JP6618888B2 - 工程管理装置および方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製品の処理における進捗状況を管理する工程管理装置および方法に関する。
従来、金属素材の生産工場等において、同じ装置及び工程を用いて多品種の製品が混在した状態で生産される多品種少量生産システムが普及している。
多品種少量生産システムにおいて、ある工程における複数の製品の処理における各進捗状況にムラがあると、製品毎のリードタイムにばらつきが出るため、製品の納期管理が難しくなる。また、製品処理の進捗状況のムラにより全体的なリードタイムが延びると、設備の稼働率低下にも繋がる。このため、多品種少量生産システムでは、それぞれの製品処理の進捗状況を管理する工程管理装置の構築が重要となっている。
また、生産途中の工程に仕掛っている製品処理の進捗状況を管理するだけでなく、各製品が納期に間に合うように製品処理を開始する最初の工程の処理計画を策定する必要があり、そのための支援システムの構築も重要である。なぜなら、生産途中の工程における製品処理の進捗状況を管理するシステムがあったとしても、最初の工程の処理計画を策定する際に、納期に間に合わない処理計画を策定するのでは意味が無いからである。
従来、上述のような製品処理の進捗状況を管理する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、各工程における各製品の作業計画時期に対する遅延(又は先行)時間dと、各工程から製品完成までに要する標準的作業時間Dとを用いて、相対的遅延度d/Dを求めている。標準的作業時間Dは、製品が通過する全ての工程の工程間リードタイム(特許文献1では、「標準的作業時間TAT」と称される)を加算することにより求められる。工程間リードタイムは、標準的条件で作業に要する時間を事前に測定して一意に求められた固定値として、各種登録情報入力部に入力されている。また、各工程における各製品の作業計画時期は、完成指定時期から工程間リードタイムを逆算することによって算出される。
このようにして求められた各製品の相対的遅延度d/Dと、各製品の完成指定時期を厳守すべきかどうかを表す重要度とを総合的に判断して、各工程における製品作業の優先順位(すなわち工程の処理順序)を決定する。これにより、各工程において納期に対する緊急度が高い製品を先に処理でき、納期の遵守率を向上することができる。
特開2000−237938号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の手法では、工程間リードタイムが固定値とされているため、製品処理の進捗状況を精度良く表せない可能性がある。
本発明は、上記問題を解決するもので、製品処理の進捗状況を精度良く表すことが可能な工程管理装置および方法を提供することを目的とする。
本発明の第1態様は、予め定められた素材を予め定められた順番で予め定められた複数の工程を通過させて処理することにより製品を生産する工場における製品処理の進捗状況を管理する工程管理装置であって、
過去の所定期間の実績データにおける対象工程の前工程から前記対象工程までの工程間リードタイムの分布データを算出する分布データ計算部と、
前記実績データにおける前記対象工程の仕掛ワーク数の推移を算出する仕掛ワーク数計算部と、
前記対象工程の現在の仕掛ワーク数を取得し、取得した前記現在の仕掛ワーク数と、前記工程間リードタイムの前記分布データと、前記仕掛ワーク数の前記推移と、を用いて、前記対象工程の処理が終了される期限を表す工程納期と、前記素材が前記対象工程に最早で到着すると予想される日時を表す最早到着予想日と、を算出するための計算用工程間リードタイムを前記素材が通過する通過工程ごとに算出する工程間リードタイム計算部と、
前記計算用工程間リードタイムを前記製品の出荷納期から前記通過工程ごとに逆算することにより、前記通過工程ごとの前記工程納期を算出する工程納期計算部と、
前記計算用工程間リードタイムを前記対象工程の前記前工程の処理終了日から前記通過工程ごとに順番に加算して、前記通過工程の各々への前記素材の前記最早到着予想日を算出する最早到着予想日計算部と、
表示部と、
前記工程納期と前記最早到着予想日とが示されたカレンダーを前記表示部に表示する表示制御部と、
を備えるものである。
本発明の第2態様は、表示部を備え、予め定められた素材を予め定められた順番で予め定められた複数の工程を通過させて処理することにより製品を生産する工場における製品処理の進捗状況を管理する工程管理装置に用いられる工程管理方法であって、
過去の所定期間の実績データにおける対象工程の前工程から前記対象工程までの工程間リードタイムの分布データを算出する分布データ計算ステップと、
前記実績データにおける前記対象工程の仕掛ワーク数の推移を算出する仕掛ワーク数計算ステップと、
前記対象工程の現在の仕掛ワーク数を取得し、取得した前記現在の仕掛ワーク数と、前記工程間リードタイムの前記分布データと、前記仕掛ワーク数の前記推移と、を用いて、前記対象工程の処理が終了される期限を表す工程納期と、前記素材が前記対象工程に最早で到着すると予想される日時を表す最早到着予想日と、を算出するための計算用工程間リードタイムを前記素材が通過する通過工程ごとに算出する工程間リードタイム計算ステップと、
前記計算用工程間リードタイムを前記製品の出荷納期から前記通過工程ごとに逆算することにより、前記通過工程ごとの前記工程納期を算出する工程納期計算ステップと、
前記計算用工程間リードタイムを前記対象工程の前記前工程の処理終了日から前記通過工程ごとに順番に加算して、前記通過工程の各々への前記素材の前記最早到着予想日を算出する最早到着予想日計算ステップと、
前記工程納期と前記最早到着予想日とが示されたカレンダーを表示部に表示する表示制御ステップと、
を備えるものである。
上記第1態様又は上記第2態様では、過去の所定期間の実績データにおける前工程から対象工程までの工程間リードタイムの分布データと、実績データにおける対象工程の仕掛ワーク数の推移と、対象工程の現在の仕掛ワーク数とを用いて、対象工程の処理が終了される期限を表す工程納期と、素材が対象工程に最早で到着すると予想される日時を表す最早到着予想日と、を算出するための計算用工程間リードタイムが、素材が通過する通過工程ごとに算出される。計算用工程間リードタイムを製品の出荷納期から通過工程ごとに逆算することにより、通過工程ごとの工程納期が算出される。計算用工程間リードタイムを対象工程の前工程の処理終了日から通過工程ごとに順番に加算して、通過工程の各々への素材の最早到着予想日が算出される。工程納期と最早到着予想日とが示されたカレンダーが表示部に表示される。
このように、固定された計算用工程間リードタイムではなくて、対象工程の現在の仕掛ワーク数に応じた値の計算用工程間リードタイムを用いている。したがって、上記第1態様又は上記第2態様によれば、工程納期及び最早到着予想日を精度良く算出することができる。その結果、製品処理の進捗状況を精度良く表すことができる。また、工程納期と最早到着予想日とが示されたカレンダーが表示部に表示されているため、工程納期と最早到着予想日とを容易に比較することができる。したがって、製品処理の進捗状況を容易に把握することができる。
上記第1態様において、例えば、前記工程間リードタイム計算部は、前記分布データから、前記工程間リードタイムの最長データと、前記工程間リードタイムの最短データとの少なくとも一方を除去して、前記計算用工程間リードタイムを算出してもよい。
本態様では、分布データから、工程間リードタイムの最長データと、工程間リードタイムの最短データとの少なくとも一方が除去されて、計算用工程間リードタイムが算出される。したがって、過去の実績データにおける極端なデータが除去されるため、本態様によれば、計算用工程間リードタイムを精度良く算出することができる。
上記第1態様において、前記工程間リードタイム計算部は、前記分布データから、前記工程間リードタイムの最長データから所定数のデータと、前記工程間リードタイムの最短データから所定数のデータと、の少なくとも一方を除去して、前記計算用工程間リードタイムを算出してもよい。
上記第1態様において、例えば、前記工程納期計算部は、算出した前記工程納期が、前記工場又は前記通過工程において前記素材を処理する設備の休止期間に含まれる場合には、前記休止期間の直前まで前記工程納期を早めてもよい。
本態様では、算出された工程納期が、工場又は通過工程において素材を処理する設備の休止期間に含まれる場合には、休止期間の直前まで工程納期が早められる。したがって、工場又は設備の休止期間が考慮された工程納期を算出することができる。
上記第1態様において、例えば、前記最早到着予想日計算部は、算出した前記最早到着予想日が、前記工場又は前記通過工程において前記素材を処理する設備の休止期間に含まれる場合には、前記休止期間の直後まで前記最早到着予想日を遅らせてもよい。
本態様では、算出された最早到着予想日が、工場又は通過工程において素材を処理する設備の休止期間に含まれる場合には、休止期間の直後まで最早到着予想日が遅らせられる。したがって、工場又は設備の休止期間が考慮された最早到着予想日を算出することができる。
本発明によれば、固定された計算用工程間リードタイムではなくて、対象工程の現在の仕掛ワーク数に応じた値の計算用工程間リードタイムを用いているため、工程納期及び最早到着予想日を精度良く算出することができる。
本実施の形態における工程管理装置の構成例を概略的に示すブロック図である。 図1の工程管理装置の動作を概略的に示すフローチャートである。 過去の所定期間の実績データにおける、工程から次の工程までの工程間リードタイムの一例を製品ごとに示す図である。 過去の所定期間の実績データにおける、工程から次の工程までの工程間リードタイムの分布データの一例を示す図である。 過去の所定期間の実績データの工程における仕掛ワーク数の推移の一例を示す図である。 分位置の算出手順を説明する図である。 製品の工程納期と最早到着予想日との一例を概略的に示す図である。 ディスプレイに表示される進捗状況表示画面の一例を示す図である。 進捗状況表示画面の図8と異なる例を示す図である。 2種類の素材から2種類の製品が生産されるジョブショップ型の生産工程を概略的に示す図である。 図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第2工程における仕掛ワーク数の推移を示す図である。 図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第1工程から第2工程までの工程間リードタイムの分布データを示す図である。 図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第4工程における仕掛ワーク数の推移を示す図である。 図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第3工程から第4工程までの工程間リードタイムの分布データを示す図である。 図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第5工程における仕掛ワーク数の推移を示す図である。 図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第2工程から第5工程までの工程間リードタイムの分布データを示す図である。 図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第4工程から第5工程までの工程間リードタイムの分布データを示す図である。 第2工程、第4工程、第5工程における現在の仕掛ワーク数の一例を表形式で示す図である。 第2工程、第4工程、第5工程における仕掛ワーク数の最大値及び最小値を表形式で示す図である。 算出された分位置及び計算用工程間リードタイムを表形式で示す図である。 第2工程、第4工程、第5工程における現在の仕掛ワーク数の図18と異なる例を表形式で示す図である。 算出された分位置及び計算用工程間リードタイムを表形式で示す図である。
(本発明の基礎となった知見)
まず、本発明の基礎となった知見が説明される。例えば金属素材産業のような大規模多品種生産体制では、一般に、製品を処理する条件が変更される度に、段取時間が発生する。例えば、熱処理工程の場合、処理する温度が変わると、温度が上昇又は下降して変更前の温度から変更後の温度に達するまでの段取時間を要する。したがって、このような大規模多品種生産体制の工場では、工程の処理順序を決めるにあたり段取時間の存在が無視できない。
そのため、このような大規模多品種生産体制では、納期を遵守できない可能性がある製品に対しては、その製品が仕掛っている工程以降の処理計画を早めることは勿論、加えて今後の工程の段取時間が極端に増えて生産性が低下することがないように変更する操業を採用する必要がある。そのため、上記特許文献1に記載のようにフレキシブルに処理順序を変更する手法は、製品全体の生産性低下に繋がる可能性があるので、上記のような大規模多品種生産体制に適用することは困難となっている。
さらに、発明者が検討したところ、上記のような大規模多品種生産体制において上述の操業を採用した場合、フレキシブルに処理順序が変更できない分、工程における仕掛ワーク数が増えると、工程間リードタイムが増加するように影響することが判明した。このため、上記特許文献1に記載のように、工程間リードタイムを固定値とすると、工程における仕掛ワーク数が増えた場合に、製品処理の進捗状況を精度良く表すことが困難であることが判明した。例えば、納期を遵守できると判断していたはずが、仕掛ワーク数が過剰になったために工程の製品処理に手間取り、実際には納期を遵守できないという事態があり得ることが判明した。
そこで、本開示の技術では、工程間リードタイムを過去の実績データから分布データとして算出しておき、その分布データと現在の仕掛ワーク数とを比較することにより、現在の仕掛ワーク数に応じた計算用工程間リードタイムを用いて、製品処理の進捗状況を表すようにしている。また、本開示の技術では、金属素材産業のような大規模多品種生産体制における操業を想定して、オペレータが製品処理の進捗状況を直感的に理解できるようにしている。
(実施の形態)
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、同じ構成要素については同じ符号が用いられている。
(構成)
図1は、本実施形態における工程管理装置の構成例を概略的に示すブロック図である。図1に示されるように、本実施の形態における工程管理装置は、ディスプレイ100、入力部200、及び制御部300を備えている。制御部300は、記憶装置400及び中央演算処理装置(CPU)500を含む。
本実施の形態における工程管理装置は、複数の工程で素材を処理して複数の製品を生産する、例えばジョブショップ型で大規模多品種少量生産の工場において、各製品処理の進捗状況を管理する。各製品は、製品ごとに予め定められた工程の順で素材が処理されることにより生産される。
ディスプレイ100は、例えば液晶ディスプレイパネルを含む。ディスプレイ100は、CPU500により制御されて、例えば製品処理の進捗状況が記載されたカレンダー等を表示する。なお、ディスプレイ100は、液晶ディスプレイパネルに限られない。ディスプレイ100は、有機EL(electroluminescence)パネルなどの他のパネルを含んでもよい。
入力部200は、例えばマウス又はキーボードを含む。入力部200は、ユーザにより操作されると、その操作内容を示す操作信号をCPU500に出力する。なお、ディスプレイ100がタッチパネル式ディスプレイの場合には、マウス又はキーボードに代えて、タッチパネル式ディスプレイが入力部200を兼用してもよい。
記憶装置400は、例えばハードディスク又は半導体メモリ等により構成される。記憶装置400は、プログラム記憶部410、実績データ記憶部420、製品データ記憶部430を含む。プログラム記憶部410は、図1の工程管理装置を動作させるための制御プログラムを記憶する。実績データ記憶部420は、図1の工程管理装置の管理対象の製品を過去に生産したときのある期間の実績データを記憶する。
製品データ記憶部430は、図1の工程管理装置の管理対象の製品それぞれについて、工程設計、及び出荷納期を記憶する。上記工程設計は、図1の工程管理装置の管理対象の製品を生産する際に、素材が順番に通過する工程を表す。また、製品データ記憶部430は、現在(製品処理の進捗状況を確認する現時点)、素材が仕掛っている工程の名称と、工程設計に含まれる各工程における仕掛ワーク数とを一時的に記憶する。これらのデータ(工程の名称及び仕掛ワーク数)は、CPU500により取得されて、製品データ記憶部430に一時的に記憶されてもよい。
CPU500は、プログラム記憶部410に記憶された制御プログラムにしたがって動作することによって、分布データ計算部510、仕掛ワーク数計算部520、工程間リードタイム計算部530、工程納期計算部540、最早到着予想日計算部550、表示制御部560の機能を有する。
分布データ計算部510は、過去の所定期間の実績データを基に、工程間リードタイムの分布データを算出する。所定期間は、図1に示される工程管理装置のオペレータが、入力部200を用いて設定してもよい。オペレータは、工程の能力変更、工程間への新たな工程の挿入、設備更新による能力変化等、生産環境が変化した後の期間を所定期間に設定してもよい。言い換えると、図1の工程管理装置は、現在と同じ生産環境の期間における過去の実績データを用いてもよい。
仕掛ワーク数計算部520は、過去の所定期間の実績データにおける仕掛ワーク数の推移を工程ごとに算出する。工程間リードタイム計算部530は、過去の実績データにおける仕掛ワーク数の推移と、現在の仕掛ワーク数と、過去の実績データにおける工程間リードタイムの分布とから、後述の工程納期と、後述の最早到着予想日とを計算するための、計算用工程間リードタイムを算出する。
工程納期計算部540は、計算用工程間リードタイムを用いて、製品ごとに、かつ、工程設計に含まれる工程ごとに、工程納期を算出する。最早到着予想日計算部550は、計算用工程間リードタイムを用いて、製品ごとに、かつ、工程設計に含まれる工程ごとに、最早到着予想日を算出する。表示制御部560は、製品ごとに、工程納期と最早到着予想日とをカレンダーに表示する。各部510〜560の動作は、図2〜図9を参照して、更に詳述される。
(動作)
図2は、図1の工程管理装置の動作を概略的に示すフローチャートである。図3は、過去の所定期間の実績データにおける、工程Pから工程Pの次の工程Qまでの工程間リードタイムの一例を製品ごとに示す図である。図4は、過去の所定期間の実績データにおける、工程Pから工程Qまでの工程間リードタイムの分布データの一例を示す図である。図5は、過去の所定期間の実績データの工程Qにおける仕掛ワーク数の推移の一例を示す図である。図6は、分位置QTの算出手順を説明する図である。図7は、製品MFaの工程納期と最早到着予想日との一例を概略的に示す図である。図8は、ディスプレイに表示される進捗状況表示画面の一例を示す図である。図9は、進捗状況表示画面の図8と異なる例を示す図である。
図2のステップS200において、分布データ計算部510は、以下のようにして、過去の所定期間の実績データを基に、工程間リードタイムの分布データを算出する。なお、本実施形態では例えば、過去の2014年1月1日から2014年9月30日までの実績データが用いられている。
まず、分布データ計算部510は、製品データ記憶部430から、管理対象の製品それぞれについて、工程設計のデータを取得する。分布データ計算部510は、実績データ記憶部420から、管理対象の製品それぞれについて、工程設計に含まれる、対象工程(図3の例では工程Q)と、その対象工程(工程Q)の前工程(図3の例では工程P)と、それらの処理終了時刻と、を取得する。
分布データ計算部510は、取得したデータから、工程間ごとに、過去の所定期間の実績データにおける工程間リードタイムを算出する。例えば図3には、製品MFa,MFb,MFc,MFd,MFe,MFf,MFg,MFh,MFiの、工程P(前工程)から工程Q(対象工程)までの工程間リードタイムLTa,LTb,LTc,LTd,LTe,LTf,LTg,LTh,LTiが示されている。
例えば製品MFbにおいて、時刻TPeは、工程Pにおける処理の終了時刻であり、時刻TQeは、工程Qにおける処理の終了時刻であり、工程間リードタイムLTbは、処理終了時刻TPeから処理終了時刻TQeまでの経過時間である。すなわち、工程間リードタイムLTbは、製品MFbを製造するための素材が工程Pから工程Qまで搬送される時間(言い換えると、工程Pが実行される設備から工程Qが実行される設備まで上記素材が搬送される時間)と、工程Qにおいて上記素材が処理開始まで待機する時間(言い換えると、工程Qが実行される設備において工程Qの実行開始まで上記素材が待機する時間)と、工程Qにおける上記素材の処理時間(言い換えると、工程Qが実行される設備において上記素材が処理されている時間)と、を加算した時間である。
分布データ計算部510は、例えば、2014年1月1日から2014年9月30日までにおける、工程Pから工程Qまでの工程間リードタイムを集計して、図4に示されるような分布データを算出する。図4に示される分布データは、2014年1月1日から2014年9月30日までにおける全ての工程間リードタイムに対する頻度を日ごとに集計したものである。図4の例えば工程間リードタイム「2〜3」は、工程間リードタイムが2日を超えて3日以下の頻度が、全体のなかで10%であることを示している。2日を超えて3日以下の工程間リードタイムは、図3では、工程間リードタイムLTb,LTf,LThに相当する。
図2に戻って、ステップS210において、仕掛ワーク数計算部520は、過去の所定期間の実績データにおける仕掛ワーク数の推移を工程ごとに算出する。図3の下端に、工程Pから工程Qまでの間の仕掛ワーク数が、日ごとに示されている。図3に示される「仕掛ワーク数」は、工程Qにおいて、その日(24時間)のうちに、どこかのタイミングで仕掛ワークが重なっている最大の数である。
例えば2014年1月4日の中盤において、5つの工程間リードタイムLTd,LTe,LTf,LTg,LThが重なっているので、1月4日の仕掛ワーク数は、「5」である。また、2014年1月3日には、6つの工程間リードタイムLTb,LTc,LTd,LTe,LTf,LTgが示されている。しかし、1月3日のうちで、同時に重なっている工程間リードタイムは、最大で「4」である。したがって、1月3日の仕掛ワーク数は、「4」である。
上述のように、図3には、工程Pから工程Qまでの間の仕掛ワーク数が、日ごとに示されている。一方、図1の工程管理装置が対象とする工場の形態がジョブショップ型である場合には、工程Qには、工程P以外の他の工程からも素材が搬送される。仕掛ワーク数計算部520は、工程Qに搬送される、工程Pを含む全ての工程からの仕掛ワーク数を、日ごとに算出して、その推移を算出する。したがって、1月1日の工程Pから工程Qまでの間の仕掛ワーク数は、図3から分かるように、「2」であるが、仕掛ワーク数計算部520により算出された1月1日における工程Qの仕掛ワーク数は、図5では、「21」となっている。
このようにして、仕掛ワーク数計算部520は、図1に示される工程管理装置の管理対象の製品それぞれについて、各製品の工程設計に含まれる工程ごとに、過去の所定期間の実績データにおける仕掛ワーク数の推移を算出する。
図2に戻って、ステップS220において、工程間リードタイム計算部530は、工程設計に含まれる各工程の現在(製品処理の進捗状況を確認する現時点)の仕掛ワーク数を製品データ記憶部430から取得する。
ステップS230において、工程間リードタイム計算部530は、過去の実績データにおける仕掛ワーク数の推移と、現在の仕掛ワーク数と、過去の実績データにおける工程間リードタイムの分布データとから、現在の仕掛ワーク数に応じた計算用工程間リードタイムを算出する。以下、その手順が詳述される。
まず、工程間リードタイム計算部530は、過去の所定期間における仕掛ワーク数の最大値Nmaxと最小値Nminとを、工程ごとに算出する。工程間リードタイム計算部530は、仕掛ワーク数の最小値Nminを0[%]とし、最大値Nmaxを100[%]として、最小値Nminから最大値Nmaxの間で、現在の仕掛ワーク数が属する分位値を算出する。具体的には、以下の式(1)によって、分位置QT[%]を算出する。
QT=(Np−Nmin)×100/(Nmax−Nmin) (1)
本実施形態では、図6に示されるように、工程Qの仕掛ワーク数の最大値Nmaxは「24」であり、最小値Nminは「10」である。また、図6に示されるように、工程Qの現在の仕掛ワーク数Npは例えば「14」とする。この場合、分位置QTは、上記式(1)で小数第2位を四捨五入すると、
QT=(14−10)×100/(24−10)
=28.6[%]
となる。
さらに、工程間リードタイム計算部530は、工程間リードタイムの分布データにおいて、分位置QTと同じ分位置の工程間リードタイムを計算用工程間リードタイムとする。工程間リードタイム計算部530は、例えば図4の工程間リードタイムの分布データにおいて、短い方から28.6[%]の分位置の工程間リードタイム(例えば3.8[日])を工程Qにおける計算用工程間リードタイムとする。
なお、工程間リードタイム計算部530は、現在の仕掛ワーク数が最大値Nmax以上であれば、上記式(1)を使わずに、分位置QTを100[%]とし、現在の仕掛ワーク数が最小値Nmin以下であれば、分位置QTを0[%]とする。分位置QTが0[%]の場合には、工程間リードタイム計算部530は、図4に示される工程間リードタイムの分布データのうち、最短の工程間リードタイム(例えば0.8[日])を工程Qにおける計算用工程間リードタイムとする。分位置QTが100[%]の場合には、工程間リードタイム計算部530は、図4に示される工程間リードタイムの分布データのうち、最長の工程間リードタイム(例えば9.5[日])を工程Qにおける計算用工程間リードタイムとする。
図2に戻って、ステップS240において、工程納期計算部540は、ステップS230で算出された計算用工程間リードタイムを用いて、製品ごとに、かつ、工程設計に含まれる工程ごとに、工程納期を算出する。工程納期は、製品の出荷納期から、工程設計に従って、計算用工程間リードタイムを逆算して得られる日時であって、出荷納期に間に合わせるために遅くとも各工程の処理を終了すべき期限と予想される日時である。
図7において、製品MFaを製造するための素材に対し、工程PA、工程PB、工程PC、工程PD、工程PE、工程PFの順で処理が行われ、工程PFが終了すると製品MFaが完成し、出荷される。すなわち、製品MFaの工程設計は、工程PA、工程PB、工程PC、工程PD、工程PE、工程PFを、この順番で含む。
図7の折れ線L1は、工程納期の推移を表す。製品MFaの出荷納期Ddtは、工程PFの工程納期DTfに等しい。工程PEから工程PFまでの計算用工程間リードタイムを出荷納期Ddtから逆算した日時が、工程PEの工程納期DTeである。工程PDから工程PEまでの計算用工程間リードタイムを工程納期DTeから逆算した日時が、工程PDの工程納期DTdである。
工程PCから工程PDまでの計算用工程間リードタイムを出荷納期DTdから逆算した上で、休止期間SPの開始日時まで遡った日時が、工程PCの工程納期DTcである。休止期間SPは、例えば8月のお盆を含む夏休み、定例のメンテナンス日など、工場の設備を稼働できない期間である。このため、工程PCの工程納期DTcは、工程PCから工程PDまでの計算用工程間リードタイムを出荷納期DTdから逆算した日時が休止期間SPに含まれる場合、休止期間SPの開始日時まで遡った日時とする必要がある。
工程PBから工程PCまでの計算用工程間リードタイムを工程納期DTcから逆算した日時が、工程PBの工程納期DTbである。工程PAから工程PBまでの計算用工程間リードタイムを工程納期DTbから逆算した日時が、工程PAの工程納期DTaである。工程PAの処理時間を工程PAの工程納期DTaから逆算した日時が、遅くとも工程PAの処理を開始すべき日時Dstである。
以上のようにして、工程納期計算部540は、出荷納期から工程ごとに計算用工程間リードタイムを逆算することにより、製品の工程設計に含まれる工程ごとに、工程納期を算出する。また、上述のように、ある工程の工程納期が休止期間に重なった場合には、工程納期計算部540は、休止期間の直前まで工程納期を早めればよい。これは、休止期間に入るまでに、処理を終了すべきだからである。
図2に戻って、ステップS250において、最早到着予想日計算部550は、ステップS230で算出された計算用工程間リードタイムを用いて、製品ごとに、かつ、工程設計に含まれる工程ごとに、最早到着予想日を算出する。最早到着予想日は、製品の第1工程(図7の製品MFaでは工程PA)の処理計画日から、工程設計に従って、工程ごとに計算用工程間リードタイムを加算して得られる、各工程に最早で到着すると予想される日時である。
また、製品の第1工程の処理計画日以降に最早到着予想日を計算する場合には、最早到着予想日は、製品の仕掛工程の直前の工程の処理終了日時から、工程設計に従って、工程ごとに計算用工程間リードタイムを加算して得られる、各工程に最早で到着すると予想される日時である。すなわち、最早で到着すると予想される日時であるので、工程から次の工程までの搬送時間はゼロとして計算されている。
図7において、折れ線L2は、製品MFaの第1工程である工程PAの処理計画日以降に最早到着予想日を計算する場合の各工程の最早到着予想日を示す。図7の折れ線L2では、製品MFaの仕掛工程は、工程PDである。工程PDの直前の工程PCの処理終了日DEc2に、工程PCから工程PDまでの計算用工程間リードタイムを加算した日時が、工程PEの最早到着予想日DAe2である。工程PEの最早到着予想日DAe2に、工程PDから工程PEまでの計算用工程間リードタイムを加算した日時が、工程PFの最早到着予想日DAf2である。工程PFの最早到着予想日DAf2に、工程PEから工程PFまでの計算用工程間リードタイムを加算した日時が、製品MFaの出荷予想日Ds2である。
図7において、折れ線L3は、製品MFaの第1工程である工程PAの処理計画日以前に最早到着予想日を計算する場合の各工程の最早到着予想日を示す。工程PAの処理計画日DPa3に、工程PAの処理時間を加算した日時が、工程PBの最早到着予想日DAb3である。工程PBの最早到着予想日DAb3に、工程PAから工程PBまでの計算用工程間リードタイムを加算した日時が、工程PCの最早到着予想日DAc3である。工程PCの最早到着予想日DAc3に、工程PBから工程PCまでの計算用工程間リードタイムを加算した日時が、工程PDの最早到着予想日DAd3である。以下、同様にして、工程PEの最早到着予想日DAe3、工程PFの最早到着予想日DAf3、製品MFaの出荷予想日Ds3が算出される。
図7では、製品MFaの出荷予想日Ds2,Ds3が、製品MFaの出荷納期Ddtに先行しているので、製品MFaの納期を遵守できることが分かる。
以上のようにして、最早到着予想日計算部550は、工程ごとに計算用工程間リードタイムを最早到着予想日に加算することにより、製品の工程設計に含まれる工程ごとに、最早到着予想日を算出する。なお、ある工程の最早到着予想日が休止期間に重なった場合には、最早到着予想日計算部550は、休止期間の直後まで最早到着予想日を遅くすればよい。これは、休止期間の直後でないと、処理を開始できないからである。
図2に戻って、ステップS260において、表示制御部560は、図8に示されるように、製品ごとに、工程納期と、最早到着予想日とをカレンダーに表示した進捗状況表示画面800をディスプレイ100に表示する。図8の進捗状況表示画面800には、製品MFa,MFb,MFcの工程納期と最早到着予想日とが、上下に並べて表示されている。工程納期余裕日数は、仕掛工程の最早到着予想日に対する仕掛工程の工程納期までの余裕の日数である。
図8において、製品MFaの工程納期は、工程PCが27日(土)であり、工程PDが28日(日)であり、工程PEが2日(木)である。これに対して、製品MFaの最早到着予想日は、工程PCが29日(月)であり、工程PDが30日(火)であり、工程PEが4日(土)である。したがって、工程納期余裕日数は、「−2」であり、工程納期が遵守できておらず、生産が遅れていることが分かる。
同様に、製品MFbの工程納期は、工程PLが27日(土)であり、工程PMが28日(日)であり、工程PNが2日(木)である。これに対して、製品MFbの最早到着予想日は、工程PLが29日(月)であり、工程PMが30日(火)であり、工程PNが4日(土)である。したがって、工程納期余裕日数は、「−2」であり、工程納期が遵守できておらず、生産が遅れていることが一目で分かる。
一方、製品MFcの工程納期は、工程PTが27日(土)であり、工程PUが30日(火)であり、工程PVが2日(木)であり、出荷納期(黒三角印)が3日(金)である。これに対して、製品MFcの最早到着予想日は、工程PTが26日(金)であり、工程PUが29日(月)であり、工程PVが1日(水)であり、出荷予想日(黒三角印)が2日(木)である。したがって、工程納期余裕日数は、「1」であり、工程納期が遵守できていることが一目で分かる。
ディスプレイ100に表示される進捗状況表示画面は、図8に限られず、図9に示される例でもよい。図9に示される進捗状況表示画面810は、工程納期表示画面901と、最早到着予想日表示画面902とを含む。
図9において、製品MFa,MFbの工程設計では、今日以降の通過工程は、工程LW,LW,LW,H8,BT,S6,INである。工程納期表示画面901と、最早到着予想日表示画面902とを比較すると、製品MFa,MFbの最早到着予想日は、それぞれ、工程納期より1日足らず遅れている。したがって、製品処理の進捗状況が遅れていることを一目で理解することができる。
一方、製品MFc,MFdの工程設計では、今日以降の通過工程は、工程R3,R3,R3,H8,BT,S6,INである。工程納期表示画面901と、最早到着予想日表示画面902とを比較すると、製品MFc,MFdの最早到着予想日は、それぞれ、工程納期より1日あまり進んでいる。したがって、製品処理が納期に間に合っていることを一目で理解することができる。
(具体例)
2種類の素材から2種類の製品が生産されるジョブショップ型の生産工程において、現在の仕掛ワーク数が変化した場合の計算用工程間リードタイムの変化が、図2のフローチャートに沿って、具体例を用いて説明される。
図10は、2種類の素材から2種類の製品が生産されるジョブショップ型の生産工程を概略的に示す図である。図11は、図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第2工程PR2における仕掛ワーク数の推移を示す図である。図12は、図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第1工程PR1から第2工程PR2までの工程間リードタイムの分布データを示す図である。図13は、図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第4工程PR4における仕掛ワーク数の推移を示す図である。図14は、図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第3工程PR3から第4工程PR4までの工程間リードタイムの分布データを示す図である。図15は、図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第5工程PR5における仕掛ワーク数の推移を示す図である。図16は、図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第2工程PR2から第5工程PR5までの工程間リードタイムの分布データを示す図である。図17は、図10の生産工程における過去の所定期間の実績データの第4工程PR4から第5工程PR5までの工程間リードタイムの分布データを示す図である。図18は、第2工程PR2、第4工程PR4、第5工程PR5における現在の仕掛ワーク数の一例を表形式で示す図である。図19は、第2工程PR2、第4工程PR4、第5工程PR5における仕掛ワーク数の最大値及び最小値を表形式で示す図である。図20は、算出された分位置及び計算用工程間リードタイムを表形式で示す図である。図21は、第2工程PR2、第4工程PR4、第5工程PR5における現在の仕掛ワーク数の図18と異なる例を表形式で示す図である。図22は、算出された分位置及び計算用工程間リードタイムを表形式で示す図である。
図10において、素材MT1が、第1工程PR1、第2工程PR2、第5工程PR5、第6工程PR6、第7工程PR7を通過することにより、製品MF1が生産される。すなわち、製品MF1の工程設計は、第1工程PR1、第2工程PR2、第5工程PR5、第6工程PR6、第7工程PR7を、この順番で含む。
一方、素材MT2が、第3工程PR3、第4工程PR4、第5工程PR5、第6工程PR6、第7工程PR7を通過することにより、製品MF2が生産される。すなわち、製品MF2の工程設計は、第3工程PR3、第4工程PR4、第5工程PR5、第6工程PR6、第7工程PR7を、この順番で含む。図10から分かるように、第5工程PR5には、第2工程PR2からの仕掛ワークと、第4工程PR4からの仕掛ワークとが混在する。
図10に示されるように、製品を製造するための工程の順序が全ての製品で同一とは限らない生産工程がジョブショップ型と呼ばれる。一般に、鉄鋼、アルミニウム、銅などの素材を加工する工場では、ジョブショップ型の生産工程となる。
図2のステップS200において、分布データ計算部510は、実績データ記憶部420に記憶されている過去の実績データから、第1工程PR1から第2工程PR2までの工程間リードタイムの分布データ(図12)と、第3工程PR3から第4工程PR4までの工程間リードタイムの分布データ(図14)と、第2工程PR2から第5工程PR5までの工程間リードタイムの分布データ(図16)と、第4工程PR4から第5工程PR5までの工程間リードタイムの分布データ(図17)とを、それぞれ算出する。
第1工程PR1から第2工程PR2までの工程間リードタイムの分布データ(図12)と、第2工程PR2から第5工程PR5までの工程間リードタイムの分布データ(図16)とは、製品MF1の過去の実績データから算出される。第3工程PR3から第4工程PR4までの工程間リードタイムの分布データ(図14)と、第4工程PR4から第5工程PR5までの工程間リードタイムの分布データ(図17)とは、製品MF2の過去の実績データから算出される。
図2のステップS210において、仕掛ワーク数計算部520は、実績データ記憶部420に記憶されている過去の実績データから、第2工程PR2における仕掛ワーク数の推移(図11)と、第4工程PR4における仕掛ワーク数の推移(図13)と、第5工程PR5における仕掛ワーク数の推移(図15)とを、それぞれ算出する。
第2工程PR2における仕掛ワーク数の推移(図11)は、製品MF1の過去の実績データから算出される。第4工程PR4における仕掛ワーク数の推移(図13)は、製品MF2の過去の実績データから算出される。第5工程PR5における仕掛ワーク数の推移(図15)は、図10のように製品MF1と製品MF2とが同時に生産されたときの過去の実績データから算出される。
図2のステップS220において、工程間リードタイム計算部530は、図18に示されるように、第2工程PR2、第4工程PR4、第5工程PR5における現在の仕掛ワーク数Npを取得する。図10を用いて説明されたように、第5工程PR5には、第2工程PR2からの仕掛ワークと、第4工程PR4からの仕掛ワークとが混在する。このため、図18に示されるように、第5工程PR5の仕掛ワーク数Npは、第2工程PR2、第4工程PR4の各仕掛ワーク数Npに比べて、多くなると想定される。
図2のステップS230において、まず、工程間リードタイム計算部530は、取得した過去の所定期間における仕掛ワーク数の推移から、図19に示されるように、第2工程PR2、第4工程PR4、第5工程PR5の仕掛ワーク数の最大値Nmaxと最小値Nminとを算出する。図11から分かるように、第2工程PR2の仕掛ワーク数の最大値Nmaxは「86」であり、最小値Nminは「32」である。図13から分かるように、第4工程PR4の仕掛ワーク数の最大値Nmaxは「74」であり、最小値Nminは「23」である。図15から分かるように、第5工程PR5の仕掛ワーク数の最大値Nmaxは「235」であり、最小値Nminは「105」である。
次に、工程間リードタイム計算部530は、仕掛ワーク数の最小値Nminを0[%]とし、最大値Nmaxを100[%]として、上記式(1)によって、最小値Nminから最大値Nmaxの間で、現在の仕掛ワーク数が属する分位値QT[%]を算出する。
第1工程PR1から第2工程PR2までの分位置QT12は、小数第1位を四捨五入すると、
QT12=(50−32)×100/(86−32)
=33[%]、
第3工程PR3から第4工程PR4までの分位置QT34は、小数第1位を四捨五入すると、
QT34=(40−23)×100/(74−23)
=33[%]、
第2工程PR2から第5工程PR5までの分位置QT25は、小数第1位を四捨五入すると、
QT25=(130−105)×100/(235−105)
=19[%]、
第4工程PR4から第5工程PR5までの分位置QT45は、小数第1位を四捨五入すると、
QT45=(130−105)×100/(235−105)
=19[%]、
となる。これによって、図20に示される分位置[%]が、それぞれ算出される。
工程間リードタイム計算部530は、算出された分位置[%]を用いて、計算用工程間リードタイムを算出する。具体的には、第1工程PR1から第2工程PR2の工程間リードタイムの分布データ(図12)において、分位置33[%]に相当する計算用工程間リードタイムとして1.5[日]が得られる。また、第3工程PR3から第4工程PR4の工程間リードタイムの分布データ(図14)において、分位置33[%]に相当する計算用工程間リードタイムとして3.8[日]が得られる。
また、第2工程PR2から第5工程PR5の工程間リードタイムの分布データ(図16)において、分位置19[%]に相当する計算用工程間リードタイムとして0.7[日]が得られる。また、第4工程PR4から第5工程PR5の工程間リードタイムの分布データ(図17)において、分位置19[%]に相当する計算用工程間リードタイムとして2.2[日]が得られる。これによって、図20に示される計算用工程間リードタイム[日]が、それぞれ算出される。
このようにして算出された計算用工程間リードタイムを用いて、図2のステップS240,S250,S260が、上述のように、実行されることとなる。
以上より、図10に示されるジョブショップ型の生産工程において、製品MF1,MF2を生産する際に、過去の実績データでは、第1工程PR1、第2工程PR2、第5工程PR5を処理するのに、1.5+0.7=2.2[日]を要すること、第3工程PR3、第4工程PR4、第5工程PR5を処理するのに、3.8+2.2=6.0[日]を要することが、図20から分かる。
ここで、製品MF1に関連する工程の仕掛ワーク数が、上記に比べて増加している日を想定し、その場合に算出される計算用工程間リードタイムの変化が確認される。
過去の所定期間の実績データから、図11〜図17と同様の結果が取得されたものとする。その結果、図19と同様の仕掛ワーク数の最大値及び最小値が得られる。ここで、現在の仕掛ワーク数が、図21に示される値であったとする。上記図18と比べて、製品MF1に関連する工程のうち第2工程PR2の仕掛ワーク数が「50」から「70」に増加し、第5工程PR5の仕掛ワーク数が「130」から「160」に増加している。
このため、分位置は、以下のように算出される。第1工程PR1から第2工程PR2までの分位置QT12は、小数第1位を四捨五入すると、
QT12=(70−32)×100/(86−32)
=70[%]、
第3工程PR3から第4工程PR4までの分位置QT34は、上記と同じ33[%]、
第2工程PR2から第5工程PR5までの分位置QT25は、小数第1位を四捨五入すると、
QT25=(160−105)×100/(235−105)
=42[%]、
第4工程PR4から第5工程PR5までの分位置QT45は、小数第1位を四捨五入すると、
QT45=(160−105)×100/(235−105)
=42[%]、
となる。これによって、図22に示される分位置[%]が、それぞれ算出される。
そして、第1工程PR1から第2工程PR2の工程間リードタイムの分布データ(図12)において、分位置70[%]に相当する計算用工程間リードタイムとして3.3[日]が得られる。また、第3工程PR3から第4工程PR4の工程間リードタイムの分布データ(図14)において、分位置33[%]に相当する計算用工程間リードタイムとして上記と同じ3.8[日]が得られる。
また、第2工程PR2から第5工程PR5の工程間リードタイムの分布データ(図16)において、分位置42[%]に相当する計算用工程間リードタイムとして1.4[日]が得られる。また、第4工程PR4から第5工程PR5の工程間リードタイムの分布データ(図17)において、分位置42[%]に相当する計算用工程間リードタイムとして3.4[日]が得られる。これによって、図22に示される計算用工程間リードタイム[日]が、それぞれ算出される。
このように、製品MF1に関連する第2工程PR2及び第5工程PR5の現在の仕掛ワーク数が増加したことにより、製品MF1,MF2を生産するための素材MT1,MT2が共通して通過する第5工程PR5に関し、第2工程PR2から第5工程PR5の計算用工程間リードタイムは0.7[日]から1.4[日]に増加し、第4工程PR4から第5工程PR5の計算用工程間リードタイムは2.2[日]から3.4[日]に増加しており、両方とも増加していることが分かる。
その結果、図10に示されるジョブショップ型の生産工程において、製品MF1,MF2を生産する際に、過去の実績データでは、第1工程PR1、第2工程PR2、第5工程PR5を処理するのに、3.3+1.4=4.7[日]を要すること、第3工程PR3、第4工程PR4、第5工程PR5を処理するのに、3.8+3.4=7.2[日]を要することが、図22から分かる。これによって、製品MF1に関連する工程の現在の仕掛ワーク数の増加に応じて、別の製品MF2の計算用工程間リードタイムに影響を及ぼしていることが分かる。
(効果)
以上説明されたように、本実施形態では、工程間リードタイム計算部530は、過去の所定期間の実績データにおける前工程から対象工程までの工程間リードタイムの分布データと、実績データにおける対象工程の仕掛ワーク数の推移と、対象工程の現在の仕掛ワーク数とを用いて、工程納期と最早到着予想日とを算出するための計算用工程間リードタイムを算出している。したがって、固定された計算用工程間リードタイムではなくて、対象工程の現在の仕掛ワーク数に応じた値の計算用工程間リードタイムを用いているので、本実施形態によれば、工程納期及び最早到着予想日を精度良く算出することができる。その結果、製品処理の進捗状況を精度良く表すことができる。
また、本実施形態では、ディスプレイ100に表示された製品の生産日程を表すカレンダーに工程納期と最早到着予想日とを表示している。このため、本実施形態によれば、工程納期と最早到着予想日とを容易に比較することができる。したがって、製品処理の進捗状況を容易に把握することができる。
(変形された実施形態)
(1)工場における実際の事情を鑑みると、実績データから算出された工程間リードタイムの分布データには、非定常な事情によって、極端に短い又は長い工程間リードタイムが存在することもあると考えられる。例えば図4、図14の例では、「1〜2」の分布データがゼロであるにも拘らず、「0〜1」の分布データが存在している。例えば図16の例では、「8〜9」の分布データがゼロであるにも拘らず、「9〜10」の分布データが存在している。
そこで、分布データ計算部510は、算出した分布データから、最長の工程間リードタイム及び最短の工程間リードタイムを除去したものを、工程間リードタイムの分布データとしてもよい。
代替的に、分布データ計算部510は、算出した分布データから、図4、図14、図16に示されるように最短側及び最長側で他の区分から孤立した分布データを除去したものを、工程間リードタイムの分布データとしてもよい。
さらに代替的に、分布データ計算部510は、算出した分布データから、最短側及び最長側の予め定められた割合(例えば5%)を一律に除去したものを、工程間リードタイムの分布データとしてもよい。この場合には、図12の例における「8〜9」及び「9〜10」の1%程度の分布データが除去されることとなる。
このように極端なデータを予め除去することによって、非定常な事情による影響を受けることを未然に防止することができる。
(2)上記実施形態では、進捗状況表示画面800では、3行の工程納期と3行の最早到着予想日とが並べて表示されており、進捗状況表示画面810では、工程納期表示画面901と最早到着予想日表示画面902とが並べて表示されているが、ディスプレイ100に表示される進捗状況表示画面は、これらに限られない。
表示制御部560は、例えば、工程納期と最早到着予想日とを1行ずつ並べてディスプレイ100に表示してもよい。表示制御部560は、ディスプレイ100に表示される表示画面を、工程納期表示画面901と最早到着予想日表示画面902とで切り替えるようにしてもよい。表示制御部560は、工程納期表示画面901と最早到着予想日表示画面902とを別のウィンドウとして、ディスプレイ100に重ねて表示してもよい。
表示制御部560は、工程納期と最早到着予想日とを、互いに容易に比較できるような態様でディスプレイ100に表示すればよい。
100 ディスプレイ
510 分布データ計算部
520 仕掛ワーク数計算部
530 工程間リードタイム計算部
540 工程納期計算部
550 最早到着予想日計算部
560 表示制御部

Claims (5)

  1. 予め定められた素材を予め定められた順番で予め定められた複数の工程を通過させて処理することにより製品を生産する工場における製品処理の進捗状況を管理する工程管理装置であって、
    過去の所定期間の実績データにおける対象工程の前工程から前記対象工程までの工程間リードタイムの分布データを算出する分布データ計算部と、
    前記実績データにおける前記対象工程の仕掛ワーク数の推移を算出する仕掛ワーク数計算部と、
    前記対象工程の現在の仕掛ワーク数を取得し、取得した前記現在の仕掛ワーク数と、前記工程間リードタイムの前記分布データと、前記仕掛ワーク数の前記推移と、を用いて、前記対象工程の処理が終了される期限を表す工程納期と、前記素材が前記対象工程に最早で到着すると予想される日時を表す最早到着予想日と、を算出するための計算用工程間リードタイムを前記素材が通過する通過工程ごとに算出する工程間リードタイム計算部と、
    前記計算用工程間リードタイムを前記製品の出荷納期から前記通過工程ごとに逆算することにより、前記通過工程ごとの前記工程納期を算出する工程納期計算部と、
    前記計算用工程間リードタイムを前記対象工程の前記前工程の処理終了日から前記通過工程ごとに順番に加算して、前記通過工程の各々への前記素材の前記最早到着予想日を算出する最早到着予想日計算部と、
    表示部と、
    前記工程納期と前記最早到着予想日とが示されたカレンダーを前記表示部に表示する表示制御部と、
    を備える工程管理装置。
  2. 前記工程間リードタイム計算部は、前記分布データから、前記工程間リードタイムの最長データと、前記工程間リードタイムの最短データとの少なくとも一方を除去して、前記計算用工程間リードタイムを算出する、
    請求項1に記載の工程管理装置。
  3. 前記工程納期計算部は、算出した前記工程納期が、前記工場又は前記通過工程において前記素材を処理する設備の休止期間に含まれる場合には、前記休止期間の直前まで前記工程納期を早める、
    請求項1又は2に記載の工程管理装置。
  4. 前記最早到着予想日計算部は、算出した前記最早到着予想日が、前記工場又は前記通過工程において前記素材を処理する設備の休止期間に含まれる場合には、前記休止期間の直後まで前記最早到着予想日を遅らせる、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の工程管理装置。
  5. 表示部を備え、予め定められた素材を予め定められた順番で予め定められた複数の工程を通過させて処理することにより製品を生産する工場における製品処理の進捗状況を管理する工程管理装置に用いられる工程管理方法であって、
    過去の所定期間の実績データにおける対象工程の前工程から前記対象工程までの工程間リードタイムの分布データを算出する分布データ計算ステップと、
    前記実績データにおける前記対象工程の仕掛ワーク数の推移を算出する仕掛ワーク数計算ステップと、
    前記対象工程の現在の仕掛ワーク数を取得し、取得した前記現在の仕掛ワーク数と、前記工程間リードタイムの前記分布データと、前記仕掛ワーク数の前記推移と、を用いて、前記対象工程の処理が終了される期限を表す工程納期と、前記素材が前記対象工程に最早で到着すると予想される日時を表す最早到着予想日と、を算出するための計算用工程間リードタイムを前記素材が通過する通過工程ごとに算出する工程間リードタイム計算ステップと、
    前記計算用工程間リードタイムを前記製品の出荷納期から前記通過工程ごとに逆算することにより、前記通過工程ごとの前記工程納期を算出する工程納期計算ステップと、
    前記計算用工程間リードタイムを前記対象工程の前記前工程の処理終了日から前記通過工程ごとに順番に加算して、前記通過工程の各々への前記素材の前記最早到着予想日を算出する最早到着予想日計算ステップと、
    前記工程納期と前記最早到着予想日とが示されたカレンダーを表示部に表示する表示制御ステップと、
    を備える工程管理方法。
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