以下、本発明に係る散布装置1を詳細に説明する。
図1は上記散布装置1を農薬等の散布車2の前部2aにセットした状態を示す側面図である。かかる図において、上記散布車2は、前輪3a(2輪)及び後輪3b(2輪)を有し、左右方向に水平に伸びる農薬等の散布管4を有しており(図1では散布管4を支点4aから車体に沿って後方に折り畳んだ状態を示す)、圃場においては、当該散布管4を支点4aを基点として左右に開いて、当該管4に沿った複数個所から下方向けて農薬等を散布するものである。このような散布車2は例えば圃場における農薬散布等の各種管理作業を行う所謂乗用管理機である。
この散布管4の1本の長さは片側で最大で7mであり、車幅が約1mであることを考慮すると、左右合わせると最大で約15mの範囲(左散布管7m+前輪3a間1m+右散布管7m)に農薬等を散布し得る能力を有している。
上記散布車1の前部2aの左右方向フレーム2b(図3参照)の上面には(図2参照)、2つのL字型アングル7,7の下部がボルト及びナットB(図2参照)で起立固定されており、これらアングル7,7の上端前面側に上記左右方向フレーム2bと略同じ長さの水平角棒5がボルト及びナットBにより固定されている(図2参照)。そして、上記水平角棒5には、前後方向支持アングル6の後端の取付管6aが挿通されており、当該アングル6は、その前端上面に設けられた凹型取付部6bの左右方向凹部6b’を上方に向けた状態で水平に固定されている(図2参照)。
この前後方向支持アングル6は、図3に示すように、上記水平角棒5の中心線Pを中心として、左側に所定間隔を以って2個、右側に所定間隔を以って2個固定されており、左側2個の支持アングル6,6の上記凹型取付部6b,6bの左右方向凹部6b’,6b’には後述の散布機7a,7bを支持する短水平支持杆14aが載置されボルト及びナットBで各々上記左右方向凹部6b’,6b’に固定され、右側2個の支持アングル6,6の上記凹型取付部6b,6bの上記左右方向凹部6b’,6b’には後述の散布機7c,7dを支持する短水平支持杆14bが載置されると共にボルト及びナットBで上記左右方向凹部6b’,6b’に固定されている。
このように上記散布装置1は、図3に示すように、4台の散布機7a,7b,7c,7dを上記水平角棒5に一定間隔で横方向に並べた状態で、1つのユニットを構成している。また、後述するが、上記左端の散布機7aの側方散布部12aから左斜め上方に向けて除草剤(粒径1mm〜2mm)を散布し(除草剤の最大到達距離約5.5m、領域E1)(図15参照)、右端の散布機7dの側方散布部12a’から右斜め上方に向けて除草剤を散布し(除草剤の最大到達距離約5.5m、領域E2)、かつ中央の2つの散布機7b,7cの下端に設けられた下向散布部12b,12b’から下方に向けて除草剤を散布することで(左右方向に約1mの範囲、領域E3)、左右方向に全体として最大約12m(左5.5m+中央1m+右5.5m)の範囲に亙って均等に除草剤を散布することができるものである。
上記散布機7a,7bは、1本の上記短水平支持杆14aに一対のコ字状取付板15a,15bを以って立設支持されており、上記短水平支持杆14aは、上述のように、上記前後方向支持アングル6,6の前端の凹型取付部6b,6bの左右方向凹部6b’,6b’上に嵌合固定され、ボルト及びナットBにて固定することにより、上記散布車2の前部2aの左側に固定されている(図3参照)。
上記散布機7c,7dは、1本の上記短水平支持杆14bに一対のコ字状取付板15c,15dを以って立設支持されており、上記短水平支持杆14bは、上述のように、上記前後方向支持アングル6,6の後端の凹型取付部6b,6bの左右方向凹部6b’,6b’上に嵌合固定され、ボルト及びナットBにて固定することにより、上記散布車2の前部2aの右側に固定されている(図3参照)。
上記散布車2の左右方向フレーム2bは可動フレーム2b’に支持されており(図1参照)、該可動フレーム2b’は、昇降駆動モータM5により支軸2b”を支点として回動可能であり(矢印G,Y方向)、これにより上記左右方向フレーム2bも矢印I,J方向に昇降自在となっている(図1、二点鎖線参照)。従って上記左右方向フレーム2bに取り付けられた上記散布装置1も、上記左右方向フレーム2bの昇降により矢印I,J方向に昇降可能となっている。これは、後述の側方散布部12a,12a’及び下向散布部12b,12b’の高さを調整するものであり、通常これらの散布部の高さを圃場における植物の上端位置(丈)に合わせることができるように構成している。
これらの散布機7a乃至7dの基本的な構成は同一であるので、以下、散布機7a(図2、図6参照)を例にその構造を説明し、他の散布機7b乃至7dについては、同一部分に同一符号を附してそれらの説明は便宜上省略する。尚、シャッター、ホースの取り回し構成等、各散布機毎に異なる点については、その都度説明する。
同図において、8はタンクであり、本実施形態の場合は、該タンク8内に細かい粒状の粒状除草剤が投入される。このタンク8の下端部には開口8aがあり(図13参照)、投入された粒状除草剤は該開口8aから下方の送りローラ9に落下する。この送りローラ9の外周面には除草剤を収納して下方に送るための凹部9aが設けられており、凹部9a内に投入された除草剤は該ローラ9の矢印A方向の回転により下方に送られ、上記ローラ9の下部に左右方向に並設された2つの下部ホッパー部10a,10bに落下される(図6参照)。そして、このホッパー部10a,10bの下端開口には各々ホース11a,11bが各々接続されている。この凹部9aは、上記送りローラ9の回転軸に沿って、円周方向に複数条設けられている。
また、上記開口8aには該開口8aを開閉する方形板によるシャッターSが設けられている(図13(a))。このシャッターSはタンク8を支持する水平フレーム15a’(15d’)の両側案内ガイドレール46,46に左右縁部を案内されることにより該レール46,46に沿って前後にスライド自在に設けられており、シャッターSを閉鎖することにより、タンク8内の粒状除草剤の上記送りローラ9への供給を停止することができる。このシャッターSは前方にスライドすることにより、上記開口8aを開口し、後方にスライドすることにより該開口8aを閉鎖し得るものである。このシャッターSの構造は、両端の散布機7a,7dにおいては同一であるが、中央部の散布機7b,7cにおいては若干異なっている。
中央部の散布機7b,7cでは、上記シャッターSは図7、図13(b)に示すように、上記開口8aを左右に二分割する左右のシャッターS1,S2に分離されており、左右独立して開閉できるように構成されている。即ち、上記水平フレーム15b’(15c’)には左右の両側案内ガイドレール46,46の他、中央ガイドレール47が設けられており、両案内ガイドレールS1,S2は左右のガイドレール46及び中央ガイドレール47に案内されることにより、両レールに沿って左右独立して開閉できるように構成されている。
このように中央部の散布機7b,7cにおいてシャッターS1,S2を左右に2分割したのは、該散布機7bについて説明すると(図7参照)、上記開口8aから下方に落下する除草剤の内、左側から落下する除草剤は送りローラ9の左側部分により左側のホッパー部10aを介して側方散布部12aに落下して行き左斜め上方に散布され、上記開口8aから下方に落下する除草剤の内、右側から落下する除草剤は送りローラ9の右側部分より右側のホッパー部10bを介して下向散布部12bから下方に散布されるので、側方散布部12aに供給される除草剤と、下向散布部12bに供給される除草剤を独立して供給、停止の制御を行えるように構成したものである。
即ち、上記シャッターS1を開、上記シャッターS2を閉鎖することにより、上記側方散布部12aに除草剤を供給しながら、下向散布部12bに供給される除草剤のみを停止することができ、また逆に上記側方散布部12aに供給される除草剤のみを停止し、下向散布部12bのみに除草剤を供給する、等という制御を可能とするためである。尚、上記散布機7cにおいても同様である。
このように各散布機7a〜7dにシャッターS,S1,S2を設けることにより、例えば左側及び下側のみ散布して、右側の散布を停止する場合は、散布機7a,7bのシャッターS及びシャッターS1,S2を開き、散布機7cのシャッターS1のみ開き、上記散布機7cのシャッターS2と散布機7dのシャッターSを閉鎖することにより、実現することができる。また、逆に、右側及び下側のみ散布して、左側の散布を停止する場合は、散布機7c,7dのシャッターS1、S2及びシャッターSを開き、散布機7bのシャッターS2のみ開き、上記散布機7bのシャッターS1と散布機7aのシャッターSを閉鎖することにより、実現することができる。
さらに、散布機7b,7cにおける送りローラ9の特徴について、図8を使用して説明する。同図(a)は上記散布機7bの送りローラ9の正面図、(b)は(a)の送りローラのX−X線断面図、(c)は(a)の送りローラ9のY−Y線断面図である。同図に示すように、送りローラ9の凹部9b,9b’は、ホッパー10a(ホース11c側)の凹部9bは幅が広く、深い溝により構成され(図4(b)参照)、ホッパー10b(ホース11d側)の凹部9b’は幅が狭く、浅い溝により構成されている(図4(c)参照)。
これは、上記タンク8から下方の送りローラ9に供給される除草剤は、上記凹部9b,9b’に供給され、送りローラ9の回転により上記各ホース11c,11dに供給されるものであるが、上記ホース11cは上記側方散布部12aに接続され、上記ホース11dは上記下向散布部12bに接続されているため、上記側方散布部12aに供給される除草剤の量を多くし、上記下向散布部12bに供給される除草剤の量を少なくするためである。
上記側方散布部12aからは約5.5mに亘って除草剤を万遍なく散布する必要があり、一方、下向散布部12bから散布する除草剤は側方散布部12aから散布される量より少量で足りるので、このように上記送りローラ9の凹部9b,9b’に差を設けたのである。このように構成すると、側方と下方に適切な量の除草剤を分散して散布することができる。また、上記除草剤は、粒子が細かいので、上記凹部9b,9b’内に複数の粒子が投入されることになる。これに対し例えば粒径の大きい肥料は、上記凹部9bの1個が入る大きさである。
このように上記送出ローラ部の送りローラ9はその外周に、軸方向に沿う凹部9b,9b’が、円周方向に複数条設けられており、上記凹部9b,9b’を送出ローラ9の中心を境に左右に二分割し、一方側の凹部9bの深さは他方側の凹部9b’の深さより深く形成し、上記一方側の深い凹部9bに供給された粒状物は、上記側方散布部12aに上記ホース11cにて供給され、上記他方側の浅い凹溝9b’に供給された粒状物は、上記下向散布部12bに上記ホース11dにて供給されるように構成される。尚、上記では散布機7bを説明したが、上記散布機7cにおいては、上記散布機7bと左右対称の構造となる。即ち、散布機7cにおいては、送りローラ9の左側の凹部9b’の幅が狭く、浅い溝により構成され(下向散布部12b’に供給する)、送りローラ9の右側の凹部9bの幅が広く、深い溝により構成されることになる。また、上記散布機7a,7dの送りローラ9は、左右何れの凹部9aの溝は同一の大きさ(同一の幅及び深さ)である。
図3に戻って、上記散布機7aの送りローラ9と隣接する散布機7bの送りローラ9の中心には1本の共通の駆動シャフト9’が設けられており、当該駆動シャフト9’は取付板15aを貫通し、左端の取付板15aから左方に突出し、当該突出部をローラ駆動モータM1により回転駆動されるように構成されている。これにより上記散布機7a,7bの上記送りローラ9,9は上記駆動シャフト9’により同時に同方向(矢印A方向)に回転駆動される。
また、散布機7cと散布機7dの送りローラ9,9の中心にも同様に1本の共通の駆動シャフト9’が設けられており、当該駆動シャフト9’は取付板15dを貫通して設けられており、右端の取付板15cから右方に突出し、当該突出部をローラ駆動モータM2により回転駆動し得るように構成されている。これにより上記散布機7c,7dの上記送りローラ9,9は上記駆動シャフト9’により同時に同方向(矢印A方向)に回転駆動される。
上記散布機7aの上記ホース11a,11b内に投入された除草剤は、当該ホースにより下方に誘導され、ホース下端に設けられた側方散布部12aにおいて回転羽根13により当該散布車2の左上方向(図3矢印C方向)に飛ばされるように構成されている(図12、図15参照)。
上記各散布機7a乃至7dにおいて、左側2つの散布機7a,7bの散布部12a,12bの構成と、右側2つの散布機7c,7dの散布部12a’,12b’の構成は上記中心線Pを中心とする左右対称構造となっている。即ち、左右端部の側方散布部12a,12a’は、回転羽根13により各々除草剤を左斜め上方向、右斜め上方向に飛ばすものであり(図15参照)、中央左右の下向散布部12b,12b’は各々ホース11d,11eにより下方に散布するものである(図3矢印D方向、図15参照)。
そして、上記散布機7aの2本のホース11a,11bは各下端が側方散布部12aの導入口としてのホース支持管26に接続されており、また、上記散布機7bの2本のホース11c,11dの内、ホッパー10aに接続された散布機7a側のホース11cは、同様に上記散布部12aの上記ホース支持管26に接続されており、各々のホース11a,11b,11c内を通って落下してきた除草剤は上記回転羽根13により左斜め上方向に散布されるものである。
また、上記散布機7bのホッパー10bに接続された他方のホース11dはその下端が下向散布部12bに接続固定されており、当該ホース11d内を通って落下してきた肥料は、該ホース11d下端11d’から下方に散布される(矢印D方向)。
また上記散布機7dのホッパー10a,10bに接続された2本のホース11g,11hは各下端が側方散布部12a’のホース支持管26に接続されており、また、上記散布機7cの2本のホース11e,11fのうち、散布機7d側のホッパー10bに接続されたホース11fは同様にその下端が側方散布部12a’の上記ホース支持管26に接続されており、該ホース11f,11g,11hを通って落下してきた除草剤は上記散布部12a’の回転羽根13により右斜め上方向(図3、矢印C’方向)に飛ばされる(図15参照)。
さらに、上記散布機7cのホッパー10aに接続された他方のホース11eは下向散布部12b’に接続固定されており、当該ホース11eを通って落下してきた除草剤は、該ホース11e下端11e’から下方に散布される(矢印D方向)。
上記除草剤の散布エリアは、図15に示すように、上記側方散布部12aでは散布機1の左側の近傍位置から遠方位置まで最大約5.5mの範囲E1であり、上記側方散布部12a’では散布機1の右側の近傍位置から遠方位置まで最大約5.5mの範囲E2である。また中央の散布部12bは下方の範囲e1、中央の散布部12bは下方の範囲e2であり(図3)、これらの散布部12a,12a’,12b,12b’により散布機1を中心として左側に5.5m、中央部に1m(E3=e1+e2)、右側に5.5mの合計12mの範囲に肥料を散布することができる。
次に、散布部12の構成について詳述する。該散布部は、回転羽根による回転型の側方散布部12a,12a’と、回転羽根を使用しない落下型の下向散布部12b,12b’とから構成されている(図3参照)。これらの散布部は上述のように、中心線Pにより左右対称に設けられているので、左側の散布部12a,12bの説明を行い、右側の散布部12a’,12b’については、同一部分には同一符号を附してそれらの説明は便宜上省略する。
上記側方散布部12aは、図4(a)に示すように、回転羽根収納筐体(筺体)21と、当該筐体21に連設されたモータ収納筐体22とから構成されており、当該筐体22の内部に固設された回転羽根駆動モータM3の回転シャフト22aが上記回転羽根収納筐体21の長手方向の略中心に配置されている。尚、他方の側方散布部12a’の回転羽根駆動モータを回転羽根駆動モータM4とする(図14参照)。
この回転シャフト22aには、軸方向からみて120度毎の角度を持って3箇所に羽根板固定短板23が放射状に設けられており(図5参照)、これら3箇所の羽根板固定短板23各々に羽根板(回転羽根)24が各々ボルト及びナットBにより固定されている。尚、25,25は上記羽根板24の両端部を支持する支持円盤である。
上記各羽根板固定短板23は例えば金属により構成されており、各短板23に羽根板24が固定されている。上記羽根板24は、ゴム板製の羽根板24aとその表面側の略前面を覆うように積層状態で固定された金属板24bとから構成されており、該金属板24bは回転羽根の回転方向側に設けられている。このように回転羽根をゴム板24aと金属板24bの2重構造としたのは、ゴム板24aの弾性的な力と、金属板24bの硬さを利用して、近距離から遠距離まで万遍なく除草剤を適切に飛ばすことを可能とするためである。
上記各羽根板24は、長方形状を成し、その長手方向の一縁24a’が上記固定短板23にボルト及びナットBを持って固定され、長手方向の他端(外側縁部)24b’が上記回転羽根筐体21の内壁に接近した位置となるように設置されている(図4(b)参照)。尚、上記羽根板24の他端24b’は図4(b)に示すように、筺体21内壁に対して所定間隔(内壁と他縁24b’との距離が除草剤等の粒状物の粒径と略同等か(若干)大きくなるような間隔)を置いており、かつ後述の湾曲ガイド板27にも所定距離(ガイド板27の面と上記他縁24b’との距離が除草剤等の粒径より略同等か(若干)大きくなるような間隔)を置いて、接触しない位置にあるように構成している。
具体的には、図18に示すように、羽根板24の他端24b’と上記筐体21の内壁(底面21c又は湾曲ガイド板27の内面)との距離sが1mm〜2mm程度になるように設定する。このように構成すると、上記羽根板24が回転したとき、その表面の板面に当接して板面の回転により遠くに飛ばされる除草剤(図15矢印C1,C1’)と、途中で羽根板24から離脱する等して中程度の距離まで飛ばされる除草剤(図15矢印C2,C2’)と、上記羽根板24に係合せずに、羽根板24の回転の初期段階で羽根板24から落下して湾曲ガイド板27に沿って上方に舞い上がるが近距離にて落下する除草剤(図15C3,C3’)に大別され、結果として近距離から遠距離までの間において、万遍なく除草剤を散布することができる(図15参照)。
上記回転羽根収納筐体21は、その上面側に上記回転羽根24の長手方向に沿った導入口21aが開口されており、該導入口21aには上記ホース先端部を支持する上記ホース支持管26が接続されている。尚、ホース支持管26の構造については後述する。
また、上記導入口21aに対向する上記筐体21の面は、側面開口部21bとなっており(図4(b)参照)、該側面開口部21bから上記羽根板24の回転(矢印H方向)により除草剤が放出されるように構成されている。上記側面開口部21bは、図4(a)に示すように、略長方形状の開口から形成されており、その下辺部には湾曲ガイド板27の一端が固定されている。この湾曲ガイド板27はその他縁27a側は上記回転羽根の回転方向に沿って湾曲することで、上記回転方向に沿う案内面を有しており、上記他縁27a’等は上記開口部21bの下辺から上方に向けて湾曲し、該湾曲面に沿って除草剤を斜め上方に誘導し得るようになっている。そして、この湾曲ガイド板27の先端部は、略同様の曲率の湾曲面であるが、図9〜図11に示すように3分割されており、上記駆動モータM3に最も近い側から、その先端部27c’が最も低い位置にある湾曲ガイド板27c、その先端部27b’が中間位置になる湾曲ガイド板27b、その先端部27a’が最も高い位置にある湾曲ガイド板27aから構成されている。そして、図9に示すように、上記最も高い位置の上記湾曲ガイド板27aから除草剤は最も高く遠方に飛ばされ(同図矢印C1参照)、上記中間の湾曲ガイド板27bから除草剤は中間距離まで飛ばされ(同図矢印C2参照)、上記最も低い湾曲ガイド板27cから除草剤は最も低く近距離に飛ばされる(同図矢印C3、図15参照)。
上記側面開口部21bの上辺には、その中央部に一定間隔(T)を置いて2箇所の切込28,28を設け(図4参照)、これら切込28,28間の部分を上記筺体21上面に対して直交するまで直角に折り曲げることにより起立片29が設けられ、これにより上記筺体21上面に上記側面開口部21bに連通する上面拡大開口部30が形成されている(図4(a)、図9、図12参照)。この起立片29は、上記上辺の略全副(T)に亘って設けられており、図12に示すように、上記回転羽根13によって斜め上方に飛ばされる除草剤を遮ることなく、除草剤を左斜め上方に円滑に飛ばすために設けられたものである。また、上記起立片29は左斜め上方(矢印C方向)に飛ぶ肥料を同方向にガイドする機能を有する。
上記起立片29及び上面拡大開口部30が存在しなければ、上記回転羽根によって左斜め上方に飛ばされる除草剤の一部は、上記開口部21bの上辺に当接し、これにより下方(矢印F方向、図12参照)に軌道が修正されて落下し、左斜め上方に飛ばなくなり、或いは軌道修正された除草剤が斜め上方に飛ぶ除草剤に当接し、本来斜め上方に飛ぶ除草剤が軌道修正され下方に落下してしまうことが生じていた(図12矢印F’)。しかしながら、上記起立片29及び上面拡大開口部30を設けることにより、該起立片29により形成された上面拡大開口部30を通って左斜め上方に除草剤を飛ばすことが可能となり、これにより図17に示すように、麦等の植物の上方からの除草剤の散布を可能とすることができる。即ち、上記筺体21の上記側面開口部21bに連なる上面に上記側面開口部21bに連通する上面拡大開口部30を形成すると共に、該上面拡大開口部30の縁部に沿って起立片29が形成されている。
上記側方散布部12aは、図6に示すように、上記筺体21の上下面の水平線qに対する傾斜角度がθ1が45度下向きとなるようにU型固定アングル31の下面部31aに取付アングル33を以って固定されている(図4(b)参照)。即ち、上記散布装置1の上記側面開口部21bは、水平位置から(若干)下向きに傾斜した状態で上記散布車2に固定されている。よって、上記側面開口部21bも全体として水平より45度下方に傾斜して設置されていることになるが、上記回転羽根13は下方から上向き(矢印H方向)に回転するため、上記導入口21aから筺体21内部に導入された肥料は、上記回転羽根3により左斜め上方(矢印C方向)に飛ばされることになる(図12参照)。
このとき、回転羽根13から外れて下方に落下しようとする除草剤は、湾曲ガイド板27(27a〜27cの何れか)によって上向きに誘導され、さらに上記拡大開口部30の存在によって除草剤は左斜め上方に円滑に飛ばされる(図12参照)。そして、図9に示すように、先端部27a’が最も高い湾曲ガイド板27aに誘導された除草剤は、水平から最も高い上向き角度α1にて最も高い左斜め方向(矢印C1方向)に飛ばされ、先端部27b’が中間位置の湾曲ガイド板27bに誘導された除草剤は、水平から中間の上向き角度α2にて中間の高さの左斜め方向(矢印C2方向)に飛ばされ、先端部27c’が最も低い湾曲ガイド板27cに誘導された除草剤は、水平から最も小さい上向き角度α3にて最も低い左斜め方向(矢印C3方向)に飛ばされる。
上記側面開口部21bを45度下向きに傾斜させると、上記回転羽根13の矢印H方向の回転により、除草剤は左斜め上方に適切な角度で飛び出し、比較的高く上昇した後、落下するように飛散させることができる。
よって、図15に示すように、全体として除草剤は左斜め上方(右側の散布部12a’の場合は右斜め上方)に一旦高く飛ばされた後、曲線(又は放物線)の軌跡を描きながら麦等の植物の上方から下方に落下していくことになり、成長過程の麦Q等(図17(b))に限らず、背の高い植物Q(図17(a))に対しても、上方から除草剤Rを散布することができ、横方向から勢い良く飛んできた除草剤等により植物が倒されることはない。
上記実施形態は散布部12aについての説明であるが、散布部12a’については左右対称形状であるだけでその他の構成、作用は同一である。尚、上述のように、右側の散布部12a’に関しては、除草剤の飛ぶ方向は右斜め上方となる(図15矢印C1’,C2’,C3’参照)。
次に、上記側面散布部12aにおける除草剤等の粒径の小さい軽い粒状物(粒径1mm〜2mm)を、遠くに飛ばすための散布部の構造について説明する。
図9に側面散布部12aの側面断面図、図10に上記筐体21と上記ホース支持管26の上半部を取り外した状態の斜視図を、図11に上記筐体21と上記ホース支持管2の上片部を取り外した状態の平面図を示す。
上記ホース支持管26の底面26bには、横断面「コ」字型の傾斜台50が固定されている。この傾斜台50は、一側縁50bは、上記ホース支持管26のホース11a,11b,11cの装着部側の開口26aの縁に一致しており、他側縁50cは、上記一側縁50bよりも、上記ホース支持管26の底面26bから離間する方向に斜めに傾斜して固定されている。具体的には、上記開口26aから回転羽根13方向にθ2度の角度で(図9参照)、上記底面26bから離間する方向に傾斜している。
本実施形態では、図9に示すように、当該側方散布部12aを上記取付アングル33に固定する際に、上記取付アングル33の一面からボルトBを挿通して上記底面26b内に貫通し、上記底面26b側にナットNを螺合することで、当該散布部12aを上記アングル33に固定するが、上記傾斜台50は図9に示すように、上記ナットNを利用して、当該ナットNの高さ分を上記回転羽根13の方向に上向きに傾斜させても良い。
従って、粒径の小さい除草剤は、上記ホース11a等から上記ホース支持管26内に投入された場合、上記ホース支持管26の底面26bではなく、当該傾斜台50の板面50aを通り、これにより矢印K方向(上記角度θ2の方向)、即ち、上記筐体21の底面21cに平行ではなく、上記底面21cから角度θ2、上記回転羽根13に向いた方向に落下していくため、上記回転羽根13に当接し易くなり、回転羽根13に多くの量が当接し、結果として、広範囲に飛び易くなる。仮に、上記傾斜台50が存在しないとすると、ホース支持管26内に投入された除草剤は、粒径が非常に小さいため、上記底面26b,21c近傍を通って下方に移行するため、上記回転羽根13に当接する除草剤の量が少なくなり、その結果、当該散布部12aの近くに落ちる量が多くなり、遠方に散布できなくなる。そこで、粒径の小さい除草剤であっても、上記回転羽根13に当接する量を増加させるため、上記傾斜台50を設けたのである。
上記傾斜台50の板面50a上には、左右方向から湾曲した誘導板51,51が起立状態で固定されている(図10参照)。この誘導板51,51は、基端部51b,51bは、上記傾斜台50の左右の一側縁50b,50bに位置しており、上記基端部51b,51bから互いに近接する方向に湾曲しており、先端部51a,51aは、上記傾斜台50の出口50dの前端の中心P’を中心として、左右方向に等距離tの位置に固定されている。この誘導板51,51はそれらの下縁51c,51cを上記傾斜台50の上記板面50a上に隙間なく溶接等により固定されている。このように、上記ホース支持管26内に、上記ホース11a等から送られてくる粒状物(除草剤)を上記回転羽根13の方向に向けて飛ばすため上記回転羽根の方向に傾斜した傾斜台50と、上記傾斜台50上に設けられ、上記傾斜台50に送られてきた粒状物を上記傾斜台50の出口50dにおいて上記傾斜台50の中央部に誘導する誘導板51,51を設けた。そして、上記傾斜台50は、上記ホース支持管26の底面26bに対して、その一側縁側50bから上記出口50dの側の離間距離が漸次大となるように傾斜しており、上記傾斜台50の延長方向に上記回転羽根13が設けられている。そして上記誘導板51,51は、上記傾斜台50の板面50aにおいて、左右一対に設けられている。尚、図10、図11において、ホース11a〜11cの先端は、実際は同図中破線のように、ホース支持管26内に若干入り込んでいる。
上記誘導板51,51の先端部51a,51aの間隔(2t)は、より広い間隔としても良い。
従って、上記ホース11a,11b,11cからホース支持管26に投入される除草剤は、左右に存在する上記誘導板51,51に誘導されて、上記傾斜台50の板面50a上の略中央部に誘導され、中央部の範囲(幅t,tの範囲)から回転羽根13に向けて上記矢印K方向に投入されることになる。誘導板51,51を設けたのは、除草剤はその粒径が非常に小さいため、上記誘導板51,51が存在しないと、上記傾斜台50の前端50cから回転羽根13方向に供給される除草剤が分散され過ぎて、上記回転羽根13に当接しない除草剤が出てくるためである。上記誘導板51,51が存在すると、上記ホース11a,11b,11cから投入される除草剤を、傾斜台50の板面50a上において、上記傾斜台50の前端50c(出口50d)の中央部に集めることができ、中央部に集まった除草剤を上記回転羽根13に一気に投入することができ、上記回転羽根13に投入されない除草剤をできるだけ無くして、除草剤を効率的に回転羽根13に投入し得る効果があるものである。
上記湾曲ガイド板27は、図10に示すように、側面開口部21bの下辺に固定されたものであり、駆動モータM3が存在しない側が、最も上向きに傾斜された湾曲ガイド板27aが設けられ、それに隣接して中間の角度で上向きに設けられた湾曲ガイド板27bが設けられ、さらにそれに隣接して最も低い角度で上向きに傾斜された湾曲ガイド板27cが設けられている。このように、上記側面開口部21bの下辺に、上記回転羽根13の回転方向Hに沿う案内面を有する複数のガイド板27a〜27cが突設され、上記ガイド板27a〜27cは、各先端部27a’〜27c’の高さが、相互に異なる位置となるように構成されている。即ち、上記複数のガイド板27は、粒状物(除草剤)を所定高さの斜め上方に飛ばすためのガイド板27a又は27bと、粒状物を上記所定高さより低い斜め上方に飛ばすためのガイド板27b又は27cにより構成されている。
尚、湾曲ガイド板27は、このように角度の異なる3枚を設けた事例を示すが、これに限定されず、角度の異なる2枚の湾曲ガイド板を設けても良い。
図7に示すように、上記下向散布部12bは上記ホース11dの下端11d’を上記U型固定アングル31の下面部31aに固定管32を以って固定されている。45’は上記下端11d’から下方向けて落下する除草剤の後方への落下を防止するためのガイド板である。
よって、上記ホース11dの下端11d’からは上記ホースによって誘導された除草剤が下方のe1の領域に落下する(図3参照)。上記下向散布部12b’も同一の構成を有しており、ホース下端11e’から下方向けて肥料が領域e2の範囲に散布される。尚、ガイド板45’により後方への落下が同様に防止される。従って、上記中心線Pを中心として、上記散布部12bと上記散布部12b’により前輪3a,3aの間の約1mの範囲(e1+e2)に肥料を散布することができる。
次に図14にて、本発明の散布装置の電気的構成を説明する。同図は、本発明に係る散布機の送りローラを駆動するローラ駆動モータM1,M2と、側方散布部12a,12a’の回転羽根の駆動モータM3,M4を駆動するための電気的ブロック図である。散布車2のバッテリー41に散布スイッチSW1が接続されており、当該スイッチSW1に過電流制御回路42を介してローラ回転スイッチSW2、送りローラ9用のモータ速度制御回路43、及び側方散布部12a,12a’用のモータ速度制御回路44が接続されている。上記モータ速度制御回路43は、通常の肥料散布用に、上記送りローラ9の回転速度を低速、中速、高速の3段階に切り換えるための速度切換スイッチ43aが設けられており、当該スイッチ43aに除草剤3kg用であって上記低速よりもさらに低速の3kg除草剤用端子(除草剤用第1端子)43a−1、除草剤1kg用であって、上記3kg除草剤用端子43a−1よりも、さらに低速の1kg除草剤用端子(除草剤用第2端子)43a−2を設ける。除草剤3kg用とは、10アール当たりの除草剤の散布量が3kgである除草剤、除草剤1kg用とは、10アール当たりの除草剤の散布量が1kgである除草剤である。除草剤は上述のように小径で軽く、さらに、10アールの広さに万遍なく3kg又は1kgの除草剤を散布するには、肥料等の散布に比較して、送りロール9の回転速度を低速化し、広い範囲に少しずつ万遍なく散布されるようにする。
上記モータ速度制御回路44には上記散布部12a,12a’の回転速度を低速、中速、高速の3段階に切り換えるための速度切換スイッチ44aが設けられている。除草剤を散布する場合は、高速よりさらに高速回転(超高速)の端子44a−1を設ける。この場合、上記超高速の端子44a−1に接続した場合、除草剤の飛散距離は、片側(右又は左)5,5m、中央が1mで全部で12mの範囲、高速の端子に接続した場合、片側(右又は左)4.5m、中央が1mで全部で10mの範囲、中速の端子に接続した場合、片側(右又は左)3.5m、中央が1mで全部で8mの範囲に除草剤を散布することができる。尚、除草剤の場合、低速は使用しない。回転羽根13の回転速度が高速なのは、除草剤は、粒径が小さく軽いので肥料の場合に比べて、回転羽根13の回転速度をより高速化しなければ遠方に飛散させることができないからである。
上記モータ速度制御回路43にはトランジスタTr1を介してローラ駆動モータM1,M2が接続されており、上記モータ速度制御回路44にはトランジスタTr2,Tr3を介して各々回転羽根駆動モータM3,M4が接続されている。尚、上記各駆動モータM1,M2と過電流制御回路42との間にはモータM1,M2の負荷電流検出回路48、上記各駆動モータM3,M4と過電流制御回路42との間にはモータM3,M4の負荷電流検出回路49が接続されている。
このように上記速度切換スイッチ43a,44aを切り換えることにより、上記トランジスタTr1又はTr2,Tr3を介して各駆動モータM1〜M4に印加される電圧を変化させ、上記各モータを回転速度を変化させるものである。
従って、上記散布スイッチSW1をオンすると、速度切換スイッチ44aにて設定された速度にて散布用の回転羽根駆動モータM3及びM4が同時に回転する。かかる状態においてローラ回転スイッチSW2をオンすると、速度切換スイッチ43aにて設定されている速度にて送りローラ9の駆動モータM1,M2が同時に回転する。このとき、例えば1kg除草剤の場合は、ローラの速度切換スイッチ43aは、最も回転数の低い端子43a−2に設定する。そして、側方散布部12a,12a’の回転速度を、例えば「超高速」(端子44a−1)に設定した場合は、除草剤の飛距離は片側で約5.5mであり、全体で12mの左右幅にて除草剤を散布することができる。一方、例えば3kg除草剤を使用する場合は、ローラの速度切換スイッチ43aは、最も回転数の低い端子43a−2と低速端子の中間の回転数の端子43a−1に設定する。そして、側方散布部12a,12a’の回転速度を、例えば「高速」に設定した場合は、除草剤の飛距離は片側で約4.5mであり、全体で10mの左右幅にて除草剤を散布することができる。このように、1kg除草剤と3kg除草剤によって、送りローラ9の回転数を変化させ、かつ、回転羽根駆動モータの回転速度を変化させることにより、側方散布部における除草剤の散布距離を変化させることができる。
本発明は上述のように構成されるものであるから、以下本発明の動作を説明する。
図15に示すように散布車2にて圃場(図15は麦畑)に乗り入れて、1kg除草剤を左約5.5m、右約5.5m、中央約1mの範囲に散布する場合について説明する。
速度切換スイッチ43aを最も回転速度の遅い端子43a−2に接続し、かつ速度切換スイッチ44aを超高速端子44a−1に接続する。そして、上記散布機1の各タンク8に粒状の1kg除草剤を入れ、散布スイッチSW1をオンして、側方散布部12a,12a’の回転羽根13を駆動するモータM3,M4を超高速で回転駆動する。さらにローラ用のスイッチSW2をオンすると、各散布機7a乃至7dの送りローラ9(駆動モータM1,M2)が端子43a−2に対応する低速にて回転し、タンク8内の除草剤を下方に誘導し、各除草剤はホース11a乃至11gを介して下方の散布部12a,12b,12a’,12b’に誘導される。
上記ホース11a,11b,11cを通って落下してくる除草剤は側方散布部12aの導入口21aから筺体21内に落下していく。上記筺体21内では回転羽根13が超高速で矢印H方向に回転しているため、除草剤は当該回転羽根13の羽根24によって筺体21の開口部21bから左斜め上方(図12の矢印C方向)に飛ばされる。
除草剤は、上記ホース11a等が、まずはホース支持管26内に投入されるが(図9、図10参照)、上記各ホースから投入される除草剤は、傾斜台50の板面50aに沿って斜め下方に落下していく。このとき、上記傾斜台50は、その一側縁50bを中心として、上記ホース支持管26の底面26b、筐体21の底面21cの共通平面より、上方向(上記回転羽根13方向)に角度θ2度、上り傾斜面を形成しているので(矢印K方向)、上記各ホースから投入された除草剤は、当該傾斜台50の板面50aに沿って、上記θ2の角度を以って上記回転羽根13の方向に投入される。これにより、上記底面26b,底面21c方向に落下し(矢印K’方向)、上記回転羽根13に当接しない除草剤を極力減少させ、粒径が小さく軽い除草剤であっても、確実に回転羽根13に当たるように構成することができる。
さらに上記傾斜台50上に投入された除草剤は、左右の誘導板51,51によって、上記傾斜台50の出口50d近傍の略中央部に集められる。上述のように除草剤は、軽くて粒径が小さいので、誘導板51,51がなければ、上記回転羽根13への投入時に分散し過ぎてしまい、十分な量の除草剤を回転羽根13に当接することができない。そこで、本発明は、上記傾斜台50上の左右一対の誘導版51,51によって、上記除草剤を上記傾斜台50の出口近傍の中央部に集めることにより、できるだけ多くの除草剤が上記回転羽根13に当接し得るように構成したものである。
従って、上記ホース11a〜11cから側方散布機12aに投入された除草剤は、傾斜台50の板面50aに沿って下降すると共に、左右の誘導板51,51によって上記傾斜台50の出口50d近傍の中央部に集められ、該中央部から矢印K方向に飛翔して回転羽根13の方向に飛翔する。そして、上記回転羽根13に当接して、回転羽根13の回転により矢印C方向に飛ばされる(図12参照)。
このとき、上記傾斜台50の出口50dから回転羽根13に当接した除草剤は、回転羽根13の矢印H方向の回転により、湾曲ガイド板27の方向に飛ばされる。そして、当該湾曲ガイド板27に誘導されて矢印C方向(左斜め上方向)に飛ばされる。より具体的には、先端部27a’が最も高い湾曲ガイド板27aに誘導された除草剤は、水平から最も高い上向き角度α1にて最も高い左斜め方向(矢印C1方向)に飛ばされ(図9参照)、図15に示すように、最も遠くに飛ばされる。また、先端部27b’が中間位置の湾曲ガイド板27bに誘導された除草剤は、水平から中間の上向き角度α2にて中間の高さの左斜め方向(矢印C2方向)に飛ばされ(図9参照)、図15に示すように、中間の距離まで飛ばされる。また、先端部27c’が最も低い湾曲ガイド板27cに誘導された除草剤は、水平から最も小さい上向き角度α3にて最も低い左斜め方向(矢印C3方向)に飛ばされ(図9参照)、図15に示すように、最も近い距離まで飛ばされる
さらに、上記筺体21の側面開口部21bの上辺には起立片29及び拡大開口部30が設けられているので、左斜め上方に飛ばされた除草剤は上記拡大開口部30を介して左斜め上方(図12の矢印C方向)に円滑に飛ばされる(矢印C”参照)。よって、除草剤が上記開口部21bの上辺に当接して下方に落ちたり、上方に向けて飛散しようとする除草剤が下方に向けて飛散する除草剤によって進歩を妨害されて、下方に落下することを抑制することができ、全体として除草剤を左斜め上方に飛ばすことができる。従って、上記回転羽根13によって飛ばされる除草剤は図15に示すように、全体が左斜め上方に一旦高く飛ばされた後に、円弧(又は放物線)を描きながら圃場に落下することになるため、例えば麦Qの新芽のように背の低い場合には勿論(図17(b))、成長して背が高くなった場合(図17(a))においても、水平方向の領域E1の全範囲において、麦Qの上方から除草剤Rを落下させるように散布することができる。これにより、水平方向に除草剤Rを飛ばすことによって除草剤が麦等の植物の茎、葉等に当接することによる麦等の植物の倒れ又は葉の破損を防止することができる。
また、上記開口部21bから左斜め上方に飛ばされる除草剤には、上記羽根板24に直接当接し、湾曲ガイド板27aによって比較的遠方(遠距離と中距離の間の領域)に飛ばされるもの(図15矢印C1と矢印C2の間)、上記羽根板24の回転途中に羽根から離脱する等して中程度の距離(中距離と近距離の間の領域)まで飛ばされるもの(図15矢印C2と矢印C3の間)、さらに導入口21bから羽根板24に至るが、導入口21b近傍位置から早期に羽根板24から離脱し、湾曲ガイド板27に沿って一旦上方に飛ばされるが近距離(中距離と近距離の間の領域)にて落下するもの(図15矢印C3からより短い距離の間の領域)が発生し、このように各矢印の中間位置に飛ばされる除草剤が各々発生するため、結果として領域E1の全部の範囲において、近距離から遠距離まで万遍なく除草剤を散布することができる。
上記説明では散布部12aの動作について説明したが、側方散布部12a’においても散布方向が右斜め上方となるだけで、同様の動作を行うことができる(図15矢印C1’,C2’,C3’参照)。
さらに、上記下向散布部12b,12b’においては、ホース11d,11eを通って落下してきた除草剤を下方向けて(矢印D方向)落下させることができる。尚、図3では、ガイド板45’の上に除草剤を分散する突起45”を設け、その下に、幅広のちらし板45を設け、ちらし板45,45により除草剤を下方のエリアe1,e2に分散して散布する(図3、矢印D参照)。
このように、結果として左約5.5m、右約5.5m、中央部約1mの左右方向合計12mの範囲において広範囲に除草剤を散布することができる(図15参照)。
従って、上記散布を継続しながら散布車2を前方に進めることで、広範囲に除草剤を散布することができる。
圃場がより狭い場合は、上記切換スイッチ44aを高速、又は中速に切り換えることにより回転羽根駆動モータM3,M4の回転速度を高速、又は中速に切り換えて、散布部への除草剤供給量を適切な量にしつつ、最大到達距離を圃場の広さに応じて減少することができる。この場合、除草剤の最大到達距離(図15の矢印C1,C1’までの距離)が減少するが、当該減少した領域において、上記実施形態と同様に、除草剤を上方から落下するように、しかも万遍なく散布することができるものである。
また、散布車2の前部の左右方向フレーム2bを上下方向に昇降可能に構成することにより、散布部12a,12a’,12b,12b’の地面からの高さを調整することができる。通常は、散布部の開口の高さが植物の上端の高さと略一致するような高さに設定することが好ましい(図15参照)。
一方、散布機において、例えば左側及び下側だけの除草剤散布を行う場合は(図16参照)、右側2つの散布機7c,7dのシャッターS2及びシャッターSを閉鎖すればよい。そうすると、上記散布機7c,7dにおいてタンク8内の除草剤が側方散布部12a’に落下供給されなくなるので、左側の側方散布部12a及び下方散布部12b,12b’から左側及び下側だけ除草剤を散布することができる。尚、右側及び下側だけ散布する場合は、左側の散布機7a,7bのシャッターS及びシャッターS1を同様に閉鎖すれば良い。
このような左側のみ或いは右側のみの除草剤散布の必要性は、圃場の規模や形状、周辺の建築物、隣接する圃場との関係等から非常に高く、本発明によると、広範囲への除草剤散布を実現しつつ、上述のような片側散布を容易に行うことができる。しかも、除草剤を長距離飛散し得るにもかかわらず長い棒状の器具等は一切使用しないので、散布車の片側を壁等に接近させた状態で他方に散布する等の片側散布動作をも容易に行うことができる。
以上のように、本発明によると、粒径が小さく軽量の除草剤のような粒状物であっても、確実に回転羽根13に供給することができ、側方に確実に飛ばすことができる。
また、回転羽根によって遠距離まで飛散される粒状物と、回転羽根13から途中で離脱することにより中距離まで飛散される粒状物と、回転羽根13から初期段階で離脱して近距離に飛ばされる粒状物が混在し、これにより除草剤等の粒径の小さい粒状物であっても、遠距離から近距離まで万遍なく粒状物を散布することができる。
また、軽量の粒状物を傾斜台50によって確実に回転羽根13の方向に供給することができ、粒径の小さい軽量の粒状物であっても、確実に回転羽根13により長距離を飛ばすことができる。
また、軽量で粒径の小さい粒状物であっても、誘導板51,51により傾斜台50の出口の中央部に誘導することができるため、より確実に粒状物を回転羽根13に当接させることができ、無駄なく、粒状物を回転羽根にて飛ばすことができる。
また、回転羽根13の回転により粒状物を斜め上方に向けて左右方向に飛散させることができ、これにより圃場における植物の上部から除草剤等の粒状物を落下させることで散布することができる。
また、中央部の下向散布部においても下方に粒状物を散布することができ、中央部を含めて左右方向に肥料等の粒状物を散布することができる。
また、散布量の多い側方散布部12a,12a’にはより多くの粒状物を供給し得て、散布量の比較的少ない下向散布部12b,12b’には比較的少ない量の粒状物を供給し得るため、粒状物を適切に分散供給することができる。
また、散布車によって圃場における広範囲に亘って除草剤等の粒状物を植物の上方から落下させることにより散布することができる。これにより、植物の成長時期、即ち植物の背の高低に拘わらず、適切に粒状物を散布することができる。また、散布装置の側面開口部を若干下向きに傾斜させることにより、粒状物を左斜め上方又は右斜め上方に適切な角度で飛散させることができ、粒状物は上方に向けて円弧を描くように飛散し、植物の上方から落下させることにより散布することができる。
また、圃場の植物の丈に合わせて側方散布部及び/又は下方散布部の高さを調整することができ、最適な位置から粒状物を散布することができる。
また、回転羽根13の回転により粒状物を上面拡大開口部30及び側面開口部21bを介して斜め上方に向けて飛散させることができ、これにより圃場における麦、稲等の植物の上部から除草剤等の粒状物を落下させることで散布することができ、粒状物を横方向に勢い良く飛ばすことにより植物の茎、葉等を破損する等の事態を防止することができる。
また、左斜め上方向及び右斜め上方向に粒状物を散布することができるため、例えば圃場における左右方向の広い範囲に亘って、除草剤等の粒状物を植物の上部から落下させることで散布することができ、背の低い新芽の時期においても、またある程度成長した時期においても、植物を傷つけることなく、適切に除草剤の散布を行うことができる。
また、駆動モータM3,M4の回転速度を変更することにより、粒状物の飛散距離を調整することができる。
また、散布部における肥料の飛散距離に合わせてローラの駆動モータの回転速度を変更することにより、散布部における除草剤の飛散距離に合わせて側方散布部への除草剤の供給量を調整することができる。
また、散布部12aの側面開口部21bを若干下向きに傾斜させることにより、粒状物を左斜め上方又は右斜め上方に適切な角度で飛ばすことができ、粒状物は上方に向けて円弧を描くように飛散し、植物の上方から落下させることにより適切に散布することができる。
また、シャッターを開閉することにより、左側又は右側のみの片側散布、或いは左側及び下側、右側及び下側等の片側散布を簡単に実現することができ、圃場の配置、形状等に合わせた肥料の片側散布を容易に実現することができる。
また、上記実施形態においては、本発明に係る散布装置を乗用管理機に取り付ける場合を示したが、乗用管理機に限らず、トラクターその他の乗用移動者車両の前面部に取り付けても良い。
上記実施形態では、散布機の4台を1ユニットとして設けた事例を示したが(図3の事例)、散布部12a,12a’を有する2台の散布機7a,7dを1ユニットとして散布車2に設置しても良いし、散布部12aを有する1台の散布機7aのみを散布車2に設置するように構成しても良い。
尚、図2において、34はタンク8の蓋、35は散布車2のハンドル、36は運転者37のシート、38はエンジン収納部、39は車体フレーム、図17において、Rは粒状物としての除草剤、Sは麦等の植物、Gは圃場である。