JP6615409B2 - 光学薄膜、光学素子、光学系および光学薄膜の製造方法 - Google Patents

光学薄膜、光学素子、光学系および光学薄膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、反射防止膜および透明導電膜等の光学薄膜、光学薄膜を備えた光学素子およびその光学素子を備えた光学系、並びに光学薄膜の製造方法に関するものである。
従来、ガラスおよびプラスチックなどの透光性部材を用いたレンズ(透明基材)においては、表面反射による透過光の損失を低減するために光入射面に反射防止膜が設けられている。
可視光に対し、非常に低い反射率を示す反射防止膜として、可視光の波長よりも短いピッチの微細凹凸構造や多数の孔が形成されてなるポーラス構造を最上層に備えた構成が知られている。微細凹凸構造やポーラス構造などの構造層を低屈折率層として最上層に有する反射防止膜を用いれば可視光域の広い波長帯域において0.2%以下の超低反射率を得ることができる(特開2015−94878号公報、特開2015−4919号公報、国際公開2016−031133号等)。
一方、表面に構造層を備えていない反射防止膜として、誘電体膜の積層体中に銀(Ag)を含有する金属層を含む反射防止膜が特開2006−184849号公報、特開平08−054507号公報、特開2003−255105号公報等に提案されている。
特開2006−184849号公報には、透明基材上に高屈折率透明薄膜層と金属薄膜層とが交互に設けられてなる導電性反射防止層とその最外層の高屈折率透明薄膜層に接する低屈折率透明薄膜層を有する反射防止積層体が開示されている。また、特開2006−184849号公報には金属薄膜層の上下層に、腐食から保護するための層として保護層を備えてもよい旨開示されている。保護層としては、亜鉛、シリコン、ニッケル、クロム、金、白金…などの金属、これらの合金、これらの金属の酸化物、弗化物、硫化物および窒化物が挙げられている。
特開平08−054507号公報には、前被覆層と後被覆層との間にはさまれ、保護窒化珪素層により引掻きから保護された薄い金属層を備えた反射防止膜が開示されている。そして、被覆層としては、ニッケル、クロム、ロジウム、白金、タングステン、モリブデンおよびタンタル、ニッケルとクロムの合金等が挙げられている。
特開2003−255105号公報には、基材上に金属薄膜層と金属酸化物薄膜層とが積層されてなる反射防止膜が開示されており、金属薄膜層の安定化のために、基板と金属薄膜層との間に下地層を設け、金属薄膜層と金属酸化物薄膜層との間に中間層を設けることが開示されている。この下地層、および中間層としてはシリコン、チタンなどの金属薄膜層が挙げられている。
しかしながら、特開2006−184849号公報、特開平08−054507号公報あるいは特開2003−255105号公報に記載のように、金属薄膜層の上下層に保護層もしくは被覆層等として金属の層が設けられると、金属による着色により、透明性が低下するという問題がある。また、特開2006−184849号公報のように酸化物や窒化物を設ける場合は、表面エネルギーが小さいため、その上に極薄い、例えば、10nm以下のような金属薄膜層を形成するのは、金属の凝集が生じて金属が粒状化し、平坦な膜を形成するのが難しい。そのため、透明性と平坦性の両立ができず、反射防止性能が低下する恐れがある。
なお、薄膜化して透明性を向上させた金属層は、上述のような反射防止膜として利用に限るものではなく、透明導電膜などへの適用も考えられ、10nm以下の極薄の金属薄膜層を備えた光学薄膜には高いニーズがある。また、そのような金属薄膜層を粒状化させることなく形成する技術に対する要請は高い。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、光透過率が高く、かつ平坦性の高い金属薄膜層を備えた光学薄膜およびその製造方法、並びに光学薄膜を備えた光学素子および光学系を提供することを目的とする。
本発明の光学薄膜は、基材側から、中間層、銀を含有する銀含有金属層、および誘電体層がこの順に積層されてなり、
中間層と銀含有金属層との間に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層を備え、
アンカー金属拡散制御層と銀含有金属層との間に、銀含有金属層の表面エネルギー未満であり、アンカー金属拡散制御層の表面エネルギーよりも大きい表面エネルギーを有するアンカー金属の酸化物を含むアンカー領域を備え、
銀含有金属層と誘電体層との間に、アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域を備え、
銀含有金属層、アンカー領域およびキャップ領域の合計の膜厚が6nm以下である。
ここで「銀を含有する」とは、銀含有金属層中において銀を50原子%以上含むこととする。
また、ここで、「アンカー金属」とは、その金属により構成される層が、アンカー金属拡散性制御層の表面エネルギーよりも銀含有金属層の表面エネルギーとの差が小さい表面エネルギーを有するものとなる金属をいう。
本発明の光学薄膜においては、アンカー金属拡散制御層が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物または金属炭化物を含むことが好ましい。
本発明の光学薄膜においては、アンカー金属拡散制御層が、Hf酸化物を含有することが好ましい。
ここで、「Hf酸化物を含有する」とは、アンカー金属拡散制御層6中の20mol%以上がHf酸化物であることを意味する。アンカー金属拡散制御層中におけるHf酸化物の占有割合は50mol%以上であることがより好ましく、Hf酸化物のみで構成されている(占有割合100%である)ことが特に好ましい。Hf酸化物は酸素欠陥が含まれてもよく、HfO2−xで示した場合、Xが0〜1.5の間が好ましい。なお、以下においてはHf酸化物を酸素欠陥が含まれている場合も含めHfOと記載している。
本発明の光学薄膜においては、アンカー領域は、酸化されていないアンカー金属を含み、アンカー金属の酸化物の含有割合が、酸化されていないアンカー金属の含有割合よりも大きいことが好ましい。
本発明の光学薄膜においては、アンカー金属がGe、Sn、In、GaまたはZnであることが好ましい。
本発明の光学薄膜は、誘電体層の表面に、アルミナの水和物を主成分とする微細凹凸層をさらに備え、銀含有金属層、アンカー領域およびキャップ領域の合計の膜厚が2.7nm以下であることが好ましい。
本発明の光学素子は、上記の本発明の光学薄膜からなる反射防止膜を備えている。
本発明の光学系は、上記本発明の光学素子の反射防止膜が設けられた面が最表面に配置されてなる組レンズを備えたものである。
ここで、最表面とは、複数のレンズからなる組レンズの端に配置されるレンズの一面であって、組レンズの端面となる面をいう。
本発明の光学薄膜の製造方法は、基材上に中間層、銀を含有する膜厚が6nm以下の銀含有金属層、および誘電体層がこの順に積層されてなる光学薄膜の製造方法であって、
中間層上に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層を成膜し、
アンカー金属拡散制御層上に、銀含有金属層の表面エネルギー未満であり、アンカー金属拡散制御層の表面エネルギーよりも大きい表面エネルギーを有するアンカー金属からなるアンカー金属層を形成し、
銀含有金属層を成膜し、
基材上に中間層、アンカー金属拡散制御層、アンカー金属層および銀含有金属層が積層されてなる積層体を、酸素含有雰囲気下においてアニール処理し、
積層体の最表面に誘電体層を成膜する、光学薄膜の製造方法である。
本発明の光学薄膜は、基材側から、中間層、銀を含有する銀含有金属層、および誘電体層がこの順に積層されてなり、中間層と銀含有金属層との間に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層を備え、アンカー金属拡散制御層と銀含有金属層との間に、銀含有金属層の表面エネルギー未満であり、アンカー金属拡散制御層の表面エネルギーよりも大きい表面エネルギーを有するアンカー金属の酸化物を含むアンカー領域を備え、銀含有金属層と誘電体層との間に、アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域を備え、銀含有金属層、アンカー領域およびキャップ領域の合計の膜厚が6nm以下である。係る構成により、本発明の光学薄膜における銀含有金属層は、光透過率および平滑性が高い。
本発明の第1の実施形態に係る光学薄膜を備えた光学素子の概略構成を示す断面模式図である。 本発明の第2の実施形態に係る光学薄膜を備えた光学素子の概略構成を示す断面模式図である。 光学薄膜の製造工程図である。 本発明の光学素子を備えた組レンズからなる光学系の構成を示す図である。 サンプル1のアニール処理前の深さ方向元素分布を示す図である。 サンプル1のアニール処理後の深さ方向元素分布を示す図である。 サンプル1のアニール処理前の深さ方向Ge3dスペクトルを示す図である。 サンプル1のアニール処理後の深さ方向Ge3dスペクトルを示す図である。 サンプル1の走査透過電子顕微鏡像である。 サンプル1のエネルギー分散型X線分光分析による深さ方向元素分布を示す図である。 実施例および比較例の光学薄膜についての吸収率の波長依存性を示す図である。 実施例および比較例の光学薄膜について、アンカー金属拡散制御層のHamaker定数と銀膜の電気抵抗率との関係を示す図である。 実施例1および比較例1の光学薄膜についてのX線光電子分光法による分析結果を示す図である。 実施例7の反射防止膜についてシミュレーションにより得られた反射率の波長依存性を示す図である。 実施例11および比較例11の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例12の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例13の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例14の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例15の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る光学薄膜1を備えた光学素子10の概略構成を示す断面模式図である。図1Aに示すように、本実施形態の光学薄膜1は、基材2上に中間層3と、銀(Ag)を含有する銀含有金属層4と、誘電体層5とがこの順に積層されてなる。本光学薄膜1は、中間層3と銀含有金属層4との間に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層6を備えている。さらに、本光学薄膜1は、アンカー金属拡散制御層6と銀含有金属層4との間に、アンカー金属の酸化物を含むアンカー領域8を備え、銀含有金属層4と誘電体層5との間に、アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域9を備えている。
ここで、アンカー金属は、平坦な銀含有金属層4を形成するための下地層(アンカー金属層)に用いられる金属である。アンカー金属層は、アンカー金属拡散制御層よりも銀含有金属層の表面エネルギーとの差が小さい表面エネルギーを有する。
基材2の形状は特に限定なく、平板、凹レンズまたは凸レンズなど、主として光学装置において用いられる透明な光学部材(透明基材)であり、正または負の曲率を有する曲面と平面の組合せで構成された基材であってもよい。また、基材2として可撓性フィルムを用いてもよい。基材2の材料としては、ガラスやプラスチックなどを用いることができる。本明細書において、「透明」とは、波長400nm〜800nmの波長域の光(可視光)に対して内部透過率が10%以上であることを意味する。
基材2の屈折率は、特に問わないが、1.45以上であることが好ましい。基材2の屈折率は1.61以上、1.74以上、さらには1.84以上のものであってもよい。基材2としては、例えば、カメラの組レンズの第1レンズなどの高パワーレンズであってもよい。なお、本明細書において、特に断らない限り屈折率は波長550nmの光に対する屈折率で示している。
中間層3は、単層であっても複数層からなるものであってもよい。中間層3は、用途に応じて適宜設けられるものであるが、基本的に可視光に対し、透明な材料で構成される。
光学薄膜1が反射防止膜である場合、中間層3は、基材2の屈折率と異なる屈折率を有する単層から構成されていてもよいし、図1A(a)、(b)に示すように、高屈折率層11と低屈折率層12とが交互に積層されてなる複数層から構成されていてもよい。このとき、図1A中(a)に示すように基材2側から低屈折率層12、高屈折率層11の順に積層されていてもよいし、図1A中(b)に示すように基材2側から高屈折率層11、低屈折率層12の順に積層されていてもよい。また、中間層3の層数に制限はないが、16層以下とすることがコスト抑制の観点から好ましい。
高屈折率層11は低屈折率層12の屈折率に対して高い屈折率を有するものであり、低屈折率層12は高屈折率層11の屈折率に対して低い屈折率を有するものであればよいが、高屈折率層11の屈折率が基材2の屈折率よりも高く、低屈折率層12の屈折率が基材2の屈折率よりも低いものであることがより好ましい。
高屈折率層11同士、または低屈折率層12同士は、同一の屈折率でなくても構わないが、同一材料で同一屈折率とすれば、材料コストおよび成膜コスト等を抑制する観点から好ましい。
低屈折率層12を構成する材料としては、酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化ガリウム(Ga)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ランタン(La)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化ナトリウムアルミニウム(NaAlF)などが挙げられる。
高屈折率層11を構成する材料としては、五酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、五酸化タンタル(Ta)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(Si)および酸化シリコンニオブ(SiNbO)などが挙げられる。
いずれの化合物も化学量論比の組成比からずれた構成元素比となるように制御したり、成膜密度を制御したりして成膜することにより、屈折率をある程度変化させることができる。なお、低屈折率層および高屈折率層を構成する材料としては、上述の屈折率の条件を満たすものであれば、上記化合物に限らない。また、不可避不純物が含まれていてもよい。
中間層3の各層の成膜には、真空蒸着、プラズマスパッタ、電子サイクロトロンスパッタおよびイオンプレーティングなどの気相成膜法を用いることが好ましい。気相成膜によれば多様な屈折率および層厚の積層構造を容易に形成することができる。
銀含有金属層4は、構成元素の50原子%以上が銀からなるものとする。銀含有金属層4には、銀以外にパラジウム(Pd)、銅(Cu)、金(Au)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ビスマス(Bi)、白金(Pt)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)および鉛(Pb)のうちの少なくとも1種を含有していてもよい。
銀含有金属層4を形成するための材料としては、具体的には、例えば、Ag−Nd−Cu合金、Ag−Pd−Cu合金あるいはAg−Bi−Nd合金などが好適である。なお、銀含有金属層4は設計膜厚として6nm以下で形成される非常に薄いものであるため、上下に配されている層との間で原子の移動が生じ、形成時の組成と実際の組成とは異なっている。
銀含有金属層4の形成するための材料としては、構成元素の85原子%以上が銀である材料を用いることが好ましい。このとき、銀以外の金属元素の含有率は15原子%未満であればよいが、5原子%以下がより好ましく、2原子%以下がさらに好ましい。なお、この場合の含有率は、2種類以上の銀以外の金属元素を含む場合、2種以上の金属元素の合計での含有率を指すものとする。なお、反射防止の観点からは、純銀を用いることが最も好ましい。一方で、銀含有金属層の平坦性および耐久性の観点からは銀以外の金属元素を含有していることが好ましい。
光学薄膜1中における、アンカー領域8、銀含有金属層4およびキャップ領域9の合計膜厚は6nm以下である。この合計膜厚は6nm以下の範囲で用途に応じて適宜設定すればよい。0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましい。ここでいう膜厚は、製造後の光学薄膜における、アンカー領域8、銀含有金属層4およびキャップ領域9を含む合計の膜厚であり、X線反射率測定により求めた値とする。具体的には、例えば、RIGAKU RINTULTIMAIII(CuKα線40kV40mA)を用いて、臨界角近傍の信号を測定し、得られる振動成分を抽出し、フィッティングして得ることができる。
銀含有金属層4および後述のアンカー金属層の合計膜厚は設計膜厚として6nm以下、好ましくは5nm以下、特に好ましくは4nm以下である。製造過程において、アンカー金属は銀含有金属層中およびその界面領域に拡散するため、光学的に一体的に扱われ、膜厚も上述の通りアンカー領域、銀含有金属層およびキャップ領域の合計膜厚として測定される。
銀含有金属層4の形成においても、真空蒸着、プラズマスパッタ、電子サイクロトロンスパッタおよびイオンプレーティングなどの気相成膜法を用いることが好ましい。
誘電体層5の構成材料には特に制限はない。光学薄膜1が反射防止膜である場合には、屈折率が1.35以上1.51以下であることが好ましい。このとき、誘電体層5の構成材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO2)、酸窒化シリコン(SiON)、フッ化マグネシウム(MgF)およびフッ化ナトリウムアルミニウム(NaAlF)などが挙げられ、特に好ましいのは、SiOあるいはMgFである。いずれの化合物も化学量論比の組成比からずれた構成元素比となるように制御したり、成膜密度を制御したりして成膜することにより、屈折率をある程度変化させることができる。
誘電体層5の膜厚は対象とする波長をλ、誘電体層の屈折率をnとしたとき、λ/4n程度であることが好ましい。具体的には70nm〜100nm程度である。
アンカー領域8は、銀含有金属層4の積層前にこの銀含有金属層を平滑に成膜するために設けられる、アンカー金属からなる0.2nm〜2nm厚のアンカー金属層7(後述の製造方法参照)が製造過程において変質して構成された領域である。すなわち、アンカー金属拡散制御層と銀含有金属層4との界面領域に形成されている。ここで、変質するとは、中間層や銀含有金属層の構成元素との混合や、金属元素の酸化などが生じて、アンカー金属層が成膜時の状態とは異なる状態となることを意味する。
同様にキャップ領域9は、アンカー金属層7を構成するアンカー金属が製造過程において、銀含有金属層4中を通り抜け、銀含有金属層4表面に移動して形成された領域である。このキャップ領域9は環境下の酸素により酸化されたアンカー金属の酸化物を含み、銀含有金属層4と誘電体層5との界面領域に形成されている。
なお、アンカー金属層7がアンカー領域8およびキャップ領域9へと変質した後には、アンカー金属の酸化に伴い、アンカー金属層7の膜厚に対して、両領域8および9の合計膜厚は2倍程度に増加する場合もある。
なお、光学設計にあたっては、アンカー金属層は銀含有金属層の一部として膜厚に組み込まれる。
したがって、アンカー領域8にはアンカー金属およびその酸化物に加えて、銀含有金属層4とアンカー金属拡散制御層6に存在する原子が混在し、キャップ領域9には、アンカー金属酸化物に加えて、銀含有金属層4と誘電体層5に存在する原子が混在している。アンカー領域8およびキャップ領域9は、アンカー金属について深さ方向(積層方向)における含有率を測定したとき、その深さ方向の位置に対する含有率の変化を示すラインプロファイル(図9参照)においてピークを示す位置(深さ方向位置)を中心として1nm程度以下の領域である。アンカー金属のラインプロファイルにおいては、2つのピークが観察されるが、そのうち基材に近い側がアンカー領域であり、基材から遠い側がキャップ領域のピークである。
既述の通り、アンカー金属からなるアンカー金属層は、アンカー金属拡散制御層の表面エネルギーよりも銀含有金属層の表面エネルギーとの差が小さい表面エネルギーを有する。本明細書において、表面エネルギー(表面張力)γは、金属データブック日本金属学会編改訂4版p16よりγ=γ+(t−t)(dγ/dt)を用いて算出した表面エネルギーで定義する。
以下、上記手法により算出した種々の金属元素についての室温における表面エネルギーを列挙しておく。
銀含有金属層が銀膜である場合、上記表によると表面エネルギーは1053mN/mである。これに対し、アンカー金属拡散制御層としては、具体的には、金属の酸化物、窒化物、酸窒化物あるいは炭化物であり、これらは概ね金属の表面エネルギーよりも小さい表面エネルギーを有するものである。例えば、TiO、HfOおよびTaの表面エネルギーはそれぞれ350mN/m、330mN/mおよび280mN/m程度であり、銀膜の表面エネルギーとの差は700mN/m超えである。
酸化物や窒化物膜のように銀膜の表面エネルギー差が大きい膜上に銀の超薄膜(6nm以下)を直接成膜する場合、銀は酸化物や窒化物と結合するより、銀同士で結合している方が安定であるため、銀の粒成長が促進されてしまう。そのため、平滑な超薄膜を形成することが難しい。本発明者らが検討を進めていく中で、平滑な銀の超薄膜を得るためには、銀膜の表面エネルギーと近い表面エネルギーを有するアンカー金属層を銀膜の形成面に備えることが有効であることが分かってきた。アンカー金属層を備えることにより、銀含有金属層における結晶粒の成長抑制し、平坦な超薄膜を得ることが可能となる。
アンカー金属としては、表1に列挙した金属元素のうち、概ね表面エネルギーが350mN/m超1750mN/mを満たす、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、錫(Sn)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、Ga(ガリウム)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、銅(Cu)および金(Au)から、アンカー金属拡散制御層の構成材料に応じて適宜選択して用いることができる。
アンカー金属の表面エネルギーは350mN/m超え1700mN/m以下であることが好ましく、500mN/m以上であることがより好ましい。したがって、Pb、Sn、In、Mg、Zn、Ga、Si、Cu、AuおよびGeなどが好ましい。なお、本発明者らの検討によれば、Agの粒径増大を抑制する観点で、In、GaおよびGeが好ましく、Geが特に好ましい。なお、アンカー金属としては単独の金属ではなく、2種以上の金属を含むものであってもよい。
アンカー金属層成膜時において、2種以上の金属からなる合金層として成膜してもよいし、アンカー金属層成膜時において、それぞれ単一の金属からなる層を複数積層してもよい。複数積層する場合には、銀含有金属層側ほど銀含有金属層の表面エネルギーに近い表面エネルギーを有する層となるように積層することが好ましい。
一方で、このようなアンカー金属層を構成する金属による透明性の低下が懸念されるが、アンカー金属を効率よく酸化させ、金属酸化物とすることにより、透明性が向上することがわかってきた。
特開2006−184849号公報においては金属薄膜を腐食から保護する保護層として金属薄膜の上下層に金属酸化物を備えても良い旨記載されているが、銀含有金属層成膜時の下地層が酸化物層である場合、既述の通り均一な金属極薄膜は形成できない。一方、本発明の光学薄膜の製造方法においては、アンカー金属からなるアンカー金属層を酸化させないで、その上に銀含有金属層を形成するため十分に平坦性を確保できる。十分に平坦性と密着性を確保したうえでアンカー金属層を酸化させるので、平坦性と透明性を両立させた金属極薄膜の形成が可能になる。
なお、アンカー領域には酸化されたアンカー金属(アンカー金属酸化物)、酸化されていないアンカー金属が混在している場合もあるが、アンカー金属酸化物の含有割合が酸化されていないアンカー金属の含有割合よりも大きいことが望ましく、アンカー領域に含まれているアンカー金属が全て酸化されていることが特に好ましい。アンカー領域におけるアンカー金属の酸化物の含有割合および酸化されていないアンカー金属の含有割合の大小関係は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy :XPS)に測定における信号強度比で確認することができる。
キャップ領域は、アニール処理がほどこされている時に銀が凝集して粒状になるのを抑制する効果もあると考えられる。製造過程において、アンカー金属層、銀含有金属層を順次形成した段階で、アンカー金属のキャップ領域への移動が生じ始め、また、その状態で大気中に露出することにより表面に移動したアンカー金属の酸化が生じる。
アンカー金属が酸化物となることにより安定なものとなり、銀の移動抑制、凝集抑制、長期安定性、耐水性および耐湿性等のキャップ性能が向上すると考えられる。なお、酸素存在化下にてアニール処理が施されることにより、キャップ領域のアンカー金属の大部分が酸化物となる。この場合、キャップ領域に含まれているアンカー金属の80%以上が酸化されていることが好ましく、全て酸化され、アンカー金属酸化物となっていることが好ましい。例えば、アンカー金属がGeである場合Ge/O≦1/1.8であることが好ましく、Ge/O=1/2であることが特に好ましい。
アンカー金属拡散制御層6は、上記のアンカー金属の拡散を制御するために設けられる層である。既述の通り、金属超薄膜形成において、アンカー金属層を導入することで10nm以下の超薄膜形成が可能になる。しかしながら、銀含有金属層4の膜厚が6nm以下において、さらなる超薄膜化を図る場合には、アンカー金属層を構成するアンカー金属の拡散を制御しなくてはならないことを本発明者らは見出した。アンカー金属層が酸化されていない状態で銀含有金属層4を形成することにより、銀含有金属層の平坦化が担保される。その後、酸素含有雰囲気下にてアニール処理されることにより、アンカー金属が拡散して銀含有金属層を通り抜けて銀含有金属層上のキャップ領域に移動する。この際、アンカー金属の全てがキャップ領域に移動してしまうと、銀含有金属層4の膜としての安定性が低下し、その平坦性が保たれず、一部凝集等が生じる場合があることを見出した。
そこで、本発明においては、アンカー金属の拡散を制御するために、アンカー金属層の下地層として、アンカー金属拡散制御層6を備えている。アンカー金属拡散制御層6としては、アンカー金属を引きつける力が重要である。本発明者らは、物質同士を引き合う力として知られているファンデルワールス力の指標であるHamaker定数に着目し検討した結果、Hamaker定数が7.3×10-20J以上のアンカー金属拡散制御層6を備えることにより、アンカー金属の拡散を抑制し、高い均一性を有する数nmのオーダーの超薄膜な銀含有薄膜層を形成できることを見出した。
Hamaker定数は、van Ossの理論に基づき、以下のようにして求めることができる。表面エネルギーγをγ=γLW+2(γγ1/2 としてLifshitz vdW(van der Waals)項(γLW)とドナー項(γ)とアクセプター項(γ)の3成分に分けて算出する。水、ジヨードメタンおよびエチレングリコールの3液の接触角を測定し、薄膜の表面エネルギーにおけるLifshitz vdW項(γLW)を算出する。そして、Hamaker定数A11を、A11=24πD γLWより算出する。なお、分子間力と表面力(第3版)朝倉書店J.N.イスラエルアチヴィリ 著/大島広行 訳を参照してD=0.165nmを採用(経験則より)する。
なお、既述の通り、ある程度のアンカー金属の拡散は、キャップ領域形成のために好ましく、Hamaker定数は30.0×10−20J以下であることが好ましい。
アンカー金属拡散制御層6は、Hamaker定数が7.3×10−20J以上を満たすものであれば、構成材料に制限はないが、可視光に対して透明であることが好ましく、十分な透明性を得るために金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物あるいは金属炭化物を含有することが好ましい。具体的な構成材料としては、Si、Nb、Hf、Zr、Ta、Mg、Al、La、Y、またはTiの酸化物、窒化物、酸窒化物あるいは炭化物、およびそれら混合物などが挙げられる。一般に、金属の窒化物は同一金属の酸化物よりもHamaker定数が大きいことから、アンカー金属の拡散を抑制する効果は高い。一方で、金属の酸化物は窒化物よりも透明性に優れる。より具体的には、MgO(A11=7.3×10−20J)、Ta(A11=9.5×10−20J)、Al(A11=9.6×10−20J)、TiO(A11=10×10−20J)、HfO(A11=11.2×10−20J)、ZrO(A11=11.8×10−20)、Si(A11=9.5×10−20J)およびNb(A11=12×10−20J)等があげられる。かっこ内はHamaker定数A11である。中でも、Hf酸化物(HfO)を含有することが好ましい。アンカー金属拡散制御層中におけるHf酸化物の占有割合は50mol%以上であることがより好ましく、HfOのみで構成されている(占有割合100mol%である)ことが特に好ましい。HfOを用いた場合の銀含有金属層の均一性が特に高いことを発明者らは確認している(後記実施例参照。)
アンカー金属拡散制御層6の膜厚としては銀含有金属層4との密着性向上のために5nm以上100nm以下が好ましい。
なお、アンカー金属拡散制御層6は中間層3を構成する材料とは異なる材料からなるものとする。
なお、中間層3の最も銀含有金属層側に積層される層が、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であれば、アンカー金属拡散制御層を兼ねることもできる。この場合、アンカー金属拡散制御層としての条件を満たせば、中間層3における低屈折率層であっても、高屈折率層であってもよい。
以上のようなアンカー領域およびキャップ領域を備え、かつ、アンカー金属拡散制御層を備えることにより、平坦性と透明性を両立させた銀の超薄膜構造の実現が可能である。なお、本発明の光学薄膜は、上記各層以外に、銀含有金属層の酸化を抑制する保護機能を有する保護層など、他の機能層を備えていてもよい。また、光学薄膜を構成する各層の成膜において、銀含有金属層以外の層に関し、nmオーダーの極薄い層を形成する場合には、一様膜に形成しがたく、現実には凹凸膜あるいは海島状に部分的に形成されていない部分(海)があるが、本発明はこのような形態を包含するものとする。
図1Aに示した実施形態の光学薄膜1の製造方法について説明する。図2は製造工程を示す図である。
基材2上に、中間層3を成膜し(Step1)、その後、アンカー金属拡散制御層6を成膜し、アンカー領域およびキャップ領域に含まれる金属の酸化物における金属をアンカー金属層7として成膜し、さらに銀含有金属層4を成膜する(Step2)。アンカー金属拡散制御層6、アンカー金属層7および銀含有金属層4の成膜は酸素が存在しない雰囲気下で行う。アンカー金属層7の成膜膜厚は0.2nm〜2.0nm程度とすることが好ましい。
なお、既述の通り、製造過程においてアンカー金属層を構成するアンカー金属は一部が銀含有金属層4表面まで移動するため、アンカー金属層はアンカー領域に変質し膜厚も大きく変化する。なお、アンカー金属の移動(拡散)は銀含有金属層4の成膜直後から生じ始める。
その後、中間層3、アンカー金属拡散制御層6、アンカー金属層7および銀含有金属層4の順に積層された基材2を大気中に曝露し、大気中にてアニール処理を行う(Step3)。アニール温度は100℃以上400℃以下、アニール時間は1分以上2時間以下程度が好ましい。アニール処理の開始時には、既にアンカー金属層7中のアンカー金属の一部が銀含有金属層4を通過して銀含有金属層4の表面にキャップ領域の前駆領域9aが形成されつつあり、一方でアンカー金属層7はアンカー領域への変質途中の領域8aとなっている。
上記成膜後に移動開始したアンカー金属のうち、銀含有金属層4表面まで移動したアンカー金属は、基材2を大気中に曝露した段階で酸化され始める。そして、アニール処理によりアンカー金属の拡散および酸化が促進され、このアニール処理後において、アンカー金属層7はアンカー領域8に変質し、銀含有金属層4中を通過して積層体の表面に移動したアンカー金属が酸化されてなる金属酸化物を含むキャップ領域9が形成されている(Step4)。なお、アンカー金属拡散制御層6を備えているため、アンカー金属の拡散を抑制し、アンカー領域としてアンカー金属を銀含有金属層4の基材2側に残留させることができる。
その後、積層体の最表面となるキャップ領域9上に誘電体層5の成膜を行う(Step5)。
以上の工程により、図1Aに示した実施形態の光学薄膜1を作製することができる。
本発明の光学薄膜は、透明導電膜や反射防止膜として用いることができる。反射防止膜として特に適し、種々の光学部材の表面に適用することができる。上述した第1の実施形態の光学薄膜は凹凸構造やポーラス構造を有していないので、機械的強度が高く、ユーザの手が触れる面への適用も可能である。高屈折率のレンズ表面への適用が可能であるため、例えば、特開2011−186417号公報等に記載の公知のズームレンズの最表面に好適である。
次に、本発明の第2の実施形態に係るは光学薄膜について説明する。
図1B、第2の実施形態に係る光学薄膜21を備えた光学素子20の概略構成を示す断面模式図である。図1Bに示すように、本実施形態の光学薄膜21は、基材2上に中間層3と、銀を含有する銀含有金属層4と、誘電体層5とがこの順に積層されてなる。本光学薄膜21は、中間層3と銀含有金属層4との間に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層6を備えている。さらに、本光学薄膜21は、アンカー金属拡散制御層6と銀含有金属層4との間に、アンカー金属の酸化物を含むアンカー領域8を備え、銀含有金属層4と誘電体層5との間に、アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域9を備えている。ここまでの構成は第1の実施形態の光学薄膜1と同様であるが、本第2の実施形態の光学薄膜21は、誘電体層5の表面にさらにアルミナの水和物を主成分とする微細凹凸層22をさらに備えている。また、銀含有金属層4、アンカー領域8およびキャップ領域9の合計の膜厚は2.7nm以下である。
微細凹凸層22は、アルミナの水和物を主成分とする。ここで、主成分とは、微細凹凸層の構成成分のうちの80質量%以上の成分とする。ここでアルミナの水和物とは、アルミナ1水和物であるベーマイト(Al・HOあるいはAlOOHと表記される。)、およびアルミナ3水和物であるバイヤーライト(Al・3HOあるいはAl(OH)と表記される。)などである。
微細凹凸層22は、透明であり、凸部の大きさ(頂角の大きさ)および向きは様々であるが、おおむね鋸歯状の断面を有している。この微細凹凸層22の凸部間の距離とは凹部を隔てた最隣接凸部の頂点同士の距離である。その距離は反射防止すべき光の波長以下である。数10nm〜数100nmのオーダーであることが好ましく、200nm以下、さらには、150nm以下がより好ましい。
微細凹凸層22は、アルミニウムを含む化合物の薄膜を形成し、アルミニウムを含む化合物の薄膜を70℃以上の温水で1分以上浸漬させて温水処理することで得られる。特に、真空蒸着、プラズマスパッタ、電子サイクロトロンスパッタ、イオンプレーティングなどの気相成膜でアルミニウム膜を成膜後、温水処理することが好ましい。
本実施形態の光学薄膜の構成によれば、非常に低い反射率の反射防止膜を実現することができる。
銀含有金属層4、アンカー領域およびキャップ領域の合計膜厚が2.7nm超であっても、表面に微細凹凸層を備えることにより、非常に低い反射率を実現できる。一方で、微細凹凸層を備えた反射防止膜としては、例えば、国際公開2016−031133号
において、基材上に中間層と微細凹凸層のみを備えた構成であっても、十分に低い反射率が実現されている(後記の比較例11を参照。)。本発明者らは、国際公開2016−031133号に記載の微細凹凸層を備えた反射防止膜に対し、銀含有金属層を備えた構成を検討した。
本発明者らの検討によれば、国際公開2016−031133号に記載の微細凹凸層を備えた反射防止膜において、単に銀含有金属層を備えただけでは、反射防止率のさらなる低下には繋がらない場合があることが明らかになった。そして、顕著な反射率の低減を実現するには、銀含有金属層4、アンカー領域8およびキャップ領域9の合計の膜厚を2.7nm以下とする必要があることを見出した(後記の実施例11〜15参照。)。
次に、光学薄膜1が反射防止膜(以下において反射防止膜1とする。)であり、基材としてのレンズの表面に設けられた光学素子を備えた組レンズからなる、本発明の光学系の実施形態を説明する。
図3(A),(B),(C)は、本発明の光学系の一実施形態であるズームレンズの構成例を示している。図3(A)は広角端(最短焦点距離状態)での光学系配置、図3(B)は中間域(中間焦点距離状態)での光学系配置、図3(C)は望遠端(最長焦点距離状態)での光学系配置に対応している。
このズームレンズは、光軸Z1に沿って物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5とを備えている。光学的な開口絞りS1は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間で、第3レンズ群G3の物体側近傍に配設されていることが好ましい。各レンズ群G1〜G5は1枚または複数のレンズLijを備えている。符合Lijは第iレンズ群中の最も物体側のレンズを1番目として結像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したj番目のレンズを示す。
このズームレンズは、例えばビデオカメラ、およびデジタルスチルカメラ等の撮影機器のほか、情報携帯端末にも搭載可能である。このズームレンズの像側には、搭載されるカメラの撮影部の構成に応じた部材が配置される。例えば、このズームレンズの結像面(撮像面)には、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子100が配置される。最終レンズ群(第5レンズ群G5)と撮像素子100との間には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、種々の光学部材GCが配置されていても良い。
このズームレンズは、少なくとも第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、および第4レンズ群G4を光軸Z1に沿って移動させて、各群間隔を変化させることにより変倍を行うようになされている。また第4レンズ群G4を合焦時に移動させるようにしても良い。第5レンズ群G5は、変倍および合焦の際に常時固定であることが好ましい。開口絞りS1は、例えば第3レンズ群G3と共に移動するようになっている。より詳しくは、広角端から中間域へ、さらに望遠端へと変倍させるに従い、各レンズ群および開口絞りS1は、例えば図3(A)の状態から図3(B)の状態へ、さらに図3(C)の状態へと、図に実線で示した軌跡を描くように移動する。
このズームレンズの最表面は、第1レンズ群G1のレンズL11の外側面(物体側面)および最終レンズ群である第5レンズ群G5のレンズL51に反射防止膜1が備えられている。すなわちレンズL11およびレンズL51が基材であり、その表面に反射防止膜1が備えられてなる光学部材の実施形態である。なお、本ズームレンズにおいては、他のレンズ面にも同様に反射防止膜1を備えていてもよい。
第1の実施形態の反射防止膜1は機械的強度が大きいので、ユーザが触れる可能性のあるズームレンズの最表面に備えることができ、非常に反射防止性能の高いズームレンズを構成することができる。
以下、本発明の要部構成について具体例を用いて説明する。
まず、本発明の製造方法の過程で成膜するアンカー金属層が、銀含有金属層を挟むアンカー領域およびキャップ領域を構成することについて検証した。
<サンプル1の作製方法>
ガラス基板(SiO基板)上にGeからなるアンカー金属層を成膜した。芝浦メカトロニクス社製スパッタ装置(CFS-8EP)を用いて下記条件にて成膜した。
−アンカー金属層成膜条件−
DC(直流)投入電力=20W、
Ar:20sccm、Depo圧(成膜圧力):0.45Pa
成膜温度:室温
アンカー金属層の成膜後、大気に曝露することなく引き続き銀含有金属層を成膜した。ここでは、銀含有金属層として銀膜を成膜した。成膜条件は下記の通りである。
−銀膜成膜条件−
DC投入電力=80W、
Ar:15sccm、Depo圧:0.27Pa
成膜温度:室温
上記において、アンカー金属層は0.68nm、銀膜は4nm成膜した(ここでの膜厚は設計膜厚である。)。
その後、大気中300℃にてアニール処理を行った。
上記のようにして得られたサンプル1について、以下の測定を行い、積層構造を調べた。
<アンカー領域における金属領域と金属酸化物領域との比率>
X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)により評価した。測定装置としてPHI社製Quantera SXMを用いた。
図4および図5は、XPSにより取得された、サンプル1についてのアニール処理前およびアニール処理後の、積層体表面側からガラス基板方向に向かう深さ方向における元素分布(すなわち膜厚方向における元素分布)を示すグラフである。なお、図4および図5において、横軸0が積層体表面位置であり、Geの分布を視認しやすくするため、Geについては3倍の倍率で示している。したがって、Geの実際の含有量はグラフ縦軸の値の1/3である。図6および図7は、XPSにより取得された、サンプル1についてのアニール処理前およびアニール処理後の積層体表面側から基板側に向かう深さ方向にArスパッタにより掘削し、深さ方向の各位置において取得したGe3dスペクトル(Dn:n=1、2、3…)を同時に示すものである。図中において、データDが積層体表面位置のデータであり、nが大きくなるほど、表面に垂直な方向にArスパッタにより掘り進んだ基板側の位置であることを意味する。なお、図6および図7において、表面でのGeOのピークはArスパッタによる影響で結合エネルギーがやや低い方にシフトしている。なお、図4、図5の横軸(スパッタ時間)におけるデータ取得間隔と図6、図7における表面から基板側に向かうデータ取得間隔は対応している。
図6と図7の比較により、表面において、GeOピークがアニール処理後に大きくなっており、他方、アニール処理前には存在していたGeのピークはアニール処理後には存在していないことが分かる。また、深さ方向内部において、アニール処理前はGeのピーク強度がGeOのピーク強度よりも大きかったが、アニール処理後には逆転し、GeOのピーク強度がGeのピーク強度よりも大きくなっている。少なくとも図7からサンプル1(アニール処理後)のアンカー領域においてはGeOの含有量はGeの含有量よりも大きいと判断できる。具体的には、図7における表面側から7〜8番目のデータがアンカー領域に相当すると考えられる。
<キャップ領域における酸化物層の存在評価>
XPSおよび透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope :TEM)により測定したエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)によりキャップ領域におけるアンカー金属の酸化物の存在を評価した(図6,7)。
図8はサンプル1の明視野走査透過電子顕微鏡像(Bright-field-STEM (Scanning Transmission Electron Microscope)像)であり、EDX分析箇所は図8中の中央近傍の白線で示した領域である。図9は、EDX分析結果による分析対象元素の深さ方向における分布を示すグラフである。透過型電子顕微鏡としては、日立ハイテクノロジー社製:HD-2700を用いた。
上記の通り、図7からサンプル1のアンカー領域においてGeOの存在が確認できた。一方、図9に示す各元素の深さ方向における分布から深さ方向の各位置における組成比が明らかであり、その組成比からGeOとGeの存在確率を算出することができる。
図9において、アンカー領域は横軸Geがピークとなっている9.8nm位置(図9中Pで示す)近傍である。アンカー領域は基板に隣接する領域であるため、Siが染みだしている。このピーク位置において、GeとSiとOの組成比をみると、Ge(12%)、Si(12%)、O(48%)となっているので、酸素は、SiOとGeOとして存在していることが分かる。
以上の通り、基板上にアンカー金属層、銀含有金属層を積層し、大気中にてアニール処理を行うことにより、アンカー金属層を構成するGeの一部が銀含有金属層を透過して銀含有金属層の表面側に移動し、酸化されてキャップ領域が形成されると共に、アンカー領域も少なくとも一部が酸化された状態となっていることが確認された。
次に、ガラス基板上にアンカー金属拡散制御層、アンカー領域、銀含有金属層およびキャップ領域を備えた実施例および比較例(但し、中間層、誘電体層は備えていない。)を作製し、その透明性および銀含有金属層の平滑性について評価した結果について説明する。
<実施例および比較例の作製方法>
まず、ガラス基板上に、表2に記載の材料からなるアンカー金属拡散制御層を成膜した。芝浦メカトロニクス社製スパッタ装置(CFS-8EP)を用いて下記条件にて成膜した。なお、下記アンカー金属層および銀含有金属層も同一のスパッタ装置を用いて成膜した。
−アンカー金属拡散制御層成膜条件−
RF(交流)投入電力=400W、
Ar:40sccm、O2:2.5sccm、Depo圧(成膜圧力):0.21Pa
成膜温度:室温
アンカー金属拡散制御層の成膜後、大気に曝露することなく、引き続き、Geからなるアンカー金属層を順次成膜した。
−アンカー金属層成膜条件−
DC(直流)投入電力=20W、
Ar:20sccm、Depo圧(成膜圧力):0.45Pa
成膜温度:室温
さらに、アンカー金属層の成膜後、大気に曝露することなく引き続き銀膜を成膜した。
−銀膜の成膜条件−
DC投入電力=80W、
Ar:15sccm、Depo圧:0.27Pa
成膜温度:室温
上記各層の成膜において、アンカー金属拡散制御層は20nm、アンカー金属層は0.68nm、銀含有金属層としての銀膜は2nmの膜厚とした。ここでの膜厚は設計膜厚である。
その後、各実施例および比較例について、それぞれ、大気中にて300℃、5minの条件でアニール処理を行った。
上記のようにして得られた実施例および比較例について、膜の均一性および透過性の評価を行った。
<均一性、透過性の評価>
−可視光の吸収率評価−
分光光度計により可視域である波長400nm〜800nmにおける光の吸収率を測定した。具体的には、分光光度計(HITACHI U−4000)を用いて、波長400nm〜800nmの範囲でスキャンスピード600nm/minで測定した。可視域におけるプラズモン吸収が生じると吸収率が上昇する。なお、吸収率は概ね10%以下であれば、実用上問題ないレベルである。図10は、各例についての測定結果であり、吸収率の波長依存性を示すグラフである。波長400nm〜800nmの範囲において吸収率10%超を示したものにはプラズモン吸収が「有」、吸収率10%以下であったものにはプラズモン吸収が「無」として評価し、表2中に示した。
なお、銀は粒状化すると可視域におけるプラズモン吸収が生じることから、可視光の吸収率が上昇することは粒状化している部分が増加することを意味する。すなわち、吸収率が小さいほど、銀の粒状化が小さく、膜の平坦性が高いことを示す。また、可視光の吸収率が上昇することは可視光の透過率の低下に繋がることから、吸収率の評価においてプラズモン吸収が「無」は、透明性の良好であると看做せる。
−銀含有金属層の電気抵抗率評価−
各実施例、比較例について、四端子法による電気抵抗率(Ωcm)の測定を三菱化学製ロレスタGP、ESPプローブを用いて行った。測定結果を表2中に示した。
銀含有金属層の電気抵抗率は、銀含有金属層に不連続な部分や、膜厚が変化する部分における部分的な抵抗上昇などにより上昇することから、膜の均一性の指標となる。電気抵抗率は、膜の均一性(特には、平坦性)が高いほど小さく、均一性が低いほど大きくなる。
<Hamaker定数の測定>
アンカー金属拡散制御層のHamaker定数は、既述の通り、van Ossの理論に基づいて求めた。
各例に用いられるアンカー金属拡散制御層を構成する材料を用い、別途ガラス基板上に20nmの膜厚で成膜し、各材料による膜に関し、水、ジードメタン、エチレングリコールの3液の接触角をそれぞれKYOWA製Dropmasterにて液滴滴下法にて測定し、薄膜の表面エネルギーにおけるLifshitz vdW項(γLW)を求めた。そして、A11=24πD γLWの関係式に基づいてHamaker定数A11を算出した。なお、ここでD=0.165nmを採用した。
表2に上記方法によって作製し、評価した実施例1〜6および比較例1についての膜構成および測定(評価)結果を纏めて示す。
表2に示すように、アンカー金属拡散制御層のHamaker定数が7.3×10−20J以上である実施例1〜6については、比較例1と比較して可視光のプラズモン吸収が抑制されており、かつ、電気抵抗率が低いという結果が得られた(図11参照)。すなわち、実施例1〜6は平坦性の高い銀含有金属層備えていると考えられる。
<HfOを含むアンカー金属拡散制御層の効果>
さらに、Hfを含むアンカー金属拡散制御層の効果について検証した結果を説明する。上記のようにして得られたアンカー金属拡散制御層としてHfOを用いた実施例1および、SiOを用いた比較例1の積層体について、深さ方向におけるGe量の分布を計測した。PHI社製Quantera SXMを用いたXPSにより評価した。
以下において、ガラス基板上に備えられたアンカー金属拡散制御層よりも銀含有金属層側の部分を銀含有積層体と称する。図12は、実施例1、比較例1の光学薄膜について、XPSにより取得された積層方向表面側からアンカー金属拡散制御層に向かう深さ方向におけるGe元素分布を示すグラフである。Arスパッタにより掘削し、深さ方向の元素分析を行った。図において、横軸0が積層体表面位置である。
図12に示す通り、アンカー金属拡散制御層にHfOを用いた場合、銀含有積層体とアンカー金属拡散制御層との界面領域にアンカー金属であるGeの量が増大する領域を備えており、アンカー領域が形成されていることがわかる。一方、アンカー金属拡散制御層にSiOを用いた場合、銀含有積層体とアンカー金属拡散制御層との界面においてGeが少なくなっており、アンカー金属拡散制御層上に成膜されたアンカー金属層のGeの多くが積層体の表面側に移動していることが分かる。
本結果により、Hamaker定数の高いHfOはGeの拡散を効果的に抑制することができることが確認できた。Geの拡散が抑制されているために、アンカー金属による銀含有金属層の粒状化を抑制するアンカー領域としての機能が維持されており、銀含有金属層の平坦化が実現できたと推察される。
本発明の光学薄膜の一形態である反射防止膜として反射防止性能に寄与する具体的な層構成の実施例7を説明する。
下記表3に、実施例の層構成、Essential Macleod(Thin Film Center社製、以下において、シミュレーションソフトと称する。)を用いて膜厚を最適化して求めた膜厚、および、シミュレーションに用いた各層の屈折率、消衰係数を示す。表3における屈折率は、全て波長550nmにおける屈折率で示している。
シミュレーションにおいて、基材としてFDS90(HOYA社製:屈折率1.385429)を想定し、中間層1〜3として、低屈折率層としてSiO(屈折率1.4724)、高屈折率層としてSubstance−H4(Merck社製:屈折率2.04288)を交互に積層した。アンカー金属拡散制御層をHfO層(屈折率2.06111)とし、アンカー金属拡散制御層上にアンカー金属であるGeおよび銀含有金属層である銀膜を備えることとし、さらにその上の誘電体層としてはMgF層(屈折率:1.38996)を備えた構成とした。そして、本層構成において、可視光域(波長400nm〜800nmにおける反射率の平均値が最も低くなるように膜厚を最適化した。シミュレーションにおいて、アンカー金属層と銀膜とは一体的に銀含有金属層として取り扱う。以下の実施例においても同様とする。
上記構成の反射防止膜について、シミュレーションにより得られた波長400nm〜800nmにおける反射率の波長依存性を図13に示す。
得られたシミュレーション結果より、本例の反射防止膜は450〜750nmの帯域において、反射率が0.2%以下であり、優れた反射防止性能を示すということが確認された。
なお、国際公開2016/189848号明細書において、本出願人により、反射防止膜を実際に作製する際には、銀含有金属層の形成精度によって、反射防止特性が大きく異なることが報告されている。国際公開2016/189848号明細書によれば、銀含有金属層の平坦性(均一性)が高いほど、反射防止特性についてのシミュレーション値との乖離が小さく、設計仕様により近い反射防止性能が得られる。
すなわち、既述の本発明の実施例のように、高い平坦性を有する銀含有金属層を備えた光学薄膜を用いて反射防止膜を作製することにより、設計値に沿った反射防止特性を得ることが可能である。
次に、本発明の光学薄膜のうち、表面に微細凹凸層を備えた反射防止膜についての効果を示すための実施例および比較例について説明する。
[実施例11]
下記表4に、実施例11の反射防止膜の層構成、シミュレーションソフトを用いて膜厚を最適化して求めた膜厚、およびシミュレーションに用いた各層の屈折率、消衰係数を示す。
実施例11の反射防止膜を以下のようにして作製した。
基材として、硝材オハラS−LAH53を用いた。表4における屈折率は、全て波長540nmにおける屈折率で示している。ラジカルアシストスパッタ(RAS:Radical Assisted Sputtering)装置にて基材のレンズ曲面にNbとSiONを交互に7層を順次成膜し、中間層を形成した。最後に成膜した9.79nmのNbがアンカー金属拡散制御層として機能する。さらにGeからなるアンカー金属層を0.68nm、銀膜を1.6nm積層成膜した。表4中に記載の銀含有金属層の膜厚は、アンカー金属層と銀膜の合計である。そして、大気中にて300℃、5minの条件でアニール処理を行った。その後、真空蒸着でMgFを30.64nm成膜し、Alを16nm成膜した。各層の膜厚は表4に示す。NbのHamaker定数は12×10−20Jである。本構成により良好な光学特性を持つ銀含有金属層が得られた。
最上層のAlを成膜後に沸騰水に5分間浸漬し温水処理を行った。温水処理後に最上層Alは凹凸ベーマイト層(微細凹凸層)を表面に有するベーマイト層となった。
なお、上記のようにして作製した反射防止膜における微細凹凸層の屈折率を分光エリプソメータで測定した。ベーマイト層の屈折率は表面側から銀含有金属層側に向かって1−1.29に変化するものであった。
上記構成の反射防止膜について、シミュレーションにより得られた波長400nm〜800nmにおける反射率の波長依存性を図14に示す。本シミュレーションにおいては、微細凹凸層の屈折率として前述の分光エリプソメータで測定して得られたデータを用いた。以下の例においても、微細凹凸層の屈折率のデータは共通とした。
以下の実施例および比較例は、それぞれ表に示す層構成を有する。表には、それぞれシミュレーションソフトを用いて膜厚を最適化して求めた膜厚、およびシミュレーションに用いた各層の屈折率、消衰係数を示す。
[比較例11]
比較例11の層構成を表5に示す。
表5に示すように、比較例11は、実施例11において、中間層の積層数を8層とし、銀含有金属層を備えていない構成とした。表5における屈折率は、全て波長540nmにおける屈折率で示している。
上記構成の反射防止膜について、シミュレーションにより得られた波長400nm〜800nmにおける反射率の波長依存性を図14に実施例11と併せて示す。
図14に示すように、本実施例11の光学部材では、400〜800nmの波長にわたって最大でも0.02%程度の非常に低い反射率が実現できた。一方、比較例11の光学部材では、400〜800nmの波長にわたって最大0.06%程度の反射率であった。
実施例11と比較例11の比較から微細凹凸層を備えた反射防止膜において、薄い銀含有金属層を導入することによって反射防止膜としてこれまで実現できないような低い反射率が得られることが明らかになった。
[実施例12]
実施例12の層構成を表6に示す。
本例においては、基材を、硝材オハラS−LAH55Vとした。表6における屈折率は、全て波長540nmにおける屈折率で示している。Si(表6中SiNと表記、以下において、SiNと表記する。)とSiO(1)を交互に積層した7層からなる中間層を備えるものとした。この中間層のうち最も銀含有金属層側のSiNはアンカー金属拡散制御層としての機能を有する。SiNのHamaker定数は9.5×10−20Jである。SiO(1)は、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance:ECR)スパッタで成膜した場合の膜の屈折率とした。
表6中の銀含有金属層の膜厚は、0.68nmのアンカー金属層と銀膜の膜厚の合計であり、その合計膜厚が2.1nm、2.7nm、および3.3nmの3つの構成について検討した(表の一行目に、各例について簡便のためAg 2.1nm、Ag 2.7nm、Ag 3.3nmと表記している。以下の例においても同様である。)。なお、ここでは銀含有金属層の膜厚が2.1nmおよび2.7nmの場合が本発明の実施例に相当する。銀含有金属層の膜厚が2.7nmを超える例について参考例とする。
上記構成の実施例12の反射防止膜について、シミュレーションにより得られた反射率の波長依存性を図15に示す。なお、図15には、比較のため、上記比較例11の結果を併せて示している。図15に示すように、銀含有金属層が3.3nm(参考例)の場合には、比較例11よりも反射率が高くなり性能が低下している。一方、銀含有金属層が2.7nm以下であれば非常に良好な低反射率が得られている。
[実施例13]
実施例13の層構成を表7に示す。
本例においては、基材を、硝材オハラS−LAH55Vとした。表7における屈折率は、全て波長540nmにおける屈折率で示している。HfOとSiOを交互に積層した7層の中間層を備えるものとした。また、中間層の上にアンカー金属拡散制御層としてAlを5.0nm膜厚で備えた構成である。
表7中の銀含有金属層の膜厚は、0.68nmのアンカー金属層と銀膜の膜厚の合計であり、その合計膜厚が2.3nm、2.7nm、および3.3nmの3つの構成について検討した。なお、銀含有金属層の膜厚が2.3nmおよび2.7nmの場合が本発明の実施例に相当する。銀含有金属層の膜厚が3.3nmである例は参考例とする。
上記構成の実施例13の反射防止膜について、シミュレーションにより得られた反射率の波長依存性を図16に示す。なお、図16には、比較のため、上記比較例11の結果を併せて示している。図16に示すように、銀含有金属層が3.3nm(参考例)の場合には、比較例11よりも反射率が高くなり性能が低下している。一方、銀含有金属層が2.7nm以下であれば非常に良好な低反射率がえられている。
[実施例14]
実施例14の層構成を表8に示す。
実施例14は、実施例13の構成において、アンカー金属拡散制御層としてAlを備えず、アンカー金属層を中間層上に直接備えた構成とした。実施例14においては、中間層のうちの最も銀含有金属層側に配されたHfOがアンカー金属拡散制御層を兼ねる。表8における屈折率は、全て波長540nmにおける屈折率で示している。
上記構成の実施例14の反射防止膜について、シミュレーションにより得られた反射率の波長依存性を図17に示す。なお、図17には、比較のため、上記比較例11の結果を併せて示している。図17に示すように、銀含有金属層が3.3nm(参考例)の場合には、比較例11よりも反射率が高くなり性能が低下している。一方、銀含有金属層が2.7nm以下であれば非常に良好な低反射率が得られている。また、実施例14は、実施例13よりも広範囲に亘って低い反射率が得られている。
[実施例15]
実施例15の層構成を表9に示す。
本例においては、基材を、硝材オハラFDS90とした。表9における屈折率は、全て波長550nmにおける屈折率で示している。SiO(2)とSubstance H4(メルク社製)を交互に4層した中間層を備えるものとした。中間層の上にアンカー金属拡散制御層としてAlを5.0nm膜厚で備えた構成である。本例のSiO(2)は、EB(Electron Beam)蒸着法で成膜した場合の膜の屈折率とした。
表9に記載の銀含有金属層の膜厚は、0.68nmのアンカー金属層と銀膜の膜厚の合計であり、その合計膜厚を3.3nmとした。本例は、微細凹凸層を備えていない、既述の第1の実施形態の光学薄膜の構成である。
実施例15の反射防止膜について、シミュレーションにより得られた反射率の波長依存性を図18に示す。
図18に示すように、本実施例の反射防止膜は、400〜800nmの波長にわたって最大でも0.5%以下の反射率が得られた。
実施例11〜14のように表面にベーマイトの微細凹凸層を備えた構成では、実施例15のような微細凹凸層を備えない構成と比較して非常に低い反射率が得られることが明らかである。一方で、上述のように組レンズの最表面側(最端面)のレンズ等の擦り耐性は実施例15のように微細凹凸層を備えていないものの方が格段に高い。したがって、本発明の光学薄膜を反射防止膜として用いる場合には、用途に応じて微細凹凸層を備えた構成または微細凹凸層を備えない構成のものを適宜使用すればよい。
1,21 光学薄膜(反射防止膜)
2 基材
3 中間層
4 銀含有金属層
5 誘電体層
6 アンカー金属拡散制御層
7 アンカー金属層
8 アンカー領域
8a アンカー領域への変質途中の領域
9 キャップ領域
9a キャップ領域の前駆領域
10,20 光学素子
11 高屈折率層
12 低屈折率層
22 微細凹凸層
100 撮像素子
G1〜G5 レンズ群
GC 光学部材
L11〜L51 レンズ
S1 開口絞り
Z1 光軸

Claims (8)

  1. 基材側から、中間層、銀を含有する銀含有金属層、および誘電体層がこの順に積層されてなり、
    前記中間層と前記銀含有金属層との間に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層を備え、
    該アンカー金属拡散制御層と前記銀含有金属層との間に、前記銀含有金属層の表面エネルギー未満であり、前記アンカー金属拡散制御層の表面エネルギーよりも大きい表面エネルギーを有するアンカー金属の酸化物を含むアンカー領域を備え、
    前記銀含有金属層と前記誘電体層との間に、前記アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域を備え、
    前記誘電体層の表面に、アルミナの水和物を主成分とする微細凹凸層をさらに備え、
    前記銀含有金属層、前記アンカー領域および前記キャップ領域の合計の膜厚が2.7nm以下である光学薄膜。
  2. 前記アンカー金属拡散制御層が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物または金属炭化物を含む請求項1記載の光学薄膜。
  3. 前記アンカー金属拡散制御層が、Hf酸化物を含有する請求項1記載の光学薄膜。
  4. 前記アンカー領域は、酸化されていない前記アンカー金属を含み、前記アンカー金属の酸化物の含有割合が、前記酸化されていない前記アンカー金属の含有割合よりも大きい請求項1から3いずれか1項記載の光学薄膜。
  5. 前記アンカー金属がGe、Sn、In、GaまたはZnである請求項1から4いずれか1項記載の光学薄膜。
  6. 請求項1から5いずれか1項記載の光学薄膜からなる反射防止膜を備えた光学素子。
  7. 請求項7記載の光学素子の前記反射防止膜が設けられた面が最表面に配置されてなる組レンズを備えた光学系。
  8. 基材上に中間層、銀を含有する膜厚が6nm以下の銀含有金属層、および誘電体層がこの順に積層されてなる光学薄膜の製造方法であって、
    前記中間層上に、Hamaker定数が7.3×10−20J以上であるアンカー金属拡散制御層を成膜し、
    該アンカー金属拡散制御層上に、前記銀含有金属層の表面エネルギー未満であり、前記アンカー金属拡散制御層の表面エネルギーよりも大きい表面エネルギーを有するアンカー金属からなるアンカー金属層を形成し、
    前記銀含有金属層を成膜し、
    前記基材上に前記中間層、前記アンカー金属拡散制御層、前記アンカー金属層および前記銀含有金属層が積層されてなる積層体を、酸素含有雰囲気下においてアニール処理し、
    前記積層体の最表面に前記誘電体層を成膜する、光学薄膜の製造方法。
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