以下、ウェイストゲートバルブの制御装置の一実施形態を、図1〜図7を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態のウェイストゲートバルブの制御装置が適用されたエンジン10の吸排気系の構成を説明する。なお、同図における白矢印はエンジン10の吸気系における吸気の流れ方向を示しており、黒矢印はエンジン10の排気系における排気の流れ方向を示している。
同図に示すように、本実施形態のウェイストゲートバルブの制御装置は、6つの気筒#1〜#6が第1バンク11A及び第2バンク11Bの2つのバンクに分かれて配置されたV型6気筒のエンジン10に適用されている。なお、エンジン10の気筒の点火順序は、気筒#1、気筒#2、気筒#3、気筒#4、気筒#5、気筒#6の順となっている。そして、気筒#1、気筒#3、気筒#5の3つの気筒が第1バンク11Aに、気筒#2、気筒#4、気筒#6の3つの気筒が第2バンク11Bに、それぞれ配置されている。
エンジン10は、第1バンク11A側、第2バンク11B側の2つの排気タービン式過給機12A、12Bを備えている。各排気タービン式過給機12A、12Bには、吸気を圧縮するコンプレッサ13A、13Bと、排気を受けてコンプレッサ13A、13Bを駆動するタービン14A、14Bと、がそれぞれ設けられている。
エンジン10は、第1バンク11A側の排気タービン式過給機12Aのコンプレッサ13Aが設けられた第1吸気通路15Aと、第2バンク11B側の排気タービン式過給機12Bのコンプレッサ13Bが設けられた第2吸気通路15Bと、を備えている。第1吸気通路15A及び第2吸気通路15Bは、合流した上でサージタンク16に接続されており、吸気はこのサージタンク16から各気筒#1〜#6に分配供給される。
各コンプレッサ13A、13Bには、回転に応じて吸気を圧縮するコンプレッサホイール17A、17Bがそれぞれ設けられている。また、コンプレッサ13A、13Bには、コンプレッサホイール17A、17Bを迂回して吸気を流す吸気バイパス通路18A、18Bと、吸気バイパス通路18A、18Bを開閉するエアバイパスバルブ19A、19Bと、がそれぞれ設けられている。
第1吸気通路15A及び第2吸気通路15Bにおけるコンプレッサ13A、13Bよりも上流側の部分には、第1吸気通路15A及び第2吸気通路15Bを流れる吸気の流量を検出するエアフローメータ20A、20Bと、大気圧を検出する大気圧センサ21A、21Bと、がそれぞれ設けられている。また、第1吸気通路15A及び第2吸気通路15Bにおけるコンプレッサ13A、13Bよりも下流側の部分には、吸気の流量を調整するための弁であるスロットルバルブ22A、22Bと、吸気を冷却するインタークーラ23A、23Bと、がそれぞれ設けられている。さらに、第1吸気通路15A及び第2吸気通路15Bにおけるコンプレッサ13A、13Bよりも下流側、且つスロットルバルブ22A、22Bよりも上流側の部分には、過給圧PBを検出する過給圧センサ24A、24Bがそれぞれ設けられている。なお、以下の説明では、過給圧PBの値を、コンプレッサ13A、13Bよりも下流側、且つスロットルバルブ22A、22Bよりも上流側の部分の吸気の圧力の絶対値で表している。
また、エンジン10は、第1バンク11Aの各気筒#1、#3、#5の排気が流れる第1排気通路25Aと、第2バンク11Bの各気筒#2、#4、#6の排気を流す第2排気通路25Bと、を備えている。そして、第1排気通路25Aには、第1バンク11A側の排気タービン式過給機12Aのタービン14Aが設けられており、第2排気通路25Bには、第2バンク11B側の排気タービン式過給機12Bのタービン14Bが設けられている。第1排気通路25A及び第2排気通路25Bにおけるタービン14A、14Bよりも下流側の部分には、各気筒#1〜#6で燃焼した混合気の空燃比を検出するための空燃比センサ26A、26Bがそれぞれ設けられている。さらに、第1排気通路25A及び第2排気通路25Bにおける空燃比センサ26A、26Bよりも下流側の部分には、排気を浄化するための触媒装置27A、27Bがそれぞれ設けられている。
各タービン14A、14Bには、通過する排気を受けて回転するタービンホイール28A、28Bがそれぞれ設けられている。各排気タービン式過給機12A、12Bにおいてタービンホイール28A、28Bはコンプレッサホイール17A,17Bに一体回転可能に連結されている。そして、タービンホイール28A、28Bの回転を受けてコンプレッサホイール17A、17Bが回転することで、コンプレッサ13A、13Bが駆動する。また、各タービン14A、14Bには、タービンホイール28A、28Bを迂回して排気を流す排気バイパス通路29A、29Bと、排気バイパス通路29A、29Bを開閉するウェイストゲートバルブ30A、30Bと、がそれぞれ設けられている。
図2に、第1バンク11A側の排気タービン式過給機12Aの部分断面構造を示す。なお、第2バンク11B側の排気タービン式過給機12Bも、第1バンク11A側の排気タービン式過給機12Aと同様の構成となっている。
排気タービン式過給機12A(12B)のタービン14A(14B)には、タービンホイール28A(28B)の径方向外側の部分を周回するスクロール通路31と、外部に排気を排出するための排気流出口32と、が設けられている。また、タービン14A(14B)には、スクロール通路31と排気流出口32とを直接連通するように上述の排気バイパス通路29A(29B)が設けられている。そして、排気バイパス通路29A(29B)における排気流出口32側の開口に、ウェイストゲートバルブ30A(30B)が設けられている。
ウェイストゲートバルブ30A(30B)は、排気バイパス通路29A(29B)の排気流出口32側の開口から離れる方向(以下、開き方向と記載する)、及び同開口に近づく方向(以下、閉じ方向と記載する)に動作可能にタービン14A(14B)に取り付けられている。以下の説明では、ウェイストゲートバルブ30A(30B)が上記開口を閉塞するまで閉じられた状態を同ウェイストゲートバルブ30A(30B)の全閉という。また、ウェイストゲートバルブ30A、30Bがその動作範囲の開き方向における限界となる動作位置に位置している状態を同ウェイストゲートバルブ30A(30B)の全開という。さらに、全閉となる動作位置(以下、全閉位置と記載する)からの開き方向へのウェイストゲートバルブ30A(30B)の動作位置の変化量を、同ウェイストゲートバルブ30A(30B)の開度という。
ウェイストゲートバルブ30A(30B)には、ロッド33を介してアクチュエータ34が連結されている。アクチュエータ34には、直流モータ35が内蔵されている。そして、通電に応じて直流モータ35が発生する動力を、ロッド33を介して伝達することで、ウェイストゲートバルブ30A(30B)に駆動力が加えられるようになっている。さらに、アクチュエータ34には、ウェイストゲートバルブ30A(30B)の開度(以下、WGV開度と記載する)を検出するための開度センサ36が設けられている。
本実施形態の制御装置37は、エンジン制御用のマイクロコンピュータとして構成されており、エンジン10の吸気制御の一環として、ウェイストゲートバルブ30A(30B)の駆動制御を行っている。制御装置37には、上述のエアフローメータ20A、20B、大気圧センサ21A、21B、過給圧センサ24A、24B、空燃比センサ26A、26B、及び開度センサ36の検出結果が入力されている。さらに制御装置37には、エンジン10が搭載された車両の走行速度(車速SPD)を検出する車速センサ38、同車両の運転者のアクセルペダル踏込量(アクセル開度ACCP)を検出するアクセル開度センサ39などの検出結果も入力されている。
なお、エンジン10の運転中のウェイストゲートバルブ30A(30B)には、タービンホイール28A(28B)を通過する際の圧力損失により発生するスクロール通路31と排気流出口32との排気の差圧により、開き方向の力が加わっている。そのため、WGV開度は、アクチュエータ34から加えられた閉じ方向の駆動力と、上記差圧による開き方向の力との釣り合いにより定まる。なお、スクロール通路31、排気流出口32間の排気の差圧は、エンジン10の背圧に、ひいては過給圧に応じて変化する値となる。また、アクチュエータ34が発生する駆動力は、直流モータ35に流す駆動電流に応じて変化する値となる。よって、WGV開度は、過給圧と駆動電流との関係により定まるようになっている。これに対して制御装置37は、エンジン10の吸気制御の一環として行うウェイストゲートバルブ30A(30B)の開度制御に際して、直流モータ35の駆動電流を調整することで、WGV開度を調整している。
図3に、エンジン10の吸気制御にかかる制御装置37の制御構造を示す。吸気制御に際して制御装置37はまず、目標トルク演算処理P100において、アクセル開度や車速等に基づき、エンジン10が発生するトルクの目標値である目標トルクを演算する。そして、制御装置37は、吸気目標値演算処理P110において、目標トルクに基づき、吸気制御の制御量であるインマニ圧、過給圧、及び吸気流量の目標値(目標インマニ圧、目標過給圧、目標吸気流量)を演算する。インマニ圧は、サージタンク16における吸気の圧力を表している。
過給圧が大気圧以下となる自然吸気領域でエンジン10が運転される場合の目標過給圧は、大気圧の標準値として予め設定された標準大気圧(1013.25[hPa])に設定される。また、過給圧が大気圧を超過する過給領域でエンジン10が運転される場合の目標インマニ圧、目標過給圧には同じ値が設定される。そして、制御装置37は、スロットル駆動制御P120において、目標インマニ圧の実現に必要なスロットルバルブ22A、22Bの開度を求め、その開度となるようにスロットルバルブ22A、22Bの駆動制御を行う。
一方、制御装置37は、目標電流演算処理P130において、目標過給圧の実現に必要な直流モータ35の駆動電流を目標電流の値として演算する。目標電流の演算に際してはまず、予め実験等で求められた目標過給圧とその実現に必要な駆動電流との関係を記憶した演算マップを参照して、目標過給圧から目標電流のフィードフォワード項が求められる。続いて、目標過給圧と過給圧との差から目標電流のフィードバック項が求められ、このフィードバック項をフィードフォワード項に加算した和が目標電流の値として演算される。
また、制御装置37は、目標開度演算処理P140において、目標過給圧を実現するウェイストゲートバルブ30A、30Bの開度を目標開度として演算する。制御装置37には、予め実験等で求めた過給圧と同過給圧を実現するウェイストゲートバルブ30A、30Bの開度との関係を記憶したマップが記憶されており、目標開度の演算は、このマップを参照して行われる。
さらに、制御装置37は、後述する微小振動制御P150において、微小振動制御電流を演算する。そして、制御装置37は、ウェイストゲートバルブ(WGV)駆動制御P160において、両排気タービン式過給機12A、12Bの直流モータ35に流す駆動電流を、目標電流に微小振動制御電流を加えた和となるように制御する。
図4に、微小振動制御P150において制御装置37が実行する微小振動制御ルーチンのフローチャートを示す。なお、本ルーチンの処理は、既定の制御周期毎に繰り返し実行される。
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS200において、過給圧制御中であるか否かが判定される。過給圧制御は、過給圧の制御を目的としたウェイストゲートバルブ30A、30Bの制御であり、エンジン10が過給領域で運転されているときに、過給圧制御よりも優先度の高い、触媒急速暖機や故障診断等を目的としたウェイストゲートバルブ30A、30Bの制御の実行が要求されていないことを条件に実行される。ここで、過給圧制御の実行中であれば(YES)、ステップS210に処理が進められ、過給圧制御の実行中でなければ(NO)、ステップS250に処理が進められる。
ステップS250に処理が進められると、そのステップS250において微小振動制御電流の値として「0」が設定された後、今回の本ルーチンの処理が終了される。すなわち、この場合には、目標電流演算処理P130において演算した目標電流の値がそのまま、直流モータ35に流す駆動電流の値となる。
ステップS210に処理が進められると、そのステップS210において、過給圧が既定の判定値α以上であるか否かが判定される。そして、過給圧が判定値α以上の場合には(YES)ステップS220に処理が進められ、過給圧が判定値α未満の場合には(NO)上述のステップS250に処理が進められる。
ステップS220に処理が進められると、そのステップS220において、目標吸気流量が既定の判定値β以上であるか否かが判定される。そして、目標吸気流量が判定値β以上の場合には(YES)ステップS230に処理が進められ、目標吸気流量が判定値β未満の場合には(NO)上述のステップS250に処理が進められる。
ステップS230に処理が進められると、そのステップS230において、目標開度の変化速度の絶対値が既定の判定値γ以上であるか否かが判定される。そして、目標開度の変化速度が判定値γ未満の場合には(NO)上述のステップS250に処理が進められ、同変化速度が判定値γ以上の場合には(YES)ステップS240に処理が進められる。ステップS240に処理が進められると、そのステップS240において、微小振動制御電流生成処理が実施された後、今回の本ルーチンの処理が終了される。微小振動制御電流生成処理では、下記の態様で微小振動制御電流が生成される。
図5に示すように、微小振動制御処理において微小振動制御電流は、振幅中心を0とした既定の振幅ε、既定の周期Taのパルス波形を描いて推移する値となるように生成される。よって、微小振動制御ルーチンにおいてステップS240に処理が進められる場合の直流モータ35に流す駆動電流の値は、目標電流演算処理P130において演算した目標電流の値を中心に微小振動する値となる。なお、微小振動制御電流の振幅ε、及び周期Taは、フリクションが製造公差の上限値となったウェイストゲートバルブ30A、30Bの直流モータ35に対して、同微小振動制御電流を駆動電流として流した場合に、WGV開度の微小振動が発生するように設定されている。
こうした微小振動制御P150では、過給圧が判定値α以上、且つ目標吸気流量が判定値β以上であり(S210:YES、且つS220:YES)、更に目標開度の変化速度が判定値γ以上であること(S230:YES)を条件に微小振動制御電流生成処理(S240)が実施される。高過給域で過給圧が目標過給圧をオーバーシュートすると、過給圧が過大となってタービンホイール28A、28Bが過回転する虞がある。そのため、高過給域では、過給圧が目標過給圧をオーバーシュートしないように過給圧制御を行う必要がある。これに対して過給圧が判定値α以上、且つ目標吸気流量が判定値β以上であることは、過給圧制御での過給圧のオーバーシュートを許容できない高過給域でエンジン10が運転されていることを表している。一方、WGV開度を変更する際には、目標開度の値も変化するため、目標開度の変化速度が判定値γ以上であることは、WGV開度の変更が要求されていることを表している。
(本実施形態の作用効果)
本実施形態の作用及び効果について説明する。
ウェイストゲートバルブ30A、30Bの開度変更に際しては、同バルブ30A、30Bやその駆動機構の各摺動部のフリクションが抗力として作用する。こうしたフリクションの大きさには製造公差による個体差が存在し、その差が開度制御の応答性にばらつきを生じさせる虞がある。本実施形態では、こうしたフリクションの個体差による開度制御の応答性のばらつきを抑えるため、微小振動制御P150を実施している。
図6は、微小振動制御P150を実施せずにウェイストゲートバルブ30A、30Bの開度制御を行った場合の加速時における過給圧制御の実施態様を示す。この場合には常に、目標電流演算処理P130で演算した目標電流の値がそのまま、直流モータ35に流す駆動電流の値として設定される。なお、同図には、排気タービン式過給機12A、12Bに設置されたウェイストゲートバルブ30A、30Bのフリクションが、製造公差の中央値である場合の過給圧及びWGV開度の推移が実線で、製造公差の上限値である場合の過給圧及びWGV開度の推移が一点鎖線で、それぞれ示されている。
同図では、過給圧と目標過給圧との差が一定の値以下となる時刻t1までの期間はWGV開度を全閉位置に保持し、時刻t1から過給圧が目標過給圧に到達するまでは、過給圧の上昇に応じてWGV開度を次第に大きくするように、ウェイストゲートバルブ30A、30Bの開度制御が行われている。WGV開度の変更を開始する際には、ウェイストゲートバルブ30A、30Bのフリクション(静摩擦)が抗力として作用する。そのため、フリクションが大きい個体ほど、開度変更を指令した時刻t1から実際にWGV開度が変化し始めるまでの遅延時間が長くなる。こうした遅延時間が長い場合、同図に一点鎖線で示すフリクションが製造公差の上限値である個体の場合のように、過給圧が目標過給圧をオーバーシュートする虞がある。このように、微小振動制御P150を実施しない場合には、ウェイストゲートバルブ30A、30Bのフリクションの個体差により、開度制御の応答性にばらつきが生じる虞がある。そして、そうした応答性のばらつきが過給圧のオーバーシュートやアンダーシュートを招くことから、開度制御の制御性が悪化することになる。
図7は、本実施形態の場合の加速時における過給圧制御の実施態様を示す。同図の場合も、過給圧と目標過給圧との差が一定の値以下となる時刻t1までの期間はWGV開度を全閉位置に保持し、時刻t1から過給圧が目標過給圧に到達するまでは、過給圧の上昇に応じてWGV開度を次第に大きくするように、ウェイストゲートバルブ30A、30Bの開度制御が行われている。なお、ここでは、時刻t1の時点で、過給圧は判定値αを超えており、且つ目標吸気流量は判定値βを超えているものとする。
こうした場合、時刻t1にWGV開度の変更が要求されると、微小振動制御電流生成処理が実施されて、直流モータ35に流す駆動電流の値が、目標電流演算処理P130において演算した目標電流の値を中心に微小振動する値となる。ここで、このときの駆動電流の微小振動の振幅が十分に大きい値に設定されていれば、フリクションの大小に拘らず、駆動電流の微小振動に応じてWGV開度も微小振動するようになる。こうしたWGV開度の微小振動は、その後の時刻t2において、過給圧が目標過給圧の近傍まで上昇して、目標開度の変化速度が判定値γ未満となるまで継続される。すなわち、時刻t1から時刻t2までのWGV開度の変更が要求されている期間、WGV開度を微小振動させる微小振動制御が実施されている。
なお、WGV開度の変化が一旦始まれば、静摩擦から動摩擦への移行により、ウェイストゲートバルブ30A、30Bのフリクションは小さくなり、同フリクションの個体差によるばらつきの幅も小さくなる。そのため、WGV開度の変更を開始する時刻t1に微小振動制御を行っていれば、フリクションの個体差による開度制御の応答性のばらつきが抑えられる。
なお、微小振動制御の実施は、アクチュエータ34に大きな負荷を掛けるため、その長時間、或いは高頻度の実施は、アクチュエータ34の耐久性の低下を招く虞がある。これに対して、本実施形態では、開度制御の応答性のばらつきが特に問題となる高過給域において、WGV開度の変更が要求されている場合に限り、微小振動制御を行うようにしている。
以上の本実施形態のウェイストゲートバルブの制御装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、ウェイストゲートバルブ30A、30Bの開度変更を開始する際にWGV開度を微小振動させる微小振動制御を行っている。そのため、フリクションの個体差による開度制御の制御性の悪化を抑えられる。
(2)フリクションの個体差により両ウェイストゲートバルブ30A、30Bの開度制御の応答性にばらつきが生じると、バンク間のWGV開度のずれが生じるようになる。そして、その結果、バンク間に背圧の違いによる内部EGR量や気筒内の残留ガス量のばらつきが生じて、燃焼が悪化する虞がある。その点、本実施形態では、フリクションの個体差による開度制御の応答性のばらつきを抑制することで、燃焼の悪化を招くバンク間のWGV開度のずれを抑えられるようになる。
(3)本実施形態では、過給圧のオーバーシュートがタービンホイール28A、28Bの過回転を招くことから開度制御の応答性のばらつきが特に問題となる高過給域に限り、微小振動制御を実施するようにしている。また、本実施形態では、WGV開度の変更が要求されているときに限り、微小振動制御を実施するようにしている。そのため、微小振動制御の実施に伴う負荷の増加によるアクチュエータ34の耐久性の低下を抑えられる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、高過給域であるか否かの判定を、過給圧と目標吸気流量とに基づいて行っていたが、それらのいずれか一方に基づいて同判定を行うようにしてもよい。また、目標吸気流量の代わりにエアフローメータ20A、20Bの検出値に基づいて同判定を行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、WGV開度の変更が要求されているか否かを目標開度の変化速度に基づいて判定していたが、目標開度とWGV開度との差に基づいて同判定を行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、高過給域に限り、微小振動制御を実施するようにしていたが、それ以外の運転域でも微小振動制御を行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、WGV開度の変更が要求されている間、微小振動制御を実施していたが、少なくともウェイストゲートバルブ30A、30Bの開度変更の開始時を含むように微小振動制御を実施すれば、フリクションの個体差による開度制御の制御性の悪化を抑えることが可能である。
・上記実施形態では、ウェイストゲートバルブ30A、30Bのアクチュエータ34として、直流モータ35への通電に応じて駆動力を発生する電動式のアクチュエータを採用していた。WGV開度を微小振動させるように駆動力を制御可能なアクチュエータであれば、例えば真空ダイアフラム式等のそれ以外の方式のアクチュエータをその替わりに採用してもよい。