JP6309014B2 - 摺動部品 - Google Patents
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Description
そのような中で、例えば、水冷式エンジンの冷却に用いられるウォーターポンプのメカニカルシールにおいては、時間の経過とともに不凍液の1種であるLLCの添加剤、例えばシリケートやリン酸塩など(以下、「堆積物発生原因物質」という。)が、摺動面で濃縮され、堆積物が生成されメカニカルシールの機能が低下するおそれのあることが本件発明者において確認された。この堆積物の生成は薬品やオイルを扱う機器のメカニカルシールにおいても同様に発生する現象と考えられる。
図5において、一方の摺動部品50は、摺動面Sが紙面の上方に向けて示されており、相手側摺動部品60の摺動面は紙面の下方に向けて示されている。相手側摺動部品60の摺動面は矢印で示すように反時計回りに回動するものとする。
流体導入溝51は、入口部52、出口部53及び連通部54より構成されており、摺動面Sの平面視において、流体導入溝51の幅は一定であり、かつ、入口部52の入口端部52a及び出口部53の出口端部53aは、円環状の摺動面側壁55のそれぞれの接線に対して一定の角度を有して直線的に交差している。
相手側摺動部品との相対摺動により流体導入溝51の入口部52から導入された流体は、出口部53から排出されるが、出口端部53aの近傍の摺動面側壁55側において流れのよどみ点が形成される。このため、排出された流体56は、点線(太線)で示すように、摺動面側壁55に付着するようにして周回し、下流側の次の流体導入溝の入口部から流体導入溝内に入るという挙動を繰り返す。このような挙動を繰り返すうち、流体は次第に濃縮され、やがて糊状になり、流体導入溝内に付着して堆積するようになる。この結果、流体導入溝内への新たな流体の進入が阻害され、摺動面Sの潤滑ができなくなる。
なお、入口部52には点線で示す再導入される流体56の他に実線(細線)で示す新たな流体57も導入される。本解析結果によれば、この新たな流体57は、主として、摺動面側壁55に沿って摺動面Sに略直交する方向(軸方向)から導入されていることが判明した。
この特徴によれば、流体循環溝の出口側部の出口端近傍においてよどみは形成されず、被密封流体は、遠心力を受けながら、出口端近傍から下流側に向けて流線形状の一様な流れとなって流れるため、被密封流体は摺動面Sの外周側の側壁に付着することなく、側壁から離れて下流側に移動し、上流側の流体循環溝から排出された被密封流体の流れは、下流側の流体循環溝の入口端から径方向に離れた位置を周回し、下流側の流体循環溝に、再度、流入することはない。
このため、従来技術のように、上流側の流体循環溝から排出された被密封流体が、再度、下流側の流体循環溝に流入され、これを繰り返すことで、被密封流体が次第に濃縮され、やがて糊状になり、流体循環溝内に付着して堆積するという現象は発生しない。この結果、流体循環溝は、常に、清浄な状態に保たれ、摺動面の潤滑を良好な状態に維持することができる。
この特徴によれば、流体循環溝の入口側部の入口端近傍において流れのよどみが形成されることなく、一様な流れとして入口側部に効率よく流入される。
また、本発明の摺動部品は、第4に、第1の特徴において、前記流体循環溝は、前記入口側部の溝の両側壁が、前記摺動面の平面視において、入口端に向けて流線形状に拡張されていることを特徴としている。
これらの特徴によれば、流体循環溝の出口側部の出口端近傍及び入口側部の入口端近傍における、よどみの形成が一層防止されるとともに、流線形状の一様な流れを一層促進させることができる。
この特徴によれば、出口側部及び入口側部の溝の両側壁の流線形状を容易に形成することができる。
この特徴によれば、被密封流体の出口端近傍から下流側に向けて流線形状の一様な流れ、及び、入口端近傍からの新たな被密封流体の流入が、一層、促進される。
この特徴によれば、溝内を流れる流体のよどみの形成が一層防止されるとともに、一様な流れを一層促進させることができる。
この特徴によれば、摺動面全体にわたって潤滑を良好な状態に維持することができる。
この特徴によれば、入口側部への被密封流体の流入及び出口側部からの被密封流体の排出を容易に行うことができる。
(1)流体循環溝は、前記出口側部の溝幅が出口端に向けて徐々に拡張されていることにより、流体循環溝の出口側部の出口端近傍においてよどみは形成されず、被密封流体は、遠心力を受けながら、出口端近傍から下流側に向けて流線形状の一様な流れとなって流れるため、被密封流体は摺動面Sの外周側の側壁に付着することなく、側壁から離れて下流側に移動し、上流側の流体循環溝から排出された被密封流体の流れは、下流側の流体循環溝の入口端から径方向に離れた位置を周回し、下流側の流体循環溝に、再度、流入することはない。
このため、従来技術のように、上流側の流体循環溝から排出された被密封流体が、再度、下流側の流体循環溝に流入され、これを繰り返すことで、被密封流体が次第に濃縮され、やがて糊状になり、流体循環溝内に付着して堆積するという現象は発生しない。この結果、流体循環溝は、常に、清浄な状態に保たれ、摺動面の潤滑を良好な状態に維持することができる。
なお、以下の実施例においては、摺動部品の一例であるメカニカルシールを例にして説明する。また、メカニカルシールを構成する摺動部品の外周側を高圧流体側(被密封流体側)、内周側を低圧流体側(大気側)として説明するが、本発明はこれに限定されることなく、高圧流体側と低圧流体側とが逆の場合も適用可能である。
なお、図1では、回転環3の摺動面の幅が固定環5の摺動面の幅より広い場合を示しているが、これに限定されることなく、逆の場合においても本発明を適用出来ることはもちろんである。
なお、回転環3の摺動面に流体循環溝が形成される場合も基本的には同様であるが、その場合、流体循環溝は被密封流体側に連通すればよいため、摺動面の外周側まで設けられる必要はない。
固定環5の摺動面には、高圧流体側に連通されると共に低圧流体側とは摺動面Sの平滑部R(本発明においては、「ランド部」ということがある。)により隔離された流体循環溝10が周方向に等配で4個設けられている。
流体循環溝10は、摺動面Sにおいて腐食生成物などを含む流体が濃縮されることを防止するため、積極的に高圧流体側から被密封流体を摺動面上に導入し排出するという役割を担うものであり、相手摺動面の回転方向に合わせて摺動面上に被密封流体を取り入れ、かつ、排出しやすいように入口側部11及び出口側部12が形成される一方、漏れを低減するため、低圧流体側とはランド部Rにより隔離されている。
なお、流体循環溝10の平面視における形状において、半径線rを基準にして必ずしも左右対称の形状である必要はなく、入口側部11の交角α1を出口側部12の交角α2より大きくしてもよく、また、その逆であってもよい。
本明細書において、左右略対称という場合、α1=α2±5゜の範囲を意味する。
さらに、流体循環溝10の平面視における形状において、直線部分のない、全体として曲線状(円弧状など)にしてもよい。
また、流体循環溝10の幅及び深さは、被密封流体の圧力、種類(粘性)などに応じて最適なものに設定されればよい。
本例においては、出口側部12の溝幅の出口端12cに向けての拡張は、溝の両側壁12a、12aが、摺動面Sの平面視において、出口端12cに向けて流線形状に拡張されることにより行われている。
また、流線形状は、出口側部12の溝の両側壁12a、12aの延長線と接する円弧R3、R4により生成されている。下流側の側壁の延長線と接する円弧R3は、上流側の側壁の延長線と接する円弧R4より大きい。
出口側部12の溝幅が出口端12cに向けて徐々に拡張されていることが、本発明の第一の特徴部分であり、その技術的意義については後に詳述する。
具体的には、出口端12cの近傍の断面図である図3(c)に示すように、拡張された部分の底壁12bは、半径R1より大きい、すなわち、拡張された両側壁12a、12aを結ぶことのできる半径R5の円弧形状に形成されている。
入口側部11の溝の平面形状は、摺動面Sの半径線rを基準にして出口側部12の溝と略対称の形状に形成され、また、溝の断面形状については出口側部12の溝と同じである。
図3(a)に示すように、入口側部11の溝幅は入口端11cに向けて徐々に拡張されている。
本例においては、入口側部11の溝幅の入口端11cに向けての拡張は、溝の両側壁11a、11aが、摺動面Sの平面視において、入口端11cに向けて流線形状に拡張されることにより行われている。
また、流線形状は、入口側部11の溝の両側壁11a、11aの延長線と接する円弧R3、R4により生成されている。上流側の側壁の延長線と接する円弧R3は、下流側の側壁の延長線と接する円弧R4より大きい。
入口側部11の溝幅が入口端11cに向けて徐々に拡張されているが、本発明の第二の特徴部分であり、その技術的意義については後に詳述する。
具体的には、入口端11cの近傍の断面図である図3(c)に示すように、拡張された部分の底壁11bは、半径R1より大きい、すなわち、拡張された両側壁11a、11aを結ぶことのできる半径R5の円弧形状に形成されている。
また、出口側部12の溝の底壁12bは、図3(d)に示すように、端部12cに向けて流線形状に深くなるように形成され、固定環5の摺動面Sの外周側の側壁13に滑らかに接続された形状に形成されているため、被密封流体の出口端12c近傍から下流側に向けて流線形状の一様な流れ15が、一層、促進される。
今、上流側の流体循環溝10から排出された被密封流体の流れ16は、下流側の流体循環溝10の入口端11aから径方向に離れた位置を周回し、下流側の流体循環溝10に、再度、流入することはない。これは、上流側の流体循環溝10から排出された被密封流体が摺動面Sの外周側の側壁13に付着することなく、側壁13から離れて下流側に移動するためである。
このため、従来技術のように、上流側の流体循環溝から排出された被密封流体が、再度、下流側の流体循環溝に流入され、これを繰り返すことで、被密封流体が次第に濃縮され、やがて糊状になり、流体循環溝内に付着して堆積するという現象は発生しない。この結果、流体循環溝10は、常に、清浄な状態に保たれ、摺動面Sの潤滑を良好な状態に維持することができる。
本例では、入口側部11の溝の底壁11bは、図3(e)に示すように、端部11cに向けて流線形状に深くなるように形成され、固定環5の摺動面Sの外周側の側壁13に滑らかに接続された形状に形成されているため、流体循環溝10に対する新たな被密封流体の流入が、一層、促進される。
具体的には、以下のとおりである。
(1)出口側部12の溝幅が出口端12cに向けて徐々に拡張されているため、出口端12c近傍においてよどみは形成されず、被密封流体は、遠心力を受けながら、出口端12c近傍から下流側に向けて流線形状の一様な流れ15となって流れる。そのため、被密封流体は摺動面Sの外周側の側壁13に付着することなく、側壁13から離れて下流側に移動する。上流側の流体循環溝10から排出された被密封流体の流れ16は、下流側の流体循環溝10の入口端11aから径方向に離れた位置を周回し、下流側の流体循環溝10に、再度、流入することはない。
このため、従来技術のように、上流側の流体循環溝から排出された被密封流体が、再度、下流側の流体循環溝に流入され、これを繰り返すことで、被密封流体が次第に濃縮され、やがて糊状になり、流体循環溝内に付着して堆積するという現象は発生しない。この結果、流体循環溝10は、常に、清浄な状態に保たれ、摺動面Sの潤滑を良好な状態に維持することができる。
(2)入口側部11の溝幅が入口端11cに向けて徐々に拡張されているため、入口端11c近傍において流れのよどみが形成されることなく、一様な流れ17として入口側部11に効率よく流入される。
(3)出口側部12の溝の底壁12bが、端部12cに向けて流線形状に深くなるように形成され、固定環5の摺動面Sの外周側の側壁13に滑らかに接続された形状に形成されているため、被密封流体の出口端12c近傍から下流側に向けて流線形状の一様な流れ15が、一層、促進される。
(4)入口側部11の溝の底壁11bが、端部11cに向けて流線形状に深くなるように形成され、固定環5の摺動面Sの外周側の側壁13に滑らかに接続された形状に形成されているため、流体循環溝10に対する新たな被密封流体の流入が、一層、促進される。 (5)流体循環溝10の底壁11b(12b)の溝の長手方向と直交する断面が、両側壁11a(12a)、11a(12a)に繋がる単一の円弧でもって形成された円弧形状に形成されていることにより、溝内を流れる流体のよどみの形成が一層防止されるとともに、一様な流れが一層促進される。
(6)流体循環溝10が摺動面の周方向にランド部Rで隔離されて等配に複数設けられることにより、摺動面全体にわたって潤滑を良好な状態に維持することができる。
(7)摺動面Sが円環状である場合において、それぞれの流体循環溝10は、摺動面Sの平面視において、摺動面Sの半径線を基準にして略対称の形状に形成され、流体循環溝10の左右の部分のなす高圧流体側における交角が120°〜180°の範囲に設定されることにより、入口側部への被密封流体の流入及び出口側部からの被密封流体の排出を容易に行うことができる。
2 スリーブ
3 回転環
4 ハウジング
5 固定環
6 コイルドウェーブスプリング
7 ベローズ
10 流体循環溝
11 入口側部
12 出口側部
13 側壁
15 出口端近傍の一様な流れ
16 流体循環溝から排出された被密封流体の流れ
17 入口端近傍の一様な流れ
R ランド部
S 摺動面
Claims (9)
- 一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面には、流体が高圧流体側から入る入口側部及び高圧流体側に抜ける出口側部から構成される流体循環溝が設けられ、前記流体循環溝は低圧流体側とはランド部により隔離されており、前記出口側部及び前記入口側部の溝の両側壁は、前記摺動面の平面視において、前記出口側部及び前記入口側部のそれぞれの溝の両側壁の延長線と接する円弧により生成されることを特徴とする摺動部品。
- 前記流体循環溝は、前記出口側部の溝幅が出口端に向けて徐々に拡張された前記円弧により生成されることを特徴とする請求項1に記載の摺動部品。
- 前記流体循環溝は、前記入口側部の溝幅が入口端に向けて徐々に拡張された前記円弧により生成されることを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部品。
- 前記流体循環溝は、前記出口側部の溝の両側壁が、前記摺動面の平面視において、出口端に向けて流線形状に拡張された前記円弧により生成されることを特徴とする請求項2に記載の摺動部品。
- 前記流体循環溝は、前記入口側部の溝の両側壁が、前記摺動面の平面視において、入口端に向けて流線形状に拡張された前記円弧により生成されることを特徴とする請求項3に記載の摺動部品。
- 前記出口側部又は前記入口側部の溝の底壁は、それぞれの溝の端部に向けて流線形状に深くなるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の摺動部品。
- 前記出口側部及び前記入口側部の溝の底壁の長手方向と直交する断面は、溝の両側壁に繋がる単一の円弧でもって形成された円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の摺動部品。
- 前記流体循環溝が摺動面の周方向にランド部で隔離されて等配に複数設けられることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の摺動部品。
- 前記摺動面が円環状である場合において、それぞれの前記流体循環溝は、前記摺動面の平面視において、前記摺動面の半径線を基準にして略対称の形状に形成され、前記流体循環溝の左右の部分のなす高圧流体側における交角が120°〜180°の範囲に設定されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の摺動部品。
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