JP6611015B2 - リアクトル - Google Patents

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Description

本発明は、リアクトルに関する。
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。例えば特許文献1には、一対のコイル素子(巻回部)を有するコイルと、コイル素子の内外に配置される環状の磁性コアとの組合体を備えるリアクトルが開示されている。特許文献1に記載のリアクトル(組合体)は、コイルと磁性コアとの間にボビンを備える。
特許文献1には、ボビンは、磁性コアのうちコイル素子の内側に配置される内側コア部の外周面に配置される内側ボビンと、コイルの端面に当接される枠状ボビンとで構成されていることが記載されている。また、磁性コアは、複数の分割コア(コア片)を組み合わせて構成され、内側コア部が分割コアとギャップ板とを交互に積層して構成されていることが記載されている。
特開2013−135191号公報
近年、ハイブリッド自動車などの車両の需要拡大に伴い、車載用コンバータに利用されるリアクトルの更なる生産性の向上や低コスト化が求められている。そこで、ボビンを使用しなくても、簡易な構成でコイルと磁性コアとを位置決めできることが望まれる。また、リアクトルの更なる小型化が求められており、その観点から、巻回部の内周面と内側コア部の外周面との間のクリアランスを小さくすることが望まれている。
上述した従来のリアクトルでは、巻回部の内周面と内側コア部の外周面との間に内側ボビンを介在させて配置することにより巻回部の径方向を位置決めすると共に、巻回部の端面に枠状ボビンを当接させることにより巻回部の軸方向を位置決めしている。したがって、従来のリアクトルでは、コイルと磁性コアとを位置決めするためにボビン(内側ボビン及び枠状ボビン)を使用しており、部品点数が多い。また、一般に、ボビンは樹脂で形成されており、機械的強度を確保するため、ある程度の厚さ(例、2mm以上)を有する。そのため、内側コア部の外周面に内側ボビンを配置する従来のリアクトルでは、巻回部と内側コア部との間のクリアランスが大きくなっていた。従来のリアクトルのように、内側コア部にギャップ板を配置してギャップを形成した場合は、ギャップからの漏れ磁束が巻回部に侵入して、巻回部で渦電流損が発生することがある。そこで、従来のリアクトルでは、ギャップからの漏れ磁束の影響を受け難くするため、巻回部と内側コア部との間のクリアランスをある程度大きくする必要があった。よって、従来のリアクトルは、部品点数が多く、生産性の向上や低コスト化の要求に応えることが難しく、また、巻回部と内側コア部との間のクリアランスが大きくなるため、小型化が困難であった。
そこで、本開示は、簡易な構成でコイルと磁性コアとを位置決めでき、巻回部と内側コア部との間のクリアランスを小さくできるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
本開示に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内側に配置される内側コア部を有するコア片を含む磁性コアと、を備えるリアクトルであって、
前記コア片が磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体であり、
前記内側コア部の外周面から突出して一体成形され、前記巻回部の内周面に接して前記巻回部の径方向を位置決めする第1突起と、
前記コア片から突出して前記巻回部の端面に対向する位置に一体成形され、前記巻回部の端面に接して前記巻回部の軸方向を位置決めする第2突起と、を備える。
上記リアクトルは、簡易な構成でコイルと磁性コアとを位置決めでき、巻回部と内側コア部との間のクリアランスを小さくできる。
実施形態1に係るリアクトルの概略斜視図である。 実施形態1に係るリアクトルに備える磁性コアの概略斜視図である。 図1に示す(III)−(III)線で切断した概略横断面図である。 図1に示す(IV)−(IV)線で切断した概略縦断面図である。 実施形態1に係るリアクトルの概略分解斜視図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内側に配置される内側コア部を有するコア片を含む磁性コアと、を備えるリアクトルであって、
前記コア片が磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体であり、
前記内側コア部の外周面から突出して一体成形され、前記巻回部の内周面に接して前記巻回部の径方向を位置決めする第1突起と、
前記コア片から突出して前記巻回部の端面に対向する位置に一体成形され、前記巻回部の端面に接して前記巻回部の軸方向を位置決めする第2突起と、を備える。
磁性コアを構成するコア片が磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体である場合、複合材料の成形体は比透磁率が比較的低いため、従来のリアクトルのように、インダクタンスを調整するためのギャップを磁性コアに設ける必要がない、或いは、仮にギャップを設けるとしてもギャップが小さくて済む。よって、上記リアクトルによれば、内側コア部を有するコア片が複合材料の成形体であることで、漏れ磁束が発生し難いため、巻回部の内周面と内側コア部の外周面との間のクリアランスを小さくすることができる。また、上記リアクトルでは、内側コア部の外周面から突出して一体成形された第1突起と、コア片から突出して巻回部の端面に対向する位置に一体成形された第2突起とを備える。そして、第1突起により内側コア部に対して巻回部の径方向を位置決めすると共に、第2突起により巻回部の軸方向を位置決めすることから、磁性コアに対してコイルを位置決めできる。そのため、従来使用されていたボビン(内側ボビン及び枠状ボビン)が不要になり、部品点数を削減でき、生産性の向上や低コスト化を図ることができる。更に、巻回部と内側コア部との間に従来介在されていた内側ボビンを省略できるため、巻回部と内側コア部との間のクリアランスを小さくできる。したがって、上記リアクトルは、簡易な構成でコイルと磁性コアとを位置決めできながら、巻回部と内側コア部との間のクリアランスを小さくできる。よって、部品点数が少なく、生産性、低コスト化の要求に対応でき、更に小型化を達成できる。
複合材料の成形体は、射出成形や注型成形などの樹脂成形法によって成形することができ、第1突起及び第2突起が一体成形されたコア片を複合材料の成形体で構成した場合、容易に高い寸法精度が得られる。上記リアクトルでは、内側コア部の外周面から突出する第1突起により、巻回部の内周面と第1突起を除く内側コア部の外周面との間にクリアランスが形成される。
(2)上記リアクトルの一形態として、前記第1突起の高さが1mm以下であることが挙げられる。
第1突起の高さが1mm以下であることで、巻回部と内側コア部との間のクリアランスを十分に小さくでき、リアクトルをより小型化できる。第1突起の高さの下限は、特に限定されないが、例えば100μm以上であることが挙げられる。
(3)上記リアクトルの一形態として、前記第2突起の高さが前記巻回部の端面の幅の1/3以上であることが挙げられる。
第2突起の高さが巻回部の端面の幅の1/3以上であることで、巻回部の端面を第2突起に当て止めし易く、巻回部の軸方向の位置決めを効果的に行うことができる。
(4)上記リアクトルの一形態として、前記第1突起が前記内側コア部の全長に亘って一連に形成されていることが挙げられる。
第1突起が内側コア部の全長に亘って一連に形成されていることで、第1突起に切れ目がなく、巻回部を形成する一部のターンが径方向にずれることを抑制できる。
(5)上記リアクトルの一形態として、前記第1突起の外周面に配置され、前記巻回部の内周面と前記第1突起の外周面との間に介在される絶縁層を備えることが挙げられる。
第1突起の外周面に絶縁層が配置されていることで、巻回部と内側コア部との間の絶縁をより確実なものとすることができる。
(6)上記リアクトルの一形態として、前記巻回部の端面に対向する前記第2突起の内端面に配置され、前記巻回部の端面と前記第2突起の内端面との間に介在される絶縁層を備えることが挙げられる。
第2突起の内端面に絶縁層が配置されていることで、巻回部とコア片との間の絶縁をより確実なものとすることができる。
(7)上記(5)又は(6)に記載のリアクトルの一形態として、前記絶縁層の厚さが500μm以下であることが挙げられる。
絶縁層の厚さは、巻回部(コイル)とコア片(磁性コア)との間の絶縁を確保できる厚さであればよく、特に限定されないが、例えば、第1突起の絶縁層が厚過ぎると、巻回部と内側コア部との間のクリアランスが増大する。絶縁層の厚さが500μm以下であることで、巻回部と内側コア部との間のクリアランスを十分に小さくでき、リアクトルをより小型化できる。絶縁層の厚さの下限は、巻回部とコア片との間の絶縁を確保する観点から、例えば10μm以上であることが好ましい。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るリアクトルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
[実施形態1]
<リアクトルの構成>
図1〜図5を参照して、実施形態1に係るリアクトル1を説明する。実施形態1のリアクトル1は、図1に示すように、2つの巻回部2cを有するコイル2と、巻回部2cの内外に配置される磁性コア3とを備える。両巻回部2cは、互いに横並びに配置されている。磁性コア3は、磁性を有するコア片を含み、この例では、図2に示すように、2つのコア片3A、3Bを備える。各コア片3A、3Bは、図1、図5にも示すように、巻回部2cの内側に配置される2つの内側コア部31と、巻回部2cの外側に配置されて両内側コア部31同士を連結する外側コア部32とを有する。リアクトル1の特徴の1つは、内側コア部31を有するコア片3A、3Bにおいて、内側コア部31の外周面から突出して一体成形される第1突起311(図2、図3参照)と、コア片3A、3Bから突出して巻回部2cの端面に対向する位置に一体成形される第2突起312(図2、図4参照)とを備える点にある。
リアクトル1は、例えば、コンバータケースなどの設置対象(図示せず)に設置される。ここでは、リアクトル1(コイル2及び磁性コア3)において、図1〜図5の紙面下側が、設置対象に面する設置側であり、設置側を「下」、その反対側を「上」とし、上下方向を縦方向とする。また、巻回部2c(内側コア部31)の並び方向(図3の紙面左右方向)を横方向とし、巻回部2c(内側コア部31)の軸方向に沿った方向を長さ方向とする。図3は、内側コア部31(巻回部2c)の軸方向に直交する横方向に切断した横断面図であり、図4は、内側コア部31(巻回部2c)の軸方向に沿って縦方向に切断した縦断面図である。以下、リアクトルの構成について詳しく説明する。
(コイル)
コイル2は、図1及び図5に示すように、2本の巻線2wをそれぞれ螺旋状に巻回してなる一対の巻回部2cを有し、両巻回部2cを形成するそれぞれの巻線2wの一方の端部同士が接合部20を介して接続されている。両巻回部2cは、互いの軸方向が平行するように横並びに(並列)に配置されている。接合部20は、各巻回部2cから引き出された巻線2wの一方の端部同士を溶接や半田付け、ロウ付けなどの接合方法によって接合することで形成されている。巻線2wの他方の端部はそれぞれ、各巻回部2cから適宜な方向(この例では上方)に引き出され、端子金具(図示せず)が適宜取り付けられて、電源などの外部装置(図示せず)に電気的に接続される。コイル2は、公知のものを利用でき、例えば、両巻回部2cが1本の連続する巻線で形成されたものでもよい。
〈巻回部〉
両巻回部2cは、同じ仕様の巻線2wからなり、形状・大きさ・巻回方向・ターン数が同じである。巻線2wは、例えば、導体(銅など)と、導体の外周に絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを有する被覆線(いわゆるエナメル線)である。この例では、図5に示すように、各巻回部2cが被覆平角線の巻線2wをエッジワイズ巻きした四角筒状(具体的には、矩形筒状)のエッジワイズコイルである。各巻回部2cの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円筒状や楕円筒状、長円筒状(レーストラック形状)などであってもよい。巻線2wや巻回部2cの仕様は適宜変更できる。
その他、コイル2は、電気絶縁性を有する樹脂でモールドされたモールドコイルであってもよい。この場合、コイル2を外部環境(粉塵や腐食など)から保護したり、コイル2の機械的強度を高めることができる。また、コイル2の電気絶縁性を高めることができ、コイル2と磁性コア3との間の電気的絶縁を確保できる。例えば、巻回部2cの内周面が樹脂で覆われていることで、巻回部2cと内側コア部31との間の電気的絶縁を確保できる。コイル2をモールドする樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂が利用できる。
或いは、コイル2は、巻回部2cを形成する隣り合うターン間に融着層を備え、隣り合うターン同士が熱融着された熱融着コイルであってもよい。この場合、巻回部2cの保形強度を高め、巻回部2cを形成する一部のターンが径方向にずれるなどの巻回部2cの変形を抑制できる。
(磁性コア)
磁性コア3は、図2、図5に示すように、2つのU字状のコア片3A、3Bを備え、両コア片3A、3Bを組み合わせて環状に構成される。この例では、コア片3A、3Bは同一形状である。例えばコア片3Bを図2に示す状態から、水平方向に180°回転させると、コア片3Aに一致する。磁性コア3には、コイル2に通電することで磁束が流れ、閉磁路が形成される。
〈コア片〉
コア片3A、3Bはそれぞれ、図2、図5に示すように、2つの内側コア部31と外側コア部32とを有し、これらが一体成形された成形体である。内側コア部31は、図1に示すように、巻回部2cに挿入され、巻回部2cの内側に配置される部分である。つまり、両内側コア部31は、巻回部2cと同様に、互いの軸方向が平行するように横並び(並列)に配置される。コア片3A、3Bの各内側コア部31の形状は、巻回部2cの内周面に対応した形状であり、この例では、図5に示すように、四角柱状(具体的には、矩形柱状)である(図3も参照)。また、コア片3A、3Bの各内側コア部31の軸方向の長さが同じである。各コア片には、第1突起311及び第2突起312が一体成形されている。第1突起311及び第2突起312の詳細は後述する。
外側コア部32は、図1に示すように、巻回部2cから露出し、巻回部2cの外側に配置される部分である。コア片3A、3Bの各外側コア部32は、図2、図5に示すように、上面が六角形状の柱状体であり、巻回部2cの端面に対向する内端面32e(図5参照)を有する。コア片3A、3Bは、各外側コア部32の内端面32eから巻回部2c側に向かって2つの内側コア部31が突出しており、互いの両内側コア部31の端面同士が突き合わされて環状に組み付けられる。コア片3A、3Bの内側コア部31同士は例えば接着剤などによって接合され、これによりコア片3A、3Bが一体化される。この例では、図4、図5に示すように、各外側コア部32が内側コア部31に対して下側に突出する下側突出部321を有し、外側コア部32の下面と巻回部2cの下面とがほぼ面一になっている。
コア片3A、3Bは、所定の形状に成形された成形体であり、磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体で形成されている。複合材料の成形体は、射出成形や注型成形などの樹脂成形法により成形することで製造される。複合材料の成形体は、磁性粉末の粉末粒子間に樹脂が介在することから、比透磁率を低くできる。そのため、磁性コア3を構成するコア片3A、3Bが複合材料の成形体である場合、リアクトル1のインダクタンスを調整するためのギャップを磁性コア3(例えばコア片3A、3B間)に設ける必要がない、或いは、仮にギャップを設けるとしてもギャップが小さくて済む。よって、磁性コア3(内側コア部31)に漏れ磁束が発生し難く、巻回部2cの内周面と内側コア部31の外周面との間のクリアランス34(図3参照)を小さくすることが可能である。更に、複合材料の成形体は、突起を有するような複雑な形状も容易に一体成形でき、寸法精度も高いため、コア片3A、3Bが複合材料の成形体である場合、容易に寸法精度の高いコア片が得られる。その他、複合材料の成形体であれば、渦電流損などの鉄損を低減できるといった効果も期待できる。本例のように、コア片3A、3Bが同一形状であれば、同一の成形型で成形できることからも、生産性に優れる。
複合材料の磁性粉末には、金属や非金属の軟磁性材料の粉末が利用できる。金属では、実質的にFeからなる純鉄、種々の添加元素を含有して残部がFe及び不可避不純物からなる鉄基合金、Fe以外の鉄族金属やその合金などが挙げられる。鉄基合金としては、例えば、Fe−Si合金、Fe−Si−Al合金、Fe−Ni合金、Fe−C合金などが挙げられる。非金属では、フェライトなどが挙げられる。
複合材料の樹脂には、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、常温硬化性樹脂、低温硬化性樹脂などが利用できる。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、PA樹脂、PI樹脂、PBT樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。その他、不飽和ポリエステルに炭酸カルシウムやガラス繊維が混合されたBMC(Bulk molding compound)、ミラブル型シリコーンゴム、ミラブル型ウレタンゴムなども利用できる。複合材料中の磁性粉末の含有量は、例えば、30体積%以上80体積%以下、更に50体積%以上75体積%以下が挙げられる。複合材料中の樹脂の含有量は、10体積%以上70体積%以下、更に20体積%以上50体積%以下が挙げられる。また、複合材料は、磁性粉末及び樹脂に加えて、アルミナやシリカなどの非磁性かつ非金属材料からなるフィラー粉末を含有することができる。フィラー粉末の含有量は、例えば、0.2質量%以上20質量%以下、更に0.3質量%以上15質量%以下、0.5質量%以上10質量%以下が挙げられる。樹脂の含有量が多いほど、比透磁率を小さくして磁気飽和し難くできる上に、絶縁性を高められ、渦電流損を低減し易い。フィラー粉末を含有する場合、絶縁性の向上による低損失化、放熱性の向上などが期待できる。
〈第1突起〉
第1突起311は、図3に示すように、内側コア部31の外周面から突出して一体成形され、巻回部2cの内周面に接して巻回部2cの径方向を位置決めする。また、第1突起311により、巻回部2cの内周面と内側コア部31の外周面との接触面積が減り、巻回部2cに内側コア部31を挿入する際の摩擦抵抗を低減できるといった効果も期待できる。この例では、内側コア部31は矩形柱状体であり、内側コア部31の外周面は4つの平面(上面、下面、及び左右の側面)と、4つの角部313を有する。第1突起311は、内側コア部31の外周面を構成する各面にそれぞれ形成され、内側コア部31の軸方向に直交する断面(横断面)において、外周面を構成する各面の中間部分(角部313を除く部分)から突出している。第1突起311の形状や数、位置については特に限定されない。この例では、第1突起311の断面形状が矩形状であるが、台形状や半円状などであってもよい。また、各面の中間位置に1つずつ第1突起311が形成されているが、各面に対して第1突起311は複数であってもよく、各面の中間部分に複数の第1突起311を形成してもよい。この第1突起311により、巻回部2cの内周面と第1突起311を除く内側コア部31の外周面との間にクリアランス34(図3参照)が形成される。この例では、内側コア部31の外周面に4つの第1突起311が形成されており、内側コア部31の四隅にそれぞれクリアランス34が確保されている。
第1突起311の高さは、例えば100μm以上1mm以下であることが挙げられる。第1突起311の高さが1mm以下であることで、巻回部2cと内側コア部31との間のクリアランス34を十分に小さくできる。第1突起311の高さが100μm以上であることで、クリアランス34を十分に確保して、巻回部2cと内側コア部31と間の電気的絶縁を確保し易い。第1突起311の高さは、例えば200μm以上800μm以下であることがより好ましい。この例では、各第1突起311の高さが同じである。なお、この例では、第1突起311と巻回部2cとの間の電気的絶縁は、後述する絶縁層351により確保している。
第1突起311の幅は、例えば1mm以上20mm以下であることが挙げられる。ここでいう「第1突起311の幅」とは、内側コア部31の外周面の周方向に沿った長さをいう。第1突起311の幅が1mm以上であることで、第1突起311の機械的強度を確保し易く、20mm以下であることで、巻回部2cの内周面と第1突起311の外周面との接触面積を減らし、巻回部2cに内側コア部31を挿入する際の摩擦抵抗を低減し易い。各第1突起311の幅は、巻回部2cの内周面との接触面積(摩擦抵抗)を低減する観点から、内側コア部31の外周面のうち、各第1突起311が形成される各面の幅の例えば1/2以下、更に1/3以下であることがより好ましい。
この例では、図4に示すように、各第1突起311が内側コア部31の軸方向に沿って全長に亘って一連に形成されている。第1突起311が内側コア部31の全長に亘って一連に形成されていることで、巻回部2cを形成する一部のターンが径方向にずれることを抑制できる。第1突起311は、内側コア部31の軸方向に沿って間隔をあけて断続的に形成されていてもよい。
第1突起311が内側コア部31の軸方向に沿って一連に形成されている場合、第1突起311も磁路に利用できる。この例では、図3に示すように、各第1突起311が内側コア部31の外周面を構成する各面の中間部分に形成されているが、角部313に第1突起311を形成することも可能である。しかしながら、内側コア部31の角部313は、磁束が流れ難く、有効磁路として機能し難い。そのため、図3に示すように、各面の中間部分に第1突起311形成されている方が、角部313に形成されている場合に比較して、第1突起311が有効磁路として機能し易く、有効磁路断面積の確保に寄与する。
〈第2突起〉
第2突起312は、図4に示すように、コア片3A、3Bから突出して巻回部2cの端面に対向する位置に一体成形され、巻回部2cの端面に接して巻回部2cの軸方向を位置決めする。この例では、第2突起312は、巻回部2cの端面における上側部分に対向するようにコア片3A、3Bの上面にそれぞれ形成され、巻回部2cの両端面を挟むように内側コア部31と外側コア部32との境界部分から突出している(図1も参照)。第2突起312は、巻回部2cの端面を当て止めして、磁性コア3に対して巻回部2cの軸方向の位置決めを行うことができれば、その形状や数、位置については特に限定されない。
第2突起312の高さは、例えば、巻回部2cの端面の幅の1/3以上であることが挙げられる。ここでいう「巻回部2cの端面の幅」とは、巻回部2cの端面における内周面と外周面との間の寸法(図4中、Cwで示す)をいい、巻回部2cを形成する巻線2wの幅に実質的に等しい。また、「第2突起312の高さ」とは、巻回部2cの端面に接する部分の高さであって、巻回部2cの端面における内周面からの寸法(図4中、Phで示す)をいう。第2突起312の高さが巻回部2cの端面の幅の1/3以上であることで、巻回部2cの端面を当て止めし易く、巻回部2cの軸方向の位置決めを効果的に行うことができる。第2突起312の高さは、例えば、巻回部2cの端面の幅の1/2以上であることがより好ましい。第2突起312の高さの上限は、特に限定されないが、例えば巻回部2cの端面の幅以下であることが挙げられる。
第2突起312の幅は、例えば3mm以上であることが挙げられる。ここでいう「第2突起312の幅」とは、巻回部2cの周方向に沿った長さをいう(図1も参照)。第2突起312の幅が3mm以上であることで、第2突起312の機械的強度を確保し易く、また、巻回部2cの端面に接する部分が増えるので、巻回部2cの軸方向を安定して位置決めし易くなる。第2突起312の厚さは、巻回部2cの端面を支持できる機械的強度を確保できる厚さであればよく、例えば1mm以上であることが挙げられる。ここでいう「第2突起312の厚さ」とは、巻回部2cの軸方向に沿った寸法である。第2突起312の厚さは、機械的強度を確保できる限り薄いことが好ましく、例えば5mm以下であることが好ましい。
この例では、コア片3A、3Bの上面に第2突起312が形成されているが、上面以外にも、例えば、コア片3A、3Bの外側面(磁性コア3の幅方向の外側の面)に第2突起312を形成してもよい。更に、第2突起312は、巻回部2cの端面の全周に亘って対向するようにフランジ状に形成することも可能である。このように、第2突起312の形成箇所を増やすことで、巻回部2cの軸方向をより安定して位置決めし易くなる。
〈絶縁層〉
この例では、図2、図3に示すように、各第1突起311の外周面に絶縁層351が配置されると共に、巻回部2cの端面に対向する各第2突起312の内端面に絶縁層352が配置されている。第1突起311の絶縁層351は、巻回部2cの内周面と第1突起311の外周面との間に介在され、巻回部2cと内側コア部31との間の電気的絶縁を確保する。第2突起312の絶縁層352は、巻回部2cの端面と第2突起312の内端面との間に介在され、巻回部2cとコア片3A、3Bとの間の電気的絶縁を確保する。各絶縁層351、352の厚さは、巻回部2c(コイル2)とコア片3A、3B(磁性コア3)との間の絶縁を確保できる厚さであればよく、例えば10μm以上500μm以下であることが挙げられる。例えば、絶縁層351の厚さが500μm以下であることで、巻回部2cと内側コア部31との間のクリアランス34(図3参照)を十分に小さくできる。各絶縁層351、352の厚さが10μm以上であることで、巻回部2cとコア片3A、3Bとの間の絶縁を十分に確保できる。各絶縁層351、352の厚さは、例えば20μm以上300μm以下であることがより好ましい。この例では、巻回部2cの内周面に近接する各第1突起311の外周面にのみ絶縁層351が配置されているが、絶縁層351は第1突起311の少なくとも外周面に配置されていればよく、第1突起311を取り囲むように配置してもよい。第1突起311の外周面に絶縁層351を配置する場合、第1突起311の高さと絶縁層351の厚さとを合わせた合計寸法は、例えば110μm以上1mm以下が好適である。
各絶縁層351、352は、電気絶縁性を有する材料で形成されている。また、各絶縁層351、352(特に絶縁層351)は、できる限り薄肉であることが望ましく、このような観点から、例えば、絶縁紙や樹脂の絶縁テープを貼り付けたり、樹脂の粉体塗料やワニスなどの絶縁塗料を塗装したりすることで形成することが挙げられる。粉体塗料の樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂などが利用できる。
{作用効果}
実施形態1のリアクトル1は、次の作用効果を奏する。
磁性コア3を構成するコア片3A、3Bが複合材料の成形体であることで、磁性コア3(内側コア部31)に漏れ磁束が発生し難く、巻回部2cと内側コア部31の間のクリアランス34を小さくすることが可能である。また、内側コア部31の外周面から突出して一体成形される第1突起311と、コア片3A、3Bから突出して巻回部2cの端面に対向する位置に一体成形される第2突起312とを備える。そして、第1突起311により巻回部2cの径方向を位置決めすると共に、第2突起312により巻回部2cの軸方向を位置決めすることで、磁性コア3に対してコイル2を位置決めできる。そのため、従来使用されていたボビン(内側ボビン及び枠状ボビン)を省略することができ、巻回部2cと内側コア部31との間のクリアランス34の狭小化と、部品点数の削減が可能である。したがって、リアクトル1は、簡易な構成でコイル2と磁性コア3とを位置決めできながら、巻回部2cと内側コア部31との間のクリアランス34を小さくでき、小型化を達成できる。
〈用途〉
実施形態1のリアクトル1は、例えば、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC−DCコンバータ)や、空調機のコンバータなど種々のコンバータ、並びに電力変換装置の構成部品に好適に利用可能である。
[変形例]
上述した実施形態1のリアクトル1に対して、以下の少なくとも一つの変更や追加が可能である。
(1)実施形態1のリアクトル1において、コイル2と磁性コア3との組合体の少なくとも一部が樹脂でモールドされた形態が挙げられる。この場合、組合体を外部環境(粉塵や腐食など)から保護したり、組合体を電気的・機械的に保護できる。組合体をモールドする樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、PA樹脂、PI樹脂、PBT樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂が利用できる。
(2)実施形態1のリアクトル1において、コイル2と磁性コア3との組合体を収納するケース(図示せず)を備える形態が挙げられる。これにより、組合体を外部環境(粉塵や腐食など)から保護したり、機械的に保護できる。金属製のケースであれば、その全体を放熱経路に利用できるので、コイル2や磁性コア3に発生した熱を外部の設置対象に効率よく放熱でき、放熱性が向上する。ケースの形成材料としては、例えば、アルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、鉄や鋼、オーステナイト系ステンレス鋼などが挙げられる。アルミニウムやマグネシウム、これらの合金で形成した場合は、ケースを軽量化できる。ケースは樹脂製であってもよい。
また、組合体をケースに収納する場合は、ケース内の組合体を封止する封止樹脂を備えてもよい。これにより、組合体の電気的・機械的保護、外部環境からの保護などを図ることができる。封止樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、PPS樹脂などが利用できる。放熱性を高める観点から、封止樹脂にアルミナやシリカなどの熱伝導率の高いセラミックフィラーを混合してもよい。
1 リアクトル
2 コイル
2w 巻線
2c 巻回部
20 接合部
3 磁性コア
3A、3B コア片
31 内側コア部
311 第1突起
312 第2突起
313 角部
32 外側コア部
321 下側突出部
32e 内端面
34 クリアランス
351、352 絶縁層

Claims (7)

  1. 巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内側に配置される内側コア部を有するコア片を含む磁性コアと、を備えるリアクトルであって、
    前記コア片が磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体であり、
    前記内側コア部の外周面から突出して一体成形され、前記巻回部の内周面に接して前記巻回部の径方向を位置決めする第1突起と、
    前記コア片から突出して前記巻回部の端面に対向する位置に一体成形され、前記巻回部の端面に接して前記巻回部の軸方向を位置決めする第2突起と、を備えるリアクトル。
  2. 前記第1突起の高さが1mm以下である請求項1に記載のリアクトル。
  3. 前記第2突起の高さが前記巻回部の端面の幅の1/3以上である請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
  4. 前記第1突起が前記内側コア部の全長に亘って一連に形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
  5. 前記第1突起の外周面に配置され、前記巻回部の内周面と前記第1突起の外周面との間に介在される絶縁層を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
  6. 前記巻回部の端面に対向する前記第2突起の内端面に配置され、前記巻回部の端面と前記第2突起の内端面との間に介在される絶縁層を備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
  7. 前記絶縁層の厚さが500μm以下である請求項5又は請求項6に記載のリアクトル。
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