以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書において、水平面における一の方向をX方向と、水平面においてX方向と直交する方向をY方向と、X方向及びY方向に対して直交する方向をZ方向と、それぞれ定義する。
本実施形態では、レンズ部と駆動部を用いてレンズ駆動モジュールを組み立てるレンズ駆動モジュール組み立て装置を示す。
(レンズ駆動モジュールLM)
図1及び図2に示すように、レンズ駆動モジュールLMは、レンズ部LLと駆動部KKを有する。レンズ部LLは、レンズ鏡筒LTと、レンズ鏡筒LTに固定されたレンズ素子LXを備える。
駆動部KKは、レンズ駆動モータMTと、レンズ駆動モータMTを保護する筐体QTと、レンズ駆動モータMTに所定の電力を供給するための入力端子LNと、を有する。レンズ駆動モータMTは、ここではボイルコイルモータであり、リング状のコイルによって磁力を生じさせる駆動源MT1と、リング状の磁石MGを内蔵し、駆動源MT1の磁力を利用して光軸方向に移動する従動部MT2を有する。
従動部MT2は円筒状の部材となっており、その内周面には、レンズ部LLを保持するためのL字形状の保持溝MMが一対形成される。保持溝MMは、端面から軸方向に延びる軸方向溝MJと、この軸方向溝MJと奥側と連続するように周方向に延びる周方向溝MSを有する。従って、レンズ鏡筒LTの外周面に形成される一対の係合突起TTを、保持溝MMに沿って進入させると、係合突起TTと保持溝MMが係合する。なお、この係合突起TTの大きさと比較して、保持溝MMの溝幅及び深さが大きく設定されており、両者が接着剤によって固定されるまでの間は、その余裕隙間の範囲内で、従動部MT2とレンズ部LLは相対移動できる。
従動部MT2の軸方向端面と、レンズ鏡筒LTの周面の間には、周方向の複数個所(ここでは四か所)に接着剤UJが塗布される。この接着剤UJは、従動部MT2とレンズ鏡筒LTの相対位置調整を行ってから、紫外線によって硬化される。結果、レンズ駆動モジュールLMが完成した状態では、従動部MT2とレンズ鏡筒LTが互いに固定される。
入力端子LNに対し所定の電圧が入力されると、レンズ駆動モータMTは、入力された電圧条件に応じて、レンズ部LLを光軸方向に移動させる。例えば、入力端子LNに電圧が入力されない場合には、レンズ部LLは、不定位置となる。一方、入力端子LNに入力された電圧がV1である場合には、レンズ部LLは、INF位置(無限遠での合焦位置)となる。図示は省略するが、入力端子LNに入力された電圧がV2である場合には、レンズ部LLは、別の位置(例えば、マクロ位置)となる。
(レンズ駆動モジュール組み立て装置1の概要)
図3に示すように、レンズ駆動モジュール組み立て装置1は、塗布装置70と、位置決め装置3と、これらの装置制御するために制御信号を出力するコントローラ90と、を備える。
塗布装置70は、部品キャリア72と、部品供給領域F−INにおいてこの部品キャリア72にレンズ部LL及び駆動部KKを供給する部品供給装置79Aと、物品搬出領域L−OUTにおいて、レンズ駆動モジュールLMを搬出する物品搬出装置79Bと、部品供給領域F−IN及び物品搬出領域L−OUTを通過するように、複数の部品キャリア72を移動させる移送装置80と、を備える。移送装置80は、いわゆるターレット機構であり、特に図示しないモータ等の駆動源によって回転される回転テーブルを有する。回転テーブルの周囲には、複数(ここでは12台)の部品キャリア72が、周方向に均等間隔(30°間隔)で配置される。
物品供給領域F−INには、複数のレンズ部LLがストックされるレンズ部用トレーSLと、複数の駆動部KKがストックされる駆動部側トレーSKが配置される。部品供給装置79Aは、各トレーからレンズ部LLと駆動部KKを順番に取り出して、部品キャリア72に載置する。
更に塗布装置70では、部品供給領域F−INから、後述する部品一時搬出領域D−OUTまでの途中に、仮組立領域ASと塗布領域DSが存在する。仮組立領域ASでは、レンズ部LLと駆動部KKを仮組立する。塗布領域DSでは、レンズ部LL及び/又は駆動部KKに対して接着剤UJが塗布される。
本実施形態では、塗布装置70と位置決め装置3が連動するようになっている。従って、塗布装置70の部品供給領域F−INから物品搬出領域L−OUTまでの途中には、位置決め装置3の部品供給領域INと連携する部品一時搬出領域D−OUTと、位置決め装置3の物品搬出領域OUTと連携する物品一時搬入領域D−INが存在する。従って、部品一時搬出領域D−OUTでは、部品供給装置65によって、レンズ部LL及び駆動部KKが、位置決め装置3側に移載される。同様に、物品一時搬入領域D−INでは、部品供給装置65によって、レンズ駆動モジュールLMが、位置決め装置3から塗布装置70に移載される。
物品搬出領域L−OUTでは、正しく組み立てられたレンズ駆動モジュールLMを回収する回収トレーOTと、誤って組み立てられたレンズ駆動モジュールLMを回収するエラートレーETが配置される。物品搬出装置79Bは、部品キャリア72からレンズ駆動モジュールLMを取り出して、回収トレーOTとエラートレーETに振り分ける。
位置決め装置3は、複数の位置調整ユニット10と、部品供給領域INにおいてレンズ部LL及び駆動部KKを位置調整ユニット10に供給する部品供給装置65と、物品搬出領域OUTにおいて位置調整ユニット10からレンズ駆動モジュールLMを搬出する物品搬出装置(部品供給装置65と共通)と、部品供給領域IN及び物品搬出領域OUTを通過するように、複数の位置調整ユニット10を移動させる移送装置60と、を備える。
移送装置60は、いわゆるターレット機構であり、特に図示しないモータ等の駆動源によって回転される回転テーブルを有する。回転テーブルの周囲には、複数(ここでは8台)の位置調整ユニット10が、周方向に均等間隔(45°間隔)で配置される。また、本実施形態では、部品供給領域INと物品搬出領域OUTが同じ位置であることから、移送装置60は、各位置調整ユニット10を360°公転させることによって、位置調整ユニット10を、部品供給領域INから物品搬出領域OUTまで移送する。
部品供給領域INから物品搬出領域OUT間には、位置調整領域AAが存在しており、位置調整ユニット10が位置調整領域AAを通過する際、レンズ部LL及び駆動部KKの相対位置決めを完了させる。
(塗布装置の構造)
次に塗布装置70の構造について説明する。図4に示すように、塗布装置70における部品キャリア72は、基台73と、基台に形成されるレンズ部用収容部73A及び駆動部用収容部73Bと、駆動部用収容部73Bに載置される駆動部KKを保持する駆動部用保持部76を有する。
レンズ部用収容部73Aは、円筒状の収容空間であり、底面側が開放されている。図5に示すように、組立領域ASには、レンズ部用保持部74が上下動自在且つ回転自在に配置される。このレンズ部用保持部74は吸引ノズルとなっており、ここに一時停止する基台73のレンズ部用収容部73Aに対して底面側から進入して、レンズ部用収容部73Aの底面を構成する。従って、レンズ部用保持部74は、レンズ部用収容部73Aに載置されるレンズ部LLを底面側から保持して、レンズ部LLを上下動且つ光軸に対して回転移動させることができる。
図4に戻って、駆動部用保持部76は、駆動部KKの保持、及び保持の解除の切り替えが可能となっており、レンズ部LLに対する底面(下面)を開放させたまま駆動部KKの保持を行なう。駆動部用保持部76は、駆動部KKの保持を行うための第1〜2アーム77A、77Bと、第1〜2アーム77A、77Bの相対的位置を変更可能なアーム移動部77Mと、駆動部KKへ所定の電力を供給するための出力端子77Uと、コントローラ90の制御の下、所定条件の電力を出力端子77Uから出力するための電力コントローラ(図示省略)と、を備える。
アーム移動部77Mは、駆動部KKの保持状態及び保持解除状態との間で、第1〜2アーム77A、77Bの相対的位置を変更可能にする。図4(B)に示すように、第1〜2アーム77A、77Bが駆動部KKを保持する場合、出力端子77Uは、駆動部KKの入力端子LNと電気的に接続する。なお、本実施形態では、第2アーム77Bを付勢する付勢部材77Tをさらに備えている。
第1アーム77Aは、駆動部KKの一部を収容する凹部77Dが形成されて、ベース部77Gに固定される。第2アーム77Bは、ベース部77Gに設けられるレール状のガイド機構77Hに沿って移動自在となっており、第1アーム77Aに対して相対的に接近・離反可能となっている。アーム移動部77Mは、ベース部77Gに一体的に設けられており、特に図示しないモータによりカム77Jを揺動させる。カム77Jのリフト動作によって、これに当接する第2アーム77Bが、ガイド機構77Hに沿って移動する。なお、付勢部材77Tは引張ばねとなっており、第2アーム77Bとカム77Jが常に密着するようになっている。
従って、第2アーム77Bが第1アーム77Aから離反した状態において、第1アーム77Aの凹部77Dに駆動部KKを位置決めし、その後、カム77Jを揺動させて第2アーム77Bを第1アーム77Aに接近させる。結果、出力端子77Uが、駆動部KKの入力端子に接触しながら、第1アーム77Aと第2アーム77Bによって駆動部KKが挟持・位置決めされる。
なお、駆動部用保持部76は、出力端子77Uを付勢する付勢部材(図示省略)を備えることも好ましい。付勢部材としては、コイルバネや板バネ等、公知の付勢部材を用いることができる。付勢部材によれば、第1〜2アーム77A、77Bが駆動部KKを保持する場合に、出力端子51U及び入力端子LNの電気的接続をより確実にできる。
このように、駆動部KKに対して電力を供給して、従動部MT2を所定位置(塗布専用位置)に位置決めした状態で、接着剤UJを塗布するようにすれば、従動部MT2の軸方向又は軸直角方向の位置を予め安定させることが可能となり、ディスペンサDPの先端と、従動部MT2上面の塗布場所とが高精度に位置決めされ、接着剤UJの塗布位置や塗布量をより正確に制御できる。なお、駆動部KKによる従動部MT2の静止位置(塗布専用位置)は、予め、塗布時のディスペンサDPの先端に合わせるようにセッティングしておくことが好ましいが、例えば、別途、レーザ変位計等によって、従動部MT2又はレンズ部LLの高さを個々に計測してから、ディスペンサDPの先端を制御することも可能である。
(事前検査領域P−CKにおける検査動作)
事前検査領域P−CKは、後述する塗布領域DSと共通又はその上流側に位置している。この事前検査領域P−CKでは、駆動部KK及びレンズ部LLに紫外線硬化性樹脂UJを塗布する前、具体的には、後述する組立領域ASにおける仮組立を行う前後、且つ、塗布前において、駆動部KKに対して電力を供給して、駆動部KKが正常に動作するか否かを判定する。この判定は、駆動部KKに電力を供給するコントローラ側のソフトウエアで行っても良く、また、カメラやレーザ変位計によって、外部から従動部MT2(又はレンズ部LL)の動作や姿勢を検査することで判定しても良い。駆動部KKが故障していると判定される場合は、塗布領域DSにおける紫外線硬化性樹脂UJの塗布自体を回避する。結果、綺麗な状態のまま故障している駆動部KKを回収し、メンテナンス(再利用)することが可能になる。
更に事前検査領域P−CKでは、外観検査装置となる撮像装置を配置しておき、それを利用して、レンズ部LL及び/又は駆動部KKの外観検査を行う。例えば、撮像装置による撮像映像に基づいて、コントローラが、レンズ部LL及び/又は駆動部KKに傷が存在していたり、塵埃が付着していたりすると判定した場合は、塗布領域DSにおける紫外線硬化性樹脂UJの塗布自体を回避する。結果、紫外線硬化性樹脂UJが塗布されていない状態のレンズ部LL及び駆動部KKを綺麗な状態のまま回収できるので、これらの部品をメンテナンス(再利用)することが可能になる。また、紫外線硬化性樹脂UJを塗布する前に、レンズ部LL等の外観を検査できるので、その外観異常が、レンズ部LL等に本質的に存在していたものか、紫外線硬化性樹脂UJの塗布工程によって生じたものか(樹脂UJ自体がレンズに付着する場合を含む)か、判別することが可能となるので、外観異常に対して速やかな対策を施すことが可能となる。
なお、この事前検査領域P−CKは、後述する組立領域AS以降の工程に配置することも好ましい。このようにすると、レンズ部LLと駆動部KKの組み付け不良(例えば芯ずれなど)を事前判定することができる。この場合は、例えば、組み付け後のレンズ部LLと駆動部KKの下側に外観検査装置(撮像装置)を設置して、互いの位置関係を検出することが望ましい。
(組立領域ASにおける仮組立動作)
組立領域ASでは、図5(A)に示すように、まず、駆動部用保持部76を開放しておき、基台73のレンズ部用収容部73Aに対してレンズ部用保持部74を進入させる。次いで、部品供給装置79Aが、レンズ部LLをレンズ部用収容部73Aに載置する。その後、図5(B)に示すように、レンズ部LLの上方において、駆動部KKを駆動部用収容部73Bに載置する。その後、駆動部用保持部76を閉じることによって駆動部KKを挟持して高精度に位置決めし、必要に応じて、駆動部KKに対して給電する。この給電によって、従動部MT2の姿勢が安定し、仮組立時におけるレンズ部LLとの衝突を低減できるという利点がある。
図5(C)に示すように、レンズ部用保持部74は、レンズ部LLを吸引保持しながらこれを上昇させて、レンズ部LLを駆動部KKの従動部MT2内に進入させた後、図5(D)に示すように、90°回転させる。結果、レンズ鏡筒LTの外周面に形成される一対の係合突起TTが、L字形状の保持溝MMに沿って進入し、係合突起TTと保持溝MMが係合する。その後、図5(E)に示すように、レンズ部用保持部74を、基台73から下方側に退避させることで、仮組立工程が完了する。レンズ部用保持部74を上下動及び回転させる駆動機構(図示省略)は、基台73の背面側に配設して、基台73と共に旋回する構造であっても良く、また、駆動機構を組立領域ASに固定設置しておき、外部から、レンズ部用保持部74を上下動及び回転させる構造であっても良い。
なお、ここでは、レンズ部LLの係合突起TTを、従動部MT2の保持溝MMに挿入して組み立てる構造を例示したが、本発明はこれに限定されない。レンズ部LLと駆動部KKの結合構造は様々であり、例えば、レンズ部LLの外周に雄ねじが形成され、駆動部KKの内周に雌ねじが形成され、両者を螺合させることで結合するようにしても良い。いずれにしろ、部品の結合構造に合わせて、レンズ部LLと従動部MT2を相対移動させればよい。
(塗布領域DSにおける塗布動作)
図6(A)及び(B)に示すように、塗布領域DSでは、ディスペンサDPが、接着剤となる紫外線硬化性樹脂UJを、レンズ鏡筒LTと従動部MT2の境界となる所定位置に塗布する。なお、図3における第一塗布領域DS1では、紫外線硬化性樹脂UJをレンズ鏡筒LTの周方向の一か所(第一位置)に塗布し、第二塗布領域DS2では、第一位置に対して90°の位相差を有する第二位置に紫外線硬化性樹脂UJを塗布し、第三塗布領域DS3では、第二位置に対して90°の位相差を有する第三位置に紫外線硬化性樹脂UJを塗布し、第四塗布領域DS4では、第三位置に対して90°の位相差を有する第四位置に紫外線硬化性樹脂UJを塗布する。結果、レンズ鏡筒LTの周囲の周方向の四か所に紫外線硬化性樹脂UJが塗布される(図2参照)。なお、既に述べたように、駆動部KKに対して電力を供給して、従動部MT2を所定位置に正確に位置決めした状態で、接着剤UJを塗布しているので、塗布位置のずれを抑制できる。とりわけ、駆動部KK内において、スプリングワイヤ等による手振れ補正機構が内蔵されている場合、この駆動部KKに電力が供給されない状態では、外部からのわずかな加振によって、従動部MT2が揺動し、塗布位置がずれやすい。従って、本塗布装置70のように、塗布時に駆動部KKに対して電力を供給することで、手振れ補正機構の振動を減衰させることができるので、塗布位置のずれを抑制できる。
とりわけ本実施形態では、駆動部用保持部76が駆動部KKを保持して電力の供給を維持したまま、複数の塗布領域(第一塗布領域DS1から第四塗布領域DS4)を共に移動するので、塗布工程を複数に分散させても、常に駆動部KKの姿勢を正確に維持できる。例えば、移送途中で駆動部KKへの力供給をOFFにすると、再び、駆動部KKの保持姿勢を安定させるまでにある程度の時間を要するので、塗布効率が低下しやすい。
また、本実施形態では、4つの部品キャリア72が、第一塗布領域DS1乃至第四塗布領域DS4の間に同時に停止して塗布動作を同時進行させるので、塗布効率が飛躍的に良い。なお、塗布領域DSの後に、塗布確認領域CKを配置しておき、上方に配置されるカメラで紫外線硬化性樹脂UJを撮影して、正しく塗布されているか否か、確認することが望ましい。このようにすると、紫外線硬化性樹脂UJの塗布不良品を、予め排出することが可能となり、また、仮に位置決め装置に部品を案内しても組み立て(樹脂UJへの紫外線照射)を回避できるので、不良品の回収及び再利用が円滑化できる。また、塗布回数や塗布順序はこれに限定されず、他の手順であっても良い。
(位置決め装置の構造)
次に位置決め装置3の構造について説明する。図3に示すように、位置決め装置3において、移送装置60によって移動される位置調整ユニット10は、上流側から下流側に向かって、部品搬入領域IN、レンズ計測領域NPU、グリップ領域GL、第一位置調整領域AA1、第二位置調整領域AA2、第三位置調整領域AA3、第一硬化領域UV1、第二硬化領域UV2、物品搬出領域OUTを通過する。これらの領域は、45°の間隔で配置されていることから、8台の位置調整ユニット10が、これらの領域のいずれかに同時に停止し、各領域の工程が同時進行的に行われる。なお、第一位置調整領域AA1、第二位置調整領域AA2、第三位置調整領域AA3の全体を位置調整領域AAと定義し、第一硬化領域UV1、第二硬化領域UV2の全体を硬化領域UVと定義する。
図7及び図8に示すように、位置決め装置3の位置調整ユニット10は、レンズ部LLを保持する第一保持部20と、基台5上に配置されて駆動部KKを保持する第二保持部30と、基台5上に配置されて第一保持部20と第二保持部30の相対位置を調整する位置調整機構40とを有する。
(第一保持部の詳細構造)
第一保持部20は、所謂チャック機構となっており、回転テーブルの半径方向に延びる第一アーム22及び第二アーム24と、第一アーム22と第二アーム24を、回転テーブルの接線方向又は周方向に開閉するアーム移動部(第一開閉機構)26を有する。アーム移動部26は、スライドガイドであり、第一アーム22及び第二アーム24を接近・離反するように水平方向にスライドさせる。なお、開閉方法は、旋回等のように他の手法を採用しても良い。
図12(A)に示すように、第一アーム22及び第二アーム24の先端には、レンズ部LLを保持するための部分円弧形状の凹部22A、24Aが形成される。従って、凹部22A、24Aをレンズ部LLの鏡筒LTの外周面に当接させることで、レンズ部LLが安定的に保持される。
更に、第一アーム22及び第二アーム24の先端には、接着剤用逃げ部25Aが形成される。この接着剤用逃げ部25Aは、凹部22A、24Aから更に半径方向外側に拡張する切欠きとなっている。図12(B)に示すように、第一アーム22及び第二アーム24によってレンズ部LLを保持した状態において、レンズ部LLの光軸方向から視た場合、接着剤用逃げ部25Aによって、レンズ部LLの周囲の複数個所に塗布されている紫外線硬化性樹脂(接着剤)UJと各アーム22、24の干渉(覆いかぶさる状態)が回避される。なお、ここでは切欠きによって接着剤用逃げ部25Aを構成する場合を例示したが、第一アーム22及び第二アーム24がそもそも存在しない空間(例えば隙間)を接着剤用逃げ部25Aとすることもできる。具体的には、紫外線硬化性樹脂UJの塗布位置と周方向に位相の異なる4本のアームを、半径方向内側に接近させて、各アームの先端によってレンズ部LLを保持する構造等を採用しても良い。
更に本実施形態では、第一アーム22及び第二アーム24の先端に、押圧突起用逃げ部25Bが形成される。なお、この押圧突起用逃げ部25Bは、第一アーム22及び第二アーム24の間に形成される隙間、即ち、アームが存在しない空間を利用している。図12(C)に示すように、この押圧突起用逃げ部25Bにより、レンズ部LLの光軸方向から視た場合に、押圧突起37B(詳細は後述)と各アーム22、24との干渉が回避される。
図13に示すように、第一保持部20におけるレンズ部LLを保持する部位は、水平方向から視た場合に、極めて肉薄の部材で構成される。このようにすると、レンズ部LLを保持した際に、第一保持部20が、レンズ部LLの上端面から突出しないか、又は、突出したとしても5mm以内の突出量に制限される。これにより、押圧突起37B(詳細は後述)をコンパクト化できるので、効率的に紫外線を照射して硬化させることができる(図13(D)参照)。
(第二保持部の詳細構造)
図8に示すように、第二保持部30は、駆動部KKにおける筐体QT側又は駆動源MT1側を保持する駆動源側保持部31と、従動部MT2の光軸方向の端面を押圧して従動部MT2の光軸方向の位置を規定する押圧部36を有する。
図9に示すように、駆動源側保持部31は所謂チャック機構となっており、回転テーブルの接線方向に移動自在となる第一アーム32及び第二アーム34と、第一アーム32と第二アーム34を開閉するアーム移動部(第二開閉機構)33を有する。アーム移動部33は、スライドガイドであり、第一アーム32及び第二アーム34を接近・離反するように水平方向にスライドさせる。
第一アーム32及び第二アーム34の先端には、駆動部KKを保持するための矩形状の凹部32A、34Aが形成される。従って、凹部32A、34Aを、駆動部KKの筐体QTの外周面に当接させることで、駆動部KKの駆動源MT1側が保持される。また、第一アーム32及び第二アーム34の少なくとも一方には、駆動部KKへ所定の電力を供給するための出力端子35と、コントローラ90の制御の下、所定条件の電力を出力端子35から出力するための電力コントローラ(図示省略)と、を備える。
押圧部36は、従動部MT2の光軸方向の端面を押圧する押圧体37と、押圧体37を水平方向(回転テーブルの半径方向)に移動させて、駆動部KK上方に進退させる進退機構38と、押圧体37を光軸方向に移動させる上下動機構39を有する。
図13に示すように、押圧体37は、上縁が広く且つ下縁が狭くなる、すり鉢状の開口37Aを有しており、その開口37Aの下縁に連続するようにして、更に下側に突出する棒状の押圧突起37Bを複数有する。本実施形態では、押圧突起37Bが、180°の位相差で2個形成されている(図12参照)。図13(A)(B)に示すように、進退機構38は、押圧体37を、回転テーブルの半径方向に進退させて、開口37A及び押圧突起37Bを、駆動部KKの上方に進入させたり、駆動部KKの上方から退避させたりする。図13(B)(C)に示すように、上下動機構39は、駆動部KKの上方に位置する押圧体37を、駆動部KKに接近・離反させるように上下動させる。図14(B)に示すように、押圧体37が駆動部KKに接近すると、押圧突起37Bの下端(突端)が、従動部MT2の上端に当接して、従動部MT2を無限端(INF端)まで押し下げる。なお、従動部MT2を押圧する押圧突起37Bは、第一保持部20の押圧突起用逃げ部25B内に位置することから、互いに干渉しない。
(位置調整機構の詳細構造)
図7及び図8に戻って、位置調整機構40は、第一保持部20を支持するとともに、第一保持部20の位置及び姿勢を個別に調節可能なものであり、基台5に固定されるXシフト機構40XSと、このXシフト機構40XSのスライド部材に固定されるYシフト機構40YSと、このYシフト機構40YSのスライド部材に固定されるZシフト機構40ZSと、このZシフト機構40ZSのスライド部材に固定されるYチルト機構40YTと、このYチルト機構40YTのチルトテーブルに固定されるZチルト機構40ZTと、このZチルト機構40ZTのチルトテーブルに固定されるXチルト機構(回転機構)40XTを有する。Xチルト機構40XTのチルトテーブル上に第一保持部20が設置される。なお、このチルトの回転中心となるX軸、Y軸、Z軸は、レンズ部LLの略中心に設定される。
従って、位置調整機構40は、Z軸方向に沿って、X、Y及びZシフト機構40XS、40YS、40ZSが積層され、更に、回転テーブルの半径方向外側に向かってX、Y及びZチルト機構40XT、40YT、40ZTが積層される構造となっている。なお、これらのY及びZチルト機構40YT、40ZTは、所謂ゴニオステージとなっている。
特に図示しないが、Xシフト機構40XSの駆動機構は、ベース側とスライド部材の間を連結してスライド部材を一方側に付勢する弾性部材(例えばバネやゴム)と、この弾性部材の付勢に抗してスライド部材をカム等によって移動させる駆動源(例えばサーボモータやソレノイド)によって構成される。この構造は、Y及びZシフト機構40YS、40ZSにも同様に適用される。
特に図示しないが、Xチルト機構40XTの駆動構造は、ベース側とチルトテーブルの間を連結してチルトテーブルを一方側に揺動させる弾性部材(例えばバネやゴム)と、この弾性部材の付勢に抗してチルトテーブルをカム等によって反対側に揺動させる駆動源(例えばサーボモータやソレノイド)によって構成される。この構造は、Y及びZチルト機構40YT、40ZTにも同様に適用される。このように、駆動構造として、弾性部材と、カム等を組み合わせると、全体として極めてコンパクトな構成で6軸対応の位置調整機構40を駆動できる。
本実施形態の位置調整機構40によれば、Y及びZチルト機構40YT、40ZTが第一保持部20に接近するので、チルト半径RY、RZを小さくすることが可能になり、後述するチルト制御時における制御誤差を小さくすることが可能となる。
(位置決め装置の動作)
次に、図3に示される位置決め装置3の各領域における動作について説明する。
部品搬入領域IN:図9(A)乃至(C)に示すように、塗布装置70から位置調整ユニット10にレンズ部LL及び駆動部KKが供給される。また、ここでは第二保持部30によって駆動部KKを保持する。なお、上流側の塗布装置70では、レンズ部LL及び駆動部KKが互いに組み合わされ、且つ、レンズ部LL及び駆動部KKの所定位置には紫外線硬化性樹脂UJが予め塗布される。なお、ここではレンズ部LLと駆動部KKが組み合わされた状態で供給される例を示すが、レンズ部LLと駆動部KKを別々に供給して、回転テーブル上の途中で接着剤を塗布しても良い。勿論、本実施形態で図示するように、塗布装置70を含めた全体を、位置決め装置と定義することも可能である。
レンズ計測領域NPU:レンズ計測領域NPUの上方には特に図示しないレーザ変位計(測距装置)が配置されており、レンズ部LLのレンズ素子LXの天面の高さを測定する。なお、測距装置は、ここでは仮想的な光軸近傍の周囲4か所の高さを測定することで、実際の天面高さを推測する。この天面高さの情報は、グリップ領域GLにおけるバキューム工程で利用される。
グリップ領域GL:第一保持部20によって、レンズ部LLを保持する。この際、図11(A)に示すように、グリップ領域GLの配置されるバキュームチャックBCで、レンズ部LLのレンズ素子LXの天面を吸着し、図11(B)に示すように、保持溝MMが許容する範囲内で、レンズ部LLを所定のグリップ高さまで持ち上げてから、図11(C)に示すように、第一保持部20によってレンズ部LLを挟持する(図12(A)(B)参照)。第一保持部20によってレンズ部LLを保持した後は、バキュームチャックBCの負圧を開放して上方に退避させる(図14(A)参照)。
その後、グリップ領域GLでは、駆動源側保持部31を介して駆動部KKに給電をしてVCMを駆動しつつ、図10(B)、図13(A)(B)及び図14(B)に示すように、押圧部36の押圧体37によって、従動部(レンズキャリア)MT2を最も奥まで(INF端まで)押し込む。つまり、従動部MT2を、VCMがON状態における最奥停止位置に設定する。なお、この押圧部による押し込み動作と、駆動部KKへの給電は、後述する固定領域UVまで継続される。
第一位置調整領域AA1:レンズ部LL及び駆動部KKの各基準軸の相対角度を調整する(これをチルト調整という)。具体的には、図7及び図13(C)に示すように、第一位置調整領域AA1の上方に光軸調整装置(チャート装置)Wを配置しておき、下側に、基準撮像素子MCを上下動自在に配置しておく。レンズ部LL及び駆動部KKが、光軸調整装置Wと基準撮像素子MCの間に挿入されると、基準撮像素子MCが上昇してレンズ部LLに接近する。次いで、レンズ部LLを介して光軸調整装置Wのチャート像を、基準撮像素子MCで撮像する。図14(C)に示すように、この撮像結果(撮像情報)を利用して、位置調整機構40が、第一保持部20をチルト制御し、レンズ部LL及び駆動部KKの各基準軸を相互に平行とする。調整後は、基準撮像素子MCを下降させる。
第二位置調整領域AA2:レンズ部LL及び駆動部KKの接近又は離反方向(Z軸方向)に対して直角となるスライド方向(X−Y平面方向)の相対位置を調整する(これをX−Y調整という)。具体的には、第二位置調整領域AA2の上方にカメラ(図示省略)を配置しておき、レンズ部LL及び駆動部KKを上方から同時撮影して、その画像を解析することで、レンズ部LL及び駆動部KKのX−Y平面方向のずれを算出する。この算出情報を利用して、図14(D)に示すように、位置調整機構40が、第一保持部20をX−Y平面内でスライド制御し、レンズ部LL及び駆動部KKのX−Y平面方向の相対位置を調整する。
第三位置調整領域AA3:レンズ部LL及び駆動部KKの遠近方向(Z軸方向)の相対位置を調整する(これをフォーカス調整という)。具体的には、図7及び図13(C)に示すように、第三位置調整領域AA3の上方に光軸調整装置(チャート装置)Wを配置しておき、下側に、基準撮像素子MCを上下動自在に配置しておく。レンズ部LL及び駆動部KKが、光軸調整装置Wと基準撮像素子MCの間に挿入されると、基準撮像素子MCが上昇してレンズ部LLに接近する。次いで、レンズ部LLを介して光軸調整装置Wのチャート像を、基準撮像素子MCで撮像する。図14(E)に示すように、この撮像結果(撮像情報)を利用して、位置調整機構40が、第一保持部20をZ軸方向に制御し、ジャストフォーカスとなる位置まで、レンズ部LL及び駆動部KKの距離を調整する。なお、この際に、必要に応じて、チルト調整とX−Y調整も微調整する。調整後は、基準撮像素子MCを下降させる。
固定領域UV(第一硬化領域UV1及び第一硬化領域UV2):図10(C)、図12(C)、図13(D)、図14(F)に示すように、紫外線照射装置Uによって4方向から紫外線を照射して、レンズ部LL及び駆動部KKの間の4か所に塗布される紫外線硬化性樹脂UJを硬化させる。例えば、第一硬化領域UV1と第一硬化領域UV2のぞれぞれで、例えば5秒間の照射を行う。結果、レンズ部LLと、駆動部KKの従動部MT2が互いに固定される。硬化後は、VCMへの給電をOFFにし、押圧部36による従動部(レンズキャリア)MT2の押し込みを開放する。硬化後の開放作業は、回転テーブルが回転中に実行しても良い。なお、塗布装置70において、紫外線硬化性樹脂UJの塗布が不良であると判定される場合は、その部品に限って紫外線照射を中止(回避)することが好ましい。このようにすることで、レンズ部LL及び駆動部KKを固定せずに、回収することができるので、不良品の再利用を円滑化できる。
物品搬出領域OUT:完成したレンズ駆動モジュールLMを塗布装置70側に搬出する。なお、ここでは図示しないが、固定領域UVよりも下流側に、エアーブロー領域を確保しておき、レンズ駆動モジュールLMにエアーを吹き付けて、レンズ部LL等に付着した塵埃を飛散させる工程を含めることが好ましい。更に、全ての工程のいずれかの場所(好ましくは物品搬出領域OUTにおいて)カメラ等によってレンズ部LLを撮像して、レンズ部LLに塵埃が付着しているか否かを検査する工程を含めることが好ましい。
(位置調整領域AAの詳細)
光軸調整装置(チャート装置)Wは、レンズ部LLの下方に挿入される基準撮像素子MCを用いて、レンズ部LLを介して撮像されるテストチャートを提供する。コントローラ90において、テストチャートの撮影画像を画像解析を行と、レンズ部LLと基準撮像素子MCの各種光軸のズレ量(チルト誤差、X−Y誤差、フォーカス誤差)を算出できる。また、光軸調整装置Wは、算出したズレ量から、位置調整ユニット10の補正条件を出力する。ここで、当該補正条件は、レンズ部LLと基準撮像素子MCとの光軸調整を行うためのものであり、具体的には、X方向、Y方向、Z方向における移動方向とその移動量や、X軸、Y軸、Z軸周りの揺動方向とその揺動角度である。
なお、本実施形態では、基準撮像素子MCと駆動部KKの相対位置関係は、移送装置80、位置調整ユニット10の第二保持部30、基準撮像素子MCの上下動ユニット、光軸調整装置Wの機械的なセッティングにより予め高精度に調整されている。従って、基準撮像素子MCを基準として、レンズ部LLの相対位置を高精度に制御すれば、結果、レンズ部LLと駆動部KKの相対位置が調整されることになる。
図15(A)に、テストチャートFの例を示す。テストチャートFには、縞模様F1が描かれている。この縞模様F1を撮影した映像において、例えば、フォーカスが一致する時は、映像の濃淡(出力信号の黒と白の明暗差)が大きくなり、フォーカスが不一致(ぼけている)の時は、濃淡が小さくなる。また、テストチャートFには、その中心を判定するための交差模様F2が描かれている。これにより、プレート中心F3を判定することができる。また、縞模様F1又は交差模様F2の角度によって、Z軸周りの回転角度について判定することができる。
図15(B)には、テストチャートFを基準撮像素子MCで撮影した状態を模式的に示す。基準撮像素子MCで撮影されたデータ領域(フレーム)をGとし、そのデータ領域Gのフレーム中心Eと定義し、フレーム中心Eに対して周囲3か所以上の複数個所(ここでは4か所)の画素群を周辺画素A〜Dと定義する。補正条件算出装置は、フレーム中心Eと、データ領域Gに映し出されているプレート中心F3とのX−Y方向の誤差Gxs、Gysを算出する。また、データ領域Gに映し出されている交差模様F2と、データ領域GのX方向、Y方向のフレーム基準線KX、KYの差から、Z軸周りの誤差Gztを算出する。これらの誤差Gxs、Gys、Gztが、レンズ部LLの中心を、チャートユニット61の中心に合わせるためのXシフト、Yシフト、Zチルト(Z軸周り回転)の補正条件となる。
なお、ここではフレーム中心Eと、データ領域Gに映し出されているプレート中心F3とのX−Y方向の誤差Gxs、GysをXシフト、Yシフトの補正条件としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、レンズ部LLの中心は、基準撮像素子MCの映像の中で最も明るい位置となり、周囲に広がるにつれて、環状に段階的に暗くなっていく。従って、基準撮像素子MCで撮影された画像を解析することによって、データ領域Gの中で最も明るい領域をレンズ部LLの中心(レンズ中心)FMと判定し、そのレンズ中心FMと、データ領域Gのフレーム中心EとのX方向及びY方向の誤差Gxs、Gysを、Xシフト、Yシフトの補正条件とすることも好ましい。この手法は、レンズ部LLのレンズ中心が、フォーカス判定用模様プレートFの中心と不一致となる場合に有効である。
X,Yチルト調整又はフォーカス調整又はを行う場合、位置調整ユニット10によって、レンズ部LLをZ軸方向に上昇(プラス方向に移動)させながら、Z軸方向の複数箇所でテストチャートFを基準撮像素子MCで撮像する。補正条件算出装置は、周辺画素A〜D内の濃淡差値(明暗差値)BWを算出し、Z方向の移動に沿った濃淡差値BWの出力変動から、チルト誤差を算出する。具体的には、図16(A)〜(D)に示すように、周辺画素A〜Dのそれぞれについて、Z方向の移動に伴う濃淡差値(明暗差値)BWのピーク点(これをベストフォーカスという)のZ方向位置(これをZ方向フォーカス位置という)ZA、ZB、ZC、ZDを決定する。ベストフォーカスのタイミング、即ちZ方向フォーカス位置ZA、ZB、ZC、ZDが、各周辺画素A〜Dで互いにずれている場合は、基準撮像素子MCの光軸と、レンズ部LLの光軸に角度差を有すると定義できるので、このZ方向フォーカス位置が、全周辺画素A〜Dで殆ど一致するように、レンズ部LLをY軸周り及びX軸周りでチルト制御する。
例えば、図16(E)の通り、X軸方向に実距離Xabを有する画素Aと画素Bについて解析を行い、図16(A)(B)の通り、画素Aと画素BのZ方向フォーカス位置の差としてのZ軸方向の実距離Zab(=ZA−ZB)を算出した場合を想定する。図16(F)の関係式によって、これら2つの実距離Xab、Zabを隣辺とする直角三角形の斜辺の傾斜角を算出すれば、Y軸周りの光軸の傾斜ズレ量Gytを決定できる。同様に、図16(E)の通り、Y軸方向に実距離Yacを有する画素Aと画素Cについて解析を行い、図16(A)(C)の通り、画素Aと画素CのZ方向フォーカス位置の差としてのZ軸方向の実距離Zac(=ZA−ZC)を算出した場合を想定する。更に図16(G)の関係式によって、これら2つの実距離Yac、Zacを隣辺とする直角三角形の斜辺の傾斜角を算出することで、X軸周りの光軸の傾斜ズレ量Gxtを決定できる。これらの傾斜ズレ量Gyt、Gxtが、Yチルト、Xチルトの補正条件となる。
なお、ここでは、3つの画素A〜CのZ方向フォーカス位置ZA、ZB、ZCを用いてXチルト、Yチルトの補正条件を算出する場合を例示した。即ち、Xチルト、Yチルトを算定する際には、少なくとも3角形の頂点を構成する3つの周辺画素A〜Cを用いれば可能である。一方、4つの画素A〜D又はそれ以上の画素を用いて算出することもできる。例えば、図16(E)に示すように、X方向の同一位置に存在する画素Aと画素CのZ方向位置の平均値(ZA+ZC)/2と、X方向の同一位置に存在する画素Bと画素Dの平均値(ZB+ZD)/2の値を用いて、Y軸周りの傾斜ズレ量(Yチルトの補正条件)を算出しても良い。X軸周りの傾斜ズレ量を算出する場合も同様である。
また、周辺画素A〜DのZ方向フォーカス位置の平均値は、最終的なZシフトの設定条件Gztとなる。なお、Zシフトについては、他の補正値を算定するためにサーチ動作する軸となるので、Zシフトについては補正条件という概念ではなく、最終的な設定条件となる。
以上の結果、光軸調整装置Wを利用した補正条件算出によって、Xシフト、Yシフト、Zシフト、Xチルト、Yチルト、Zチルトの補正条件(Zシフトについては設定条件)を出力することができる。なお、ここではXチルト、Yチルトの補正条件を決定する際に、複数画素間で、Z方向フォーカス位置の差と、画素間距離を用いた三角関数により、幾何学的に算出する場合を例示しているが、本発明はこの手法に限定されないことはいうまでもない。
<基準撮像素子の事前セッティング>
位置決め装置3を稼働させる前に、基準撮像素子MCによってテストチャートの撮影画像に対する画像解析を通して、基準撮像素子MCのシフト校正条件及びチルト校正条件を算出する。ここでの位置調整ユニット10のシフト校正条件は、所定の平面においてテストチャートの光軸と基準撮像素子MCの光軸と一致させるためのものである。例えば、XY平面においてテストチャートの光軸と基準撮像素子MCの光軸とを一致させる場合、シフト校正条件は、X方向〜Y方向における移動方向及びその移動量となるXシフト校正条件Gxs、Yシフト校正条件Gysである。更にチルト校正条件は、基準撮像素子MCのX−Y軸とテストチャートのX−Y軸を一致させるためのものであり、X軸周りの回転方向及び回転量となるZチルト校正条件Gztである。
コントローラ90は、シフト校正条件及びチルト校正条件を算出する。この結果を受けて、基準撮像素子MCの固定位置を手動で調整する。具体的には、X方向、Y方向にシフト調整して、所定の平面(例えば、XY平面)においてテストチャートの光軸と基準撮像素子MCの光軸とが一致する一致状態とする。同様に、Z方向にチルト調整して、基準撮像素子MCのX−Y軸とテストチャートのX−Y軸が一致する状態とする。これにより、事前セッティング段階のXシフト調整、Yシフト調整、Zチルト調整が完了する。
<第一位置調整領域AA1での詳細制御>
第一位置調整領域AA1では、光軸調整装置Wを利用して、Xチルト及びYチルト、並びにZシフトを調整するためのテストチャートの撮影を行う。この場合は、図16(A)で示すように、Z方向に第一保持部20を移動させながら、Z方向の複数の位置でテストチャートを撮影する。コントローラ90は、この撮影結果に対する画像解析に基づき、位置調整ユニット10のチルト補正条件を算出する。このチルト補正条件とは、レンズ部LLの光軸と基準撮像素子MCの光軸が同軸状となるように、第一保持部20の姿勢を調節するための条件であり、前述のチルト半径RX、RYに基づいて算出される。この位置調整ユニット10のチルト補正条件は、例えば、X軸〜Y軸周りにおける揺動方向及びその揺動量となるXチルト補正条件Gxt及びYチルト補正条件Gytであり、Zシフト補正条件は、Z方向の移動方向とその移動量となるZシフト補正条件Gzsである。なお、Zシフト補正条件Gzsは、基準撮像素子MCの最終位置決め時(最終段階)のみに限って用いる値となるので、ここでは利用しなくても良い。コントローラ90は、このチルト補正条件に従って、位置調整ユニット10を制御する。
第一保持部20のチルト調整が完了した後、コントローラ90は、光軸調整装置Wを利用してテストチャートを撮像し、前述と同様のチルト補正条件の算出を再び行う。
コントローラ90は、チルト補正条件を算出後、内蔵する判定部によって、2回目のチルト補正条件が許容範囲内であるか否かを判定する。即ち、Xチルト補正量Gxt、Yチルト補正量Gyt(換言するとレンズ部LLと基準撮像素子MCの光軸のズレ量)が許容範囲内か否かを判定する。この判定は、補正量Gxt、Yチルト補正量Gytを用いても良いが、既に説明したZ方向フォーカス位置ZA〜ZDのズレ量で判定することも可能である。
2回目のチルト補正条件が光照射の許容範囲内であると判定された場合には、2回目のチルト補正条件に従った第一保持部20のチルト調整を行わずに、第二位置調整領域AA2に移行する。一方、許容範囲外の場合は、そのチルト補正条件によるチルト調整を行ってから、上記工程を繰り返す。即ち、(1)再算出されたチルト補正条件に関する所定の判定処理や設定処理の実行、(2)判定処理や設定処理の結果を反映した第一保持部20のチルト調整、(3)チルト補正条件の再算出、を繰り返し行う。
<第二位置調整領域AA2での詳細制御>
ここでは、上方に配置されるカメラによって、レンズ部LLのセンタリングを行う。第一位置調整領域AA1で、レンズ部LLのチルト制御が完了しているので、レンズ部LLの光軸の傾斜が低減していることから、正確なセンタリングを行うことができる。仮にレンズ部LLがカメラの光軸に対して傾斜していると、撮像結果が楕円形状となってしまい、正確なセンタリングが困難となる。
<第三位置調整領域AA3での詳細制御>
ここでは、光軸調整装置Wを利用して、予備的なXチルト及びYチルト、並びに、Zシフトを調整するためのテストチャートの撮影を行う。この場合は、図16(A)で示すように、Z方向に第一保持部20を移動させながら、Z方向の複数の位置でテストチャートを撮影する。コントローラ90は、この撮影結果に対する画像解析に基づき、位置調整ユニット10のチルト補正条件とZシフト補正条件(フォーカス条件)を算出する。しかし、チルト補正条件は、第一位置調整領域AA1で既に調整済みであるので、判定閾値内に収まっていることがほとんどであろう。
従って、第三位置調整領域AA3では、Zシフト補正条件Gzsに従って、位置調整ユニット10をフォーカス制御する。
第一保持部20のフォーカス調整が完了した後、コントローラ90は、光軸調整装置Wを利用してテストチャートを再度撮像し、前述と同様のZシフト補正条件及びチルト補正条件の算出を再び行う。
コントローラ90は、Zシフト補正条件を算出後、内蔵する判定部によって、2回目のZシフト補正条件が許容範囲内であるか否かを判定する。即ち、Zシフト補正量が許容範囲内か否かを判定する。2回目以降のZシフト補正条件が光照射の許容範囲内であると判定された場合には、2回目のZシフト補正条件に従った第一保持部20のZシフト調整を行わずに、位置決めを終了させて、固定領域UVに移動する。一方、Zシフト補正条件が許容範囲外の場合、上記工程を繰り返すために、Zシフト補正条件によるフォーカス制御を行ってから、再度、テストチャートの撮影を行う。即ち、(1)再算出されたZシフト補正条件に関する所定の判定処理や設定処理の実行、(2)判定処理や設定処理の結果を反映した第一保持部20のZシフト調整、(3)Zシフト補正条件の再算出、を繰り返し行う。
図17には、第一位置調整領域AA1においてコントローラ90で解析された周辺画素A〜DのZ方向フォーカス位置を重ねて表示する図を示す。図17(A)は第一回目のチルト補正後、図17(B)は第二回目のチルト補正後、図17(C)は第三回目のチルト補正後である。第一回目では、Z方向フォーカス位置ZA〜ZDが大きくズレるが、第二回目になるとZ方向フォーカス位置ZA〜ZDが急激に接近する。第三回目では、Z方向フォーカス位置ZA〜ZDが殆ど一致する。第三回目で、Z方向フォーカス位置ZA〜ZDのズレ量が所定範囲APの範囲内に収まるので、<第二位置調整領域AA2>に移行する。なお、この図17からわかるように、第一位置調整領域AA1において、基準撮像素子MCをZ方向に移動させながら撮像するサーチ範囲Zsrは、第一回目は広く設定する必要があるが、第二回目以降は、Z方向フォーカス位置ZA〜ZDの平均値と中心として狭く設定することが好ましく、撮像時間を短縮することが可能となる。
以上、本実施形態のレンズ駆動モジュール組み立て装置1によれば、部品供給領域INから物品搬出領域OUTまで、複数の位置調整ユニット10がレンズ部LL及び駆動部KKと一緒に移動するようになっており、その間の位置調整領域AAにおいて、各位置調整ユニット10がレンズ部LL及び駆動部KKの相対位置決めを完了させていくので、組み立て効率を飛躍的に向上させることが可能となる。特に、組み立て予定の各部品が通過する経路(組立経路)が一本化できるので、組立経路上でトラブルが生じた場合、原因の特定を素早く行うことが可能となる。従来のように、固定配置される複数台の位置調整ユニット10に、それぞれ、レンズ部LL及び駆動部KKを供給して個々に相対位置決めを行う場合は、各部品が移載される経路が、複数台の位置調整ユニット10に分岐するので、組み立てトラブルが生じた際に、どこに原因があるのか、特定するまでに長時間を要する。
また、本レンズ駆動モジュール組み立て装置1の位置調整領域AAが、複数の位置調整領域(第一位置調整領域AA1、第二位置調整領域AA2、第三位置調整領域AA3)を有しており、各位置調整ユニット10が、第一位置調整領域AA1、第二位置調整領域AA2、第三位置調整領域AA3を順番に通過して、少しずつ(分割して)、相対位置を調整することができる。これにより、第一位置調整領域AA1、第二位置調整領域AA2、第三位置調整領域AA3のそれぞれの位置調整時間を短くすることができるので、移送装置60が無駄に停止する時間を削減できる。例えば、第一位置調整領域AA1、第二位置調整領域AA2、第三位置調整領域AA3の各位置調整時間を、部品供給領域INの部品搬入時間又は物品搬出領域OUTの部品搬出時間に接近させることができるので、組み立て効率が大幅に向上する。
更に本レンズ駆動モジュール組み立て装置1では、三箇所の位置調整領域AA1、AA2、AA3によって、フォーカス調整(接近・離反方向)、X−Y調整(スライド方向)、チルト調整(傾斜方向)を、同時並行、且つ、別々に実行できるので、各位置調整領域AA1、AA2、AA3の位置制御を簡素化できる。とりわけ、フォーカス調整やX−Y調整に影響を及ぼし得るチルト調整を最初の第一位置調整領域AA1で完了させることにより、その後の、フォーカス調整(接近・離反方向)とX−Y調整(スライド方向)の制御が、一層、簡素化される。例えば、チルト調整を最後(例えば第三位置調整領域AA3)に行おうとすると、このチルト調整によって、再度、X−Y調整やフォーカス調整を行う必要性が生じるので、調整時間が長くなりやすい。
なお、第一位置調整領域AA1と、第三位置調整領域AA3には、下方に基準撮像素子MCが上下動自在(レンズ部LLに接近・離反自在)に配置され、上方には、光軸調整装置(チャート装置)Wが配置される。結果、チャート像を、レンズ部LLを介して基準撮像素子MCで撮像することにより、レンズ部LLの位置・姿勢を、高精度に検出することが可能となる。
また更に、本レンズ駆動モジュール組み立て装置1は、位置調整領域AAの下流側に固定領域UV(第一硬化領域UV1及び第一硬化領域UV2)を有するので、位置調整が完了したレンズ部LLと駆動部KKを、互いに固定することができる。この際、第一硬化領域UV1及び第一硬化領域UV2に停止る位置調整ユニット10上において、紫外線照射装置によって接着剤を硬化させている時間と、位置調整領域AAにおける相対位置を調整している時間も、同時進行させることができるので、無駄な時間が無くなり、組み立て効率を高めることができる。特に、紫外線の照射時間が長い場合は、本実施形態のように、第一硬化領域UV1及び第一硬化領域UV2に分割すれば、各領域の照射時間を半減させることができるので、組み立て効率を一層高めることができる。
なお、本レンズ駆動モジュール組み立て装置1では、移送装置60が回転テーブル構造となっており、基台5をベースとしてモジュール化された位置調整ユニット10が、回転テーブルの周方向に均等間隔で設置されている。従って、レンズ駆動モジュール組み立て装置1の製造段階では、事前に、位置調整ユニット10単位で精度検査や動作試験を行うことができる。また、組み立て工場等の現場にレンズ駆動モジュール組み立て装置1をセットアップする際は、回転テーブル上に(調整済みの)、位置調整ユニット10の基台5を固定していけば、短時間で設置作業を完了させることができる。レンズ駆動モジュール組み立て装置1が故障した際も、メンテナンスが容易となる。
本レンズ駆動モジュール組み立て装置1では、レンズ部LLを保持する第一保持部20のアーム22、24に、接着剤用逃げ部25Aが形成されているので、レンズ部LLと駆動部KKを固定する紫外線硬化性樹脂(接着剤)UJに対して、この接着剤用逃げ部25Aを介して紫外線を照射できる。結果、位置調整機構40によるレンズ部LLの位置決めと、その後の紫外線照射を連続化できるので、組み立て精度を高めることができる。
また本レンズ駆動モジュール組み立て装置1は、第二保持部30が、駆動部KKにおける従動部MT2の光軸方向の位置を規制する押圧部36を有する。従って、レンズ部LLと従動部MT2を互いに固定する際に、両者の相対位置を高精度に調整できる。この際、第一保持部20のアーム22、24に押圧突起用逃げ部25Bが形成されており、押圧部36の押圧突起37Bとアーム22、24の干渉が回避される。結果、従動部MT2を位置決めしながら、従動部MT2とレンズ部LLの相対位置調整が可能になる。更に第二保持部30には出力端子35が設けられており、駆動部KKに対して電力供給できるので、押圧部36による従動部MT2の基準位置調整をより高精度化できる。
更に、本レンズ駆動モジュール組み立て装置1は、位置決め装置3の上流側に塗布装置70を有する。従って、レンズ部LLと駆動部KKを仮組立し、それらの間に紫外線硬化性樹脂UJを塗布してから、レンズ部LLと駆動部KKをまとめて位置決め装置3に搬入できる。塗布工程と、位置調整工程と、固定(接着剤硬化)工程を連続化できるので、紫外線硬化性樹脂UJ(接着剤)を塗布した後に、未固定状態で部品が放置される時間を削減できる。
また、この塗布装置70では、部品キャリア72の移動経路中に仮組立領域ASと塗布領域DSを配置することで、レンズ部LLと駆動部KKの仮組立工程と、紫外線硬化性樹脂(接着剤)UJの塗布工程を同時進行させることができ、塗布効率を高めることができる。また、塗布領域DSは、第一塗布領域DS1乃至第四塗布領域DS4に分割されており、4か所の塗布工程を同時進行させることができる。なお、塗布位置が3か所の場合は、塗布領域DSを三分割しても良く、また、ディスペンサDPと部品を相対移動させることができるのであれば、一箇所の塗布領域DSで、複数の箇所に紫外線硬化性樹脂(接着剤)UJを塗布しても良い。
なお、上記実施形態のレンズ駆動モジュール組み立て装置1では、位置決め装置3と塗布装置70が、別々の回転テーブルで構成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図18に示すように、単一の移送装置60において、位置調整ユニット10の配置数を増やすことで、仮組立領域AS、塗布領域DS、位置調整領域AA、固定領域UV等をまとめて配置することもできる。 この場合の塗布領域DSでは、図9(C)で示した状態、即ち、駆動源側保持部(本発明における駆動部用保持部)31によって駆動部KKを保持しつつ、第一保持部20は開放されている状態とし、ディスペンサDPによって接着剤UJを塗布してから、第一保持部20によってレンズ部LLを保持して、駆動部KKとの相対的な位置決めを行うことが好ましい。
一方、レンズ駆動モジュール組み立て装置は、塗布装置70を一体化する場合に限られず、図3等で示した塗布装置70を別の場所に配置し(図示省略)、図19に示すレンズ駆動モジュール組み立て装置1のように、仮組立及び接着剤塗布が完了したレンズ部LLと駆動部KKを、トレーTTによって供給し、位置決め装置3において、位置調整等を行って回収するようにしても良い。
上記実施形態では、互いの部品を光軸調整する際、光軸の向きが鉛直方向となっているが、本発明はこれに限定されず、光軸方向を、本来のカメラの使用状態に近い水平方向にしても良く、また垂直方向に交差する斜め方向であってもよい。
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。