特許文献1に開示された操舵角切替機構は、ハンドルの角速度に応じて、ハンドルの最大操舵角を切り替え可能にしたものである。角速度が速い場合、操舵角を小さくして、急ハンドル時に予想以上にハンドルが回転することを防止することを目的としている。しかしながら、開示された機構では、急ハンドル時以外においても走行時に予想以上にハンドルが回転してしまう恐れがあり、ハンドル操舵時に安定して走行させるという課題を十分解決するものではない。
特許文献2に開示された自転車用ハンドルは、第1縦パイプを第2縦パイプに対して回転させてストッパ機構により固定することにより、ハンドルバーを運転位置及び運転位置から90°回転させた位置に固定可能にしたものである。しかしながら、開示された自転車用ハンドルは、駐輪時にハンドルバーのみを90°回転することにより、駐輪場にて自転車をスムーズに出し入れすることを可能とするものであり、ハンドル操舵時の操舵角度を使用状態に応じて切り替えるものではない。
本発明は前記従来の問題点を解消するためになされたものであり、使用状態に合わせてハンドルの操舵角をワンタッチで切り替えられ、操作性および安全性に優れた操舵角切替機構を備えた複輪車両を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため請求項1に係る複輪車両は、旋回操作での最大操舵角を切り替え可能な複輪車両であって、走行方向に対して左右に延伸するハンドル部と、ハンドル部の旋回操作により回動するハンドルシャフトと、ハンドルシャフトと同心円弧状に開口されるガイド穴と、ガイド穴に係合するガイドピンを備えるピンブラケットと、ガイド穴、またはガイドピンあるいはピンブラケットの少なくともいずれか一方を付勢し、ガイド穴に対するガイドピンまたはピンブラケットの位置を第1位置に維持する付勢部材とを備え、第1位置の状態では、最大操舵角が第1操舵角に規制されることによって、ハンドル部の旋回操作が第1操舵角まで許容され、付勢部材の付勢に抗して、ガイドピンまたはピンブラケットの位置が第2位置にされると、最大操舵角が第1操舵角より大きな第2操舵角に規制されることによって、ハンドル部の旋回操作が第2操舵角まで許容され、ガイドピンまたはピンブラケットの位置が第2位置にされた場合には、付勢部材の付勢によって、ハンドル部が第2操舵角に旋回した状態で保持可能であることを特徴とする。
請求項2に係る複輪車両は、請求項1に記載の複輪車両において、ガイド穴は、第1操舵角の領域において第1開口幅を有する第1開口部と、第1操舵角の領域を超えた第2操舵角の領域において第1開口幅より狭幅の第2開口幅を有する第2開口部とを備え、ガイドピンは、第1開口幅に対応する幅を有する第1支柱部と、第1支柱部の軸方向に隣接して設けられ、第2開口幅に対応する幅を有する第2支柱部とを同軸に備え、第1位置では、付勢部材の付勢により、ガイドピンの第1支柱部とガイド穴の第1開口部とが係合し、第2位置では、付勢部材の付勢に抗して、ガイドピンの第2支柱部とガイド穴の第2開口部とが係合することを特徴とする。
請求項3に係る複輪車両は、請求項2に記載の複輪車両において、付勢部材は、ガイドピンの第2支柱部に同軸に設けられることを特徴とする。
請求項4に係る複輪車両は、請求項1に記載の複輪車両において、ガイド穴は、第1操舵角の領域において第1径の同心円弧状に開口される第3開口部と、第1操舵角の領域を超えた第2操舵角の領域において第1径と異なる径の第2径の同心円弧状に開口される第4開口部とを備え、付勢部材は、ガイドピンがガイド穴の径方向において第2径から第1径に向かう方向に付勢し、第1位置では、付勢部材の付勢により、ガイドピンとガイド穴の第3開口部とが係合し、第2位置では、付勢部材の付勢に抗して、ガイドピンとガイド穴の第4開口部とが係合することを特徴とする。
請求項5に係る複輪車両は、請求項4に記載の複輪車両において、ガイド穴は、第3開口部と第4開口部とを連結する連結穴を備えることを特徴とする。
請求項6に係る複輪車両は、請求項4に記載の複輪車両において、第3開口部は、第1径から第2径に至る広幅の開口であり、第3開口部および第4開口部の第2径の側の円弧辺は同径であることを特徴とする。
請求項7に係る複輪車両は、請求項1に記載の複輪車両において、ガイド穴は、第1操舵角を円弧状の端部とし、付勢部材は、ガイドピンがガイド穴の外径側の円弧辺に付勢されるようにピンブラケットを付勢し、第1位置では、付勢部材の付勢により、ガイドピンの位置が固定され、第2位置では、ガイドピンがガイド穴の円弧状の端部に当接した後、付勢部材の付勢に抗して、ピンブラケットが引き出されることを特徴とする。
請求項1に係る複輪車両では、ガイドピンまたはピンブラケットの位置が、付勢部材の付勢により第1位置に維持した場合と付勢に抗して第2位置にした場合とにより、最大操舵角を第1操舵角と第1操舵角より大きな第2操舵角とに切り替えることができる。例えば、走行時には最大操舵角を操舵角の小さな第1操舵角に規制するため、急ハンドル時に予想以上にハンドル部が旋回することは勿論のこと、急ハンドル時でなくとも必要以上にハンドル部が旋回することが防止でき、安全に走行することができる。また、走行時にハンドル部を必要以上に旋回して転倒したり、ハンドル部が大きく旋回した状態で発進させて前輪がロックして駆動輪に高負荷がかかるということも未然に防止することができる。そして、複輪車両を使用しないときは最大操舵角を操舵角の大きな第2操舵角に切り替えることにより、ハンドル部を大きく旋回させて複輪車両をコンパクトにすることができる。また、ハンドル部を大きく旋回して保持可能であるため、駐車時に車両の不用意な転がりを防止することができる。
請求項2に係る複輪車両では、付勢部材の付勢によりガイドピンの第1支柱部とガイド穴の第1開口部が係合する第1位置と、付勢部材の付勢に抗してガイドピンの第2支柱部とガイド穴の第2開口部が係合する第2位置とにすることにより、最大操舵角を第1操舵角と第1操舵角より大きな第2操舵角とに切り替える。そのため、ガイドピンの操作だけで、最大操舵角の切り替えができる。そして、最大操舵角を第2操舵角から第1操舵角へ切り替える際は、ハンドル部を旋回してガイドピンの位置にガイド穴の第1開口部を移動することで付勢部材の付勢によりガイドピンが軸方向に移動してガイドピンの第1支柱部とガイド穴の第1開口部が係合する。ハンドル部の旋回操作だけで最大操舵角を第2操舵角から第1操舵角へ切り替えることができる。
請求項3に係る複輪車両では、付勢部材がガイドピンの第2支柱部に同軸に設けられることにより、簡単な構成でガイドピンの操作ができると共に操作性も向上させることができる。
請求項4に係る複輪車両では、付勢部材の付勢によりガイドピンとガイド穴の第3開口部とが係合する第1位置と、付勢部材の付勢に抗してガイドピンとガイド穴の第4開口部とが係合する第2位置とにすることにより、最大操舵角を第1操舵角と第1操舵角より大きな第2操舵角とに切り替える。そのため、ガイドピンを備えたピンブラケットを、付勢部材の付勢に抗してガイド穴の径方向において第1径から第2径に向かう方向に移動するだけで、最大操舵角の切り替えができる。そして、最大操舵角を第2操舵角から第1操舵角へ切り替える際は、ハンドル部を旋回してガイドピンの位置にガイド穴の第3開口部を移動することで付勢部材の付勢によりガイドピンとガイド穴の第3開口部が係合する。ハンドル部の旋回操作だけで最大操舵角を第2操舵角から第1操舵角へ切り替えることができる。
請求項5に係る複輪車両では、ガイド穴を第3開口部と第4開口部とを連結した連結穴を備えることにより、スムーズにピンブラケットを移動することができる。
請求項6に係る複輪車両では、第3開口部を第1径から第2径に至る広幅の開口とし、第3開口部および第4開口部の第2径の側の円弧辺を同径とすることにより、ガイド穴は簡易な形状にすることができる。これにより、簡易な構成によって、上記最大操舵角の切り替え操作ができる。また、第1操舵角から第2操舵角への切り替えは、ガイドピンをガイド穴の第2径の円弧辺に当接させながらハンドル部を旋回させればよく、操舵角の切り替えをよりスムーズに行うことができる。
請求項7に係る複輪車両では、付勢部材によるピンブラケットの付勢によりガイドピンの位置を固定した第1位置と、付勢部材の付勢に抗してピンブラケットが引き出された第2位置とにすることにより、最大操舵角を第1操舵角と第1操舵角より大きな第2操舵角とに切り替える。すなわち、ピンブラケットは第1操舵角を超えるハンドル部の旋回操作により移動して、最大操舵角を第2操舵角に切り替えるため、簡易に最大操舵角を切り替えることができる。
以下、本発明の実施形態に係る操舵角切替機構を図面に基づいて説明する。
まず、本発明の実施形態に係る操舵角切替機構を備えた折畳車両100の基本構成について図1を参照して説明する。図1(a)は展開(運転可能)状態、図1(b)は折畳状態における側面から見た模式図である。
折畳車両100は湾曲状に形成されたハンドルシャフトホルダー3を備えており、かかるハンドルシャフトホルダー3の前端部にはハンドルフレーム24が略水平方向に回動可能に取り付けられている。ハンドルフレーム24の上端部にはハンドル25、25が固設されており、また、ハンドルフレーム24の下端部に車輪支持フレーム23が固着され、かかる車輪支持フレーム23には、前輪20が回転可能に支持されている。そして、ハンドルシャフトホルダー3には、その前端部とハンドルフレーム24が接続する位置に操舵部であるハンドル25、25の最大操舵角度を切り替える操舵角切替機構40が取り付けられている。操舵角切替機構40については、後述するように種々の実施形態が構成可能であるため、ここでは、詳細は説明しない。
ハンドルシャフトホルダー3の後端部下方には、第1リンクレバー4の、そして第1リンクレバー4の下方にはフロントフレーム1の、前端部がそれぞれ回転軸9、10を支点としてハンドルシャフトホルダー3に対して回動可能に支持されている。
フロントフレーム1の後端部とリアフレーム2の前端部とは回転軸13で回動可能に連結されている。リアフレーム2は後端部には後輪21が回転可能に支持されている。後輪21には図示しないインラインモーターが取り付けられており、図示しないバッテリーにより駆動可能に制御される。
フロントフレーム1の後端部にはシートポスト27が固着されている。シートポスト27の上部は筒状になっており、上端にシート6が固設されたシート支持フレーム26がシートポスト27の筒部に上下方向に摺動可能に挿着されている。
第1リンクレバー4は、上記のようにハンドルシャフトホルダー3の後端部にその前端部が回転軸9を支点としてハンドルシャフトホルダー3に対して回動可能に支持されている。第1リンクレバー4の後端部は第2リンクレバー5の前端部と回転軸11により回動可能に連結され、第2リンクレバー5の後端部は、リアフレーム2の前端部と回転軸12により回動可能に連結されている。
上記のように、フロントフレーム1、リアフレーム2、第1リンクレバー4、および第2リンクレバー5が5つの回転軸9乃至13を支点としてそれぞれ回動可能に連結されて回動することにより、本実施形態の折畳車両100は展開(運転可能)状態と折畳状態に、簡易に、かつ、快適に切替えることができるのである。
次に、本発明にかかる操舵角切替機構40の第1の実施形態である操舵角切替機構40(1)について図2乃至図5を参照して説明する。図2、3は折畳車両100が展開(走行可能)状態において、ハンドル25、25の最大操舵角を第1操舵角(図中の角度(A))に設定した場合の操舵角切替機構40(1)を、図2では上から見た上面図で示し、図3では側面から見た側面図で示したものである。図4、5は折畳車両100が折畳状態において、ハンドル25、25の最大操舵角を第2操舵角(90°)に設定し、ハンドル25、25を90°(直角)旋回した場合の操舵角切替機構40(1)を、図4では上から見た上面図で示し、図5では側面から見た側面図で示したものある。
操舵部であるハンドル25、25は上記のようにハンドルフレーム24の上端部に固設されている。ハンドルフレーム24にはハンドル25、25の最大操舵角を規制するロックプレート41が締結されている。ロックプレート41には最大操舵角を角度(A)とする第1操舵角に規制する円弧状で幅広の第1ガイド穴41aと、最大操舵角を90°とする第2操舵角まで拡張する円弧状で幅狭の第2ガイド穴41b、41bがハンドルフレーム24と同心円状に設けられている。尚、第2ガイド穴41b、41bは、最大操舵角が第1操舵角(角度(A))である第1ガイド穴41aの両端部で連結されている。
操舵角切替機構40(1)にはガイドピン43をハンドルフレーム24の軸方向に沿って支持する固定ブロック42が配設されている。ガイドピン43の上端および下端にはガイドピン43が固定ブロック42から外れることを防止する円形板43a、43aが設けられている。円形板43a、43aの間には、第1ガイド穴41aの開口幅に対応する径を有する第1支柱部43bと第2ガイド穴41bの開口幅に対応する径を有する第2支柱部43cとが同軸に隣接して設けられている。そして、第2支柱部43cには同軸に圧縮バネ44が設けられ、固定ブロック42に対してガイドピン43が上方に付勢されている。ここで、固定ブロック42の前端部には、ガイドピン43の第1支柱部43bの径に対応した径を有する円形穴を設けたブロック42aと第2支柱部43cの径に対応した径を有する円形穴を設けたブロック42bが設けられている。すなわち、図3および図5に示すように、固定ブロック42のブロック42aとブロック42bは、ブロック42aを下にブロック42bを上にした平行平板状に設けられており、ブロック42aとブロック42bとの間に、ロックプレート41の第1ガイド穴41aおよび第2ガイド穴41b、41bを含む端部が挿入されて、ガイドブロック42の前端部に支持されたガイドピン43とロックプレート41の第1ガイド穴41aまたは第2ガイド穴41b、41bとが係合されている。
折畳車両100が展開(走行可能)状態の場合は、圧縮バネ44の付勢により、ガイドピン43は上方に付勢されて、図2および図3に示すように、ガイドピン43の第1支柱
部43bがロックプレート41の第1ガイド穴41aに係合する位置にある。ガイドピン43は、第1支柱部43bが第1ガイド穴41aを摺動する領域に規制され、折畳車両100の最大操舵角は第1ガイド穴41aの角度(A)(第1操舵角)に規制される。これにより、展開(走行可能)状態では、ハンドル25、25の操舵角が第1操舵角(角度(A))に規制され必要以上にハンドル25、25が旋回することが防止でき、安全に走行することができる。そして、走行時にハンドル25,25を必要以上に旋回させて転倒したり、また、ハンドル25、25が大きく旋回した状態で発進させて前輪20がロックして駆動部である図示しないインラインモーターに高負荷がかかるということも未然に防止することができる。
折畳車両100が折畳状態の場合は、図4、5に示すように、ガイドピン43を圧縮バネ44の付勢力に抗して押下する。これにより、ガイドピン43の第2支柱部43cがブロック42aとブロック42bとの間に位置し、ロックプレート41の第1ガイド穴41aに対向する。この状態で図4の(B)に示すようにハンドル25、25を旋回すると、ガイドピン43の第2支柱部43cはロックプレート41の第1ガイド穴41aを超えて第2ガイド穴41bに係合してハンドル25、25は90°(第2操舵角)まで旋回が可能になる。図4、5のようにハンドル25、25を90°旋回した状態でガイドピン43の押下を解除すると、圧縮バネ44の上方への付勢力によって、第1支柱部43bの上端面がロックプレート41の第2ガイド穴41bの周囲を上方に付勢して、ハンドル25、25が90°旋回した状態で保持される。このように、折畳車両100を使用しない時は、ハンドル25、25が90°(直角)に旋回した状態で保持することにより、コンパクトにすることができる。そして、ハンドル25、25を大きく旋回して保持可能であるため、駐車時に折畳車両100の不用意な移動を防止することができる。
最大操舵角を第1操舵角に戻す際は、ハンドル25、25の操舵角を小さい方向に旋回して前輪20が進行方向に向かう方向に戻すことにより、ロックプレート41の第2ガイド穴41bに係合しているガイドピン43の第2支柱部43cを第1ガイド穴41aの位置まで移動すると、圧縮バネ44の下方への付勢力によりガイドピン43は下方に移動してロックプレート41の第1ガイド穴41aとガイドピン43の第1支柱部43bが係合する。これにより、簡易に最大操舵角を第1操舵角の戻すことができる。折畳状態から展開(走行可能)状態への復帰は、ハンドル25、25の操舵角を小さくすることにより、簡易かつ簡単に行うことができる。
次に、本発明にかかる操舵角切替機構40の第2の実施形態である操舵角切替機構40(2)について図6乃至図9を参照して説明する。図6、7は折畳車両100が展開(走行可能)状態において、ハンドル25、25の最大操舵角を第1操舵角(図中の角度(A))に設定した場合の操舵角切替機構40(2)を、図6では上から見た上面図で示し、図7では側面から見た側面図で示したものある。図8、9は折畳車両100が折畳状態において、ハンドル25、25の最大操舵角を第2操舵角(90°)に設定し、ハンドル25、25を90°(直角)旋回した場合の操舵角切替機構40(2)を、図8では上から見た上面図で示し、図9では側面から見た側面図で示したものある。
操舵部であるハンドル25、25は上記のようにハンドルフレーム24の上端部に固設されている。ハンドルフレーム24にはハンドル25、25の最大操舵角を規制するロックプレート51が締結されている。ロックプレート51には最大操舵角を角度(A)とする第1操舵角に規制する円弧状で幅広の第1ガイド穴51aと、最大操舵角を90°とする第2操舵角まで拡張する円弧状で幅狭の第2ガイド穴51b、51bがハンドルフレーム24と同心円状に設けられている。尚、第2ガイド穴51b、51bは、第1操舵角の領域(角度(A))である第1ガイド穴51aの両端部で連結されている。
操舵角切替機構40(2)には、前端部にロックピン52aをハンドルフレーム24の軸方向に沿って支持する固定ブロック52が配設されている。固定ブロック52にはハンドルフレーム24に向かって開口され、車両100の進行方向に対して前後方向に穿設される長穴部52bが設けられている。ロックピン52aは長穴部52bを貫いて設けられている。また、固定ブロック52の上面には前後方向に伸長する長方形状の開口部52cが設けられている。尚、長欠部52bは、操舵角切替機構40(1)の場合と同様に、平板状の2つのブロックに挟まれた領域として構成することもできる。この場合、ロックピン52aは2つのブロックを連結し、開口部52cは2つのブロックのうち上に配置されるブロックに開口される。
ピンブラケット53は、図7および図9の側面図に示すように、固定ブロック52の長欠部52bに挿入されている。また、折畳車両100の進行方向に対して前後方向に伸長し上下に貫通する長方形状の開口部53cが設けられている。開口部53cにはロックピン52aが貫かれピンブラケット53を折畳車両100の進行方向に摺動可能に保持している。また、ピンブラケット53の前端部にはロックプレート51の第1ガイド穴51aまたは第2ガイド穴51b、51bに係合するガイドピン53aが設けられている。また、後部上面には、固定ブロック52の開口部52cから上方に突出するブラケットレバー53bが設けられている。尚、ガイドピン53aの径は第2ガイド穴51b、51bの幅に対応した径に設定してある。
ピンブラケット53の後端部と固定ブロック52の後端部は引っ張りバネ54により接続されており、引っ張りバネ54の付勢力により、ピンブラケット53は固定ブロック52に対して後方に付勢されている。尚、ブラケットレバー53bの操作により、ピンブラケット53を前後方向に移動可能にしている。
折畳車両100が展開(走行可能)状態の場合は、ピンブラケット53に付勢される引っ張りバネ54の後方への付勢力により、固定ブロック52のロックピン52aにピンブラケット53の開口部53c、53cの前端部が当接して保持されるため、ピンブラケット53の位置が保持されて、ピンブラケット53のガイドピン53aはロックプレート51の第1ガイド穴51aの外方側の円弧辺に当接する位置に保持される。そのため、折畳車両100の最大操舵角は第1ガイド穴51aの端部により規制される角度(A)(第1操舵角)に規制される。これにより、展開(走行可能)状態では、ハンドル25、25の操舵角が第1操舵角(角度(A))に規制され必要以上にハンドル25、25が旋回することが防止でき、安全に走行することができる。そして、走行時にハンドル25,25を必要以上に旋回させて転倒したり、また、ハンドル25、25が大きく旋回した状態で発進させて前輪20がロックして駆動部である図示しないインラインモーターに高負荷がかかるということも未然に防止することができる。
折畳車両100が折畳状態の場合は、図9に示すように、引っ張りバネ54の付勢力に抗して、ブラケットレバー53bを前方に押出する。これにより、ピンブラケット53のガイドピン53aはロックプレート51の第1ガイド穴51aの内方側の円弧辺に当接する。この状態で図8の(B)に示すようにハンドル25、25を旋回すると、第1ガイド穴51aと第2ガイド穴51b、51bの内方側の円弧辺の径は同径であるので、ガイドピン53aはロックプレート51の第1ガイド穴51aの内方側の円弧辺に沿って第2ガイド穴51bまで移動することができる。その結果、ガイドピン53aが第2ガイド穴51bに係合してハンドル25、25は90°(第2操舵角)まで旋回が可能になる。図8、9に示すようにハンドル25、25を90°旋回した状態でブラケットレバー53bの押出を解除すると、引っ張りバネ54の後方への付勢力によって、ガイドピン53aの後端がロックプレート51の第2ガイド穴51bの外方側の円弧辺に付勢して、ハンドル25、25が90°旋回した状態で保持される。このように、折畳車両100を使用しない時は、ハンドル25、25が90°(直角)に旋回し保持されることにより、コンパクトにすることができる。そして、ハンドル25、25を大きく旋回して保持可能であるため、駐車時に折畳車両100の不用意な移動を防止することができる。
最大操舵角を第1操舵角に戻す際は、ハンドル25、25の操舵角を小さい方向に旋回して前輪20が進行方向に向かう方向に戻すことにより、ロックプレート51の第2ガイド穴51bに係合しているガイドピン53aを第1ガイド穴51aの位置まで移動する。このとき、引っ張りバネ54の後方への付勢力によりピンブラケット53は後方に移動して、ピンブラケット53のガイドピン53aはロックプレート51の第1ガイド穴51aの外方側の円弧辺に当接する。これにより、簡易に最大操舵角を第1操舵角の戻すことができる。折畳状態から展開(走行可能)状態への復帰は、ハンドル25、25の操舵角を小さくすることにより、簡易かつ簡単に行うことができる。
次に、本発明にかかる操舵角切替機構40の第3の実施形態である操舵角切替機構40(3)について図10乃至図13を参照して説明する。図10、11は折畳車両100が展開(走行可能)状態において、ハンドル25、25の最大操舵角を第1操舵角(図中の角度(A))に設定した場合の操舵角切替機構40(3)を、図10では上から見た上面図で示し、図11では側面から見た側面図で示したものある。図12、13は折畳車両100が折畳状態において、ハンドル25、25の最大操舵角を第2操舵角(90°)に設定し、ハンドル25、25を90°(直角)旋回した場合の操舵角切替機構40(3)を、図12では上から見た上面図で示し、図13では側面から見た側面図で示したものある。
操舵部であるハンドル25、25は上記のようにハンドルフレーム24の上端部に固設されている。ハンドルフレーム24にはハンドル25、25の最大操舵角を規制するロックプレート61が締結されている。ロックプレート61には最大操舵角を角度(A)とする第1操舵角に規制する円弧状のガイド穴61aがハンドルフレーム24と同心円状に設けられている。
操舵角切替機構40(3)には前端部にロックピン62aをハンドルフレーム24の軸方向に沿って支持する固定ブロック62が配設されている。固定ブロック62にはハンドルフレーム24に向かって開口され、車両100の進行方向に対して前後方向に穿設される長穴部62bが設けられている。ロックピン62aは長穴部62bを貫いて設けられている。また、長穴部62bは図10および図12に示すように固定ブロック62の前端部において、前方に向かって広角に広がる開口面62c、62cが設けられている。これにより、後述する最大操舵角を第2操舵角に切り替える際に、挿入されているピンブラケット63を固定ブロック62からスムーズに引き出すことができる。尚、長欠部62bは、操舵角切替機構40(2)の場合と同様に、2つのブロックに挟まれた領域として構成することもできる。この場合、ロックピン62aは2つのブロックを連結して設けられる。
ピンブラケット63は、図11および図13の側面図に示すように、一対のブラケットプレート63c、63cが折畳車両100の進行方向に開口するコ字状の形状になっており、ロックプレート61のガイド穴61aを含む端部が一対のブラケットプレート63c、63cの間に挿入されている。ピンブラケット63の前端部には、ロックプレート61のガイド穴61aに係合するガイドピン63aが一対のブラケットプレート63c、63cを貫いて設けられ、ガイドピン63aの後方には折畳車両100の進行方向に伸長する長方形状の開口部63b、63bがブラケットプレート63c、63c上下方向に開口して設けられている。開口部63b、63bの後端部には、ピンブラケット63の幅方向にノッチ部63dが設けられている。
ロックピン62aは、ピンブラケット63の開口部63b、63bを貫いて固定ブロック62に締結されており、ピンブラケット63を折畳車両100の進行方向に摺動可能に保持している。ピンブラケット63の後端部と固定ブロック62の後端部は引っ張りバネ64により接続されており、引っ張りバネ64の付勢力により、ピンブラケット63は後方に付勢されている。
折畳車両100が展開(走行可能)状態の場合は、ピンブラケット63に付勢される後方への付勢力により、固定ブロック62のロックピン62aにピンブラケット63の開口部63bの前端部が当接して保持されるため、図10に示すように、ピンブラケット63のガイドピン63aは位置が固定されてロックプレート61のガイド穴61aに係合した状態で保持される。そのため、折畳車両100の最大操舵角はガイド穴61aの角度(A)(第1操舵角)に規制される。これにより、展開(走行可能)状態では、ハンドル25、25の操舵角が第1操舵角(角度(A))に規制され必要以上にハンドル25、25が旋回することが防止でき、安全に走行することができる。そして、走行時にハンドル25,25を必要以上に旋回させて転倒したり、また、ハンドル25、25が大きく旋回した状態で発進させて前輪20がロックして駆動部である図示しないインラインモーターに高負荷がかかるということも未然に防止することができる。
折畳車両100が折畳状態の場合は、図12の図中(B)に示すように、ハンドル25、25を引っ張りバネ64の付勢力に抗して旋回する。これにより、図12に示すように、ピンブラケット63のガイドピン63aがロックプレート61のガイド穴61aの端部に当接した後に、ハンドル25、25のさらなる旋回に伴ってピンブラケット63が固定ブロック62の長穴部62bから引き出されて、ハンドル25、25は第1操舵角である角度(A)を超えて旋回する。この際、上記したように長穴部62bは固定ブロック62の前端部において前方に向かって広角に広がる開口面62c、62cを備えているので、ピンブラケット63は固定ブロック62からスムーズに引き出され、最大操舵角の切り替えがスムーズにできる。
そして、ハンドル25、25をさらに旋回して、ピンブラケット63の後端面が固定ブロック62の前端部において広角に広がった開口面62cの位置まで移動すると、図12に示すように、ロックピン62aは開口部63b、63bに沿ってピンブラケット63の後端部まで移動しノッチ部63dに係合すると共に、ピンブラケット63の後端面が開口面62cに当接する。この状態でハンドル25、25を開放すると、引っ張りバネ64の後方への付勢力により、ロックピン62aがノッチ部63dに係合した状態が維持されると共に、ピンブラケット63の後端面が開口面62cに当接した状態で保持される。本実施形態では、第1実施形態と第2実施形態と同様、ハンドル25、25が90°旋回した状態で保持するように設定してある。このように、折畳車両100を使用しない時は、ハンドル25、25が90°(直角)に旋回し保持されることにより、コンパクトにすることができる。そして、ハンドル25、25を大きく旋回して保持可能であるため、駐車時に折畳車両100の不用意な移動を防止することができる。
最大操舵角を第1操舵角に戻す際は、ハンドル25、25を旋回により、ロックピン62aのノッチ部63dへの係合と、ピンブラケット63の後端面と長穴部62bの開口面62cとの当接とが解除される。この状態でハンドル25、25の操舵角を小さい方向に旋回して前輪20が進行方向に向かう方向に戻すことにより、引っ張りバネ64の付勢力により、ピンブラケット63は、固定ブロック62の長穴部62bに引き戻される。これにより、簡易に最大操舵角を第1操舵角の状態に戻すことができる。
ここで、ハンドル25、25はハンドル部の一例である。第1ガイド穴41a、51a、第2ガイド穴41b、51b、およびガイド穴61はガイド穴の一例である。ガイドピン43、53a,および63aはガイドピンの一例である。ピンブラケット53、および63はピンブラケットの一例である。第1ガイド穴41aは第1開口部の一例であり、ガイド穴41bは第2開口部の一例である。第1ガイド穴51aは第3開口部の一例であり、ガイド穴51bは第4開口部の一例である。圧縮バネ44、引っ張りバネ54、64は付勢部材の一例である。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
また、本実施形態では、ハンドル25、25の両サイドに設けられたブレーキレバー、ブレーキレバーとブレーキとの間の配線類、およびモータを駆動させるための電源関係の配線等を省略しており、実施の際にはそれ等を適宜設定すればよいものである。
上記実施形態では、展開(走行可能)状態では、ハンドル25、25の最大操舵角を第1操舵角(角度(A))としたが、展開(走行可能)状態においても、第1操舵角より大きな第2操舵角に切り替えることも可能である。例えば、狭い場所に駐車する際に、ハンドル25、25を第1操舵角より大きな第2操舵角に切り替えることにより小回りができ、容易に駐車することができる。
また、逆に折畳状態で、ハンドル25、25を第1操舵角に設定することも可能である。折畳状態で移動させる場合は、ハンドル25、25を第1操舵角に切り替えることにより、スムーズに移動できる。
また、上記実施形態では、ハンドルフレーム24にロックプレート41、51、61を締結し、ガイドピン43、53a、63aの位置により、ハンドル25、25の最大操舵角を切り替える構成を開示したが、これに限定するものではなく、ハンドルフレーム24にガイドピンを締結し、ガイドピンと係合する円弧状のガイド穴を設けたロックプレートをハンドルシャフトホルダー3に取り付け、ロックプレートの位置を移動する構成としても、最大操舵角の切り替えが可能である。この際、ガイド穴を設けたロックプレートをバネなどの付勢部材で付勢してもよい。