図1及び図2を用いて、本発明にかかる発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池装置の燃料電池モジュールを示す側面断面図である。固体酸化物形燃料電池装置201において、断熱材(図示せず)に覆われたモジュール容器202は、その内部に本発明にかかる複数の燃料電池セル205で構成される燃料電池セル集合体が配置される発電部203と、燃料マニホールド204と、排気ガスマニホールド206と、改質部208とを収容する。
図1においては、改質部208はモジュール容器202の内部の上方に配置され、モジュール容器202の外部から挿入された原料供給管210と接続されている。また、改質部208には、燃料ガス供給管209が接続されている。改質部208の内部には改質触媒が充填され、原料供給管210から供給された原料ガスを水素リッチな燃料ガスに改質する。改質触媒としては例えばアルミナボール等の基体にニッケルやルテニウム等の卑金属や貴金属を担持した球状等種々の形状の触媒を用いることができる。
なお、改質部208への原料ガスの供給として、原燃料、水、改質用空気を複数の原料供給管210から供給してもよいが、これらを予め混合した混合ガスを、一本の原料供給管210から改質部208の内部へ供給してもよい。また、燃料電池装置201の起動に際し、改質用空気を用いずに、原燃料ガスを燃焼させて改質部208を昇温させる燃料工程から、原燃料及び水蒸気のみを用いた水蒸気改質工程(SR工程)に遷移させてもよく、この場合は改質用空気の供給設備は省略することができる。なお、改質部208に供給するための水蒸気は、改質部208を構成する容器内に別途蒸発部を設置して、原料供給管210から供給される水を蒸発部において気化させることで水蒸気を生成することができる。あるいは蒸発部をモジュール容器8の外部に設置して、モジュール容器8の外部で生成した水蒸気を、原料供給管210を介して改質部208に供給してもよい。この場合、気化に伴い生じる吸熱反応をモジュール容器8の外部で実施するため、モジュール容器8内の熱利用率を高めることができる。
改質部208に接続固定された燃料ガス供給管209は、モジュール容器8の下方に配置された燃料マニホールド204に接続される。燃料マニホールド204の天面には複数の燃料電池セル205が、燃料マニホールド204内部に挿入されて固定され、燃料電池セル205の内部通路が燃料マニホールド204と連通する。これにより、改質部208によって原燃料から水素リッチなガスに改質された燃料ガスは、燃料ガス供給管209を経由して、燃料マニホールド204の内部に供給され、さらに燃料電池セル205の内部通路を通って燃料極に供給される。
図1に示す燃料電池セル205は、いわゆる円筒横縞型である。すなわち燃料マニホールド204の上方の発電部203に位置するように、発電素子部205aと非発電素子部205bとが燃料電池セル205の長手方向において交互に配置されている。非発電素子部205bには発電素子部205a間を電気接続するためのインターコネクタが配置されている。これにより、ひとつの燃料電池セル205において、複数の発電素子部205aが電気的に直列に接続されている。しかし、本発明にかかる燃料電池セルは円筒横縞型に限定されるものではなく、円筒縦縞型や扁平円筒型など種々の構造の燃料電池セルについて適用することが可能である。
また、図1においては、燃料電池セル205の上端は、排気ガスマニホールド206の内部に挿入されて排気ガスマニホールド206の底面に固定されている(図1においては、絶縁性接着剤215aにより固定されている)。このため、燃料電池セル205を長手方向に貫通する内部通路の上端が、排気ガスマニホールド206の内部に連通するため、燃料電池セル205における発電に寄与せずに残留した燃料ガスや発電によって生じた水蒸気(これらをオフガスとよぶ)は、排気ガスマニホールド206の内部に排出される。排気ガスマニホールド206の上部には複数の排気ガス噴出孔が設けられ、この排気ガス噴出孔から噴出したオフガスを点火プラグやセラミックヒータ等の着火装置(図示せず)により着火することで燃焼させ、排気ガスマニホールド206の上方の燃焼部207に燃焼排ガスを生成する。燃焼部207の上方に上述した改質部208を配置することで、生じた燃焼排ガスの熱量により改質部208の底面や側面を加熱することができ、改質部208の内部で原料ガスを改質可能な状態にする。改質部208を加熱した燃焼排ガスは、燃焼排ガス排出管212によりモジュール容器202の外部へ排出される。
なお、図1においては、燃料電池セル205の上端に排気ガスマニホールド206を設けているが本発明は当該構成に限らず、例えば排気ガスマニホールド206を設けずに、複数の燃料電池セル205の上端から排出されるオフガスを直接着火させ、燃料電池セル205の直上を燃焼部とする構成にすることもできる。
一方、発電のために燃料電池セル205の外表面に供給される酸素含有ガス(発電用空気)は、モジュール容器202の外部より例えば酸素含有ガス供給管211を介して導入される。酸素含有ガスは燃料電池セル205に供給され発電に用いられ、また発電に残余した酸素含有ガスは上方に移動して一部は燃焼部207における燃焼に用いられ、燃焼排ガス排出管212から燃焼排ガスとともにモジュール容器202の外部へ排出される。
なお、酸素含有ガスは発電室203の内部の温度を均一に安定化するために、適度に昇温されていることが好ましい。このため、燃焼部207で生じた高温の燃焼排ガスと熱交換させて昇温した後に、発電部203に供給することで発電部203の温度ムラの抑制とともに固体酸化物形燃料電池装置における熱利用率を高めることができる。燃焼排ガスを用いて酸素含有ガスを予熱するための熱交換部は、改質部208の上方に別体の熱交換器として設けてもよい。あるいは、モジュール容器202の内壁を流路の一部として利用して、仕切り板を用いてモジュール容器202の内壁に酸素含有ガス流路を形成することで、発電室203内の燃焼排ガスとの熱交換を行ってもよい。
以上のように固体酸化物形燃料電池装置201を構成することによって、外部から熱の供給を受けない熱自立した発電運転が可能となる。
ここで、本発明においては、燃料マニホールド204の内部に改質機能部材が設けられている。改質機能部材の燃料マニホールド204の内部への配置は、球形等の形状のものを燃料マニホールド204の内部の所定領域に充填することができる。改質機能部材を所定の領域に充填することで、補完水素の生成量を任意に調整することができる。また繊維状やフェルト状のものを燃料マニホールド204の内壁面に設置してもよい。この場合、燃料マニホールド204の内部における燃料ガスの流動を阻害することなく、燃料マニホールド204の内壁面で補完水素を生成することができる。
とくに図1に示すように、改質機能部材214bを、燃料マニホールド204の内部に挿入された燃料電池セル205の下端表面に設けることが好ましい。この場合、粒状の改質機能部材を充填する領域を形成するために、仕切り部材等の部品が別途必要となることはない。燃料マニホールド204の内部に位置する燃料電池セル205の先端で水素を生成することができるため、燃料電池セル205の最先端に位置する燃料電池セル205の内部通路の入口に、生成した水素リッチな燃料ガスを直接に供給することができ生成水素の効率利用が可能となる。
改質機能部材は、炭化水素系ガスから水素を生成する触媒機能を有する部材である。改質機能部材としては、水蒸気改質反応に対して活性のあるニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、レニウム(Re)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等の遷移金属またはこれらどうしの組み合わせやこれらとその他の元素との組み合わせ(例えばPt−Ni系触媒、Pd−Zn系触媒、Ni−Cu系触媒など)からなる改質触媒を用いることができる。とくに耐酸化性、耐炭素析出性が高い部材を用いることが好ましい。これらの粒状体をアルミナ(Al2O3)やジルコニア(ZrO2)等の耐熱性セラミック基体に担持させた球状等の粒状形状のものを用いてもよい。また該セラミック基体に替えて、発泡金属、メッシュ、フェルト、パンチングメタル、エキスパンドメタルを基体としてもよい。また、上記の遷移金属の固体粉末をバインダーに添加したペースト状の部材を用いてもよい。この場合、バインダーとしては、α−テルピネオール、ノニオン系界面活性剤、ポリビニルブチラール及びポリアセタールの混合材などを用いることができる。固体粉末を添加したバインダーを乾燥、焼結させることで、固化した改質機能部材を形成することができる。
次に、図2を用いて、上述した改質機能部材を燃料マニホールド204の内部に挿入された燃料電池セル205の下端表面に設ける場合の態様について説明する。
図2(A)乃至図2(C)は、本発明の一実施形態にかかる固体酸化物形燃料電池装置において、改質機能部材503により集電部材505を燃料電池セル500の下端に固定された状態を示す説明図である。
燃料電池セル500の下端部は燃料マニホールド内に挿入され、所定本数の燃料電池セル500が集電部材505によって電気的に接続されている。具体的には、燃料電池セル500において発電素子を形成する燃料極層と同一の材料により同時に形成される燃料極を構成する層502が、発電素子と電気的に接続し燃料電池セル500の外部と電気接続するための端子部として機能する。この燃料極を構成する層502が、集電部材505と電気的に接続する。
集電部材505は、燃料電池セル500を貫通させる取付孔に弾性片504を有し、集電部材505を貫通した燃料電池セル500の先端部における燃料極を構成する層502と接触している。弾性片504は集電部材505の取付孔を貫通した燃料電池セル500に向けて弾性力を加えるため、物理的に集電部材505と燃料電池セル500とが接続される。しかし、当該接続は製造時の取り付け不具合や、長期運転後の集電部材505の劣化により接続不良が生じるおそれがある。そこで、図2(A)では、燃料電池セル500の燃料極を構成する層502の表面にペースト状の改質機能部材503を配置することで弾性片504と燃料極を構成する層502とを固定し、弾性片504の取付け不良や弾性力の喪失のおそれを解消している。また、改質機能部材503は、弾性片504と燃料極を構成する層502との接触面積を増加して接触抵抗を低減する機能も備える。このように、改質機能部材503は電気的な接続機能面を発揮するとともに、上述した補完水素の生成能力を備えるため、大きな工程数の増加を必要とすることなく、僅かな部材費で両機能を実現することができる。
さらに、改質機能部材503の改質機能を高め、補完水素の生成量を増大させるために、改質機能部材503を配置する実効面積を増加するとよい。図2(B)は、図2(A)に示す改質機能部材503の配置面積よりも広くした場合を示すものであって、燃料極を構成する層502の下端を覆うように改質機能部材503を配置している。さらに、図2(C)では、改質機能部材503が燃料極を構成する層502の下端を越えて、燃料電池セル500の支持体501部分にまで形成した場合を示している。このように、製造マージンの許容される範囲において、広く改質機能部材503を配置することが、補完水素の生成量を増加させる点において有効である。また、弾性片504との接触可能面積が広がるため、取り付けマージンが拡大し、製造時における作業性が向上する。
このようにして、改質機能部材503を燃料マニホールド内部に挿入された燃料電池500の下端に設けることによって、生成した補完水素を速やかに燃料電池500の内部通路に導入することが可能になる。また、全ての燃料電池セル500に同等に改質機能部材503を形成することで、同量の水素量を各燃料電池セル500に供給することができるため、燃料電池セル500ごとの発電量のバラつきの発生を抑制することができる。また、燃料マニホールドや燃料電池セルの構造上、複数の燃料電池セル間で供給水素量にバラつきが発生する場合には、燃料電池セルごとに改質機能部材503の配置面積を調整することで、各燃料電池セルへの供給水素量が同等となるように調整することも可能である。
次に添付図面を参照して、本発明の一実施例を説明する。
図3は、本発明の一実施例による固体酸化物形燃料電池装置(SOFC)を示す全体構成図である。図3に示すように、一実施例による固体酸化物形燃料電池装置1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して金属製のモジュール容器8が内蔵されている。この密閉空間であるモジュール容器8の下方部分である発電部10には、燃料ガスと酸素含有ガス(以下では適宜「発電用空気」又は「空気」と呼ぶ。)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。本実施例において燃料電池セル集合体12は、複数の燃料電池セル14を備え、この燃料電池セル14は、各々が直列に電気的接続された複数の発電素子部16を含む。
燃料電池モジュール2のモジュール容器8の発電部10の上方には、燃焼部としての燃焼部18が形成され、この燃焼部18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の空気とが燃焼し、排気ガス(言い換えると燃焼ガス)を生成するようになっている。さらに、モジュール容器8は断熱材7により覆われており、燃料電池モジュール2内部の熱が、燃料電池モジュール2の外部へ発散するのを抑制している。また、この燃焼部18の上方には、燃料ガスを改質する改質器120が配置され、残余ガスの燃焼熱によって改質器120を改質反応が可能な温度となるように加熱している。これにより、熱自立運転を可能としている。
さらに、ハウジング6内においてモジュール容器8の上方には、蒸発器140が断熱材7内に設けられている。蒸発器140は、供給された水と排気ガスとの間で熱交換を行うことによって、水を蒸発させて水蒸気を生成し、この水蒸気と原燃料ガスとの混合ガス(以下では「燃料ガス」と呼ぶこともある。)をモジュール容器8内の改質器120に供給する。
本発明においては、複数の燃料電池セル14は、それぞれの下端部が燃料マニホールド11の天面に挿入されて固定されることで立設している。燃料マニホールド11には、改質器120の内部で改質され水素リッチとなった燃料ガスが供給され、挿入された燃料電池セル14の下端から内部通路へ燃料ガスが供給されて、発電素子部における発電反応が行われる。
燃料マニホールド11の内部に挿入された複数の燃料電池セル14の下端には改質機能部材が設けられ、改質器120から燃料マニホールド11へ供給される燃料ガスのうち、未改質の原燃料成分を改質することで、改質器120で生成した水素を補完するための水素を生成する。
次に、補機ユニット4は、燃料電池モジュール2からの排気中に含まれる水分を結露させた水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料を遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)と、電源喪失時において、燃料流量調整ユニット38から流出する燃料ガスを遮断するバルブ39を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器120に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図4を参照して、燃料電池セル14について説明する。本発明の一実施例による固体酸化物型燃料電池装置1においては、燃料電池セル14として、固体酸化物を用いた円筒横縞型セルが採用されている。各燃料電池セル14上には、複数の単セル16aが横縞状に形成されており、これらが電気的に直列に接続されることにより1本の燃料電池セル14が構成されている。各燃料電池セル14は、その一端がアノード(陽極)、他端がカソード(陰極)となるように構成され、複数の燃料電池セル14のうちの半数は上端がアノード、下端がカソードとなるように配置され、残りの半数は上端がカソード、下端がアノードとなるように配置されている。
図4(A)は、下端がカソードにされている燃料電池セル14の下端部を拡大して示す断面図であり、図4(B)は、下端がアノードにされている燃料電池セル14の下端部を拡大して示す断面図である。
図4に示すように、燃料電池セル14は、細長い円筒状で多孔質の支持体97と、この支持体97の外側に横縞状に形成された複数の層から形成されている。支持体97の周囲には、内側から順に、燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、空気極層101が夫々横縞状に形成されている。このため、燃料マニホールド11を介して供給された燃料ガスは、各燃料電池セル14の支持体97の内部を流れ、モジュール容器8の内部に外部より供給された空気は、空気極層101の外側を流れる。燃料電池セル14上に形成された各単セル16aは、一組の燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、及び空気極層101から構成されている。1つの単セル16aの燃料極層98は、インターコネクタ層102を介して、隣接する単セル16aの空気極層101に電気的に接続されている。これにより、1本の燃料電池セル14上に形成された複数の単セル16aが、電気的に直列に接続される。
図4(A)に示すように、燃料電池セル14のカソード側端部には、支持体97の外周に電極層103aが形成され、この電極層103aの外側にリード膜層104aが形成されている。電極層103aは発電素子部においては燃料極層として機能し、その他の部位では導電部材として機能する。カソード側端部においては、端部に位置する単セル16aの空気極層101と電極層103aが、インターコネクタ層102により電気的に接続されている。これらの電極層103a及びリード膜層104aは、燃料電池セル14端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。電極層103aは、リード膜層104aよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103aに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの空気極層101がインターコネクタ層102、電極層103aを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104aの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル14は、リード膜層104aの外周で第1固定部材63に固定される。
集電体82と電極層103aとの接続には、Niペーストでなる改質機能部材404を用いている。Niペーストを用いることで、物理的に集電体82と電極層103aとを固定するとともに含有するNi粒子によって高い導電性能が付与されるため、集電体82と電極層103aとが電気的に接続する。さらに、Ni粒子を含有することで改質触媒機能が働くため、燃料マニホールド11内の未改質の原料ガスを改質して、水素を生成する。
図4(B)に示すように、燃料電池セル14のアノード側端部においては、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が延長されており、燃料極層98の延長部が電極層103bとして機能する。電極層103bの外側にはリード膜層104bが形成されている。これらの電極層103b及びリード膜層104bは、燃料電池セル14の端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。電極層103bは、リード膜層104bよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103bに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が、一体的に形成された電極層103bを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104bの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル14は、リード膜層104bの外周で第1固定部材63に固定される。
燃料電池セル14のカソード側端部と同様にアノード側端部においても、集電体82と電極層103bとの接続には、Niペーストでなる改質機能部材404を用いている。Niペーストを用いることで、物理的に集電体82と電極層103bとを固定するとともに含有するNi粒子によって高い導電性能が付与されるため、集電体82と電極層103bとが電気的に接続する。さらに、Ni粒子を含有することで改質触媒機能が働くため、燃料マニホールド11内の未改質の原料ガスを改質して、水素を生成する。
図4(A)及び(B)においては、各燃料電池セル14の下端部の構成を説明したが、各燃料電池セル14の上端部における構成も同様とすることができる。
次に、支持体97及び各層の構成を説明する。支持体97は、本実施例においては、フォルステライト粉末、及びバインダーの混合物を押し出し成形し、焼結することにより形成されている。燃料極層98は、本実施例においては、NiO粉末及び10YSZ(10mol%Y2O3−90mol%ZrO2)粉末の混合物により構成された導電性の薄膜である。
反応抑制層99は、本実施例においては、セリウム系複合酸化物(LDC40。すなわち、40mol%のLa2O3−60mol%のCeO2)等により構成された薄膜であり、これにより、燃料極層98と固体電解質層100の間の化学反応を抑制している。固体電解質層100は、本実施例においては、La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3の組成のLSGM粉末により構成された薄膜である。この固体電解質層100を介して酸化物イオンと水素又は一酸化炭素が反応することにより電気エネルギーが生成される。
空気極層101は、本実施例においては、La0.6Sr0.4Co0.8Fe0.2O3の組成の粉末により構成された導電性の薄膜である。インターコネクタ層102は、本実施例においては、SLT(ランタンドープストロンチウムチタネート)により構成された導電性の薄膜である。燃料電池セル14上の隣接する単セル16aはインターコネクタ層102を介して接続される。電極層103a、103bは、本実施例においては、燃料極層98と同一の材料で形成されている。リード膜層104a、104bは、本実施例においては、固体電解質層100と同一の材料で形成されている。
なお、リード膜層104a、104bは、固体電解質層100と同じ緻密な層であり、セラミック接着剤と接着されることにより、気密性を確保することができる。また、本実施例では、電極層103a、103bが燃料極層98と同一の多孔質材料で形成されているが、これに限らず、電極層103a、103bが、反応抑制層99や空気極層101と同一の多孔質材料を含む他の電気導電性の多孔質材料で形成されていてもよい。例えば、燃料電池セル14の端部に最も近い位置に形成された単セル16aの空気極層101を更に端部方向に延長し、その延長した部分を電極層としてもよい。
次に、図5を参照して、集電体について説明する。図5(A)は、集電体405を上から見た図である。集電体405は、燃料電池セル14の上端部,下端部にそれぞれ取り付けられる。図5(B)は、集電体405に形成された取付孔406の拡大図である。
集電体405は、弾性及び導電性を有する薄い板材を機械加工することにより形成されている。本実施例では、ニッケルの板材を用いて形成されている。ここでは、複数(この例では18本)の燃料電池セル14の一方の端部が一つの集電体405と並列に接続される。複数の集電体405を複数のセルに対して用いることでこのようなグループを複数構成し、さらに複数のグループどうしを直列接続することで、複数の燃料電池セル14の全てを並列又は直列的に電気接続した発電回路を構成することができる。
図5(B)に示すように、各集電板の取付孔406は、機械加工による放射状の切込みにより形成されている。1つの取付孔406は、6本の切込み線により形成されている。切込み線の両端をつなぐ仮想線406bは、燃料電池セル14の外形寸法(仮想線406c)よりも大きな円形を形成する。この切込み線により、この仮想線406b(すなわち取付孔406の内周縁)から、円の中心方向(径方向内側)へ延出するように12個の弾性片406aが形成されている。
各弾性片406aは、先端に向かうにつれて先細りとなる略扇形の形状であり、基端部(仮想線406b)に対して先端部が弾性的に撓むことが可能である。従って、取付孔406に燃料電池セル14が挿入されるとき、弾性片406aの先端部は燃料電池セル14の外周面と当接して外周面に沿って撓み、弾性片406aは燃料電池セル14に弾性的に係合する。そして、集電板に対して燃料電池セル14が所定位置まで挿入されると、集電板は、弾性片406aの弾性力によって燃料電池セル14に保持される。
なお、図5(A)に図示していないが、集電体405に取付孔406とは異なる燃料ガスを通過させる流通孔を有することが好ましい。集電部材を集電体405のように平板形状のものとすることで、複数の燃料電池セルどうしの電気的接続および集電を簡易に行うことができる一方で、集電体405が改質機能部材404の改質触媒機能により生成した補完水素を閉じ込め、または遮蔽して燃料電池セルへの供給を妨げることになる。また、同時に原燃料ガスが改質触媒機能部材に到達することが阻害される。そこで、集電体405に燃料電池セルの取付孔406とは異なる流通孔を別途設けることで、燃料ガスの流通を可能とすることができる。
次に、本発明にかかる固体酸化物型燃料電池装置1の製造工程のうち、集電体405を燃料電池セル14のセル配列に固定する方法の一実施例について、図6を用いて詳細に説明する。図6は集電体の固定方法の説明図である。
各燃料電池セル14は、円筒形状の支持体97を有し、その外周面に、燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、空気極層101、電極層103a及び103b、リード膜層104a及び104bが形成されている(図4参照)。
先ず、図6(A)に示すように、各燃料電池セル14の両端部の電極層402の露出面に導電性を有する接着剤403が塗布される。この接着剤塗布工程は、複数の燃料電池セル14がセル配列にモジュール化される前に、即ち、各燃料電池セル14が単体の状態で実行される。
本実施例における接着剤403は、バインダー成分403aに固体粉末403bが混合されたものであり、硬化前はペースト状である。バインダー成分としては、例えば、α−テルピネオール、ノニオン系界面活性剤、ポリビニルブチラール及びポリアセタールの混合材のいずれかを用いることができる。固体粉末は、固体酸化物型燃料電池装置1の運転温度(例えば、約600℃以上)以下で焼結する粒子状の導電性材料であり、また焼結後に改質触媒機能を有するものである。例えば、ニッケルの粉末が挙げられる。粉末は、その平均粒径が、多孔質体である電極層の細孔径と同程度かそれよりも小さくなるように設定される。本実施例の粉末は、粒径がμmオーダーから数十μm程度である。したがって、接着剤塗布工程において、接着剤403のバインダー成分403a及び固体粉末403bの一部が、多孔質体である電極層の細孔内に進入し、又は、電極層の細孔の開口を塞ぐように配置される。
次に、図6(B)に示すように、接着剤403を加熱して、バインダー成分403aを乾燥させる。この乾燥工程(第1硬化工程)は、例えば、上述の加熱工程と同様に、乾燥炉内の約80℃の雰囲気中に各燃料電池セル14を配置することにより、バインダー成分403aを乾燥させることができる。乾燥工程における乾燥温度は、バインダー成分403aを乾燥させることはできるが、固定粉末403bを焼結させる温度以下に設定される。なお、上述のセラミック接着剤の加熱工程が、この乾燥工程を兼ねてもよい。
乾燥工程において、バインダー成分403aが乾燥することによって、電極層の全体の細孔内又は表面に近い細孔内には、主に固体粉末403bからなる改質機能部材404が形成される(改質機能部材形成工程)。本実施例の改質機能部材404は、主に微細なニッケル粉末からなり、周囲の原料ガスを改質して水素を生成する機能を有する。
次に、改質機能部材404が形成された燃料電池セル14を、第1固定部材63及び燃料マニホールド11に位置決めした状態で固定する。
次に、図6(C)に示すように、燃料電池セル14の端部にそれぞれ集電体405を取り付ける集電体取付工程を実行する。具体的には、図6(C)に仮想線で示すように、集電体405をセル配列に対して位置決めする。すなわち、集電体405の取付孔406の中心が対応する燃料電池セル14の略軸中心上に位置するように、集電体を配置する。そして、図6(C)に実線で示すように、集電体405をセル配列に対して押し付ける。これにより、各燃料電池セル14が、対応する取付孔406内に挿入される。このとき、取付孔406の複数の弾性片406aが、燃料電池セル14の外周面に沿って弾性的に撓み、外周面と当接する。そして、各集電板を所定位置まで押し込むと、弾性片406aが改質機能部材404に対して弾性的に係合する。これにより、弾性片406aと改質機能部材404とが電気的に接続される。
集電体405をセル配列に対して取り付ける際に、撓んだ弾性片406aが燃料電池セル14の外周面に形成された改質機能部材404と当接しながら、集電体405は所定位置まで移動する。このとき、燃料電池セル14の電極層は、改質機能部材404によって覆われているため、弾性片406aとの当接による損傷から保護される。したがって、本実施形態では、大きな弾性力を有する弾性片406aを備えた集電体405を用いることができる。
次に、図6(D)に示すように、弾性片406aと改質機能部材404とを接着する接着工程(第2硬化工程)を実行する。具体的には、改質機能部材404を固体粉末403bの融点以下の温度で加熱して、固体粉末403bを焼結させる工程を実施する。焼結により、改質機能部材404は体積が収縮して緻密化される。この焼結工程は、集電体405と燃料電池セル14との接着のためだけに実行してもよいが、上述のセラミック接着剤の第2の加熱工程、又は、還元工程が焼結工程を兼ねることもできる。第2の加熱工程、又は、還元工程が焼結工程を兼ねるように構成すると、製造工程を短縮化することができる。
本実施例では、固体粉末403bとして、ニッケル粉末を使用している。このため、固体粉末403bは、約250℃付近から徐々に焼結が開始され、約550℃まで昇温する間に完全に焼結する。したがって、焼結工程を兼ねる第2の加熱工程又は還元工程において、例えば、約650℃まで徐々に昇温する過程で、焼結工程を完了させることができる。
一方、本実施例では、集電体405は、ニッケル板により形成されており、集電体405の温度が上昇すると、板材料の弾性係数が低下し、また、再結晶を起こして弾性力が低下するおそれがある。弾性係数の低下や再結晶による弾性力の低下が起こると、改質機能部材404に対する弾性片406aの押圧力が低下し、弾性片406aと改質機能部材404との接触が失われるおそれがある。ニッケルの再結晶温度は、約530℃−約660℃である。
しかしながら、本実施例では、集電体405のニッケル板材料が弾性力を有している間に、改質機能部材404の焼結が完了又は少なくとも部分的に完了するように、集電体405及び接着剤403に含まれる固体粉末403bの材料が選択されている。具体的には、本実施例では、集電体405が再結晶化する前に、固体粉末403bが焼結するように、固体粉末403bの粒径等を設定している。したがって、焼結工程において、弾性片406aを改質機能部材404に接着することができる。
焼結工程においては、固体粉末403bが加熱されると、少なくとも固体粉末403bの表面部分が流動性を有するようになり、部分的な融解状態となる。このとき、弾性片406aが弾性力により改質機能部材404を押圧しているので、弾性片406aの先端部が、部分的に改質機能部材404内に沈み込む、又は、埋没する。焼結の完了時点では、固体粉末403bの流動性が無くなり固体状態となる。改質機能部材404は流動状態から固体状態になることにより、接着機能を発揮する。このように、改質機能部材404が焼結されると、弾性片406aは、焼結された改質機能部材404に対して強固に接着される。これにより、運転中において、弾性片406aに応力や熱等の外的な負荷が加えられたときに、弾性片406aが電極層に対して物理的に変位することが防止される。よって、導電性の改質機能部材404を介して、集電体82とセル配列との間の導電性が確保される。
このように、焼結工程において、弾性片406aが部分的に接着剤(改質機能部材404)に沈み込んだり、覆われたりすることにより、弾性片406aと接着剤との接触面積が大きくなり、両者間の接着度合が強固になると共に、弾性片406aと電極層との間の電気的抵抗を小さくすることができる。
また、本実施例では、電極層402を、燃料極層98又は空気極層101と同一の多孔質材料で形成することにより、製造工程を簡単化している。このため、電極層402は多孔質構造を有しているので、電気導電性がそれほど良好でなかったり、接触抵抗が大きくなったりするおそれがある。しかしながら、本実施例では、電極層の表面だけでなく、少なくとも電極層の表層の細孔内にも改質機能部材404が形成されるので、電極層の電気導電性を改善すると共に、改質機能部材404と電極層403との間の電気的抵抗をも小さくすることができ、より効率のよい燃料電池を構成することができる。
さらに、改質機能部材404が焼結により、多孔質構造の電極層402の細孔に入り込んだ固体粉末403bが部分的に溶融状態となった後、固化して、緻密化されるので、多孔質内での電気導通経路が実質的に拡大される。これにより、導電性の高い緻密なインターコネクタ構造を形成することができる。さらに、焼結工程における緻密化の過程で、改質機能部材404が弾性片406aによって加圧されるので、弾性片406aが電極層を加圧する箇所における改質機能部材404の緻密性が高められる。これにより、弾性片406a付近の電気導通経路における導電性をさらに高めることができる。さらに、本実施例では、接着工程が緻密化工程を兼ねているので、製造工程を簡単化することができる。
また、本実施例では単体の状態の燃料電池セル14に対して、接着剤塗布工程及びバインダー乾燥工程を実行することができるため、作業に手間が掛らず、製造工程を簡単にすることができる。
以上のようにして、集電体405を燃料電池セル14のセル配列に固定する工程を経て、固体酸化物形燃料電池装置1を製造することができる。ここで、集電体405及び燃料電池セル14を接続するために用いた改質機能部材404が、固体酸化物形燃料電池装置1の作動時において水素の生成を行うため、改質器や燃料極での水素生成量が低減した場合であってもこれを補完して、固体酸化物形燃料電池装置1の熱自立運転を維持することができる。