以下、添付の図面を参照して本発明に係る情報処理システムの実施の形態を説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
(実施形態1)
実施形態1では、図1〜図3を参照して、船舶10が航行可能な範囲に関する案内表示を行う情報処理システム1について説明する。
本実施形態に係る情報処理システム1は、図1に示すように、モバイル端末2と、サーバ装置3と、船舶10の操縦支援装置11と、を備える。以下では、情報処理システム1を本システム1ともいう。本システム1では、船舶10の搭乗者がモバイル端末2を所持することを想定している。モバイル端末2とサーバ装置3とは、インターネット等のネットワーク15を介して情報通信を行う。モバイル端末2は、操縦支援装置11等の船舶10中の通信機器とも情報通信を行うことができるように構成されている。
本システム1は、モバイル端末2を介して、船舶10の航行に関する情報を取得し、取得された情報をサーバ装置3に蓄積する。本システム1は、サーバ装置3に蓄積された情報を分析することにより、例えば、船舶10が航行した実績があり、航行可能と考えられる航路を示す航路情報を生成する。航路情報は、サーバ装置3によって管理され、モバイル端末2にダウンロードして表示できる。
操縦支援装置11は、船舶10の操縦を支援するための情報処理装置の一例である。操縦支援装置11は、船舶10に備え付けられる。操縦支援装置11は、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を行う通信部、若しくは各種情報を表示する表示部を含む。操縦支援装置11は、通信部を介してモバイル端末2に通信接続し、船舶10に関する情報をモバイル端末2に送信したり、モバイル端末2から航路情報等を受信したりする。
以下、本実施形態におけるモバイル端末2とサーバ装置3の構成をそれぞれ説明する。
(モバイル端末2)
情報処理システム1におけるモバイル端末2の構成について、図2を参照して説明する。
モバイル端末2は、本実施形態における情報処理装置の一例である。モバイル端末2は、例えばスマートフォンであり、タブレット端末、携帯電話、ノートPC(Personal Computer)等の種々の情報処理装置であってもよい。モバイル端末2は、図2に示すように、端末制御部20と、端末記憶部21と、ネットワーク通信部22と、機器通信部23と、入力部24と、表示部25と、位置情報取得部26と、を備える。
端末制御部20は、例えば、ソフトウェアと協働して所定の機能を実現するCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を含む。端末制御部20は、モバイル端末2の動作を制御する。端末制御部20は、端末記憶部21に格納されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行い、所定の機能を実現する。端末制御部20は、計時機能等の各種機能を有してもよい。端末制御部20によって実行されるプログラムは、ネットワーク15等から提供されてもよいし、可搬性を有する記録媒体に格納されていてもよい。
なお、端末制御部20は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路、若しくは再構成可能な電子回路等のハードウェア回路で構成されてもよい。サーバ制御部30は、種々の半導体集積回路で構成されてもよい。種々の半導体集積回路としではCPU、MPU、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が挙げられる。以下、マイクロコンピュータをマイコンとも称する。
端末記憶部21は、モバイル端末2の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを記憶する記憶媒体である。端末記憶部21は、例えばフラッシュメモリを含む。端末記憶部21は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等を含む。端末記憶部21は、各種情報を一時的に記憶してもよい。端末記憶部21は、端末制御部20の作業エリアとして機能するように構成されもよい。
ネットワーク通信部22は、無線、又は有線の通信回線を介して、モバイル端末2をネットワーク15に接続するためのモジュールである。ネットワーク通信部22は、所定の通信規格にしたがい通信を行う通信部の一例である。所定の通信規格には、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.3,IEEE802.11a/11b/11g/11ac等の通信規格が含まれる。
機器通信部23は、操縦支援装置11等の外部機器にモバイル端末2を通信接続するためのモジュールである。機器通信部23は、所定の通信規格にしたがい通信を行う通信部の一例である。所定の通信規格には、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)、IEEE1395、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等が含まれる。機器通信部23は、本実施形態における取得部の一例である。
入力部24は、ユーザによる種々の操作を入力するユーザインタフェースである。本実施形態において、入力部24は、表示部25と共にタッチパネルを構成する。入力部24はタッチパネルに限らず、キーボード、ボタン、スイッチ、及びこれらの組み合わせであってもよい。入力部24は、本実施形態における取得部の一例である。
表示部25は、例えば、液晶ディスプレイ若しくは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイで構成される。表示部25は、例えば航路情報等の種々の情報を表示する。
位置情報取得部26は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信して、受信した地点の緯度及び経度を測位するGPSモジュールである。位置情報取得部26は、GPSモジュールだけでなく、例えば、ジャイロセンサと加速度センサと船舶10の推進から位置を推定する構成でも良い。位置情報取得部26は、受信した地点の緯度及び経度に加え、高度を測位するように構成されてもよい。以下では、GPS衛星からの電波に含まれる情報を、GPS情報とも称する。位置情報取得部26は、測位した緯度等の現在地を示す位置情報を検出する現在地検出部の一例である。
(サーバ装置3)
以下、情報処理システム1におけるサーバ装置3の構成について、図3を参照して説明する。
サーバ装置3は、本実施形態における情報管理装置の一例である。サーバ装置3は、図3に示すように、サーバ制御部30と、サーバ記憶部31と、サーバ通信部32と、を備える。
サーバ制御部30は、例えば、ソフトウェアと協働して所定の機能を実現するCPU、若しくはGPU(Graphics Processing Unit)を含んで構成される。サーバ制御部30は、サーバ装置3の動作を制御する。サーバ制御部30は、サーバ記憶部31に格納されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行い、所定の機能を実現する。サーバ制御部30は、計時機能等の各種機能を有してもよい。サーバ制御部30によって実行されるプログラムは、ネットワーク15等から提供されてもよいし、可搬性を有する記録媒体に格納されていてもよい。
なお、サーバ制御部30は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路、若しくは再構成可能な電子回路等のハードウェア回路で構成されてもよい。サーバ制御部30は、CPU、GPU、TPU、MPU、マイコン、DSP、FPGA、ASIC等の種々の半導体集積回路で構成されてもよい。
サーバ記憶部31は、サーバ装置3の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを記憶する記憶媒体である。サーバ記憶部31は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、若しくはSSD(Solid State Drive)を含んで構成される。また、サーバ記憶部31は、例えばDRAM、若しくはSRAMを含んで構成されてもよい。サーバ記憶部31は、例えば、サーバ制御部30の作業エリアとして機能するように構成されてもよい。
サーバ記憶部31は、例えば、案内航路データベース41、及び潮流情報データベース42を記憶する。以下では、「データベース」を「DB」と略記する場合がある。
案内航路DB41は、モバイル端末2等に案内する航路情報を管理するデータベースである。案内航路DB41は、例えば、出発地および目的地に関連付けて複数の航路情報を管理する。案内航路DB41に記録された各航路情報は、例えば、関連付けされた出発地及び目的地間を航行可能な航路を示す。案内航路DB41における航路情報は、例えば、特定の潮位であるときに船舶10が航行可能な航路を示す。航路情報は、例えば、タイドグラフに基づいた特定の潮位で航行した船舶10の軌跡ログを用いて生成、更新される。軌跡ログは、船舶10が過去に通過した航路の軌跡における複数の地点の位置情報、及び各地点の通過時の時刻情報を含む。例えば、サーバ記憶部31は、過去の所定期間における複数の軌跡ログを蓄積する。例えば、サーバ制御部30は、蓄積された軌跡ログにおいて、特定の出発地及び目的地から所定範囲内の位置情報を含む軌跡ログに基づいて航路情報を生成する。サーバ制御部30は、生成した航路情報を、特定の出発地及び目的地に関連付けて案内航路DB41に記録する。
潮流情報DB42は、潮流情報を管理するデータベースである。潮流情報は、特定の水域における潮流の速さ及び向きを示す。潮流情報DB42は、例えば、複数の水域および過去の所定期間にわたる種々の潮流情報を管理する。
サーバ通信部32は、所定の通信規格にしたがい通信を行う通信インタフェースであり、ネットワーク15や外部機器にサーバ装置3を通信接続する。
以上のようにサーバ装置3の構成の一例を説明したが、サーバ装置3はこれに限定されず、種々の構成を有してもよい。例えば、サーバ装置3は、ASP(Application Server Provider)サーバ等であってもよく、クラウドコンピューティングにおける各種の処理を実行してもよい。
以下、実施形態1に係る情報処理システム1の動作の概要を、図4を用いて説明する。
図4は、実施形態1におけるモバイル端末2の表示部25の表示例を示す。本システム1では、モバイル端末2が、サーバ装置3からダウンロードした情報を表示部25に表示する。モバイル端末2は、例えば、航路情報、及び航行エリア情報をダウンロードする。航行エリア情報は、船舶10が、保有する燃料を用いて航行可能な範囲を示す情報である。図4では、航行エリア情報に対応する航行エリア52を破線で図示している。
図4に示すように、地図画像60上に、現在地アイコン100と、出発地アイコン101と、目的地アイコン102と、航路画像61と、航行エリア画像62とが、モバイル端末2の表示部25に表示される。地図画像60は、船舶10の現在地を含む所定範囲の地図を示す画像である。現在地アイコン100は、船舶10の現在地を示すアイコンである。出発地アイコン101は、船舶10の航行における出発地を示すアイコンである。目的地アイコン102は、船舶10の航行における目的地を示すアイコンである。表示部25は、さらに、船舶10の軌跡を所定の間隔で表示してもよい。
航路画像61は、サーバ装置3からダウンロードされた航路情報によって規定される航路を示す画像である。本システム1において、サーバ装置3は、例えば、モバイル端末2から船舶10の出発地及び目的地を示す情報を取得する。サーバ装置3は、取得した情報に基づき、案内航路DB41において、船舶10の出発地及び目的地に合致する航路の航路情報を検索する。合致する航路は、目的地が完全一致するだけでなく、目的地から船舶10が航行可能な所定の範囲内の地点に到達する経路でもよい。サーバ装置3は、検索結果の航路情報をモバイル端末2に送信する。
航行エリア画像62は、サーバ装置3からダウンロードされた航行エリア情報によって規定される範囲を示す画像である。航行エリア画像62によると、船舶10が、燃料の残量を用いて、潮流の影響下で航行可能な範囲が可視化される。潮の流れ及び潮の方向といった潮流の状態は、風の強さ及び風向きと異なることがあり、視認者にとって、潮流の状態を判断することが難しい場合がある。潮流の状態が誤認されると、船舶10が航行可能な範囲の予測が難しくなる場合もある。そこで、本システム1では、サーバ装置3が、潮流情報に基づいて、航行エリア画像62が潮流に応じて航行可能な範囲を示すように航行エリア情報を生成する。以下、本実施形態に係る情報処理システム1の動作の詳細を説明する。
(航行エリア表示処理)
以下では、実施形態1に係る情報処理システム1において、モバイル端末2がサーバ装置3から航行エリア情報を取得して表示部25に表示する航行エリア表示処理について、図5,図6を用いて説明する。
図5は、本実施形態における航行エリア表示処理を説明するためのシーケンス図である。図5に示す処理は、例えば、モバイル端末2において所定のプログラムが立ち上がったとき、或いは所定のユーザ操作が入力された場合に開始される。以下では、図5に示すように、ステップをSと表記する場合がある。
まず、モバイル端末2は、船舶10の燃料情報を取得する(S1)。例えば、モバイル端末2の端末制御部20は、機器通信部23を介して操縦支援装置11から燃料情報を受信する。燃料情報は、現時点での船舶10の燃料の残量を示す。燃料情報は、船舶10の燃費等を示す情報を含んでもよい。
次に、端末制御部20は、位置情報取得部26から現在地情報を取得する(S2)。位置情報取得部26は、船舶10の現在の位置を示す位置情報を現在地情報として生成する。
次に、端末制御部20は、ネットワーク通信部22を介してサーバ装置3に、航行エリア情報のリクエストを送信する(S3)。また、端末制御部20は、取得した燃料情報及び現在地情報をサーバ装置3に送信する。航行エリア情報のリクエストは、例えば、モバイル端末2の識別情報等を含む。
サーバ装置3は、ネットワーク15を介してモバイル端末2から、航行エリア情報のリクエスト、燃料情報及び現在地情報を受信する(S11)。
次に、サーバ装置3のサーバ制御部30は、モバイル端末2から受信した情報に基づいて、図6(a)に示すように、現在地情報による現在地50を中心とする円エリア51を算出する(S12)。円エリア51の半径は、潮流の影響がない場合に船舶10が燃料の残量を用いて移動可能な距離に対応する。サーバ制御部30は、例えば、所定の推進速度において円エリア51の半径と同じ距離を移動するための所要期間を算出する。推進速度は、例えば、船舶10を推進させるスクリュープロペラの平均回転数に対応する。
次に、サーバ制御部30は、図6(b)に示すように、現在地50周辺の潮流情報を取得する(S13)。現在地50周辺の潮流情報は、現在地50を含む所定範囲における潮流を示す。所定範囲は、例えば、円エリア51よりも大きい範囲である。例えば、サーバ制御部30は、サーバ装置3のサーバ記憶部31における潮流情報DB42から潮流情報を読み出す。
潮流情報DB42は、図6(b)に示すように、潮流情報として、所定の区画毎に潮流ベクトル70を管理している。所定の区画は、緯度及び経度の2次元座標系において規定される。潮流ベクトル70は、潮流の速さおよび潮流の向きを示すベクトルである。
次に、サーバ制御部30は、現在地50周辺の潮流情報に基づいて、航行エリア情報を生成する(S14)。具体的に、サーバ制御部30は、図6(c)に示すように、航行エリア情報に対応する航行エリア52を算出する。
図6(c),図6(d)を用いて、航行エリア52の算出方法の一例を説明する。船舶10は、図6(c)に示すように、潮流の影響がない場合には現在地50から所定の推進ベクトル80に沿って移動することによって、円エリア51の境界上の点51aに到達できる。推進ベクトル80は、船舶10の推進速度及び推進方向を示すベクトルである。ここで、潮流の影響を考慮すると、推進ベクトル80に基づく船舶10の到達点52aは、点51aから潮流の下流側にずれることとなる。このような到達点52aは、潮流情報を用いて算出可能である。
具体的に、サーバ制御部30は、図6(d)に示すように、現在地50からの推進ベクトル80による移動位置を、潮流ベクトル70を用いて区画毎に補正するように積分する。サーバ制御部30は、例えば、ステップS12で算出した所要期間にわたって上記の積分を行うことにより、図6(c)に示すように、到達点52aを算出する。また、サーバ制御部30は、推進ベクトル80における推進方向を変えて上記の計算を繰り返す。これにより、サーバ制御部30は、航行エリア52の境界上の各点を求めて、航行エリア52を算出する。
図5に戻り、サーバ装置3は、ネットワーク15を介してモバイル端末2に、生成した航行エリア情報を送信する(S15)。この際、サーバ装置3は、受信したリクエスト中の識別情報等を参照して、リクエストを送信したモバイル端末2への情報送信を行う。
モバイル端末2の端末制御部20は、ネットワーク通信部22を介して、サーバ装置3からの航行エリア情報を受信する(S4)。
次に、モバイル端末2は、表示部25において、受信した航行エリア情報を表示する(S5)。例えば、モバイル端末2の端末制御部20は、端末記憶部21に記憶された地図情報格納部40を参照して、図4に示すように、地図画像60と、受信した航行エリア情報が示す航行エリア画像62とを、緯度及び経度が合致するように重畳して、表示部25に表示させる。
ステップS5において、端末制御部20は、現在地アイコン100及び航路画像61を、上記の画像において取得した位置情報に対応する位置に重畳して、表示部25に表示させる。例えば、端末制御部20は、所定の時間間隔で位置情報を取得して、リアルタイムに現在地アイコン100を移動させるように表示制御を行ってもよい。
モバイル端末2によって航行エリア情報が表示された(S5)後に、図5に示す処理は終了する。例えば、ユーザが終了操作を入力することで、航行エリア情報の表示が終了される。
以上の処理によると、潮流情報に基づいて航行エリア情報が生成されることにより、潮流の影響下において船舶10が航行可能な航行エリア52を精度良く提示することができる。図6(c)に示すように、航行エリア52は、図6(b)の潮流情報に基づいて、潮流の影響がない場合の円エリア51よりも、潮流の上流に向かって狭められている。また、航行エリア52は、潮流の下流に向かって、円エリア51よりも広げられている。
図6(b)では、区画毎の潮流ベクトル70の大きさ及び向きが同じ場合を図示しているが、以上の処理は、区画毎の潮流ベクトル70の大きさ及び向きが異なる場合にも同様に適用することができる。区画毎の潮流ベクトル70が異なる場合、航行エリア52は、各々の潮流ベクトルに応じて、真円形あるいは楕円形から歪んだ形状になり得る。
以上の処理が所定の時間間隔において実行された場合、船舶10の燃料の残量、および潮流等の変化に応じて、サーバ装置3は、航行エリア52の大きさ等が異なる航行エリア情報を生成する(S14)。生成されたエリア情報に基づき、モバイル端末2の表示部25は、時刻毎に異なる範囲の航行エリア画像62を表示する(S5)。
上記のステップS3において、端末制御部20は、さらに、船舶10に関する情報をサーバ装置3に送信してもよい。例えば、船舶10を推進させるスクリュープロペラの平均回転数等の推進力を示す情報が送信されてもよい。モバイル端末2は、船舶10の推進力を示す情報を、操縦支援装置11等から取得することができる。
(潮流情報の生成処理)
実施形態1に係る情報処理システム1において、図5で示した航行エリア表示処理で利用される潮流情報は、サーバ装置3で管理される。具体的に、サーバ装置3は、種々の船舶10による航行時の移動状態に関する情報を、モバイル端末2等から収集する。サーバ装置3は、収集した情報に基づき潮流情報を生成する。潮流情報の生成処理の一例を、図7,図8を用いて説明する。
図7は、情報処理システム1における潮流情報の生成処理を説明するためのフローチャートである。図7では、船舶10におけるモバイル端末2が、サーバ装置3に情報をアップロードした際に、サーバ装置3によって実行される潮流情報の生成処理の一例を説明する。
図8(a),図8(b)は、船舶10が潮流の影響下において移動する様子を示している。船舶10の移動中に、モバイル端末2は、例えば、所定期間ごとに位置情報取得部26から位置情報を取得する。所定期間は、例えば1秒間である。モバイル端末2は、例えば、取得した位置情報と時刻情報とを関連付けた情報を随時、サーバ装置3にアップロードする。以下では、モバイル端末2が、図8(a)の時点における船舶10の位置情報を取得し、続いて図8(b)の時点における船舶10の位置情報を取得することとする。
図7のフローチャートにおいて、サーバ装置3は、モバイル端末2からネットワーク15を介して、図8(a)の時点における船舶10の位置情報を取得する(S21)。図8(a)は、船舶10が、推進ベクトル81を有するように操縦された時点の様子を示している。ステップS21で取得される位置情報は、推進ベクトル81に基づく移動前の船舶位置53を示す。
図8(a)に示すように、推進ベクトル81によると、潮流の影響がない場合に船舶10が図8(b)の時点で到達する予測位置54を算出することができる。推進ベクトル81の大きさ、即ち推進速度は、例えば、船舶10を推進させるスクリュープロペラの回転数に応じて設定される。推進速度は、船舶10を推進させるスクリュープロペラの回転数だけに限られない。推進速度は、船舶10を推進させるエンジンの回転数でもよい。推進ベクトル81の向き、即ち推進方向は、例えば、船舶10の操舵角に応じて設定される。推進方向は、船舶10の操舵角だけに限られない。推進方向は、ジャイロセンサを用いて設定されてもよい。モバイル端末2は、操縦支援装置11から、船舶10を推進させるスクリュープロペラの回転数及び操舵角を示す情報を取得する。モバイル端末2は、操縦支援装置11から取得した情報を操縦情報として、サーバ装置3に送信する。
サーバ装置3は、モバイル端末2からネットワーク15を介して、推進ベクトル81に関する操縦情報を取得する(S22)。サーバ装置3のサーバ制御部30は、例えば、取得した位置情報及び操縦情報に基づいて予測位置54を算出する。
さらに、サーバ装置3は、モバイル端末2からネットワーク15を介して、図8(b)の時点における船舶10の位置情報を取得する(S23)。図8(b)は、図8(a)の時点から所定期間後に船舶10が移動した様子を示している。ステップS23で取得される位置情報は、推進ベクトル81に基づく移動後の船舶位置55を示す。
図8(b)に示すように、移動後の船舶位置55は、潮流の影響がない場合の予測位置54からずれている。移動後の船舶位置55と予測位置54との間のずれは、船舶10が推進ベクトル81に基づく移動中に潮流の影響を受けることによって生じている、と見做すことができる。
サーバ装置3のサーバ制御部30は、ステップS21〜S23で取得された情報に基づいて、移動前後の船舶位置53,55における潮流の速さ及び向きを算出する(S24)。例えば、サーバ制御部30は、移動前の船舶位置53から移動後の船舶位置55までの移動ベクトル82を算出する。さらに、サーバ制御部30は、移動ベクトル82に対する船舶10の推進ベクトル81の差分を潮流ベクトル71として算出する。
サーバ制御部30は、算出した潮流ベクトル71の大きさ及び向きを潮流の速さ及び向きとして、船舶位置53,55における潮流情報を生成する(S25)。
次に、サーバ制御部30は、生成した潮流情報により、サーバ記憶部31の潮流情報DB42を更新する(S26)。例えば、サーバ制御部30は、船舶位置53,55を含む区画に関連付けて、生成した潮流情報を潮流情報DB42に記録する。
サーバ制御部30は、潮流情報DB42を更新することにより(S26)、図7のフローチャートに示す処理を終了する。
以上の処理によると、サーバ装置3は、船舶10による航行時の移動状態に関する情報を解析することにより、船舶10が航行中の水域における潮流情報を生成することができる。サーバ装置3は、種々の水域を航行する複数の船舶10から情報収集を行うことにより、各々の水域における潮流情報を生成することができる。また、サーバ装置3は、過去の潮流情報を解析することにより、現在の潮流を推定するように潮流情報を生成してもよい。サーバ装置3は、船舶10による航行時の移動状態に関する情報を解析する場合だけに限られない。サーバ装置3は、船舶10による停泊時の潮流による移動状態に関する情報を解析することで、船舶10が停泊中の水域における潮流情報を生成することもできる。
以上のように、実施形態1に係る情報処理システム1は、サーバ装置3と、モバイル端末2と、を備える。モバイル端末2は、サーバ装置3から船舶10の航行に関する情報を取得して、取得した情報を表示する。モバイル端末2は、取得部の一例である機器通信部23と、位置情報取得部26と、ネットワーク通信部22と、表示部25と、を備える。機器通信部23は、操縦支援装置11から、船舶10が保有する燃料を示す燃料情報を取得する。位置情報取得部26は、船舶10の現在地を示す現在地情報を検出する。ネットワーク通信部22は、燃料情報及び現在地情報をサーバ装置3に送信して、サーバ装置3から、燃料情報及び現在地情報に基づく情報を受信する。表示部25は、ネットワーク通信部22が受信した情報を表示する。サーバ装置3は、図6に示すように、潮流を示す潮流情報に基づいて、現在地情報が示す現在地から燃料情報が示す燃料を用いて船舶10が航行可能な範囲である航行エリア52を示す航行エリア情報を生成する(図5のS14)。
本システム1によると、潮流情報に基づいて生成された航行エリア52を示す航行エリア情報が、図4に示すように、航行エリア画像62として表示される。これにより、潮流の影響下において船舶10が航行可能な範囲を精度良く提示することができる。
本実施形態において、航行エリア情報が示す航行可能な範囲は、図4に示すように、潮流情報が示す潮流の上流に向かって狭まると共に潮流の下流に向かって広がる。このように、潮流の影響下において船舶10が航行可能な範囲を可視化できる。
本実施形態において、潮流情報は、図6(b)に示すように、潮流の速さ及び向きを示す潮流ベクトル70として管理されてもよい。潮流情報は、潮流ベクトル70以外の形式において潮流の速さ及び向きを示す情報であってもよい。
本実施形態において、サーバ装置3は、複数の船舶10から、各船舶10の移動状態を示す情報を取得する(S11〜S13)。サーバ装置3は、取得した情報に基づいて、潮流情報を生成する(S15)。これにより、船舶10が航行した水域における潮流を示す潮流情報を管理することができる。
本実施形態において、サーバ装置3によって取得される移動状態を示す情報は、船舶10の移動位置、移動時間、推進力、及び操舵角のうちの少なくとも一つを示す情報を含む。推進力を示す情報としては、例えば、船舶10の操縦中におけるスクリュープロペラの回転数、及び平均回転数等が挙げられる。
本実施形態において、表示部25は、航行エリア情報と共に、船舶10の現在地から目的地までの航路を示す情報として、図4に示すように、航路画像61を表示する。サーバ装置3は、例えば、モバイル端末2から受信した船舶10の目的地及び出発地を示す情報に基づいて、案内航路DB41において、船舶10の現在地から目的地までの航路の航路情報を検索できる。モバイル端末2の表示部25において、船舶10が航路を移動する移動時間を示す情報を表示するようにしてもよい。この場合、例えば案内航路DB41において管理される航路情報に、移動時間を示す情報が関連付けて管理されてもよい。
本実施形態において、モバイル端末2は、船舶10の航行に関する情報を表示する情報処理装置である。モバイル端末2の表示部25は、潮流を示す潮流情報に基づいて、現在地情報が示す現在地から燃料情報が示す燃料を用いて船舶10が航行可能な範囲を示す航行エリア情報を表示する。モバイル端末2のネットワーク通信部22は、潮流情報を管理するサーバ装置3に、燃料情報及び現在地情報を送信して、送信した現在地情報及び燃料情報に基づく航行エリア情報を、サーバ装置3から受信する。
本実施形態において、船舶10の航行に関する情報をモバイル端末2の表示部25に表示するためのプログラムが提供される。モバイル端末2の端末制御部20は、本実施形態におけるプログラムを実行することにより、船舶10が保有する燃料を示す燃料情報を取得し、船舶10の現在地を示す現在地情報を検出し、航行エリア情報を表示部25に表示する。航行エリア情報は、潮流を示す潮流情報に基づいて、現在地情報が示す現在地から燃料情報が示す燃料を用いて船舶10が航行可能な範囲を示す。
本実施形態におけるモバイル端末2及びプログラムによると、潮流の影響下において船舶10が航行可能な範囲を精度良く提示することができる。
本実施形態では、サーバ装置3が潮流情報DB42において潮流情報を管理する例を説明した。サーバ装置3は、潮流情報を管理しなくてもよく、例えば、サーバ装置3は、外部から潮流情報を取得してもよい。
(実施形態2)
実施形態2では、情報処理システム1において、さらに、日没まで等の所定期間中に船舶10が航行可能な範囲を示す情報を表示する。実施形態2に係る情報処理システム1について、図9〜図11を参照して説明する。
図9は、実施形態2に係る情報処理システム1によって提示される情報の表示例を示す。本実施形態に係る情報処理システム1は、実施形態1と同様に、モバイル端末2の表示部25に、サーバ装置3からダウンロードされた各種情報を表示する。
図9に示すように、本実施形態では、地図画像60上に、航行エリア画像62及び現在地アイコン100に加えて、帰港エリア画像63及び帰港地アイコン103が表示される。帰港地アイコン103は、船舶10が帰港する予定の帰港地を示すアイコンである。帰港エリア画像63は、日没までの残り時間に、船舶10が帰港地に到達可能な範囲を示す画像である。日没までの残り時間は、現在時刻から日没の時刻までの期間である。日没までの残り時間は、例えば、モバイル端末2が位置情報取得部26から取得した位置情報が示す位置に基づいて算出することができる。日没までの残り時間は、サーバ装置3がモバイル端末2の位置情報取得部26から取得した位置情報が示す位置に基づいて算出してもよい。
図9の表示例は、例えば、日没までの残り時間が所定値以下になったときに表示される。なお、図9では、説明の便宜上、航路画像61等の他の画像の図示を省略している。
本実施形態において、サーバ装置3は、帰港エリア画像63を規定する帰港エリア情報を生成する。船舶10が日没までの残り時間内に航行可能な範囲は、潮流に応じて変化する。本システム1において、サーバ装置3は、潮流情報に基づいて、帰港エリア画像63が潮流に応じて航行可能な範囲を示すように帰港エリア情報を生成する。以下、本実施形態に係る情報処理システム1の動作の詳細を説明する。
図10は、実施形態2における帰港エリア表示処理を説明するためのシーケンス図である。帰港エリア表示処理は、例えば、所定の時刻になったときに開始される。所定の時刻は、例えば、日没までの残り時間に基づき設定される。
まず、モバイル端末2は、現在時刻に基づいて、日没までの残り時間を示す時刻情報を取得する(S31)。さらに、端末制御部20は、例えばユーザの入力により、帰港地の位置を示す位置情報を取得する(S32)。ステップS31,S32の処理の順番は、特に限定されない。
モバイル端末2は、取得した時刻情報及び位置情報と共に、帰港エリア情報のリクエストを送信する(S33)。
サーバ装置3は、モバイル端末2から帰港エリア情報のリクエスト、並びに取得された時刻情報及び位置情報を受信する(S41)と、帰港エリア情報を生成するための処理を行う(S42〜S44)。ステップS42〜S44の処理は、例えば、帰港エリア情報のリクエストと共に受信された情報を用いて、図5のステップS12〜S14の処理と同様に行われる。
具体的に、サーバ制御部30は、図11(a)に示すように、帰港地56を中心とする円エリア57を算出する(S42)。円エリア57の半径は、例えば、船舶10の平均の推進速度において、日没までの残り時間内に到達可能な距離である。次に、サーバ制御部30は、図11(b)に示すように、帰港地56周辺の潮流情報を取得する(S43)。帰港地56周辺の潮流情報は、例えば、円エリア57よりも大きい範囲における潮流を示す。次に、サーバ制御部30は、帰港地56周辺の潮流情報に基づいて、帰港エリア情報を生成する(S44)。
ステップS44において、サーバ制御部30は、図11(c)に示すように、帰港エリア情報に対応する帰港エリア58を算出する。図5のステップS14では、図6(c)に示したように、円エリア51の中心から出発する船舶10の到達点52aを求めることによって、航行エリア52が算出される。これに対して、帰港エリア58については、船舶10が円エリア57の中心に到達できる出発点58aを逆算する必要がある。そこで、サーバ制御部30は、例えば、図6(d)を用いて説明した積分と同様の計算を、時間順序を逆転して実行する。
具体的に、サーバ制御部30は、図11(d)に示すように、図11(b)の潮流ベクトル70の向きとは逆向きのベクトル75を用いて、帰港地56からの移動距離の積分計算を、図6(d)と同様に行う。サーバ制御部30は、日没までの残り時間と同じ長さの期間にわたって積分計算を行うことにより、出発点58aを算出できる。サーバ制御部30は、複数の出発点58aを帰港エリア58の境界として求めて、帰港エリア58を算出する。
図10に戻り、サーバ装置3は、ネットワーク15を介してモバイル端末2に、生成した帰港エリア情報を送信する(S45)。
モバイル端末2は、サーバ装置3からの帰港エリア情報を受信する(S34)と、図9に示すように、帰港エリア情報に基づく帰港エリア画像63を表示部25に表示する(S35)。表示部25は、図5のステップS5と同様に、航行エリア画像62等を表示することができる。
モバイル端末2による帰港エリア情報の表示(S35)後に、図10に示す処理は終了する。例えば、ユーザが終了操作を入力することで、帰港エリア情報の表示が終了される。
以上の処理によると、潮流情報に基づいて帰港エリア情報が生成されることにより、潮流の影響下において船舶10が所定期間中に到達可能な帰港エリア58を精度良く提示することができる。図11(c)に示すように、帰港エリア58は、潮流の上流に向かって広がる共に、潮流の下流に向かって狭まっている。
以上の説明では、帰港地56に到達可能な帰港エリア情報が生成される例を説明した(SS44)。帰港地56の代わりに、他の地点が用いられてもよい。サーバ装置3は、適宜、設定された地点の位置を用いて、以上の処理を実行することにより、帰港エリア情報と同様の情報を生成することができる。
以上のように、本実施形態に係る情報処理システム1において、モバイル端末2の表示部25は、日没までの残り時間内に船舶10が航行可能な範囲を示す情報として、帰港エリア画像63を表示する(S35)。サーバ装置3は、日没までの残り時間に限らず、種々の所定期間中に船舶10が航行可能な範囲を示す情報を生成することができる。
(他の実施形態)
上記の実施形態1,2では、航路エリア情報等をモバイル端末2の表示部25に表示したが、これに限らず、例えば船舶10の操縦支援装置11の表示部に航路エリア情報等を表示するようにしてもよい。また、上述したモバイル端末2の各種機能は、操縦支援装置11等の情報処理装置において実現されてもよい。例えば、操縦支援装置11が、位置情報取得部を備えて船舶10の現在地を検出してもよいし、ネットワーク通信部を備えて、ネットワーク15を介してサーバ装置3と情報通信を行ってもよい。本実施形態における情報処理装置は、モバイル端末2及び操縦支援装置11に限らず、種々の情報処理装置が用いられてもよい。
上記の各実施形態では、情報処理装置は、サーバ装置3に、燃料情報及び現在地情報を送信して、送信した現在地情報及び燃料情報に基づく航行エリア情報を、サーバ装置3から受信した。航行エリア情報を表示する情報管理装置において、航行エリア情報が生成されてもよい。
すなわち、船舶の航行に関する情報を表示する情報処理装置は、取得部と、現在地検出部と、表示部と、制御部と、を備える。取得部は、船舶が保有する燃料を示す燃料情報を取得する。現在地検出部は、船舶の現在地を示す現在地情報を検出する。制御部は、潮流情報に基づいて、現在地情報が示す現在地から燃料情報が示す燃料を用いて船舶が航行可能な範囲を示す航行エリア情報を生成する。表示部は、航行エリア情報を表示する。情報処理装置は、潮流情報を記憶する記憶部をさらに備えてもよい。情報処理装置は、潮流情報を受信する通信部をさらに備えてもよい。以上の情報処理装置によっても、船舶が航行可能な航路を精度良く提示することができる。
また、以上のような各種の情報処理装置の機能を実現するために制御部によって実行されるプログラムが提供されてもよい。
以上のように、本発明の具体的な実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を行ってもよい。例えば、上記の個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを本発明の一実施形態とすることができる。