第1の処理S32の前提条件は、火災が発生していない可能性が高いことを示している。
第1の判定部1201において火災が発生していると判定する条件は、煙の濃度Csが高い状態が比較的長い時間(たとえば、10秒程度)にわたって継続することである。煙が検出され続けている継続時間は、取得部121が取得した煙の濃度Csが連続して高い状態の時間に限らない。つまり、濃度Csが高い状態が不連続であっても、煙の濃度Csが高い状態が持続していると判定される場合は、カウンタ124が継続時間に相当するカウント値を計数する。
第1の処理S32において、第1の判定部1201は、読取処理S10において取得された煙の濃度Csを判定値Vs1と比較する(S321)。煙の濃度Csが判定値Vs1以上である場合は(S321:yes)、カウンタ124において煙に対応するカウント値Isに1が加算される(S322)。また、煙の濃度Csが判定値Vs1未満である場合は(S321:no)、カウント値Isから2が減算される(S323)。カウント値Isは、継続時間を見積もるために用いられる。
カウント値Isは基準値Nsと比較される(S324)。カウント値Isが基準値Ns以上になると(S324:yes)、第1の判定部1201は、煙の濃度Csが判定値Vs1以上である状態が継続していたと判定し、火災フラグF1を「1」に設定する(S34)。なお、カウント値Isが基準値Ns未満であれば(S324:no)、判定部120は報知処理S20に移行する。
ところで、継続時間は、カウント値Isが基準値Nsに達するまでの時間であるから、継続時間が基準値Nsに達するまでに煙の濃度Csが判定値Vs1未満になる状態が生じることを許容している。これは、煙の濃度Csは時間経過に伴って変動し、火災の発生時に煙の濃度Csが判定値Vs1以上になった後にも、煙の濃度Csが一時的に判定値Vs1未満になる状態が生じ得るからである。このように濃度Csが一時的に低下しても継続して煙の濃度Csが監視されるから、火災が発生している場合の煙の濃度Csが継続していれば火災の発生が検出され、失報が防止されることになる。
逆に、喫煙あるいは調理などによって煙の濃度Csが一時的に判定値Vs1以上になる場合には、カウント値Isが基準値Nsに達することはないから、基準値Nsが適切に設定されていれば、誤報の発生が防止される。また、煙の濃度Csが判定値Vs1未満であると、カウント値Isから2が減算されるから(S323)、煙の濃度Csが低い場合に、カウント値Isが基準値Nsに達するまでの時間が長くなり、このことからも誤報を抑制する効果が期待できる。
ところで、第2の処理S33を行う第2の判定部1202は、火災が発生していることを判定する条件として、煙の濃度Csに加えてCOの濃度Ccも用いる。第2の処理S33に対しては、2種類の前提条件があり、いずれか一方の前提条件が満たされると第2の処理S33が実行される。一方の前提条件は、仮判定フラグF2が「0」であり(S312:no)、かつ煙に関する濃度Csの差分ΔCsが判定値Vs2以上(ΔCs≧Vs2)であること(S313:yes)である。また、他方の前提条件は、仮判定フラグF2が「1」であり(S312:yes)、かつ煙の濃度Csが閾値Vs0以上である状態が、判定時間Td2において継続していること(S314:no)である。第2の処理S33は、どちらの条件を前提条件とする場合も、煙の濃度Csに関する条件を含んでいる。
図8に示す第2の処理S33を行う第2の判定部1202は、ステップS313またはステップS314の後に(S313:yesまたはS314:no)、所定の基準時間T3に対する濃度Ccの差分ΔCcを(第3の)判定値Vc2と比較する(S331)。基準時間T3は、基準時間T2と同様に、30秒〜2分程度に設定され、差分ΔCcは火災判定処理S30ごとに更新される。
ここに、COの濃度Ccは、読取処理S10において取得部121が取得した濃度Ccではなく、濃度Ccの移動平均値が用いられる。移動平均値を算出する際の濃度Ccの個数は5〜15個程度が望ましい。つまり、COの濃度Ccは、取得部121で取得した個々の値ではなく、濃度Ccを求める時刻から所定時間だけ遡った所定個数の濃度Ccの平均値が用いられる。
いま、取得部121が取得したCOの濃度Ccについて時系列をC1、C2、……、Cmとする。いま、12個の濃度の移動平均値をCOの濃度Ccとして用いるとすれば、濃度Ccの移動平均値は、(C1+C2+…+C12)/12、(C2+C3+…+C13)/12、(C3+C4+…+C14)/12、…になる。
COの濃度Ccが移動平均値であるから、COの濃度を計測する第2のセンサ112として計測の精度が比較的低い電気化学センサを採用した場合でも、COの濃度Ccに変化が生じていることを高い精度で検出することが可能になる。
たとえば、火災によりCOが生じる場合、COの濃度勾配は少なくとも1〜5ppm/min程度になる。第2のセンサ112が電気化学センサである場合、読取処理S10毎に取得されるCOの濃度Ccの時系列において隣接する濃度Ccから濃度勾配を求めても、火災の判定に利用できるほどの十分な精度が得られない。
これに対し、本実施形態では、COの濃度Ccについて移動平均値を用いて濃度Ccの差分ΔCcを求め、この差分ΔCcを用いて火災が発生しているか否かを判定するから、COの濃度Ccの変化を精度よく判別することが容易である。
COに関する濃度Ccの差分ΔCcが判定値Vc2以上である場合は(S331:yes)、カウンタ124においてCOに対応するカウント値Icに1が加算され(S332)、その後、煙の濃度Csが判定値Vs1と比較される(S334)。
ここに、煙に関する濃度Csの差分ΔCsと同様に、時刻tにおけるCOの濃度をCc(t)、時刻tにおけるCOに関する濃度Ccの差分をΔCc(t)と表せば、ΔCc(t)=Cc(t)−Cc(t−T3)になる。差分ΔCcは、基準時間T3だけ離れた時点のCOの濃度Ccの差である。
COの濃度勾配は、この差分ΔCcを基準時間T3で除算すればCOの濃度勾配になる。したがって、基準時間T3が適宜の単位時間(たとえば、60秒)に設定されていれば、差分ΔCcは濃度勾配に一致する。したがって、ステップS331は、基準時間T3に対する差分ΔCcに代えて濃度勾配を用いてもよい。上述したように、基準時間T3は、基準時間T2と同程度に設定される。また、処理部12の内部処理を簡単にするために、基準時間T3は基準時間T2と同じにすることが望ましい。
COの濃度Csと基準時間T3と差分ΔCcとの関係を図10に示す。図中にはCOに関する濃度Csの濃度勾配α3も示している。この図から、基準時間T3が適切に設定されていれば、基準時間T3の期間における濃度Csの精度が不十分であっても、COの濃度Ccに比較的大きい変化が生じている場合は、COの濃度Ccの変化を判別できることがわかる。
ところで、ステップS334において、煙の濃度Csが判定値Vs1以上である場合(S334:yes)、煙に対応するカウント値Isに1が加算される(S335)。また、煙の濃度Csが判定値Vs1未満である場合(S334:no)、煙に対応するカウント値Isから2が減算される(S336)。ステップS334〜S336は、第1の処理S32におけるステップS321〜S323と同処理である。ステップS336においてカウント値Isから2を減算した後、判定部120は報知処理S20に移行する。
また、ステップS335の後には、第2の判定部1202は、COに関するカウント値Icを基準値Ncと比較する(S337)。カウント値Icが基準値Nc以上である場合(S337:yes)、さらに、煙に関するカウント値Isが基準値Nsと比較される(S338)。ここで、カウント値Isが基準値Ns以上である場合(S338:yes)、第2の判定部1202は、火災フラグF1を「1」にする(S34)。カウント値Icが基準値Nc未満である場合(S337:no)、あるいはカウント値Isが基準値Ns未満である場合(S338:no)、判定部120は報知処理S20に移行する。
図8に示す第2の処理S33では、ステップS331において、COに関する濃度Ccの差分ΔCcが判定値Vc2未満である場合(S331:no)、カウンタ124においてCOに対応するカウント値Icから2が減算される(S333)。また、ステップS333の後には、煙に関する濃度Ccの差分ΔCcが判定値Vs2以上である状態が(第1の)判定時間Td1にわたって継続しているか否かが判定される(S339)。
判定時間Td1に相当する回数の火災判定処理S30が行われる期間において、煙に関する濃度Csの差分ΔCsが判定値Vs2以上である状態が継続すると(S339:yes)、仮判定フラグF2は「1」に設定される(S340)。差分ΔCsが判定値Vs2以上である状態が継続している時間が判定時間Td1に達しない場合、あるいはステップS340の後には、判定部120は報知処理S20に復帰する。
ここに、判定時間Td1は、煙の濃度Csが急激に増加する状態の継続時間を判定するために設定されている。煙の発生が火災を原因とする場合、煙の濃度Csが急激に増加する時間は、10秒程度を超えて継続する。したがって、判定時間Td1も10秒程度に設定される。つまり、前置判定部1200が用いる(第2の)判定時間Td2は、第2の判定部1202が用いる(第1の)判定時間Td1よりも長い時間に設定されている。
以上説明したように、火災判定処理S30において、前置処理S31は、温度値θを用いて火災の発生を判定するだけではなく、第1の処理S32および第2の処理S33に対する前提条件を定めている。第1の処理S32に対しては、火災が発生していないと判断されている状態で(F2=0)、煙の濃度Csの変化が少ない(ΔCs<Vs2)ことを前提条件に定めている。また、第2の処理S33に対しては、2種類の前提条件を定めている。一方の前提条件は、火災が発生していないと判断されている状態で(F2=0)、煙の濃度Csが急激に上昇すること(ΔCs≧Vs2)である。さらに、他方の前提条件は、火災が発生しているか否かが確定しておらず(F2=1)、煙の発生が判定時間Td2において継続的に検出されていることである。
以上説明したように、前置判定部1200は、ステップS313において、煙に関する濃度Ccの差分ΔCsを第1の判定値Vs2と比較し、ΔCs<Vs2であると第1の判定部1201を選択し、ΔCs≧Vs2であると第2の判定部1202を選択する。第1の判定部1201は、一酸化炭素の濃度Csを考慮することなく、煙の濃度Csについて判定する。また、第2の判定部1202は、一酸化炭素の濃度Ccの差分ΔCcに加えて煙の濃度Csについて判定する。
さらに、処理部12は、第2の処理S33において、煙に関する濃度Csの差分ΔCsが(第1の)判定値Vs2以上である状態が第1の判定時間Td1継続した場合、仮判定フラグF2が「1」になる。その結果、前置判定部1200は、煙に関する濃度Csの差分ΔCsを第1の判定値Vs2と比較する処理を中断する。したがって、第2の判定部1202で第2の処理S33が継続して行われる。
ここに、図6に示す前置処理では、仮判定フラグF2が「1」である場合に、前置判定部1200が、切替条件[ΔCs≧Vs2]が成立するか否かを判断しないように構成しているが、切替条件の判断を行う構成を採用してもよい。ただし、前置判定部1200は、切替条件の判断を行う場合であっても、仮判定フラグF2が「1」であれば、切替条件が成立するか否かにかかわらず第2の判定部1202を選択するように構成する。この動作から明らかなように、仮判定フラグF2は、第2の判定部1202で判断される条件[ΔCs≧Vs2が判定時間Td1継続]が成立したという判定結果を、前置判定部1200に引き渡す機能を有する。
第2の判定部1202は、一酸化炭素に関する濃度Ccの差分ΔCcが(第3の)判定値Vc2以上であることに加えて、煙の濃度Csが(第2の)判定値Vs1以上であることを含む条件が成立するか否かを判定する。ここで、前置判定部1200は、煙の濃度Csが閾値Vs0未満である状態が(第2の)判定時間Td2継続した場合、切替条件に応じて第1の判定部1201と第2の判定部1202とを選択する状態に復帰する。図6に示す動作例では、ステップS313において、煙に関する濃度Csの差分ΔCsを(第1の)判定値Vs2と比較する処理が行われる状態に復帰している。
なお、閾値Vs0は、煙の濃度Csに対する判定値Vs1および煙に関する濃度Csの差分ΔCsに対する判定値Vs2とは、数値の上では、Vs0<Vs1−Vs2の関係に設定されている。これは、前置判定部1200が仮判定フラグF2を「1」にしていた状態から仮判定フラグF2を「0」にしたことによって、ステップS313を通過する処理に復帰した直後に、煙の濃度Csが判定値Vs1以上になるのを防止するためである。閾値Vs0が、(Vs1−Vs2)以上である場合、ステップS313において差分ΔCsが判定値Vs2未満であっても(Vs0+Vs2)が判定値Vs1以上になる。つまり、煙の濃度Csが判定値Vs1以上になり、煙に対応するカウント値Isに1が加算されることになる。一方、本実施形態は、閾値Vs0が(Vs1−Vs2)以下であるから、ステップS313において(Vs0+Vs2)が判定値Vs1未満になり、煙に対応するカウント値Isへの加算が防止される。
ところで、火災の際に燃焼する物質の種類、火災が生じている場所の環境などの様々な要因によって、火災の態様は変化する。このような火災の態様は10種類程度の態様に類型化されており、火災による煙の濃度CsおよびCOの濃度Ccの時間変化については、短い時間で急激に立ち上がる場合と、比較的長い時間で緩やかに立ち上がる場合とが知られている。また、濃度Cs、Ccは、火災の態様により、比較的高い値まで上昇する場合と、比較的低い値までしか上昇しない場合と、飽和する場合と、一旦上昇した後に減少する場合とがある。
また、火災が発生してから濃度Cs、Ccが立ち上がり始めるまでの時間も火災の態様によって異なっている。煙の濃度CsとCOの濃度Ccとが立ち上がるタイミングが異なる場合もあるが、一般的には、煙の濃度CsとCOの濃度Ccとが立ち上がるタイミングには類似した傾向が見られることが知られている。そして、火災感知器では、火災の発生からおおむね10分間程度の時間内で火災の発生を検知することが要求される。以上のように、火災感知器は、様々な態様の火災に対して、10分程度の時間内で火災の発生を判定する必要がある。
上述した構成例において、火災判定処理S30のうち、第1の処理S32は、煙の濃度Csが継続的かつ徐々に立ち上がる態様の火災について、火災の発生を検出することが可能である。また、煙の濃度Csが急激に上昇する態様の火災は、第2の処理S33により検出することが可能である。第2の処理S33では、煙の濃度Csが急激に立ち上がる火災について、COの濃度Ccの上昇傾向も考慮して火災の発生が判定される。COの濃度Ccが比較的小さい場合でも、COに関する濃度Ccの差分ΔCcが判定値Vc2以上であれば、火災の発生と判定する場合がある。
すなわち、第2の処理S33では、COの濃度Ccが比較的小さい場合でも、COに関する濃度Ccの差分ΔCcが比較的大きい場合には、複数回の火災判定処理S30を繰り返す間に、火災の判定を行うことが可能になっている。この処理において、火災が発生したと判定される条件には、煙の濃度Csが判定値Vs1以上である状態が継続しているこ
とも含まれる。つまり、第2の処理S33において火災が発生したと判定されるのは、煙の濃度Ccが比較的高い状態が継続しており、かつ煙の濃度Csが急激に上昇し、しかも、COに関する濃度Ccが上昇する状態を継続しているような態様の火災になる。
第2の処理S33では、煙の濃度Csが急激に上昇する状態が短時間しか持続せず、かつCOに関する濃度Ccの差分ΔCcが比較的小さい場合には、火災とは判定されない。このような事象は、ドライアイスから生じる白煙、あるいは湯気などによって生じることが想定されており、第2の処理S33により、ドライアイスから生じる白煙あるいは湯気と火災による煙とを区別することが可能になる。
つまり、煙の濃度Csが急激に上昇する状態が比較的長い時間に亘って継続する場合、COに関する濃度Ccの差分ΔCcが比較的小さい場合でも火災が発生している可能性を否定できない。したがって、このような場合には、仮判定フラグF2を「1」に設定し、判定結果の確定を以後の火災判定処理S30に委ねる。
図11は、保温機能を備えない電気ポット(いわゆる、電気ケトル)から発生する湯気を第1のセンサ111が計測した場合の計測値(濃度Cs)の変化の例を示している。図において、煙の濃度Csが立ち上がってから時刻t4に達するまでの時間は6分程度である。また、図中での濃度Csの最大値は15%/m程度である。
ところで、図11に示す例では、時刻t4までのほぼ全期間において煙の濃度Csが閾値Vs0以上である場合を想定している。この例では、火災判定処理S30におけるステップS311において、温度値θは火災が発生している場合の条件を満たさない。つまり、ステップS311からはステップS312に移行する。
また、図示例において、湯気の発生が開始され、濃度Csが閾値Vs0以上になってから時刻t3までは、濃度Csが増加する期間であり、時刻t3から時刻t4までは、濃度Csが減少する期間である。さらに、時刻t1は、火災判定処理S30のステップS339の条件[ΔCs≧Vs2が判定時間Td1継続]が満たされた時点を表し、この時点で仮判定フラグF2が「1」になる。時刻t2は時刻t1の後に、ステップS314の条件[Cs<Vs0が判定時間Td2継続]が満たされた時点を表している。したがって、時刻t1は煙の濃度Csが閾値Vs0以上になってから判定時間Td1が経過した時点に相当し、時刻t2はその後に判定時間Td2が経過した時点に相当する。
図示例は、読取処理S10のステップS13の条件[Cs≧Vs0]が満たされた後、火災判定処理S30のステップS313の条件[ΔCs≧Vs2]が満たされることによって、第2の処理S33に移行している。ただし、時刻t1になるまでは、ステップS339の条件[ΔCs≧Vs2が判定時間Td1継続]が満たされないから、ステップS312、S313を通って第2の処理S33が選択される。
判定時間Td1が経過するまでこの状態が継続すると、ステップS339の条件が満たされることにより、仮判定フラグF2が「1」になる。そのため、以後の火災判定処理S30では、ステップS312の条件[F2=1]が満たされ、ステップS314が選択される。ここで、煙の濃度Csは高い状態が継続しているから、ステップS314の条件[Cs<Vs0が判定時間Td2継続]は成立せず、仮判定フラグF2が「1」である状態が維持されて、第2の処理S33が選択される(図6参照)。
この状態は、仮判定フラグF2が「0」になるまで継続する。時刻t3の後には、煙の濃度Csが時刻t3の後に低下し、ステップS339における条件[ΔCs≧Vs2が判定時間Td1継続]が満たされなくなるが、仮判定フラグF2は「1」に維持される。そ
のため、ステップS312の条件[F1=1]が成立し、さらに、ステップS314の条件[Cs<Vs0が判定時間Td2継続]が満たされないから、時刻t3の後も第2の処理S33が選択される。
時刻t4になると、ステップS312の条件[F1=1]が成立している状態で、ステップS314の条件[Cs<Vs0が判定時間Td2継続]も成立するから、ステップS315に移行して仮判定フラグF2は「0」になる。その後、ステップS313を経て第1の処理S32が選択されるが、煙の濃度Csがすでに低下しており、ステップS321の条件[Cs≧Vs1]が満たされないから、煙に対応するカウント値Isは増加しない。つまり、ステップS324の条件[Is≧Vs1]が満たされないから、火災フラグF1が「1」にならず、誤報の発生を回避することができる。
要するに、電気ポットの湯気のように、COが検出されない場合には、火災判定処理S30において、主として第2の処理S33が選択され、COが検出されなければ、仮判定フラグF2が「1」になり、湯気と仮に判断している状態が継続される。仮判定フラグF2が「1」であれば、煙の濃度Csが閾値Vs0未満に低下するまではステップS313が選択されないから、つねに第2の処理S33が選択される。結果的に、仮判定フラグF2が「1」で第2の処理S33が選択される状態は、COが検出されない限り、煙の濃度Csが低下するまで維持され、誤報の発生が防止される。
仮に、火災判定処理S30において、仮判定フラグF2を用いない場合には、ステップS313での判定が必ず行われることになる。この場合、時刻t3において、煙の濃度Csが低下し始めたとしても、ステップS313の条件[ΔCs≧Vs2]が満たされなくなるから、第1の処理S32に移行し、ステップS321の条件[Cs≧Vs1]が満たされることになる。その結果、火災判定処理のたびに煙に対応するカウント値Isが増加し、火災フラグF1が「1」になる。つまり、報知処理S20において報知部13を通して火災の報知がなされ(S26)、誤報が生じることになる。本実施形態の構成では、上述した構成により、このような誤報が防止される。
図12は、煙の濃度Csが周期的に変化する例を示している。図示例では、煙の濃度Csが一時的に高くなる状態が周期的に生じる例を示している。すなわち、図示する煙の濃度Csは、周期Tpでベル型をなすように変化する。煙の濃度Csは、周期Tpで極大になり、極大値同士の差分ΔCpは、比較的小さくなる。なお、図示例において、煙の濃度Csの極大値は判定値Vs1以上であり、周期Tpと判定時間Td2とはTp≒Td2の関係であると仮定する。また、周期Tpが基準時間T2、T3とほぼ等しい場合を想定する。
煙の濃度Csが図12に示すように変化する場合、煙が発生した原因は、火災ではない可能性が高い。煙の濃度Csが図12に示すように変化した場合、本実施形態の構成によれば、火災判定処理S30のステップS314の条件[Cs<Vs0の状態が判定時間Td2継続]を満足しないから、第2の処理S33に移行する。COが検出されていない場合、ステップS339を通るが、ステップS339の条件[ΔCs≧Vs2の状態が判定時間Td1継続]を満足しないから、火災フラグF1と仮判定フラグF2とはともに「0」に保たれる。
また、COが検出されている場合、ステップS334を通る可能性があるが、煙の濃度Csが周期的に変化しているから、煙の濃度CsがステップS334の条件[Cs≧Vs1]が継続的に満たされることがない。したがって、火災フラグF1と仮判定フラグF2とはともに「0」に保たれる。
以上説明したように、煙の濃度Csが図12のように周期的に変化する場合、火災と判定されることはなく、誤報の発生が抑制される。同様にして、脱衣所において浴室からの湯気が継続して滞留する場合、あるいは埃が長時間にわたって滞留するような場合でも、COが検出されないことによって、誤報の発生が抑制される。
なお、上述した構成例では、COの濃度を計測する第2のセンサ112が電気化学式センサであって、COに関する濃度Ccの差分ΔCcを求めるために、COの濃度Ccの移動平均値を用いている。ただし、第2のセンサ112の計測精度が比較的よい場合には、COの濃度Ccの移動平均値を用いずに第2のセンサ112が計測した濃度Ccから直接求めた差分ΔCcを用いる構成を採用することも可能である。また、基準時間T2は、取得部121が第1のセンサ111から煙の濃度Csを取得する時間とし、基準時間T3は、取得部121が第2のセンサ112から一酸化炭素の濃度Ccを取得する時間としているが、この時間を適宜に延長することが可能である。
上述した構成例には記載していないが、誤報が生じた場合に備えて、別にリセット用の処理を付加することが望ましい。
なお、上述した構成例では、報知部13から出力された報知信号により報知器20を動作させており、センサ部11と処理部12と報知部13と報知器20とが共通の器体に設けられている場合を想定している。これに対して、報知器20を別の器体に分離して設け、報知部13が通信によって報知信号を報知器20に出力する構成であってもよい。
また、報知器20に代えて火災の発生を監視するための受信機を用い、複数の火災感知器を受信機に接続し、受信機に対して報知信号を出力する構成を採用することも可能である。この種の受信機は、複数の火災感知器を集中的に管理し、建物などにおいて火災感知器が配置されている場所ごとに、火災が発生しているか否かを監視する機能を有する。