JP6613772B2 - 微細繊維状セルロース含有物 - Google Patents
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Description
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[2] ヘーズが25%以下である[1]に記載の微細繊維状セルロース含有物。
[3] 全光線透過率が87%以上である[1]又は[2]に記載の微細繊維状セルロース含有物。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有物から形成される微細繊維状セルロース含有シート。
[5] YI値が1.4以下である[4]に記載の微細繊維状セルロース含有シート。
[6] 微細繊維状セルロース含有シートを200℃の真空条件下に4時間静置する前後のYI値の変化量の絶対値(ΔYI値)が30以下である[4]又は[5]に記載の微細繊維状セルロース含有シート。
[7]ヘーズが25%以下である[4]〜[6]のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有シート。
[8]全光線透過率が87%以上である[4]〜[7]のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有シート。
また、セルロース等の繊維の質量に関する値は、特に記載した場合を除き、絶乾質量(固形分)に基づく。「A及び/又はB」は、特に記載した場合を除き、AとBの少なくとも一方であることを指し、Aのみであってもよく、Bのみであってもよく、AとBとの双方であってもよいことを意味する。
本発明は、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有する微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース含有物に関する。本発明の微細繊維状セルロース含有物は、グルコース単位を含む。ここで、グルコース単位の含有率をCglu(質量%)、キシロース単位の含有率をCxyl(質量%)、マンノース単位の含有率をCman(質量%)、ガラクトース単位の含有率をCgal(質量%)、アラビノース単位の含有率をCara(質量%)とした場合、(Cxyl+Cman+Cgal+Cara)/Cgluの値が0.1以下である。また、微細繊維状セルロースのリン酸基又はリン酸基に由来する置換基の含有量は、0.5mmol/g以上である。
また、本発明の微細繊維状セルロース含有物は、黄色度が低い点にも特徴がある。さらに本発明の微細繊維状セルロース含有物は、経時後や加熱処理後であってもその黄色度が低く抑えられており、黄変が少ない。なお、本願明細書において、黄変とは主に黄色に変色することを意味するが、茶色や濃褐色または黒色に変色することも黄変に含めることとする。
微細繊維状セルロース含有物がキシロース単位、マンノース単位、ガラクトース単位及びアラビノース単位から選択される少なくともいずれかを含む場合は、キシロース単位、マンノース単位、ガラクトース単位及びアラビノース単位は、ヘミセルロース由来の単位であることが好ましい。
イオンクロマトグラフィーでの分析においては、流速を1ml/分、カラム温度を室温に設定する。移動相には水を用い、洗浄液には0.3Nの水酸化ナトリウム水溶液、0.1Nの水酸化カリウム水溶液、0.25Nの炭酸ナトリウム水溶液を用いる。分析においては、アラビノース、ガラクトース、グルコース、キシロース、マンノースの順序で分離され、溶出する。検出されるピークはダイオネックス社製の解析ソフト(PeakNet)を用いて解析する。
なお、各単糖単位の含有率について、解繊後に得られる微細繊維状セルロースを加水分解して測定した値は、解繊直前のパルプ原料を加水分解して測定した値と同等である。
このように本発明で用いる微細繊維状セルロースは所定量以上のリン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するものであり、これにより、微細繊維状セルロース含有物中における微細繊維状セルロースの分散性が良化する。また、微細繊維状セルロースが所定量以上のリン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有することにより、より効果的に微細繊維状セルロース含有物の透明性を向上させることができ、さらに微細繊維状セルロース含有物が黄変することを抑制することができる。
なお、微細繊維状セルロース含有シートのヘーズは、スラリー中の固形分濃度が0.2質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、ガラスセル(寸法:45mm×42mm×12mm)に注入し、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定する。測定においてはイオン交換水で満たしたガラスセルで校正を行う。
微細繊維状セルロース含有物は、微細繊維状セルロースの他に他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、水溶性高分子や界面活性剤を挙げることができる。水溶性高分子としては、合成水溶性高分子(例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、メタクリル酸アルキル・アクリル酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリアクリルアミドなど)、増粘多糖類(例えば、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、クインスシード、アルギン酸、プルラン、カラギーナン、ペクチンなど)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒロドキシエチルセルロースなど)、カチオン化デンプン、生デンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、アミロース等のデンプン類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類等、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の金属塩等を挙げることができる。また、界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤を使用することができる。
微細繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを含有するシートは高強度が得られる傾向がある。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。
微細繊維状セルロースは、セルロース原料を解繊処理することによって得られるが、本発明では、解繊処理の前にセルロース原料に前加水分解処理や、蒸解処理、脱リグニン処理等を施し、かつリン酸化処理を施すことが好ましい。本発明者によれば、前加水分解処理や、蒸解処理、脱リグニン処理等を施すことや、これらの条件を適切に調整することなどが、微細繊維状セルロース含有物に含まれる各種の単糖単位を所定の割合に制御するために重要であると推定されている。
前加水分解処理工程に先立って、セルロース原料である木材チップを水に浸漬させる工程を設けてもよい。このような浸漬工程を設けることにより、前加水分解を促進させることができる。浸漬時間は1時間以上であることが好ましく、10時間以上であることがより好ましい。
微細繊維状セルロースの製造工程では、蒸解工程や脱リグニン工程を設けてもよい。蒸解工程は、前加水分解処理工程の後に設けることが好ましく、前加水分解工程の反応終了後、脱水あるいは希釈洗浄、脱水した後に設けられることが好ましい。蒸解工程では、アルカリ蒸解法が用いられることが好ましい。アルカリ蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を採用することができる。中でも、パルプ品質、エネルギー効率等を考慮すると、クラフト蒸解法が好ましい。例えば、木材チップをクラフト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は5〜75%であることが好ましく、20〜35%であることがより好ましい。有効アルカリ添加率は絶乾木材チップの全質量に対して5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがよりこのましい。また、蒸解温度は140〜170℃であることが好ましい。
本発明では、未晒パルプは、好ましくは酸素晒脱リグニン工程を経て、漂白工程へ送られる。本発明の漂白工程では、二酸化塩素、アルカリ、酸素、過酸化水素、オゾンといった公知のECF漂白剤を組合せて使用することができる。なお、各漂白工程後には前述の洗浄工程を設けることができる。
本発明においては、微細繊維状セルロースはリン酸基又はリン酸基に由来する置換基(以下、単にリン酸基ということもある)を有する。
リン酸化処理では、上記工程を経て得られた繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及び/又はその塩(以下、「化合物A」という。)を反応させることにより行うことができる。この反応は、尿素及び/又はその誘導体(以下、「化合物B」という。)の存在下で行ってもよく、これにより、微細繊維状セルロースのヒドロキシル基に、効率よくリン酸基を導入することができる。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1〜300分間であることが好ましく、1〜200分間であることがより好ましいが、特に限定されない。
リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.1〜3.5mmol/gであることが好ましく、0.14〜2.5mmol/gがより好ましく、0.2〜2.0mmol/gがさらに好ましく、0.2〜1.8mmol/gよりさらに好ましく、0.4〜1.8mmol/gが特に好ましく、最も好ましくは0.6〜1.8mmol/gである。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースのスラリーの粘度を適切な範囲に調整することができる。
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸化処理工程と、後述する解繊処理工程の間にアルカリ処理を行うことができる。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、リン酸基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5〜30分間が好ましく、10〜20分間がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、リン酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100〜100000質量%であることが好ましく、1000〜10000質量%であることがより好ましい。
リン酸基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
本発明は、上述した微細繊維状セルロース含有物から形成される微細繊維状セルロース含有シートに関するものでもある。
なお、微細繊維状セルロース含有シートのヘーズは、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定する。
また、微細繊維状セルロース含有シートの坪量は、特に限定されるものではないが、10〜100g/m2であることが好ましく、20〜70g/m2であることがより好ましい。
微細繊維状セルロース含有シートの製造工程は、上述した微細繊維状セルロース含有スラリーを基材上に塗工する工程又は、微細繊維状セルロース含有スラリーを抄紙する工程を含む。
塗工工程は、微細繊維状セルロース含有スラリーを基材上に塗工し、これを乾燥して形成された微細繊維状セルロース含有シートを基材から剥離することにより、シートを得る工程である。塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。基材の質は、特に限定されないが、微細繊維含有スラリーに対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて良いが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂板または金属板が好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛版、銅版、鉄板等の金属板および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を用いることができる。
微細繊維状セルロース含有シートの製造工程は、微細繊維状セルロース含有スラリーを抄紙する工程を含んでもよい。抄紙工程で抄紙機としては、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等公知の抄紙を行ってもよい。
微細繊維状セルロース含有物は、マトリックス樹脂等と混合して、微細繊維状セルロース含有複合シートとしてもよい。このような微細繊維状セルロース含有複合シートでは、微細繊維状セルロースとマトリックス樹脂が一体化されたシートであってもよい。
微細繊維状セルロース含有物は、上述したように、微細繊維状セルロース含有スラリーであってもよく、微細繊維状セルロース含有粉粒物であってもよい。微細繊維状セルロース含有物が微細繊維状セルロース含有粉粒物である場合、微細繊維状セルロース含有物は、粉状及び/又は粒状の物質からなる。ここで、粉状物質は、粒状物質よりも小さいものをいう。一般的には、粉状物質は粒子径が1nm以上0.1mm未満の微粒子をいい、粒状物質は、粒子径が0.1〜10mmの粒子をいうが、特に限定されない。粉粒物の粒子径はレーザー回折法を用いて測定・算出することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(Microtrac3300EXII、日機装株式会社)を用いて測定した値とする。
本発明による微細繊維状セルロース含有物の用途は特に限定されない。一例としては、微細繊維状セルロース含有スラリーを用いて製膜し、各種フィルムとして使用することができる。別の例としては、微細繊維状セルロース含有スラリーは、増粘剤として各種用途(例えば、食品、化粧品、セメント、塗料、インクなどへの添加物など)に使用することができる。さらに、樹脂やエマルションと混合し補強材としての用途に使用することもできる。
[前加水分解(脱ヘミセルロース)]
針葉樹材チップを絶乾質量で300g採取し、水道水10リットルに一晩浸漬した。その後、チップを取り出して400メッシュの篩に空け、濾別した。この脱水後のチップを2.5リットル容量のオートクレーブに入れ、液質量比(絶乾後のチップの質量を1とした場合)が3になるように水道水を加えた後、165℃で30分間加熱し、前加水分解を行った。この時のPファクターは380であった。
前加水分解後、オートクレーブの脱気コックから廃ガスを抜き出し、オートクレーブ内の圧力が0になったことを確認した後、処理後のチップを400メッシュの篩に空け、濾別した。濾別後のチップを再度2.5リットル容量のオートクレーブに入れ、液比が5となるように蒸解液を加え、蒸解温度165℃、蒸解時間120分の条件下でクラフト蒸解を行なった。蒸解液は、チップの絶乾質量に対して活性アルカリを21質量%含み、硫化度は28%とした。蒸解後、黒液とパルプを分離し、パルプを8カットのスクリーンプレートを備えたフラットスクリーンで精選して、蒸解後パルプを得た。
蒸解後パルプを絶乾質量で70g採取し、絶乾パルプの全質量に対して苛性ソーダを2.0質量%添加し、次いでイオン交換水で希釈してパルプ濃度を10質量%に調整した。このスラリーを間接加熱式オートクレーブに入れ、99.9%の圧縮酸素ガスを注入してゲージ圧力を0.5MPaとし、100℃で60分間、酸素晒を行った。酸素晒終了後、ゲージ圧力が0.05MPa以下になるまで減圧し、パルプをオートクレーブから取り出し、イオン交換水7リットルを用いて洗浄した後、脱水した。このようにして、酸素晒後パルプを得た。
酸素晒後パルプを絶乾質量で60g採取し、プラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10質量%に調整した。その後、絶乾パルプの全質量に対して1.8質量%の二酸化塩素を添加し、温度が70℃の恒温水槽に70分間浸漬してD0段処理を行った。D0段処理後に得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。D0段処理後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を加えてパルプ濃度を10質量%に調整した後、絶乾パルプの全質量に対して苛性ソーダを1.0質量%、過酸化水素を0.3質量%となるように添加してよく混合した。その後、温度が70℃の恒温水槽に100分間浸漬してE/P段処理を行った。得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。
E/P段処理後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10質量%に調整した後、絶乾パルプの全質量に対して二酸化塩素を0.3質量%添加し、温度が70℃の恒温水槽に80分間浸漬し、D1段漂白処理を行った。得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄し、漂白パルプを得た。
漂白パルプを、リン酸二水素ナトリウム二水和物とリン酸水素二ナトリウムと尿素の混合水溶液に含浸した。この漂白パルプ含有水溶液を、漂白パルプの絶乾質量100質量部に対して、水190質量部、リン酸二水素ナトリウム二水和物44質量部、リン酸水素二ナトリウム33質量部及び尿素160質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを140℃に設定した送風乾燥機で25分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
上記リン酸化パルプにイオン交換水を添加して、1.0質量%のパルプ分散液とした。このパルプ分散液を、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)で、245MPaの圧力にて5回パスさせ、微細繊維状セルロース分散液を得た。
微細繊維状セルロース分散液の固形分濃度が0.5質量%となるよう濃度調整を行った。その後、微細繊維状セルロース100質量部に対して、ポリエチレンオキサイド(住友精化製、PEO−18)の0.5質量%水溶液を20質量部添加した。次いで、シートの仕上がり坪量が37.5g/m2になるように分散液を計量して、市販のアクリル板に展開し、35℃、相対湿度15%の恒温恒湿器にて乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の金枠(内寸が180mm×180mmの金枠)を配置した。以上の手順により、微細繊維状セルロース含有シートを得た。
実施例1において、前加水分解の処理時間を50分とした以外は実施例1と同様にし、微細繊維状セルロース分散液、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。
実施例1において、前加水分解の処理時間を100分とした以外は実施例1と同様にし、微細繊維状セルロース分散液、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。
実施例1において、前加水分解を行わなかった以外は実施例1と同様にし、微細繊維状セルロース分散液、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。
[微細繊維状セルロース分散液の脱リン酸・脱ヘミセルロース処理]
比較例1で得られた微細繊維状セルロース分散液にイオン交換水を添加し、微細繊維状セルロースの固形分濃度を0.215質量%に調整した。この分散液1.5Lに尿素を150g溶解させ、全量をパルプエアーバス式研究用マルチダイジェスター(マタリスチール社製、FIN-01450)の付属SUS製容器に分取し、100℃で1時間の加水分解処理を行った。加熱後の分散液を一定量分取し、冷却高速遠心分離機(コクサン社、H−2000B)を用いて、15000G×10分の条件で遠心分離した。その後、上澄みを除き、得られた沈殿に元の体積と等しくなるようイオン交換水を加え、分散させた。遠心分離、沈殿のイオン交換水への分散操作をもう一度時繰り返し、残留している尿素を取り除いた。
微細繊維状セルロース分散液の固形分濃度が0.2質量%になるよう濃度調整を行った。その後、微細繊維状セルロース100質量部に対して、ポリエチレンオキサイド(住友精化製「PEO−18」)の0.2質量%水溶液を20質量部添加した。次いで、シートの仕上がり坪量が37.5g/m2になるように分散液を計量して、市販のアクリル板に展開し35℃、相対湿度15%の恒温恒湿器にて乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の金枠(内寸が180mm×180mmの金枠)を配置した。以上の手順により、微細繊維状セルロース含有シートを得た。
比較例2において、加水分解処理の時間を4時間とした以外は比較例2と同様にし、微細繊維状セルロース分散液、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。
実施例1において、リン酸化パルプの代わりにTEMPO酸化パルプを使用した以外は実施例1と同様にし、微細繊維状セルロース分散液、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。なお、使用したTEMPO酸化パルプは下記の手順に従って製造した。
実施例1で得られた漂白パルプを、乾燥質量100質量部採取し、TEMPO1.25質量部と、臭化ナトリウム12.5質量部とを水10000質量部に分散させた。次いで、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が8.0mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なした。
その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。滴定法により測定される置換基(カルボキシ基)の導入量は1.5mmol/gであった。
[ヘミセルロース含有率]
実施例および比較例の漂白工程により得た漂白パルプを、絶乾質量で200mg採取し、これに72%硫酸7.5mlを加えた。その後、振盪恒温槽に入れ、30℃、160rpmで60分間振盪攪拌して前段の加水分解を行った。次いで、該前段の加水分解後の漂白パルプ分散液30μlを、超純水840μl を入れた1.5mlチューブにとり、攪拌して硫酸濃度4質量%に希釈した。その後、オートクレーブにて121℃で1時間処理し、後段の加水分解処理を行った。上記の前段、後段の2回の加水分解処理により、漂白パルプが含有する多糖を単糖まで加水分解した。
イオンクロマトグラフィーでの分析においては、流速を1ml/分、カラム温度を室温に設定した。移動相には水を用い、洗浄液には0.3Nの水酸化ナトリウム水溶液、0.1Nの水酸化カリウム水溶液、0.25Nの炭酸ナトリウム水溶液を用いた。分析においては、アラビノース、ガラクトース、グルコース、キシロース、マンノースの順序で分離され、溶出する。検出されるピークはダイオネックス社製の解析ソフト(PeakNet)を用いて解析した。
定量した含有率から、下記式に従ってグルコースの含有率に対するヘミセルロース由来の単糖の含有率の比を取り、微細繊維状セルロース分散液、および微細繊維状セルロース含有シートのヘミセルロース含有率の指標とした。
(Cxyl+Cman+Cgal+Cara)/Cglu
実施例および比較例で得られた微細繊維状セルロース分散液の固形分濃度が0.2質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、イオン交換樹脂による処理を行い、アルカリを用いた滴定によってリン酸基量を測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%の微細繊維状セルロース分散液に体積比が1/10量の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024;コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の微細繊維状セルロース分散液に、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定の対象とする微細繊維状セルロース分散液中の固形分(g)で除して、リン酸基量(mmol/g)とした。
実施例および比較例で得られた微細繊維状セルロース分散液の固形分濃度が0.2質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、ガラスセル(寸法:45mm×42mm×12mm)に注入した。その後、JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて全光線透過率(%)を測定した。なお、測定においてはイオン交換水で満たしたガラスセルで校正を行った。
実施例および比較例で得られた微細繊維状セルロース分散液の固形分濃度が0.2質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、ガラスセル(寸法:45mm×42mm×12mm)に注入した。その後、JIS K7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いてヘーズ(%)を測定した。なお、測定においてはイオン交換水で満たしたガラスセルで校正を行った。
実施例および比較例で得られた微細繊維状セルロース分散液の固形分濃度が1.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、ガラスセル(寸法:45mm×42mm×12mm)に注入した。その後、ガラスセルに蓋をし、40℃、相対湿度90%の恒温恒湿器に240時間静置した。次いで、プリンター用紙(富士ゼロックス社製、C2r)を背景として正面から目視観察し、下記の基準に従って微細繊維状セルロース分散液の黄色度を評価した。
◎:黄色味が感じられない
○:やや黄色味が感じられる
△:明らかに黄色味が感じられる
JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて実施例および比較例で得られた微細繊維状セルロース含有シートの全光線透過率を測定した。
JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて実施例および比較例で得られた微細繊維状セルロース含有シートのヘーズを測定した。
JIS K 7373に準拠し、測色計(スガ試験機社製、Colour Cutei)を用いて実施例および比較例で得られた微細繊維状セルロース含有シートの加熱前後の黄色度(YI)を測定した。また、加熱前後のYIの差分の絶対値をΔYIとして評価した。なお、加熱条件は、200℃で4時間の真空乾燥とした。
評価の結果を表1に示す。
一方で、比較例1及び4では、微細繊維状セルロース分散液、および微細繊維状セルロース含有シートの透明性は高いものの、実施例と比較して黄色度が大きい結果となった。
また、微細繊維状セルロース分散液の脱リン酸、脱ヘミセルロースを行った比較例2及び3では、脱ヘミセルロースの効果で微細繊維状セルロース分散液、および微細繊維状セルロース含有シートの黄色度はやや抑制できたものの、脱リン酸により微細繊維状セルロースが凝集し、透明性が低下する結果となった。
Claims (8)
- リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有する微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース含有物であって、
前記微細繊維状セルロース含有物はグルコース単位を含み、
前記グルコース単位の含有率をCglu(質量%)、キシロース単位の含有率をCxyl(質量%)、マンノース単位の含有率をCman(質量%)、ガラクトース単位の含有率をCgal(質量%)、アラビノース単位の含有率をCara(質量%)とした場合、(Cxyl+Cman+Cgal+Cara)/Cgluの値が0.1以下であり、
前記微細繊維状セルロースのリン酸基又はリン酸基に由来する置換基の含有量は0.5mmol/g以上であり、
前記リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基である、微細繊維状セルロース含有物;
- ヘーズが25%以下である請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有物。
- 全光線透過率が87%以上である請求項1又は2に記載の微細繊維状セルロース含有物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロース含有物から形成される微細繊維状セルロース含有シート。
- YI値が1.4以下である請求項4に記載の微細繊維状セルロース含有シート。
- 前記微細繊維状セルロース含有シートを200℃の真空条件下に4時間静置する前後のYI値の変化量の絶対値(ΔYI値)が30以下である請求項4又は5に記載の微細繊維状セルロース含有シート。
- ヘーズが25%以下である請求項4〜6のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロース含有シート。
- 全光線透過率が87%以上である請求項4〜7のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロース含有シート。
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