JP6629143B2 - 変速制御装置 - Google Patents

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本発明は、車両が搭載する無段変速機の動作を制御する変速制御装置に関する。
無段変速機(Continuously Variable Transmission:CVT)は、変速ギアを用いることなく無段階で変速比を変更することができる変速機である。CVTの1構成例として、2つのプーリ(滑車)にベルトを通し、プーリの径を変化させることにより連続的に変速比を変化させるものがある。
下記特許文献1は、このようなベルト式CVTの1構成例を開示している。同文献においては、モータ40がストローク機構(ボールねじ機構)14を回転させることによってプライマリプーリ11をストローク機構14の軸方向に移動させる。これによりプライマリプーリ11とVベルト15が接触する部分、すなわちプーリ溝幅(ベルト巻き掛け径)が変化するので、プライマリプーリ11の径を連続的に変化させることができる。
特開2004−116536号公報
上記特許文献1のようにモータを用いて変速比を制御する無段変速機においては、目標変速比と実変速比との間の差分が小さくなると、モータはフィードバック制御によって動力を伝達する方向を正転方向と逆転方向との間で切り替えながら、両者の間の差分が所定範囲内に収まるように微調整を繰り返す。このとき、プーリ径を変化させるための回転推進機構もモータの正転と逆転の切り替えにともなって正転と逆転を小刻みに繰り返すことになる。
回転推進機構は、例えば歯車が互いに噛み合うことによって動力を伝えるように構成されている。回転推進機構が正転と逆転を小刻みに繰り返すと、歯車が噛み合っている部分において歯面が衝突し合い、騒音や歯面損傷につながるおそれがある。歯車以外の構造を用いる回転推進機構においても、同様の課題が発生する可能性がある。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、無段変速機が備える回転推進機構から発生する騒音や回転推進機構の損傷を抑制することができる変速制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る変速制御装置は、実変速比と目標変速比との間の差分が所定範囲内に収まる状態が継続する条件が成立した場合は、モータに対して供給する駆動電流を、前記条件が成立していない場合よりも小さくする。
本発明に係る変速制御装置によれば、実変速比と目標変速比との間の差分が小さいときはモータの駆動を抑制することにより、回転推進機構の歯面衝突などに起因する騒音や損傷を抑制することができる。
TCU100と変速機200の構成図である。 TCU100の動作を説明するフローチャートである。 車両の各部の動作を説明するタイムチャートである。
図1は、本発明に係る変速制御装置(Transmission Control Unit:TCU)100と変速機200の構成図である。TCU100は、変速機200の動作を制御する車載制御装置である。TCU100は、後述するモータ230を駆動制御する制御部110を備える。
エンジン210が発生させる動力は、トルクコンバータ220を介して回転軸に対して伝達される。トルクコンバータ220は、例えば変速機200を搭載する車両の発進や急加速などにおいてトルクを増幅させる装置である。回転軸に対して伝達された動力は、プライマリプーリ251、ベルト260、セカンダリプーリ252を介して車輪側に伝達される。前後進切替機構270は、前後進を切り替える装置である。
回転推進機構241と242は、例えばボールねじなどのように、回転することによって軸方向(図面の左右方向)に移動する構造を備える機構である。モータ230は、回転推進機構241に対して回転力を与える。これにより回転推進機構241が回転し、プライマリプーリ251を軸方向に移動させる。プライマリプーリ251が軸方向に移動すると、プライマリプーリ251とベルト260が接触する部分、すなわちプーリ溝幅(ベルト巻き掛け径)が変化する。これにより、プライマリプーリ251の径が変化したのと同等の効果を発揮するので、変速比を変化させることができる。
エンジン210が発生させる動力は、車輪に対して伝達される過程において、変速比に応じて減少される。すなわち、変速比が高いときはエンジン210が発生させる動力が大きく減少して車輪に伝わり、変速比が小さいときはエンジン210が発生させる動力があまり損なわれずに車輪に伝わる。以下の説明において変速比について言及するときは、これを前提とする。
TCU100は一般に、変速機200の実変速比が目標変速比に近づくように、モータ230を制御する。両者の間の差分が小さくなると、実変速比を目標変速比の近傍に維持するため、例えばフィードバック制御によりモータ230を正転方向と逆転方向との間で切り替えながら微調整する。このとき、回転推進機構241もモータ230の回転切替にともなって正転と逆転を小刻みに繰り返すことになるので、歯面が頻繁に接触して騒音や損傷を生じる可能性がある。
そこで本発明においては、実変速比を目標変速比との間の差分が小さくなった状態が継続する所定の条件が成立したときは、モータ230の駆動を通常時(その条件が成立していないとき)よりも小さくすることとした。例えばモータ230に対して供給する駆動電流を0(または通常時よりも小さい値)とする。これにより、少なくとも上記のようにモータ230の回転変化にともなって回転推進機構241の歯面が頻繁に接触することを抑制できる。
また、モータ230を停止させているとき、ベルト260から生じる反力が回転推進機構241に対して継続的に伝達されるので、一定方向の反力が継続的に伝達される限りにおいては、回転推進機構241が正転と逆転を繰り返すことはない。したがってその観点においても、歯面接触による騒音や損傷を抑制することができる。
回転推進機構242は回転推進機構241と連動して動作するので、回転推進機構242についても同様の効果を発揮することができる。
図2は、TCU100の動作を説明するフローチャートである。以下図2の各ステップについて説明する。
(図2:ステップS101)
制御部110は、変速機200を搭載する車両の車速が0(すなわち車両が停止している)であるか否かを判定する。車速が0である場合はステップS107へ進み、それ以外であればステップS102へ進む。車速が0であるか否かは、例えば車輪に取り付けられた回転数センサなどを介して取得することができる。
(図2:ステップS101:補足)
車両が停止するとき、変速機200は高速走行状態(変速比が小さい状態)から低速走行状態(変速比が大きい状態)へ次第に移行し、最終的に変速比が最大またはこれに近い状態で停止すると考えられる。そうすると、次回車両を発進させるときは変速機200が 低速走行状態から開始することになるので、モータ230によって回転推進機構241を回転させる必要はない。したがって本ステップが成立する場合は、後述のステップS107においてモータ230の動作量を通常時よりも減少させる(例えば駆動電流を0にする)こととした。
(図2:ステップS102)
制御部110は、変速機200の実変速比が、変速機200によって制御可能な最小値である(高速走行状態)か否かを判定する。変速比が最小値である場合はステップS103へ進み、それ以外であればステップS104へ進む。
(図2:ステップS102:補足)
本ステップにおける最小値とは、理論的な最小値ではなく、変速機200が実際に制御可能な変速比範囲における最小値である。TCU100が把握することができる実変速比の値はセンサなどの検出ずれによって微小変動するので、多少のずれは許容することとする。例えばTCU100が把握した実変速比が最小値から所定範囲内にある場合は、最小変速比として取り扱うこととする。したがってここでいう最小値は、最大値と最小値との間の中間値(平均値)よりも小さい値である。
(図2:ステップS103)
制御部110は、車両のブレーキが操作されていないか否かを判定する。ブレーキが操作されていない場合はステップS107へ進み、それ以外であればステップS108へ進む。ブレーキが操作されているか否かは、例えばブレーキ開度センサから検出値を取得することにより判定できる。アクセルについても同様である。
(図2:ステップS102〜S103:補足)
実変速比が最小であるとき、車両は高速走行状態にある。この状態においてブレーキが操作されていないのであれば、車両は高速走行状態で安定していると考えられる。かかる場合には目標変速比と実変速比がほぼ一致しており変速比を変更する必要はないので、モータ230の動作量を通常時よりも減少させることとした。
(図2:ステップS104)
制御部110は、変速機200の実変速比が、変速機200によって制御可能な最大値である(低速走行状態)か否かを判定する。変速比が最大値である場合はステップS105へ進み、それ以外であればステップS108へ進む。
(図2:ステップS104:補足)
本ステップにおける最大値とは、理論的な最大値ではなく、変速機200が実際に制御可能な変速比範囲における最大値である。ステップS102と同様に多少のずれは許容する。したがってここでいう最大値は、最大値と最小値との間の中間値(平均値)よりも大きい値である。
(図2:ステップS105)
制御部110は、車両のブレーキが操作されているか否かを判定する。ブレーキが操作されている場合はステップS107へ進み、それ以外であればステップS106へ進む。
(図2:ステップS104〜S105:補足)
実変速比が最大であるとき、車両は低速走行状態にある。この状態においてブレーキが操作された場合、車両は停止状態に向かっていると考えられるので、変速比がここから高速走行側に変化することはないと想定される。かかる場合には目標変速比と実変速比がほぼ一致しておりモータ230を動作させる必要性は小さいので、モータ230の動作量を通常時よりも減少させることにした。
(図2:ステップS106)
制御部110は、車両のアクセルが操作されていないか否かを判定する。アクセルが操作されていない場合はステップS107へ進み、それ以外であればステップS108へ進む。本ステップに到達するときはブレーキが操作されていないので、その上でさらにアクセルが操作されていないのであれば、車両は惰性走行状態にあると考えられる。かかる場合は目標変速比と実変速比がほぼ一致しており変速比を変更する必要はないので、モータ230の動作量を通常時よりも減少させることとした。
(図2:ステップS106:補足)
アクセルとブレーキがともにOFFであるときは一般に、車両が惰性走行状態であると考えられる。そこで変速比が最大/最小いずれでもない場合であっても、ブレーキとアクセルがともにOFFであれば、ステップS106〜S107に至る過程と同様の処理を実施してもよい。
(図2:ステップS107)
制御部110は、モータ230の動作量を通常時よりも減少させる。具体的には、モータ230の駆動電流を通常時よりも減少させる(例えば0にする)。ここでいう通常時とは、本ステップに到達する前の各ステップにおける条件が成立していない場合である。必ずしも駆動電流を0にする必要はなく、少なくとも通常時よりも減少させることにより回転推進機構241の小刻みな回転切替が抑制されるので、相応の効果を発揮することができる。
(図2:ステップS108)
制御部110は、モータ230を通常制御する。通常制御とは、ステップS107で説明した通常時における制御のことである。
図3は、車両の各部の動作を説明するタイムチャートである。以下の期間はモータ230の駆動電流が少なくなるように制御されている。(a)車速が0である期間:ステップS101、(b)変速比が最小かつブレーキがOFFである期間:ステップS102〜S103、(c)変速比が最大かつブレーキがONである期間:ステップS104〜S105。
<本発明のまとめ>
本発明に係るTCU100は、目標変速比と実変速比がほぼ一致する状態が継続する条件が成立している場合は、モータ230の駆動電流を通常時よりも小さくする。これにより、モータ230が目標変速比を維持するため回転切替を繰り返すことがなくなり、回転推進機構241が小刻みに回転切替することもなくなるので、回転推進機構241の歯面衝突によって生じる騒音や損傷を抑制することができる。
<本発明の変形例について>
モータ230を停止させているとき、ベルト260から生じる反力がモータ230に対して伝達される場合がある。このときモータ230を静止状態に維持したいのであれば、適当な静止手段を設けることもできる。例えばモータ230に電磁ブレーキなどを設けることが考えられる。その他適当な静止手段を用いてもよい。
変速機200の変速比が最大である(低速走行状態)場合、運転者の操作に対する追従性はさほど厳密でなくともよいと考えられる。低速走行状態における車速変化はいずれにせよ僅かだからである。かかる場合は変速比を即座に変更する要求は小さいので、モータ230をある程度の期間は停止させておいても支障ない。そこで、変速比が最大から最小に向かって変化し始めた時点からある程度の期間は、モータ230の駆動電流を通常時よりも少なくすることもできる。
制御部110は、その機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成することもできるし、同等の機能を実装したソフトウェアをCPU(Central Processing Unit)などの演算装置が実行することによって構成することもできる。
100:TCU、110:制御部、200:変速機、210:エンジン、220:トルクコンバータ、230:モータ、241〜242:回転推進機構、251:プライマリプーリ、252:セカンダリプーリ、260:ベルト、270:前後進切替機構。

Claims (1)

  1. 車両が搭載する無段変速機の動作を制御する変速制御装置であって、
    前記無段変速機は、モータを用いて回転推進機構を駆動することによりプーリの外径を変化させて変速比を制御するように構成されており、
    前記変速制御装置は、前記モータを制御することにより前記無段変速機の実変速比を目標変速比に近づけるよう制御する制御部を備え、
    前記制御部は、前記実変速比と前記目標変速比との間の差分が所定範囲内に収まる状態が継続する条件が成立した場合は、前記モータに対して供給する駆動電流を、前記条件が成立していない場合よりも小さくし、
    前記無段変速機は、前記車両の動力源から供給される回転力を前記変速比にしたがって減少させた上で前記車両の車輪へ伝達するように構成されており、
    前記制御部は、前記変速比が前記無段変速機によって制御可能な最大値である状態で前記車両が走行しておりかつ前記車両のアクセルもブレーキも操作されていないか否かを、前記条件として判定し、その条件が成立した第1状態においては、成立していない第2状態よりも前記駆動電流を小さくする
    ことを特徴とする変速制御装置。
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