(本発明者らによる知見)
特許文献1には、1次側の巻線の数が1つである場合に、その巻線の一端側の一部と他端側の一部とを引き出し線として用い、これらの引き出し線を回路基板に接続する技術が記載されている。本発明者らの検討によれば、この技術は、回路基板の設計自由度の確保に適している。引き出し線先端の到達可能範囲は広く、回路基板における引き出し線先端の接続位置が回路基板の設計の制約になり難いためである。しかしながら、本発明者らの検討によれば、この技術は、回路基板を介した巻線からの放熱を制限し易い。絶縁性確保のために引き出し線は被覆材により被覆される必要があり、被覆材は断熱材に近い熱抵抗を有していることが通常であり、この熱抵抗が引き出し線の熱伝達能力を制限するためである。そこで、本発明者らは、1次側の巻線の一端を回路基板に差し込み可能な端子ピンによりボビンに固定し、1次側の巻線の他端を含む一部を引き出し線として用いることを検討した。端子ピンは被覆材で被覆される必要はないので、端子ピンによれば、巻線と回路基板とを低熱抵抗で熱結合させることができる。このため、端子ピンは引き出し線に比べて熱を伝え易い。すなわち、引き出し線および端子ピンの組み合わせは、巻線の巻回部から回路基板への熱伝達と、回路基板の設計自由度確保とを両立させる。
ところで、本発明者らは、トランスを回路基板に取り付けることによって電気回路ユニットを構成することについても検討を進めている。本発明者らは、図10Aに示す電気回路ユニット800を作製した。電気回路ユニット800では、直流電源810、スイッチング素子841、スイッチング素子842およびトランス850が、プッシュプルインバータ回路を構成する。具体的に、電気回路ユニット800では、スイッチング素子841がオンになるタイミングにおいてスイッチング素子842がオフになる。また、スイッチング素子841がオフになるタイミングにおいてスイッチング素子842がオンになる。すなわち、直流電源810、スイッチング素子841およびスイッチング素子842が協働して、トランス850の第1巻線851と第2巻線852とに電圧を交互に印加する。これにより、トランス850の第3巻線853に交流電圧が印加される。
図10Bに示すように、トランス850では、第1巻線851、第2巻線852および第3巻線853のそれぞれは、鉄心855の周囲において、矢印の順に巻回されている。第1巻線851、第2巻線852および第3巻線853のそれぞれにおいて、巻き上げられている部分と巻き下げられている部分とが存在し、これらの間には絶縁部854が介在している。第1巻線851の一端は、端子ピン851Pmによりボビンに固定されている。第1巻線851の他端は、端子ピン851Pnによりボビンに固定されている。第2巻線852の一端は、端子ピン852Pmによりボビンに固定されている。第2巻線852の他端は、端子ピン852Pnによりボビンに固定されている。第3巻線853の一端は、端子ピン853Pmによりボビンに固定されている。第3巻線853の他端は、端子ピン853Pnによりボビンに固定されている。端子ピン851Pmは、図10Aの位置882に配置される。端子ピン851Pnは、位置881に配置される。端子ピン852Pmは、位置883に配置される。端子ピン852Pnは、位置884に配置される。位置881と位置883とは、同電位に接続される。位置882と位置884とは、同電位に接続されない。
本発明者らは、第1巻線851および第2巻線852の両方に、上述の引き出し線および端子ピンの組み合わせを適用することを検討した。この適用に当たっては、第1巻線851および第2巻線852から巻き下げられている部分をなくし、第1巻線851および第2巻線852の一部を引き出して引き出し線とする改変をすればよいとも思われる。すなわち、第1巻線851および第2巻線852に代えて、図10Cに示す第1巻線856および第2巻線857を採用し、第1巻線856の一端を端子ピン856Pによりボビンに固定し、第2巻線857の一端を端子ピン857Pによりボビンに固定し、第1巻線856における他端側の一部を引き出し線856Lとして引き出し、第2巻線857における他端側の一部を引き出し線857Lとして引き出せばよいとも思われる。しかしながら、これでは、良好な放熱性は得られない。すなわち、この改変後のトランスを用いる場合、端子ピン856Pを図10Aの位置882に配置させ、端子ピン857Pを位置883に配置させることになる。しかし、位置882と位置883とは、同電位に接続されない。このことは、端子ピン856Pおよび端子ピン857Pの両方を回路基板におけるひとまとまりの金属層(ベタパターン等)に接触させることができないことを意味する。これでは良好な放熱性は得られない。なお、引き出し線856Lは位置881に配置されるので、引き出し線856Lと端子ピン857Pとを回路基板におけるひとまとまりの金属部に接触させることはできる。しかしながら、このようにしても、良好な放熱性を得ることは難しい。絶縁性確保のために引き出し線は被覆材により被覆される必要があり、被覆材は断熱材に近い熱抵抗を有していることが通常であり、この熱抵抗が引き出し線の熱伝達能力を制限するためである。同じ問題が、トランスが1次側の巻線として第1巻線および第2巻線を有し、トランスが回路基板に取り付けられたときに第1巻線の両端の一方と第2巻線の両端の一方とが同電位に接続され第1巻線の両端の他方と第2巻線の両端の他方とが同電位に接続されない場合に発生する。
以上を踏まえ、本発明者らは、トランスの巻線と回路基板との接続方法の観点から、1次側の巻線の数が2つであるトランスの改良を目指した。具体的には、1次側の巻線として第1巻線および第2巻線を有し、回路基板に取り付けられたときに第1巻線の両端の一方と第2巻線の両端の一方とが同電位に接続され第1巻線の両端の他方と第2巻線の両端の他方とが同電位に接続されないトランスの改良を目指した。より具体的には、巻線の巻回部から回路基板への熱伝達と回路基板の設計自由度確保との両立に適したトランスを作製することを目指した。
すなわち、本開示の第1態様は、
回路基板に取り付け可能なトランスであって、
ボビンと、
前記ボビンに装着された鉄心と、
前記ボビンに巻回された巻線セットであって、前記巻線セットは1次側巻線部と2次側巻線部とを有し、前記1次側巻線部は第1巻線および第2巻線を有し、前記2次側巻線部は第3巻線を有し、前記第1巻線は巻き始めの位置から巻き終わりの位置までの部分である第1巻回部を有し、前記第2巻線は巻き始めの位置から巻き終わりの位置までの部分である第2巻回部を有する巻線セットと、を備え、
前記第1巻線の一端は、前記回路基板に差し込み可能な少なくとも1つの第1端子ピンにより前記ボビンに固定され、
前記第2巻線の一端は、前記回路基板に差し込み可能な少なくとも1つの第2端子ピンにより前記ボビンに固定され、
前記第1巻線では、前記第1巻回部の一端と、前記第1巻回部の他端と、前記第1巻線の他端であって前記ボビンに固定されていない他端と、がこの順に並んでおり、
前記第2巻線では、前記第2巻回部の一端と、前記第2巻回部の他端と、前記第2巻線の他端であって前記ボビンに固定されていない他端と、がこの順に並んでおり、
前記第1巻回部の前記一端を通り前記第1巻回部の巻回軸に直交する平面を第1基準平面と定義したとき、前記第1巻回部は、第1回転方向に回転しながら前記第1基準平面から離れていく形状を有し、
前記第2巻回部の前記一端を通り前記第2巻回部の巻回軸に直交する平面を第2基準平面と定義したとき、前記第2巻回部は、第2回転方向に回転しながら前記第2基準平面から離れていく形状を有し、
前記第2回転方向は、前記第1回転方向の反対方向であり、
前記トランスは、前記第1端子ピンと前記第2端子ピンが同電位に接続された状態において、前記第1巻線の前記他端に比べ前記第1巻線の前記一端が高電位になるように前記第1巻線に電圧が印加され一方で前記第2巻線に電圧が印加されないタイミングと、前記第2巻線の前記他端に比べ前記第2巻線の前記一端が高電位になるように前記第2巻線に電圧が印加され一方で前記第1巻線に電圧が印加されないタイミングと、が繰り返しおとずれることで、前記第3巻線に交流電圧が印加されるように構成されており、
前記第1巻線の前記他端を含む前記第1巻線の一部分によって第1引き出し線が構成され、
前記第2巻線の前記他端を含む前記第2巻線の一部分によって第2引き出し線が構成されている、トランスを提供する。
第1態様の技術は、トランスの巻線と回路基板との接続方法の観点から、1次側の巻線の数が2つであるトランスの改良することに適している。具体的には、1次側の巻線として第1巻線および第2巻線を有し、回路基板に取り付けられたときに第1巻線の両端の一方と第2巻線の両端の一方とが同電位に接続され第1巻線の両端の他方と第2巻線の両端の他方とが同電位に接続されないトランスの改良に適している。より具体的には、巻線の巻回部から回路基板への熱伝達と回路基板の設計自由度確保との両立に適している。
本開示の第2態様は、第1態様に加え、
前記第3巻線は巻き始めの位置から巻き終わりの位置までの部分である第3巻回部を有し、
前記第3巻回部は、前記第1巻回部および前記第2巻回部の一方を取り囲むように巻回され、
前記第1巻回部および前記第2巻回部の他方は、前記第3巻回部を取り囲むように巻回されているトランスを提供する。
第2態様によれば、第1巻回部と第3巻回部との間の磁気結合と、第2巻回部と第3巻回部との間の磁気結合とが均一になり易い。
本開示の第3態様は、第1態様または第2態様に加え、
前記トランスは、筒状の絶縁部材を備え、
前記第3巻線の巻数は、前記第1巻線の巻数よりも多く、前記第2巻線の巻数よりも多く、
前記第3巻線の一端は、前記回路基板に差し込み可能な少なくとも1つの一端側端子ピンにより前記ボビンに固定され、
前記第3巻線の他端は、前記回路基板に差し込み可能な少なくとも1つの他端側端子ピンにより前記ボビンに固定され、
前記第3巻線は、前記絶縁部材の内側で巻回された内側部分と、前記絶縁部材の外側で巻回された外側部分と、前記内側部分と前記外側部分とを接続する折り返し部分と、を有するトランスを提供する。
第3態様によれば、第1巻線の巻回部の巻数に対する第3巻線の巻回部の巻数の比率および第2巻線の巻回部の巻数に対する第3巻線の巻回部の巻数の比率を大きくし易い。つまり、変圧比を大きくし易い。
本開示の第4態様は、
第1〜第3態様のいずれか1つのトランスと、
前記回路基板と、を備えた、電気回路ユニットを提供する。
第4態様によれば、第1〜3態様のトランスを活かした電気回路ユニットを提供することができる。
本開示の第5態様は、第4態様に加え、
前記電気回路ユニットは、ひとまとまりの金属部を有し、
前記少なくとも1つの第1端子ピンおよび前記少なくとも1つの第2端子ピンは、前記金属部に接触している電気回路ユニットを提供する。
第5態様のように第1端子ピンおよび第2端子ピンをひとまとまりの金属部に接触させることは、放熱性確保の観点から有利である。
本開示の第6態様は、第5態様に加え、
前記金属部は、前記鉄心と離間しており、
前記回路基板と前記鉄心との間には空隙が形成されている電気回路ユニットを提供する。
第6態様の特徴は、鉄心から金属部への磁気漏れを防ぐ観点から有利である。
本開示の第7態様は、第4〜第6態様のいずれか1つに加え、
1次側回路と、
2次側回路と、を備え、
前記1次側回路と前記トランスとが協働して第1直流電圧から前記第3巻線に印加される交流電圧を生成し、
前記2次側回路は、前記第3巻線の前記交流電圧から第2直流電圧を生成する電気回路ユニットを提供する。
第7態様によれば、トランスを用いた電力変換を行うことができる。
本開示の第8態様は、第7態様に加え、
前記1次側回路は、一対のスイッチング素子を有し、
前記一対のスイッチング素子の一方と前記第1巻線とが直列接続された第1直列回路であって、前記第1直流電圧が印加される第1直列回路が形成され、
前記一対のスイッチング素子の他方と前記第2巻線とが直列接続された第2直列回路であって、前記第1直流電圧が印加される第2直列回路が形成され、
前記一対のスイッチング素子の前記一方は、前記第1直流電圧から前記第1巻線に印加される電圧を生成し、
前記一対のスイッチング素子の前記他方は、前記第1直流電圧から前記第2巻線に印加される電圧を生成する電気回路ユニットを提供する。
第8態様は、プッシュプルインバータ回路の構成に適している。
本開示の第9態様は、第8態様に加え、
前記電気回路ユニットは、第1の電位の部分と第2の電位が部分とが設定されたときに第3の電位の部分が現れる少なくとも1つの駆動部を有し、
前記少なくとも1つの駆動部は、
前記第1の電位に設定される第1の端子と、
前記第2の電位に設定される第2の端子と、
クロック信号を生成するクロック生成器と、
第1のコンデンサと、
前記第3の電位が現れる第2のコンデンサと、
第1のアノードおよび第1のカソードを有する第1のダイオードと、
第2のアノードおよび第2のカソードを有する第2のダイオードと、
第3のアノードおよび第3のカソードを有する第3のダイオードと、
前記第1の電位によって定まる第1出力電位を出力可能な第1出力部を有する第1のスイッチング素子と、
前記第3の電位によって定まる第2出力電位を出力可能な第2出力部を有する第2のスイッチング素子と、を備え、
前記第1出力部の電位が前記第1出力電位となるタイミングと前記第1出力電位ではない電位となるタイミングとは、前記クロック信号によって規定され、
前記第2出力部の電位が前記第2出力電位となるタイミングと前記第2出力電位ではない電位となるタイミングとは、前記クロック信号によって規定され、
前記第1出力部と前記第2のコンデンサとを接続する経路として、前記第1出力部から前記第2のコンデンサに向かって順に、前記第1のコンデンサ、前記第2のアノードおよび第2のカソードを通る経路が存在し、
前記第2の端子と前記第2のコンデンサとを接続する経路として、前記第2の端子から前記第2のコンデンサに向かって順に、前記第1のアノード、前記第1のカソード、前記第2のアノードおよび第2のカソードを通る経路と、前記第2の端子から前記第2のコンデンサに向かって順に、前記第3のアノードおよび前記第3のカソードを通る経路とが存在し、
前記一対のスイッチング素子は、前記少なくとも1つの駆動部によって駆動される電気回路ユニットを提供する。
第9態様によれば、第1の電位と第2の電位とを合算するというアイデアに基づいた
第3の電位を生成することができる。そして、生成された第3の電位を第2のスイッチング素子の出力に反映させることができ、その出力によって一対のスイッチング素子を駆動させることができる。
本開示の第10態様は、
第7〜第9態様のいずれか1つの電気回路ユニットと、
直流の電源電力を発電する少なくとも1つの電源とを備え、
前記電源電力を利用して、前記第1直流電圧を生成する、回路付電源ユニットを提供する。
第10態様によれば、第7〜9態様の電気回路ユニットを活かした回路付電源ユニットを提供することができる。
本開示の第11態様は、
第10態様の回路付電源ユニットを備え、
前記少なくとも1つの電源は、水素と酸素とから前記電源電力を発電する少なくとも1つの燃料電池である、燃料電池システムを提供する。
第11態様によれば、第10態様の回路付電源ユニットを活かした燃料電池システムを提供することができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
図1は、本実施形態の回路付電源ユニット100を示す。回路付電源ユニット100は、電気回路ユニット200と、電源600と、を有している。電気回路ユニット200は、1次側回路300と、トランス400と、2次側回路500と、を有している。電気回路ユニット200は、電圧を変換する機能を有している。その機能に着目した場合には、電気回路ユニット200を、電力変換装置と呼ぶことができる。電気回路ユニット200は回路基板(図5に回路基板の一具体例として回路基板210を示す)を有し、回路基板において1次側回路300および2次側回路500が形成されている。1次側回路300は、トランス400の1次側端子に接続されている。2次側回路500は、トランス400の2次側端子に接続されている。
電源600は、直流の電源電力を発電する。回路付電源ユニット100は、電源電力を利用して直流電圧(第1直流電圧)Vdc1を生成する。1次側回路300とトランス400とが協働して、第1直流電圧Vdc1から交流電圧(第3巻線433に印加される交流電圧)Vacを生成する。2次側回路500は、交流電圧Vacから第2直流電圧Vdc2を生成する。
図1に示すように、1次側回路300は、一対のスイッチング素子353Aおよび353Bを有している。トランス400は、2つの1次側の巻線(第1巻線431および432)と、1つの2次側の巻線(第3巻線433)と、を有している。一対のスイッチング素子の一方(図1ではスイッチング素子353A)と第1巻線431とが直列接続された第1直流回路が形成されている。第1直流回路には、第1直流電圧Vdc1が印加される。一対のスイッチング素子の他方(図1ではスイッチング素子353B)と第2巻線432とが直列接続された第2直列回路が形成されている。第2直列回路には、第1直流電圧Vdc1が印加される。一対のスイッチング素子の一方(図1ではスイッチング素子353A)は、第1直流電圧Vdc1から第1巻線431に印加される電圧を生成する。一対のスイッチング素子の他方(図1ではスイッチング素子353B)は、第1直流電圧Vdc1から第2巻線432に印加される電圧を生成する。スイッチング素子353Aがオンのタイミングにおいてスイッチング素子353Bはオフとなる。このタイミングでは、第1巻線431に電圧が印加され、第3巻線433に正電圧が印加される。スイッチング素子353Aがオフのタイミングにおいてスイッチング素子353Bはオンとなる。このタイミングでは、第2巻線432に電圧が印加され、第3巻線433に負電圧が印加される。これらのタイミングが繰り返しおとずれることで、第3巻線433に交流電圧Vacが印加されることとなる。以上の説明から理解されるように、電源600と、一対のスイッチング素子353Aおよび353Bと、トランス400とは、プッシュプルインバータ回路を構成する。交流電圧Vacは、2次側回路500によって第2直流電圧Vdc2に変換される。
[電源600]
電源600は、直流の電源電力を発電する。電源600としては公知の電源を用いることができる。図1では、電源600は1つの電源であるが、2以上の電源を用いることもできる。すなわち、回路付電源ユニット100は、少なくとも1つの電源を有していればよい。少なくとも1つの電源は、水素と酸素とから電源電力を発電する少なくとも1つの燃料電池であってもよい。この場合、回路付電源ユニット100を備えた燃料電池システムを構成することができる(詳細は後述)。
電源600は、図示しない主ポート、第1ポートおよび第2ポートを有している。主ポートからは、第1直流電圧Vdc1が取り出される。第1ポートおよび第2ポートは、第1直流電圧Vdc1とは異なる電圧が取り出されるように構成されている。具体的に、第1ポートからは、後述する第1の端子311(図2A等)の電位を第1の電位に設定したり、電子部品を制御したりするのに利用される電圧が取り出される。第2ポートからは、第2の端子312の電位を第2の電位に設定したり、回路付電源ユニット100の補機等を制御したりするのに利用される電圧が取り出される。本実施形態では、第1ポートから取り出される電圧は、第2ポートから取り出される電圧よりも低い。なお、本実施形態では、第1のポートおよび第2ポートは、それぞれ有限の電力供給能力を有する。
[1次側回路300]
上述のように、1次側回路300は、トランス400と協働して、第1直流電圧Vdc1から交流電圧Vacを生成する。本実施形態の1次側回路300は、図1に示すように、一対のスイッチング素子(第3のスイッチング素子)353Aおよび353Bと、これらを駆動する少なくとも1つの駆動部と、を有している。
スイッチング素子353Aを駆動する駆動部として、図2Aに示す駆動部301Aが例示される。駆動部301Aは(電気回路ユニット200は)、第1の端子311と、第2の端子312と、第3の端子313と、クロック生成器320と、第1のコンデンサ331と、第2のコンデンサ332と、第1のダイオード341と、第2のダイオード342と、第3のダイオード343と、第1のスイッチング素子351と、第2のスイッチング素子352と、を有している。
第1の端子311は、第1の電位に設定される端子である。第2の端子312は、第2の電位に設定される端子である。本実施形態では、第2の電位は、第1の電位よりも大きい。
本実施形態の回路付電源ユニット100では、電源600の直流の電源電力を利用して、第1の端子311の電位を第1の電位に設定する。また、電源600の直流の電源電力を利用して、第2の端子312の電位を第2の電位に設定する。
クロック生成器320は、クロック信号を生成する。本実施形態のクロック生成器320は、マイクロコントロールユニット(MCU)である。本実施形態のクロック信号は、第1の電位と接地電位との電位差を振幅とするパルス波である。図2Aの例では、クロック生成器320は、第1の端子311および接地電位に接続されることで、そのようなパルス波を生成可能とされている。
第1のコンデンサ331としては、公知のコンデンサを使用することができる。
第2のコンデンサ332としては、公知のコンデンサを使用することができる。第2のコンデンサ332では、第3の電位が現れる。具体的に、第2のコンデンサ332は、第3の電位が現れる一端332mと、接地電位に接続されている他端332nとを有している。本実施形態では、第3の電位は、第2の電位よりも大きく、第1の電位よりも大きい。
本実施形態では、第2のコンデンサ332の一端332mの電位を安定させる観点から、第2のコンデンサ332の容量を、第1のコンデンサ331の容量よりも大きくしている。同観点からは、第1のコンデンサ331の容量に対する第2のコンデンサ332の容量の比率は、例えば3倍〜20倍にすることができる。また、第1のコンデンサ331の容量を例えば10μF〜100μFにし、第2のコンデンサ332の容量を例えば300μF〜2000μFにすることができる。
第1のダイオード341は、第1のアノード341aおよび第1のカソード341cを有している。第2のダイオード342は、第2のアノード342aおよび第2のカソード342cを有している。第3のダイオード343は、第3のアノード343aおよび第3のカソード343cを有している。第1のダイオード341、第2のダイオード342および第3のダイオード343としては、公知のダイオードを使用することができる。
本実施形態では、第1のカソード341cと、第2のアノード342aとは、同電位に接続されている。第1のアノード341aと、第3のアノード343aと、第2の端子312とは、同電位に接続されている。第2のカソード342cと、第3のカソード343cと、第2のコンデンサ332(の一端332m)とは、同電位に接続されている。
本実施形態の第1のスイッチング素子351は、第1入力部351iと、第1出力部351oと、第1非接地部351uと、第1接地部351gと、を有している。
第1出力部351oは、第1出力電位を出力可能である。第1出力電位は、第1の電位によって定まる。第1出力部351oの電位が第1出力電位となるタイミングと第1出力電位ではない電位となるタイミングとは、クロック信号によって規定される。本実施形態では、第1出力部351oの電位は、第1出力電位と第1出力電位ではない電位との間でパルス状に変化する。具体的には、第1出力電位は、第1の電位である。上記の第1出力電位ではない電位は、本実施形態では第1出力電位よりも低い電位であり、具体的には接地電位である。
図2Aに示す例では、第1のスイッチング素子351の第1入力部351iは、クロック生成器320に接続されている。第1非接地部351uは、第1の電位に設定されている。第1接地部351gは、接地電位に設定されている。第1出力部351oの電位は、第1の電位と接地電位との間で切り替えられる。
図2Aから理解されるように、第1出力部351oと第2のコンデンサ332とを接続する経路として、1つの経路が存在する。この1つの経路は、第1出力部351oから第2のコンデンサ332に向かって順に、第1のコンデンサ331、第2のアノード342aおよび第2のカソード342cを通る経路(経路X)である。第2の端子312と第2のコンデンサ332とを接続する経路として、2つの経路が存在する。2つの経路のうちの1つは、第2の端子312から第2のコンデンサ332に向かって順に、第1のアノード341a、第1のカソード341c、第2のアノード342aおよび第2のカソード342cを通る経路(経路Y)である。2つの経路のうちのもう1つは、第2の端子312から第2のコンデンサ332に向かって順に、第3のアノード343aおよび第3のカソード343cを通る経路(経路Z)である。
第3の端子313は、第2のコンデンサ332の一端332mと同電位に接続されている。第3の端子313からは、第3の電位を取り出すことができる。ただし、第3の端子313は省略され得る。
第2のスイッチング素子352は、第2のコンデンサ332(の一端332m)に接続されている。第2のスイッチング素子352は、第2入力部352iと、第2出力部352oと、第2非接地部352uと、第2接地部352gと、を有している。
第2出力部352oは、第2出力電位を出力可能である。第2出力電位は、第3の電位によって定まる。第2出力部352oの電位が第2出力電位となるタイミングと第2出力電位ではない電位となるタイミングとは、クロック信号によって規定される。本実施形態では、第2出力部352oの電位は、第2出力電位と第2出力電位ではない電位との間でパルス状に変化する。具体的には、第2出力電位は、第3の電位である。上記の第2出力電位ではない電位は、本実施形態では第2出力電位よりも低い電位であり、具体的には接地電位である。
図2Aに示す例では、第2のスイッチング素子352には、増幅されていないクロック信号が入力される。このため、電気回路ユニット200は、シンプルに構成され易い。この例では、第2のスイッチング素子352は、クロック信号を増幅することによって、第2出力電位(具体的には第3の電位)を生成する。
図2Aに示す例では、第2のスイッチング素子352の第2入力部352iは、クロック生成器320に接続されている。第2非接地部352uは、第3の電位に設定されている。第2接地部352gは、接地電位に設定されている。第2出力部352oの電位は、第3の電位と接地電位との間で切り替えられる。
第3のスイッチング素子353A(および353B)は、第2出力部352oの電位によって駆動される。
本実施形態では、第3のスイッチング素子353A(および353B)は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。MOSFET353A(および353B)は、ゲート353gと、ドレイン353dと、ソース353sとを有している。ゲート353gは、第2出力部352oに接続されている。
以下、本実施形態の駆動部301Aの動作について説明する。
第1出力部351oの電位が第1出力電位よりも低い電位である初期状態において、第1のコンデンサ331の他端331nには、第2の端子312から供給された電荷が蓄積されている。第1のコンデンサ331の他端331nの電位は、第2の端子312の第2の電位と、第1のダイオード341による電圧降下と、に依存した電位である。第2のコンデンサ332の一端332mには、第2の端子312から供給された電荷が蓄積されている。第2のコンデンサ332の電位は、第2の端子312の第2の電位と、経路Zに存する第3のダイオード343による電圧降下と、に依存した電位である。
次に、第1出力部351oの電位が第1出力電位に切り替わったときに、第1出力部351oから(より正確には、第1の端子311から)第1のコンデンサ331の一端331mに電荷が供給される。この供給により、第1のコンデンサ331の一端331mおよび他端331nの電位は、第1出力電位の分だけかさ上げされる。このかさ上げにより、第1のコンデンサ331の他端331nに蓄積されていた電荷が、経路Xを通じて第2のコンデンサ332の一端332mに移動する。結果として、一端332mの電位は、第1出力部351oの第1出力電位と、第2の端子312の第2の電位と、経路Xに存する第1のダイオード341による電圧降下と、経路Xおよび経路Yの重複部に存する第2のダイオード342による電圧降下と、に依存したものになる。すなわち、一端332mの電位は、第3の電位となる。
次に、第1出力部351oの電位が第1出力電位よりも低い電位に切り替わったときに、第2の端子312から第1のコンデンサ331の他端331nに電荷が供給される。このとき、第1のコンデンサ331の他端331mに蓄積されていた電荷は、第1出力部351oおよび第1接地部351gを通じて放出される。
その後、第1出力部351oの電位は、第1出力電位と第1出力電位よりも低い電位との間で繰り返し切り替えられる。この繰り返しにより、第1のコンデンサ331の他端331nから第2のコンデンサ332の一端332mへの電荷の移動と、第2の端子312から第1のコンデンサ331の他端331nへの電荷の供給とが繰り返される。本実施形態では、第2のコンデンサ332の容量は第1のコンデンサ331の容量よりも大きい。このため、第1出力部351oの電位が一旦第1出力電位となった後において第1出力部351oの電位が第1出力電位よりも低い電位となるタイミングが断続的に現れるが、第2のコンデンサ332の電位が第3の電位から大きく低下することはない。つまり、定常状態において、第2のコンデンサ332の電位が第3の電位に実質的に維持される。
上述のように、第2出力電位は第3の電位によって定まるものであり、本実施形態では、その第3の電位は第2の電位よりも大きく第1の電位よりも大きいものである。このため、本実施形態によれば、大きい第2出力電位を確保することができる。しかも、本実施形態では、第2のコンデンサ332の一端332mの電位が第3の電位に実質的に維持される。このため、本実施形態によれば、第2出力電位を実質的に同じ大きさに維持することができる。つまり、第2出力部352oの電位を、振幅が十分に大きくかつ均一であるパルス状とすることができる。そして、そのような電位によって、第3のスイッチング素子353Aは駆動される。
以下、具体例を挙げてさらに説明する。この具体例では、第1出力部351oの電位が5V(第1の電位)と0V(第1の電位よりも低い電位)との間でパルス状に変化し、第1のダイオード341による電圧降下が0.8Vであり、第2のダイオード342による電圧降下が0.8Vであり、第3のダイオード343による電圧降下が0.8Vであるものとする。第2出力電位が第3の電位であるものとする。また、第3のスイッチング素子353AがMOSFET353Aであるものとする。
この具体例では、第1出力部351oの電位が0Vである初期状態において、第1のコンデンサ331の他端331nの電位は、第2の端子312の12Vと、第1のダイオード341による電圧降下0.8Vと、に依存した電位である。すなわち、他端331nの電位は、12V−0.8V=11.2Vである。第2のコンデンサ332の一端332mの電位は、第2の端子312の12Vと、第3のダイオード343による電圧降下0.8Vと、に依存した電位である。すなわち、一端332mの電位は、12V−0.8V=11.2Vである。
次に、第1出力部351oの電位が5Vに切り替わったときに、第1のコンデンサ331の一端331mおよび他端331nの電位は5Vかさ上げされ、11.2V+5V=16.2Vとなる。第2のコンデンサ332の一端332mの電位は、第2の端子312の12Vと、第1出力部351oの5Vと、第1のダイオード341による電圧降下0.8Vと、第2のダイオード342による電圧降下0.8Vとに依存したものとなる。すなわち、一端332mの電位は、12V+5V−0.8V−0.8V=15.4Vとなる。この15.4Vは、第3の電位に対応する。
次に、第1出力部351oの電位は0Vに切り替わる。その後、第1出力部351oの電位は5Vと0Vとの間で繰り返し切り替えられる。これにより、第2のコンデンサ332の一端332mの電位が15.4Vに実質的に維持される。
上記の具体例の場合、第2出力部352oの電位を、0Vと15.4Vとの間でパルス状に変化させることができる。このことは、ゲート353gの電位を0Vと15.4Vとの間でパルス状に変化させることができることを意味する。
通常、MOSFETをオンにするためのゲート電圧が十分に高くない場合、オン抵抗(MOSFETがオンのときのドレイン−ソース間の抵抗)が高くなる。図3に示す一例では、ゲート電圧が5Vまたは12Vであるときのオン抵抗は1mΩを上回っている。これに対し、ゲート電圧が15.4Vであるときのオン抵抗は1mΩを下回っている。このことから、MOSFETのゲート電圧を5V(第1の電位)と0Vとの間でパルス状に変化させたり、12V(第2の電位)と0Vとの間でパルス状に変化させたりする場合に比べて、15.4Vと0Vとの間でパルス状に変化させることが、MOSFETのオン抵抗を下げ、MOSFETにおける電力損失を低下させるのに役立つことが理解される。
本実施形態の回路付電源ユニット100では、スイッチング素子(MOSFET)353Aおよび353Bをソフトスイッチングさせることが望ましい。具体的には、回路付電源ユニット100において電流共振回路が構成され、スイッチング素子353Aおよび353Bは、電流共振現象を利用することによって、自身を流れる電流がゼロまたは十分に小さいときにスイッチングを行うことが望ましい。このようなスイッチングは、ZCS(Zero Current Switching)と呼ばれる。このようなスイッチングによれば、スイッチングロスを低減することができる。なお、回路付電源ユニット100を備えた燃料電池システムが構成される場合には、スイッチング素子353Aおよび353Bに大きな電流が流れ易い。そのような場合にスイッチング素子353Aおよび353BにZCSを行わせることは、スイッチングロス低減の観点から特に有利である。
また、図2Aに示す3つのスイッチング素子351,352および353Aは、全てクロック信号に基づいて動作する。すなわち、本実施形態によれば、スイッチング素子351,352および353Aの同期をとることもできる。
変形実施形態では、電気回路ユニット200は、クロック信号を増幅する。第2のスイッチング素子352には、増幅されたクロック信号が入力される。このため、第2のスイッチング素子352の動作が安定し易い。
変形実施形態の一例を、図2Bを参照しながら説明する。図2Bに示す駆動部302A(302B)は、クロック信号を増幅する増幅器355を有している。増幅されたクロック信号は、第2のスイッチング素子352(の第2入力部352i)に入力される。クロック生成器320、増幅器355および第2のスイッチング素子352は、この順で接続されている。
具体的に、増幅器355は、第4のスイッチング素子354を有している。第4のスイッチング素子354は、第4入力部354iと、第4出力部354oと、第4非接地部354uと、第4接地部354gと、を有している。第4出力部354oは、第1の電位によって定まる第4出力電位を出力可能である。第4出力部354oの電位が第4出力電位となるタイミングと第4出力電位ではない電位となるタイミングとは、クロック信号によって規定される。本実施形態では、第4出力部354oの電位は、第4出力電位と第4出力電位ではない電位との間でパルス状に変化する。第4出力部354oの電位は、増幅されたクロック信号として第2のスイッチング素子352によって利用される。具体的には、第4出力電位は、第1の電位である。上記の第4出力電位ではない電位は、本実施形態では第1の電位よりも低い電位であり、具体的には接地電位である。
図2Bに示す例では、第4のスイッチング素子354の第4入力部354iは、クロック生成器320に接続されている。第4非接地部354uは、第1の電位に設定されている。第4接地部354gは、接地電位に設定されている。第4出力部354oの電位は、第1の電位と接地電位との間で切り替えられる。
変形実施形態の別例を、図2Cを参照しながら説明する。図2Cに示す駆動部303A(303B)では、第1のスイッチング素子351の第1出力部351oが、第1のコンデンサ331とともに、第2のスイッチング素子352(の第2入力部352i)に接続されている。第1出力部351oの電位は、増幅されたクロック信号として第2のスイッチング素子352によって利用される。図2Cの例によれば、増幅器等の別途の要素を設けずとも第2のスイッチング素子352の動作が安定し易くなる。
スイッチング素子353Bも、駆動部301A,302Aまたは303Aと同じ構成を有する駆動部301B,302Bまたは303Bによって駆動され得る。すなわち、2つの駆動部により、2つのスイッチング素子353Aおよび353Bを駆動させることができる。
2つのスイッチング素子353Aおよび353Bの駆動を、1つの駆動部301A,302Aまたは303Aにより実現することもできる。
[トランス400]
図1から理解されるように、トランス400は、1次側回路300と協働して、第1直流電圧Vdc1から交流電圧Vacを生成する。トランス400は、回路基板210(図4A〜図5参照)に取り付け可能である。以下、図4A〜図11を参照しながらトランス400について説明する。なお、図6A〜図6Dでは、図面の見易さを考慮して、ボビン410を省略している。図6Bおよび図6Cでは、図面の見易さを考慮して、鉄心420を省略している。図6Cでは、図面の見易さを考慮して、第1巻線431および第2巻線432を省略している。図6A〜6Dの矢印は、巻き始めの位置から巻き終わりの位置に向かう方向を表している。
トランス400が取り付けられる回路基板210は、平板状の外観を有する。回路基板210には、ベタパターンが形成されている。ベタパターンは、ひとまとまりの金属部によって構成される。具体的に、ベタパターンは、厚さが均一で膜状でひとまとまりの金属部によって構成される。本実施形態では、回路基板210は、複層構造を有し、複層構造の内層にベタパターンを含むベタパターン層が形成されている。ただし、回路基板210の表層にベタパターンを形成することもできる。ベタパターンを構成する金属としては、銅およびアルミが例示される。ベタパターン(ひとまとまりの金属部)の厚さは特に限定されないが、放熱性確保の観点からは、例えば15μm〜1000μmである。また、放熱性確保の観点から、ベタパターン層を複数層設けることもできる。
図5は、回路基板210をその厚さ方向に沿って見たときの平面図である。一点鎖線で示す領域211は、1次側回路300においてベタパターンが形成されている領域である。略正方形の点線で示す領域401は、トランス400が配置される領域である。図5の例では、領域401の半分以上が領域211と重複している。領域211は、領域401とは重複しない位置まで拡がっている。領域211の面積は、領域401の面積よりも大きい。領域211内には、トランス400の1次側の2つの巻線431,432の端子ピン441,442が差し込まれる穴241,242が存在する。穴241および242は、端子ピン441および442をベタパターンに導く。こうして、端子ピン441および442は、ベタパターンに接触し、1次側回路300に接続される。2点鎖線で示す領域220は、2次側回路500に対応する領域である。領域220内には、2次側の巻線433の端子ピン443m,443nが差し込まれる穴243m,243nが存在する。穴243m,243nに差し込まれた状態で、端子ピン443m,443nは2次側回路500に接続される。
トランス400は、ボビン410(図4A〜図4Dおよび図8A〜図9C参照)と、鉄心420(図4A、図4B、図4D、図6A、図6Dおよび図8A〜図8C参照)と、巻線セット438(図4Bおよび図6A参照)と、を有している。
図9A〜図9Cに示すように、本実施形態のボビン410は、端子側フランジ部411と、引き出し線側フランジ部412と、胴体部415と、を有している。図8Cおよび図9Cに示すように、端子側フランジ部411には、少なくとも1つ(図の例では複数であり、具体的には4つ)の第1端子ピン441、少なくとも1つ(図の例では複数であり、具体的には4つ)の第2端子ピン442、少なくとも1つ(図の例では1つ)の一端側端子ピン443mおよび少なくとも1つ(図の例では1つ)の他端側端子ピン443nが固定されている。引き出し線側フランジ部412は、胴体部415から見て端子側フランジ部411とは反対側に設けられている。胴体部415には、巻線セット438が巻回されている。また、ボビン410は、鉄心420の一部を挿入させるための穴419を有している。穴419は、胴体部415を貫通している。端子ピン441,442,443mおよび443nは、金属製である。端子ピン441,442,443mおよび443nを構成する金属としては、銅が例示される。端子ピン441,442,443mおよび443nは、表面をSn−Cuめっきした鉄線によって構成されていてもよい。
図4A〜図4D、図6Aおよび図8A〜図8Cに示すように、鉄心420は、ボビン410に装着されている。鉄心420は、ボビン410の穴419に挿入された部分と、巻線セット438を巻回軸の外周側から挟む位置にある一対の部分と、この一対の部分を端子側フランジ部411の側で接続する部分と、この一対の部分を引き出し線側フランジ部412の側で接続する部分と、を有している。具体的に、鉄心420は、EER型の鉄心である。鉄心420を構成する材料としては、フェライト、ケイ素鋼およびパーマロイが例示される。
図4Bに示すように、巻線セット438は、ボビン410に巻回されている。図6Aに示すように、巻線セット438は、1次側巻線部435と2次側巻線部436とを有している。1次側巻線部435は、1次側の巻線である第1巻線431および第2巻線432を有している。2次側巻線部436は、2次側の巻線である第3巻線433を有している。第1巻線431と第3巻線433と(第1巻回部431wと第3巻回部433wと)は、磁気的に結合している。第2巻線432と第3巻線433と(第2巻回部432wと第3巻回部433wと)は、磁気的に結合している。第1巻線431と第3巻線433との間(第1巻回部431wと第3巻回部433wとの間)には、絶縁部材480が介在している。第2巻線432と第3巻線433との間(第2巻回部432wと第3巻回部433wとの間)には、絶縁部材480が介在している。絶縁部材480は、例えば絶縁テープである。なお、図4A〜図4Dに示すように、絶縁部材480は、鉄心420の外周の一部も覆っている。
第3巻線433の巻数は、第1巻線431の巻数よりも多く、第2巻線432の巻数よりも多い。このため、トランス400は、1次側回路300の電圧を昇圧して2次側回路500に出力することができる。この場合、第1巻線431を流れる電流は第3巻線433を流れる電流よりも大きく、第2巻線432を流れる電流は第3巻線433を流れる電流よりも大きくなる。耐電流性確保の観点から、第1巻線431の径は第3巻線433の径よりも大きい径とされており、第2巻線432の径は第3巻線433の径よりも大きい径とされている。
図7A、図8A、図8B、図8C、図9A、図9Bおよび図9Cから理解されるように、第1巻線431の一端431mは、回路基板210に差し込み可能な少なくとも1つの第1端子ピン441によりボビン410に固定されている。本実施形態では、第1巻線431は複数の線材の束であり、第1巻線431を構成する複数の線材の各々は互いに異なる第1端子ピン441に接続されている。この例では、この線材の数は4つであり、第1端子ピン441の数も4つである。具体的に、この例では、第1巻線431は、絶縁スリーブ490を通過する前は複数の線材の束の状態で第1端子ピン441に近づいていき、絶縁スリーブ490を通過した後は束が解かれた状態となって各線材が互いに異なる第1端子ピン441に至っている。本実施形態では、第1巻線431と第1端子ピン441とは半田付けされている。
図4C、図7B、図8B、図8C、図9Bおよび図9Cから理解されるように、第2巻線432の一端432mは、回路基板210に差し込み可能な少なくとも1つの第2端子ピン442によりボビン410に固定されている。本実施形態では、第2巻線432は複数の線材の束であり、図4Cの例では、第2巻線432を構成する複数の線材の各々は互いに異なる第2端子ピン442に接続されている。図4Cの例では、この線材の数は4つであり、第2端子ピン442の数も4つである。具体的に、図4Cの例では、第2巻線432は、絶縁スリーブ490を通過する前は複数の線材の束の状態で第2端子ピン442に近づいていき、絶縁スリーブ490を通過した後は束が解かれた状態となって各線材が互いに異なる第2端子ピン442に至っている。本実施形態では、第2巻線432と第2端子ピン442とは半田付けされている。
図8A、図8C、図9Aおよび図9Cから理解されるように、第3巻線の433の一端433mは、回路基板210に差し込み可能な少なくとも1つの一端側端子ピン443mによりボビン410に固定されている。図4C、図8Cおよび図9Cから理解されるように、第3巻線433の他端433nは、回路基板210に差し込み可能な少なくとも1つの他端側端子ピン443nによりボビン410に固定されている。
図6Bおよび図7Aに示しているように、第1巻線431は巻き始めの位置から巻き終わりの位置までの部分である第1巻回部431wを有している。本実施形態の第1巻線431では、第1巻線431の一端431mと、第1巻回部431wの一端431wmと、第1巻回部431wの他端431wnと、第1巻線431の他端431nであってボビン410に固定されていない他端431nと、がこの順に並んでいる。そして、図7Aに示しているように、第1巻回部431wの一端431wmを通り第1巻回部431wの巻回軸431wxに直交する平面を第1基準平面431wrと定義したとき、第1巻回部431wは、第1回転方向431wdに回転しながら第1基準平面431wrから離れていく形状(第1形状)を有している。具体的には、第1形状は螺旋形状である。第1巻回部431wには、第1回転方向431wdに回転しながら第1基準平面431wrに近づいていく部分は存在しない。なお、第1回転方向431wdは、巻回軸431wxを周回する方向である。
図6Bおよび図7Bに示しているように、第2巻線432は巻き始めの位置から巻き終わりの位置までの部分である第2巻回部432wを有している。本実施形態の第2巻線432では、第2巻線432の一端432mと、第2巻回部432wの一端432wmと、第2巻回部432wの他端432wnと、第2巻線432の他端432nであってボビン410に固定されていない他端432nと、がこの順に並んでいる。そして、図7Bに示しているように、第2巻回部432wの一端432wmを通り第2巻回部432wの巻回軸432wxに直交する平面を第2基準平面432wrと定義したとき、第2巻回部432wは、第2回転方向432wdに回転しながら第2基準平面432wrから離れていく形状(第2形状)を有している。具体的には、第2形状は螺旋形状である。第2巻回部432wには、第2回転方向432wdに回転しながら第2基準平面432wrに近づいていく部分は存在しない。第2回転方向432wdは、巻回軸432wxを周回する方向であり、第1回転方向431wdの反対方向である。
先に説明した図10Bに示すトランス850では、第1巻線851の両端および第2巻線852の両端が、端子ピンにより位置881〜884に接続されている。しかし、この手法は、上述のように、回路基板の設計自由度の確保には必ずしも適していない。図10Cに示すように、引き出し線856L,857Lの採用により設計自由度を確保しようとすると、良好な放熱性が確保されないことも先に述べた通りである。
これに対し、本実施形態のトランス400の第1巻線431では、他端431nはボビン410に固定されていない。このため、第1巻回部431wの他端431wnと第1巻線431の他端431nとの間に部分を、引き出し線431Lとして利用できる。同様に、第2巻回部432wの他端432wnと第2巻線432の他端432nとの間の部分を、引き出し線432Lとして利用できる。すなわち、本実施形態のトランス400は、回路基板の設計自由度の確保の観点から、図10Bに示すトランス850よりも有利である。
しかも、本実施形態のトランス400では、第1巻線431の第1巻回部431wが第1形状を有し、第2巻線432の第2巻回部432wが第2形状を有している。このため、図1を用いて説明したプッシュプルインバータ回路は、第1端子ピン441を位置181に配置させ、第2端子ピン442を位置183に配置させることによって実現される。位置181と位置183とは同電位に接続される。このため、第1端子ピン441および第2端子ピン442の両方を回路基板210におけるひとまとまりの金属部(ベタパターン)に接触させることができる。すなわち、良好な放熱性が確保される。
以上の理由で、本実施形態のトランス400は、巻線の巻回部から回路基板への熱伝達(放熱性)と回路基板の設計自由度確保との両立に適している。実際に、本実施形態では、少なくとも1つの第1端子ピン441を回路基板210の穴241に差し込み、少なくとも1つの第2端子ピン442を回路基板210の穴242に差し込み、これらの端子ピン441,442をひとまとまりの金属部(ベタパターン)に接触させることによって放熱性を確保している。また、他端431wnと他端431nとの間の部分を引き出し線431Lとして利用し、他端432wnと他端432nとの間の部分を引き出し線432Lとして利用することで、回路基板210の設計自由度を確保している。なお、これらの効果は、トランス400がプッシュプルインバータ回路の構成に用いられる場合以外にも得られる。具体的に、トランス400が回路基板210に取り付けられたときに第1巻線431の両端の一方と第2巻線432の両端の一方とが同電位に接続され第1巻線431の両端の他方と第2巻線432の両端の他方とが同電位に接続されない場合には、同じ効果が得られる。
端子ピン441,442をひとまとまりの金属部(ベタパターン)に接触させつつ巻線431,432の他端431n,432nを含む一部分を引き出し線431L,432Lとして利用することには、別のメリットもある。すなわち、本実施形態のトランス400を採用する場合も、図10Bのトランスを採用する場合も、図1に示す位置181および位置183と位置182との間との絶縁を確保し、位置181および位置183と位置184との間の絶縁を確保し、位置183と位置184との間の絶縁を確保する必要がある。図10Bに示すように第1巻線851の両端および第2巻線852の両端を端子ピンを用いて回路基板に接続する場合には、回路基板におけるボビン直下の領域(典型的には、回路基板の厚さ方向に沿っていたときにボビンと重複する領域)という比較的狭い領域内でこれらの絶縁を確保する必要が生じる。これに対し、本実施形態のように引き出し線431L,432Lを採用する場合には、互いに絶縁されるべき一方の位置と他方の位置との間隔を大きくし易い。このことは、上記の絶縁をとることを容易化する。言うまでもないが、端子ピン441,442をひとまとまりの金属部(ベタパターン)に接触させていることもまた、絶縁の容易化に寄与している。絶縁の容易化は、回路基板の設計自由度の向上、電気回路ユニット200の低コストでの実現等にも繋がる。
第1巻回部431wの他端431wnと第1巻線431の他端431nとの間の距離と、第2巻回部432wの他端432wnと第2巻線432の他端432nとの間の距離とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。図示の例では、前者の距離が、後者の距離よりも短い。
図4Aに示す例では、第1巻線431の他端431nには、圧着端子461が取り付けられている。圧着端子461と回路基板210とは、螺子471によって固定されている。このようにして、第1巻線431の他端431nは、1次側回路300に接続されている。第2巻線432の他端432nには、圧着端子462が取り付けられている。圧着端子462と回路基板210とは、螺子472によって固定されている。このようにして、第2巻線432の他端432nは、1次側回路300に接続されている。
本実施形態のトランス400では、第1巻線431の第1巻回部431wは第1形状を有し、第2巻線432の第2巻回部432wは第2形状を有している。このため、図6A、図6Bおよび図6Dから理解されるように、第1巻回部431wを第1巻回部431wの巻回軸431wxに沿って見たとき、第1巻回部431wを構成する第1巻線431の一部と別の一部とが横に並ぶことがない。同様に、第2巻回部432wを第2巻回部432wの巻回軸432wxに沿って見たとき、第2巻回部432wを構成する第2巻線432の一部と別の一部とが横に並ぶことがない。このため、トランス400のサイズは大きくなり難い。
第1形状には、コスト面の利点もある。すなわち、図10Bのトランス850のように、第1巻線851に巻き上げられている部分と巻き下げられている部分とが存在する場合、それらの部分の間に絶縁部材を介在させる必要がある。これに対し、第1形状を採用すれば、そのような絶縁部材を省略することができる。この点は、第2形状についても同様である。
図6Cおよび図6Dに示すように、第3巻線433は巻き始めの位置から巻き終わりの位置までの部分である第3巻回部433wを有している。図6A、図6Bおよび図6Dから理解されるように、第3巻回部433wは、第1巻回部431wおよび第2巻回部432wの一方(図6A、図6Bおよび図6Dでは第2巻回部432w)を取り囲むように巻回され、第1巻回部431wおよび第2巻回部432wの他方(図6A、図6Bおよび図6Dでは第1巻回部431w)は、第3巻回部433wを取り囲むように巻回されている。この構成は、磁気結合の観点から有利である。この点について、図11の構成と対比しながら説明する。図11の構成は、第2巻線432の位置と第3巻線433の位置が逆になるように(および付随するピン等の位置が変更されるように)図6Aの構成を変更したものである。図11の構成では、第2巻回部432wが第3巻回部433wを取り囲み、第1巻回部431wが第2巻回部432wを取り囲んでいる。図11の構成では、第1巻回部431wと第3巻回部433wとの間の距離が、第2巻回部432wと第3巻回部433wとの間の距離よりも長い。従って、第1巻回部431wと第3巻回部433wとの間の磁気結合が、第2巻回部432wと第3巻回部433wとの間の磁気結合よりも弱くなり易い。これに対し、図6Aの構成では、第1巻回部431wと第3巻回部433wとの間の距離と、第2巻回部432wと第3巻回部433wとの間の距離との差を小さくすることができる。すなわち、図6Aの構成によれば、第1巻回部431wと第3巻回部433wとの間の磁気結合と、第2巻回部432wと第3巻回部433wとの間の磁気結合とが均一になり易い。
図6Cおよび図6Dに示すように、トランス400は、筒状の絶縁部材480t(480)を有している。そして、第3巻線433は(具体的には、第3巻回部433wは)、筒状の絶縁部材480tの内側で巻回された内側部分433iと、絶縁部材の外側で巻回された外側部分433oと、内側部分433iと外側部分433oとを接続する折り返し部分433tと、を有している。この特徴によれば、第1巻回部431wの巻数に対する第3巻回部433wの巻数の比率および第2巻回部432wの巻数に対する第3巻回部433wの巻数の比率を大きくし易い。つまり、変圧比を大きくし易い。本実施形態では、内側部分433iは、図7Aで説明した第1形状と同じ形状(具体的には螺旋形状)を有する。外側部分433oは、図7Bで説明した第2形状と同じ形状(具体的には螺旋形状)を有する。ただし、内側部分433iが第2形状と同じ形状を有し、外側部分433oが第1形状と同じ形状を有していてもよい。
なお、本実施形態では、巻回軸432wxと、巻回軸431wxと、第3巻回部433wの巻回軸とは同じである。すなわち、第1巻回部431w、第2巻回部432wと、第3巻回部433wの巻回軸とは共通する巻回軸(共通軸)を有している。また、トランス400が回路基板210に取り付けられた状態において、第1巻回部431wは、共通軸を周回する第1回転方向に回転しながら回路基板210から離れていく形状(具体的には螺旋形状)を有している。第2巻回部432wは、共通軸を周回する第2回転方向(第1回転方向とは反対方向)に回転しながら回路基板210から離れていく形状(具体的には螺旋形状)を有している。第3巻回部433wの内側部分433iは、共通軸を周回する回転方向(具体的には第1回転方向または第2回転方向)に回転しながら回路基板210から離れていく形状(具体的には螺旋形状)を有している。第3巻回部433wの外側部分433oは、共通軸を周回する回転方向(具体的には第2回転方向または第1回転方向)に回転しながら回路基板210から離れていく形状(具体的には螺旋形状)を有している。
図4Dから理解されるように、回路基板210の金属部(ベタパターン)は鉄心420と離間しており、回路基板210と鉄心420との間に空隙230が形成されている。この特徴は、鉄心420から金属部(ベタパターン)への磁気漏れおよび鉄心420から回路基板210における他の部材への磁気漏れを防ぐ観点から有利である。
[2次側回路500]
図12に、電気回路ユニット200の2次側回路500を示す。2次側回路500の2次側端子407には、交流電圧Vacが印加される。交流電圧Vacは、電源600の電源電力を利用して生成されるものである。2次側回路500は、交流電圧Vacから第2直流電圧Vdc2を生成する。なお、2次側端子407は、2次側の巻線である第3巻線433の両端に存する端子である。同様に、1次側の巻線(第1巻線431および第2巻線432)の両端に存する端子を1次側端子と呼ぶことができる。
2次側回路500は、第1のダイオード531と、第2のダイオード532と、第1の共振コンデンサ511と、第2の共振コンデンサ512と、整流コンデンサ521と、インバータ580と、を有している。
第1のダイオード531と、第2のダイオード532と、第1の共振コンデンサ511と、第2の共振コンデンサ512と、整流コンデンサ521と、が協働して、交流電圧Vacから第2直流電圧Vdc2を生成する。インバータ580が、第2直流電圧Vdc2から交流電圧を生成する。
第1のダイオード531は、第1のアノード531aおよび第1のカソード531cを有している。第2のダイオード532は、第2のアノード532aおよび第2のカソード532cを有している。第1のダイオード531および第2のダイオード532としては、公知のダイオードを使用することができる。
第1の共振コンデンサ511および第2の共振コンデンサ512は、電流共振を発生させるためのコンデンサである。第1の共振コンデンサ511および第2の共振コンデンサ512としては、公知のコンデンサを使用することができる。
整流コンデンサ521には、第2直流電圧Vdc2が印加される。整流コンデンサ521としては、公知のコンデンサを使用することができる。
第1の共振コンデンサ511の容量は、整流コンデンサ521の容量に比べて小さい。第2の共振コンデンサ512の容量は、整流コンデンサ521の容量に比べて小さい。具体的に、本実施形態では、第1の共振コンデンサ511の容量に対する整流コンデンサ521の容量の比率は、10倍以上である。上記比率は、50倍以上であってもよく、100倍以上であってもよく、500倍以上であってもよい。上記比率は、例えば1000倍以下である。本実施形態では、第2の共振コンデンサ512の容量に対する整流コンデンサ521の容量の比率は、10倍以上であり、50倍以上であってもよく、100倍以上であってもよく、500倍以上であってもよい。上記比率は、例えば1000倍以下である。
特に限定されないが、第1の共振コンデンサ511の容量は、例えば0.01〜50μFである。第2の共振コンデンサ512の容量は例えば、0.01〜50μFである。整流コンデンサ521の容量は、例えば100〜10000μFである。
本実施形態では、第1の共振コンデンサ511の容量と、第2の共振コンデンサ512の容量は同じである。ただし、第1の共振コンデンサ511の容量は、第2の共振コンデンサ512の容量と異なっていてもよい。
インバータ580は、第2直流電圧Vdc2を交流電圧に変換する。インバータ580としては、公知のインバータを使用できる。
図12から理解されるように、トランス400の2次側端子407の一端407t1と2次側端子407の他端407t2とを接続する経路として、4つの経路が存在する。4つの経路のうちの1つ目は、一端407t1から他端407t2に向かって順に、第1のアノード531a、第1のカソード531cおよび第1の共振コンデンサ511を通る経路である。2つ目は、一端407t1から他端407t2に向かって順に、第1のアノード531a、第1のカソード531c、整流コンデンサ521および第2の共振コンデンサ512を通る経路である。3つ目は、他端407t2から一端407t1に向かって順に、第2の共振コンデンサ512、第2のアノード532aおよび第2のカソード532cを通る経路である。4つ目は、、他端407t2から一端407t1に向かって順に、第1の共振コンデンサ511、整流コンデンサ521、第2のアノード532aおよび第2のカソード532cを通る経路である。
具体的に、第1の共振コンデンサ511の一端511mと、第1のカソード531cとは、同電位に接続されている。第2の共振コンデンサ512の一端512mと、第2のアノード532aとは、同電位に接続されている。第1の共振コンデンサ511の他端511nと、第2の共振コンデンサ512の他端512nとは、同電位に接続されている。
上述のように、2次側端子407の一端407t1と2次側端子407の他端407t2とを接続する経路として、4つの経路が存在する。これらの経路の存在により、4つの電流経路が構成されることになる。すなわち、図13Aに示すように、2次側端子407の他端407t2の電位に比べて2次側端子407の一端407t1の電位が高い第1モードにおいて、一端407t1から他端407t2に至る第1電流経路551および第2電流経路552が構成される。図13Bに示すように、一端407t1の電位に比べ他端407t2の電位が高い第2モードにおいて、他端407t2から一端407t1に至る第3電流経路553および第4電流経路554が構成される。第1電流経路551は、一端407t1と、第1のダイオード531と、第1の共振コンデンサ511と、他端407t2とをこの順に電流が流れる電流経路である。第2電流経路552は、一端407t1と、第1のダイオード531と、整流コンデンサ521と、第2の共振コンデンサ512と、他端407t2とをこの順に電流が流れる電流経路である。第3電流経路553は、他端407tと、第2の共振コンデンサ512と、第2のダイオード532と、一端407t1とをこの順に電流が流れる電流経路である。第4電流経路554は、他端407t2と、第1の共振コンデンサ511と、整流コンデンサ521と、第2のダイオード532と、一端407t1とをこの順に電流が流れる電流経路である。
2次側回路500は、以下で説明する理由で、昇圧および整流の機能、具体的には倍電圧整流の機能を有する。以下の説明では、第1の共振コンデンサ511の容量はC1であり、第2の共振コンデンサ512の容量はC2であり、整流コンデンサ521の容量はC3であり、C3はC1に比べて十分に大きく、C3はC2に比べて十分に大きいこととする。第2電流経路552では、整流コンデンサ521と第2の共振コンデンサ512とが直列に接続されている。C3はC2に比べて十分に大きいことを考慮すると、これらのコンデンサの合成容量C32に関し、以下の数式が成立する。
1/C32=1/C3/+1/C2≒1/C2
従って合成容量C32はC2に近似される。第1電流経路551におけるコンデンサ(第1の共振コンデンサ511)と、第2電流経路552におけるコンデンサ(整流コンデンサ521および第2の共振コンデンサ512)とが並列コンデンサ回路を構成している考えることができる。この並列コンデンサ回路の合成容量Cxに関し、以下の数式が成立する。
Cx=C1+C32≒C1+C2
第4電流経路554では、第1の共振コンデンサ511と整流コンデンサ521とが直列に接続されている。C3はC1に比べて十分に大きいことを考慮すると、これらのコンデンサの合成容量C31に関し、以下の数式が成立する。
1/C31=1/C3/+1/C1≒1/C1
従って合成容量C31はC1に近似される。第3電流経路553におけるコンデンサ(第2の共振コンデンサ512)と、第4電流経路554におけるコンデンサ(第1の共振コンデンサ511および整流コンデンサ521)とが並列コンデンサ回路を構成している考えることができる。この並列コンデンサ回路の合成容量Cyに関し、以下の数式が成立する。
Cy=C2+C31≒C2+C1
すなわち、第1モードにおける合成容量Cxと第2モードにおけるCyとは実質的に同じであると考えることができる。このため、第1モードにおいても、第2モードにおいても、整流コンデンサ521の一端521mの電位が他端521nの電位に比べて高くなるように、整流コンデンサ521が実質的に同様に充電される。このようにして、2次側回路500における昇圧および整流の機能、具体的には倍電圧整流の機能が実現される。これにより、整流コンデンサ521に第2直流電圧Vdc2が印加される。
2次側回路500は、以下で説明する理由で、電流共振の機能を有する。すなわち、トランス400の2次側端子407は、周波数Fの交流電圧を出力する。そして、第1モードにおいて、トランス400のリーケージインダクタンス(1次側のリーケージインダクタンス)と、第1電流経路551における容量成分および誘導成分とが、周波数Fを共振周波数とする第1の直列共振回路を構成する。第2モードにおいて、トランス400のリーケージインダクタンスと、第3電流経路553における容量成分および誘導成分とが、周波数Fを共振周波数とする第2の直列共振回路を構成する。このようにして、電流共振回路の機能が実現される。
本実施形態の2次側回路500の利点を、図15および16に示す構成と対比しながら説明する。
図15に示す構成も、電流共振回路および整流回路の両方の機能を有する。図15の電源710は、直流電圧を生成する。この直流電圧は、電気回路ユニット705に供給される。具体的に、4つのスイッチング素子720は、直流電圧を交流電圧(1次側の交流電圧)に変換する。トランス737は、1次側の交流電圧を昇圧し、2次側の交流電圧を生成する。トランス737のリーケージインダクタンスおよび共振コンデンサ740により、電流共振が発生する。4つのダイオード741および整流コンデンサ704により、2次側の交流電圧が整流される。整流により得られた直流電圧は、インバータ780に供給される。
電気回路ユニット705では、トランス737のみが昇圧を担う。このため、電気回路ユニット705では、トランス737の1次側の巻線と2次側の巻線の巻線比が大きくなり易い。大きい巻線比は、電圧変換効率の低下と、トランスの高コスト化と、トランスの大型化と、を招き易い。
上記の問題点を解決するには、トランスのみに昇圧機能を担わせるのではなく、他の機構に昇圧機能を分担させることが考えられる。具体的には、図16に示すようにトランスおよび2次側の構成を変更することが考えられる。
図16において、トランス837は、巻線比がトランス737の巻線比の半分であるトランスである(図16では、トランス837の1次側の巻線は省略されている)。トランス837の2次側の巻線の一端838t1の電位が同巻線の他端838t2の電位よりも高い第1モードにおいて、一端838t1、ダイオード841A、整流コンデンサ804A、共振コンデンサ840および他端838t2を電流がこの順で流れる第1電流経路が構成される。トランス837の2次側の巻線の一端838t1の電位が同巻線の他端838t2の電位よりも低い第2モードにおいて、他端838t2、共振コンデンサ840、整流コンデンサ804B、ダイオード841Bおよび一端838t1を電流がこの順で流れる第2電流経路が構成される。
整流コンデンサ804A,804Bの容量に比べて共振コンデンサ840の容量は十分に小さい。このため、第1電流経路における整流コンデンサ804Aおよび共振コンデンサ840の合成容量は実質的に共振コンデンサ840の容量と同じとなり、第1モードではトランス837のリーケージインダクタンスおよび共振コンデンサ840の容量に基づく直列共振回路が構成されると考えることができる。第2モードでもトランス837のリーケージインダクタンスおよび共振コンデンサ840の容量に基づく直列共振回路が構成されると考えることができる。すなわち、第1モードおよび第2モードの両方において、電流共振が実現される。
第1モードにおいて整流コンデンサ804Aが充電され、第2モードにおいて整流コンデンサ804Bが充電される。整流コンデンサ804Aと整流コンデンサ804Bとは、直列接続されることによって、直列回路を構成している。この直列回路の両端に昇圧された直流電圧が現れる。こうして、倍電圧整流が実現される。
以上のように、図16の構成によれば、電流共振および倍電圧整流が実現される。トランス837の巻線比はトランス737の巻線比の半分であるが、倍電圧整流は電圧を2倍にする。従って、図16の構成によれば、図15の構成を採用する場合と同じ電合をインバータ780に供給することができる。しかも、トランス837の巻線比はトランス737の巻線比よりも小さいので、トランス837は、トランス737に比べて、高い電圧変換効率を得易いものであり、低コストで実現し易いものであり、かつ小型にし易いものである。
しかしながら、図16の構成は、2つの整流コンデンサ804A,804Bを必須とする。共振コンデンサに比べ、整流コンデンサは、容量が大きいことが通常である。従って、共振コンデンサに比べ、整流コンデンサは、高価となり易く、大型となり易い。
これに対し、本実施形態の技術によれば、コンデンサの価格およびサイズの問題を緩和できる。この点について、具体例を用いて説明する。この具体例では、第1の共振コンデンサ511の容量は2.5μFであり、第2の共振コンデンサ512の容量は2.5μFであり、整流コンデンサ521の容量は250μFであるとする。この具体例の2次側回路500と同様の昇圧機能、電流共振機能および整流機能を図16の2次側回路に持たせるには、共振コンデンサ840の容量を5μFとし、整流コンデンサ804Aの容量を500μFとし、整流コンデンサ804Bの容量を500μFとする必要がある。2次側回路500の各コンデンサの容量は、図16の各コンデンサの容量の半分でよい。しかも、2つの整流コンデンサを必須とする図16の2次側回路とは異なり、2次側回路500では1つの整流コンデンサで足りる。以上の説明から、図16の2次側回路に比べ、本実施形態の2次側回路500が、小サイズ化および低コスト化の観点から有利であることが定量的に理解される。
なお、念のために断っておくが、本開示の1次側回路300、トランス400等の技術は、図15または図16に示す構成と組み合わせて利用することもできる。
本実施形態では、整流コンデンサ521の容量の半分の容量を基準容量と定義し、第1電流経路551、第2電流経路552、第3電流経路553および第4電流経路554の少なくとも1つが占める領域を領域Rと定義したとき、領域Rにおいて、基準容量よりも小さい容量のコンデンサの数は、基準容量よりも大きい容量のコンデンサの数よりも多い。具体的に、領域Rにおける基準容量よりも大きい容量のコンデンサは整流コンデンサ521のみである。これらの特徴は、2次側回路500のサイズおよび価格を小さくするのに有利である。
図12に示す例では、電気回路ユニット200(2次側回路500)は、第1の接続経路571と、第2の接続経路572とを有している。第1の接続経路571は、第1の共振コンデンサ511の他端511nと第2の共振コンデンサ512の他端512nとを接続する。第2の接続経路572は、第1の接続経路571と2次側端子407の他端407t2とを接続する。本実施形態では、第2の接続経路572は、コンデンサを有しない。このことは、低コストで電気回路ユニット200を実現するのに有利である。具体的には、本実施形態では、第1の共振コンデンサ511の他端511nと、第2の共振コンデンサ512の他端512nと、2次側端子407の他端407t2とが同電位に接続されている。より具体的には、第1の接続経路571および第2の接続経路572は電線によって構成されている。
ただし、第2の接続経路572は、コンデンサを有していてもよい。図14に示す変形実施形態では、第2の接続経路572は、設計余裕度を改善するためのコンデンサ560を有している。なお、設計余裕度は、電気回路ユニット200が所望の動作を行うために、電気回路ユニット200における抵抗成分、容量成分、誘導成分等が設計値からどの程度の誤差範囲に収まっていればよいのかを表す指標である。具体的に、寄生抵抗、寄生容量、寄生インダクタンス等が誤差の要因となり得る。コンデンサ560によれば、上記誤差が原因で電流共振が発生しなくなる事態を回避し易くなる。この例では、コンデンサ560の容量は、第1の共振コンデンサ511の容量よりも小さく、かつ、第2の共振コンデンサ512の容量よりも小さい。コンデンサ560の容量は小さいので、コンデンサ560の追加は、2次側回路500の大幅な大型化を招いたり大幅なコスト増を招いたりし難い。コンデンサ560の容量は、例えば、第1の共振コンデンサ511または第2の共振コンデンサ512の容量の半分以下であり、1/5以下であってもよい。
[燃料電池システムへの応用]
回路付電源ユニット100を含む燃料電池システムを構成することができる。図17に、そのような燃料電池システムの例を示す。図17に示す燃料電池システム900は、家庭用の燃料電池コージェネレーションシステムである。ただし、回路付電源ユニット100を含む燃料電池システムの用途は家庭用に限定されない。また、回路付電源ユニット100を含む燃料電池システムは、コージェネレーションシステムを構成していなくてもよい。
燃料電池システム900は、燃料電池ユニット920と、貯湯ユニット930と、を有している。
燃料電池ユニット920は、燃料処理器921と、セルスタック922と、電力変換部923と、熱交換器927と、を有している。
燃料処理器921は、燃料ガス951から水素953を生成する。燃料ガス951としては、都市ガス、液化石油ガス(LPガス)および灯油が例示される。
セルスタック922は、酸素952および水素953から直流電力961を生成する。直流電力961の生成の際に、排熱971が生成される。
電力変換機部923は、直流電力961を交流電力962に変換する。交流電力962は、負荷において利用される。
貯湯ユニット930は、貯湯タンク931と、バックアップ給湯器932と、を有している。
貯湯ユニット930の冷水981は、燃料電池ユニット920の熱交換器927に供給される。熱交換器927では、排熱971により、冷水981から温水982が生成される。生成された温水982は、貯湯タンク931に蓄えられる。貯湯タンク931に蓄えられた温水982は、必要なときに取り出される。
バックアップ給湯器932は、温水982が不足しているときに冷水981から温水982を生成する。
セルスタック922は、燃料電池を構成する。セルスタック922は、図1の電源600として利用できる。電力変換部923として、図1の電気回路ユニット200を利用できる。すなわち、図17に示す燃料電池システム900は、水素953と酸素952とから電源電力を発電する燃料電池を電源600とする回路付電源ユニット100を含んでいる。
以下、燃料電池システム900において電気回路ユニット200を用いることの利点を、従来技術に触れつつ説明する。
従来、燃料電池を含む燃料電池システムが用いられている。燃料電池は1kWクラスの直流電力と、10〜40Vの電圧と、大電流(セルスタックのセル数に反比例する大電流)と、を生成するものである。典型的には、10〜40Vの電圧は、400Vまで昇圧される。この昇圧のために、トランスが用いられる。10〜40Vの直流電圧を400Vの直流電圧に変換するには、トランスの1次側の巻線の巻数に対する2次側の巻線の巻数の比(巻線比)を大きくする必要がある。しかし、大きい巻線比は、トランスの大型化と、電圧変換効率の低下とを招く。しかも、近年においては、燃料電池のコスト削減を目的にセルスタックの積層数を減らす傾向にあり、従って燃料電池が生成する電圧は低下傾向にある。以上の理由で、図15を用いて説明した問題点は、近年の燃料電池システムにおいて顕在化し易い。また、図16の構成を用いてこの問題を解決することも考えられるが、図16の構成にも課題があることは既に述べたとおりである。すなわち、燃料電池システム900内に、電流共振および整流を行う電気回路ユニットであって電圧変換効率が高く、低コストで実現でき、かつ小型とし得る電気回路ユニットを含ませることには、大きな利点がある。
本実施形態の燃料電池システム900は、燃料電池システム900の電子部品の制御に用いられる電圧を取り出す第1ポート(図示せず)と、燃料電池システム900の補機の制御に用いられる電圧を取り出す第2ポート(図示せず)と、を備えるものであってもよい。この場合、燃料電池システム900は、第1ポートを利用して第1の端子311(図2A〜図2C参照)の電位を第1の電位に設定し、第2ポートを利用して第2の端子312の電位を第2の電位に設定するものとすることができる。なお、燃料電池システム900の電子部品は、図2Aのクロック生成器320等である。燃料電池システム900の補機は、ポンプ、弁等である。
また、改めて断るまでもないが、燃料電池システム900は、図4A〜図11を用いて説明したトランス400の利点も享受し得るものである。