JP6623117B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ターボチャージャを備えたエンジンの制御装置に係わり、特に、排気バイパス通路上にウエストゲートバルブを備えたエンジンの制御装置に関する。
従来から、ターボチャージャを備えるエンジンにおいて、ターボチャージャのタービンを迂回させて排気ガスを流す排気バイパス通路と、この排気バイパス通路を流れる排気ガスの流量を調整するウエストゲートバルブとが設けられたシステムが知られている。また、近年、ウエストゲートバルブを開閉動作させるよう駆動されるアクチュエータを電動化して、エンジンの吸気通路の圧力に依らず、必要に応じてウエストゲートバルブを開閉動作させ、ターボチャージャによる過給圧を自在に制御できるようなシステムが開発されている。なお、以下では、ウエストゲートバルブを適宜「WGV」と表記し、このWGVを動作させるアクチュエータを適宜「WGA」と表記する。
しかしながら、このようなシステムにおいては、WGVの開閉動作が長期にわたって繰り返し実施されることによる経時的な変化や、WGV開度を検出するWGV開度センサ(ポジションセンサなど)の温度特性や、WGVを構成する部材の熱膨張などの影響に起因して、WGV開度センサによって検出されるWGV開度と真のWGV開度との間に誤差が生じる場合がある。その結果、WGV開度センサによって検出されたWGV開度が0%となるときのWGVの位置に相当する「WGVの基準位置」は、真のWGV開度が0%となるときのWGVの位置に相当する「WGVの全閉位置」に対してずれることとなる。そのため、WGAを同じ操作量で動作させた場合であっても、WGV開度にずれが生じ、WGVを所望の開閉状態に制御できないことがある。また、過給圧が目標値に到達しない、あるいはWGVを全閉状態からさらに閉側に動作させようと制御してWGAの駆動電流が過電流となる可能性もある。
このような問題に対処するために、WGVが全閉位置に収束すると、そのときのWGV開度センサの出力値に基づいて全閉位置の学習を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された技術では、学習機会の少ない状況や全閉位置に収束していない場合には、全閉学習値を更新した時点からの温度変化に応じて、センサ出力特性変化に見合う値に全閉学習値を修正している。これによって、温度条件が変化してもWGV機構の制御精度を安定して維持させるようにしている。
特開2015−59549号公報
しかしながら、上記の特許文献1に記載された技術では、WGV開度センサおよびWGVの個々の特性ばらつきの影響まで考慮しておらず、WGV開度センサの検出値と真のWGV開度との誤差を完全に補正することはできない。そのため、WGV開度センサによって検出されたWGV開度が全閉になっていないにも関わらず、真のWGV開度が全閉になっている場合が起こり得る。このような場合には、制御上は全閉を目標開度としてWGAを高速駆動させている最中に、突然、真の全閉位置にWGVが突き当たる状態となる。さらに、全閉への駆動速度が速すぎて、WGVの衝突限界速度を超えた状態でWGVが弁座に衝突することにより、可動部の部材の摩耗や疲労が早まるおそれがある。また、WGVが高速で弁座へ衝突することによる不快な衝突音を生じるおそれもある。
したがって、WGV開度センサの検出値と真のWGV開度との誤差を考慮して、全閉となる可能性がある開度以下では、WGV駆動速度が衝突限界速度を超えることがないよう制御することが望ましい。その方法の一つとして、例えば、WGVを全閉開度へ駆動する際に、一旦、全閉開度よりも僅かに開側の開度(仮全閉開度)をウエストゲートバルブの目標開度に設定してWGAを駆動し、センサによって検出されたWGV開度(WGV実開度)が仮全閉開度に到達した後に、目標開度を仮全閉開度から全閉開度へと切り替えてWGAを駆動して、WGVの開弁位置の変化速度が衝突限界速度を超えて全閉位置に突き当たることを回避する方法が考えられる。
上記の方法においては、仮全閉開度に向かってアクチュエータを駆動するときに、センサによって検出されたWGV実開度と仮全閉開度とに基づきフィードバック制御することが考えられる。ところが、このフィードバック制御において用いるフィードバックゲインの設定によっては、WGV実開度の変化速度が仮全閉開度付近において大きく減速し、WGV実開度が仮全閉開度に完全に到達するまでに時間がかかる傾向にある。その結果、過給圧上昇の応答性が低下してしまう。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、高速で全閉位置に突き当たることがないようにウエストゲートバルブを動作させつつ、このときの過給圧上昇の応答性低下を改善することができるエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、エンジンの制御装置であって、エンジンの排気通路上に設けられたタービンと、エンジンの吸気通路上に設けられ、タービンと一体に回転するコンプレッサとを備えるターボチャージャと、タービンの上流側と下流側とを連通する排気バイパス通路上に設けられ、この排気バイパス通路を流れる排気ガスの流量を調整するウエストゲートバルブと、ウエストゲートバルブの開弁位置を変更して、その開度を調整するように駆動されるアクチュエータと、ウエストゲートバルブの開弁位置を検出するポジションセンサと、エンジンの運転状態に応じたターボチャージャによる目標過給圧が実現されるように、アクチュエータを駆動する制御を行ってウエストゲートバルブの開度を調整するコントローラと、を有し、コントローラは、ウエストゲートバルブをほぼ全閉開度に向けてアクチュエータによって駆動する場合に、最初に、全閉開度よりも開側の第1仮全閉開度をウエストゲートバルブの目標開度に設定してアクチュエータを駆動し、このアクチュエータの駆動によって、ポジションセンサにより検出されたウエストゲートバルブの開弁位置に対応する実開度が、第1仮全閉開度よりも更に開側の第2仮全閉開度に到達した後に、目標開度を第1仮全閉開度よりも閉側の開度に切り替えてアクチュエータを駆動して、前記ウエストゲートバルブがほぼ全閉開度に設定されるようにする、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、ウエストゲートバルブ(WGV)をほぼ全閉開度に設定する場合に、まず、第1仮全閉開度を目標開度に設定してアクチュエータ(WGA)を駆動し、この駆動により、WGV開度が第2仮全閉開度に到達したときに(つまり第1仮全閉開度に到達していなくても第2仮全閉開度に到達したときに)、第1仮全閉開度から、この第1仮全閉開度よりも少なくとも閉側の開度を目標開度に設定して、WGVがほぼ全閉開度に設定されるようにWGAを駆動する。これにより、WGVが衝突限界速度を超えて全閉位置に突き当たることを回避することができると共に、そのように衝突限界速度を超えないように制御したことに起因する過給圧上昇の応答性低下を改善することができる。よって、加速レスポンスなどを改善することができる。
本発明において、好ましくは、第1仮全閉開度には、ウエストゲートバルブが排気バイパス通路を完全に塞ぐ位置である基準位置のばらつき範囲の上限位置に対応する開度が適用される。
このように構成された本発明によれば、第1仮全閉開度として、基準位置のばらつき範囲の上限位置(ばらつき範囲における開側の境界位置)に対応するWGV開度を適用するので、WGVが高速駆動された状態で全閉位置へ突き当たることをより確実に回避できる。
本発明において、好ましくは、コントローラは、ウエストゲートバルブをほぼ全閉開度に向けてアクチュエータによって駆動する場合に、ポジションセンサにより検出されたウエストゲートバルブの開弁位置に基づき、ウエストゲートバルブが排気バイパス通路を完全に塞ぐ位置である基準位置を学習する全閉位置学習部を備える。
このように構成された本発明によれば、WGVをほぼ全閉開度に設定すべく上記したような制御を行うときに、WGVの基準位置を学習するので、この後、学習されたWGVの基準位置に基づき、WGV開度を精度良く検出することができると共に、WGV開度を精度良く制御することができる。
本発明において、好ましくは、第1仮全閉開度には、コントローラの全閉位置学習部による基準位置の学習が完了していない場合には、基準位置のばらつき範囲の上限位置に対応する開度が適用され、全閉位置学習部による基準位置の学習が完了している場合には、学習された基準位置に対して温度変化による基準位置のばらつきを適用した位置に対応する開度が適用される。
このように構成された本発明によれば、上記のような基準位置の学習が完了している場合には、第1仮全閉開度として、基準位置のばらつき範囲の上限位置に替えて、学習された基準位置に対して温度変化による基準位置のばらつき(具体的には基準位置の開側への温度による変化量)のみを加算した位置に対応するWGV開度を適用する。これにより、第1仮全閉開度が小さくなる(閉側になる)ので、第1仮全閉開度を目標開度に設定して制御した後にWGV開度をほぼ全閉開度に向けて制御する時間を短縮することができ、過給圧上昇の応答性低下を効果的に改善することができる。
本発明において、好ましくは、第2仮全閉開度には、予め定めた所定開度を第1仮全閉開度に対して加算した開度が適用される。
このように構成された本発明によれば、上記のように第1仮全閉開度を変更した場合にも、変更後の第1仮全閉開度に応じた適切な第2仮全閉開度を設定することができる、具体的には、WGV開度を第1仮全閉開度に向かって制御するときの過給圧上昇の応答性低下を抑制可能な第2仮全閉開度を設定することができる。
本発明において、好ましくは、コントローラは、エンジンの運転状態に基づき目標過給圧を演算する目標過給圧演算部と、実過給圧を目標過給圧に到達させるためにウエストゲートバルブに設定すべき開度である機関要求目標開度を演算する機関要求目標開度演算部と、ウエストゲートバルブが排気バイパス通路を完全に塞ぐ位置である基準位置に基づき、ポジションセンサにより検出されたウエストゲートバルブの開弁位置を実開度に変換する実開度演算部と、実開度を所定の目標開度に到達させるためにアクチュエータを操作すべき量であるアクチュエータ操作量を演算するアクチュエータ操作量演算部と、アクチュエータ操作量をアクチュエータに出力するアクチュエータ駆動部と、を備え、アクチュエータ操作量演算部は、機関要求目標開度が第1仮全閉開度以下で、且つ実開度が第2仮全閉開度よりも大きい場合には、第1仮全閉開度を所定の目標開度に設定して、実開度を第1仮全閉開度に到達させるようにアクチュエータ操作量を演算し、機関要求目標開度が第1仮全閉開度以下で、且つ実開度が第2仮全閉開度以下である場合には、第1仮全閉開度よりも閉側の開度を所定の目標開度に設定して、実開度を機関要求目標開度に到達させるようにアクチュエータ操作量を演算する。
このように構成された本発明によれば、高速で全閉位置に突き当たることがないようにWGVを動作させつつ、このときの過給圧上昇の応答性低下を適切に改善することができる。
本発明において、好ましくは、コントローラのアクチュエータ操作量演算部は、機関要求目標開度が第1仮全閉開度以下で、且つ実開度が第2仮全閉開度以下である場合には、実開度を機関要求目標開度に到達させようとしている間、実開度の変化速度を所定の基準速度によって制限するようにアクチュエータ操作量を演算する。
このように構成された本発明によれば、実開度が第2仮全閉開度に到達した後に、WGVが衝突限界速度を超えて全閉位置に突き当たることを確実に回避することができる。
本発明のエンジンの制御装置によれば、高速で全閉位置に突き当たることがないようにウエストゲートバルブを動作させつつ、このときの過給圧上昇の応答性低下を改善することができる。
本発明の実施形態によるエンジンの制御装置が適用されたエンジンのシステム構成図である。 本発明の実施形態によるエンジンの制御装置を示すブロック図である。 本発明の実施形態によるエンジンの制御装置において目標過給圧を決定するためのマップの一例である。 本発明の実施形態において、フィードバック制御を用いてWGVの目標開度を変化させたときの実開度の挙動及び各演算結果についての説明図である。 本発明の実施形態によるWGV開度の制御方法についての説明図である。 本発明の実施形態によるWGV開度の制御方法と比較例によるWGV開度の制御方法との比較結果についての説明図である。 本発明の実施形態によるWGV開度の制御方法を実行した場合と比較例によるWGV開度の制御方法を実行した場合との過給圧の挙動についての説明図である。 本発明の実施形態によるエンジンの制御装置の動作を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置が適用されたエンジンのシステム構成図である。
図1において、エンジン10の吸気通路11の入口には、エアクリーナ12が取り付けられている。エアクリーナ12の下流側には、吸入空気量を検出するためのエアフローセンサ51が設けられている。エアフローセンサ51の下流側には、ターボチャージャ20が設けられている。ターボチャージャ20は、コンプレッサ201とタービン202とを備えている。コンプレッサ201とタービン202とは、連結軸によって一体に連結されている。コンプレッサ201は、タービン202に入力される排気ガスのエネルギーによって回転駆動される。
そして、コンプレッサ201のさらに下流側には、圧縮された空気を冷却するためのインタークーラ13が配置されている。インタークーラ13のさらに下流側には、スロットルバルブ14が配置されている。なお、インタークーラ13とスロットルバルブ14との間には、ターボチャージャ20によって過給された吸入空気の圧力を検出するための過給圧センサ52が設けられている。
また、エンジン10の排気系は、排気通路15を備えている。排気通路15の途中には、前述したターボチャージャ20のタービン202が設けられている。また、排気通路15には、タービン202をバイパスしてタービン202の入口側と出口側とを接続する排気バイパス通路30が設けられている。排気バイパス通路30には、排気バイパス弁としてのウエストゲートバルブ(WGV)31が配置されている。また、タービン202の下流側には、排気ガスを浄化するための排気浄化触媒16が配置されている。
排気バイパス通路30に配置されているWGV31は、ジョイント部材32の一端に機械的に接続されている。ジョイント部材32の他端は、WGV31を駆動するウエストゲートアクチュエータ(WGA)34の出力軸(WGA出力軸)33に機械的に接続されている。そして、WGA出力軸33の近傍には、WGV31の開弁位置に相関する位置情報を検出するWGV開度センサとしてのポジションセンサ53が備えられている。なお、図1に示すポジションセンサ53は、WGA34とは別体に構成されているが、WGA34に内蔵されていてもよい。
また、本実施形態によるエンジンの制御装置は、制御装置(コントローラ)50を備えている。制御装置50の入力部には、前述したエアフローセンサ51、過給圧センサ52、ポジションセンサ53のほか、図示を省略しているが、クランク角センサやスロットル開度センサやアクセル開度センサといった種々のセンサからなるセンサ群が、エンジン10の運転状態を検出するために接続されている。一方、制御装置50の出力部には、WGA34のほか、図示を省略しているが、インジェクタや点火コイルといった種々のアクチュエータが、エンジン10の運転状態を制御するために接続されている。制御装置50は、前述の各種入力情報に基づいて、前述の各種アクチュエータを駆動することにより、コンプレッサ201によって加圧される吸入空気の圧力を所望の過給圧に制御する他、エンジン10の燃焼状態や出力トルクを最適に制御する。なお、制御装置50は、例えばECU(Electronic Control Unit)やPCM(Powertrain Control Module)などによって実現される。
ここで、WGV31及びWGA34についてより具体的に説明する。WGV31は、排気通路15内に配置されるため、エンジン10から排出された排気ガスにさらされて数百度の高温状態になる。従って、モータ等の電子部品を内蔵したWGA34の耐熱性を考慮すると、WGA34をWGV31に近接して配置することができないため、WGV31とWGA34との間にジョイント部材32を介在させ、WGA34が高温になり過ぎないようにしている。また、ジョイント部材32を介してWGA34とWGV31とを機械的に接続することにより、WGA34の車両への搭載位置の自由度が増してレイアウトがしやすくなることも、ジョイント部材32を介在させる理由の1つである。
WGA34には、正転又は逆転可能なモータが内蔵されており、また、このモータの回転運動を直線運動に変換して出力するWGA出力軸33を有している。このWGA出力軸33は、モータの通電方向に応じて軸方向に移動可能となっている。WGA出力軸33をWGA34の外側に押し出す方向にモータを通電すれば、ジョイント部材32を介してWGV31を開弁側(図1の右側)へ移動させることができる。この場合、過給圧が低下する。これとは逆に、WGA出力軸33をWGA34の内側に引き込む方向にモータを通電すれば、ジョイント部材32を介してWGV31を閉弁側(図1の左側)へ移動させることができる。この場合、過給圧が上昇する。
また、WGA出力軸33の側部の近傍には、ポジションセンサ53が備えられており、このポジションセンサ53によって検出されるWGA出力軸33の軸方向位置が、WGV31の作動位置、つまりWGV31の開弁位置若しくは閉弁位置、又はそれらの中間位置として制御装置50に電気信号で取り込まれるように構成されている。
図2は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置を示すブロック図である。図2に基づいて、先ず、WGV31の基本制御に関連する構成と動作について説明する。
制御装置50は、前述した各種センサの検出結果に基づいて、エンジン10の統括制御を行う。制御装置50は、WGV31の制御部として、目標過給圧演算部501と、機関要求目標開度演算部502と、全閉位置学習部503と、実開度演算部504と、WGA操作量演算部505と、WGA駆動部506とを有する。
目標過給圧演算部501は、エンジン回転数や、アクセル開度や、エアフローセンサ51により検出される吸入空気量や、過給圧センサ52により検出される過給圧などの、エンジン10の運転状態を示す複数の情報が入力される。そして、目標過給圧演算部501は、これらの運転状態を示す複数の情報に基づいて、コンプレッサ201により圧縮される吸入空気圧力の制御目標値である目標過給圧Spを設定する。
ここで、図3を参照して、目標過給圧演算部501が目標過給圧を算出する方法の一例について説明する。図3は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置において、目標過給圧を決定するためのマップの一例を示した図である。なお、図3に示したマップにおいては、目標過給圧の単位を[kPa]としている。
図3に示すように、目標過給圧マップは、エンジン回転数[r/min]と、アクセル開度[%]と、目標過給圧[kPa]とを関連付けたものである。目標過給圧演算部501は、このマップに従って、エンジン回転数と、アクセル開度とに対応した目標過給圧を決定する。
具体的には、例えば、エンジン回転数が2000[r/min]であり、かつアクセル開度が50[%]である場合を想定する。このような運転状態の場合、目標過給圧演算部501は、このマップに従って、目標過給圧を140[kPa]に決定する。なお、目標過給圧演算部501は、図3のような目標過給圧マップを用いず、例えば、予め規定した物理モデルに従って、計算で目標過給圧を求めるようにしてもよい。
機関要求目標開度演算部502は、目標過給圧演算部501で演算された目標過給圧Spと、過給圧センサ52で検出された実過給圧Ppとが入力され、実過給圧Ppを目標過給圧Spに一致させるために必要な機関要求目標開度Svを演算する。
実開度演算部504では、ポジションセンサ53により検出された電圧Vsが入力され、WGV31が排気バイパス通路30を完全に塞ぐ作動位置にあるときをWGV31の基準位置と定め、それらの情報に基づいて実開度Pvを演算する。例えば、WGV31の開度を全閉から全開まで変化させたときのポジションセンサ53の出力電圧幅を「Vrng[V]」とし、基準位置を「Vmin[V]」とし、ポジションセンサ53の出力電圧(WGV31の作動位置)を「Vs[V]」とし、WGV31の実開度を「Pv[%]」とすると、実開度Pvは、以下の式(1)により演算される。なお、Vrng[V]およびVmin[V]は、設計上の初期値として、予め制御装置50に記憶されている。
Pv=(Vs−Vmin)/Vrng×100 式(1)
また、WGV開度(実開度)が目標開度と一致するようにWGA34を制御する方法としては、一般的には、目標開度と実開度とに基づいた比例積分演算、或いは、比例積分演算に微分演算やFF(フィードフォワード)演算を組み合わせたフィードバック制御が用いられる。このようなフィードバック制御を用いるのは、目標開度と実開度とに偏差が生じたときでも、目標開度と実開度とが一致するようにWGA34の操作量が自動的に補正され、目標開度と実開度との偏差が解消できるからである。
ここで、図4を参照して、本発明の実施形態において、フィードバック制御を用いてWGV31の目標開度を変化させたときの実開度の挙動及び各演算結果について説明する。図4は、比例積分演算にFF演算を組み合わせたフィードバック制御(説明を簡単にするため、微分演算は省略)を用いて、WGV31の目標開度をステップ的に変化させたときの目標開度と実開度の挙動及びフィードバック制御の各演算結果の一例を示したタイムチャート図である。
具体的には、図4は、上から順に、目標開度Sv(破線のグラフG11参照)及び実開度Pv(実線のグラフG12参照)の挙動、積分項、比例項、FF項、フィードバック補正量、WGA操作量の各演算結果を示している。ここで、以下のように各種の記号を定義するものとする。
[n]:今回の制御タイミングでの演算値
[n−1]:前回の制御タイミングでの演算値
Mv[n]:WGA操作量(今回値)
Mv[n−1]:WGA操作量(前回値)
△Mv[n]:フィードバック補正量(今回値)
Sv[n]:目標開度(今回値)
Sv[n−1]:目標開度(前回値)
Pv[n]:実開度(今回値)
Pv[n−1]:実開度(前回値)
Ki:積分ゲイン
Kp:比例ゲイン(但し、Kp<0)
Kf:FFゲイン
WGA操作量(今回値)であるMv[n]は、以下の式(2)に示すように、WGA操作量(前回値)であるMv[n−1]に対してフィードバック補正量(今回値)である△Mv[n]を加算することで求められる。また、この△Mv[n]は、以下の式(3)に示すように、(i)目標開度Sv[n]と実開度Pv[n]との偏差に対して積分ゲインKiを乗じて求められる積分項と、(ii)実開度の今回値Pv[n]と前回値Pv[n−1]との偏差に対して比例ゲインKpを乗じて求められる比例項と、(iii)目標開度の今回値Sv[n]と前回値Sv[n−1]との偏差にFFゲインKfを乗じて求められるFF項と、の3つの演算項の合計として求められる。
Mv[n]=Mv[n−1]+△Mv[n] 式(2)
△Mv[n]=積分項+比例項+FF項
=(Sv[n]−Pv[n])×Ki+(Pv[n−1]−Pv[n])×Kp+(Sv[n]−Sv[n−1])×Kf 式(3)
このようなフィードバック制御では、(i)積分項は、目標開度と実開度との定常的な偏差を解消するように作用し、(ii)比例項は、実開度の変化量に応じて実開度の変化を抑制するように作用し、(iii)FF項は、目標開度が変化したときに目標開度の変化量に応じて発生する目標開度と実開度との偏差を解消するように作用する。そのような積分項と比例項とFF項とが合算されたフィードバック補正量△Mv[n]により、WGA操作量が補正され、WGV31の目標開度と実開度とが一致するように制御される。
図2に戻って、残りの全閉位置学習部503、実開度演算部504、WGA操作量演算部505及びWGA駆動部506について説明する。
WGA操作量演算部505は、機関要求目標開度演算部502で演算された目標開度がほぼ0%(すなわち全閉要求)であることが判定されると、WGV31を確実に全閉状態にするために、仮想的な目標開度を設定し、機関要求目標開度演算部502で演算された目標開度(0%)に代えて、この仮想的な目標開度と、実開度演算部504で演算されたWGV31の実開度とに基づいてWGA操作量を演算して、WGA駆動部506に出力する。
上記の仮想的な目標開度は、WGV31の基準位置のばらつき範囲として設定されている所定範囲の下限の作動位置(ばらつき範囲における閉側の境界位置)に相当する電圧値を、式(1)のVsに代入することで求められる。例えば、基準位置のばらつき範囲の下限の作動位置に相当する電圧値が1.0[V]であり、Vrngが2.5[V]であり、Vminが1.5[V]である場合には、式(1)より、仮想的な目標開度は、(1.0−1.5)/2.5×100=−20[%]として求められる。こうして求められた仮想的な目標開度と実開度とに基づいて演算されるWGA操作量がWGA駆動部506に出力されてWGA34が駆動されると、WGV31が全閉側に向かって作動し、WGV31が排気バイパス通路30を完全に塞ぐ状態となる。
全閉位置学習部503は、機関要求目標開度演算部502で演算された目標開度がほぼ0%(すなわち全閉要求)であることが判定されると、ポジションセンサ53により検出されるWGV31の作動位置が、予め設定されている全閉位置ばらつきの範囲内になっているか否かを判定する。そして、全閉位置学習部503は、ポジションセンサ53により検出されるWGV31の作動位置が全閉位置ばらつきの範囲内にあり、かつ、WGV31の作動位置が所定率以上で減少しなくなったときに、WGV31が排気バイパス通路30を完全に塞ぐ状態になっていると判定する。そして、全閉位置学習部503は、現在のポジションセンサ53の出力電圧Vsを、上記の基準位置Vminとして更新(学習)する。この後、実開度演算部504は、更新された基準位置Vminを用いて、式(1)により、ポジションセンサ53の出力電圧VsをWGV31の開度Pv[%]に変換することで実開度を求める。
また、WGA操作量演算部505は、機関要求目標開度演算部502にて演算された機関要求目標開度Svと、実開度演算部503にて演算された実開度Pvとが入力される。そして、WGA操作量演算部505は、これらの機関要求目標開度Sv及び実開度Pvのそれぞれと、全閉開度よりも開側の開度として予め設定された第1仮全閉開度と、この第1仮全閉開度よりも更に開側の開度として予め設定された第2仮全閉開度とを比較する。
具体的には、WGA操作量演算部505は、機関要求目標開度Svが第1仮全閉開度以下で且つ実開度Pvが第2仮全閉開度よりも大きい場合には(以下では当該条件を適宜「第1条件」と呼ぶ)、第1仮全閉開度と実開度Pvとに基づいて、実開度Pvを第1仮全閉開度に一致させるために必要なWGA操作量を演算する。この場合、WGA操作量演算部505は、第1仮全閉開度を目標開度に設定して、実開度Pvを徐々に第1仮全閉開度に到達させるようにWGA操作量を演算する。
他方で、WGA操作量演算部505は、機関要求目標開度Svが第1仮全閉開度以下で且つ実開度Pvが第2仮全閉開度以下である場合には(以下では当該条件を適宜「第2条件」と呼ぶ)、機関要求目標開度Svと実開度Pvとに基づいて、実開度Pvを機関要求目標開度Svに一致させるために必要なWGA操作量を演算する。この場合、WGA操作量演算部505は、第1仮全閉開度よりも少なくとも閉側の開度を目標開度に設定して、実開度Pvを徐々に機関要求目標開度Svに到達させるようにWGA操作量を演算する。より詳しくは、WGA操作量演算部505は、実開度Pvの変化速度を所定の基準速度によって制限するように(つまり実開度Pvの変化速度が基準速度を超えないように)、例えば実開度Pvの変化速度がほぼ基準速度となるように、適用する目標開度を機関要求目標開度Svに向けて徐々に低下させていく。
なお、具体的なWGA操作量は、図4で説明したフィードバック制御により演算される。加えて、WGA操作量とは、WGA34に内蔵されたモータの通電方向および電流を指示するパラメータであり、例えば、PWM信号(−100%から+100%までのデューティ信号など)で与えられる。
WGA駆動部506は、WGA操作量演算部504からWGA操作量が入力され、このWGA操作量に基づいてWGA34を駆動する。これにより、WGA34が駆動されて、WGV31の作動位置(開度)が変化する。
次に、図5を参照して、機関要求目標開度Svが全閉付近に変化したときの、本発明の実施形態によるWGV開度の制御方法について説明する。図5は、機関要求目標開度Svが全開開度(WGV開度100%)からほぼ全閉開度(例えばWGV開度5%)に変化したときに、本発明の実施形態によるWGV開度の制御方法を実行した場合のタイムチャートである。
図5において、グラフG21は、機関要求目標開度Svの時間変化を示し、グラフG22は、上記したようにWGA操作量演算部505がWGA操作量を演算するときに適用する目標開度(以下では適宜「最終目標開度」と呼ぶ。)の時間変化を示し、グラフG23は、この最終目標開度に基づき演算されたWGA操作量によってWGA34を駆動したときのWGV31の開度(実開度)の時間変化を示している。また、符号A11で示す開度は、制御上で認識している基準位置に対応する開度であり、符号A12で示す開度は、真の全閉位置に対応する開度であり、符号A13で示す開度は、第1仮全閉開度であり、符号A14で示す開度は、第2仮全閉開度である。ここでは、真の全閉位置に対応する開度が、制御上で認識している基準位置に対応する開度よりも大きい場合(具体的には5%よりも大きい場合)を例示する。
なお、第1仮全閉開度には、基本的には、WGV31が排気バイパス通路30を完全に塞ぐ位置である基準位置のばらつき範囲の上限位置(ばらつき範囲における開側の境界位置)に対応する開度が適用される。この第1仮全閉開度は、組み付け公差や、熱膨張や、摩耗や、温度変化によるポジションセンサ53の特性変化などの全てのばらつきの合計を基準位置に適用したものである。
但し、上記した全閉位置学習部503による学習が一度でも完了している場合には、第1仮全閉開度には、このような基準位置のばらつき範囲の上限位置に替えて、学習された基準位置に対して温度変化による基準位置のばらつきを加算した位置に対応する開度が適用される。つまり、全閉位置学習部503による学習が一度でも完了している場合の基準位置は、組み付け公差や摩耗による変化などの定常でのばらつき要素が補正された値とみなすことができるので、この基準位置に対して温度変化によるばらつき(具体的には基準位置の開側への温度による変化量)のみを加算した位置に対応する開度を、第1仮全閉開度として適用するのである。こうすることで、第1仮全閉開度を小さくして、第1仮全閉開度を目標開度に設定して制御した後に実開度Pvを機関要求目標開度Svに向かって制御する時間を短縮して、過給圧上昇の応答性低下を改善するようにしている。
他方で、第2仮全閉開度には、このような第1仮全閉開度に対して予め設定した開度を加算した開度が適用される。この第1仮全閉開度に対して加算する開度は、フィードバック制御において用いるフィードバックゲインの設定などを考慮して定めるとよい。
図5に示すように、まず、時刻t11において、機関要求目標開度Svが全開開度からほぼ全閉開度へ変化すると(つまり全閉要求があったとき)、このときには機関要求目標開度Svが第1仮全閉開度以下で且つ実開度Pvが第2仮全閉開度よりも大きいという第1条件が成立するため、最終目標開度が第1仮全閉開度に設定される。そして、最終目標開度としての第1仮全閉開度と実開度Pvとに基づいて、実開度Pvを徐々に第1仮全閉開度に到達させるようにWGA34がフィードバック制御により駆動される。この場合、実開度Pvが第2仮全閉開度よりも大きい期間T11において(時刻t11から時刻t12まで)、最終目標開度が第1仮全閉開度に設定されて、この第1仮全閉開度に基づきWGA34が継続的にフィードバック制御により駆動される。これにより、WGV31が衝突限界速度を超える速度で全閉位置に突き当たることが回避される。
この後、時刻t12において、実開度Pvが第2仮全閉開度以下となることで、機関要求目標開度Svが第1仮全閉開度以下で且つ実開度Pvが第2仮全閉開度以下であるという第2条件が成立する。そのため、機関要求目標開度Svと実開度Pvとに基づいて、実開度Pvを徐々に機関要求目標開度Svに到達させるようにWGA34がフィードバック制御により駆動される。この場合、第1仮全閉開度よりも少なくとも閉側の開度が最終目標開度に設定され、この最終目標開度が徐々に低下されていく。具体的には、実開度Pvの変化速度が所定の基準速度によって制限されるように、より詳しくは実開度Pvがほぼ基準速度で低下していくように、最終目標開度が機関要求目標開度Svに向けて徐々に低下されて、この最終目標開度と実開度Pvとに基づきWGA34がフィードバック制御される。
以下では、このような制御を適宜「テーリング制御」と呼び、また、テーリング制御において適用される目標開度を適宜「テーリング時目標開度」と呼ぶ。テーリング制御は、実開度Pvが第1仮全閉開度以下となった時点で既に真の開度が全閉となっている可能性があるので、実開度Pvが第2仮全閉開度以下となった後の実開度Pvの変化速度を制限するために行っている。これにより、フィードバック制御でWGV31を再駆動させた後に再び衝突限界速度を超えることを確実に回避するようにしている。
このようなテーリング制御により、時刻t13において、実開度PvがWGV31の真の全閉位置に対応する開度に到達し、当該開度に実開度Pvが固定されて変化しなくなる。このときに、ポジションセンサ53によって検出されたWGV31の開弁位置(作動位置)が、WGV31が排気バイパス通路30を完全に塞ぐ基準位置として学習される。
以上の本実施形態によれば、WGV31の全閉要求が発せられてからWGV31が全閉開度に設定されるまでの時間が「T1」となる。なお、図5中の期間T12は、機関要求目標開度Svが第1仮全閉開度以下で且つ実開度Pvが第2仮全閉開度以下であるという第2条件が成立する期間である。
次に、図6を参照して、本発明の実施形態によるWGV開度の制御方法と比較例によるWGV開度の制御方法とを比較する。図6(a)及び(b)は、機関要求目標開度Svが全開開度(WGV開度100%)からほぼ全閉開度(例えばWGV開度5%)に変化したときに、本発明の実施形態によるWGV開度の制御方法を実行した場合のタイムチャートと、比較例によるWGV開度の制御方法を実行した場合のタイムチャートとをそれぞれ示している。図6(a)は、図5と同様の図である。他方で、図6(b)において、グラフG31は、比較例での機関要求目標開度Svの時間変化を示し、グラフG32は、比較例での最終目標開度の時間変化を示し、グラフG33は、比較例でのWGV31の開度(実開度)の時間変化を示している。また、図6(b)でも、符号A11で示す開度は、制御上で認識している基準位置に対応する開度であり、符号A12で示す開度は、真の全閉位置に対応する開度であり、符号A13で示す開度は、第1仮全閉開度である。
図6(b)に示すように、比較例でも、時刻t11において機関要求目標開度Svが全開開度からほぼ全閉開度へ変化すると(つまり全閉要求があったとき)、最終目標開度が第1仮全閉開度に設定され、最終目標開度としての第1仮全閉開度と実開度Pvとに基づいて、実開度Pvを徐々に第1仮全閉開度に到達させるようにWGA34がフィードバック制御される。しかしながら、比較例では、本実施形態と異なり、実開度Pvが第2仮全閉開度ではなく第1仮全閉開度に完全に到達するまで、このフィードバック制御が継続して行われる。そして、比較例では、実開度Pvが第1仮全閉開度に到達してから(時刻t14)、実開度Pvを機関要求目標開度Svに到達させるようにフィードバック制御(テーリング制御)が行われる。その結果、比較例では、時刻t15において、実開度PvがWGV31の真の全閉位置に対応する開度に到達し、当該開度に実開度Pvが固定されて変化しなくなる。
このような比較例では、WGV31の全閉要求が発せられてからWGV31が全閉開度に設定されるまでの時間が「T2」となっており、この時間T2は、本実施形態において、WGV31の全閉要求が発せられてからWGV31が全閉開度に設定されるまでの時間T1よりも長い。これは、比較例では、実開度Pvが第1仮全閉開度に到達するまでに遅れが発生したからである、つまり実開度Pvを第1仮全閉開度に到達させるためのフィードバック制御が行われた期間T21が長かったためである。
一般的に、フィードバック制御では、過渡時の動作において目標開度に対して実開度がオーバーシュート及びアンダーシュートをしないようにフィードバックゲインマッチングを行うが、このときにフィードバックゲインをブレーキ効果が大きくなる設定としている場合には、目標到達直前の減速が大きくなる。そのため、比較例では、実開度Pvを第1仮全閉開度に一致させるようにWGA34をフィードバック制御しているときに、オーバーシュート及びアンダーシュートは発生せずに実開度Pvが最終目標値である第1仮全閉開度にほぼ近づいている状態であるが、この最終目標開度へ完全に到達するまでの遅れが大きくなったのである。つまり、実開度Pvが第1仮全閉開度付近で停滞する期間が長くなったのである。
これに対して、本実施形態では、実開度Pvが第1仮全閉開度ではなく、第1仮全閉開度に予め設定した量を加算した開度として定めた第2仮全閉開度に到達したときに、実開度Pvを第1仮全閉開度に到達させようとするフィードバック制御を終了して、実開度Pvを機関要求目標開度Svに到達させようとするフィードバック制御(テーリング制御)へと切り替えている。したがって、本実施形態によれば、比較例のように実開度Pvが第1仮全閉開度付近で停滞することが回避されて、WGV31の全閉要求が発せられてからWGV31が全閉開度に設定されるまでの時間が短縮されたのである。
次に、図7を参照して、本発明の実施形態によるWGV開度の制御方法を実行した場合と比較例によるWGV開度の制御方法を実行した場合の過給圧の挙動について説明する。図7では、グラフG41は、本実施形態によるWGV開度の制御方法を実行した場合の過給圧の時間変化を示し、グラフG42は、比較例によるWGV開度の制御方法を実行した場合の過給圧の時間変化を示している。図7に示すように、比較例によれば、過給圧上昇に遅れが発生しているが、本実施形態によれば、過給圧が速やかに上昇していることがわかる。これは、本実施形態によれば、上述したように、WGV31の全閉要求が発せられてからWGV31が全閉開度に設定されるまでの時間が短縮されたからである。
次に、図8を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置の具体的な動作を、フローチャートに従って説明する。図8は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置の動作を示すフローチャートである。このフローは、制御装置50によって所定の周期で繰り返し実行される。
まず、ステップS101では、制御装置50は、全閉位置学習部503による全閉位置学習が完了しているか否かを判定する。つまり、制御装置50は、例えば今回イグニッションがオンにされてから、WGV31が排気バイパス通路30を完全に塞ぐ作動位置である基準位置の学習が完了しているか否かを判定する(この場合、前回イグニッションがオンにされたときに学習された基準位置は含まないものとする)。
ステップS101の判定の結果、全閉位置学習が完了していると判定された場合(ステップS101:Yes)、処理はステップS102に進む。ステップS102では、制御装置50は、全閉位置学習部503による全閉位置学習によって学習された基準位置に対して温度変化による基準位置のばらつき(具体的には基準位置の開側への温度による変化量)のみを加算した位置に対応する開度を、第1仮全閉開度として設定する。そして、処理はステップS104に進む。
他方で、全閉位置学習が完了していないと判定された場合(ステップS101:No)、処理はステップS103に進む。ステップS103では、制御装置50は、基準位置のばらつき範囲の上限位置(ばらつき範囲における開側の境界位置)に対応する開度を、第1仮全閉開度として設定する。つまり、制御装置50は、組み付け公差や、熱膨張や、摩耗や、温度変化によるポジションセンサ53の特性変化などの全てのばらつきの合計を基準位置に適用した開度を、第1仮全閉開度として設定する。そして、処理はステップS104に進む。なお、全閉位置学習が完了していない状況としては、例えばエンジン10の始動時などが該当する。
次いで、ステップS104では、制御装置50は、機関要求目標標開度Svが第1仮全閉開度以下であるか否かを判定する。この判定は、機関要求目標開度Svが、全閉位置のばらつきや温度特性などを考慮したときに真のWGV開度が全閉となっている可能性がある開度(第1仮全閉開度)であるか否かを判定することに相当する。
ステップS104の判定の結果、機関要求目標標開度Svが第1仮全閉開度よりも大きいと判定された場合には(ステップS104:No)、真のWGV開度が全閉となっている可能性はない。この場合には、上記した第1条件も第2条件も成立していないので、処理はステップS109に進み、制御装置50は、通常通り、実開度Pvが機関要求目標開度Svとなるようにフィードバック制御を行う。そして、処理は終了する。
他方で、機関要求目標標開度Svが第1仮全閉開度以下であると判定された場合には(ステップS104:Yes)、真のWGV開度が全閉となっている可能性がある開度であると考えられる。この場合、処理はステップS105に進み、制御装置50は、実開度Pvが第2仮全閉開度よりも大きいか否かを判定する。この判定では、実開度Pvが、フィードバック制御による収束遅れを考慮して、全閉位置のばらつきや温度特性などを考慮したときに真のWGV開度が全閉となっている可能性がある開度(第1仮全閉開度)に予め設定した量を加算した開度(第2仮全閉開度)よりも大きいか否かを判定している。
ステップS105の判定の結果、実開度Pvが第2仮全閉開度よりも大きいと判定された場合(ステップS105:Yes)、処理はステップS106に進む。この場合には、第1条件が成立しているため、制御装置50は、最終目標開度を第1仮全閉開度に設定して、最終目標開度としての第1仮全閉開度と実開度Pvとに基づいて、実開度Pvを徐々に第1仮全閉開度に到達させるようにWGA34をフィードバック制御する(ステップS106)。そして、処理は終了する。
他方で、実開度Pvが第2仮全閉開度以下であると判定された場合(ステップS105:No)、処理はステップS107に進む。この場合には、第1条件が成立していない。ステップS107では、制御装置50は、機関要求目標開度Svが、実開度Pvの変化速度がほぼ基準速度となるようにテーリング制御するときの目標開度(テーリング時目標開度)以下であるか否かを判定する。この判定は、テーリング制御を継続するか否かを判定するために行っている。上記したようにテーリング制御ではテーリング時目標開度を機関要求目標開度Svに向けて徐々に低下させていくが、低下させたテーリング時目標開度が機関要求目標開度Svを下回った場合にはテーリング制御を継続すべきではないと言える。
ステップS107の判定の結果、機関要求目標開度Svがテーリング時目標開度以下であると判定された場合(ステップS107:Yes)、処理はステップS108に進む。この場合には、テーリング時目標開度が機関要求目標開度Svを下回っていないので、テーリング制御を継続すべきである。したがって、ステップS108において、制御装置50は、テーリング制御を実行する。具体的には、制御装置50は、実開度Pvの変化速度を所定の基準速度によって制限するように、つまり実開度Pvをほぼ基準速度で低下させるように、最終目標開度を機関要求目標開度Svに向けて徐々に低下させて、この最終目標開度と実開度Pvとに基づきWGA34をフィードバック制御する。そして、処理は終了する。
他方で、機関要求目標開度Svがテーリング時目標開度よりも大きいと判定された場合(ステップS107:No)、処理はステップS109に進む。この場合には、テーリング時目標開度が機関要求目標開度Svを下回っているので、テーリング制御を実行すべきではない。したがって、ステップS109において、制御装置50は、実開度Pvが機関要求目標開度Svとなるようにフィードバック制御を行う。そして、処理は終了する。
次に、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、WGV31をほぼ全閉開度に駆動するときに、最初に、全閉開度よりも開側の第1仮全閉開度を目標開度に設定してWGA34を駆動し、この駆動によってWGV開度が第1仮全閉開度よりも更に開側の第2仮全閉開度に到達した後に、目標開度を第1仮全閉開度よりも閉側の開度に切り替えてWGA34を駆動する。これにより、WGV31が衝突限界速度を超えて全閉位置に突き当たることを回避することができると共に、そのように衝突限界速度を超えないように制御したことに起因する過給圧上昇の応答性低下を改善することができる。よって、加速レスポンスなどを改善することができる。
また、本実施形態によれば、第1仮全閉開度として、基準位置のばらつき範囲の上限位置に対応するWGV開度を適用するので、WGV31が高速駆動された状態で全閉位置へ突き当たることをより確実に回避できる。
また、本実施形態によれば、WGV31をほぼ全閉開度に設定すべく上記したような制御を行うときに、WGV31の基準位置を学習するので、この後、学習されたWGV31の基準位置に基づき、WGV開度を精度良く検出することができると共に、WGV開度を精度良く制御することができる。
また、本実施形態によれば、上記のような基準位置の学習が完了している場合には、第1仮全閉開度として、基準位置のばらつき範囲の上限位置に替えて、学習された基準位置に対して温度変化による基準位置のばらつきを加算した位置に対応するWGV開度を適用する。これにより、第1仮全閉開度が小さくなる(閉側になる)ので、第1仮全閉開度を目標開度に設定して制御した後にWGV開度を機関要求目標開度Svに向かって制御する時間を短縮することができ、過給圧上昇の応答性低下を効果的に改善することができる。
また、本実施形態によれば、機関要求目標開度Svが第1仮全閉開度以下で且つ実開度Pvが第2仮全閉開度よりも大きい場合には、第1仮全閉開度を目標開度に設定して実開度Pvを第1仮全閉開度に一致させるようにアクチュエータ操作量を演算し、他方で、機関要求目標開度Svが第1仮全閉開度以下で且つ実開度Pvが第2仮全閉開度以下である場合には、第1仮全閉開度よりも閉側の開度を目標開度に設定して実開度Pvを機関要求目標開度Svに一致させるようにアクチュエータ操作量を演算する。これにより、高速で全閉位置に突き当たることがないようにWGV31を動作させつつ、このときの過給圧上昇の応答性低下を適切に改善することができる。
また、本実施形態によれば、機関要求目標開度Svが第1仮全閉開度以下で且つ実開度Pvが第2仮全閉開度以下である場合には、実開度Pvを機関要求目標開度Svに到達させるように制御している間、実開度Pvの変化速度を所定の基準速度によって制限するようにアクチュエータ操作量を演算する。これにより、実開度Pvが第2仮全閉開度に到達した後に、WGV31が衝突限界速度を超えて全閉位置に突き当たることを確実に回避することができる。
10 エンジン
11 吸気通路
15 排気通路
20 ターボチャージャ
201 コンプレッサ
202 タービン
30 排気バイパス通路
31 ウエストゲートバルブ(WGV)
34 ウエストゲートアクチュエータ(WGA)
50 制御装置
53 ポジションセンサ
501 目標過給圧演算部
502 機関要求目標開度演算部
503 全閉位置学習部
504 実開度演算部
505 WGA操作量演算部
506 WGA駆動部

Claims (7)

  1. エンジンの制御装置であって、
    エンジンの排気通路上に設けられたタービンと、エンジンの吸気通路上に設けられ、前記タービンと一体に回転するコンプレッサとを備えるターボチャージャと、
    前記タービンの上流側と下流側とを連通する排気バイパス通路上に設けられ、この排気バイパス通路を流れる排気ガスの流量を調整するウエストゲートバルブと、
    前記ウエストゲートバルブの開弁位置を変更して、その開度を調整するように駆動されるアクチュエータと、
    前記ウエストゲートバルブの開弁位置を検出するポジションセンサと、
    エンジンの運転状態に応じた前記ターボチャージャによる目標過給圧が実現されるように、前記アクチュエータを駆動する制御を行って前記ウエストゲートバルブの開度を調整するコントローラと、
    を有し、
    前記コントローラは、前記ウエストゲートバルブをほぼ全閉開度に向けて前記アクチュエータによって駆動する場合に、最初に、全閉開度よりも開側の第1仮全閉開度を前記ウエストゲートバルブの目標開度に設定して前記アクチュエータを駆動し、このアクチュエータの駆動によって、前記ポジションセンサにより検出された前記ウエストゲートバルブの開弁位置に対応する実開度が、前記第1仮全閉開度よりも更に開側の第2仮全閉開度に到達した後に、前記目標開度を前記第1仮全閉開度よりも閉側の開度に切り替えて前記アクチュエータを駆動して、前記ウエストゲートバルブがほぼ全閉開度に設定されるようにする、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  2. 前記第1仮全閉開度には、前記ウエストゲートバルブが前記排気バイパス通路を完全に塞ぐ位置である基準位置のばらつき範囲の上限位置に対応する開度が適用される、請求項1に記載のエンジンの制御装置。
  3. 前記コントローラは、前記ウエストゲートバルブをほぼ全閉開度に向けて前記アクチュエータによって駆動する場合に、前記ポジションセンサにより検出された前記ウエストゲートバルブの開弁位置に基づき、前記ウエストゲートバルブが前記排気バイパス通路を完全に塞ぐ位置である基準位置を学習する全閉位置学習部を備える、請求項1又は2に記載のエンジンの制御装置。
  4. 前記第1仮全閉開度には、前記コントローラの前記全閉位置学習部による前記基準位置の学習が完了していない場合には、前記基準位置のばらつき範囲の上限位置に対応する開度が適用され、前記全閉位置学習部による前記基準位置の学習が完了している場合には、学習された基準位置に対して温度変化による基準位置のばらつきを適用した位置に対応する開度が適用される、請求項3に記載のエンジンの制御装置。
  5. 前記第2仮全閉開度には、予め定めた所定開度を前記第1仮全閉開度に対して加算した開度が適用される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  6. 前記コントローラは、
    エンジンの運転状態に基づき前記目標過給圧を演算する目標過給圧演算部と、
    実過給圧を前記目標過給圧に到達させるために前記ウエストゲートバルブに設定すべき開度である機関要求目標開度を演算する機関要求目標開度演算部と、
    前記ウエストゲートバルブが前記排気バイパス通路を完全に塞ぐ位置である基準位置に基づき、前記ポジションセンサにより検出された前記ウエストゲートバルブの開弁位置を実開度に変換する実開度演算部と、
    前記実開度を所定の目標開度に到達させるために前記アクチュエータを操作すべき量であるアクチュエータ操作量を演算するアクチュエータ操作量演算部と、
    前記アクチュエータ操作量を前記アクチュエータに出力するアクチュエータ駆動部と、
    を備え、
    前記アクチュエータ操作量演算部は、
    前記機関要求目標開度が前記第1仮全閉開度以下で、且つ前記実開度が前記第2仮全閉開度よりも大きい場合には、前記第1仮全閉開度を前記所定の目標開度に設定して、前記実開度を前記第1仮全閉開度に到達させるように前記アクチュエータ操作量を演算し、
    前記機関要求目標開度が前記第1仮全閉開度以下で、且つ前記実開度が前記第2仮全閉開度以下である場合には、前記第1仮全閉開度よりも閉側の開度を前記所定の目標開度に設定して、前記実開度を前記機関要求目標開度に到達させるように前記アクチュエータ操作量を演算する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  7. 前記コントローラの前記アクチュエータ操作量演算部は、前記機関要求目標開度が前記第1仮全閉開度以下で、且つ前記実開度が前記第2仮全閉開度以下である場合には、前記実開度を前記機関要求目標開度に到達させようとしている間、前記実開度の変化速度を所定の基準速度によって制限するように前記アクチュエータ操作量を演算する、請求項6に記載のエンジンの制御装置。
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