以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、洗濯、すすぎ、脱水を行うことができる洗濯機(いわゆる、全自動洗濯機)を例に挙げて説明するが、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥を行うことができる洗濯機(いわゆる、縦型の洗濯乾燥機)に適用することもできる。
図1は、本実施形態の洗濯機の内部構成を示す概略図である。
図1に示すように、洗濯機1は、略箱形の鋼板製の外枠(筺体)5内に、洗濯槽2と、洗濯槽2の底に設けられる攪拌翼3と、洗濯水を循環させる循環水路Rと、を備えて構成されている。
洗濯槽2は、有底円筒形状を呈し、胴板21、この胴板21の底部に設けられる底板22、胴板21の上部に設けられるバランスリング23などを備えて構成されている。
攪拌翼3(脈動翼盤、パルセータともいう)は、略円盤状に形成され、洗濯槽2の底部に設けられている。また、攪拌翼3は、駆動装置6によって回転可能に支持されている。これにより、洗い時やすすぎ時に、攪拌翼3を回転させることで洗濯水を洗濯物12ごと攪拌することができる。
循環水路Rは、洗濯槽2の壁面に設けられ、攪拌翼3の回転によって洗濯水(水)を、洗濯槽2の底部から洗濯槽2の上部に押し上げて、洗濯槽2の内部に戻して循環するように構成されている。また、循環水路Rは、洗濯槽2の壁面の複数箇所に設けられている。
また、洗濯機1は、外枠5の枠体内に、洗濯槽2を同軸上に内包する外槽7を備えている。この外槽7は、合成樹脂製で有底円筒状に形成され、外枠5の上端から吊り下げ支持するコイルバネや弾性ゴムからなる防振装置8などによって垂下防振支持されている。また、外槽7の底部外側には、排水弁13および排水ホース11が設けられ、外槽7の底部に設けられた排水口7aと排水弁13を介して排水ホース11と接続されている。
また、洗濯機1は、制御手段であるコントロールユニット19、給水手段である電磁給水弁16、水位を検知する感圧式の水位センサ15などを備えている。洗濯工程等を行う際、コントロールユニット19の指令により、電磁給水弁16を開き、外槽7内に洗濯水が給水される。所定の水位となったことが水位センサ15により検知されると、コントロールユニット19の指令により電磁給水弁16を閉め、給水を停止する。また、脱水工程等を行う際、コントロールユニット19の指令により排水弁13が開かれ、外槽7内の洗濯水は、排水ホース11の他端から洗濯機1の機外へ排出される。
外枠5の上部には、合成樹脂製の上面カバー9が設けられ、外枠5の下部には、合成樹脂製のベース部材10が設けられている。また、上面カバー9の中央部には、洗濯物12等を出し入れする洗濯物投入口9aを有し、この洗濯物投入口9aを開閉するための蓋体9bが設けられている。また、上面カバー9の後部には、水道栓と接続される給水ホース接続口17が設けられている。給水ホース接続口17は、電磁給水弁16と接続されている。
また、外槽7の内周と洗濯槽2外周との間には隙間があり、この隙間に洗濯物等が入らなくするとともに、外槽7全体の剛性を保つために、外槽7の上端にはバランスリング23の上面を覆うような槽カバー18が設けられている。
駆動装置6は、外槽7の底部外側に鋼板製の取付けベース14を介して取り付けられている。また、駆動装置6は、駆動用モータおよび減速機構を介して攪拌翼3を駆動するように構成されている。この駆動装置6は、洗濯槽2を静止若しくは回転を固定させた状態で攪拌翼3を正逆両方向に回転させる攪拌モード、洗濯槽2と攪拌翼3を一体的に同一方向に回転させる脱水モードを選択的に駆動できるように構成されている。
また、駆動装置6は、洗濯槽2を静止させない状態(洗濯槽2の回転を固定しないが、駆動装置6で洗濯槽2を直接回転できない状態)で攪拌翼3を正逆両方向に回転させる中立モードも選択的に駆動できるように構成されている。
図2は、本実施形態に係る洗濯槽の内部構成を示す縦断面図である。なお、図2では、脱水孔21a(図1参照)の図示を省略している。
図2に示すように、胴板21は、ステンレス鋼板を円筒状に形成したものであり、周壁に洗濯物12に含まれている洗濯水を遠心力にて洗濯物12と分離し排出するための複数の脱水孔21a(図1参照、一部のみ図示)が形成されている。
また、胴板21には、循環水路Rを構成する循環流路部材24が取り付けられている。この循環流路部材24は、合成樹脂などの略板状の部材で形成されるとともに、所定の幅で上下方向に延びて構成されている。
また、胴板21には、循環流路部材24とは別の位置に、循環水路Rを構成する循環流路部材25が取り付けられている。この循環流路部材25には、着脱式の糸くず捕集部材26が取り付けられている。この糸くず捕集部材26は、複数の開口26aが形成され、開口26aが配置されている領域にリントフィルタ(不図示)が設けられている。
底板22は、合成樹脂製で胴板21の下部を塞ぐ皿形状の部材であり、洗濯槽2の底面を構成する底部22aと、この底部22aの外周縁から上方に延びて側面を構成する側部22bと、を有し、胴板21の下端部に固定されている。また、底部22aには、外槽7の底と通じる貫通孔22cが複数形成されている。
バランスリング23は、合成樹脂などでリング状に形成され、胴板21の上端部(上縁部)に固定されている。また、バランスリング23は、胴板21の内壁面よりも径方向の内側に突出するように配置され、バランスリング23の内径が、胴板21の内径よりも小さくなるように構成されている。また、バランスリング23は、内部に比重の大きな流体(塩水など)を封入して構成され、洗濯槽2の回転時に洗濯物の偏りなどによって偏心が生じたときに、流体の移動によって偏心を打ち消し、回転のバランスを維持する機能を有している。
攪拌翼3は、底板22の内部(洗濯槽2の内底部)を覆う直径を有する略円盤形状であり、中央部が回転軸方向の上方に盛り上がるとともに、周方向に沿って上下に波打つように構成されている。また、攪拌翼3は、周縁部の一部が上向きに迫り上がるように湾曲して形成されている。また、攪拌翼3には、表面側と裏面側とを貫通する孔3aが複数個所に形成され、円形のディンプル部3bや径方向に延びる突条部3cが複数箇所に形成されている。
図3は、攪拌翼を取り外した洗濯槽の内部を示す断面図である。なお、図3は、糸くず捕集部材26を正面から見た断面図である。
図3に示すように、循環流路部材24は、上端24aがバランスリング23の近傍まで延び、下端24bが底板22の凹部に入り込む位置まで延びている。また、循環流路部材24の上端24aには、径方向内側に樹脂で一体に曲げ形成されたつば部24a1が形成されている。このつば部24a1の先端は、バランスリング23よりも径方向内側に突出しない位置に設定されている。また、循環流路部材24の下端24bには、樹脂で一体に曲げ形成されるとともに底板22と嵌合するつば部24b1が径方向内側に突出して形成されている。
また、循環流路部材24の裏面には、樹脂で一体に形成された導水路24cが形成され、循環流路部材24と胴板21の内壁面21bとの間で循環水路Rを形成している。すなわち、循環流路部材24の裏面には、左右方向(周方向)に離間して配置される一対のリブ(図示省略)が胴板21に向けて突出して形成されるとともに、循環流路部材24を胴板21に固定するための固定部(図示省略)が設けられている。このリブにパッキン(不図示)を装着して循環流路部材24の内壁面に密着させるとともに、循環流路部材24を胴板21に固定部を介して固定することで、入口27から流入した洗濯水が途中で液漏れすることなく、循環流路部材24の上端まで流通できるようになっている。
また、糸くず捕集部材26が設けられた循環流路部材25の裏面には、樹脂で一体に形成された導水路(不図示)が形成され、循環流路部材25と胴板21の内壁面(不図示)との間で循環水路(不図示)を形成している。なお、本実施形態の循環流路部材25は、洗濯水を上端まで循環水路Rが形成されているものではなく、糸くず捕集部材26の開口26aから洗濯水を洗濯槽2内に散水することで循環させるものである。なお、このような構成の循環流路部材25に限定されるものではなく、循環流路部材25の糸くず捕集部材26の上方に、洗濯水を吐出させるスリット状の吐出口が設けられたものであってもよい。
前記した循環流路部材24の鉛直方向の下方に位置する洗濯槽2の底には、洗濯水を循環水路Rに導入するための入口(導入口)27が設けられている。入口27が設けられている底板22は、底部22aから側部22bにかけてR形状を有するように湾曲して形成されている。これにより、洗濯水の流れの向きを鉛直方向に延びる循環水路Rに円滑に変えることができる。また、入口27の高さ寸法Hは、つば部24b1の下面から鉛直方向の下方に下ろした直線が底板22と接するまでの長さである。また、入口27の高さ位置Hm(図5参照)とは、つば部24b1の下面の高さ、換言すると入口27の上端の高さである。
また、循環水路Rの上端には、鉛直方向の上方に向けて開口して形成された吐出口31が形成されている。この吐出口31は、バランスリング23の下面23aと対向するように配置されている。これにより、吐出口31から吐出された洗濯水がバランスリング23の下面23aに衝突することで、つば部24a1と下面23aとの間に形成された隙間32から洗濯水が洗濯槽2内に向けて吐出(散水)されるようになっている。
また、前記した循環流路部材25の鉛直方向の下方に位置する洗濯槽2の底には、洗濯水を循環水路に導入するための入口(導入口)28(図3参照)が形成されている。入口28から導入された洗濯水は、循環流路部材25と胴板21との間に形成された導水路(不図示)を通って、糸くず捕集部材26内に導入されて糸くずが捕集された後、開口26aから洗濯槽2内に散水されるようになっている。
図4は、攪拌翼の裏側を示す斜視図である。
図4に示すように、攪拌翼3の裏面(下面)には、回転軸中心Oから径方向Dに延びる複数の裏羽根33(径方向リブ)が形成されている。換言すると、裏羽根33が回転軸中心Oから放射状に形成されている。この裏羽根33は、板形状であり、攪拌翼3の裏面から鉛直方向の下方(図4では上方)に向けて突出して形成されている。また、裏羽根33は、周方向Wに略等角度で配置されるように構成されている。
本実施形態では、攪拌翼3の上方(図2参照)に盛り上がった2つの領域の裏面に、裏羽根群33A,33Aが形成されている。これにより、裏羽根33間に取り込む水量を多く確保することができる。それぞれの裏羽根群33Aは、5枚の裏羽根33で構成され、約90度の角度範囲で配置されている。裏羽根群33Aは、循環させる洗濯水を取り込む機能だけではなく、洗濯槽2に洗濯物12が投入されて攪拌翼3が撓み変形するのを抑制する補強部材としての機能も有している。
裏羽根群33Aと裏羽根群33Aとの間の領域には、裏羽根群33B,33Bが形成されている。この裏羽根群33Bは、攪拌翼3の下方(図2参照)に凹んだ2つの領域の裏面に形成されている。また、裏羽根群33Bは、3枚の裏羽根で構成され、約90度の角度範囲内に配置されている。この裏羽根群33Bは、主に攪拌翼3が撓み変形するのを抑制する補強部材として機能している。
また、攪拌翼3の裏面の中心側(半径の約2分の1の領域)には、回転中心軸Oに同心円状または略同心円状に形成される円環リブ34,34,34が形成されている。これにより、攪拌翼3および裏羽根群33A,33A,33B,33Bを補強することができる。
また、攪拌翼3の裏面(下面)には、周方向Wに延びる外周側リブ35および内周側リブ36,37が径方向Dに間隔を置いて形成されている。また、外周側リブ35および内周側リブ36,37は、それぞれ攪拌翼3の曲率と略同じ曲率で湾曲して形成されている。
外周側リブ35は、外周側に位置する周方向リブであり、裏羽根群33Aの周方向Wの一端の裏羽根33から他端の裏羽根33にかけて延びて、すべての裏羽根33と樹脂によって一体に形成されている。また、外周側リブ35は、裏羽根群33Aの各裏羽根33の先端側に位置している。なお、裏羽根33の先端側とは、裏羽根33の外周側の端部、または裏羽根33の外周側の端部の近傍を意味している。
内周側リブ36,37は、外周側リブ35よりも内周側に位置する周方向リブであり、内周側リブ36が内周側リブ37よりも外周側に位置するように構成されている。また、内周側リブ36,37は、外周側リブ35よりも上下方向の長さが短く形成されている。また、内周側リブ36は、内周側リブ37よりも上下方向の長さが長く形成されている。
内周側リブ36,37は、裏羽根群33Aの5枚の裏羽根33のうちの中央の3枚の裏羽根33と一体に形成されている。
図5は、循環水路の入口と径方向リブとの位置関係を示す断面図である。なお、図5は、裏羽根群33Aの5枚の裏羽根33のうちの中央の裏羽根33が正面となるように切断したときの断面図を示している。
図5に示すように、攪拌翼3の表面は、中央部が若干盛り上がり形状であるとともに、円環リブ34の位置から外周側(径方向外側)に向けて上昇する傾斜面3dを有している。図5に示す位置では、攪拌翼3の外周縁部は、底板22の上端22dよりも上方に位置している。また、攪拌翼3の外周縁部には、入口27に向けて延びる垂下部3eが形成されている。この垂下部3eの先端(下端)は、入口27(つば部24b1)の上方に位置するとともに、循環流路部材24の表面との間に隙間Sが形成されるように構成されている。この隙間Sの寸法は、運転時に攪拌翼3が循環流路部材24に接触しない最小の距離に設定されている。
外周側リブ35および内周側リブ36,37は、それぞれ下方に位置する底板22の底部22aに向けて延び、互いに平行に形成されている。また、外周側リブ35および内周側リブ36,37は、攪拌翼3の半径の半分(二分の一)よりも外周側に位置している。
外周側リブ35の先端(下端)35aは、循環水路Rの入口27の高さ位置Hm(つば部24b1の下面)よりも底部22aの側(底側)に位置している。換言すると、外周側リブ35の先端(下端)35aは、入口27の上端部(高さ位置Hm)よりも下方に位置し、径方向から見たときに入口27と外周側リブ35とが一部で重なるように構成されている。また、外周側リブ35の先端(下端)35aは、入口27の高さ寸法Hの半分の高さ位置よりも上方に位置している。これにより、洗濯水が隙間Sから逃げる量を抑制でき、しかも入口27に導入される洗濯水の流量が減少するのを抑制できる。
内周側リブ36,37の先端(下端)36a,37aは、外周側リブ35の先端(下端)35aよりも底部22aから離れる側に位置している。換言すると、内周側リブ36,37の先端(下端)36a,37aは、外周側リブ35の先端(下端)35aよりも上方に位置している。また、内周側リブ36の先端(下端)36aは、内周側リブ37の先端(下端)37aよりも底部22a側に位置している。
また、攪拌翼3の回転軸中心Oには、駆動装置6(図1参照)の回転軸6aと接続されるボス3fが設けられている。このボス3fは、攪拌翼3の裏面に、下方に向けて突出して形成されている。ボス3fの先端(下端)を基準位置Hsとした場合、外周側リブ35の先端35aの高さ寸法をH1とし、内周側リブ36の先端36aの高さ寸法をH2とし、内周側リブ37の先端37aの高さ寸法をH3とすると、H1<H2<H3の関係になっている。
また、外周側リブ35の攪拌翼3の裏面からの鉛直方向の長さは、裏面から基準位置Hsまでの長さの半分(二分の一)よりも長く設定されている。また、内周側リブ36,37の攪拌翼3の裏面からの鉛直方向の長さは、裏面から基準位置Hsまでの長さの半分(二分の一)以下に設定されている。
このような循環流路部材24を設けた洗濯機1では、底板22の内周側(洗濯槽2の内底部)と、攪拌翼3の裏面に設けられた裏羽根33とで形成されたポンプ室P(図1参照)に、循環水路Rが連通するようにして構成されている。
このように構成された洗濯機1では、例えば、洗濯物12を洗濯槽2に投入し、電源スイッチをオンし、スタートスイッチ(図示せず)をオンすると、コントロールユニット19の指令により、電磁給水弁16が制御されて所定水位まで給水され、洗濯(洗い)工程に移行する。洗濯工程では、駆動装置6のモータが洗濯水流に応じて右回転・休止・左回転・休止とコントロールユニット19によって制御されて回転する。このように制御された駆動装置6のモータの回転は攪拌翼3に伝えられ、攪拌翼3および裏羽根33が回転し、洗濯槽2内の洗濯物12と洗濯水が撹拌され、洗濯物12が洗浄される。なお、駆動装置6のモータの回転速度は、例えば、毎分90〜150回転に設定される。
一方、攪拌翼3の裏側の洗濯水は、攪拌翼3の回転による裏羽根33の回転によって遠心力で外側に押し出され、循環水路R内を押し上げられ、吐出口31から上方に向けて間欠的に吐出される。吐出口31から吐出された洗濯水は、バランスリング23の下面23aに衝突することで、洗濯水の向きが洗濯槽2の内側に変えられ、洗濯槽2内に間欠的に注がれる。なお、攪拌翼3の裏羽根33によって洗濯水が循環水路Rに押し出されると、その後、底板22の底部22aに設けた外槽7に通じる貫通孔22c(図2参照)から新しい洗濯水が供給される。
図6は、比較例としての攪拌翼の裏側を示す斜視図である。なお、比較例の攪拌翼100と本実施形態の攪拌翼3とは、周方向リブの形状が異なり、その他の攪拌翼3の表面の形状、裏羽根33および円環リブ34の形状は同じである。また、攪拌翼100において、攪拌翼3と同一の構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図6に示すように、攪拌翼100は、周方向リブ101,102を備えている。周方向リブ101は、本実施形態の内周側リブ36と同じ位置に形成され、周方向リブ102は、本実施形態の内周側リブ37と同じ位置に形成されている。また、周方向リブ101,102は、本実施形態の内周側リブ36,37よりも上下方向の長さが長く形成されている。また、周方向リブ101,102の先端101a,102aは、本実施形態の内周側リブ36,37の先端36a,37aよりも底部22aに近い側に位置するように構成されている。
図7は、周方向リブによる水の流れを示し、(a)は本実施形態、(b)は比較例である。なお、白抜き矢印の大小は、循環水路Rを流れる洗濯水の流量の大小を示している。
まず、図7(b)の比較例について説明すると、周方向リブ101,102は、裏羽根33の先端よりも内周側に位置している。また、周方向リブ101の先端101aは、入口27の高さ寸法Hの半分(二分の一)よりも下方に位置している。また、周方向リブ102の先端102aは、周方向リブ101の先端101aよりも底部22a側に位置している。
図7(b)の比較例では、洗濯水が隣り合う裏羽根33間に保持され、この状態で攪拌翼100が回転すると、洗濯水には外向きの遠心力が作用する。このとき、最も外側の円環リブ34と周方向リブ102との間に位置する空間Q10の下部の洗濯水は、白抜き矢印Y10で示すように、周方向リブ102の先端102aと底部22(底面22a1)との間を通って外周側に向けて押し出される。また、空間Q10の上部に位置する洗濯水は、周方向リブ102によって外周側への洗濯水の流れが制限される。
また、周方向リブ101と周方向リブ102との間に位置する空間Q11の下部の洗濯水は、白抜き矢印Y11で示すように、周方向リブ101の先端101aと底部22a(底面22a1)との間を通って外周側に押し出される。また、空間Q11の上部に位置する洗濯水は、周方向リブ101によって外周側への洗濯水の流れが制限される。
また、周方向リブ101と垂下部3eとの間に位置する空間Q12に位置する洗濯水は、白抜き矢印Y12で示すように、洗濯水の一部が空間Q10,Q11からの洗濯水とともに入口27に向けて押し出される。また、洗濯水の残りは、攪拌翼100と循環流路部材24との間の隙間Sから洗濯槽2内に押し出される。
このような形状の攪拌翼100では、先端101a,102aが底板22の底面22a1に近い位置に形成された周方向リブ101,102によって外周側に押し出される洗濯水の流量が減少する。また、径方向外側(洗濯水が遠心力で押し出される側)に向けて隙間Sと入口27の双方に対向する空間Q12が形成されていることで、白抜き矢印Y13で示すように隙間Sから逃げる洗濯水の流量が増加し、白抜き矢印Y14で示すように入口27に流れる洗濯水の流量が減少する。
これに対して、図7(a)に示す本実施形態では、最も外側の円環リブ34と内周側リブ(周方向リブ)37との間に位置する空間Q1の下部の洗濯水は、白抜き矢印Y1で示すように、先端37aと底部22aとの間を通って外周側に向けて押し出される。また、空間Q1の上部の洗濯水は、白抜き矢印Y2で示すように、内周側リブ37によって斜め下向きの水流となって外周側に押し出される。
また、内周側リブ(周方向リブ)36と内周側リブ(周方向リブ)37との間に位置する空間Q2の下部の洗濯水は、白抜き矢印Y3で示すように、先端36aと底部22aとの間を通って外周側に押し出される。また、空間Q2の上部の洗濯水は、白抜き矢印Y4で示すように、内周側リブ36によって斜め下向きの水流となって外周側に押し出される。
また、内周側リブ(周方向リブ)36と外周側リブ(周方向リブ)35との間に位置する空間Q3の下部の洗濯水は、白抜き矢印Y5で示すように、外周側に向けて押し出される。また、空間Q3の上部の洗濯水は、白抜き矢印Y6で示すように、斜め下向きの水流となって外周側に押し出される。そして、外周側リブ35の先端35aと底面22a1との間を通過した洗濯水は、白抜き矢印Y7で示すように、ほぼ全量が入口27に押し出される。
このように構成された本実施形態の洗濯機1では、内周側リブ36,37の先端36a,37aが外周側リブ35の先端35aよりも底面22a1から離れる位置に形成されているので、空間Q1,Q2の洗濯水を外周側に押し出すことができるとともに、下向きの水流を発生させることができ、空間Q1,Q2の洗濯水のほぼ全量を外周側の空間Q3に押し出すことができる。これにより、本実施形態では、攪拌翼3の剛性を低下させることなく、攪拌翼3の回転速度を上げ過ぎることなく、循環水量を従来よりも増加させることが可能になる。
また、本実施形態では、外周側リブ35の先端35aが、入口27の高さ位置Hm(図5参照)よりも下方(底面22a1側に近い位置)に位置している。これにより、洗濯水を底部22a側に誘導することができ、外周側リブ35から外周側に越えた洗濯水を入口27に導入し易くなり、循環水路Rに導入される洗濯水の流量を増加させることができる。また、外周側リブ35の先端35aが、入口27の高さ位置Hm(図5参照)よりも下方に位置しているので、外周側リブ35から外周側に越えた洗濯水を入口27に直ちに導入でき、白抜き矢印Y8で示すように、隙間Sから逃げる洗濯水の流量を、図7(b)の場合よりも減少させることができる。
ところで、本実施形態において、外周側リブ35を設けずに、内周側リブ(周方向リブ)36,37のみを設けた場合には、循環水路Rを流れる洗濯水の流量を図7(b)の場合よりも増加できるが、洗濯水が隙間Sから逃げる量も増加する。そこで、本実施形態では、周方向リブとして、内周側リブ36,37を設けるだけではなく、外周側リブ35を追加して設けることにより、循環水路Rを流れる洗濯水の流量を図7(b)の場合よりも増加させるようにしたものである。
また、本実施形態では、外周側リブ35が裏羽根33の外周端側(外周端)に位置している。これにより、洗濯水が隙間Sから逃げる量を減少させることができるとともに、裏羽根33の撓み変形を抑制することができるので、攪拌翼3の剛性を高めることができる。
また、本実施形態では、内周側リブ36,37の先端36a,37aが、外周側に向かうにつれて底部22aに近づく側に位置している。これにより、洗濯水が外周側に向かうにつれて、洗濯水を下方に向けて誘導し易くなるので、より多くの洗濯水を入口27に導入し易くなる。
図8は、シャワー拡散のイメージ図を示し、(a)は本実施形態、(b)は比較例である。なお、(a)および(b)のいずれも、バランスリング23の図示を省略している。
図8(b)に示す比較例としての洗濯槽120は、循環流路部材110の上端が循環流路部材24のように上方に開放する吐出口31が形成されたものではなく、洗濯槽120の内側に向けて上板110aを備えたものである。この洗濯槽120では、図7(b)の構成において、洗濯水が吐出されると、図8(b)の斜線で示す領域U10で示すように、洗濯水の拡散角度が制限された状態で吐出される。
これに対して、図8(a)に示す本実施形態の洗濯槽2は、外周側リブ35と内周側リブ36,37とによって循環水路Rを流れる洗濯槽2の循環流量を増加させたことで、図8(a)の斜線で示す領域U1で示すように、循環流路部材24の吐出口31から吐出された洗濯水の拡散角度を図8(b)よりも拡大させることができる。これにより、洗い工程やすすぎ工程において、洗濯水を洗濯物の全体に散布することができる。
また、本実施形態では、循環水路Rが上方に向けて開口する吐出口31を備え、この吐出口31が洗濯槽2に設けられたバランスリング23の下面23aと対向して配置されている。これにより、図8(b)の循環流路部材110の上板110aを不要にできるので、洗濯水をバランスリング23の下面23aに直接当てることができ、洗濯水の拡散角度を拡大できる。
また、本実施形態では、循環水量が増加できることで、糸くず捕集部材26で捕集される異物(糸くず)の捕集率も向上できる。
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を変更しない範囲において種々変更することができる。前記した実施形態では、4つの循環流路部材24,25を設けた場合を例に挙げて説明したが、1つ、2つ、3つ、5つ以上の循環流路部材を備えたものであってもよい。
また、本実施形態では、3枚の周方向リブ(外周側リブ35、内周側リブ36,37)を設けた場合を例に挙げて説明したが、3枚に限定されるものではなく、例えば、2枚の周方向リブ(外周側リブ35、内周側リブ)であってもよく、4枚以上の周方向リブ(外周側リブ35、3つの内周側リブ)であってもよく、攪拌翼3の剛性を損なわない範囲において適宜変更できる。
また、本実施形態では、内周側リブ36の先端36aが内周側リブ37の先端37aよりも下方に位置する場合を例に挙げて説明したが、先端36a,37aが互いに同じ長さの内周側リブ36,37であってもよい。
また、本実施形態では、攪拌翼3の形状が周方向にそって波打つ形状のものを例に挙げて説明したが、このような形状のものに限定されるものではなく、周方向に沿って一定の形状を有する攪拌翼にも適用できる。この場合にも、前記した外周側リブ35および内周側リブ36,37を設けることにより、前記した本実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に本発明の別の実施例を説明する。図9は、本実施形態の操作パネル200の概略図を示したものである。操作パネル200は、大きく操作パネル200の上部にある表示部201と、下部にある操作部202に分けられている。
操作部202には、電源を入切するための電源ボタン203と、運転を開始もしくは一時停止させるためのスタートスイッチ204と、洗濯運転コースを設定するための洗濯コースボタン205と、洗濯運転の詳細設定を行うための設定ボタン206とを備える。表示部201には、洗濯運転の対象となるコースを表示させるためのコース表示欄207とを備えている。
洗濯運転時には、電源ボタン203を押下後に、洗濯コースボタン205を押下するごとに、コース表示欄207の点灯位置が切り替わり、運転する洗濯コース(標準コース、ドライコース、デリケートコースなど)を点灯させ、スタートスイッチ204を押下することで選択された洗濯コースの運転を開始する。
図10〜図12は、各洗濯コースの行程動作の詳細を示すフローチャートである。
図10は標準コースに係る洗浄方式の行程動作を示す。図11はドライコースに係る洗浄方式の行程動作を示す。図12は、本実施例の特徴であるデリケートコースに係る洗浄方式の行程動作を示す。
コントロールユニット19は、電源ボタン203が押されて電源が投入されると起動し、選択されたコースに応じて、図10〜図12に示す洗濯の基本的な制御処理プログラムを実行する。
まず、図10の標準コースの係る洗浄方式の行程動作を説明する。
ステップS301において、コントロールユニット19は、洗濯機1の状態確認および初期設定を行う。
ステップS302において、コントロールユニット19は、洗濯コースボタン205からの入力指示にしたがって洗濯コースを設定する。入力指示がない状態では、標準の洗濯コースまたは前回実施の洗濯コースを自動的に設定する。
ステップS303において、コントロールユニット19は、スタートスイッチ204からのスタートスイッチ信号の入力を監視する。コントロールユニット19は、スタートスイッチ信号の入力が無いと判定した場合には、ステップS303の処理を繰り返し、スタートスイッチ信号の入力が有りと判定した場合には、ステップS304に進む。
ステップS304において、コントロールユニット19は、洗剤量検出処理を実行する。この洗剤量検出処理は、洗い水を給水する前の洗濯物が乾布状態において、洗濯槽2を静止させた状態で攪拌翼3を一方向に回転させたときに、該攪拌翼3に作用する回転負荷量に基づいて洗濯物の布量を検出することにより行う。コントロールユニット19は、検出した布量に基づいて洗剤の適量(洗剤量)を求める。洗剤量は、予め設定した布量と洗剤量の対照テーブルを参照することによって求める。
また、洗濯水量は、布量が所定の布量の範囲(適量)内のときには、例えば攪拌翼3を越えない水位を維持して外槽7の底部に溜まるように洗濯水量(水位h1)を設定する。
また、コントロールユニット19は、検出結果(布量)に基づいて洗濯時間を求めて設定する。布量検出が行われない場合には、標準の洗濯時間を設定する。
ステップS305において、コントロールユニット19は、求めた洗剤量を操作パネル200の表示部201に表示する。
ステップS306において、コントロールユニット19は、洗剤給水電磁弁(不図示)を開き、洗剤・仕上げ剤容器(不図示)の洗剤投入室に対して洗剤給水を実行する。なお、使用者は、洗剤給水前に、表示された量の粉末洗剤を洗剤・仕上げ剤容器(不図示)の洗剤投入室に投入した後、蓋体9bを閉じるように操作する。洗剤給水が流れている洗剤投入室に投入された粉末洗剤は、洗剤給水の水と共に洗剤・仕上げ剤容器を通り外槽7の底部に落下する。
ステップS307において、コントロールユニット19は、洗剤溶かし水位まで給水後、洗剤給水を停止する。この実施形態では、洗剤給水量を洗濯量(布量)に関わらず、例えば、約10リットルに設定した。この水量は、この後の洗剤溶かし(ステップS309)で洗濯槽2を回転させたときに、洗濯槽2の底で給水した水と洗剤を攪拌するのに十分な水量で、かつ、水面が攪拌翼3の下面の高さより低くなる(洗濯物が洗剤溶かし前に濡れない)ように設定される。この設定が終了すると洗剤の給水を停止する(ステップS308)。
ステップS309において、コントロールユニット19は、洗濯槽2と攪拌翼3を一体的に一方向に緩速回転(例えば、約毎分70回転)させることによって、該洗濯槽2の底面で外槽7の底部に投入された洗剤溶かし水と粉末洗剤を攪拌して高洗剤濃度の洗い水を生成する洗剤溶かしを実行する。洗剤溶かしの時間は、例えば1分間に設定される。低温(低水温)、溶けにくい粉末洗剤の条件でも約90%の溶解率となる。生成した洗い水の洗剤濃度は、標準濃度の約7倍である。ここで、標準濃度は、例えば粉末洗剤量20グラム/洗い水量30リットルの割合である。
ステップS310において、前行程を実行する。コントロールユニット19は、前記と同様な方法で布量検出を実行して、設定水位になるまで水道水(清水)の給水と高濃度撹拌を繰り返す。高濃度撹拌は、生成された高洗剤濃度の洗剤を撹拌して洗濯物に行き届かせるように、洗濯槽2を固定した状態(攪拌モード)で攪拌翼3を回転させる。
そして、ステップS311において、洗いの設定水位で、洗濯槽2を固定した状態(攪拌モード)で攪拌翼3を回転させて本洗いを実行する。また、コントロールユニット19は、攪拌翼3を正逆回転させる約1分間の均一化攪拌を実行する。
その後、すすぎ行程を経て(ステップS312、ステップS313)、最終脱水行程(Sステップ314)に移行する。
このように、本洗いでの水流パターンについて、標準コースにおいては洗濯槽2を固定した状態で、攪拌翼3を左右反転回転させることで、洗濯槽2内に強い水流を発生させるとともに、循環水路Rへの洗濯水の流入量を増加させて、高い洗浄力を実現している。
次に図11を用いて、ドライコースの場合を説明するが、図10の標準コースの場合と異なる部分のみを説明する。
標準コースの動作に対して、ドライコースにおいては、図10のステップS304の「洗剤量検出」を廃止している。また、ステップS310の前行程での「布量検出」や「高濃度攪拌」等の水量の低いときの攪拌動作を廃止している(ステップS409)。
また、ドライコースにおいては、ステップS410の本洗い行程において、洗濯槽2と攪拌翼3を一体的に同一方向に回転させるモードで洗いを実行する。これにより、洗濯物と攪拌翼3とが擦れることを防ぎ、衣類の布傷みや布絡み、縮み、型くずれを抑えた洗浄を可能としている。
次に図12を用いて、本実施例の特徴であるデリケートコースの場合を説明するが、図10の標準コースの場合と異なる部分のみを説明する。
標準コースの動作に対して、デリケートコースにおいては、図10のステップS304の「洗剤量検出」を廃止している。また、ステップS310の前行程での「布量検出」や「高濃度攪拌」等の水量の低いときの攪拌動作を廃止している(ステップS509)。
また、デリケートコースにおいては、ステップS510の本洗い行程において、洗濯槽2を静止させない状態(洗濯槽2を固定しないが、駆動装置6で直接回転できない状態)で攪拌翼3を正逆両方向に回転させる中立モードで、攪拌翼3を回転させて本洗いを実行する。中立モードでは、攪拌翼3が回転を始めると、その反力で洗濯槽2は攪拌翼3の回転方向と逆方向に回転し、その後停止し攪拌翼3と同じ方向に回転する。また、後述するが標準コースの水位よりも高い水位となっている。
上記のように、「洗剤量検出」「布量検出」「高濃度攪拌」などの水位が低いときの攪拌動作をドライコース同様に廃止することで、洗濯物と攪拌翼3とが擦れることを防ぎ、衣類の布傷みや布絡み、縮み、型くずれを抑えた洗浄を可能としている。
また、本洗いの行程では、洗濯槽2に十分な洗濯水が溜まり、標準モードよりも高い水位となった後、洗濯槽2を固定せずに、中立モードで、攪拌翼3を回転させることで、洗濯物と洗濯槽2および攪拌翼3とが擦れることを抑制し、衣類の布傷みや布絡み、縮み、型くずれを抑えつつも、攪拌翼3と洗濯槽2との相対回転で発生する水流により高い洗浄力での洗浄を可能としている。
図13は、上記本洗いでの攪拌動作を標準コース、ドライコース、デリケートコースで比較した図であり、経過時間に対する攪拌翼3の回転数の変化を示している。なお、このとき、洗濯物の負荷量は各コースで同一であるとする。
記号(A)は、標準コースとデリケートコースの攪拌翼3の最大回転数の違いを示しており、デリケートコースでは標準コースよりも低い回転数で攪拌翼3を回転させる。これにより、強い水流が発生せず、洗濯物と洗濯槽2および攪拌翼3とが擦れることを防ぎ、衣類の布傷みや布絡み、縮み、型くずれを抑えつつも、高い洗浄力での洗浄を可能としている。
記号(B)は、標準コースとデリケートコースの最大回転数到達までの攪拌翼3の回転数の加速率の違いを示しており、デリケートコースでは標準コースよりも低い加速率で、攪拌翼3の回転数を上昇させている。これにより、攪拌翼3の回転開始時に洗濯物と攪拌翼3とが擦れることを防ぎ、衣類の布傷みや布絡み、縮み、型くずれを抑えつつも、高い洗浄力での洗浄を可能としている。また、標準コースでは攪拌翼3の回転数の加速率が高いため、洗濯槽2内で上下方向と回転方向が合成された強い水流が発生し、洗濯物と攪拌翼3が直接接触し高い洗浄力を実現している。これに対し、デリケートコースでは、攪拌翼3の回転数をゆっくり上昇しているため、洗濯槽2内で回転方向の渦巻き状の水流のみが発生するため、洗濯物と攪拌翼3の直接の接触が発生しない。
記号(C)は、標準コースとデリケートコースの休止時間の違いを示しており、デリケートコースでは標準コースよりも長い休止時間を設けることで、攪拌翼3の回転が停止した後、洗濯槽2内の水流が弱くなった状態で攪拌翼3を反対方向に回転させるため、強い水流が発生せず、衣類の布傷みや布絡み、縮み、型くずれを抑えた洗浄を可能としている。
記号(D)は、標準コースとデリケートコースの攪拌停止時の攪拌翼3の回転の違いを示しており、標準コースでは攪拌翼3の回転を急に止めているのに対し、デリケートコースでは、攪拌翼3の回転をゆっくり止めている(減速率が低い)。こうすることで、洗濯槽2内の水流が急激に変化しないため、衣類の布傷みや布絡み、縮み、型くずれを抑えつつも、高い洗浄力での洗浄を可能としている。さらに、標準コースでは洗濯槽2が固定されているため、攪拌翼3の攪拌後は衣類だけが洗濯槽2内の水流とともに動く。一方、デリケートコースでは洗濯槽2が固定されていないため、攪拌翼3の攪拌後に衣類だけでなく、洗濯槽2も同一方向へ回転するため、洗濯物と洗濯槽2との擦れが生じにくく、衣類の布傷みや布絡み、縮み、型くずれを抑えることができる。
図14は、上記本洗いでの洗濯槽2内の水位の変化を標準コース、ドライコース、デリケートコースで比較した図である。図14において、破線が標準コースの場合、実線がデリケートコースの場合、一点鎖線がドライコースの場合を示している。なお、このとき、洗濯物の負荷量は各コースで同一であるとする。
図14で示す通り、デリケートコースの洗いの設定水位は標準コース及びドライコースの洗いの設定水位よりも高い水位としており、また、洗剤溶かし水位以降は一気に設定水位まで給水している。これにより、本洗いで攪拌翼3を回転した場合に、攪拌翼3と洗濯物との距離が十分あるため、攪拌翼3と洗濯物の接触を抑制することが可能となる。また、上述のように、デリケートコースの前行程では、布量検出、高濃度撹拌を行わないため、本洗い(設定水位で洗い)を行うまでの時間が標準コースの場合に比べて短い。
図15は、攪拌翼3と動きと衣類の動きとの関係を示す図である。図15(a)に示すように、例えば、ウール素材など衣類は、洗濯中においても、攪拌翼3が停止している場合は、衣類が水面に浮かんでしまうため、充分に含水せず、洗浄力が確保しにくい。本実施例では、攪拌翼3を回転させることにより、洗濯槽2内の洗濯水は渦巻き状の水流を起こし、水面はすり鉢状になる。この水流により、洗濯槽2内の衣類を下方に引き込み、衣類に含水させることが可能となる(図15(b))。さらに、攪拌翼3の回転に伴い、シャワーが洗濯槽の上方から散布されるため、更に衣類の含水量が多くなる。このようにして、攪拌翼3の回転に伴う循環シャワーを利用して、ウール素材などの水面に浮かんでしまいやすい衣類を対象とする場合でも、洗浄力を確保することが出来る。
上述のデリケートコースでは、中立モードで洗いを実行する例を説明したが、本発明はこれに限られず、洗濯槽2を固定した状態で攪拌翼3を回転させる攪拌モードでデリケートコースのおける洗いを実行してもよい。この際、水位を高くしたり、攪拌翼3の回転の加速率や攪拌翼3の回転数を低くしたりすることで、衣類の布傷みや布絡み、縮み、型くずれを抑えて、高い洗浄力での洗浄が可能となる。
また、上述のデリケートコースでは、標準コースに比べて高い設定水位で洗う例を説明したが、設定水位を標準コースと同じにして、攪拌翼3の回転の加速率及び/又は攪拌翼3の回転数を標準コースに比べて低くしてもよい。これにより、衣類の布傷みや布絡み、縮み、型くずれを抑えて、高い洗浄力での洗浄が可能となる。