JP6628449B1 - 閉塞性気道疾患の抑制又は軽減のための組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】閉塞性気道疾患の抑制又は軽減を可能にする物質を提供することを課題とする。【解決手段】水素を有効成分として含むことを特徴とする、被験体において、閉塞性細気管支炎及び慢性気管支炎からなる群から選択される閉塞性気道疾患を抑制又は軽減するための組成物、並びに、この組成物を、上記閉塞性気道疾患を有する被験体に投与することを含む、被験体において閉塞性気道疾患を抑制又は軽減する方法。【選択図】図1

Description

本発明は、閉塞性気道疾患を抑制又は軽減するための組成物に関する。
本発明はまた、上記組成物を被験体に投与することを含む、被験体において閉塞性気道疾患を抑制又は軽減する方法に関する。
本発明において、閉塞性気道疾患は、閉塞性細気管支炎又は慢性気管支炎のいずれかである。
閉塞性細気管支炎は、治療法が確立されていない難病指定の疾患であり、発症に免疫学的異常が関係しており、従来の薬剤による気管支拡張や炎症を抑制することが難しいと云われているだけに、この疾患に対する新しい療法が求められている。
また、慢性気管支炎は、主に喫煙、有害物質などが原因となって発症するが、気道壁に炎症が起こり、慢性化によって気道が閉塞する(すなわち、狭くなる)ようになり、咳や痰が長期間にわたり続く疾患であり、重症化すると肺炎などのために死に至らしめる。
特許文献1には、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や気管支炎の治療のための薬剤を製造するための、水素ガス含有組成物又はガス混合物の使用が記載されている。しかしながら、当該文献には、COPD及び気管支炎に対する水素ガス含有組成物又はガス混合物による治療効果に関するデータはまったく開示されていない。
非特許文献1には、タバコの煙で誘導されたモデルラットにおいて、水素ガスの吸入がCOPD様肺疾患の発症を抑制したことが記載されている。しかしながら、当該文献には、COPDに対する水素の改善効果に関するデータはまったく開示されていない。
水素は、活性酸素種(ROS)に起因する生体内酸化ストレスによる障害を防御すると云われており、疾患と酸化ストレスの関係に関する文献が存在する(非特許文献2〜4)。
特表2000−517311号公報
X Liu et al.,Int.J.COPD 2017;12:1309−1324 太田成男,日本生化学会誌87(1):82−90(2015) 赤池孝章ら編集,実験医学36(5)(増刊):161−170(2018) 吉川敏一監修,改訂第2版 酸化ストレスの医学,第169〜175,389〜395頁(2014)
上記の背景技術に記載したように、閉塞性細気管支炎又は慢性気管支炎からなる閉塞性気道疾患に対する水素の改善効果(例えば、気管支狭窄の改善)は確認されていない。本発明の目的は、被験体での上記閉塞性気道疾患の抑制又は軽減である。
本発明者らは、今回、水素が、閉塞性細気管支炎又は慢性気管支炎から選択される閉塞性気道疾患の症状(例えば、気道の炎症及び狭窄)の改善を可能にすることを見出した。この研究を通して、本発明者らは、水素が、制御性T細胞の誘導を高め、免疫細胞などが放出するサイトカインによる気道の炎症を抑制することを見出した。
従って、本発明は、以下の特徴を包含する。
(1)水素を有効成分として含む、被験体において、閉塞性細気管支炎及び慢性気管支炎からなる群から選択される閉塞性気道疾患を抑制又は軽減するための組成物。
(2)被験体に前記組成物を投与したとき、水素を投与しない対照と比較して、より高いFoxP3の発現を誘導する、上記(1)に記載の組成物。
(3)閉塞性気道疾患による気管支の狭窄を改善する、上記(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)上記組成物が水素ガス含有気体及び/又は水素溶存液体の形態である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)上記水素ガス含有気体の水素濃度が、0.5〜18.5体積%である、上記(4)に記載の組成物。
(6)上記水素溶存液体の水素濃度が、1〜10ppmである、上記(4)に記載の組成物。
(7)上記組成物が、経肺投与、静脈内投与又は経口投与によって被験体に投与される、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)上記経肺投与が、大気圧環境下で、又は1.02〜7.0気圧の高気圧環境下で行われる、上記(7)に記載の組成物。
(9)上記組成物が、前記被験体への投与時に水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置を用いてその場で作製される、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の組成物。
(10)上記被験体がヒトである、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の組成物。
(11)被験体に、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、被験体において、閉塞性細気管支炎及び慢性気管支炎からなる群から選択される閉塞性気道疾患を抑制又は軽減する方法。
本発明により、閉塞性細気管支炎又は慢性気管支炎である閉塞性気道疾患を抑制又は軽減することが可能である。とりわけ閉塞性細気管支炎は、難病であるため確立された治療法がなく、従来の気管支拡張剤などでは効果がないことが知られているが、本発明による水素療法が気管内腔の狭窄の軽減を可能にする。
この図は、マウス閉塞性気道疾患モデルのコントロール群(n=6、図1A)及び水素水投与群(n=6、図1B)の皮下移植2週間後の気管移植片について抗炎症作用の程度を気管内腔の狭窄状態によって比較した組織染色画像である。
本発明をさらに詳細に説明する。
1.閉塞性気道疾患
本明細書中「閉塞性気道疾患」は、閉塞性細気管支炎又は慢性気管支炎のいずれかを指す。
閉塞性細気管支炎は、末梢気道である細気管支の不可逆的閉塞を来すことにより呼吸不全を呈する疾患であり、我国では指定難病である。原因は不明であるが、免疫学的異常を背景に発症することが知られており、例えばマイコプラズマやウイルスによる感染、自己免疫疾患、移植医療などの誘因により発症することがある。病変は不可逆的であり予後不良である。確立された治療法はなく、対象療法的に細気管支の炎症を抑制したり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に準じた治療が行われる。
慢性気管支炎は、気管支に慢性的に起こった疾患であり、原因には喫煙、感染症、副鼻腔気管支症候群、びまん性汎細気管支炎などがある。症状として咳や痰などの呼吸器症状が数週間から数か月にわたって続き、さらにまた微熱があり、肺炎を起こしやすい。治療には、気管支拡張剤(例えばテオフィリン製剤、β2刺激薬など)、抗炎症剤(例えばステロイド薬など)、去痰薬などが使用される。
上記のいずれの疾患も気管支の閉塞、すなわち狭窄を伴う気管支炎症であり、炎症部位にT細胞などの免疫細胞が集積し、気管支上皮細胞が傷害され気管支炎症が進行し、気管支が閉塞されるようになると推定される。
2.閉塞性気道疾患の抑制又は軽減のための組成物
本発明は、第1の態様により、水素を有効成分として含む、被験体において、閉塞性細気管支炎及び慢性気管支炎からなる群から選択される閉塞性気道疾患を抑制又は軽減するための組成物を提供する。
本明細書中、本発明の組成物の有効成分である「水素」は分子状水素(すなわち、気体状水素)であり、特に断らない限り、単に「水素」又は「水素ガス」と称する。また、本明細書中で使用する用語「水素」は、分子式でH、D(重水素)、HD(重水素化水素)、又はそれらの混合ガスを指す。Dは、高価であるが、Hよりスーパーオキシド消去作用が強いことが知られている。本発明で使用可能な水素は、H、D(重水素)、HD(重水素化水素)、又はそれらの混合ガスであり、好ましくはHであり、或いはHに代えて、又はHと混合して、D及び/又はHDを使用してもよい。
本発明の組成物の好ましい形態は、水素ガス含有気体及び/又は水素溶存液体の形態である。
水素ガス含有気体は、好ましくは、水素ガスを含む空気又は、水素ガスと酸素ガスを含む混合ガスである。水素ガス含有気体の水素ガスの濃度は、ゼロ(0)より大きく、かつ18.5体積%以下、例えば0.5〜18.5体積%であり、好ましくは1〜10体積%、例えば2〜8体積%、3〜7体積%、3〜6体積%、4〜6体積%、4〜5体積%、5〜10体積%、5〜8体積%、6〜8体積%、6〜7体積%など、より好ましくは5〜8体積%、例えば6〜8体積%、6〜7体積%などである。本発明では、爆発限界以下で水素ガス濃度が高いほど閉塞性気道疾患の抑制又は軽減効果が大きい傾向がある。
水素は可燃性かつ爆発性ガスであるため、閉塞性気道疾患の抑制又は軽減においては、ヒトなどの被験体に安全な条件で本発明の組成物に水素を含有させて被験体に投与することが好ましい。
水素ガス以外の気体が空気であるときには、空気の濃度は、例えば81.5〜99.5体積%の範囲である。
水素ガス以外の気体が酸素ガスを含む気体であるときには、酸素ガスの濃度は、例えば21〜99.5体積%の範囲である。
その他の主気体として例えば窒素ガスを含有させることができる。空気中に含有する気体である二酸化炭素などのガスを、空気中の存在量程度の量で含有させてもよい。
水素溶存液体は、具体的には、水素ガスを溶存させた水性液体であり、ここで、水性液体は、非限定的に、例えば水(例えば精製水、滅菌水)、生理食塩水、緩衝液(例えばpH4〜7.4の緩衝液)、エタノール含有水(例えばエタノール含有量0.1〜2体積%)、点滴液、輸液、注射溶液、飲料などである。水素溶存液体の水素濃度は、非限定的に、例えば1〜10ppm、好ましくは1.2〜8ppm、例えば1.5〜7ppm、1.5〜5ppm、2〜8ppm、2〜7ppm、2〜6ppm、2〜5ppm、3〜8ppm、3〜7ppm、4〜8ppm、5〜8ppmなど、より好ましくは3〜8ppm、例えば3〜7ppm、4〜8ppm、5〜8ppmなどである。本発明では、爆発限界以下で溶存する水素濃度が高いほど閉塞性気道疾患の抑制又は軽減効果が大きい傾向がある。
水素溶存液体には、閉塞性気道疾患を治療するための医薬品を添加してもよい。或いは、当該医薬品は、水素溶存液体又は水素ガス含有気体の投与と別に投与してもよい。そのような医薬品の例は、非限定的に、気管支拡張剤(例えばテオフィリン製剤、β2刺激薬、など)、抗炎症剤(例えばステロイド薬、非ステロイド性抗炎症薬など)などを含む。
水素ガス含有気体又は水素溶存液体は、所定の水素ガス濃度になるように配合されたのち、例えば耐圧性の容器(例えば、ステンレスボンベ、アルミ缶、好ましくは内側をアルミフィルムでラミネーションした、耐圧性プラスチックボトル(例えば耐圧性ペットボトル)及びプラスチックバッグ、アルミバッグ、等)に充填される。アルミは水素分子を透過させ難いという性質を有している。或いは、水素ガス含有気体又は水素溶存液体は、投与時に、水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置、例えば、公知のもしくは市販の水素ガス供給装置(水素ガス含有気体の生成用装置)、水素添加器具(水素水生成用装置)、非破壊的水素含有器(例えば点滴液などの生体適用液バッグ内部へ非破壊的に水素ガスを添加するための装置)などの装置を用いてその場で作製されてもよい。
水素ガス供給装置は、水素発生剤(例えば金属アルミニウム、水素化マグネシウム、等)と水の反応により発生する水素ガスを、希釈用ガス(例えば空気、酸素、等)と所定の比率で混合することを可能にする(日本国特許第5228142号公報、等)。あるいは、水の電気分解を利用して発生した水素ガスを、酸素、空気などの希釈用ガスと混合する(日本国特許第5502973号公報、日本国特許第5900688号公報、等)。これによって0.5〜18.5体積%の範囲内の水素濃度の水素ガス含有気体を調製することができる。
水素添加器具は、水素発生剤とpH調整剤を用いて水素を発生し、水などの生体適用液に溶存させる装置である(日本国特許第4756102号公報、日本国特許第4652479号公報、日本国特許第4950352号公報、日本国特許第6159462号公報、日本国特許第6170605号公報、特開2017−104842号公報、等)。水素発生剤とpH調整剤の組み合わせは、例えば、金属マグネシウムと強酸性イオン交換樹脂もしくは有機酸(例えばリンゴ酸、クエン酸、等)、金属アルミニウム末と水酸化カルシウム粉末、などである。これによって1〜10ppm程度の溶存水素濃度の水素溶存液体を調製できる(例えば、商品名「セブンウォーター」(クオシア)、等)。
非破壊的水素含有器は、点滴液などの市販の生体適用液(例えば、ポリエチレン製バッグなどの水素透過性プラスチックバッグに封入されている。)に水素分子をパッケージの外側から添加する装置又は器具であり、例えばMiZ(株)から市販されている(http://www.e−miz.co.jp/technology.html)。この装置は、生体適用液を含むバッグを飽和水素水に浸漬することによってバッグ内に水素を透過し濃度平衡に達するまで無菌的に水素を生体適用液に溶解させることができる。当該装置は、例えば電解槽と水槽から構成され、水槽内の水が電解槽と水槽を循環し電解により水素を生成することができる。或いは、簡易型の使い捨て器具は同様の目的で使用することができる(特開2016−112562号公報、等)。この器具は、アルミバッグの中に生体適用液含有プラスチックバッグ(水素透過性バッグ、例えばポリエチレン製バッグ)と水素発生剤(例えば、金属カルシウム、金属マグネシウム/陽イオン交換樹脂、等)を内蔵しており、水素発生剤は例えば不織布(例えば水蒸気透過性不織布)に包まれている。不織布に包まれた水素発生剤を水蒸気などの少量の水で濡らすことによって発生した水素がプラスチックバッグを透過し生体適用液に非破壊的かつ無菌的に溶解される。
上記の装置又は器具を用いて調製された、水素ガス含有気体や水素飽和生体適用液(例えば水(例えば精製水、滅菌水)、生理食塩水、点滴液、等)は、閉塞性気道疾患を有する被験体に経口的に又は非経口的に投与されうる。
本発明の組成物の別の形態には、被験体に経口投与(もしくは摂取)するように調製された、消化管内で水素の発生を可能にする水素発生剤を含有する剤型(例えば、錠剤、カプセル剤、等)が含まれる。水素発生剤は、例えば食品もしくは食品添加物として承認されている成分によって構成されることが好ましい。
3.閉塞性気道疾患を抑制又は軽減する方法
本発明は、第2の態様により、被験体に、本発明の上記の水素含有組成物を投与することを含む、被験体において、閉塞性細気管支炎及び慢性気管支炎からなる群から選択される閉塞性気道疾患を抑制又は軽減する方法を提供する。
後述の実施例に記載されるように、被験体に本発明の水素含有組成物を投与したとき、水素を投与しない対照(コントロール)と比較して、より高いFoxP3の発現を誘導する。
本明細書中「対照(群)」もしくは「コントロール(群)」は、閉塞性気道疾患を有する被験体において水素を投与しない群を指す。
FoxP3は、免疫応答を抑制する機能を有する制御性T(Treg)細胞の遺伝子発現を制御していることが知られている。本発明では、閉塞性気道疾患を有する被験体に水素を投与するとき、対照群よりもFOXP3陽性Treg細胞が増加することから、水素によって免疫機能が調整されることが示唆される。
さらにまた、閉塞性細気管支炎では、気管支上皮にナチュラルキラー(NK)細胞が集積することによって気管支上皮細胞が傷害され、当該疾患の進行を高めることが提案されている(川上徹、東北大学博士論文、http://hdl.handle.net/10097/00122086)。NK細胞は、癌細胞、ウイルス感染細胞、ダメージを受けた細胞などの細胞を傷害し排除する。また、このときNK細胞からサイトカインが放出されることによって活性酸素などの物質が産生され細胞傷害活性が高まる。NK細胞はまた、樹状細胞との相互作用によってT細胞を活性化し免疫機能を高めることも知られている。閉塞性細気管支炎は、例えば肺移植患者でみられるように移植拒絶反応による疾患でもある。NK細胞の集積によって移植組織が傷害され細気管支の閉塞が起こると推定されている。
上記の知見を考慮すると、本発明により、閉塞性気道疾患を有する被験体に水素を投与することによって気管支内の閉塞(すなわち、狭窄)及び炎症(例えば活性酸素による傷害)が抑制又は軽減、或いは改善されるのは、一部には、FOXP3陽性Treg細胞の増加に伴う移植片の保全が起こったためであるし、また水素による酸化ストレスの抑制作用による気管支炎症の抑制又は軽減が起こったためであると推定される。その結果、閉塞性気道疾患による気管支の狭窄が改善されることになる。
本発明の組成物を被験体に投与する方法としては、水素ガスを有効成分とするとき、例えば吸入、吸引等による経肺投与が好ましい、また、水素溶存液体を有効成分とするとき経口投与又は静脈内投与(点滴を含む)が好ましい。ガスを吸入するときには、鼻カニューラや、口と鼻を覆うマスク型の器具を介して口又は鼻からガスを吸入して肺に送り、血液を介して全身に送達することができる。
経口投与する水素溶存液体については、好ましくは低温下に保存し、冷却した液体、又は常温で保存した液体を被験体に投与してもよい。水素は常温常圧下で約1.6ppm(1.6mg/L)の濃度で水に溶解し、温度による溶解度差が比較的小さいことが知られている。或いは、水素溶存液体は、例えば上記の非破壊的水素含有器を用いて調製された水素ガスを含有させた点滴液又は注射液の形態であるときには、静脈内投与、動脈内投与などの非経口投与経路によって被験体に投与してもよい。
上記水素濃度の水素ガス含有気体又は上記溶存水素濃度の水素溶存液体を1日あたり1回又は複数回(例えば2〜3回)、1週間〜3か月又はそれ以上の期間、例えば1週間〜6か月又はそれ以上にわたり被験体に投与することができる。水素ガス含有気体が投与されるときには、1回あたり例えば10分〜2時間もしくはそれ以上、好ましくは20分〜40分もしくはそれ以上、さらに好ましくは30分〜2時間かけて投与することができる。また、水素ガス含有気体を吸入又は吸引によって経肺投与するときには、大気圧環境下で、或いは、例えば標準大気圧(約1.013気圧をいう。)を超える且つ7.0気圧以下の範囲内の高気圧、例えば1.02〜7.0気圧、好ましくは1.02〜5.0気圧、より好ましくは1.02〜4.0気圧、さらに好ましくは1.02〜1.35気圧の範囲内の高気圧環境下で被験体に当該気体を投与することができる。高気圧環境下での投与によって被験体での水素の体内吸収が促進されうる。
上記高気圧環境は、内部に、例えば上記水素ガス含有気体(例えば、水素含有酸素又は空気)を圧入して標準大気圧を超える且つ7.0気圧以下の高気圧を内部に形成することが可能である、十分な強度をもつように設計された高気圧筐体(例えば、カプセル状筐体)の使用によって作ることができる。高気圧筐体の形状は、耐圧性であるため、全体的に角がない丸みを帯びていることが好ましい。また高気圧筐体の材質は、軽量、高強度であることが好ましく、例えば強化プラスチック、炭素繊維複合材、チタン合金、アルミ合金などを挙げることができる。被験体は、上記高気圧筐体内で酸素ガスもしくは空気とともに水素ガスを含む、閉塞性気道疾患の抑制又は軽減のための組成物の投与を受けることができる。
本明細書中「被験体」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒトを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、動物園などの観賞用動物などを含む。好ましい被験体はヒトである。
本発明の組成物による閉塞性気道疾患の処置の際には、十分な治療効果と安全性が確認された、水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置(例えば、上記の水素ガス供給装置(もしくは気体状水素吸入装置)、水素添加器具(もしくは水素水生成装置)、非破壊的水素含有器(水素透過性バッグに封入された点滴液などの生体適用液に非破壊的に水素ガスを溶解する装置)などの装置)を使用することが望ましい。
以下の実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]マウス閉塞性気道疾患モデルにおける水素水による気管支狭窄の改善
ドナーマウス(Balb/c)の気管をレシピエントマウス(C57BL/6)の皮下に移植し、水素水投与群のレシピエントマウスには移植当日から2週間後のsacrificeまで超飽和水素発生器具(MiZ株式会社製「10ウォーター」)にて作製した水素水(10ppm)を投与した。プレフィルターで濾過滅菌し0.2ppmの塩素を添加した水道水が投与された上記と同じ気管移植マウスであるコントロールマウス群(n=6)では、移植2週後の気管移植片における上皮の脱落が顕著であり、線維増生により気管内腔の狭窄が進行している(図1A)。一方、水素水投与群(n=6)では上皮の脱落および気管内腔の狭窄が軽減されている(図1B)。ImageJ(画像処理ソフトウェア)を用いてコントロール群と水素水投与群の気管内腔の狭窄率を比較したところ、それぞれ51.0(±11.6)%対28.1(±3.4)%[平均(±SE)](p<0.05)となり、差が認められた。
さらに、1週間後のコントロール群と水素水投与群における移植片のFoxP3、IL−2、IL−6レベルをELISAによって評価した結果を表1に示す。
表1から、コントロール群と比較して水素水投与群では、FoxP3レベルが高く、一方IL−6レベルが低い傾向が認められることから、制御性T細胞が気管移植片に、より多く集積し、また気管の炎症がより抑制される傾向にあることが分かる。
本発明により、被験体に水素を投与することによって閉塞性気道疾患を抑制又は軽減することができる。具体的に、閉塞性気道疾患は気管支の狭窄を伴う疾患であり、水素の投与により、特に閉塞性細気管支炎及び慢性気管支炎の狭窄症状を軽減し、並びに気管支の炎症を抑制する。

Claims (8)

  1. 水素を有効成分として含む、被験体において、閉塞性細気管支炎及び慢性気管支炎からなる群から選択される閉塞性気道疾患による気管支狭窄を改善するための組成物。
  2. 被験体に前記組成物を投与したとき、水素を投与しない対照と比較して、より高いFoxP3の発現を誘導する、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記組成物が水素ガス含有気体及び/又は水素溶存液体の形態である、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記水素ガス含有気体の水素濃度が、ゼロ(0)より大きく18.5体積%以下である、請求項に記載の組成物。
  5. 前記水素溶存液体の水素濃度が、1〜10ppmである、請求項に記載の組成物。
  6. 前記組成物が、吸入、静脈内投与又は経口投与によって被験体に投与される、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 前記組成物が、前記被験体への投与時に水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置を用いてその場で作製される、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 前記被験体がヒトである、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
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