以下、微生物検査装置に係る一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、微生物検査システム11(以下、「検査システム11」と称す。)は、検査対象のシャーレ12を供給する供給装置20と、シャーレ12の皿13内の培地15(図8、図11参照)を、撮像部の一例としてのカメラ17で撮像して検査する微生物検査装置30(以下、「検査装置30」と称す。)と、検査を終えたシャーレ12を排出する排出装置40とを備える。シャーレ12は、皿13と蓋14とからなり、本実施形態では、蓋14が下側で皿13を上側にした天地逆向きの状態で上限段数(例えば20段)以下の所定段数に段積みされたシャーレ群18の状態で、供給及び排出される。所定段数は、例えば5〜20段である。また、検査システム11は、供給装置20、検査装置30及び排出装置40を制御する図2に示すコントローラCを備える。
供給装置20は、複数本のシャーレ群18を縦列に並べて搬送可能な搬送ベルト21Bを有するベルト搬送装置21と、搬送ベルト21B上のシャーレ群18のうち検査装置30へ搬入される最下流の1本を順番に切り分ける切分装置22とを備える。ベルト搬送装置21は、動力源23Mを有する駆動装置23を備え、搬送ベルト21Bは駆動装置23からの動力により駆動される。コントローラCが切分装置22を駆動制御することで、搬送ベルト21B上のシャーレ群18は1本ずつ切り分けられ、検査装置30へ搬入される。なお、切分装置22の詳細は後述する。
検査装置30は、搬入された1本のシャーレ群18から最下段のシャーレ12を1段ずつばらす段ばらし装置50を備える。また、検査装置30は、段ばらし後の天地逆向きの1個のシャーレ12から皿13を吸着して持ち上げて、皿13と蓋14とを分離する分離動作、及び持ち上げた皿13を検査後に下降させて蓋14に戻す戻し動作を行う複数(本例では3つ)の昇降式の吸着部61を備える。検査装置30は、3つの吸着部61を、分離位置→検査位置→戻し位置→分離位置の順に周回させる移送部の一例としての回転式移送装置60を備える。3つの吸着部61は、周回軌道上に等角度間隔の位置に支持され、回転式移送装置60が約1/3回転ずつ回動することで、周回経路上の各位置に移送される。
さらに検査装置30は、皿13と分離されて分離位置SPに残った蓋14を、皿13が蓋14に戻される位置である戻し位置BPまで搬送するベルト搬送装置70を備える。ベルト搬送装置70は、動力源71Mを有する駆動装置71Aと、駆動装置71Aからの動力により駆動される搬送ベルト71Bとを有する。
さらに検査装置30は、吸着部61が持ち上げた皿13を検査位置まで移送し、検査位置で皿13内の培地15を撮像可能な撮像ユニット80を備える。撮像ユニット80は、カメラユニット81と光源82(図7、図15参照)とを備える。カメラユニット81は、撮像レンズの光軸を中心に軸回転が可能な回動式の駆動装置83と、駆動装置83の出力軸に支持部材83aを介して支持された有底筒状のケース84内に収容されたカメラ17とを有する。また、検査装置30は、撮像後に皿13が戻し位置で蓋14に戻されてなるシャーレ12を、所定段数まで段積みしてシャーレ群18を形成する段積み装置90を備える。検査装置30で検査を終えたシャーレ12は、段積み装置90によって天地逆向きの状態で所定段数まで段積みされて1本のシャーレ群18を形成する度に、シャーレ群18が1本ずつ排出装置40へ送られる。
排出装置40は、所定本数(図1、図2では例えば10本)のシャーレ群18を縦列に溜めることが可能なベルト搬送装置41と、シャーレ群18が所定本数溜まったことが検知されたときに駆動され、所定本数のシャーレ群18をテーブル42(図2参照)上に押し出すプッシャ装置43とを備える。ベルト搬送装置41は、動力源41Mを有する駆動装置41Aと、駆動装置41Aからの動力により駆動される搬送ベルト41Bとを有する。また、排出装置40は、搬送ベルト41Bとテーブル42との間において昇降可能なシャッタ44(図2参照)を備える。シャッタ44は、シャーレ群18が搬送ベルト41B上に所定本数溜まるまでは上昇した閉状態にあり、検査作業者が搬送ベルト41Bのエリア内に手等を入れることを遮り、一方、搬送ベルト41B上にシャーレ群18が所定本数溜まったことが検知されたときに、下降して開状態になる。シャッタ44が下降して開いた後、プッシャ装置43は駆動される。
プッシャ装置43は、動力源としての電動モータ45(例えばサーボモータ)と、電動モータ45の出力を減速する減速機構46と、減速機構46が有する一対の出力軸に連結された回転式のリンク機構47と、リンク機構47を介して伝達される動力によって搬送方向Xと交差する方向に前後動する押出板48とを備える。検査装置30は、コントローラCが、カメラ17により撮像された皿13及び培地15を含む画像に対して画像処理を行って得た検査結果を表示(出力)するための出力部の一例としてのモニタ31を備える。コントローラCは、カメラ17から入力した画像データに対して上記の画像処理を行ってコロニーを検出する検査部の一例としての検査処理部32(図2参照)を内蔵する。検査処理部32は、コントローラC内のコンピュータが検査用プログラムを実行することで例えばソフトウェアにより構成される。なお、検査処理部32は、ソフトウェアとハードウェアとの協働により構成したり、ハードウェアで構成したりしてもよい。
また、図1に示すように、複数のベルト搬送装置21,70,41は、それぞれの脚部21s,70s,41sによって同じ高さに支持されている。また、検査装置30及び排出装置40は、それぞれの脚部30a,40aによって底部が同じ高さに揃う状態に支持されている。なお、本実施形態では、昇降式の吸着部61により、保持部の一例が構成される。また、回転式移送装置60により、移送部の一例が構成される。
以下、上記検査システム11を構成する各装置の詳細な構成を順番に説明する。まず供給装置について説明する。
図1〜図3に示すように、供給装置20では、ベルト搬送装置21を構成する搬送ベルト21Bの駆動によって、搬送ベルト21B上の複数本のシャーレ群18は一対のガイド部21gによってガイドされつつ間欠的に搬送される。供給装置20は、搬送ベルト21Bの搬送方向Xの最下流の位置にシャーレ群18を1本ずつに切り分ける切分装置22を備える。
図3に示すように、切分装置22は、上限段数のときのシャーレ群18の高さとほぼ同じ長さを有しかつ搬送方向Xと交差する幅方向Yに開閉可能な一対の第1ストッパ25と、第1ストッパ25と高さ方向にほぼ同じ長さを有しかつ幅方向Yに開閉可能な一対の第2ストッパ26とを備える。第2ストッパ26は、第1ストッパ25よりもシャーレ群1本分の幅(直径)よりも少し長い所定の距離だけ搬送方向X上流側に位置する。
図3に示すように、第1ストッパ25はエアシリンダ27の駆動により開閉し、第2ストッパ26はエアシリンダ28の駆動により開閉する。図3(a)に示すように、第1ストッパ25が閉じ、第2ストッパ26が開いた状態で、複数本のシャーレ群18が第1ストッパ25により止められる。次に図3(b)に示すように、第2ストッパ26が閉じることで、下流側から2番目以降のシャーレ群18が止められる。次に図3(c)に示すように、第1ストッパ25が開くと、最下流の1本のシャーレ群18だけが搬送方向Xの下流側へ搬送される。次に図3(a)に示すように、第1ストッパ25が閉じた状態で、第2ストッパ26が開くことで、それまで止められていた2番目以降のシャーレ群18が、閉状態の第1ストッパ25に当たるまで搬送される。こうして、コントローラCが不図示の電磁弁を制御してエアシリンダ27,28を駆動させ、図3(a)〜(c)の順番に第1ストッパ25及び第2ストッパ26を動作させることで、搬送ベルト21B上に1列に溜まった複数本のシャーレ群18は切分装置22によって1本ずつ切り分けられる。切り分けられたシャーレ群18は1本ずつ順番に検査装置30に搬入される。
次に図4及び図5を参照して、検査装置30へ搬入されたシャーレ群18からシャーレ12を1段ずつばらす段ばらし装置50について説明する。図4及び図5に示すように、段ばらし装置50は、上限段数のときのシャーレ群18の高さよりも長い所定長さを有し、シャーレ1段分の厚さよりも少し長いストロークでの昇降が可能な一対のロッド状の第1ストッパ51と、第1ストッパ51とほぼ同じ長さを有し幅方向Yに開閉可能な一対のロッド状の第2ストッパ52とを備える。一対の第2ストッパ52は、一対のエアシリンダ53の伸縮駆動によって、図5(a)に示す開位置と図5(b),(c)に示す閉位置との間を移動可能である。一対の第2ストッパ52は開位置でシャーレ12の搬送方向X下流側への移動を許容し、閉位置でシャーレ12の搬送方向X下流側への移動を阻止する。
また、図5に示すように、段ばらし装置50は、幅方向Yに変位可能な状態で配置された一対の開閉部材54からなる把持部55を備える。一対の開閉部材54は一対のL字状の可動部材54aを有し、一対の可動部材54aの対向する部分には、シャーレ12を把持可能な一対の把持部材54bが固定されている。一対の可動部材54aにはその搬送方向X下流側に配設された一対のエアシリンダ56の出力軸が固定されている。コントローラCが不図示の電磁弁を制御して一対のエアシリンダ56を伸張駆動させると、図5(a)に示すように把持部55が開状態になり、エアシリンダ56を収縮駆動させると、図5(b),(c)に示すように把持部55が閉状態になる。
図6に示すように、把持部55を支持する支持部材55aには、2本のエアシリンダ57,58が高さ方向に伸縮可能な向きで直列に連結されている。2本のエアシリンダ57,58を段階的に駆動させることにより、把持部55は高さ方向に3つの異なる位置に昇降可能となっている。また、第1ストッパ51の上端部はエアシリンダ59の出力軸と連結されており、コントローラCは不図示の電磁弁を制御してエアシリンダ59を伸縮駆動させることで、一対の第1ストッパ51はシャーレ1段分の厚さよりも少し広いストロークで昇降可能となっている。
上記の構成を有する段ばらし装置50は、以下のように動作する。なお、図4及び図5では、1段目(最下段)のシャーレ12を符号「12a」、2段目のシャーレ12を符号「12b」で示している。
図5(a)に示すように把持部55が開状態で一対の第2ストッパ52が開くことで、シャーレ群18は第1ストッパ51に当たる位置まで搬入される。次に図4(a)に示すように、把持部55によって下から2段目のシャーレ12bを把持する。そして、図4(b)に示すように、把持部55を上昇させて下から2段目のシャーレ12bを少し持ち上げて1段目のシャーレ12aから離間させる。次に図4(c)に示すように、第1ストッパ51をシャーレ1段分の厚さよりも少し広いストロークだけ上昇させることで、1段目のシャーレ12aの規制を解除してシャーレ12aを搬送方向Xの下流側へ搬送する(図4(c)、図5(c))。シャーレ12は天地逆向きの状態で分離位置SPへ搬送される。
こうして1段目のシャーレ12aが第1ストッパ51を通過すると、第1ストッパ51を下降させる。次に把持部55を下降させて、把持したシャーレ12bを搬送ベルト71B上に載置し、把持部55を開く。こうして搬送ベルト71B上に載置された2段目のシャーレ12bが、次の動作サイクルで1段目のシャーレ12aとなる。以後、同様に、図4(a)〜(c)及び図5(a)〜(c)に示すように、2段目のシャーレ12bの持ち上げ、1段目のシャーレ12aの排出、2段目のシャーレ12bの下降(載置)を繰り返すことで、シャーレ12は1段分ずつばらされる。
次に図6〜図10等を参照して、検査装置30においてシャーレ12の培地を検査する部分の詳細な構成を説明する。まず図6〜図10等を参照して、回転式移送装置60の構成について説明する。回転式移送装置60は、吸着部61をそれぞれ下端部に有する複数の昇降ユニット62を周回可能に支持するロータリ装置63を備える。ロータリ装置63を回転駆動させることで、複数の昇降ユニット62は、間欠的に周回し、分離位置、検査位置(撮像位置)、戻し位置に順番に移送される。昇降ユニット62が有する吸着部61は、分離位置でシャーレ12の皿13を保持して持ち上げることで、皿13と蓋14とを分離させる分離動作と、カメラ17が皿13内の培地15を撮像した後に、蓋14の上方位置となる戻し位置に配置した皿13を下降させて、皿13を蓋14に戻す戻し動作とを行う。
図7及び図8に示すように、検査装置30において検査作業空間を区画する天板30bの上には、ロータリ装置63の動力源となる電動モータ64(例えばサーボモータ)と、電動モータ64の動力をロータリ装置63の回転軸65に伝達するベルト方式の動力伝達機構66とを備える。動力伝達機構66は、電動モータ64の出力軸に連結された駆動プーリ66aと、ロータリ装置63の回転軸65の上端部に連結された被動プーリ66bと、両プーリ66a,66b間に巻き掛けられたタイミングベルト66cとを備える。コントローラCは、電動モータ64の回転を制御し、ロータリ装置63の回転軸65を1/3回転ずつ間欠的に回転させることで、複数の昇降ユニット62の下端部に設けられた吸着部61を、分離位置、検査位置及び戻し位置の3位置に順番に配置する。
天板30bには、円筒状の支持筒631が下方へ延びる状態で組み付けられており、回転軸65は、支持筒631内に一部挿通された状態で複数の軸受632を介して回転可能に支持されている。
図8に示すように、回転軸65の下部には、支持プレート67が、回転軸65の軸線と直交する水平な姿勢を保つ状態で固定されている。支持プレート67には、N個(本例では3個)の昇降ユニット62が、回転方向に1/N回転(本例では1/3回転)ずつの等角度間隔の位置に取着されている。
図8に示すように、昇降ユニット62は、例えば三角板状(図9参照)の支持プレート67の角部(図9参照)に下方へ延出する状態で固定された筒部621と、筒部621に対して軸方向に相対移動可能に挿通された昇降軸622と、昇降軸622の上端に形成された押板623と支持プレート67との間に介装された圧縮ばね624とを備える。昇降軸622の下部は、圧縮ばね624が介装されている部分よりも細くなった管状のロッド625となっており、筒部621から下方へ突出するロッド625の下端部に円盤状の吸着部61が水平な姿勢を保つ状態で支持されている。
天板30bには、昇降ユニット62が分離位置SPと戻し位置BPとにあるときの直上位置に、2つのエアシリンダ68が縦向きに配設されている。コントローラCは、2つの昇降ユニット62が分離位置SP及び戻し位置BPにあるときに不図示の電磁弁を制御し、エアシリンダ68を伸張駆動させて作動軸68aで昇降軸622を圧縮ばね624の付勢力に抗して押し込んで、吸着部61を下降させる。また、コントローラCは、エアシリンダ68を収縮駆動させて作動軸68aを上方へ退避させることで、昇降軸622が圧縮ばね624の付勢力により上動し、これにより吸着部61を上昇させる。
図8に示すように、検査装置30において負圧供給源PSから供給された負圧は、被動プーリ66b及び回転軸65の流路65a、回転軸65の下端部に接続された3本(図8では2本のみ図示)のホース102を通じて、支持プレート67上に配置された3つの弁機構69にそれぞれ導入される。弁機構69から延びるホース103の先端部は、吸着部61を支持する管状のロッド625に接続されている。弁機構69は回動式のレバー691を有し、レバー691の回動により内部の流路が切り換えられる機械式の弁である。
次に、図9及び図10等を参照して、吸着部61への負圧の給排を切り換える負圧給排機構100について説明する。なお、図9及び図10では、ホース102,103を省略している。
図9及び図10に示すように、負圧給排機構100は、支持プレート67の上面に周方向に等角度間隔の位置に配置された3つの弁機構69と、弁機構69のレバー691を機械的に回動操作して弁機構69の内部の流路を切り換える弁切換機構101とを備える。図9に示すように、3つの弁機構69は、支持プレート67の上面において3つの昇降ユニット62の間に配置されている。
図9及び図10に示すように、弁機構69のレバー691は、その先端部に設けられたローラ692が上方へ変位する側の回動方向に付勢されている。弁機構69内には、負圧供給源PSと連通する不図示の負圧供給流路と、大気に連通する大気開放流路とが形成されている。弁機構69は、レバー691が押し下げられた第1の切換位置では、負圧供給流路が閉じるとともに大気開放流路が開き、吸着部61の吸引が解除される。一方、弁機構69は、レバー691が上側へ復帰した第2の切換位置では、負圧供給流路が開くとともに大気開放流路が閉じ、吸着部61の吸引孔61aに吸引力が作用する。
図9及び図10に示すように、弁切換機構101は、弁機構69のレバー691を押し下げ状態に案内する円弧状のレール110と、レール110の長手方向両端に隣接した位置に昇降可能に設けられた一対の可動体111,112と、可動体111,112を昇降駆動させるエアシリンダ113,114とを備える。レール110は、昇降ユニット62が、戻し位置BPから分離位置SPへ戻る移動過程の区間で、その昇降ユニット62と対応する弁機構69のレバー691を押し下げ状態に案内する。2つの可動体111,112は、分離位置SPと戻し位置BPとに配置された2つの昇降ユニット62と対応する2つの弁機構69のレバー691の直上位置に配置されている。エアシリンダ113,114が伸縮駆動によって、一対の可動体111,112は、下面がレール110の下面と同じ高さとなる下降位置と、下面がレール110の下面よりも所定距離だけ高くなる上昇位置との間を昇降する。
昇降ユニット62が分離位置SPに配置されたときには、下降位置にある可動体111が、その昇降ユニット62と対応する弁機構69のレバー691を押し下げているため、弁機構69は第1の切換位置にあって、吸着部61は吸引解除状態にある。この状態でエアシリンダ113が収縮駆動すると、可動体111は上動し、レバー691が自身の付勢力で上側へ回動して弁機構69が第2の切換位置に切り換えられることで、吸着部61は吸引孔61aに吸引力が作用する吸引作動状態になる。
また、昇降ユニット62が戻し位置BPに配置されたときには、可動体112が上昇位置にあって、その昇降ユニット62と対応する弁機構69はレバー691が自身の付勢力で上側へ回動した第2の切換位置にあるので、吸着部61は吸引作動状態にある。この状態でエアシリンダ114が伸張駆動すると、下降した可動体112がレバー691を押し下げて弁機構69が第1の切換位置に切り換えられることで、吸着部61は吸引解除状態になる。そして、昇降ユニット62が戻し位置BPから分離位置SPまで移動する区間では、ローラ692がレール110及び一対の可動体111,112の下面上を転動することでレバー691は下側に回動した状態に保持され、吸着部61は吸引解除状態に保持される。
図11に示すように、吸着部61は、管状のロッド625の下端部に連結された金属板611と、金属板611の下面に固定された樹脂板612との2層構造からなる。ロッド625内の流路626は、吸着部61をその厚み方向に貫通してその下面中央に吸引孔61aを形成している。皿13の底部は周縁部に円環状の凸部が突出しその内側が凹部13aになっており、吸着部61が皿13の底面に当接したときに吸引孔61aの吸引力によって凹部13a内が負圧になることで、吸着部61は皿13を吸着する。
次に、図13及び図14等を参照して、分離位置と戻し位置でのシャーレの位置決め、蓋を分離位置から戻し位置まで搬送する搬送機構の詳細な構成について説明する。
図13に示すように、搬送機構120は、シャーレ12又は蓋14を搬送するベルト搬送装置70と、搬送ベルト71Bによって搬送されるシャーレ12又は蓋14を分離位置SP及び戻し位置BPで位置決めする位置決め機構121とを備える。ベルト搬送装置70には、搬送ベルト71B上のシャーレ12又は蓋14を案内するガイド部材122が設けられている。ベルト搬送装置70は、シャーレ12の段ばらし装置50から分離位置SPへの搬送と、分離されて残った蓋14の分離位置SPから戻し位置BPまでの搬送と、シャーレ12の戻し位置BPから段積み装置90への搬送とを行う。
図13に示すように、位置決め機構121は、搬送ベルト71Bによって搬送されたシャーレ12を分離位置SPに止める第1ストッパ131と、分離されて残った蓋14を中間位置MPに止める第2ストッパ132と、中間位置MPから搬送された蓋14を戻し位置BPに止める第3ストッパ133とを備える。第1〜第3ストッパ131〜133は、それぞれエアシリンダ134〜136の駆動によって、シャーレ12又は蓋14と接触可能な下降位置と接触不能な上昇位置との間を昇降可能となっている。第1ストッパ131は、下降位置にあるときに、搬送ベルト71B上のシャーレ12に当たることでシャーレ12を分離位置SPに止め、上昇位置にあるときに、搬送ベルト71Bによるシャーレ12の搬送を許容する。第2ストッパ132は、下降位置にあるときに、搬送ベルト71B上の蓋14に当たることで蓋14を中間位置MPに止め、上昇位置にあるときに、搬送ベルト71Bによる蓋14の搬送を許容する。第3ストッパ133は、下降位置にあるときに、搬送ベルト71B上の蓋14に当たることで蓋14を戻し位置BPに止め、上昇位置にあるときに、搬送ベルト71Bによる戻し後のシャーレ12の搬送を許容する。
また、図13に示すように、位置決め機構121は、第1ストッパ131に止められたシャーレ12を幅方向Yに位置決めしてシャーレ12を分離位置SPに位置決めする第1位置決め機構141と、第3ストッパ133に止められた蓋14を幅方向Yに位置決めして蓋14を戻し位置BPに位置決めする第2位置決め機構142とを備える。第1位置決め機構141は、エアシリンダ143と、エアシリンダ143の伸縮駆動によって幅方向Yに進退可能な押込部材144とを備える。また、第2位置決め機構142は、エアシリンダ145と、エアシリンダ145の伸縮駆動によって幅方向Yに進退可能な押込部材146とを備える。ガイド部材122は、押込部材144と幅方向Yに対向する箇所に設けられた位置決めブロック123と、押込部材146と幅方向Yに対向する箇所に設けられた位置決めブロック124とを有する。押込部材144及び位置決めブロック123は、シャーレ12を押圧する部分が、シャーレ12の外周面とほぼ同じ曲率の円弧状の凹曲面に形成されている。また、押込部材146及び位置決めブロック124は、蓋14を押圧する部分が、蓋14の外周面とほぼ同じ曲率の円弧状の凹曲面に形成されている。
図12(a)に示すように、押込部材144は、シャーレ12を押圧する部分が二段のステップ形状を有し、蓋14と皿13の両外周面を共に押圧可能となっている。また、位置決めブロック123も、シャーレ12を押圧する部分が二段のステップ形状を有し、蓋14と皿13の両外周面を共に押圧可能となっている。このため、押込部材144がシャーレ12を位置決めブロック123に押し当てたとき、蓋14の外周面が比較的強く押されるとともに、皿13の外周面が蓋14に比べ軽く押さえられるようになっている。このため、シャーレ12が分離位置SPで適切な位置に位置決めされることから、皿13が吸着部61の下面における適切な位置に吸着されるうえ、吸着して皿13を持ち上げるときに皿13を蓋14からスムーズに分離できる(図12(b)参照)。
また、図16(a)に示すように、押込部材146は、蓋14を押圧する部分が、蓋14の外周面のみを押圧可能となっている。また、位置決めブロック124も、蓋14の外周面のみを押圧可能となっている。このため、押込部材146が蓋14を位置決めブロック124に押し当てたとき、蓋14の外周面が比較的強く押されて、蓋14は適正な戻し位置BPに位置決めされる。吸着部61が下降して皿13を蓋14に戻すときは、吸着部61における皿13の吸着位置が適正な位置であること、及び蓋14が適正な戻し位置BPに位置決めされていることによって、皿13を蓋14に確実に戻すことができる(図16(b)参照)。
図14(a)に示すように、第1〜第3ストッパ131〜133が下降位置にあるとき、搬送ベルト71B上を所定の間隔をおいて搬送される1つのシャーレ12及び2つの蓋14がストッパ131〜133に当たって、戻し位置BPに蓋14、中間位置MPに蓋14、分離位置SPにシャーレ12が停止する。この状態で押込部材144,146が、分離位置SPのシャーレ12及び戻し位置BPの蓋14を位置決めブロック123,124に押し当てて、分離位置SPのシャーレ12と戻し位置BPの蓋14とが位置決めされる。
次に図14(b)に示すように、分離位置SPでは吸着部61が下降して皿13の底面を吸着して皿13を持ち上げるとともに、戻し位置BPでは吸着部61が下降して皿13が蓋14に戻される。検査位置CPで検査されている皿13と対の蓋14は、中間位置MPで待機する。
そして、次に図14(c)に示すように、第1〜第3ストッパ131〜133が上昇し、戻し位置BPのシャーレ12、中間位置MPの蓋14及び分離位置SPの蓋14は、搬送ベルト71Bによって搬送される。戻し位置BPにあったシャーレ12は次の段積み装置90へ搬送され、分離位置SPには次のシャーレ12が搬入される。そして、シャーレ12及び2つの蓋14が第1〜第3ストッパ131〜133を通過し終わると、第1〜第3ストッパ131〜133が下降し、図14(a)に示すように、分離位置SPにシャーレ12、中間位置MPに蓋14、戻し位置BPに蓋14が、それぞれ第1〜第3ストッパ131〜133に当たって停止する。
次に図15を参照して撮像ユニットの詳細な構成について説明する。図15に示すように、撮像ユニット80は、検査位置CPで吸着部61に下向きに保持された皿13内の培地15を、開口13bを通して下方から撮像するカメラ17を有するカメラユニット81と、検査位置の皿13とカメラ17との間に配置されたリング状の光源82とを備える。光源82は、吸着部61に保持された皿13よりも下方の位置でストロボ発光し、培地15に対して開口13bを通して下方から光を照射する。カメラ17は、光源82からの光が培地15で反射した反射光による像を撮像する光反射式である。例えばカメラ17を皿13(培地15)に対してカメラ17と反対側の位置に光源を配置した光透過式とすると、皿の底面に付着した塵埃の影が画像に写り込み、その塵埃をコロニーと間違えて誤検出する虞がある。しかし、本例のカメラ17の撮像方式は光反射式なので、皿13の底面に付着した塵埃は画像に写りにくく、皿13の底面や吸着部61の下面に付着した塵埃等に起因するこの種の誤検出の心配がない。
また、図7及び図17に示すように、カメラユニット81は、カメラ17が光軸を中心に軸回転する回動式であり、カメラ17を軸回転させる正逆回転式のアクチュエーターからなる駆動装置83を備える。駆動装置83は例えば空圧駆動式で、その出力軸が正逆回動することで、出力軸に支持部材83aを介して支持されたカメラ17を、所定角度(例えば90度)だけ往復回動させ、皿13内の培地15を例えば90度だけ軸回転方向の異なる角度から2回撮像する。すなわち、図17(a)に示すカメラ17の軸回転角で1回目の撮像をし、図17(b)に示すように駆動装置83の駆動によってカメラ17を90度軸回転させて2回目の撮像をする。
このようにカメラ17の軸回転角の異なる複数の画像を取得することで、1回目の撮像画像でコロニーに隠れていた奥側(底面側)のコロニーが、2回目の撮像画像では隠れずに見える位置に存在する可能性がある。本例の検査装置30では、2枚の画像からコロニーを極力逃さずより多く検出し、コロニーのトータル数を計数することで、培地15中のコロニーのより正確な計数が可能となっている。なお、軸回転角の異なるカメラ17による撮像回数は2回に限定されず、3回以上でもよい。
次に図6及び図18を参照して、段積み装置90について説明する。戻し位置BPで皿13が蓋14に戻されたシャーレ12は、段積み装置90へ順次搬送される。図18に示すように、段積み装置90は、上限段数のシャーレ群18の搬送方向Xへの移動を阻止可能な所定長さを有する一対のロッド状の第1ストッパ91と、第1ストッパ91とほぼ同じ長さのロッド状で幅方向Yに開閉可能な一対の第2ストッパ92とを備える。一対の第1ストッパ91は、一対のエアシリンダ93の伸縮駆動によって、幅方向Yに開閉可能である。
また、段積み装置90は、段ばらし装置50の把持部55と同様の構成であって、一対の開閉部材94からなる昇降式の把持部95を備える。コントローラCが不図示の電磁弁を制御して、図18に示す一対(同図では一方のみ図示)のエアシリンダ96を伸縮駆動させることで、把持部95は幅方向Yに開閉する。段積み装置90は、搬入されたシャーレ12を、把持部95の開閉と昇降とにより1段ずつ段積みする。また、コントローラCは、段積み中はエアシリンダ93を伸張駆動状態として一対の第1ストッパ91を閉位置に配置することでシャーレ群18の搬送方向X下流側への移動を阻止する。そして、コントローラCは、段積みされたシャーレ群18が所定段数に達したことを検知すると、不図示の電磁弁を制御してエアシリンダ93を収縮駆動させることで一対の第1ストッパ91を開き、シャーレ群18の搬送ベルト71Bによる排出装置40への搬送を許容する。
図6に示すように、段積み装置90では、天板30bに支持された2本のエアシリンダ98,99が鉛直方向に直列に連結されており、下側のエアシリンダ99の出力軸が、把持部95を支持する支持部材95aに固定されている。コントローラCが、不図示の電磁弁を制御して2本のエアシリンダ98,99を段階的に駆動させることにより、把持部95は高さ方向に3つの異なる位置を昇降可能となっている。段積み装置90は、段ばらし装置50と基本的な構成は同じであって、第1ストッパ91が開閉式であるうえ、第1及び第2ストッパ91,92が共に昇降不能である点、及び上流側の第2ストッパ92と搬送ベルト71Bとの間に1つのシャーレ12が通過可能な隙間が形成されている点が、段ばらし装置50と異なる。
図18(a)に示すように、把持部95がシャーレ群18の最下段のシャーレ12を把持し、図18(b)に示すように、把持部95を上昇させてシャーレ群18を持ち上げた状態で待機する。その後、搬送されてきた次のシャーレ12は第2ストッパ92の下側の隙間を通過し、第1ストッパ91に当たって停止する(図18(c))。次に把持部95を下降させて、搬入されたシャーレ12の上にシャーレ群18を置く。こうしてシャーレ群18にさらに1段のシャーレ12が段積みされる。以後、図18(a)〜図18(c)の動作を繰り返すことで、シャーレ12が一段ずつ段積みされ、シャーレ群18が所定段数に達すると、エアシリンダ93が収縮駆動して第1ストッパ91が開き、所定段数のシャーレ群18が搬送ベルト71Bによって排出装置40へ搬送される。
次に図1、図2及び図19を参照して排出装置40について説明する。検査装置30で段積みされたシャーレ群18は、図1、図2に示す排出装置40が備えるベルト搬送装置41の搬送ベルト41Bによって、待機位置にある押出板48に案内されつつ搬送される。コントローラCは、不図示のセンサが搬送ベルト41B上のシャーレ群18が所定本数溜まったことを検知すると、シャッタ44を下降させてから、電動モータ45を駆動させてプッシャ装置43の押出板48を待機位置から押出位置まで往復動させることで、搬送ベルト41B上の所定本数のシャーレ群18を一斉にテーブル42上へ排出する。
図19に示すように、シャッタ44は、エアシリンダ151の駆動軸に連結されており、エアシリンダ151の伸縮駆動により開閉する。また、プッシャ装置43は、電動モータ45の動力を減速する減速機構46の両側に突出する一対の出力軸に連結されたリンク機構47を介して押出板48を前後動させる。リンク機構47は、減速機構46の一対の出力軸に互いに平行な状態を保って固定された一対(図19では一方のみ図示)の円板152と、円板152の周縁部と押出板48の裏面との間に連結されたロッド状のリンク153とを備える。
図19(a)に示すように、押出板48が待機位置にあるときは押出板48がシャーレ群18を案内しつつシャーレ群18は搬送ベルト41B上に一列に配置される。所定本数のシャーレ群18が溜まるまでの間、シャッタ44は閉じた状態にある。所定本数溜まったことが検知されると、コントローラCが電磁弁を制御して、図19(b)に示すようにエアシリンダ151を収縮駆動させることでシャッタ44を開け、続いて電動モータ45を駆動させてリンク機構47を介して押出板48を押し出すことで、搬送ベルト41B上の所定本数のシャーレ群18を一斉にテーブル42上に排出する。
次に検査システム11の作用を説明する。
作業者は、段積みされたシャーレ群18を供給装置20の搬送ベルト21B上に供給する。供給装置20では、最下流のシャーレ群18が切分装置22によって1本ずつ切り分けられ、検査装置30に搬入される。検査装置30に搬入されたシャーレ群18は段ばらし装置50により1段ずつにばらされ、搬送ベルト71B上を搬送されたシャーレ12は、下降位置にある第1ストッパ131に当たって分離位置SPで停止する。
次にエアシリンダ143が伸張駆動されて押込部材144がシャーレ12を押し込むことで、シャーレ12は位置決めブロック123に押し当てられて幅方向Yに位置決めされる。このとき、3つの昇降ユニット62は、分離位置SP、検査位置CP、戻し位置BPにそれぞれ配置されている。また、可動体111は下降してその下面がレール110の下面と同じ高さに位置し(図10(a))、分離位置SPの吸着部61は吸引解除状態にある。
次にエアシリンダ68が駆動されて昇降ユニット62の吸着部61が下降する。この下降に伴い、図10(b)に示すようにエアシリンダ113が収縮駆動して可動体111が上昇し、弁機構69のレバー691が上側へ回動することで弁機構69の負圧供給流路が開く。この結果、負圧供給源PSからの負圧が、弁機構69及びホース103を通って吸着部61に導入され、吸着部61の吸引孔61aに吸引力が作用する。図11に示すように、吸着部61の下面がシャーレ12の皿13の底面に当たり、凹部13a内が負圧になることで、皿13は吸着部61に吸着される。そして、エアシリンダ68が収縮駆動されることで、皿13を吸着した吸着部61が上昇し、皿13は吸着されたまま持ち上げられる。なお、分離位置SPに天地逆向きに配置されたシャーレ12の皿13を、吸着部61を下降及び上昇させることで持ち上げて、皿13と蓋14とを分離する工程が、分離ステップの一例に相当する。
吸着部61が上昇したことが検知されると、コントローラCは、電動モータ64を駆動してロータリ装置63を約1/3回転だけ軸回転させる。この結果、皿13を持ち上げた吸着部61は、開口13bが下向きの状態を保持したまま、分離位置SPから検査位置CPへ移送される。この皿13の移送過程で、皿13と対の蓋14は、第1ストッパ131の上昇によって分離位置SPから搬送ベルト71Bにより搬送され、下降した第2ストッパ132に当たって中間位置MPに停止する。なお、開口13bが下向きの状態で持ち上げた皿13を分離位置SPから検査位置CPまで移送する工程が、移送ステップの一例に相当する。
コントローラCは、吸着部61が検査位置CPに到達したことを検知すると、カメラ17及び光源82を制御し、光源82をストロボ発光させて光が照射された皿13内の培地15を、皿13よりも下方の位置に配置されたカメラ17によって開口13bを通して直接撮像する(図17(a))。検査位置CPの皿13に対する1回目の撮像を終えると、コントローラCは駆動装置83を駆動してカメラ17を約90度だけ軸回転させ、2回目の撮像を行う(図17(b))。こうして1つのシャーレ12につき、撮像角度の異なる複数の画像を取得する。なお、検査位置CPで、皿13内の培地15を、皿13よりも下方の位置からカメラ17によって開口13bを通して撮像する工程が、撮像ステップの一例に相当する。
コントローラC内の検査処理部32は、カメラ17から入力した画像に対して所定の画像処理を行って、培地15におけるコロニーを検出する。検査処理部32でのコロニーの検査方法は特に問わないが、例えば特許文献3に記載の方法等を用いてコロニーを検出することができる。特に本例の検査装置30はコロニーカウンター機能を有し、検査処理部32は、1個以上のコロニーを検出した場合、検出したコロニーの数を計数する。こうして検査処理部32は、検査処理によって、コロニーの有無及びコロニー数等を含む検査結果を取得する。但し、検査処理部32は、コロニーの有無のみを検査する構成でもよい。なお、撮像ステップで取得した画像に基づいて微生物の一例としてコロニーを検出する工程が、検査ステップの一例に相当する。
そして、コントローラCは、検査ステップで取得した検査結果を、モニタ31(図1参照)の画面に表示(出力)する。よって、検査作業者は、モニタ31の画面に表示された検査結果を見ることで、コロニーの有無及びコロニー数等を把握することができる。ここで、検査結果は、検査中にほぼリアルタイムに出力されるが、所定のロット数の検査を終えた後、又は全ての検査を終えた後に、複数の検査結果を一括して出力させてもよい。なお、検査ステップにおける検査結果を出力する工程が、出力ステップの一例に相当する。
一方、検査装置30では、カメラ17による撮像を終えると、コントローラCは電動モータ64を駆動してロータリ装置63を約1/3回転だけ軸回転させることで、皿13を保持する吸着部61を、検査位置CPから戻し位置BPへ移送させる。このとき、エアシリンダ114(図10(a)参照)は収縮駆動状態にあり、可動体112の下面がレール110の下面よりも上方に位置し、弁機構69のレバー691が上側へ回動した状態にあるため、弁機構69内の負圧供給流路が開いた状態にあり、吸着部61は皿13を吸着する状態を維持する。
この吸着部61が皿13を検査位置CPから戻し位置BPへ移送する過程で、その皿13と対の蓋14は、第2ストッパ132が上昇することで中間位置MPから搬送ベルト71Bにより搬送され、下降した第3ストッパ133に当たって戻し位置BPに停止する。コントローラCは、皿13と蓋14とが共に戻し位置BPに到達したことを検知すると、エアシリンダ145を伸張駆動して押込部材146によって蓋14を位置決めブロック124に押し当てて幅方向Yに位置決めする(図16(a))。
そして、エアシリンダ68を伸張駆動することで、昇降ユニット62の吸着部61を下降させる(図16(a))。吸着部61が下降して皿13が蓋14に戻されると、コントローラCはエアシリンダ114を伸張駆動させて、可動体112の下面がレール110の下面と同じ高さに配置され、弁機構69のレバー691が押し下げられる。この結果、弁機構69内で負圧供給流路が閉じるとともに排気流路が開き、吸着部61の吸引が解除される。次にエアシリンダ68が収縮駆動されることで、吸着部61が上昇する(図16(b))。
こうして図17に示すように、3つの吸着部61は、ロータリ装置63が1/3回転する度に、分離位置SP、検査位置CP、戻し位置BPに順次配置される。そして、分離位置SPの吸着部61は皿13を持ち上げて皿13と蓋14とを分離する分離工程を行い、検査位置CPの吸着部61は皿13内の培地15をカメラ17で下方から撮像する撮像工程を行い、さらに戻し位置BPの吸着部61は皿13を蓋14に戻す戻し工程を行う。このようにロータリ装置63の回転により周回が可能なN個の吸着部61により、分離工程、撮像工程及び戻し工程が並行して行われる(図17(a)〜(c))。
そして、検査を終えたシャーレ12は、図18に示す段積み装置90により段積みされ、所定段数のシャーレ群18が1本完成すると、そのシャーレ群18は排出装置40へ排出される。排出装置40では、搬送ベルト41B上に所定本数のシャーレ群18が溜まるまではシャッタ44が上昇しているうえ、シャッタ44の外側近傍領域でライトカーテンが作動しているため、検査作業者はシャーレ群18に触れることができない。そして、搬送ベルト41B上にシャーレ群18が所定本数溜まったことが検知されると、コントローラCの制御により、シャッタ44が下降して、プッシャ装置43が駆動されることで、搬送ベルト41B上の所定本数のシャーレ群18は押出板48によって一斉にテーブル42上に押し出される。
以上詳述したようにこの第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)微生物検査装置30は、培地15が収容された皿13を上側、蓋14を下側とする天地逆向きに配置したシャーレ12の皿13を、昇降ユニット62が有する昇降式の吸着部61に吸着させて持ち上げることで、皿13と蓋14とを分離する。そして、分離のため持ち上げた皿13内の培地15を、下方に配置されたカメラ17により開口13bを介して撮像し、撮像して取得した画像に基づいてコントローラCがコロニーを検出する検査を行う。この構成によれば、撮像時は、皿を検査用テーブル等に置く必要がないので、例えば検査用テーブルに皿を置いて撮像する構成において問題となる、検査用テーブルに付着した塵埃等をコロニーと誤検出する検査ミスの発生頻度を低減できる。また、カメラ17により開口13bを介して培地15を直接撮像するので、例えばカメラにより蓋を通して培地を撮像する構成で問題となる、蓋に付着した塵埃や結露による水滴等をコロニーと誤検出する検査ミスの発生頻度も低減できる。よって、コロニーの検出精度が高まり、例えば検出したコロニーを計数するコロニーの計数精度を高めることができる。
(2)保持部の一例として、皿13の底面を吸着して持ち上げる吸着部61を用いた。このため、カメラ17が撮像する際、皿13の底面を吸着した吸着部61が培地15の周縁部に写り込みにくくなるので、検査ミスが起きにくくなる。例えばチャック等の把持部で皿13の外周面を把持して皿13を持ち上げる構成であると、撮像した画像において培地の周縁部に把持部が写り込むため、これが検査ミスを誘発する。しかし、皿13の底面を吸着する吸着部61なので、培地15の周縁部に写り込みにくく、検査ミスを誘発しにくい。よって、検査装置30によれば、コロニーの数をより正確に計数できる。
(3)カメラ17が皿13内の培地15を撮像するときに、この検査位置の皿13に対してカメラ17と同じ側から光を照射する光源82を設け、光源82からの光が培地15で反射した反射光をカメラ17で撮像する光反射型を採用した。このため、光源が培地を挟んでカメラと反対側に位置し培地を透過した光を撮像する光透過型に比べ、吸着部61の吸着面に付着した塵埃等が写り込みにくくなる。よって、皿13内の培地15を撮像した画像に基づいて検出するコロニーの検出精度を一層高めることができる。
(4)検査装置30は、回転式移送装置60によって、皿13を持ち上げた吸着部61を、その昇降方向と交差する移動方向(周回方向)へ検査位置CPまで移動させ、検査位置CPで皿13内の培地15を下方からカメラ17で撮像した後、撮像後の皿13を持ち上げたときの下向きのまま、蓋14の上方となる戻し位置まで移動させる。戻し位置で吸着部61を下降させることで、皿13は蓋14に戻される。よって、分離のため持ち上げた皿13を戻し位置に移動させる途中で撮像を終え、その途中の撮像の後に戻し位置で皿13を蓋14に戻すことができる。すなわち、吸着部61の昇降→回転(周回)→昇降の3動作で、分離と撮像と戻しとを行うことができる。
(5)検査装置30は、皿13と分離された蓋14を、分離位置SPから戻し位置BPまで搬送するベルト搬送装置70と、複数の吸着部61を昇降可能に支持する状態で周回させて、分離位置SP、検査位置CP及び戻し位置BPに順番に移送するロータリ装置63とを備える。複数の吸着部61がロータリ装置63の回転により、分離位置SP、検査位置CP及び戻し位置BPと順次周回することで、分離、撮像、戻しの各作業が並行して行われる。よって、皿13内の培地15の検査を比較的高い精度でかつ効率よく行うことができる。
(6)蓋14を下側にした状態の皿13を持ち上げて皿13を蓋14から分離する分離ステップと、開口13bが下向きの状態で持ち上げた皿13を検査位置CPまで移動させる移動ステップと、下向きの状態で持ち上げた皿13内の培地15を開口13bから撮像する撮像ステップとを備える。さらに、撮像ステップで取得した画像に基づいてコロニーを検査する検査ステップと、検査ステップにおける検査結果を出力する出力ステップとを備える。このため、検査時に皿を検査用テーブル等に置く必要がないので、例えば検査用テーブルに付着又は堆積した塵埃等を、コロニーと間違える誤検出の発生頻度を低減できる。よって、コロニーの数をより正確に計数できる。
前記実施形態は、上記に限定されず、以下のように変更してもよい。
・昇降式の保持部を移送させる移送部がなく、保持部は昇降のみ行う構成でもよい。例えば撮像部が、保持部が持ち上げた皿と蓋の間に位置する撮像位置と撮像時以外のときに待機する待機位置との間を移動する構成とする。保持部が持ち上げた皿と蓋の間の撮像位置に待機位置から移動した撮像部は、皿よりも下方の位置から皿内の培地を撮像する。
・保持部は昇降式に限定されない。例えば搬送部の分離位置に昇降式のテーブルを設け、シャーレを載せたテーブルを上昇させて、上方位置に待機する吸着部に皿の底面を吸着させる。そして、テーブルを下降させることで、吸着部が皿を持ち上げた状態で、皿と蓋とを分離する。このように分離位置でシャーレを載置する部分を昇降式としてもよい。
・移送部は、ロータリ移送方式に限定されない。例えば保持部を搬送方向Xと平行な方向に直線状の経路で移送するリニア移送方式でもよい。分離位置で皿を持ち上げた保持部を、搬送方向Xに沿って検査位置まで移送し、検査位置で撮像後、保持部を搬送方向Xに沿って戻し位置BPまで移送し、戻し位置で保持部を下降させて皿を蓋に戻す構成とする。リニア移送方式の場合、搬送ベルトから外れた位置(撮像位置)にカメラを配置し、皿を持ち上げた保持部(吸着部)を撮像位置に移動させて培地を撮像し、撮像後の保持部を、戻し位置まで移動させる。そして、保持部を下降させて皿を蓋に戻した後、上昇させた保持部を、反搬送方向に沿って移動させて分離位置に戻す構成でもよい。このように移送部による保持部の移動経路は周回経路に限らず、直線経路でもよい。
・分離位置と戻し位置は同じ位置であってもよい。例えば保持部は、分離位置で蓋から皿を分離した後、分離位置から検査位置へ移動し、検査位置で撮像部が皿内の培地の撮像を終えた後、再び分離位置(戻し位置)へ戻る構成とする。
・保持部は、皿の底面を吸着する吸着部に限らず、皿の外周面を把持するチャック等の把持部でもよい。把持部であっても、例えば画像処理で把持部をコロニーと識別してコロニーを検出できれば、少し余分な画像処理等が必要になるものの、塵埃や水滴等の異物が少なく済み、比較的高い検出精度でコロニーを検出することはできる。
・皿内の培地を撮像する際にカメラを回転させなくてもよい。また、カメラを3つ以上の異なる回転角度で回動させて培地を撮像してもよい。
・検査装置30内を無菌にしたり清浄な空気の導入により大気圧よりも高圧に保持したりして、検査装置30の外部から内部への菌の侵入を抑える構成としてもよい。
・培地面についた水滴を取り除く水滴除去装置を設けたり、水滴除去動作を取り入れたりすることにより、培地面についた水滴の少なくとも一部を取り除いた後、培地面をカメラで撮像する構成及び手順をとってもよい。例えば吸水性部材(紙や布、不織布等の繊維)を培地面に接触させて水滴を吸収除去したり、吸引部(例えば吸引ノズル)の吸引口を培地面に近づけて水滴を吸引除去したり、エアを培地面に吹き付けて水滴を吹き飛ばしたりしてもよい。さらに、開口を下向きの状態で把持した皿を所定位置まで持ち上げる過程、又は所定位置に持ち上げた後、あるいは皿を例えば分離位置から検査位置へ移動するまでの途中の過程のどこかのタイミングで、例えば皿を上下に揺する水滴除去動作を行って、培地面から水滴を落下させて廃液部に回収する構成としてもよい。これらの構成及び手順によれば、培地面からカメラのレンズに水滴が落下して付着することを効果的に抑えることができ、レンズに落下した水滴に起因する画像のぼけが原因となるコロニーの検出精度の低下を効果的に抑えることができる。