JP6616932B2 - 摺動部品 - Google Patents

Description

本発明は、例えば、メカニカルシール、軸受、その他、摺動部に適した摺動部品に関する。特に、摺動面に流体を介在させて摩擦を低減させるとともに、摺動面から流体が漏洩するのを防止する必要のある密封環または軸受などの摺動部品に関する。

摺動部品の一例である、メカニカルシールにおいて、その性能は、漏れ量、摩耗量、及びトルクによって評価される。従来技術ではメカニカルシールの摺動材質や摺動面粗さを最適化することにより性能を高め、低漏れ、高寿命、低トルクを実現している。しかし、近年の環境問題に対する意識の高まりから、メカニカルシールの更なる性能向上が求められており、従来技術の枠を超える技術開発が必要となっている。
そのような中で、例えば、水冷式エンジンの冷却に用いられるウォーターポンプのメカニカルシールにおいては、時間の経過とともに不凍液の１種であるＬＬＣの添加剤、例えばシリケートやリン酸塩など（以下、「堆積物発生原因物質」という。）が、摺動面で濃縮され、堆積物が生成されメカニカルシールの機能が低下するおそれのあることが本件発明者において確認された。この堆積物の生成は薬品やオイルを扱う機器のメカニカルシールにおいても同様に発生する現象と考えられる。

従来のメカニカルシールにおいては、摺動面の摩擦発熱による摩耗や焼損の発生を防止するために、摺動面に流体層を形成させるべく溝を形成したものが知られている（例えば、特許文献１、２、３参照。）が、これらの発明は摺動面に流体を導入するというものに留まり、摺動面における堆積物の生成を防止するという方策は講じられていない。

特開平７−１８０７７２号公報 特開平７−２２４９４８号公報 米国特許第５４９８００７号明細書

本発明は、密封と潤滑という相反する条件を両立させつつ、摺動面における流体の循環を促進させると共に、摺動面における堆積物発生を防止し、長期間にわたり摺動面の密封機能を維持させることのできる摺動部品を提供することを目的とする。

上記目的を達成するため本発明の摺動部品は、第１に、互いに相対摺動する一対の摺動部品を備え、 一方の摺動部品は固定側密封環であり、他方の摺動部品は回転側密封環であって、前記固定側密封環の摺動面には、入口部及び出口部を介して高圧流体側に連通され、低圧流体側とはランド部により隔離された流体循環溝が設けられ、前記回転側密封環は前記固定側密封環に対して外径が大きく、かつ、内径が小さく形成され、前記回転側密封環の外周には回転軸の回転力を伝達する回転力伝達部材の爪が遊嵌される溝が設けられ、前記溝の周方向の幅は、流体循環溝の入口部と出口部との周方向の長さに比べて小さく、かつ、回転側密封環の溝の内径と固定側密封環の摺動面の内径との間の面幅をＷＭＲとし、固定側密封環の摺動面の面幅をＷＳＲとした場合、０．７５＜ＷＭＲ／ＷＳＲ＜１．４の範囲内に設定されることを特徴としている。
この特徴によれば、流体循環溝の入口部と出口部とにおいて、圧力差が存在し、それが絶えず交互に変動している状態になり、流体循環溝内おける流体は移動を繰り返すため、被密封流体が堆積物発生原因物質を含む場合でも、流体循環溝における堆積物の発生を防止することができ、長期間にわたり摺動面の密封機能を維持させることができる。

また、本発明の摺動部品は、第２に、第１の特徴において、前記溝は、周方向に複数設けられ、これら複数の溝は、いずれかの溝が１つの流体循環溝の入口部に対向する位置にあるとき、他の溝が当該流体循環溝の出口部に対向する位置にないように配設されることを特徴としている。
この特徴によれば、流体循環溝の入口部と出口部との圧力差を大きく、かつ、確実に生じさせることができ、流体循環溝における堆積物の発生を、より一層、防止することができる。

本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
（１）固定側密封環の摺動面には、入口部及び出口部を介して高圧流体側に連通され、低圧流体側とはランド部により隔離された流体循環溝が設けられ、回転側密封環は固定側密封環に対して外径が大きく、かつ、内径が小さく形成され、回転側密封環の外周には回転軸の回転力を伝達する回転力伝達部材の爪が遊嵌される溝が設けられ、溝の周方向の幅は、流体循環溝の入口部と出口部との周方向の長さに比べて小さく、かつ、回転側密封環の溝の内径と固定側密封環の摺動面の内径との間の面幅をＷＭＲとし、固定側密封環の摺動面の面幅をＷＳＲとした場合、０．７５＜ＷＭＲ／ＷＳＲ＜１．４の範囲内に設定されることにより、流体循環溝の入口部と出口部とにおいて、圧力差が存在し、それが絶えず交互に変動している状態になり、流体循環溝内おける流体は移動を繰り返すため、被密封流体が堆積物発生原因物質を含む場合でも、流体循環溝における堆積物の発生を防止することができ、長期間にわたり摺動面の密封機能を維持させることができる。

（２）溝は、周方向に複数設けられ、これら複数の溝は、いずれかの溝が１つの流体循環溝の入口部に対向する位置にあるとき、他の溝が当該流体循環溝の出口部に対向する位置にないように配設されることにより、流体循環溝の入口部と出口部との圧力差を大きく、かつ、確実に生じさせることができ、流体循環溝における堆積物の発生を、より一層、防止することができる。

本発明の実施例１に係るメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。 図１の摺動部品の摺動面をＡ−Ａで断面した図であって、摺動面の特徴を説明するため摺動面に近接した部分で切断している。 図２と同様の図であって、実施例２を示したものである。

以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは、特に明示的な記載がない限り、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。

図１及び図２を参照して、本発明の実施例１に係る摺動部品について説明する。
なお、以下の実施例においては、摺動部品の一例であるメカニカルシールを例にして説明する。また、メカニカルシールを構成する摺動部品の外周側を高圧流体側（被密封流体側）、内周側を低圧流体側（大気側）として説明する。

図１は、メカニカルシールの一例を示す縦断面図であって、摺動面の外周から内周方向に向かって漏れようとする高圧流体側の被密封流体を密封する形式のインサイド形式のものであり、高圧流体側のポンプインペラ（図示省略）を駆動させる回転軸１に固定されるスリーブ２と、ハウジング３に固定されるカートリッジ４とを備え、スリーブ２には一方の摺動部品である円環状の回転側密封環５が設けられ、カートリッジ４には回転側密封環５に対向して摺動し、軸方向移動可能である他方の摺動部品である円環状の固定側密封環６とが設けられ、固定側密封環６を軸方向に付勢するコイルドウェーブスプリング７及びベローズ８によって、ラッピング等によって鏡面仕上げされた摺動面Ｓ同士で密接しゅう動するようになっている。スリーブ２と回転側密封環５との間にはカップガスケット９が設けられている。
すなわち、このメカニカルシールは、回転側密封環５と固定側密封環６との互いの摺動面Ｓにおいて、被密封流体が回転軸１の外周から大気側へ流出するのを防止するものである。

スリーブ２は、回転軸１の回転力を回転側密封環５に伝達する回転力伝達部材として機能するものであり、回転軸１に嵌合される内筒部２ａと、内筒部２ａの高圧流体側から外径方向に延びる円盤部２ｂと、円盤部２ｂの外径側から低圧流体側に延びる外筒部２ｃを有し、略コ字状断面の低圧流体側にカップガスケット９を介して回転側摺動環５を保持する。
カップガスケット９は回転側摺動環５の反摺動面側及び内周面に跨って設けられる。

メカニカルシールにおいては、通常、回転側密封環１及び固定側密封環５の回転中心が厳密に一致していない場合にも対応可能であるように、いずれか一方の摺動面幅を大きく、すなわち、外径を大きく、かつ、内径を小さくして、外径側の摺動面余裕代Ｓｏ及び内径側の摺動面余裕代Ｓｉが形成されている。本発明において、回転側密封環５と固定側密封環６とが、現に摺動している部分を摺動部分Ｓｓと呼び、摺動面余裕代を含む場合は摺動面Ｓと呼ぶことにする。
図１においては、回転側密封環５の外径が固定側密封環６の外径より大きく、また、回転側密封環５の内径が固定側密封環６の内径より小さく、外径側の摺動面余裕代Ｓｏ及び内径側の摺動面余裕代Ｓｉが回転側密封環５に形成されている。
図１の場合、固定側密封環６の摺動部分Ｓｓと摺動面Ｓとの外径及び内径は一致している。

回転側密封環５及び固定側密封環６の材質は、耐摩耗性に優れた炭化ケイ素（ＳｉＣ）及び自己潤滑性に優れたカーボンなどから選定されるが、例えば、両者がＳｉＣ、あるいは、回転側密封環５がＳｉＣであって固定側密封環６がカーボンの組合せが可能である。

図２は、図１のＡ−Ａ断面図であり、固定側密封環６の摺動部分Ｓｓがハッチングで示され、また、同摺動面に形成された表面テクスチャとしての凹部（溝）が白抜きで示されている。表面テクスチャとしての凹部（溝）については、後に詳しく説明する。
図２において、摺動面Ｓの外径側が高圧流体側であり、また、内径側が低圧流体側、例えば大気側であり、回転側密封環５は反時計方向に回転するものとする。

図２に示すように、スリーブ２の外筒部２ｃは、周方向において断続的に部分的に設けられており、本例では周方向に一定幅を有する爪状をなし、周方向に４等配で設けられている。また、外筒部２ｃの軸方向の先端は、回転側密封環５の摺動面Ｓの手前まで延びている。
なお、本発明においては、爪状の外筒部２ｃを爪と呼ぶことがある。
一方、回転側密封環５の外周には、爪２ｃが遊嵌される溝１５が周方向に４等配で設けられ、溝１５内に爪２ｃが遊嵌されるようになっている。
爪２ｃ及び溝１５は、４等配に限らず、１以上あればよく、また、等配に限らない。
爪２ｃが溝１５内に遊嵌されることにより、回転軸１の回転力は回転側密封環５に確実に伝達される。

図２において、固定側密封環６の摺動面Ｓはハッチングで示した部分であり、この面幅をＷＳＲとする。これに対して、回転側密封環５の摺動面Ｓは外径側に摺動面余裕代Ｓｏが、内径側に摺動面余裕代Ｓｉが設けられており、また、回転側密封環５の溝１５の底部１５ａの径（本発明において、「溝の内径」ということがある。）１５ａは固定側密封環６の摺動面の外径６ａよりも大きい場合を示している。
回転側密封環５の外周に溝１５が設けられ、溝１５の内径が固定側密封環６の摺動面の外径６ａに対して大きく設定される場合、回転側密封環５の溝の内径１５ａと固定側密封環６の摺動面Ｓの内径６ｂとの間の面幅をＷＭＲとすると、ＷＭＲ／ＷＳＲは、１．４以下に設定される。好ましくは、ＷＭＲ／ＷＳＲは、１．２以下に設定される。より好ましくは、ＷＭＲ／ＷＳＲは、１．１以下に設定される。
この理由については、後に詳しく説明する。

図２において、固定側密封環６の摺動面Ｓには、高圧流体側に連通されると共に低圧流体側とは摺動面の平滑部Ｒ（本発明においては、「ランド部」ということがある。）により隔離された流体循環溝１０が周方向に４等配で設けられている。この流体循環溝１０が前記した表面テクスチャとしての凹部（溝）である。
なお、流体循環溝１０は４個に限らず、少なくとも１個設けられればよく、また、等配である必要もない。

流体循環溝１０は、高圧流体側から入る入口部１０ａ、高圧流体側に抜ける出口部１０ｂ、及び、入口部１０ａ及び出口部１０ｂとを周方向に連通する連通部１０ｃから構成されている。流体循環溝１０は、摺動部分Ｓｓにおいて腐食生成物などを含む流体が濃縮されることを防止するため、積極的に高圧流体側から被密封流体を摺動部分に導入し排出するという役割を担うものであり、相手摺動面の回転に合わせて摺動部分に被密封流体を取り入れ、かつ、排出しやすいように入口部１０ａ及び出口部１０ｂが図示のように広口に形成される一方、漏れを低減するため、低圧流体側とはランド部Ｒにより隔離されている。

本例では、入口部１０ａ及び出口部１０ｂは直線状に形成され、略Ｖ字状をなしているが、特にこれに限定されるものではなく、入口部１０ａと出口部１０ｂとなす内角αをさらに大きく、又は、小さくしてもよく、また、直線状ではなく曲線状（円弧状など）にしてもよい。また、流体循環溝１０の幅及び深さは、被密封流体の圧力、種類（粘性）などに応じて最適なものに設定される。深さの一例をあげると、１００〜３００μｍ程度である。

流体循環溝１０は、略Ｖ字状に限らず、例えば、Ｕ字状でもよく、要は、入口部及び出口部が高圧流体側に連通されたものであればよい。

上記したように、回転側密封環５の外周に溝１５が設けられ、溝１５の内径が固定側密封環６の摺動面の外径６ａに対して大きく設定される場合、回転側密封環５の溝の内径１５ａと固定側密封環６の摺動面Ｓの内径６ｂとの間の面幅をＷＭＲとし、固定側密封環６の摺動面Ｓの面幅をＷＳＲとした場合、ＷＭＲ／ＷＳＲは１．４以下に設定されるため、溝１５は流体循環溝１０の流体に対して圧力変動を生起させる干渉溝として機能する。すなわち、溝１５は、高圧流体側に連通され、径方向において摺動面余裕代Ｓｏから流体循環溝１０の入口部１０ａ及び出口部１０ｂに近接して設けられているため、流体循環溝１０の入口部１０ａ及び出口部１０ｂの流体に対して圧力変動を生起させるものである。

このように、溝１５は、回転軸１の回転力を回転側密封環５に確実に伝達する役割を担うと共に、摺動部分Ｓｓにおいて腐食生成物などを含む流体が濃縮されることを防止する流体循環溝１０の流体に対して圧力変動を生起させ、流体循環溝１０内における堆積物の発生を防止する効果を奏するものである。

溝１５の形状は、図２においては略矩形状のものが示されているが、これに限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形、菱形などもよく、要は、高圧流体側に連通され、内径側の底部１５ａが流体循環溝１０の入口部１０ａ及び出口部１０ｂに径方向において近接する位置に設定されていればよい。

図２において、溝１５は、周方向に４等配で設けられているが、これら複数の溝１５のそれぞれの周方向の幅は、流体循環溝１０の入口部１０ａと出口部１０ｂとの周方向の長さに比べて小さく設定されているため、１つの溝１５が流体循環溝１０の入口部１０ａ及び出口部１０ｂと同時に対向することはない。
また、図２の場合、流体循環溝１０は４等配で設けられ、流体循環溝１０の入口部１０ａと出口部１０ｂとのなす中心角θ１は約４５°であるのに対し、隣接する溝１５のなす中心角θは９０°であるから、回転側密封環５が回動して、いずれかの溝１５が１つの流体循環溝１０の入口部１０ａに対向する位置にあるとき、他の溝１０は流体循環溝１０の出口部１０ｂに対向する位置にはない。

回転側密封環５が回動されると、溝１５の付近において渦が生成され、渦を伴った溝１５が周方向に移動する。
いま、溝１５の１つが、ある流体循環溝１０の入口部１０ａに対向する位置に達すると、入口部１０ａ内の流体の圧力が上昇する。この際、出口部１０ｂに対向する位置には他の干渉溝１５がないように設定されているため、該出口部１０ｂ内の流体の圧力上昇はなく、入口部１０ａの圧力＞出口部１０ｂ、の圧力の状態になる。
次に、該溝１５が、その流体循環溝１０の出口部１０ｂに対向する位置に達すると、出口部１０ｂ内の流体の圧力が上昇する。この際、入口部１０ａに対向する位置には他の溝１５がないように設定されているため、該入口部１０ｂ内の流体の圧力上昇はなく、入口部１０ａの圧力＜出口部１０ｂの圧力、の状態になる。
すなわち、１つの流体循環溝１０に着目すると、溝１５の作用により、入口部１０ａと出口部１０ｂとの圧力差が存在し、それが絶えず交互に変動している状態になる。

入口部１０ａと出口部１０ｂとにおいて、圧力差が存在し、それが絶えず交互に変動している状態になると、流体循環溝１０内おける流体は移動を繰り返すため、たとえ、被密封流体が堆積物発生原因物質を含む場合でも、流体循環溝１０内における堆積物の発生は防止されることになる。

実施例１においては、以下のような顕著な効果を奏する。
（１）固定側密封環６の摺動面には、入口部１０ａ及び出口部１０ｂを介して高圧流体側に連通され、低圧流体側とはランド部Ｒにより隔離された流体循環溝１０が設けられ、回転側密封環５は固定側密封環６に対して外径が大きく、かつ、内径が小さく形成され、回転側密封環５の外周には回転軸の回転力を伝達する回転力伝達部材の爪２ｃが遊嵌される溝１５が設けられ、溝１５の周方向の幅は、流体循環溝の入口部ａと出口部との周方向の長さに比べて小さく、かつ、回転側密封環５の溝の内径１５ａと固定側密封環６の摺動面Ｓの内径６ｂとの間の面幅をＷＭＲとし、固定側密封環６の摺動面Ｓの面幅をＷＳＲとした場合、ＷＭＲ／ＷＳＲは１．４以下に設定されているため、流体循環溝１０の入口部１０ａと出口部１０ｂとにおいて、圧力差が存在し、それが絶えず交互に変動している状態になり、流体循環溝１０内おける流体は移動を繰り返すため、被密封流体が堆積物発生原因物質を含む場合でも、流体循環溝１０における堆積物の発生を防止することができ、長期間にわたり摺動面の密封機能を維持させることができる。
（２）溝１５は、周方向に複数設けられ、これら複数の溝１５は、いずれかの溝１５が流体循環溝１０の入口部１０ａに対向する位置にあるとき、他の溝１５が流体循環溝１０の出口部１０ｂに対向する位置にないように配設されるため、流体循環溝１０の入口部１０ａと出口部１０ｂとの圧力差を大きく、かつ、確実に生じさせることができ、流体循環溝１０における堆積物の発生を、より一層、防止することができる。

図３を参照して、本発明の実施例２に係る摺動部品について説明する。
実施例２は、溝１５の内径が、固定側密封環６の摺動面の外径６ａより小さく設定される点で実施例１と相違するが、その他の基本的な事項は実施例１と同じである。
なお、図３において、図２と同じ符号は同じ部材を示しており、重複する説明は省略する。

図３において、回転側密封環５の外周に設けられる溝１５の底部１５ａの径、すなわち、溝１５の内径は固定側密封環６の摺動面の外径６ａより小さく設定されている。回転側密封環５の溝の内径１５ａと固定側密封環６の摺動面Ｓの内径６ｂとの間の面幅をＷＭＲとし、固定側密封環６の摺動面Ｓの面幅をＷＳＲとした場合、ＷＭＲ／ＷＳＲは、０．７５以上に設定される。好ましくは、ＷＭＲ／ＷＳＲは、０．８５以上に設定される。より好ましくは、ＷＭＲ／ＷＳＲは、０．９５以上に設定される。

このように、回転側密封環５の外周に溝１５が設けられ、溝１５の内径が固定側密封環６の摺動面の外径６ａに対して小さく設定される場合、回転側密封環５の溝の内径１５ａと固定側密封環６の摺動面Ｓの内径６ｂとの間の面幅をＷＭＲとし、固定側密封環６の摺動面Ｓの面幅をＷＳＲとした場合、ＷＭＲ／ＷＳＲは、０．７５以上に設定されるため、溝１５は流体循環溝１０の流体に対して、より一層、圧力変動を生起させる干渉溝として機能する。すなわち、溝１５は、高圧流体側に連通され、径方向において摺動面余裕代Ｓｏから摺動部分Ｓｓまで延び、流体循環溝１０の入口部１０ａ及び出口部１０ｂに重複して設けられているため、流体循環溝１０の入口部１０ａ及び出口部１０ｂの流体に対してより一層の圧力変動を生起させるものである。

このように、溝１５は、回転軸１の回転力を回転側密封環５に確実に伝達する役割を担うと共に、摺動部分Ｓｓにおいて腐食生成物などを含む流体が濃縮されることを防止する流体循環溝１０の流体に対してよい一層の圧力変動を生起させ、流体循環溝１０内における堆積物の発生を防止する効果を奏するものである。

以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。

例えば、前記実施例では、摺動部品をメカニカルシール装置における一対の回転用密封環及び固定用密封環のいずれかに用いる例について説明したが、円筒状摺動面の軸方向一方側に潤滑油を密封しながら回転軸と摺動する軸受の摺動部品として利用することも可能である。

また、例えば、前記実施例では、摺動部品を構成するメカニカルシールの固定側密封環に流体循環溝を設け、回転側密封環の外周に溝を設ける場合について説明したが、これとは逆に、回転側密封環に流体循環溝、固定側密封環に溝を設けてもよい。この場合、固定側密封環に摺動面余裕代が設けられる。

また、例えば、前記実施例１及び２では、全ての溝の内径が固定側密封環の摺動面の外径に対して大きい場合及び小さい場合について説明したが、これらに限らず、溝を周方向に複数設け、これらの形態をミックスさせてもよい。

また、例えば、前記実施例１及び２では、メカニカルシールを構成する摺動部品の外周側が高圧流体側（被密封流体側）、内周側が低圧流体側（大気側）であるインサイド形シールについて説明したが、これらに限らず、アウトサイド形シールにも適用できる。

また、例えば、図２及び図３では、爪２ｃが溝１５の周方向の中央に位置している場合を示しているが、これに限定されることなく、爪２ｃは溝１５の周方向のいずれか一方の端部側に寄せて配設されてもよい。

１ 回転軸
２ スリーブ
２ａ 内筒部
２ｂ 円盤部
２ｃ 外筒部
３ ハウジング
４ カートリッジ
５ 回転側密封環
６ 固定側密封環ハウジング
７ コイルドウェーブスプリング
８ ベローズ
９ カップガスケット
１０ 流体循環溝
１０ａ 入口部
１０ｂ 出口部
１０ｃ 連通部
１５ 溝
１５ａ 溝の底部
Ｒ ランド部
Ｓ 摺動面
Ｓｓ 摺動部分
Ｓｏ 外径側の摺動面余裕代
Ｓｉ 内径側の摺動面余裕代

Claims (2)

1. 互いに相対摺動する一対の摺動部品を備え、 一方の摺動部品は固定側密封環であり、他方の摺動部品は回転側密封環であって、前記固定側密封環の摺動面には、入口部及び出口部を介して高圧流体側に連通され、低圧流体側とはランド部により隔離された流体循環溝が設けられ、前記回転側密封環は前記固定側密封環に対して外径が大きく、かつ、内径が小さく形成され、前記回転側密封環の外周には回転軸の回転力を伝達する回転力伝達部材の爪が遊嵌される溝が設けられ、前記溝の周方向の幅は、流体循環溝の入口部と出口部との周方向の長さに比べて小さく、かつ、回転側密封環の溝の内径と固定側密封環の摺動面の内径との間の面幅をＷＭＲとし、固定側密封環の摺動面の面幅をＷＳＲとした場合、０．７５＜ＷＭＲ／ＷＳＲ＜１．４の範囲内に設定されることを特徴とする摺動部品。
2. 前記溝は、周方向に複数設けられ、これら複数の溝は、いずれかの溝が１つの流体循環溝の入口部に対向する位置にあるとき、他の溝が当該流体循環溝の出口部に対向する位置にないように配設されることを特徴とする請求項１に記載の摺動部品。
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   

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