実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る電気装置の第一例を示す図であり、図2は実施の形態1に係る電気装置の第二例を示す図である。図3は、実施の形態1に係る第一通信モジュール及び第二通信モジュールの構成を示す図である。図4は実施の形態1に係る第一通信モジュールの送信回路の第一例を示す図であり、図5は実施の形態1に係る第一通信モジュールの送信回路の第二例を示す図である。図6は、実施の形態1に係る絶縁型変換回路を示す図である。図7は比較例1の電気装置におけるノイズ経路を説明する図であり、図8は比較例2の電気装置におけるノイズ経路を説明する図である。図9は、実施の形態1に係る電気装置におけるノイズ経路を説明する図である。図10は実施の形態1に係る電気装置の第三例を示す図であり、図11は実施の形態1に係る電気装置の第四例を示す図である。実施の形態1の電気装置90は、互いに通信を行う2つ以上の機器を備えている。ここでは、複雑にならないように2つ以上の機器が2つであることを前提に説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
実施の形態1の電気装置90は、第一機器1、第二機器2を備えている。第一機器1は、交流電源または直流電源である電源4によって電力供給されて動作する。また、第二機器2は、第一機器1を介して電源4の電力により動作する。なお、図1、図2では、電源4が交流電源である例を示した。電源4が交流電源の場合には、単相または3相交流電源を用いることができる。電源4が単相の場合には、単相2線、単相3線のいずれかを用いることができる。電源4が3相の場合は、3相3線、3相4線のいずれを用いることができる。本実施の形態においては、いずれの電源であってもよい。
第一機器1は、第一機器筐体22、第一ノイズフィルタ5、コンバータ回路30、第一負荷機器7、絶縁型変換回路12、第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13、第一機器基板28、第一機器筐体22の金属部3と第一ノイズフィルタ5との間に接続されたコンデンサ6、第一機器筐体22の金属部3と第一通信モジュール10との間に接続されたコンデンサ17を備える。第二機器2は、第二機器筐体23、第二ノイズフィルタ8、第二負荷機器9、絶縁型変換回路20、第二通信モジュール11、第二信号絶縁回路14、第二機器基板29を備えている。第一機器1と第二機器2は、通信線16により互いに通信を行う。第二機器2は電源線15により第一機器1から供給された交流電力により動作する。通信線16は1線以上であり、通信線16が1線である場合は、通信信号のリターン経路は電源線15等である。
第一ノイズフィルタ5は電源4及び第一負荷機器7、絶縁型変換回路12からのノイズを除去する。コンバータ回路30は第一ノイズフィルタ5を通して供給された交流電力を直流電力に変換する。コンバータ回路30により生成された直流電力は、第一負荷機器7、絶縁型変換回路12に供給される。絶縁型変換回路12は、絶縁型の電力変換回路であり、絶縁型のDC−DCコンバータ又は絶縁トランスが用いられる。絶縁型変換回路12は、第一通信モジュール10、フォトカプラである第一信号絶縁回路13に直流電力を供給する。第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13は、絶縁型変換回路12により生成された直流電力のみで動作する。第一通信モジュール10は、第一信号絶縁回路13を介して第二機器2と通信を行う。第一信号絶縁回路13は、第一通信モジュール10と通信線16とを絶縁しながら通信信号を通過させる。コンデンサ6は、第一ノイズフィルタ5と第一機器筐体22の金属部3との間に接続された対地間コンデンサであり、Yコンデンサと呼ばれることもある。なお、第一信号絶縁回路13は絶縁トランスであってもよい。第一信号絶縁回路13が絶縁トランスの場合は、第一信号絶縁回路13は絶縁型変換回路12から直流電力を供給される必要はないので、絶縁型変換回路12と第一信号絶縁回路13との電力供給線は不要である。特に断らない限り、第一信号絶縁回路13はフォトカプラの例で説明する。
第一負荷機器7は、コンバータ回路、インバータ回路などスイッチング素子を有する回路、すなわち電力変換回路45と、電力変換回路45で生成した電力を消費する負荷となる回路及びモータ等の動力機を有している。インバータ回路は、交流モータ等の交流負荷に交流電力を供給するために、直流電力を交流電力に変換する。第一負荷機器7のコンバータ回路は、コンバータ回路30と異なる電圧で動作する直流負荷がある場合に用いる。第一負荷機器7は、必ずしも第一機器1の第一機器筐体22の内部に入っている必要はないが、本実施の形態では第一機器1の第一機器筐体22の内部に入っているものとして説明する。第一負荷機器7は電力変換回路45を備えているので、スイッチングノイズを発生させる。第一機器基板28には、第一ノイズフィルタ5、コンバータ回路30、第一負荷機器7の電力変換回路45、絶縁型変換回路12、第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13、コンデンサ6、コンデンサ17が搭載されている。第一機器1の第一機器筐体22は、少なくとも一部に金属部3を有する。第一負荷機器7に含まれる負荷は、電力変換回路45、放電機器、モータなどノイズを発生させる機器を含むため、第一負荷機器7がノイズ源となっている。なお、コンバータ回路30がスイッチング素子を有する回路の場合は、スイッチングノイズを発生させる。
第二ノイズフィルタ8は電源線15を介して供給される電源4の交流電力、及び第二負荷機器9、絶縁型変換回路20からノイズを除去する。第二負荷機器9は、電力を消費する負荷となる回路及びモータ等の動力機を有している。図1に示した電気装置90の第一例における第二機器2では、交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路46を備えている例を示した。コンバータ回路46は、第二ノイズフィルタ8から供給された交流電力を直流電力に変換する。コンバータ回路46により生成された直流電力は、絶縁型変換回路20に供給される。絶縁型変換回路20は、絶縁型の電力変換回路であり、絶縁型のDC−DCコンバータ又は絶縁トランスが用いられる。絶縁型変換回路20は、第二通信モジュール11、フォトカプラである第二信号絶縁回路14に直流電力を供給する。第二通信モジュール11、第二信号絶縁回路14は、絶縁型変換回路20により生成された直流電力のみで動作する。第二通信モジュール11は、第二信号絶縁回路14を介して第一機器1と通信を行う。第二信号絶縁回路14は、第二通信モジュール11と通信線16とを絶縁しながら通信信号を通過させる。なお、第二信号絶縁回路14は絶縁トランスであってもよい。第二信号絶縁回路14が絶縁トランスの場合は、第二信号絶縁回路14は絶縁型変換回路20から直流電力を供給される必要はないので、絶縁型変換回路20と第二信号絶縁回路14との電力供給線は不要である。特に断らない限り、第二信号絶縁回路14はフォトカプラの例で説明する。
図2に示した電気装置90の第二例における第二機器2では、絶縁型変換回路20が交流電力から直流電力に変換する絶縁型のAC−DCコンバータである例を示した。なお、図1に示した電気装置90の第一例における第二機器2では、第二機器筐体23が金属部24を有する例を示した。また、図2に示した電気装置90の第二例における第二機器2では、第二機器筐体23が金属部24を有していない例を示した。
第二機器基板29には、第二ノイズフィルタ8、第二負荷機器9の負荷機器、絶縁型変換回路20、第二通信モジュール11、第二信号絶縁回路14が搭載されている。図1に示した電気装置90の第一例における第二機器2では、第二機器基板29には、第二負荷機器9の負荷機器であるコンバータ回路46が搭載される。
第一通信モジュール10及び第二通信モジュール11は、受信回路64、送信回路65、マイコン等の信号処理回路66を備えている。例えば、第一通信モジュール10において、第一機器1内の負荷状況が信号処理回路66にて処理され、負荷状況等の通信信号が送信回路65から第二通信モジュール11へ送信される。第二通信モジュール11は、第一機器1からの通信信号を受信回路64で受信し、信号処理回路66にて第一機器1内の負荷状況のデータ等に変換する。また、第二通信モジュール11において、第二機器2内の負荷状況が信号処理回路66にて処理され、負荷状況等の通信信号が送信回路65から第一通信モジュール10へ送信される。第一通信モジュール10は、第二機器2からの通信信号を受信回路64で受信し、信号処理回路66にて第二機器2内の負荷状況のデータ等に変換する。
コンバータ回路30、第一負荷機器7に搭載されたコンバータ回路、インバータ回路などの電力変換回路45、第一負荷機器7に搭載された放電機器、モータなどがノイズ源となる。コンバータ回路30、電力変換回路45は、スイッチング素子を有しており、意図的にスイッチィング素子をスイッチ(オン、オフ)させているため、スイッチングノイズを発生させる。発生するスイッチングノイズの周波数は、キャリア周波数及び使用するスイッチング素子の特性によって異なるが、10kHzから1GHz程度の周波数成分を有している。
ノイズ源となる、コンバータ回路30、電力変換回路45を含む第一負荷機器7と、第一通信モジュール10、絶縁型変換回路12、第一信号絶縁回路13の少なくとも1つとは、同一の第一機器基板28上に配置されている。図1、図2では、コンバータ回路30、電力変換回路45を含む第一負荷機器7の一部、第一通信モジュール10、絶縁型変換回路12、第一信号絶縁回路13、コンデンサ6、コンデンサ17が第一機器基板28に搭載されている例を示した。
一般的に、第一機器基板28はプリント基板であり、第一機器基板28上で第一通信モジュール10又は絶縁型変換回路12から10cm以内にノイズ源となる第一負荷機器7を接続する配線パターンが近接して配置される(近づけて配置される)場合が多い。この場合であっても、本実施の形態の構成、すなわち後に詳しく述べるコンデンサ17の接続構成(コンデンサ接続構成)により通信線16に混入するノイズを低減させることができる。また、一般的に第一機器1と第二機器2との間を接続する通信線16と電源線15とは、一部並走している。通常、第一機器1と第二機器2の外側では通信線16と電源線15とがまとめて配線されると共に、第一機器1及び第二機器2の内部でも通信線16と電源線15とが並走されて配線されることが多い。更に、第一信号絶縁回路13と第一ノイズフィルタ5は第一機器基板28上で近接させて配置される(近づけて配置される)場合が多く、その場合には通信線16につながる配線パターンと電源線15につながる配線パターンとが並走して配線されることがある。また、第二機器2の第二信号絶縁回路14と第二ノイズフィルタ8についても同様である。なお、一般的に、第二機器基板29もプリント基板である。
第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13は、絶縁型変換回路12で生成した直流電力が供給される。絶縁型変換回路12には、絶縁型のDC−DCコンバータ又は絶縁トランスが用いられる。絶縁型のDC−DCコンバータには、フライバック方式、フォーワード方式など、様々な方法が知られているが、本実施の形態においてはいずれの方式でも構わない。図6には、絶縁型のDC−DCコンバータの一例を示した。絶縁型変換回路12及び図2に示した絶縁型変換回路20は、例えば図6に示した絶縁型のDC−DCコンバータを用いることができる。図6に示した絶縁型変換回路12は、トランス85、スイッチ86、ダイオード87を備えている。また、図6に示した絶縁型変換回路20は、トランス85、スイッチ86、ダイオード87を備えている。入力ピン83a、83bにはコンバータ回路30又はコンバータ回路46から出力された直流電力が入力される。スイッチ86がオン、オフを繰り返すことで、入力された直流電力と絶縁された直流電力を出力ピン84a、84bから出力することができる。なお、第一機器1の絶縁型変換回路12は、図2に示した絶縁型変換回路20のように、交流電力から直流電力に変換し出力する絶縁型のAC−DCコンバータでも構わない。しかし、回路方式が簡単な絶縁型のDC−DCコンバータを用いられるのが一般的である。絶縁型のAC−DCコンバータは、例えば図6の回路において、入力ピン83a、83b側にブリッジ回路等の整流回路が配置された回路である。
第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13は、絶縁型変換回路12で生成した直流電力のみで動作する。絶縁型変換回路12は一種類の直流電力を出力しても良いが、必要に応じて複数の絶縁型変換回路12を用いて電圧の異なる複数の直流電力を出力しても良い。複数の直流電力を出力する場合には、複数の絶縁型変換回路12間の高周波成分に対するインピーダンスを等しくするために、複数の絶縁型変換回路12間にコンデンサを入れる(コンデンサ追加例1)、もしくは各絶縁型変換回路12と第一機器1の第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサを入れる(コンデンサ追加例2)のが望ましい。ここでインピーダンスを等しくすると記載しているが、実際にはコンデンサ自身の容量と残留インダクタンス、残留抵抗によって決まる等価回路で決められるインピーダンスを有するため、コンデンサの両端のインピーダンスは0にはならない。しかし、本実施の形態においては、絶縁された回路におけるインピーダンスと、コンデンサのインピーダンスを比較しており、実質的な比較としてコンデンサの両端のインピーダンスは十分に小さいとみなすことができる。
第二機器2における、第二通信モジュール11、第二信号絶縁回路14は、絶縁型のDC−DCコンバータ又は絶縁型のAC−DCコンバータ又は絶縁トランスである絶縁型変換回路20で生成した直流電力が供給されて動作する。この場合においても、必要に応じて複数の絶縁型変換回路20を用いて複数の直流電力を出力しても良い。複数の直流電力を出力する場合には、複数の絶縁型変換回路20間の高周波成分に対するインピーダンスを等しくするために、複数の絶縁型変換回路20間にコンデンサを入れる(コンデンサ追加例1)、もしくは各絶縁型変換回路20と第二機器2の第二機器筐体23の金属部24との間にコンデンサを入れる(コンデンサ追加例2)のが望ましい。なお、第二機器2において、コンデンサ追加例2を採用する場合には、図1に示したように金属部24を有する第二機器筐体23を用いる。
一般的に、特許文献1の空気調和機の室外ユニットのように、第一通信モジュール10に相当する室外通信モジュールと、第一機器筐体22の金属部3に相当する室外筐体の底板との間は配線で接続されておらず、直流電流が流れることはない。すなわち、第一通信モジュール10に相当する室外通信モジュールと、第一機器筐体22の金属部3に相当する室外筐体の底板とは、直流的に絶縁されている。第一機器1の第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が接続されていない場合を考える。第一通信モジュール10の基準電位を基準電位1とし、第一機器筐体22の金属部3の電位を基準電位2とすると、基準電位1が生じている導体と基準電位2が生じている導体との間は直流的に絶縁されている。基準電位1と基準電位2との間には第一機器1の動作中に電位差が生じる。このように配線で接続されずに直流的に絶縁された回路あっても、閉じた系の中で動作させることができれば、基準電位1を基準に動作させることは可能である。しかし、高周波成分(交流成分)を含むスイッチングノイズ(交流電力)に対しては、基準電位1と基準電位2との間に配線がないだけの絶縁は、基準電位1が生じている導体と基準電位2が生じている導体との間の寄生容量によって交流電流が流れるので、必ずしも絶縁にはならない。すなわち、基準電位1が生じている導体と基準電位2が生じている導体との間に配線がないだけの絶縁は、必ずしも交流的に絶縁にはならない。適宜、基準電位1が生じている又は生じる導体、基準電位2が生じている又は生じる導体は、基準電位1の導体、基準電位2の導体と表記する。
実施の形態1の電気装置90は、特許文献1の空気調和機と異なり、基準電位1の導体と基準電位2の導体との間にコンデンサ17が配置されていることが特徴である。第一通信モジュール10の基準電位は、通常、第一通信モジュール10に直流電力を供給する絶縁型変換回路12の−出力側(図10参照)の電位である。絶縁型変換回路12が出力する電圧は、−出力側の電位と+出力側の電位との間の電圧である。−出力側の電位は+出力側の電位に対して電圧の基準となり、−電位側の導体は+電位側の導体に対して電圧の基準となっている。−出力側の電位は+出力側の電位に対して基準となるので、適宜、−出力側をグランドと表記する。絶縁型変換回路12により直流電力が供給される−出力側の電位の導体(−電位側の導体)及び+出力側の電位の導体(+電位側の導体)が、基準電位2の導体すなわち第一機器筐体22の金属部3と直流的に絶縁されている。第一通信モジュール10内では、−電位側の導体は基準電位1が生じる導体すなわちグランド線であり、+電位側の導体は回路を駆動する駆動電源線である。なお、絶縁型変換回路12により直流電力が供給される第一信号絶縁回路13でも同様である。絶縁型変換回路12から第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13に出力する−出力側の直流電力供給線及び+出力側の直流電力供給線も、それぞれ−電位側の導体及び+電位側の導体である。適宜、直流電力が供給される−電位側の導体、+電位側の導体を、それぞれ、直流電力の−電位側、直流電力の+電位側と略して表記する。−電位側の導体の電位は+電位側の導体の電位に対して基準となるので、適宜、−電位側をグランドと表記する。
図1、図2のように、第一通信モジュール10に供給される直流電力の−電位側(グランド)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されている例に限定さることなく、後述するように第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されていてもよい。したがって、実施の形態1の電気装置90は、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されていることが特徴である。言い換えると、実施の形態1の電気装置90は、絶縁型変換回路12から第一通信モジュール10に出力される直流電力が供給されている導体であって、電圧の基準となる−電位側の導体又は前記−電位側よりも高い電位になっている+電位側の導体と、第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ17を備えている。この特徴の構成が前述したコンデンサ接続構成である。図1、図2に示した電気装置90の第一例、第二例では、第一通信モジュール10のグランド(−電位側)と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されている例を示した。第一通信モジュール10の+電位側と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されている例は、後述する電気装置90の第三例(図10参照)である。なお、第一機器筐体22の金属部3と、第一通信モジュール10の+電位側及びグランド(−電位側)とにコンデンサ17を入れることが更に望ましい。
図1に示した電気装置90の第一例では、第二機器2の第二通信モジュール11と第二機器筐体23の金属部24とは、配線で接続されておらず、直流的に絶縁されている。第二通信モジュール11の基準電位を基準電位3、第二機器筐体23の金属部24を基準電位4とすると、基準電位3が生じている導体と基準電位4が生じている導体との間は直流的に絶縁されていることから第二機器2の動作中に電位差生じる。図2に示した電気装置90の第二例のように、第二機器筐体23に金属部24がない場合には、第二通信モジュール11と第二機器筐体23との電位差は考える必要がない。図1に示した電気装置90の第一例のように、第二機器筐体23に金属部24がある場合は、基準電位3が生じている導体と基準電位4が生じている導体との間にコンデンサが配置されてもよい。すなわち、第二通信モジュール11に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第二機器筐体23の金属部24との間にコンデンサ17と同様のコンデンサが配置されてもよい。適宜、基準電位3が生じている又は生じる導体、基準電位4が生じている又は生じる導体は、基準電位3の導体、基準電位4の導体と表記する。
基準電位1の導体と基準電位2の導体との間は、直流電力(直流電流、直流電圧)に対しては非接続等により絶縁を取ることができる。しかし、スイッチングノイズなどの交流電流又は交流電圧に対しては、基準電位1の導体と基準電位2の導体との間を非接続にするだけでは、交流的に絶縁を取ることができない。一般的に、交流電力に対しては、第一機器筐体22及び第一機器基板28の構造に起因する寄生容量が生じるため、電気シールド、磁気シールド、距離を十分に離す以外の方法では交流電力に対して高い絶縁性を取ることが困難である。近年のパワーエレクトロニクス機器の小型で高密度な実装においては、第一機器1の寄生容量を抑制することが難しくなっている。そのため、第一機器1内の寄生容量は製造の際の電源線15、通信線16などのケーブルの取り付け、回路部品の実装、第一機器基板28の配線パターンの引き回し等によって、第一機器1の寄生容量が大きく変化してしまう。すなわち、回路部品及び配線パターンと第一機器筐体22との距離などの設計によって、第一機器1の寄生容量が大きく変化してしまう。第一機器1の寄生容量が変わると寄生容量に伴うノイズの共振周波数が変化し、スイッチングノイズの周波数特性が大きく変化してしまうため、電源線15又は通信線16に漏れ込むスイッチングノイズを設計段階で制御するのが困難となる。
製造の際のケーブルの引き回しに起因する寄生容量は、試験の際にはスイッチングノイズ等の問題がなくても、実使用環境下でスイッチングノイズ等のノイズによるトラブルが発生する場合もある。それに対して、実施の形態1の電気装置90のように、直流的に絶縁された第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17を取り付けることで、第一機器1の寄生容量に依存せず、ノイズに対するインピーダンスをコンデンサ17によって制御することができる。その結果、設計段階でスイッチングノイズの伝搬経路を制御することができるようになるため、スイッチングノイズを電源4など意図しない経路に流さないようにすることができる。実施の形態1の電気装置90は、電源線15又は通信線16に漏れるスイッチングノイズの制御が可能となるメリットがある。
スイッチングノイズの伝搬について、図7〜図9を用いて説明する。図7に示した比較例1の電気装置91は、第一機器92、第二機器93を備え、通信線16、電源線15が第一機器92と第二機器93との間に接続されている。比較例1の電気装置91と図2に示した電気装置90の第二例とは、次の5つの点で異なっている。第一の相違点は、第一機器92において第一信号絶縁回路13、第一通信モジュール10の代わりに第一通信モジュール95のみになっていることである。第二の相違点は、絶縁型変換回路12がなくコンバータ回路30から直流電力が直に第一通信モジュール95に供給されていることであり、第三の相違点は、コンデンサ17がないことである。第四の相違点は、第二機器93において第二信号絶縁回路14、第二通信モジュール11の代わりに第二通信モジュール96のみになっていることであり、第五の相違点は、絶縁型変換回路20がなくコンバータ回路46(図7において省略)から直流電力が直に第二通信モジュール96に供給されていることである。図7において、第一機器基板28、第二機器基板29、コンバータ回路46、第二負荷機器9から第二通信モジュール96への配線は省略した。なお、電源線15と通信線16との間の寄生容量18を記載している。
第一通信モジュール95で生成した通信信号は、通信線16により第二機器93に送信される。通信線16と電源線15とは並走する形で、第一機器92と第二機器93との間に配線されている。そのため、通信線16と電源線15との間には寄生容量18が発生する。通信線16が金属等の導体線の場合には、通信線16にて通信信号を伝送させる際の配線長は100m以下が望ましい。それ以上の長さになると信号波形が鈍り、通信信号が劣化してしまうため、中継機を用いるのが望ましい。
実施の形態1の電気装置90においても、第一通信モジュール10で生成した通信信号は、第一信号絶縁回路13を介して通信線16により第二機器2に送信される。通信線16と電源線15とは並走する形で、第一機器1と第二機器2との間に配線されている。そのため、通信線16と電源線15との間には寄生容量18(図7参照)が発生する。通信線16が導体線の場合には、通信線16にて通信信号を伝送させる際の配線長は100m以下が望ましい。それ以上の長さになると信号波形が鈍り、通信信号が劣化してしまうため、中継機を用いるのが望ましい。中継機を用いる際にも、中継器に供給される電力は、第一負荷機器7の電力変換回路45に供給される電力とは直流的に絶縁されている必要がある。なお、第一信号絶縁回路13に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)がノイズにより揺れると、第一信号絶縁回路13内の+電位側又はグランド(−電位側)の揺れの影響により通信線16にもノイズが伝搬することがある。
一般的に、通信信号を受信する受信側は高いインピーダンスである。通信線16が1本で送受信を行う場合には、第一機器1と第二機器2との通信線端部(第一機器通信線端部、第二機器通信線端部)、第一機器92と第二機器93との通信線端部(第一機器通信線端部、第二機器通信線端部)が高いインピーダンスである。実施の形態1の電気装置90、比較例1の電気装置91は、通信線16の第一機器通信線端部、第二機器通信線端部が高いインピーダンスであるため、通信線16には電流が流れにくく、通信線16と電源線15との間の寄生容量18の容量値は相対的に小さくなる。
通信線16を流れる通信信号の電圧と、電源線15に供給される電力の電圧とは異なる。このため、通信線16と電源線15が並走し、寄生容量18の容量値が大きくなりやすい状態であれば、図7に示すように、通信信号に重畳したノイズは、受信側のインピーダンスの高い通信線16ではなく、寄生容量18を介して通信線16からインピーダンスが小さい電源線15を流れる。
第一ノイズフィルタ5のインピーダンスは、コンバータ回路、インバータ回路等の電力変換回路45を含む第一負荷機器7から出るスイッチングノイズを除去し、交流電源である電源4にスイッチングノイズを伝搬させないように設計を行う。すなわち、第一ノイズフィルタ5のインピーダンスは、交流電力に対してインピーダンスを高くし、減衰特性が大きくなるように設計を行う。
電源線15と通信線16との間の寄生容量に限らず、2つの導体間の寄生容量の容量値Cは、一般的な機器の場合、真空の透磁率をε0、2つの導体間の比誘電率をεr、距離をd[m]、対向する面積をS[m2]とすると、式(1)で算出することができる。
C=ε0×εr×S/d ・・・(1)
この式(1)から算出すると、通常、寄生容量は100pF以下と小さいため、ノイズフィルタのインピーダンスは100pFの容量によるインピーダンスよりも高い場合が多い。その結果、図7に示したノイズ伝搬経路19aのように、分流比でスイッチングノイズの多くが第一ノイズフィルタ5を通らずに、電力変換回路45から第一通信モジュール95、通信線16に混入する。第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ6が接続されていない場合には、第一通信モジュール95に入ったノイズは寄生容量18によって、電源線15に流れ、交流電源である電源4、第一ノイズフィルタ5をリターン経由して、第一負荷機器7に流れる。第一ノイズフィルタ5は、第一機器筐体22の金属部3との間に接続されているコンデンサ6がある場合には、コンデンサ6のインピーダンスが交流電力に対して低くなるため、第一機器筐体22の金属部3経由でコンデンサ6から第一ノイズフィルタ5を通って第一負荷機器7に戻る低インピーダンスの経路が形成される。
図8に示した比較例2の電気装置91は、比較例1の電気装置91にコンデンサ94a、94bが追加されている点で異なる。コンデンサ94aは、第一機器92において通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されており、コンデンサ94bは、第二機器93において通信線16と電源線15との間に接続されている。コンデンサ94a、94bは、特許文献1の空気調和機の図5における、室外通通信モジュールと室外機の筐体の金属製の底板とを接続するコンデンサ及び通信線と電源線とを接続するコンデンサに相当している。比較例2の電気装置91は、コンデンサ94aが追加されているので、第一負荷機器7で発生したスイッチングノイズは、図8に示したノイズ伝搬経路19bのようにコンデンサ94aに流れる。比較例2の電気装置91は、比較例1の電気装置91に比べて電源線15に漏れ込むスイッチングノイズを低減することができる。しかし、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ94aが入ることによって、第一負荷機器7のスイッチングノイズを含むノイズの交流成分が、第一通信モジュール95等が搭載された基板の配線と第一通信モジュール95との間の寄生容量(図示せず)によって、第一通信モジュール95に流れ込むため、通信信号の品質の劣化を招く。
また、第一通信モジュール95と第一機器筐体22の金属部3との間には電位差があるため、第一通信モジュール95と第一機器筐体22の金属部3との間の寄生容量(図示せず)によって、コンデンサ94aを介して第一機器筐体22の金属部3を流れるスイッチングノイズが第一通信モジュール95に流れ込む。その結果、第一通信モジュール95内の直流電力供給線(直流電源線)にスイッチングノイズが混入する。このため、第一通信モジュール95内の半導体素子の駆動電力が第一通信モジュール95内の直流電力供給線(+電位側電源線、−電位側電源線)によって揺らされるため、揺らいだ直流電力のノイズが重畳した通信信号が第一通信モジュール95から出力される。なお、−電位側電源線は第一通信モジュール95のグランド線である。これは、第一通信モジュール95内の半導体素子に供給された直流電力に基づいて通信信号の電圧を生成しているため、半導体素子を駆動する直流電力、すなわち第一通信モジュール95内の直流電力供給線の電圧が揺らぐことによって、第一機器筐体22の金属部3など第一通信モジュール95と絶縁された系の電位に対して、通信信号の電圧が揺らぐためである。
通信線16を流れる通信信号の品質は、電源線15と通信線16との間の電位差の時間変化又は、第一通信モジュール95と通信線16との間に流れる電流の時間変化を見ることによって確認することができる。通常のスイッチングノイズの試験では行われない、通信線16を流れる通信信号の品質の検討をすることによって、第一負荷機器7にて発生したスイッチングノイズが第一通信モジュール95に混入し、分離された基板間に通信される通信信号の品質が劣化するという問題を見出すことができた。
また、比較例2の電気装置91は、コンデンサ94bがあるため、第一機器92の第一機器筐体22の金属部3に流れているスイッチングノイズだけでなく、電源線15に流れるスイッチングノイズが通信線16に混入するため、通信品質を更に悪化させる原因となる。これは、電源線15には通信線16に比べて大きなスイッチングノイズが重畳していることと、完全にスイッチングノイズを除去できる第一ノイズフィルタ5を作ることができないためである。その結果、コンデンサ94bによって電源線15に流れるスイッチングノイズを低減することができても、コンデンサ94bによって通信線16にスイッチングノイズが混入するので、このコンデンサ94bがない場合に比べて通信信号の品質を同程度に保つことは難しい。
図9を用いて実施の形態1の電気装置90における第一通信モジュール10への漏れ込むスイッチングノイズについて説明する。実施の形態1においては、絶縁型変換回路12が第一負荷機器7と第一通信モジュール10との間に介在しており、第一負荷機器7に供給される直流電力と絶縁された直流電力が第一通信モジュール10に供給されているため、第一負荷機器7から第一通信モジュール10に入るスイッチングノイズは図9に示した寄生容量18を経由して混入する。寄生容量18を経由して混入するスイッチングノイズは、比較例1、比較例2のように導体線を通って伝搬するスイッチングノイズに比べると小さい。実施の形態1の電気装置90において、第一負荷機器7にて発生したスイッチングノイズは、ノイズ伝搬経路19cのようになる。第一通信モジュール10に混入したスイッチングノイズは、コンデンサ17を介して第一機器筐体22の金属部3、コンデンサ6、第一ノイズフィルタ5をリターン経由して、第一負荷機器7に流れる。
実施の形態1の電気装置90は、第一信号絶縁回路13によって第一通信モジュール10と第二機器2へ向かう通信線16とが直流的に絶縁されるため、第一通信モジュール10から第二機器2の第二通信モジュール11を見た場合のインピーダンスは高い。このため、第一通信モジュール10における直流電力が供給される一方のグランド(−電位側)と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17があれば、第一負荷機器7から伝搬してきたスイッチングノイズはコンデンサ17を介して第一機器筐体22の金属部3の側に流れることになる。
第一機器1の第一機器筐体22の金属部3は、第一負荷機器7起因のスイッチングノイズのリターン経路になっている。コンデンサ17があることによって、第一機器筐体22の金属部3の電位と同じタイミングで第一通信モジュール10のグランドの電位が変動することになる。第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17を取り付けることで、第一通信モジュール10のグランドと第一機器筐体22の金属部3が交流電力に対して同電位になるため、第一通信モジュール10の通信信号が第一機器筐体22の金属部3の電位に対して揺れなくなる。そのため、実施の形態1の電気装置90は、通信線16へのスイッチングノイズを低減させることができる。これは、通信線16が、電源4の接地電位に対して揺れなくなるのではなく、第一機器1における第一機器筐体22の金属部3の電位を基準にしている電源線15及び第一負荷機器7と同相で揺れるため、第一通信モジュール10のグランドと第一機器筐体22の金属部3とが交流電力に対して電位差がなくなることで、スイッチングノイズを含む交流電力に対して第一通信モジュール10のグランドと第一機器筐体22の金属部3との電位差が一定となり揺れなくなることを意味する。
図1、図2の電気装置90の第一例、第二例では、第一通信モジュール10に供給される直流電力のグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されている例を示した。しかし、図10に示すように、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17bが配置されていてもよい。図10では、第一通信モジュール10に供給される直流電力のグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にもコンデンサ17aが配置されている例を示した。第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサの符号は、総括的に17を用いる。第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサが複数あり、区別する場合に、17a、17bの符号を用いる。
第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17bが配置された場合においても、第一通信モジュール10に供給される直流電力のグランド(−電位側)にコンデンサ17aを取り付けた場合と同じ効果を発揮する。これは、第一機器1における第一機器筐体22の金属部3の電位に対しては、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側及びグランド(−電位側)が直流的に絶縁されているため第一機器筐体22の金属部3との電位差が不定となるため、どちらの配線に取り付けても効果を得ることができるためである。なお、前述したことを繰り返すが、図10に示すように、第一機器筐体22の金属部3と、第一通信モジュール10の+電位側及びグランド(−電位側)とにコンデンサ17を入れることが更に望ましい。
通信線16に混入するスイッチングノイズと電源線15に混入するスイッチングノイズとは、通常異なるものである。電源線15のスイッチングノイズは、伝導ノイズ、電源ノイズ、雑音端子電圧、雑音端子電圧を略した雑端等と記載されることがある。第一機器1内で電源線15及び通信線16は、第一機器1における第一機器筐体22の金属部3に対して、数cm以内に近接して(近づけて)這わせる場合が多いため、第一機器筐体22の金属部3との間に寄生容量が発生しやすく、スイッチングノイズを含む交流電力に対しては絶縁となっていない。しかし、実施の形態1の電気装置90は、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されているので、分離された基板間すなわち、第一機器1の第一機器基板28と第二機器2の第二機器基板29との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態1の電気装置90は、第一機器筐体22の金属部3と直流的に絶縁された第一通信モジュール10において、第一機器筐体22の金属部3との絶縁性を保ちながら通信線16へ漏れ込むスイッチングノイズを低減することができる。このため、実施の形態1の電気装置90は、第一機器1と第二機器2との間の通信信号の劣化による電気装置90の誤動作を起こりにくくすることができる。また、実施の形態1の電気装置90は、電源線15に重畳するスイッチングノイズを低減することができ、その結果、電源4から電力供給されている第一機器1、第二機器2以外の外部機器に混入するスイッチングノイズをも低減することができる。
第一通信モジュール10の送信回路65の例を説明する。図4、図5に示した送信回路65は、オペアンプ60と抵抗61a、61bの組合せで構成されており、抵抗61a、61bの値を変化させることでオペアンプ60の増幅率を変化させるものである。送信回路65は入力ピン81a、81bと、出力ピン82a、82bを備えており、入力ピン81a、81bから信号処理回路66にて処理された通信信号である入力信号62が入力され、出力ピン82aから出力信号63が出力される。入力ピン81b、出力ピン82bは、絶縁型変換回路12が生成した直流電力の−電位側(グランド)が供給される−電位側電源線69により接続されている。すなわち、絶縁型変換回路12から第一通信モジュール10に出力する−出力側の電力供給線と−電位側電源線69とが接続されている。
オペアンプ60は、駆動電源68により駆動される。駆動電源68は、絶縁型変換回路12が生成した直流電力を供給する直流電源である。具体的には、駆動電源68は、第一通信モジュール10内の+電位側の直流電力供給線(+電位側電源線)である。すなわち、+出力側の直流電力供給線と+電位側電源線とが接続されている。抵抗61aの一端は入力ピン81aに接続されており、抵抗61aの他端はオペアンプ60の−端子と抵抗61bの一端に接続されている。抵抗61bの他端は出力ピン82aに接続されている。オペアンプ60の+端子は、−電位側の直流電力供給線(−電位側電源線69)に接続されている。図4、図5では、入力信号62、出力信号63は、入力ピン81b及び出力ピン82bに接続された−電位側の直流電力供給線(−電位側電源線69)の電位、すなわち絶縁型変換回路12が生成した直流電力のグランド(−電位側)の電位を基準とした電圧信号として示した。入力ピン81b及び出力ピン82bに接続された−電位側の直流電力供給線(−電位側電源線69)は、コンデンサ17を介して第一機器筐体22の金属部3に接続されている。図4では、駆動電源68と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ67が接続されている例を示した。
オペアンプ60の−端子に入力する信号におけるグランドとの電圧をV1、+端子に入力する信号におけるグランドとの電圧をV2とし、入力側の抵抗61aの値をR1、出力側の抵抗61bの値をR2とすると、出力信号63の出力電圧V0は、式(2)のように表すことができる。
V0=−(R2/R1)V1+(R1+R2)V2/R1 ・・・(2)
オペアンプ60に直流電力が供給される直流電力供給線(+電位側電源線、−電位側電源線69)は、第一機器筐体22の金属部3とは直流的に絶縁されている。図4の送信回路65では、オペアンプ60の駆動電源68と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ67を設けることで、電力変換回路45をノイズ源とするノイズの伝搬を制御することができる。第一機器筐体22の金属部3に対してコンデンサ17、コンデンサ67がない場合においては、寄生容量で第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13、通信線16と、第一機器筐体22の金属部3との間にノイズの交流成分に対して交流的な導通ができるので、スイッチングノイズのように10kHzから1GHzまでの周波数においては、この寄生容量は無視できない。そのため、第一機器筐体22の金属部3に対してコンデンサ17、コンデンサ67がない場合には、スイッチングノイズの伝搬を制御することできず、その結果、電源4に漏れ込むノイズを低減することができなかった。
それに対して、本実施の形態1のように、通信線16および第一通信モジュール10に直流電力が供給される直流電力供給線(+電位側電源線、−電位側電源線69)が第一機器筐体22の金属部3に対して直流的に絶縁されている場合に、第一通信モジュール10などの回路における直流電力供給線(+電位側電源線、−電位側電源線69)と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17、コンデンサ67を取り付けることで、スイッチングノイズの伝搬を制御することができることを見出したことは、このような第一機器1、第二機器2における低ノイズ設計において重要なことである。
特許文献1の空気調和機は、通信線にインバータ装置のスイッチングノイズが混入し、通信線を流れる通信信号の品質を劣化させてしまうことを前述した。我々はこの問題について検討した結果、特許文献1の通信線コンデンサの容量を下げることで、通信線へのスイッチングノイズの混入が低減できるものの、電源4に漏れるスイッチングノイズを低減させることができないことを見出した。更に検討したところ電力変換回路45のスイッチング素子がスイッチするタイミング(オン及びオフするタイミング)で通信線16にスイッチングノイズが混入する問題点を見出した。電源4に漏れるスイッチングノイズを低減させるには、前述したように、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17を配置することである。図4に示したコンデンサ67は、図10に示したコンデンサ17bと同じ作用をするコンデンサである。したがって、図1、図2に示した電気装置90の第一例、第二例における第一通信モジュール10の送信回路65が図4に示した送信回路65の第一例の場合は、図10の示した電気装置90の第三例と同じ効果を奏する。
また、図5に示すように、駆動電源68と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ67が接続されておらず、オペアンプ60の−電位側の直流電力供給線(−電位側電源線69)がコンデンサ17を介して第一機器筐体22の金属部3に接続された送信回路であってもよい。この送信回路によっても、電力変換回路45をノイズ源とするノイズの伝搬を制御することができる。このようにコンデンサ17を介して直流電力供給線(−電位側電源線69)と第一機器筐体22の金属部3とが接続されても、オペアンプ60の直流電力供給線(+電位側電源線、−電位側電源線69)と第一機器筐体22の金属部3との間の直流的な絶縁は保つことができる。なお、図4、図5に示したコンデンサ17は、図1、図2において第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ17を示している。図1、図2において第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ17は、第一通信モジュール10における直流電力供給線(−電位側電源線)に接続されていることを示している。したがって、図1、図2に示したコンデンサ17が図4、図5に示したコンデンサ17と同一であってもよく、図4、図5に示したコンデンサ17は図1、図2に示したコンデンサ17と別のコンデンサであっても構わない。
今まで電源4が交流電源である場合の電気装置90の例を説明したが、電源4は直流電源であってもよい。図11に示した電気装置90の第四例は、電源4が直流電源である場合の電気装置である。図11に示した電気装置90の第四例は、図1に示した電気装置90の第一例とは、コンバータ回路30がなく、第二負荷機器9のコンバータ回路46の直流電力でなく第二ノイズフィルタ8を通過した後の直流電力が絶縁型変換回路20に供給される点で異なる。電気装置90の第四例も、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されているので、分離された基板間すなわち、第一機器1の第一機器基板28と第二機器2の第二機器基板29との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
以上のように、実施の形態1の電気装置90は、電源4から電力が供給されており、分離された第一基板(第一機器基板28)と第二基板(第二機器基板29)との間で通信線16を介して通信を行う電気装置である。実施の形態1の電気装置90は、金属部3を有する筺体(第一機器筐体22)内に格納された第一基板(第一機器基板28)と、第一基板(第一機器基板28)に搭載されており、スイッチング素子(半導体素子55)を有する電力変換回路45と、第一通信モジュール10と、第一通信モジュール10と通信線16とを絶縁しながら通信信号を通過させる第一信号絶縁回路13と、電力変換回路45に供給される電力と絶縁された直流電力を第一通信モジュール10に供給する第一絶縁型変換回路(絶縁型変換回路12)と、他の筐体(第二機器筐体23)に格納された第二基板(第二機器基板29)と、第二基板(第二機器基板29)に搭載されており、第一通信モジュール10と通信を行う第二通信モジュール11と、第二通信モジュール11と通信線16とを絶縁しながら通信信号を通過させる第二信号絶縁回路14と、電力変換回路45に供給される電力と絶縁された直流電力を第二通信モジュール11に供給する第二絶縁型変換回路(絶縁型変換回路20)と、を備えている。実施の形態1の電気装置90は、第一絶縁型変換回路(絶縁型変換回路12)から第一通信モジュール10に出力される直流電力が供給されている導体であって、電圧の基準となる−電位側の導体又は−電位側よりも高い電位になっている+電位側の導体と、筐体(第一機器筐体22)の金属部3との間に接続されたコンデンサ17を備えている。実施の形態1の電気装置90は、この構成により、分離された基板間、すなわち第一基板(第一機器基板28)と第二基板(第二機器基板29)との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、分離された第一機器基板28、第二機器基板29がそれぞれ異なる機器筐体に搭載された電気装置90について説明したが、分離された第一機器基板28、第二機器基板29が同一の機器筐体21に搭載されていてもよい。図12は実施の形態2に係る電気装置の第一例を示す図であり、図13は実施の形態2に係る電気装置の第二例を示す図である。図12に示した実施の形態2の電気装置90の第一例は、交流電源である電源4によって電力供給されて動作する電気装置である。図13に示した実施の形態2の電気装置90の第二例は、直流電源である電源4によって電力供給されて動作する電気装置である。
図12に示した実施の形態2の電気装置90の第一例は、図1に示した実施の形態1の電気装置90の第一例とは、第一機器筐体22、第二機器筐体23の代わりに機器筐体21になっており、第二負荷機器9にコンバータ回路46がなく、コンバータ回路30から直流電力が絶縁型変換回路20に供給されている点で異なる。実施の形態2の電気装置90の第一例は、実施の形態1の電気装置90の第一例と同様に、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、機器筐体21の金属部3との間にコンデンサ17が配置されている。図12では、第一通信モジュール10のグランド(−電位側)と機器筐体21の金属部3との間にコンデンサ17が配置されている例を示した。第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側と機器筐体21の金属部3との間にコンデンサ17を接続する場合は、図10のコンデンサ17bと同様に接続する。
実施の形態2の電気装置90の第一例は、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、機器筐体21の金属部3との間にコンデンサ17が配置されているので、分離された基板間、すなわち第一機器基板28と第二機器基板29との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
図13に示した実施の形態2の電気装置90の第二例は、図12に示した実施の形態2の電気装置90の第一例とは、コンバータ回路30がなく、第二ノイズフィルタ8を通過した後の直流電力が絶縁型変換回路20に供給される点で異なる。実施の形態2の電気装置90の第二例は、実施の形態2の電気装置90の第一例と同様に、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、機器筐体21の金属部3との間にコンデンサ17が配置されている。図13では、第一通信モジュール10のグランド(−電位側)と機器筐体21の金属部3との間にコンデンサ17が配置されている例を示した。第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側と機器筐体21の金属部3との間にコンデンサ17を接続する場合は、図10のコンデンサ17bと同様に接続する。
実施の形態2の電気装置90の第二例は、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、機器筐体21の金属部3との間にコンデンサ17が配置されているので、分離された基板間、すなわち第一機器基板28と第二機器基板29との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態2の電気装置90は、機器筐体21の金属部3と直流的に絶縁された第一通信モジュール10、第二通信モジュール11において、機器筐体21の金属部3との絶縁性を保ちながら通信線16へ漏れ込むスイッチングノイズを低減することができる。このため、実施の形態2の電気装置90は、これらの第一通信モジュール10、第二通信モジュール11を含む当該電気装置に電力供給する電源4に漏れ込むノイズを低減することができる。また、実施の形態2の電気装置90は、第一通信モジュール10と機器筐体21の金属部3との間の電位が安定するので、通信線16にて伝送される通信信号の劣化による電気装置90の誤動作を起こりにくくすることができる。
以上のように、実施の形態2の電気装置90は、電源4から電力が供給されており、分離された第一基板(第一機器基板28)と第二基板(第二機器基板29)との間で通信線16を介して通信を行う電気装置である。実施の形態1の電気装置90は、金属部3を有する筺体(機器筐体21)内に格納された第一基板(第一機器基板28)と、第一基板(第一機器基板28)に搭載されており、スイッチング素子(半導体素子55)を有する電力変換回路45と、第一通信モジュール10と、第一通信モジュール10と通信線16とを絶縁しながら通信信号を通過させる第一信号絶縁回路13と、電力変換回路45に供給される電力と絶縁された直流電力を第一通信モジュール10に供給する第一絶縁型変換回路(絶縁型変換回路12)と、筐体(機器筐体21)に格納された第二基板(第二機器基板29)と、第二基板(第二機器基板29)に搭載されており、第一通信モジュール10と通信を行う第二通信モジュール11と、第二通信モジュール11と通信線16とを絶縁しながら通信信号を通過させる第二信号絶縁回路14と、電力変換回路45に供給される電力と絶縁された直流電力を第二通信モジュール11に供給する第二絶縁型変換回路(絶縁型変換回路20)と、を備えている。実施の形態1の電気装置90は、第一絶縁型変換回路(絶縁型変換回路12)から第一通信モジュール10に出力される直流電力が供給されている導体であって、電圧の基準となる−電位側の導体又は−電位側よりも高い電位になっている+電位側の導体と、筐体(機器筐体21)の金属部3との間に接続されたコンデンサ17を備えている。実施の形態1の電気装置90は、この構成により、分離された基板間、すなわち第一基板(第一機器基板28)と第二基板(第二機器基板29)との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態3.
図14は実施の形態3に係る空気調和機の第一例を示す図である。図15は図14の第一通信モジュールと金属部との間のコンデンサの接続例を示す図であり、図16は図14のコンバータ回路及び第一インバータ回路に搭載された半導体素子とヒートシンクを示す図である。図17は、図16の通信線の一例を示す図である。図18は実施の形態3に係る空気調和機の第二例を示す図であり、図19は実施の形態3に係る空気調和機の第三例を示す図である。図20は、実施の形態3に係る空気調和機の第四例を示す図である。実施の形態3の空気調和機100は第一機器1、第二機器2を備えている。空気調和機100の第一機器1は室外機であり、空気調和機100の第二機器2は室内機である。適宜、第一機器1を室外機1と表記し、第二機器2を室内機2と表記する。
実施の形態3の空気調和機100は、実施の形態1で示した電気装置90と同様の構成を備えている。室外機1の第一機器筐体22の中には少なくとも、圧縮機34、室外熱交換器35、コンバータ回路30、第一インバータ回路31、第一通信モジュール10、第一通信モジュール10と室内機2に接続された通信線16とを直流的に絶縁する第一信号絶縁回路13、コンバータ回路30から第一通信モジュール10及び第一信号絶縁回路13に直流電力を供給する絶縁型変換回路12、第一ノイズフィルタ5、第一機器基板28、コンバータ回路30等を制御する室外制御回路32を備えている。図14では、室外制御回路32が第一信号絶縁回路13を制御する制御信号42と、室外制御回路32が第一インバータ回路31を制御する制御信号42を示した。
室内機2は少なくとも、室内熱交換器40、室内送風機41、室内送風機41を動作させる第二インバータ回路39、第二ノイズフィルタ8、第二通信モジュール11、第二通信モジュール11と室外機1に接続された通信線16とを直流的に絶縁する第二信号絶縁回路14、第二通信モジュール11及び第二信号絶縁回路14に直流電力を供給する絶縁型変換回路20、第二機器基板29、室内送風機41等を制御する室内制御回路38を備えている。図14では、室内制御回路38が第二通信モジュール11を制御する制御信号43と、室内制御回路38が第二インバータ回路39を制御する制御信号43を示した。
室外機1は、交流電源である電源4によって電力供給されて動作する。また、室内機2は、室外機1を介して電源4の電力により動作する。室外機1と室内機2は、通信線16により互いに通信を行う。室内機2は電源線15により室外機1から供給された交流電力により動作する。室外機1の圧縮機34及び室外熱交換器35と室内機2の室内熱交換器40とが冷媒配管36により接続されている。冷媒配管36は、室外熱交換器35と室内熱交換器40と接続し、かつ冷媒が流通する配管である。
図14に示した室外機1は、第一機器筐体22、第一ノイズフィルタ5、コンバータ回路30、第一インバータ回路31、室外制御回路32、圧縮機34、室外熱交換器35、絶縁型変換回路12、第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13、第一機器基板28、第一機器筐体22の金属部3と第一ノイズフィルタ5との間に接続されたコンデンサ6、第一機器筐体22の金属部3と第一通信モジュール10との間に接続されたコンデンサ17a、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側(図10参照)と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ17bを備えている。第一機器基板28には、室外制御回路32、第一ノイズフィルタ5、コンバータ回路30、第一インバータ回路31、絶縁型変換回路12、第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13、コンデンサ6、コンデンサ17a、17bが搭載されている。第一インバータ回路31が、図1に示した第一負荷機器7の電力変換回路45に相当している。圧縮機34、室外熱交換器35が図1に示した第一負荷機器7における第一機器基板28に搭載されない機器の一例である。室外制御回路32は、コンバータ回路30、第一インバータ回路31、第一通信モジュール10を制御する。室外熱交換器35は、熱交換用の冷媒配管36、冷媒配管36に接続されたフィン47、冷媒配管36及びフィン47に風を送るためのファン48を有している。
図14に示した室内機2は、第二機器筐体23、第二ノイズフィルタ8、コンバータ回路46、第二インバータ回路39、室内制御回路38、室内熱交換器40、室内送風機41、絶縁型変換回路20、第二通信モジュール11、第二信号絶縁回路14、第二機器基板29を備えている。第二機器基板29には、室内制御回路38、第二ノイズフィルタ8、コンバータ回路46、第二インバータ回路39、絶縁型変換回路20、第二通信モジュール11、第二信号絶縁回路14が搭載されている。コンバータ回路46、第二インバータ回路39が図1に示した第二負荷機器9における第二機器基板29に搭載されている回路の一例である。室内熱交換器40、室内送風機41が図1に示した第二負荷機器9における第二機器基板29に搭載されていない機器の一例である。室内制御回路38は、第二通信モジュール11、第二信号絶縁回路14を制御し、第二インバータ回路39を介して室内送風機41を制御する。
コンバータ回路30及び第一インバータ回路31は、意図的にスイッチィング素子をスイッチさせているためスイッチングノイズを発生させる。交流電源である電源4は、図14に示すように室外機1側に取り付けて電源線15で室内機2に伝送する構造でも、図20に示すように室内機2側に取り付けて電源線15で室外機1に伝送する構造でも良い。これは、通信線16へのスイッチングノイズを生み出しているのは、室外機1側のコンバータ回路30、第一インバータ回路31、圧縮機34であるためである。そのため、室外機1でのスイッチングノイズが通信線16に混入することで通信信号の品質が劣化するので、電源4は、室外機1に接続する場合であっても、室内機2に接続する場合であっても良い。なお、図14では第二機器筐体23が金属部24を有しない例を示したが、図20では第二機器筐体23が金属部24を有する例を示した。室内機2から電源4によって交流電力を供給する場合は、電源4と第二機器筐体23の金属部24とが接続されている。
室外機1と室内機2との間は、少なくとも2線以上の電源線15と、1線以上の通信線16、冷媒配管36の往路、復路によって接続されている。電源線15と通信線16とをまとめて一体にしてテープ等で周囲の巻回しを行う場合もある。また、電源線15、通信線16、冷媒配管36をまとめて一体にしてテープ等で周囲の巻回しを行う場合もある。通信線16が1線である場合は、通信信号のリターン経路は電源線15又は冷媒配管36になることが多い。図19に示すように2線以上の通信線16を有する場合であっても、第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間に接続するコンデンサ17aは1つで構わない。これは、第一通信モジュール10に供給される直流電力が第一機器筐体22の金属部3に対して揺れていなければ良いためである。コンデンサ17aは、第一通信モジュール10に供給される直流電力のグランド(−電位側)と第一機器筐体22の金属部3との間のコンデンサであり、第一機器筐体22の金属部3に対する直流電力のグランド(−電位側)の揺れを抑制する。
図14に示したコンデンサ17bは、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側と第一機器筐体22の金属部3との間のコンデンサであり、第一機器筐体22の金属部3に対する直流電力の+電位側の揺れを抑制する。コンデンサ17bはなくてもよいが、図14ではコンデンサ17bがある例を示した。第一通信モジュール10に供給される直流電力がフォトカプラである第一信号絶縁回路13にも供給されている場合は、第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17aが接続されていれば、第一信号絶縁回路13が複数あっても問題はない。第一信号絶縁回路13が絶縁トランスの場合は、第一信号絶縁回路13の数が複数あっても、第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17aが接続されていればよい。
通信線16が1線の場合には、時間分割で室内機2から室外機1、室外機1から室内機2への通信を行う。その際、通信線16にて通信する通信信号の時間波形はどのようなものであっても良い。その通信信号のリターン経路は、前述したように通信線16以外の線である電源線15又は冷媒配管36である。通常は、電源線15にも冷媒配管36の両方が通信信号のリターン経路となる。通信線16と冷媒配管36とは直流電力に対しては絶縁されているが、通信線16と冷媒配管36とがテープ等で巻回されて一体化しているので寄生容量によって冷媒配管36にも通信線16の通信信号に対応した交流電流が流れる。また、通信線16と電源線15とは直流電力に対しては絶縁されているが、通信線16と電源線15とがテープ等で巻回されて一体化しているので寄生容量によって電源線15にも通信線16の電流が流れる。なお、通信線16と冷媒配管36との間にコンデンサを接続してもよい。通信線16と冷媒配管36との間に接続されたコンデンサにより通信線16の通信信号に対応した交流電流が流れ、冷媒配管36が通信信号のリターン経路となる。また、通信線16と電源線15との間にコンデンサを接続してもよい。通信線16と電源線15との間に接続されたコンデンサにより通信線16の電流が流れ、電源線15が通信信号のリターン経路となる。第一通信モジュール10に供給される直流電力のグランド(−電位側)と第一機器筐体22の金属部3との間のコンデンサ17a、又は第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側と第一機器筐体22の金属部3との間のコンデンサ17bがあるので、通信信号のリターン経路になる通信線16と電源線15、冷媒配管36とにコンデンサが接続されていても、通信線16へ漏れ込むスイッチングノイズを低減することができる。
通信線16が2線の場合には、1線を往路、他の1線を復路として時間分割で、室内機2から室外機1、室外機1から室内機2への通信を行う。また、通信線16が2線の場合の2線の内、1線を室内機2から室外機1への通信に用い、他の1線を室外機1から室内機2への通信に用い、通信信号のリターン経路を冷媒配管36又は電源線15としてもよい。室内機2と室外機1との間の距離は100m以下のものが多い。しかし、室内機2と室外機1との間の距離が100m以上の場合には、通信線16にシールドケーブル(図17参照)を使う場合が多い。通信線16がシールドケーブルの場合には、シールドケーブルの芯線75が通信信号の往路、外導体76が通信信号のリターン経路となる。シールドケーブルの芯線75、外導体76を、絶縁型変換回路12と絶縁型変換回路20とに接続する。光ファイバーを通信線16に用いる場合においては、光ファイバーは電磁ノイズを伝搬させない。しかし、通信線16が光ファイバーであっても、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17a、17bが配置されることで、第一通信モジュール10に混入するスイッチングノイズを低減することができ、室外機1と室内機2との間に通信される通信信号の品質を高めることができる。
圧縮機34は第一機器基板28で生成された第一インバータ回路31の交流電力を使って動作する。圧縮機34、室外熱交換器35のファン48、フィン47で温めた又は冷やした冷媒は、冷媒配管36を経由して室内機2に送る。室内機2は、室外機1から送られてきた冷媒が流入する室内熱交換器40に室内送風機41から送風し、空気調和機100のユーザーに対して、温かい又は冷たい空気を提供する。
通信線16に流れる受信信号、送信信号すなわち通信信号は、フォトカプラ、絶縁トランス等の第一信号絶縁回路13、第二信号絶縁回路14により、室外機1と室内機2との間で直流的に絶縁される。
第一通信モジュール10に供給される直流電力は、コンバータ回路30で生成された直流電力を絶縁型のDC−DCコンバータである絶縁型変換回路12を通して供給する。また、第一通信モジュール10と同じ直流電力は、第一信号絶縁回路13、第一通信モジュール10等を制御する室外制御回路32に供給される。第一信号絶縁回路13、室外制御回路32は、第一通信モジュール10と同じ直流電力で動作する。
ただし、第一通信モジュール10と異なる電圧の直流電力で第一信号絶縁回路13、室外制御回路32を動作させる場合においては、絶縁型変換回路12とは別の絶縁型のDC−DCコンバータ又は絶縁型のAC−DCコンバータである他の絶縁型変換回路12を用いて、交流電源の電源4とは絶縁された直流電力で動作させても良い。
室外機1に2つの絶縁型変換回路12がある場合に、2つの絶縁型変換回路12間にコンデンサを取り付けることで、2つの絶縁型変換回路12が出力する各直流電力間の交流成分に対する電位差を小さくする。すなわち、2つの絶縁型変換回路12が出力する各直流電力に混入するノイズの交流成分の電圧差を小さくする。または、2つの絶縁型変換回路12と第一機器筐体22の金属部3との間に、それぞれコンデンサを取り付ける。2つの絶縁型変換回路12と第一機器筐体22の金属部3との間に接続するコンデンサを接続する場合には、コンデンサの端子と第一機器筐体22の金属部3との間は、ジャンパー線又は金属スペーサである接続部材33(図15参照)を用いることが一般的である。このジャンパー線又は金属スペーサは残留インダクタンスを低くするために、短く、太い方が望ましい。
また、図16に示すように、ノイズ源であるコンバータ回路30、第一インバータ回路31内のスイッチング素子である半導体素子55は、半導体素子55を冷却するためのヒートシンク56に搭載されることが望ましい。半導体素子55及びヒートシンク56に最も近接する(近い)第一機器筐体22の金属部3と、第一通信モジュール10に直流電力を供給する絶縁型変換回路12の直流電力の+電位側との間にコンデンサ17bを設けるのが望ましい。また、半導体素子55が、シリコンに比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体材料によって形成された半導体素子、すなわちワイドバンドギャップ半導体の素子の場合は、シリコン半導体の素子よりもスイッチング速度が速く、スイッチング損失が小さい。更に、ワイドバンドギャップ半導体の素子は、シリコン半導体の素子よりも耐電圧性が高く、耐熱性も高い。そのため、半導体素子55がワイドバンドギャップ半導体の素子の場合は、ヒートシンク56の小型が可能であり、ヒートシンク56が不要となることもある。ワイドバンドギャップ半導体の半導体素子55がヒートシンク56に搭載されていなくても、半導体素子55に近接する(近い)第一機器筐体22の金属部3と、第一通信モジュール10に直流電力を供給する絶縁型変換回路12の直流電力の+電位側との間にコンデンサ17bを設けることで、ノイズ低減効果及び通信線16に漏れ込む電磁ノイズの低減が期待できる。ワイドバンドギャップ半導体材料としては、例えば、炭化ケイ素(SiC:Silicon Carbide)、窒化ガリウム(GaN:Gallium Nitride)を含む窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドがある。
通常、それらのコンデンサ17a、17bはプリント基板である第一機器基板28上に配置されるため、複数のコンデンサ17a、17bの端部を第一機器基板28上の一箇所の配線パターン25b(図15参照)に集め、その配線パターン25bからジャンパー線等の接続部材33を通して、室外機1の第一機器筐体22の金属部3へ接続する構造をとる。このようにすることで、ジャンパー線等の接続部材33の数を減らすことができる。
コンデンサ17a、17bとしては、耐圧が必要であるため通常はセラミックコンデンサ又はフィルムコンデンサが使われる。特に、空気調和機100は様々な温度環境で使われるため、温度特性の大きいセラミックコンデンサではなく、温度補償されたセラミックコンデンサ又はフィルムコンデンサを使うのが望ましい。また、コンデンサ17a、17bの代わりにバリスタを用いても良い。バリスタは、コンデンサとは異なりインダクタンスが大きいが、バリスタの両端にかかる電圧が低い場合には等価的にコンデンサに見える。コンデンサ17a、17bは。容量値が通常500pFから5000pFの間であるコンデンサを用いる。
第二通信モジュール11に供給する直流電力は、第一機器1に接続された電源線15で伝送された交流電力を第二ノイズフィルタ8に通し、コンバータ回路46にて変換された直流電力を絶縁型のDC−DCコンバータである絶縁型変換回路20を通して供給する。また、第二通信モジュール11と同じ直流電力は、第二信号絶縁回路14、第二通信モジュール11等を制御する室内制御回路38に供給される。第二信号絶縁回路14、室内制御回路38は、第二通信モジュール11と同じ直流電力で動作する。ただし、第二通信モジュール11と異なる電圧の直流電力で、第二信号絶縁回路14、室内制御回路38を動作させる場合においては、絶縁型変換回路20とは別の絶縁型のDC−DCコンバータ又は絶縁型のAC−DCコンバータを用いて、電源線15から絶縁した直流電力で動作させても良い。
空気調和機100は寸法が小さい方が望ましく、そのように寸法が限られたものに対して、第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13、第一ノイズフィルタ5、コンバータ回路30、第一インバータ回路31を実装する場合、通常、図14に示したように同一の第一機器基板28に実装する。また、それらの回路を複数の基板に搭載し、基板間を基板間コネクタにより接続してもよい。
特に、第一通信モジュール10及び第一信号絶縁回路13と、それ以外の回路が10cm以内に近接されている(近づけている)ことが多い。また、第一通信モジュール10及び第一信号絶縁回路13と、それ以外の回路に接続される配線パターンが近接して配置される(近づけて配置される)場合も多い。これは、コンバータ回路30、第一インバータ回路31を介して圧縮機34及び室外熱交換器35のファン48を動的に変化させるためには、室内機2側から送られてくる通信信号すなわちフィードバック情報等が必要であり、それらは第一通信モジュール10にて室内機2から受信した受信信号によって決められるものであるためである。ただし、このようにノイズ源となるコンバータ回路30、第一インバータ回路31が第一通信モジュール10及び第一信号絶縁回路13に近接して配置される(近づけて配置される)ことによって、電界結合又は磁界結合が発生する。電界結合では寄生容量が発生し、磁界結合では相互インダクタンスが発生することで、空間を経由して電磁ノイズが周辺に伝搬する経路が作られる。
このようにノイズ源となるコンバータ回路30、第一インバータ回路31が第一機器基板28上で、第一通信モジュール10及び第一信号絶縁回路13に近接して配置される(近づけて配置される)場合には、例えば第一通信モジュール10及び第一通信モジュール10に結線された配線パターンと、コンバータ回路30及び第一インバータ回路31との間に容量値が非常に大きな寄生容量が生じる。第一通信モジュール10とコンバータ回路30及び第一インバータ回路31との間に寄生容量があっても、電位差がなければ導体間にある空間を伝搬して不要な交流電力、すなわちノイズの交流成分が流れることは無い。しかし、実施の形態3の空気調和機100のように、第一通信モジュール10に供給される直流電力のグランド(−電位側)と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ17a、又は第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ17bがない場合においては、ノイズの高周波成分に対する第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間の電位は不定になり、第一通信モジュール10とコンバータ回路30及び第一インバータ回路31との間の基準電位が異なるため、スイッチングノイズが空間を伝搬して流れることになる。その結果、電源線15、コンバータ回路30、第一インバータ回路31から、通信線16、第一通信モジュール10に向かって、コンバータ回路30及び第一インバータ回路31で発生したスイッチングノイズが流れることになる。
一般的に、回路図上では直流的に絶縁されて設計した回路が、同一基板上に回路部品を配置することによって、交流電流又は交流電圧に対しては絶縁されない回路、すなわち交流電流又は交流電圧が伝搬する回路となった結果、本来は伝搬しない経路にスイッチングノイズが伝搬する問題が引き起こされる。
空気調和機におけるスイッチングノイズは、コンバータ回路30、第一インバータ回路31などのスイッチング素子がスイッチングする際に生じる電圧及び電流の急減な時間変化又は共振現象によって発生する。特に、時間領域のスイッチング波形は、台形波として考えることができる。台形波をフーリエ変換すると立ち上がり時間及び立ち下がり時間にもよるが、例えば数十nsの立ち上がり時間を有する時間波形では、数十kHz〜数GHz程度までの高調波ノイズが発生することが分かる。この高調波を含む高周波ノイズが導体間を伝わって伝搬するスイッチングノイズは、国際規格によって許容範囲が決められている。例えば、国際電機標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)では150kHzから30MHzの範囲において規格値が定められている。また、この高周波ノイズが導体から空間に放出される放射ノイズは、IECでは30MHzから1GHzの範囲において規格値が定められている。なお、このような高周波ノイズは、機器の誤動作又は機器内部の電子回路の破壊の原因となるため存在しないことが望ましい。
空気調和機の通信信号の周波数は、通常10Hz〜10kHz程度である。これに対し、IECによるノイズの国際規格では150kHzが規定されており、空気調和機の通信信号の動作周波数よりも電源線15に流れるノイズの国際規格の方が高い周波数となっている。
室外機1と室内機2との間の通信線16における戻りの電流経路、すなわちリターン電流の経路は、電源線15又は冷媒配管36となる。室外機1内において、実施の形態3の空気調和機100のように、第一通信モジュール10に供給される直流電力のグランド(−電位側)と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ17a、又は第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ17bがない場合においては、スイッチングノイズの伝搬経路の一部は、室内機2内の第二機器基板29及び第二機器筐体23と室外機1内の第一機器基板28及び第一機器筐体22との間に配置された通信線16、電源線15等の導体線間に生じる寄生容量又は相互インダクタンスによって形成される。寄生容量は電圧の時間変化の大きさに応じてスイッチングノイズを混入させ、相互インダクタンスは電流の時間変化に応じてスイッチングノイズを混入させる。通信線16に限れば、前述したように、受信側の回路は高インピーダンスで受信するため電流がほとんど流れない。そのため、相互インダクタンスの影響は小さいことから、寄生容量によるスイッチングノイズの伝搬経路について説明を行う。
室内機2は、室外機1に比べると電流及び電圧が小さくノイズレベルが低い。このため、室内機2は寄生容量等で室外機1から伝搬してきたノイズの伝搬経路にはなるものの、室内機2がノイズ源となることは少ない。すなわち、室内機2においても寄生容量の影響はあるが、室外機1内で扱う電圧に比べて、室内機2又は通信線16の電圧の方が小さいため、室外機1又は通信線16が主なスイッチングノイズの伝搬経路になる。その結果、第一通信モジュール10の基準電位である基準電位1の導体と、室外機1における第一機器筐体22の金属部3の電位である基準電位2の導体との間にコンデンサ17aを取り付けることで、実施の形態1の電気装置90と同様に、通信線16及び電源線15に混入するスイッチングノイズを低減する効果を得ることができる。
コンデンサ17aの第一機器基板28における実装例を図15に示した。室外機1内の第一機器基板28において、第一機器筐体22の金属部3と同じ電位の配線パターン25bが形成されており、配線パターン25bはジャンパー線又は金属スペーサ等の接続部材33で第一機器筐体22の金属部3に接続される。その配線パターン25bに対して、基準電位1の電位になっている配線パターン25aとの間にコンデンサ17aが設けられている。
ジャンパー線又は導体スペーサである接続部材33に関しては、残留インダクタンスが小さいことが望ましいため、接続部材33の配線長を短くすることが望ましい。更に接続部材33を太くすることが望ましい。これらよって残留インダクタンスを低減させることができるため望ましい結果が得られる。
寄生容量は、残留インダクタンス、ノーマルモードコイル、コモンモードコイル、その他の回路部品によって直列共振又は並列共振を発生させ、インピーダンスを大きく変化させる。空気調和機100の取付工事の際の配線の引き回し方、及び生産の際の配線の引き回し方においても、寄生容量は変化する。このように一般的に意図せず寄生容量を含む寄生成分が発生し、共振回路が形成されるため、設計段階では定量的な予想が難しい。
それに対して、本実施の形態のように、第一通信モジュール10のグランド(−電位側)と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17aを取り付けることによって、コンデンサ17aが支配的なスイッチングノイズの電流経路となるようにできる。その理由は、第一通信モジュール10の基準電位1の電位になっているグランド(−電位側)と、第一ノイズフィルタ5、コンバータ回路30、第一インバータ回路31の基準電位の導体との間に発生する前述した寄生容量に比べて、コンデンサ17aの容量値が十分大きく、すなわちインピーダンスが小さくなるためである。また、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17bを取り付けることによっても、コンデンサ17bが支配的なスイッチングノイズの電流経路となるようにできる。その理由は、第一ノイズフィルタ5、コンバータ回路30、第一インバータ回路31の基準電位の導体との間に発生する前述した寄生容量に比べて、コンデンサ17bの容量値が十分大きく、すなわちインピーダンスが小さくなるためである。その結果、空気調和機100の配線の引き回しによらず、スイッチングノイズの電流経路を一定の経路とすることができる。例えば、寄生容量は数10pF以下になるのに対して、取り付けるコンデンサ17a、17bの容量を数100pF以上とすることで、十分にコンデンサに流れるノイズの電流を支配的にすることができる。
第一通信モジュール10から第一信号絶縁回路13への通信信号又は第一信号絶縁回路13から室内機2への通信信号は、第一ノイズフィルタ5に接続されたコンデンサ6又は次に示す寄生容量A1〜A3を経由する漏れ電流(漏洩電流)を発生させる。寄生容量A1は第一機器筐体22と昇降圧用のリアクトル(図示せず)との寄生容量であり、寄生容量A2は第一機器筐体22と圧縮機34との寄生容量であり、寄生容量A3は第一機器筐体22と第一機器基板28との寄生容量である。
通信信号による漏れ電流を発生させる経路は、インピーダンスが高い場合が多く、その結果インピーダンスが比較的低いコンバータ回路30又は第一インバータ回路31のスイッチングノイズが第一通信モジュール10又は第一信号絶縁回路13に混入することとなる。例えば、第一ノイズフィルタ5に接続されたコンデンサ6の容量値が最大であり、通常5000pF程度である。第一機器筐体22と昇降圧用のリアクトルの寄生容量値が最小であり、通常100pF程度である。第一機器筐体22と圧縮機34の寄生容量値がこれらの中間であり、冷媒の動きに応じて変化するため一定ではないが、通常500pF程度である。
一方で本実施の形態のように意図的にコンデンサ17aを室外機1の第一機器筐体22の金属部3と第一通信モジュール10のグランド(−電位側)との間に設けることで、又は室外機1の第一機器筐体22の金属部3と第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側との間に意図的にコンデンサ17b設けることで、このコンデンサ17a、17bによるインピーダンスを他の寄生容量を通る経路のインピーダンスに比べて低くすることができる。その結果、このコンデンサ17a、17bを通る通信信号による漏れ電流が支配的になり、寄生容量及び通信信号の伝搬経路に影響されにくい経路で通信信号を流すことができる。更に、第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13、第一ノイズフィルタ5、第一インバータ回路31等は、いずれも第一機器1における第一機器筐体22の金属部3の電位を基準としているため、第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13は、第一ノイズフィルタ5、第一インバータ回路31等の電位と等しくすることができ、電源線15に対するスイッチングノイズを低減させることができる。
次に、第一通信モジュール10の基準電位1が生じているグランド(−電位側)と基準電位2が生じている第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17aを取り付けることで、通信線16へのスイッチングノイズの混入が低減する理由を説明する。第一通信モジュール10に混入するノイズと、コンバータ回路30、第一インバータ回路31がスイッチした出力電力に相関があることが分かった。これにより、第一通信モジュール10に混入するノイズが、コンバータ回路30、第一インバータ回路31がスイッチしている出力電力に起因していることを突き止めた。
実施の形態3の空気調和機100と異なり、コンデンサ17a、17bが設けられていない場合は、第一通信モジュール10の基準電位1が生じているグランド(−電位側)と基準電位2が生じている第一機器筐体22の金属部3が直流的に絶縁されているために寄生容量によって交流であるスイッチングノイズ成分のみが第一通信モジュール10のグランド(−電位側)又は第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側に混入する。このように、コンデンサ17a、17bが設けられていない場合において、通信線16の通信信号にスイッチングノイズが重畳する原因は、ノイズ源となる回路と第一通信モジュール10とが、第一機器筐体22の金属部3に対して直流的に絶縁されていることにより、ノイズ源となる回路と第一通信モジュール10とが異なる電位を基準として動作していることで、第一通信モジュール10にスイッチングノイズが混入するためである。
実施の形態3の空気調和機100のようにコンデンサ17a、17bが設けられている場合は、スイッチングノイズを含む交流電力に対して、第一通信モジュール10の基準電位1が生じているグランド(−電位側)と基準電位2が生じている第一機器筐体22の金属部3との電位を等しくすることで、第一通信モジュール10の基準電位1が生じているグランド(−電位側)の電位と第一機器筐体22の金属部3及び冷媒配管36等の電位とが同じタイミングで変化するため、電位差が発生しにくくなる。その結果、第一機器筐体22の金属部3を基準とするノイズ源となる回路の基準電位、すなわちノイズ源となる回路のグランド(−電位側)と、第一通信モジュール10の基準電位1との間に生じる電位差が小さくなる。
第一通信モジュール10に供給する直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)を、基準電位2が生じている第一機器筐体22の金属部3に対して交流として同電位にする(交流的に同電位にする)ことと、通信線16と室外機1における第一機器筐体22の金属部3との間を交流信号である通信信号に対して同電位にすることは意味が異なる。なぜなら、第一通信モジュール10に供給する直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)は直流電力が流れているのに対して、通信線16には交流信号が流れるためである。直流電源すなわち、第一通信モジュール10に直流電力を供給する絶縁型変換回路12であれば、交流電源である電源4に影響を与えることなくコンデンサ17a、17bを接続することでスイッチングノイズが低減できる。これに対し、交流信号である通信信号に対しては、この通信信号に影響を与えずにコンデンサを配置することは不可能である。そのため、本実施の形態のように、直流電源すなわち、第一通信モジュール10に供給する絶縁型変換回路12の直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)に対してコンデンサ17a、17bを入れるコンデンサ接続構成を採用することが望ましい。
また、第一通信モジュール10に供給する直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、基準電位2が生じている第一機器筐体22の金属部3とを交流的に同電位にすることにより、通信信号を生成する際にスイッチングノイズを含まない直流電源に基づいて通信信号を生成することができる。したがって、実施の形態3の空気調和機100は、コンバータ回路30、第一インバータ回路31のスイッチングノイズの影響を小さくすることができる。これに対して、通信線16と第一機器筐体22の金属部3とを交流的に同電位にすることは、第一通信モジュール10にて生成済みの通信信号に異なる電位を基準とした信号が流れている導体を取り付けることになるため、第一機器筐体22の金属部3に流れるスイッチングノイズを通信信号に混入させてしまう。
実施の形態3の空気調和機100は、直流電源に相当する第一通信モジュール10に供給する絶縁型変換回路12における直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)に対して、コンデンサ17a、17bを取り付けることによって、第一通信モジュール10のグランド(−電位側)と第一機器筐体22の金属部3との間に電位差が発生しにくくでき、通信信号に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
コンデンサ17aの取り付け方は、前述したように、第一通信モジュール10の基準電位1が生じている第一機器基板28上の配線パターン25aと配線パターン25bとの間にコンデンサ17aを接続する。配線パターン25bは、ジャンパー線又は金属スペーサ等の接続部材33で第一機器筐体22の金属部3に接続されている。同様に第一通信モジュール10を動作させる、すなわち駆動するための駆動電源である絶縁型変換回路12の直流電力の+電位側に対して、コンデンサ17bの一端を取り付ける。更に、コンデンサ17bの他端を、第一機器基板28の配線パターンを介してジャンパー線又は金属スペーサ等の接続部材33で第一機器筐体22の金属部3に取り付ける。コンデンサ17bの他端は、図15に示した配線パターン25bに接続してよく、配線パターン25bと異なる配線パターンに接続してもよい。
なお、第一通信モジュール10と第一信号絶縁回路13であるフォトカプラ又は絶縁トランスとは、図18に示すように一体化されていても良い。同様に、第二通信モジュール11と第二信号絶縁回路14であるフォトカプラ又は絶縁トランスとは、図18に示すように一体化されていても良い。図18に示す第一通信モジュール26は、室外機1(第一機器1)における第一通信モジュール10及び第一信号絶縁回路13を一体化した通信モジュールであり、第二通信モジュール27は、室内機2(第二機器2)における第二通信モジュール11及び第二信号絶縁回路14を一体化した通信モジュールである。また、通信線16と第一信号絶縁回路13との間、通信線16と第二信号絶縁回路14との間には半波整流回路、全波整流回路、コンパレータ回路、シュミットトリガ回路等のように、受信回路64(図3参照)の電位を安定させる回路が入っていても良い。電源線15を用いた電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)を使われる機器があるが、本実施の形態3の空気調和機100は通信線16を少なくとも1線以上有する空気調和機であるため、電源線15のみで通信を行う構成される機器には適用しても、電源線15に流れるスイッチングノイズと通信線16に漏れ込むスイッチングノイズとを同時に低減して、通信信号の品質を高める効果は得られない。
空気調和機100を動作させるための交流電源である電源4は、前述したように室内機2又は室外機1にある。図20に示すように室内機2から室外機1に電力を供給するものであっても、図14に示すように室外機1から室内機2に電力を供給する空気調和機であっても構わない。特に、一つの室外機1に対して一つの室内機2が接続される空気調和機100においては、室内機2に交流電源である電源4が接続される場合が多く、一つの室外機1に対して複数の室内機2が接続される空気調和機100においては、室外機1に電源4が接続される場合が多い。どちらの場合においても本実施の形態3の特徴であるコンデンサ接続構成、すなわち第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17b又はコンデンサ17bが配置されている構成を適用することで、電源線15に流れるスイッチングノイズと通信線16に漏れ込むスイッチングノイズとを同時に低減することができる。
実施の形態3の空気調和機100は、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17b又はコンデンサ17bが配置されているので、分離された基板間、すなわち第一機器基板28と第二機器基板29との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態3の空気調和機100は、第一機器筐体22の金属部3と直流的に絶縁された第一通信モジュール10において、第一機器筐体22の金属部3との絶縁性を保ちながら通信線16へ漏れ込むスイッチングノイズを低減することができる。このため、実施の形態3の空気調和機100は、室外機1と室内機2との間の通信信号の劣化による空気調和機100の誤動作又は誤検知が起こりにくくすることができる。また、実施の形態3の空気調和機100は、電源線15に重畳するスイッチングノイズを低減することで、電源4から電力供給されている第一機器1、第二機器2以外の外部機器に混入するノイズを低減することができる。
以上のように、実施の形態3の空気調和機100は、金属部3を有する第一筺体(第一機器筐体22)内に格納された圧縮機34、室外熱交換器35、第一通信モジュール10を備えた室外機1と、第二筺体(第二機器筐体23)内に格納された室内熱交換器40、第二通信モジュール11を備えた室内機2と、室外熱交換器35と室内熱交換器40と接続し、かつ冷媒が流通する冷媒配管36と、第一通信モジュール10と第二通信モジュール11と間の通信信号が流れる通信線16と、第一筐体(第一機器筐体22)及び第二筐体(第二機器筐体23)の外の電源4である外部電源から室外機1及び室内機2に電力を供給する電源線15と、を備え、通信線16と電源線15又は冷媒配管36とが一部並走して配置されている。室外機1は、第一筺体(第一機器筐体22)に格納された第一基板(第一機器基板28)と、外部電源(電源4)の交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路30と、スイッチング素子(半導体素子55)を有し、かつコンバータ回路30が出力する直流電力を交流電力に変換すると共に圧縮機34を駆動するインバータ回路(第一インバータ回路31)と、第一通信モジュール10と通信線16とを絶縁しながら通信信号を通過させる第一信号絶縁回路13と、コンバータ回路30が出力する直流電力と絶縁された直流電力を第一通信モジュール10に供給する第一絶縁型変換回路(絶縁型変換回路12)と、を備え、第一基板(第一機器筐体22)に、コンバータ回路30、インバータ回路(第一インバータ回路31)、第一通信モジュール10、第一信号絶縁回路13、第一絶縁型変換回路(絶縁型変換回路12)が搭載されている。室内機2は、第二筺体(第二機器筐体23)に格納された第二基板(第二機器基板29)と、第二通信モジュール11と通信線16とを絶縁しながら通信信号を通過させる第二信号絶縁回路14と、インバータ回路(第一インバータ回路31)に供給される電力と絶縁された直流電力を第二通信モジュール11に供給する第二絶縁型変換回路(絶縁型変換回路20)と、を備え、第二基板(第二機器基板29)に、第一通信モジュール10と通信を行う第二通信モジュール11、第二信号絶縁回路14、第二絶縁型変換回路(絶縁型変換回路20)が搭載されている。実施の形態3の空気調和機100は、第一絶縁型変換回路(絶縁型変換回路12)から第一通信モジュール10に出力される直流電力が供給されている導体であって、電圧の基準となる−電位側の導体又は−電位側よりも高い電位になっている+電位側の導体と、第一筐体(第一機器筐体22)の金属部3との間に接続されたコンデンサ17を備えている。実施の形態3の空気調和機100は、この構成により、分離された基板間、すなわち第一基板(第一機器基板28)と第二基板(第二機器基板29)との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態4.
図21は実施の形態4に係る電気装置の一例を示す図であり、図22は図21のインダクタンス部品の比透磁率の周波数特性の一例を示す図である。図23はノイズの周波数が低い場合における図21の電気装置の例を示す図であり、図24はノイズの周波数が高い場合における図21の電気装置の例を示す図である。実施の形態4の電気装置90は、実施の形態1の電気装置90とは、第一機器1内において、電源線15に対して磁性体コア52が取り付けられており、通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間に、コンデンサ部品50及びインダクタンス部品51が直列に接続されたインピーダンス部品57が接続されている点で異なる。図21では、図2に示した電気装置90に、磁性体コア52、インピーダンス部品57が追加されている例を示した。
磁性体コア52の位置は、第一機器1側の第一通信モジュール10、コンバータ回路30が実装された第一機器基板28における第二機器2側の端部に取り付けるのが望ましい。磁性体コア52は、電源線15が巻かれた状態で電源線15に取り付けられている。第二機器2側に磁性体コア52を付ける場合は、ノイズが通信線16に漏れ込んでしまい、好ましくない。例えば、第一機器基板28のコネクタ端部に取り付ける。通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間に接続されたインピーダンス部品57のコンデンサ部品50の容量値を増やすことで電源線15のスイッチングノイズは低減できる。しかし、通信線16のノイズが増加しやすくなるためコンデンサ部品50の容量値を大きくし過ぎるのも問題である。電源線15に巻いた磁性体コア52によるインダクタンスと、通信線16のコンデンサの容量に大きな依存関係があることを見出した。電源線15に対して磁性体コア52を設けることで、コンデンサ部品50の容量値を最適化することができる。磁性体コア52については、実施の形態5で詳しく述べる。
実施の形態4の電気装置90における電源線15のスイッチングノイズが低減するメカニズムを説明する。第一機器1と第二機器2との間の通信線16が1線の場合を考える。第一機器1と第二機器2との間の通信線16が1線なので、通信信号を通信線16に流す場合、リターン経路となる配線が必要となる。実施の形態1で説明したように、リターン経路は電源線15等である。通信信号は、第一機器1における第一機器筐体22の金属部3の電位(基準電位2)に対して振動していることが望ましい。すなわち、通信信号は基準電位2を基準にした交流信号であることが望ましい。しかし、通常、第一通信モジュール10のグランド(−電位側)の電位(基準電位1)は、電源線15の電位とは異なるため、通信信号を通信線16と電源線15との間の寄生容量以外に流すリターン経路は存在しない。
そのため、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ部品50がない場合、通信信号が電源線15へ伝搬する伝搬経路は、寄生容量又は第一ノイズフィルタ5に接続されたコンデンサ6を経由し、第一機器基板28の様々な箇所を通る伝搬経路となる。このため、通信信号が複数の経路を通ってノイズ源である第一負荷機器7の電力変換回路45にも戻っていく。通信信号が第一機器1の基準電位(基準電位2)になっている第一機器筐体22の金属部3に戻るリターン経路の一つである電源線15に流れる場合、通信信号のリターン電流は、電源線15のスイッチングノイズを増大させる要因となり、すなわち電源線15に混入する電磁ノイズを増加させる。
一方、実施の形態4の電気装置90のように、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ部品50を含むインピーダンス部品57がある場合においては、通信信号のリターン電流は電源線15となる。これは、通信信号のリターン電流が寄生容量、第一ノイズフィルタ5に接続されたコンデンサ6を通る経路におけるインピーダンスよりも、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ部品50を含むインピーダンス部品57のインピーダンスが低くなるためである。
コンデンサ部品50を通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続する場合には、注意を要する。図8の比較例2の電気装置91のように、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ94aのみを接続することで、通信線16に第一負荷機器7内の電力変換回路45からのスイッチングノイズが混入する。このため、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ94aのみが接続された比較例の電気装置は、通信信号の通信品質が劣化し、第一機器1と第二機器2との間の通信信号の劣化による電気装置の誤動作又は誤検知が発生する。これに対して、本実施の形態4の電気装置90は、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ部品50及びインダクタンス部品51が直列に接続されたインピーダンス部品57を接続することで、通信線16に流れ込む第一負荷機器7内の電力変換回路45のノイズを低減できる。
インダクタンス部品51について説明する。実施の形態4の電気装置90は、通常の空気調和機と同様に、通信信号の周波数が、通常10Hz〜10kHz程度である。インダクタンス部品51を構成する磁性材料は、通信信号と同じ程度の周波数、すなわち10Hz〜100kHz程度までの比較的低い周波数領域ではインピーダンスが高く、電源4のノイズが問題となる周波数が100kH以上の比較的高い周波数領域ではインピーダンスが低くなる材料を選択する。より具体的には、インダクタンス部品51は、例えば、通信線16に流れる通信信号の基本波の周波数の10倍である基準周波数以上の帯域において、周波数が基準周波数未満の帯域よりも比透磁率が小さくかつインピーダンスが小さいものを選択する。図22に、このような特性を有するインダクタンス部品51の磁性材料の一例を示す。図22に示した特性は、TDK社のH5C3というMn−Zn系の磁性材料の例である。図22では、周波数と比透磁率比μ/μ0との関係を示した。μは磁性材料の透磁率であり、μ0は真空の透磁率である。比透磁率比μ/μ0が高い場合は高インピーダンスであり、比透磁率比μ/μ0が低い場合は低インピーダンスである。
このような材料を使うことで、低い周波数領域では材料内の磁気モーメントが外部の磁場に追いつき、磁場の向きを逆にすることでインピーダンスが高くなり、高い周波数領域では、材料内の磁気モーメントが外部の磁場に追いつかないため、インピーダンスが変化しなくなり、すなわちインピーダンスが低くなる特性を利用することができる。インダクタンス部品51は、図22に示した特性の磁性材料で形成することで、10Hz〜100kHz程度までの比較的低い周波数領域ではインピーダンスが高くなり、周波数が100kH以上の比較的高い周波数領域ではインピーダンスが低くなる。このような特性のインダクタンス部品51が利用できるのは、前述したように、IECによるノイズの国際規格値が150kHz及びそれ以上で規定されていのに対し、通信線16を伝送する通信信号の周波数が数kHz以下と遅いために使うことができる。
図23、図24を用いて、コンデンサ部品50及びインダクタンス部品51を有するインピーダンス部品57と、電源線15に混入するスイッチングノイズとの関係を説明する。図23はノイズの周波数が数kHz以下と低い場合の電気装置90であり、図24はノイズの周波数が数100Hz以上と高い場合の電気装置90である。通信信号の周波数と同程度の周波数領域、すなわち数kHz以下の周波数領域では、図23のように、コンデンサ部品50と直列に取り付けたインダクタンス部品51が高インピーダンスの高インピーダンス部品53になる。したがって、周波数が数kHz以下と低いノイズに対して、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたインピーダンス部品57が高インピーダンスになるので、第一機器筐体22の金属部3に伝搬しているスイッチングノイズが通信線16に漏れ込みにくくなる。
通信信号の周波数よりも高い周波数領域、すなわち数100Hz以上の周波数領域では、図24のように、コンデンサ部品50と直列に取り付けたインダクタンス部品51が低インピーダンスとなり、インピーダンス部品57がコンデンサ部品50単体のようになる。その結果、第一負荷機器7の電力変換回路45から通信線16を通って伝搬してきたスイッチングノイズがインピーダンス部品57により第一機器筐体22の金属部3に流れるので、通信線16と電源線15との間の寄生容量を介して電源線15に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態4の電気装置90は、実施の形態1の電気装置90と同様に、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されているので、分離された基板間、すなわち第一機器基板28と第二機器基板29との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態4の電気装置90は、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ部品50及びインダクタンス部品51を有するインピーダンス部品57におけるインピーダンスの周波数特性によって、周波数が数kHz以下と低いスイッチングノイズが通信線16へ漏れ込むことを低減することができる。このため、周波数が数kHz以下と低いスイッチングノイズに対して、第一機器1と第二機器2との間の通信信号の劣化による電気装置90の誤動作又は誤検知が起こりにくくすることができる。また、実施の形態4の電気装置90は、通信線16を流れる通信信号の基本波の10倍高調波以上の周波数を有するスイッチングノイズに対して、インダクタンス部品51のインピーダンスが低下して、インピーダンス部品57がコンデンサ部品50のみの特性に近づくため、通信線16から電源線15へスイッチングノイズが伝搬することを低減することができ、電源線15に重畳するスイッチングノイズを低減することができる。
特許文献1の空気調和機(図8)は、EMC(Electro Magnetic Compatibility)試験で要求される雷サージ試験又は静電気放電試験結果を悪化させる。雷サージは、電源線と筐体の間に一線対地で数100V以上の大きな電圧をかける。同様に静電気放電試験は、筐体に対して数kVの接触放電を行うか、電源線又は通信線の数cm程度の近傍で気中放電を行う。このように、筐体と電源線間に大きな電圧がかかった際に、図8においては、金属部3、コンデンサ94a、通信線16、コンデンサ94b、電源線15を経由する伝搬経路が発生する。コンデンサ94bのコンデンサ容量は、寄生容量18に比べて十分に大きいので、このような伝搬経路が発生することになる。具体的には、寄生容量18は平行平板コンデンサの式に従い、容量値C[F]とすると、配線間の対向面積S[m2]に比例し,板間距離d[m]に反比例する。線間の絶縁材料の比誘電率は1に近い。そのため、電源線15と通信線16の容量は上記の式に従うと並走距離が10m程度であっても50pF以下となる。一方、コンデンサ94bの容量は、上記の方法でノイズを除去するためには、少なくとも1,000pF以上となるため、両者の間には10倍以上の差が通常発生する。そのため、コンデンサ94bと寄生容量18の箇所のみを比較しても、雷サージまたは静電気放電試験に伴うノイズの流れやすさは10倍以上の差になる。
そのような、雷サージ又は静電気放電による電流が通信線16、電源線15に流れることになり、通信線16、電源線15につながる回路である第一通信モジュール95、第二通信モジュール96、第一負荷機器7、第二ノイズフィルタ8、第二負荷機器9、コンバータ回路30の誤動作又は破壊を招きやすくする。これに対し、本実施の形態においてはコンデンサ17のみであるため、通信線16と電源線15との間の寄生容量を考慮しても、雷サージ又は静電気放電による電流が流れにくく、誤動作又は破壊を招きにくくすることができる。雷サージ又は静電気放電は一般的にEMS(Electro Magnetic Susceptibility)又はイミュニティという言葉で説明され、これらは対象とする機器の電界、磁界、電圧、電流に対する耐えうる能力を示すものである。上記の雷サージ又は静電気放電以外の試験においても、図8の比較例に比べると、上記と同様の理由で本実施の形態の方が耐えうる能力を向上させることができる。また、第一信号絶縁回路13、第二信号絶縁回路14のノイズ耐量によっては、インダクタンス部品51が不要になる。更に、プリント基板である第一機器基板28、第二機器基板29内の作り方によっては、配線パターンによる残留インダクタンスがおおよそ1mmあたり1nH生じること又はIC(Integrated
Circuit)を含む回路部品の内部インダクタンスのためプリント基板内のインピーダンス成分が大きくなり、高インピーダンス部品53が不要となる。コンデンサ部品50としては、コンデンサの他に、EMSに対応するためアレスタ又はバリスタを用いても良い。
電源線と通信線が一体となって磁性体コアに巻く以外にも、通信線の受信端のインピーダンスは一般的に高いため、電源線のみに磁性体コアを巻く方法でも構わない。磁性体コアには、通常配線を数巻き、巻き付けて使い、これによって磁性体コアによるインダクタンスを大きくすることができる。その際に電源線と通信線を一体にして巻きつける場合に比べて、電源線のみの場合には、同じ磁性体コアの場合には、電源線のみの方が巻く数を増やすことができ、その結果、電源線のインピーダンスを大きくすることができる。また、電源線の電磁ノイズの低減に必要な磁性体コアによるインダクタンス増加量と、通信線の電磁ノイズの低減に必要な磁性体コアにインダクタンス増加量が、各々のICの入力インピーダンスと出力インピーダンスの違いにより異なることがあるため、電源線と通信線に異なる磁性体コアを用いても構わない。
実施の形態5.
図25は実施の形態5に係る空気調和機の一例を示す図であり、図26は通信線と金属部との間に接続した場合のコンデンサにおけるリーク電流特性を示す図である。図27は図25の通信線における信号波形の一例を示す図であり、図28は図25の電源線におけるノイズの周波数特性の一例を示す図である。実施の形態5の空気調和機100は、実施の形態3の空気調和機100とは、室外機1内において、コンバータ回路30が出力する直流電源のノイズを除去するノイズフィルタ44を備え、電源線15に対して磁性体コア52が取り付けられており、通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間に、コンデンサ部品50及びインダクタンス部品51が直列に接続されたインピーダンス部品57が接続されている点で異なる。ノイズフィルタ44は、第一機器基板28に搭載されている。図25では、図14に示した空気調和機100に、磁性体コア52、インピーダンス部品57が追加されており、第一通信モジュール10と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサが1つのコンデンサ17であるいる例を示した。なお、図25では、室外機1と室内機2とを接続している電源線15において、コネクタを示す丸印を記載した。
磁性体コア52の位置は、室外機1側の第一通信モジュール10、コンバータ回路30が実装された第一機器基板28における室内機2側の端部に取り付けるのが望ましい。磁性体コア52は、電源線15が巻かれた状態で電源線15に取り付けられている。第二機器2側に磁性体コア52を付ける場合は、ノイズが通信線16に漏れ込んでしまい、好ましくない。例えば、第一機器基板28のコネクタ端部に取り付ける。実施の形態1において説明した、図8における通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間に接続されたコンデンサ94aと同様に、通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間に接続されたインピーダンス部品57のコンデンサ部品50の容量値を増やすことで電源線15のスイッチングノイズは低減できる。しかし、通信線16のノイズが増加しやすくなるためコンデンサ部品50の容量値を大きくし過ぎるのも問題である。電源線15に巻いた磁性体コア52によるインダクタンスの値と、通信線16のコンデンサの容量値との間に大きな依存関係があることを見出した。これは、今まで考えられていなかった。
空気調和機100に関しては、日本国内の電安法(電気用品安全法)であれば500kHzからスイッチングノイズの規格値があり、国際無線障害特別委員会(CISPR:Comite international Special des Perturbations Radioelectriques)の国際規格の場合には150kHzからスイッチングノイズの規格値がある。我々は、電源線15に巻いた磁性体コア52のインダクタンス及び電源線15の残留インダクタンスの合計値、すなわち磁性体コア52の寄与分を含む電源線15のインダクタンス値をLとし、通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間に接続されたインピーダンス部品57におけるコンデンサ部品50の容量値をCとすると、式(3)に示す共振周波数fを各規格値が始まる周波数より小さくする必要があることを突き止めた。
f=1/(2π×√(L×C)) ・・・(3)
この式(3)から、共振周波数fが150kHzの場合には、L×Cの値はおおよそ1pF×Hと算出できる。
一方、通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間に接続されたインピーダンス部品57におけるコンデンサ部品50の容量値をCとすると、コンデンサ部品50が追加されることで式(4)に示す漏洩電流Iが増加し、更にCの値によって漏洩電流Iが変化することが分かった。
I=2π×F1×C×Va ・・・(4)
ここで、F1は交流電源である電源4の周波数であり、Vaは室外機1の第一機器筐体22の金属部3に対する交流電源である電源4の電圧である。
図26に、インピーダンス部品57におけるコンデンサ部品50の容量値Cと漏洩電流Iの測定値との関係を示した。漏洩電流Iは通常1mA以下である必要がある。電源4の周波数F1を60Hz、電圧Vaを200Vとすると、漏洩電流Iが1mAの場合には式(4)からコンデンサ部品50の容量値Cは約13,000pFと算出できる。そのため、漏洩電流Iを1mA以下に抑えるためには、コンデンサ部品50の容量値Cを約13,000pFよりも小さくする必要がある。ただし、漏洩電流Iの原因となる第一ノイズフィルタ5に接続されたコンデンサ6、圧縮機34の寄生容量などで通常、0.5mA程度の漏洩電流が流れる。コンデンサ6、圧縮機34の寄生容量などによる漏洩電流は、6500pF程度のコンデンサに相当する。このため、コンデンサ部品50の許容誤差である最大±20%程度を含めた設計マージンを取ると、通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間に接続されたインピーダンス部品57におけるコンデンサ部品50の容量値は、おおよそ5000pF以下にする必要がある。
このように、共振周波数fから算出されるL×Cの値、例えば1pF×Hと、漏洩電流Iから算出されるコンデンサ部品50の容量値C、例えば5000pFを同時に満たすことで、電源4に混入するノイズを低減しつつ、コンデンサ部品50を通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間に取り付けた際の漏洩電流Iを規格値以内に収めることができる。
実施の形態5の空気調和機100と異なり、通信線16にコンデンサ部品50を取り付けない場合には、磁性体コア52を通信線16に対して取り付ける必要がある。それに対して、実施の形態5の空気調和機100のように、通信線16にコンデンサ部品50を取り付けること、通信線16のノイズの交流成分に対する第一機器基板28の金属部3へのインピーダンスが低下する。このため、磁性体コア52を通信線16には巻かず、電源線15のみに巻くことができ、通信線16と電源線15をまとめて巻かなくても通信線16と電源線15をまとめて巻くのと同様のスイッチングノイズの低減効果が得られることが分かった。これは、磁性体コア52の内径の寸法が一定である場合、電源線15を磁性体コア52に巻ける回数を増やすことができることを意味する。例えば、通信線16の1線と電源線15の2線をまとめて磁性体コア52に2巻していた場合に対して、電源線15の2線のみになれば磁性体コア52に3巻することができる。磁性体コア52に巻く回数が増えるほど、電源線15のインダクタンスを大きくすることができるため、電源線15のスイッチングノイズを小さくすることができる。
通信線16に磁性体コア52を巻かなくても良い理由を詳しく説明する。通信線16の受信回路側のインピーダンスが高いため、通信線16には通信信号の交流電流を含めて電流が流れにくい。しかし、通信線16にコンデンサ部品50がない場合には、通信線16にスイッチングノイズを漏れ込ませないために、磁性体コア52を付けて更にインピーダンスを高くする必要があった。それに対して、実施の形態5の空気調和機100のように、通信線16にコンデンサ部品50がある場合には、コンデンサ部品50は交流電流であるスイッチングノイズの伝搬経路となり、かつインピーダンスの高い受信回路側にはスイッチングノイズが流れないため、磁性体コア52の効果が小さくなるので、通信線16に磁性体コア52を巻かなくても良いことが分かった。
図27に、通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間に、コンデンサ部品50及びインダクタンス部品51が直列に接続されたインピーダンス部品57が接続されている実施の形態5の空気調和機100における、通信線16の信号波形71の一例を示した。また、図27には、通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間にインピーダンス部品57が接続されていない比較例における通信線16の信号波形70も示した。本実施の形態においては、通信線16のインピーダンス部品57におけるコンデンサ部品50に1500pFのコンデンサを利用し、インダクタンス部品51にはTDK社製のH5C3T10×2.5×5を利用した。電源線15には北川工業社製のフェライトコアCRFC−13に対して電源線15を2巻したものを用いた。一方、比較例では、インピーダンス部品57を用いず、H5C3T10×2.5×5を用いない条件とし、それ以外は同一条件で測定を行った。図27のように通信信号波形に混入するリンギングのピーク間電圧であるリンギング電圧は、本実施の形態のリンギング電圧Vp2の値が2V程度なのに対し、比較例のリンギング電圧Vp1の値が4V以上のリンギングとなっていることが分かる。リンギング電圧は小さいほど望ましく、通信線16のスイッチングノイズが低減できることが分かる。
図28に、実施の形態5の空気調和機100における電源線15に混入するスイッチングノイズの伝導ノイズ特性74の一例を示した。また、図28には、比較例における電源線15に混入するスイッチングノイズの伝導ノイズ特性73及びCISPR規格の規格値72を示した。図28のように、500kHz以上の帯域で、本実施の形態の伝導ノイズ特性74は比較例の伝導ノイズ特性73に比べて、5dBから10dB低減していることが分かる。特にピーク値となっている5MHzにおいて、本実施の形態の伝導ノイズ特性74は比較例の伝導ノイズ特性73に比べて、15dB程度の低減になっていることが分かる。なお、500kHz以下の帯域では、比較例と本実施の形態における電源線15でのスイッチングノイズは同等レベルになる。
実施の形態5の空気調和機100は、実施の形態3の空気調和機100と同様に、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されているので、分離された基板間、すなわち第一機器基板28と第二機器基板29との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態5の空気調和機100は、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたコンデンサ部品50及びインダクタンス部品51を有するインピーダンス部品57におけるインピーダンスの周波数特性によって、周波数が数kHz以下と低いスイッチングノイズが通信線16へ漏れ込むことを低減することができる。このため、周波数が数kHz以下と低いスイッチングノイズに対して、室外機1と室内機2との間の通信信号の劣化による空気調和機100の誤動作又は誤検知が起こりにくくすることができる。また、実施の形態5の空気調和機100は、通信線16を流れる通信信号の基本波の10倍高調波以上の周波数を有するスイッチングノイズに対して、インダクタンス部品51のインピーダンスが低下して、インピーダンス部品57がコンデンサ部品50のみの特性に近づくため、通信線16から電源線15へスイッチングノイズが伝搬することを低減することができ、電源線15に重畳するスイッチングノイズを低減することができる。
また、実施の形態5の空気調和機100は、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたインピーダンス部品57のコンデンサ部品50の容量値Cを5000pF以下にし、電源線15に取り付けられた磁性体コア52の寄与分を含む電源線15のインダクタンス値Lとコンデンサ部品50の容量値Cとの乗算値C×Lが1pF×H以上にすることで、電源4につながる電源線15に通信線16から重畳するスイッチングノイズを低減しつつ、通信線16へ漏れ込むノイズを低減することができ、通信線16に流れる通信信号による漏洩電流Iを小さくすることができる。
実施の形態6.
図29は、実施の形態6に係る電気装置の一例を示す図である。実施の形態6の電気装置90は、実施の形態4の電気装置90とは、コンデンサ部品50及びインダクタンス部品51が直列に接続されたインピーダンス部品57の代わりに通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間にバリスタ54が接続されている点で異なる。
バリスタ54はコンデンサ部品50とは異なり、バリスタ54の両端にかかる電圧が低い場合には等価的にコンデンサに見え、高いインピーダンスとなる。ただし、コンデンサ部品50と比べると、インダクタンスが大きくなるため、インダクタンス部品51を使わなくても良い。そのため、バリスタ54を使うことで、コンデンサ部品50とインダクタンス部品51を直列に実装しなくても、バリスタ54単体でコンデンサ部品50とインダクタンス部品51の特性を得ることができる。すなわち、バリスタ54は容量成分とインダクタンス成分を有している。ただし、バリスタ54が有する容量値は最大のものでも500pF程度と大きくないため、必要に応じて複数個のバリスタ54を並列に接続して用いることで、実施の形態5で述べた必要な容量値を確保する必要がある。バリスタ54は、例えば、通信線16に流れる通信信号の基本波の周波数の10倍である基準周波数以上の帯域において、周波数が基準周波数未満の帯域よりもインダクタンス成分が小さくかつ容量成分が優位になるものを選択する。
実施の形態6の電気装置90は、実施の形態4の電気装置90と同様に、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されているので、分離された基板間、すなわち第一機器基板28と第二機器基板29との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態6の電気装置90は、実施の形態4の電気装置90と同様に、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたバリスタ54におけるインピーダンスの周波数特性によって、周波数が数kHz以下と低いスイッチングノイズが通信線16へ漏れ込むことを低減することができる。このため、周波数が数kHz以下と低いスイッチングノイズに対して、第一機器1と第二機器2との間の通信信号の劣化による電気装置90の誤動作又は誤検知が起こりにくくすることができる。また、実施の形態6の電気装置90は、通信線16を流れる通信信号の基本波の10倍高調波以上の周波数を有するスイッチングノイズに対して、バリスタ54のインピーダンスが低下して、バリスタ54がコンデンサのみの特性に近づくため、通信線16から電源線15へスイッチングノイズが伝搬することを低減することができ、電源線15に重畳するスイッチングノイズを低減することができる。
また、実施の形態6の電気装置90は、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたバリスタ54の容量値Cを5000pF以下にし、電源線15に取り付けられた磁性体コア52の寄与分を含む電源線15のインダクタンス値Lとバリスタ54の容量値Cとの乗算値C×Lが1pF×H以上にすることで、電源4につながる電源線15に通信線16から重畳するスイッチングノイズを低減しつつ、通信線16へ漏れ込むノイズを低減することができ、通信線16に流れる通信信号による漏洩電流Iを小さくすることができる。
実施の形態7.
図30は、実施の形態7に係る空気調和機の一例を示す図である。実施の形態7の空気調和機100は、実施の形態5の空気調和機100とは、コンデンサ部品50及びインダクタンス部品51が直列に接続されたインピーダンス部品57の代わりに通信線16と第一機器筐体22の金属部3と間にバリスタ54が接続されている点で異なる。バリスタ54の特性は、実施の形態6で説明した通りである。バリスタ54が有する容量値は最大のものでも500pF程度と大きくないため、必要に応じて複数個のバリスタ54を並列に接続して用いることで、実施の形態5で述べた必要な容量値を確保する必要がある。
実施の形態7の空気調和機100は、実施の形態5の空気調和機100と同様に、第一通信モジュール10に供給される直流電力の+電位側又はグランド(−電位側)と、第一機器筐体22の金属部3との間にコンデンサ17が配置されているので、分離された基板間、すなわち第一機器基板28と第二機器基板29との間に通信される通信信号の品質に影響を与えることなく、電源4に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
実施の形態7の空気調和機100は、実施の形態5の空気調和機100と同様に、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたバリスタ54におけるインピーダンスの周波数特性によって、周波数が数kHz以下と低いスイッチングノイズが通信線16へ漏れ込むことを低減することができる。このため、周波数が数kHz以下と低いスイッチングノイズに対して、室外機1と室内機2との間の通信信号の劣化による空気調和機100の誤動作又は誤検知が起こりにくくすることができる。また、実施の形態7の空気調和機100は、通信線16を流れる通信信号の基本波の10倍高調波以上の周波数を有するスイッチングノイズに対して、バリスタ54のインピーダンスが低下して、バリスタ54がコンデンサのみの特性に近づくため、通信線16から電源線15へスイッチングノイズが伝搬することを低減することができ、電源線15に重畳するスイッチングノイズを低減することができる。
また、実施の形態7の空気調和機100は、通信線16と第一機器筐体22の金属部3との間に接続されたバリスタ54の容量値Cを5000pF以下にし、電源線15に取り付けられた磁性体コア52の寄与分を含む電源線15のインダクタンス値Lとバリスタ54の容量値Cとの乗算値C×Lが1pF×H以上にすることで、電源4につながる電源線15に通信線16から重畳するスイッチングノイズを低減しつつ、通信線16へ漏れ込むノイズを低減することができ、通信線16に流れる通信信号による漏洩電流Iを小さくすることができる。
なお、本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。