JP6631524B2 - 光回路素子及び光回路素子の構成方法 - Google Patents

光回路素子及び光回路素子の構成方法 Download PDF

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Description

本発明は、光回路素子及び光回路素子の構成方法に関し、特に、光通信システムや装置間光接続システムに用いられる光回路素子及び光回路素子の構成方法に関する。
光通信システムや装置間光接続システムにおいては、光導波路を用いて光回路を構成する技術が重要である。そして、システムの小型化及び低電力化のために、光回路における機能集積化の進展が期待されている。近年は、光回路における機能集積化の手段として、シリコン光導波路が用いられたシリコンフォトニクスと称される技術への注目が高まっている。
シリコン光導波路では、シリコンをコアとし、石英をクラッドとして、コアとクラッドとの間の高い比屈折率差と微細なコア構造とを活用することで、強い光閉じ込め効果が得られる。このようなシリコン光導波路を用いることで、高い集積度を提供する光回路の実現が期待される。また、このような微細かつ高集積な光回路は、シリコンLSI(large scale integration)向けに蓄積されてきたプロセス技術を活用して大口径ウェハ上で製造できることも、シリコンフォトニクスが注目される大きな理由である。
図10及び図11にシリコン光導波路の構造の例を示す。図10は、チャネル型の光導波路の一般的な構造を示す図である。シリコン基板21上の石英層22の中にシリコンのチャネル構造23が形成されており、チャネル構造23が光導波路のコアとして機能し、石英層22が光導波路のクラッドとして機能する。
図11は、リブ型の光導波路の一般的な構造を示す図である。シリコン基板24上に、石英層25、シリコン層26、石英層27が積層されている。シリコン層26上には、リブあるいはリッジと称される突起状の構造28が形成されている。この構造では、基板に垂直な方向の光閉じ込めはシリコンと石英との屈折率差によって実現される。また、基板に平行な方向の光閉じ込めは、リブが形成されている厚いシリコンと、リブが形成されていない薄いシリコン(スラブ)との、実効的な屈折率差によって実現される。
シリコン光導波路を用いて集積度の高い光回路を構成する上で、光導波路の交差を実現するための素子技術は非常に重要である。複数の光導波路が交差する交差点では、光導波路を伝搬する光信号における回折の発生を避けることは困難である。特許文献1及び特許文献2には、回折に伴う光信号の損失を低減するための素子構造が記載されている。
図12は、光導波路の交差点を持つ一般的な光回路素子の第1の例を示す図である。図12は、交差点を形成する光導波路のコアの構造を上面から見た図である。一方の光信号は光導波路の入射側51から出射側54へ伝搬し、他方の光信号は入射側55から出射側58へ伝搬する。光信号を入射側51から出射側54へ伝搬させる光導波路と、光信号を入射側55から出射側58へ伝搬させる光導波路とは、交差点59で交差する。各々の光導波路のコア幅は交差点59において拡大される。そして、テーパ部52、53、56、57が光導波路に設けられている。テーパ部52、53、56、57のコア幅は、交差点59に向かって徐々に拡大される。
図12に模式的に示される基本モード60は、光導波路コア内で単峰の光強度分布を示す。光導波路のコア幅が拡大している部分では、光導波路を伝搬している基本モード60はコアの側壁の幅や側壁の状態の変動の影響を受けにくくなるため、交差点59における回折に伴う光信号の損失を低減させることができる。
図12では、光導波路の交差に関して、1か所の交差を通過する光信号の損失低減に着目して説明した。しかし、光回路の集積度が高くなるにつれて、光信号が光導波路に設けられた複数の交差点を通過することによる影響も無視できなくなる。例えば、特許文献3には、複数の交差点が、光導波路上で、直線上に配置された光回路素子が記載されている。
図13は、光導波路の交差点を持つ一般的な光回路素子の第2の例を示す図である。図13は、交差点を形成する光導波路コアの構造の上面図である。第1の光信号は光導波路の入射側61から出射側62へ伝搬する。さらに、3本の光導波路が、第1の光信号が伝搬する光導波路と、それぞれ交差点69、70、71で交差する。交差点69と交差点70との間隔はd1であり、交差点70と交差点71との間隔はd2である。
光導波路の交差における光信号の回折が光信号と逆方向に伝搬する基本モードを発生させる結果、反射光が生成される場合がある。このような場合に、複数の交差点が同一の間隔で配置されていると、光回路素子において回折格子(グレーティング)としての効果が発生し、波長に依存した損失が発生する。これを避けるため、図13に示された光回路素子では、間隔d1と間隔d2とは異なっており、d1とd2との間には一定値以上の差が設けられる。これにより、図13に示された光回路素子は、1か所の交差点における損失を低減することはできないものの、複数の交差点によって発生する損失の波長依存性を低減し得る。
特開平5−60929号公報 特開2011−90223号公報 特開2014−2239号公報
光回路素子の集積規模を高める上で、光回路素子を構成する光導波路の交差の一層の低損失化が求められる。また、多くの場合、光回路素子には、光導波路を伝搬する光信号の偏光に依存しない特性も求められる。この低損失化と偏光無依存化とは、周知の技術だけでは充分には実現されない。さらに、光導波路の交差を通過する光信号に起因する回折の発生も避けられない。そして、特許文献1や特許文献2は、光導波路の交差点で発生する回折を低減する技術について記載しているものの、発生する回折光の扱いには言及していない。
交差点の前後に接続される光導波路は基本モードのみを伝搬させる。これに対し、交差点において光導波路のコア幅が拡大されて多モード光導波路となっている場合、回折の発生により、光信号のエネルギーの基本モードから高次モードへの変換がわずかながらも生じ得る。交差点の一層の低損失化を図るためには、交差点における高次モードの発生の抑制に加えて、発生する高次モードを活用することが重要となる。発生した高次モードが大きく減衰する場合には、高次モードの影響は交差点の前後での基本モードの損失として現れる。高次モード成分の減衰が小さい場合には、基本モードと高次モードとの間のモード間干渉の結果によって、交差の前後での基本モードの損失量が定まる。モード間干渉の結果、基本モードと高次モードとが強め合えば、交差の前後での基本モードの損失が低減される。
さらに、偏光無依存化のためには、異なる偏光成分に対して同程度のモード間干渉を生じさせる必要がある。すなわち、交差点で発生する高次モードを制御することは、低損失化や偏光無依存化を実現する上で重要である。交差点で発生する高次モードの制御は、特に、光信号が複数の交差点を通過する構造を持つ光回路素子において重要である。しかしながら、特許文献3に記載された技術には、このような高次モード成分の制御に関する言及はない。
(発明の目的)
本発明は、低損失かつ低偏光依存で光信号を通過させるという課題を解決する光回路素子及び光回路素子の構成方法を提供することを目的とする。
本発明の光回路素子は、平板状のスラブ及び突起状のリブを含むコア領域とコア領域の上下に接して設けられたクラッド領域とで構成されるリブ型光導波路で構成された光回路素子であって、光回路素子が備える第1の光導波路は、第1の光導波路以外の他の光導波路と交差する交差点を複数備え、複数の交差点は1本の直線上に配置され、交差点の間の領域の第1の光導波路のコア幅は、交差点の間以外の領域の第1の光導波路のコア幅よりも広く、コア幅が互いに異なる第1の光導波路の領域の間は、コア幅が単調に変化するテーパ光導波路で接続され、コア幅が広い領域の第1の光導波路のスラブの厚さは、コア幅が広い領域以外の領域の第1の光導波路のスラブの厚さよりも大きい、ことを特徴とする。
本発明の光回路素子は、平板状のスラブ及び突起状のリブを含むコア領域とコア領域の上下に接して設けられたクラッド領域とで構成されるリブ型光導波路で構成された光回路素子であって、光回路素子が備える第1の光導波路は、第1の光導波路以外の他の光導波路と交差する交差点を複数備え、複数の交差点は1本の直線上に配置され、複数の交差点の間に形成された第1の光導波路の領域は、基本モード及び高次モードを含んで光信号が伝搬する第1の領域として構成され、第1の領域と、第1の光導波路の領域のうち基本モードのみを含んで光信号が伝搬する第2の領域と、の間はテーパ光導波路で接続され、第1の領域のスラブの厚さは、高次モードにおける損失及び偏光依存性が低減されるように設定される、ことを特徴とする。
本発明の光回路素子の構成方法は、平板状のスラブ及び突起状のリブを含むコア領域とコア領域の上下に接して設けられたクラッド領域とで構成される光回路素子の構成方法であって、光回路素子が備える第1の光導波路に、第1の光導波路以外の他の光導波路と交差する交差点を複数配置し、複数の交差点を1本の直線上に配置し、複数の交差点の間の領域の第1の光導波路のコア幅を、交差点の間以外の領域の第1の光導波路のコア幅よりも広く設定し、コア幅が互いに異なる第1の光導波路の領域の間を、コア幅が単調に変化するテーパ光導波路で接続し、コア幅が広い領域の第1の光導波路のスラブの厚さを、コア幅が広い領域以外の領域の第1の光導波路のスラブの厚さに比べて大きく設定する、ことを特徴とする。
本発明の光回路素子の構成方法は、平板状のスラブ及び突起状のリブを含むコア領域とコア領域の上下に接して設けられたクラッド領域とで構成される光回路素子の構成方法であって、光回路素子が備える第1の光導波路に、第1の光導波路以外の他の光導波路と交差する交差点を複数配置し、複数の交差点を1本の直線上に配置し、複数の交差点の間に形成された第1の光導波路の領域を、基本モード及び高次モードを含んで光信号が伝搬する第1の領域として構成し、第1の領域と、第1の光導波路の領域のうち基本モードのみを含んで光信号が伝搬する第2の領域と、の間をテーパ光導波路で接続し、第1の領域のスラブの厚さを、コア領域の構造不均一及び偏光依存性を低減するようにスラブの厚さを設定する、ことを特徴とする。
本発明の光回路素子及び光回路素子の構成方法は、低損失かつ低偏光依存で光信号を通過させることが可能な光回路素子を実現する。
第1の実施形態の光回路素子の構成図である。 基本モード(0次)の光導波路断面内での光強度分布の計算結果の例を示す図である。 高次モード(1次)の光導波路断面内での光強度分布の計算結果の例を示す図である。 高次モード(2次)の光導波路断面内での光強度分布の計算結果の例を示す図である。 高次モード(3次)の光導波路断面内での光強度分布の計算結果の例を示す図である。 高次モード(4次)の光導波路断面内での光強度分布の計算結果の例を示す図である。 0次モード乃至4次モードの実効屈折率の例を示す図である。 第2の実施形態の光回路素子の損失のシミュレーション結果の例を示す図である。 第2の実施形態の光回路素子の損失のシミュレーション結果の例を示す図である。 チャネル型の光導波路の一般的な構造を示す図である。 リブ型の光導波路の一般的な構造を示す図である。 光導波路の交差点を持つ一般的な光回路素子の第1の例を示す図である。 光導波路の交差点を持つ一般的な光回路素子の第2の例を示す図である。
次に、本発明の第1の実施の形態について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の光回路素子100の構成図である。光回路素子100は、第1の光導波路101、および、これと交差する第2から第4の光導波路102〜104を備える。第1の光導波路101は、領域1、領域2、領域3、領域4、領域5を含む。光信号は、領域1〜5を順に伝搬する。第2の光導波路102は、光信号を領域7から領域8へ伝搬させる。第3の光導波路103は、光信号を領域9から領域10へ伝搬させる。第4の光導波路104は、光信号を領域11から領域12へ伝搬させる。
第1〜第4の光導波路101〜104は、図11と同様のリブ型光導波路である。図1では、第1〜第4の光導波路101〜104のシリコンの構造のみが図示されており、その上下に接して形成される石英層は図示されていない。第1の光導波路101では、曲がり光導波路を含む領域1から領域2までの光導波路に、リブ幅が徐々に広がるテーパ光導波路である領域3、直線状の幅広リブ型光導波路である領域4及び領域5が順に接続されている。第1の光導波路101と第2〜第4の光導波路102〜104との交差点13、14、15は、幅広リブ型光導波路上に配置される。領域4は、交差点13〜15の交差点間の領域を含む。交差点13と交差点14との間隔はc1、交差点14と交差点15との間隔はc2である。
幅広リブ型光導波路(以下、「幅広導波路」という。)は、基本(0次)モードの光信号のみを伝搬させる光導波路よりも、広いリブ幅を有する。このため、幅広導波路内では、1次以上の高次モードも導波モードとして存在し得る。したがって、光信号を領域1から領域5へ伝搬させる際に、交差点13〜15においてわずかながら高次モードが発生する。交差点13〜15で発生した高次モードの光信号は、幅広導波路を伝搬する。
図2〜図6は、リブ形成部のシリコン厚さが1.5μm、リブ幅が5.0μmであるリブ型光導波路に関して、導波モードとして存在し得る基本モード(0次)または1次〜4次の高次モードの光導波路断面内での光強度分布の計算結果の例を示す図である。横軸Xはリブ幅方向の寸法、縦軸Yはリブ形成部のシリコン厚さ(すなわちリブ高さ)方向の寸法を示す。図2〜図6において、光強度は光強度分布の最も高い中心部を1として正規化されている。各図から明らかなように、n次(nは自然数)モードでは、(n+1)個のピークを持つ光強度の分布が生じる。光強度はいずれも分布の中心付近が最も高く、周辺ほど小さい。
幅広導波路では、これらの複数のモードが伝搬するため、モード間干渉が発生する。幅広導波路では、その前後に基本モードのみを伝搬させる光導波路が接続されている場合、基本モードの光強度が高次モードの光強度よりも圧倒的に大きい。このため、基本モードと高次モードとの間でのモード間干渉が光信号透過特性に最も大きく影響する。例えば、基本モードと、光信号が交差点13を通過する際に発生した高次モードとのモード間干渉の結果が、次の交差点14における高次モードの発生に影響する。
すなわち、上記のモード間干渉の結果、交差点14において基本モードと高次モードとが強め合い、光強度分布が光導波路断面内で内側に集中すれば、さらなる高次モードの発生が抑制される。逆に、交差点14において基本モードと高次モードとが弱め合い、光強度分布が光導波路断面内で外側に広がれば、さらなる高次モードが発生しやすくなる。
一方、モード間干渉は、モード間のビート長と交差点間の距離との関係にも影響される。基本モードと高次モードでは光の伝搬速度が異なるため、モード間干渉の結果、それぞれのモードの光信号は、伝搬距離に応じて、周期的に強め合いと弱め合いを繰り返す。この周期がモード間のビート長である。交差点間の距離がビート長の整数倍のとき、基本モードと高次モードの間の干渉は強め合い、交差点間の距離がビート長の半整数倍のとき、基本モードと高次モードの間の干渉は弱め合う。
図1に示した光回路素子100では、リブに接するスラブのシリコンの厚さは、曲がり導波路を含む領域1から領域2に接するスラブ領域16に比べ、交差点13〜15が配置された幅広リブ型光導波路に接するスラブ領域17の方が厚い。一般に、曲がり導波路を含む領域では、光導波路の曲げ半径を小さくして光回路の小型化を図る上で、基板に水平な方向の光閉じ込めを強める方が望ましい。このため、曲がり導波路を含む領域1、2においては、リブに接するスラブは薄い方が望ましい。
これに対して、複数の交差点が配置された直線状の幅広導波路の領域4、5では、交差点を通過する光信号の低損失化及び低偏光依存化のための高次モードの制御のために、リブに接するスラブは厚い方が望ましい。以下では、幅広導波路に接するスラブ領域17のシリコンを厚くすることによる高次モード制御の効果について説明する。
スラブ領域17においてシリコンを厚くすることによる第1の効果は、高次モードの損失が低減されることである。図2〜図6に示されるように、基本モード(図2)ではリブ幅に対して比較的内側に光強度の大部分が分布しているのに対し、高次モード(図3〜図6)では次数が高くなるにつれ、光強度の高い領域がリブ幅の全体(±2.5μm)に広がる。高次モードの光信号がリブ幅全体に広がることにより、光信号の伝搬特性はリブ構造の側壁の影響を受けやすくなる。例えば、光信号が側壁の荒れによる散乱を受けやすくなる。したがって、リブに接するスラブを厚くしてリブ側壁を低くすることは、高次モード損失の低減に有効である。
スラブ領域17においてシリコンを厚くすることによる第2の効果は、モード間干渉に起因する偏光依存性の低減である。図2〜図6に示された各モードは、次数が大きくなると共に伝搬速度が大きくなり、光導波路の実効屈折率は小さくなる。図2〜図6において、実効屈折率の例はneffとして示される。
図7は、リブ形成部のシリコン厚さが1.5μm、リブ幅が5.0μmの場合の、0次モード〜4次モードの実効屈折率を示す図である。モードの次数が高いほど、実効屈折率は低下する。基本モード(0次モード)とn次の高次モードの実効屈折率差はn×(n+2)に反比例する。さらに、この実効屈折率は偏光に依存する。図7は、基板に対してほぼ平行な電界成分を有するTE(Transverse Electric)光と、基板に対してほぼ垂直な電界成分を有するTM(Transverse Magnetic)光とに対する、それぞれの実効屈折率を示す。太い実線及び太い破線はTE光、細い実線及び細い破線はTM光を示す。ここで、いずれの実線もスラブの厚さが0.8μmの場合を示し、いずれの破線もスラブの厚さが0.6μmの場合を示す。
一般に、基本モードと高次モードの実効屈折率の差の逆数がビート長に比例する。一方、図7は、スラブの厚さが0.6μmである場合に比べて、スラブの厚さが0.8μmである場合には、基本モードと高次モード(特に最高次の4次のモード)との間の実効屈折率差の、TE光とTM光との間の相違が小さいことを示す。モード間のビート長は、モード間の実効屈折率差の逆数に比例する。これは、スラブが厚い場合には、スラブが薄い場合と比較して、TE光とTM光でビート長の差が小さくなることを意味する。したがって、スラブを厚くすることで、基本モードと高次モードとのビート長の偏光依存性を低減できる。
以上説明したように、第1の実施形態の光回路素子100では、幅広導波路のスラブを厚くすることで、リブ側壁による高次モードの損失を低減するとともに、高次モードと基本モードとのビート長の偏光依存性も低減される。
すなわち、第1の実施形態の光回路素子100では、スラブを厚くすることで、交差点で発生する高次モードの損失を低減し、低損失化を図ることが可能である。さらに、第1の実施形態の光回路素子100では、スラブを厚くすることで、低損失化のために交差点の間隔の設定をビート長に基づいて行う際の、ビート長の偏光依存性の影響も低減される。
このように、第1の実施形態の光回路素子100は、低損失かつ低偏光依存で光信号を通過させることが可能である。
(第1の実施形態の光回路素子の他の表現)
第1の実施形態の光回路素子100と同様の効果を奏する光回路素子は、以下のようにも記載される。括弧内は、対応する図1の構成要素の参照符号を示す。すなわち、光回路素子は、平板状のスラブ(16、17)及び突起状のリブ(1〜5)を含むコア領域と、コア領域の上下に接して設けられたクラッド領域とで構成されるリブ型光導波路で構成される。そして、光回路素子100が備える第1の光導波路(101)は、第1の光導波路以外の他の光導波路(102〜104)と交差する交差点(13〜15)を複数備え、複数の交差点は1本の直線上に配置される。また、交差点の間の領域の第1の光導波路のコア幅は、交差点の間以外の領域(1、2)の第1の光導波路のコア幅よりも広く、コア幅が互いに異なる第1の光導波路の領域(2、4)の間は、コア幅が単調に変化するテーパ光導波路(3)で接続される。テーパ光導波路(3)の幅は、第1の光導波路の領域(2、4)の間で、なめらかにあるいは直線的に変化してもよい。さらに、コア幅が広い領域の第1の光導波路のスラブ(17)の厚さは、コア幅が広い領域以外の領域の第1の光導波路のスラブ(16)の厚さよりも大きい。このような光回路素子も、スラブを厚くすることで、高次モードの損失及びビート長の偏光依存性が低減されることにより、低損失かつ低偏光依存で光信号を通過させることが可能である。
(第1の実施形態の光回路素子のさらに他の表現)
第1の実施形態の光回路素子100と同様の効果を奏する光回路素子は、さらに、以下のようにも表現できる。括弧内は、対応する図1の構成要素の参照符号を示す。すなわち、光回路素子は、平板状のスラブ(16、17)及び突起状のリブ(1〜5)を含むコア領域と前記コア領域の上下に接して設けられたクラッド領域とで構成されるリブ型光導波路で構成された光回路素子である。光回路素子が備える第1の光導波路(101)は、第1の光導波路以外の他の光導波路(102〜104)と交差する交差点(13〜15)を複数備え、複数の交差点は1本の直線上に配置される。そして、複数の交差点の間に形成された第1の光導波路の領域は、基本モード及び高次モードを含んで光信号が伝搬する第1の領域(4から5まで)として構成される。第1の領域と、第1の光導波路の領域のうち基本モードのみを含んで光信号が伝搬する第2の領域(1、2)と、の間はテーパ光導波路(3)で接続される。さらに、第1の領域のスラブ(17)の厚さは、高次モードにおける損失及び偏光依存性が低減されるように設定される。このような光回路素子も、高次モードの損失及びビート長の偏光依存性が低減されることにより、低損失かつ低偏光依存で光信号を通過させることが可能である。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態では、幅広導波路で接続された3箇所以上の交差点を光信号が伝搬する際の、交差点の間隔(以下、「交差間隔」という。)と光信号の損失との関係が検討される。図1においては、交差点13と交差点14との交差間隔はc1、交差点14と交差点15との交差間隔はc2である。第1の実施形態で説明したように、交差間隔は、基本モードと高次モード(特に導波モードの中で最高次のモード)とのビート長の整数倍であることが、低損失化の観点からは望ましい。交差間隔がビート長の整数倍である場合には、複数の交差点を通過する光信号は、ある交差点で生じた高次モードが、次の交差点で基本モードと強め合うように干渉する。その結果、次の交差点におけるさらなる高次モード発生が抑制される。
しかし、特定の波長あるいは特定の寸法において、光導波路断面におけるモード間の関係が上述した低損失化に適する関係であったとしても、光信号の伝搬条件が上記の低損失化に適する関係からずれる場合がある。例えば、光信号の伝搬条件は、光信号の波長の変化や光導波路の構造のゆらぎによっても変動する。そして、交差間隔を全て等しくした場合には、このようなずれが生じた場合の損失増加が大きくなる恐れがある。そこで、第2の実施形態では、交差間隔が全て同一とはならないように設定された場合の、光回路素子の損失のシミュレーション結果について説明する。
第1の実施形態の図1に示された光回路素子100は、3個所の交差点13〜15が直線状に配置され、隣接する交差点の間の2つの区間が幅広導波路で接続された光回路素子であった。第2の実施形態で検討される光回路素子は、交差点の数が図1の光回路素子100よりも多い。第2の実施形態の光回路素子では、7個所の交差点が直線状に配置され、隣接する交差点の間の6つの区間が幅広導波路で接続される。図8及び図9は、第2の実施形態の光回路素子の損失のシミュレーション結果の例を示す図である。図8の横軸は交差間隔、縦軸は光回路素子の損失を示す。図8及び図9において、太線はTM光、細線はTE光を示す。光信号の波長に関しては、TE光及びTM光のいずれに関しても、実線は1570nm、一点鎖線は1590nm、破線は1610nmを示す。
交差間隔の範囲は、光信号のモード間のビート長から定められてもよい。第2の実施形態では、基本モードと4次の高次モードとのビート長Lbを約20μmとし、これに対して、交差間隔は、基準長L0から一定の範囲(±Lb/4=±5μm)内に設定された。図9の横軸の交差間隔は、基準長L0の値を示す。
図8は、交差間隔を全て同一(等間隔)としたまま、交差間隔を変化させた場合の光回路素子の損失のシミュレーション結果の例を示す。図8には、交差間隔が約20μm変動する毎に、光信号の損失の周期的な変動が示されている。図9は、6つの区間の交差間隔を±5μmの範囲で異なる値に設定した場合(不等間隔)の光回路素子の損失のシミュレーション結果の例を示す。シミュレーションでは、7ヶ所の交差(順にX1、X2、X3、X4、X5、X6、X7とする)における6つの区間(X1〜X2間、X2〜X3間、X3〜X4間、X4〜X5間、X5〜X6間、X6〜X7間)の長さを、基準長L0の値を用いて以下のように変化させた。
X1〜X2間:L0+5(μm)
X2〜X3間:L0−5(μm)
X3〜X4間:L0
X4〜X5間:L0+5(μm)
X5〜X6間:L0−5(μm)
X6〜X7間:L0
図8と比較して、図9では損失の変動の幅が小さいことが示される。すなわち、図9は、交差間隔を全て同一とはしないことで、光回路素子の損失の交差間隔依存性が緩和されることを示す。
ここで、(基本モードと4次の高次モードとのビート長)=(1/8)×(基本モードと1次の高次モードとのビート長)という関係がある。したがって、基本モードと1次の高次モードとのビート長をLπで表せば、交差間隔の設定範囲はL0±Lπ/32で表される。
第2の実施形態では、交差間隔が全て同一とはならないように設定された光回路素子について説明した。すなわち、第2の実施形態の光回路素子では、少なくとも1つの交差間隔が、他の交差間隔とは異なる値に設定される。交差間隔がこのように設定されることで、交差間隔が全て同一となるように設定された場合と比較して光回路素子の損失の交差間隔への依存性が低減される。そして、第2の実施形態の光回路素子においても、第1の実施形態で説明したように、リブに接するスラブを厚くすることで、偏光依存性が小さいまま、光回路素子の一層の低損失化を行うことも可能である。
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態に限定されない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、以上の実施形態では、光回路素子がシリコンを導波路のコアとし石英ガラスをクラッドとする構成である場合について説明した。しかし、コアとクラッドとを形成する材料としては、石英ガラス、化合物半導体あるいは有機材料などが用いられてもよい。すなわち、第1及び第2の実施形態の光回路素子の構成材料は、実施形態に限定されない。
さらに、実施形態で説明した光回路素子は、交差点を持つ光導波路デバイスに広く適用できる。例えば、実施形態で説明した光回路素子は、90度ハイブリッドミキサ、光変調器、光マトリクススイッチ、リング変調器に適用されてもよい。
この出願は、2014年9月22日に出願された日本出願特願2014−192232を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
100 光回路素子
101〜104 第1〜第4の光導波路
1、2 第1の光導波路101上の領域
3 第1の光導波路101上の領域(テーパ光導波路)
4、5 第1の光導波路101上の領域(幅広導波路)
7、8 第2の光導波路102上の領域
9、10 第3の光導波路103上の領域
11、12 第4の光導波路104上の領域
13〜15 交差点
16、17 スラブ
21、24 シリコン基板
22、25、27 石英の光導波路クラッド
23、26 シリコンの光導波路コア
28 シリコンのリブ構造
51、55 光導波路コアの入射側
54、58 光導波路コアの出射側
52、53、56、57 テーパ部
59 交差点
60 基本モード
61、63、65、67 光導波路の入射側
62、64、66、68 光導波路の出射側
69〜71 交差点

Claims (7)

  1. 平板状のスラブ及び突起状のリブを含むコア領域と前記コア領域の上下に接して設けられたクラッド領域とで構成されるリブ型光導波路で構成された光回路素子であって、
    前記光回路素子が備える第1の光導波路は、前記第1の光導波路以外の他の光導波路と交差する交差点を複数備え、
    前記複数の交差点は1本の直線上に配置され、
    前記交差点の間の領域の前記第1の光導波路のコア幅は、前記交差点の間以外の領域の前記第1の光導波路のコア幅よりも広く、
    前記コア幅が互いに異なる前記第1の光導波路の領域の間は、前記コア幅が単調に変化するテーパ光導波路で接続され、
    前記コア幅が広い領域の前記第1の光導波路の前記スラブの厚さは、前記コア幅が広い領域以外の領域の前記第1の光導波路の前記スラブの厚さよりも大きい、
    ことを特徴とする光回路素子。
  2. 前記交差点が前記第1の光導波路上に3箇所以上配置され、かつ、隣接する前記交差点の間隔の全てが同一ではないことを特徴とする請求項1に記載された光回路素子。
  3. 前記交差点の間隔を前記同一ではない値に設定する範囲を、基準長L0と前記コア幅が広い領域の前記第1の導波路の構造から定まる基本モードと1次の高次モードとのビート長Lπとを用いてL0±Lπ/32としたことを特徴とする請求項2に記載された光回路素子。
  4. 平板状のスラブ及び突起状のリブを含むコア領域と前記コア領域の上下に接して設けられたクラッド領域とで構成されるリブ型光導波路で構成された光回路素子であって、
    前記光回路素子が備える第1の光導波路は、前記第1の光導波路以外の他の光導波路と交差する交差点を複数備え、
    前記複数の交差点は1本の直線上に配置され、
    前記複数の交差点の間に形成された前記第1の光導波路の領域は、基本モード及び高次モードを含んで光信号が伝搬する第1の領域として構成され、
    前記第1の領域と、前記第1の光導波路の領域のうち基本モードのみを含んで前記光信号が伝搬する第2の領域と、の間はテーパ光導波路で接続され、
    前記第1の領域の前記スラブの厚さは、前記第1の領域の前記スラブの厚さが前記第2の領域の前記スラブの厚さと同様である場合と比較して、高次モードにおける損失及び基本モードと高次モードとのビート長の偏光依存性が低減されるように設定される、
    ことを特徴とする光回路素子。
  5. 前記第1の領域の前記スラブの厚さは、前記第2の領域の前記スラブの厚さよりも大きいことを特徴とする、請求項4に記載された光回路素子。
  6. 平板状のスラブ及び突起状のリブを含むコア領域と前記コア領域の上下に接して設けられたクラッド領域とで構成される光回路素子の構成方法であって、
    前記光回路素子が備える第1の光導波路に、前記第1の光導波路以外の他の光導波路と交差する交差点を複数配置し、
    前記複数の交差点を1本の直線上に配置し、
    前記複数の交差点の間の領域の前記第1の光導波路のコア幅を、前記交差点の間以外の領域の前記第1の光導波路のコア幅よりも広く設定し、
    前記コア幅が互いに異なる前記第1の光導波路の領域の間を、前記コア幅が単調に変化するテーパ光導波路で接続し、
    前記コア幅が広い領域の前記第1の光導波路の前記スラブの厚さを、前記コア幅が広い領域以外の領域の前記第1の光導波路の前記スラブの厚さに比べて大きく設定する、
    ことを特徴とする光回路素子の構成方法。
  7. 平板状のスラブ及び突起状のリブを含むコア領域と前記コア領域の上下に接して設けられたクラッド領域とで構成される光回路素子の構成方法であって、
    前記光回路素子が備える第1の光導波路に、前記第1の光導波路以外の他の光導波路と交差する交差点を複数配置し、
    前記複数の交差点を1本の直線上に配置し、
    前記複数の交差点の間に形成された前記第1の光導波路の領域を、基本モード及び高次モードを含んで光信号が伝搬する第1の領域として構成し、
    前記第1の領域と、前記第1の光導波路の領域のうち基本モードのみを含んで前記光信号が伝搬する第2の領域と、の間をテーパ光導波路で接続し、
    前記第1の領域の前記スラブの厚さを、前記第1の領域の前記スラブの厚さが前記第2の領域の前記スラブの厚さと同様である場合と比較して、前記コア領域の構造不均一及び基本モードと高次モードとのビート長の偏光依存性を低減するように設定する、
    ことを特徴とする光回路素子の構成方法。
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