以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
本発明の実施の形態では、ノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタに本発明を適用した例について説明する。ただし、この例に限らず、ノズルからインク以外の液体を吐出する、インクジェットプリンタ以外の液滴吐出装置に本発明を適用することも可能である。
(実施の形態1)
まず、液滴吐出装置10の構成について図1を参照しながら説明する。図1は、実施の形態1に係る液滴吐出装置10を概略的に示す図である。液滴吐出装置10は、吐出ヘッド20、キャリッジ12および搬送部13、14を備えている。また、液滴吐出装置10は、給紙部(図示せず)、プラテン11および制御部15をさらに備えていてもよい。
給紙部は、給紙トレイ(図示せず)内の被記録媒体16を搬送経路へ供給する機構である。プラテン11は、供給された被記録媒体16が載置される台である。この被記録媒体16は、ノズル21から吐出される液滴により画像が形成される用紙などである。
キャリッジ12は、吐出ヘッド20を保持し主走査方向に往復移動させる部材である。たとえば、キャリッジ12は、主走査方向に延びた2本のガイドレール17によって支持され、ガイドレール17に沿って主走査方向に往復移動する。キャリッジ12には、たとえば、4つのサブタンク18が搭載されている。
これらのサブタンク18は、主走査方向に沿って並べて配置されており、チューブジョイント19aに接続されている。サブタンク18は、チューブジョイント19aを介して可撓性チューブ19bによりインクカートリッジ19cに接続されている。4つのインクカートリッジ19cには、たとえば、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの、4色のインクがそれぞれ貯留されている。
吐出ヘッド20は、液滴をノズル21から吐出させる部分であって、ノズル21がプラテン11と間隔を開けて対向するようにキャリッジ12の下部に取り付けられている。複数のノズル21は、主走査方向と交差する副走査方向に直線状に配列され、複数のノズル列23を形成している。各ノズル列23が、主走査方向に配列されている。各ノズル列23において複数のノズル21は副走査方向において直線状に並んでいなくてもよい。たとえば、各ノズル列23において複数のノズル21はジグザグ上に配置されていてもよい。なお、吐出ヘッド20の詳細については、後述する。
搬送部13、14は、給紙トレイから供給された被記録媒体16をプラテン11と吐出ヘッド20との間を経て排紙トレイ(図示せず)まで副走査方向に搬送する機構である。搬送部として、たとえば、2つの搬送ローラ13、14が用いられる。このうちの一方の搬送ローラ(上流側搬送ローラ)13はプラテン11の上流側に配置され、他方の搬送ローラ(下流側搬送ローラ)14はプラテン11の下流側に配置されている。これらはそれぞれ、主走査方向を軸方向として副走査方向に回転する。
制御部15は演算部(図示せず)および記憶部を有している。演算部は、CPUなどのプロセッサなどで構成され、記憶部は演算部がアクセス可能なメモリで構成されている。この記憶部に記憶されたプログラムを演算部が実行することにより、キャリッジ12、吐出ヘッド20、搬送部13、14など、液滴吐出装置10の各部が制御される。この制御の詳細については、後述する。
次に、吐出ヘッド20について図2を参照しながら説明する。図2は、ノズル面22側から見た吐出ヘッド20を概略的に示す図である。たとえば、吐出ヘッド20は、複数のノズル21および複数のヘッドドライバ26、27を備えている。ノズル21の一端開口はノズル孔としてノズル面22に設けられ、ノズル21の他端開口はサブタンク18等の液体供給部と接続されている。インクなどの液体は、液体供給部からノズル21を通り、ノズル孔から吐出される。
この実施の形態では、13本のノズル列23が設けられており、これらは互いに平行に主走査方向に配列されている。各ノズル列23の複数のノズル21は、副走査方向において複数の群に分割されている。各群(ノズル群)には、副走査方向に並ぶ複数のノズル21が含まれている。この実施の形態では、複数のノズル21は2つの群に等分されている。一方の群(上流側ノズル群)24は副走査方向の上流側の領域にある複数のノズル21であって、他方の群(下流側ノズル群)25は副走査方向の下流側の領域にある複数のノズル21である。
ヘッドドライバ26、27は、配線基板20aに搭載されており、配線基板20aの配線により制御部15および吐出部材に接続されている。吐出部材としては、ノズル21から液滴を吐出させるための部材であって、たとえば、電圧により変形してノズル21内の液滴に圧力を加える圧電素子28などが挙げられる。ヘッドドライバ26、27はノズル群24、25ごとに対応付けられており、この実施の形態では、2つのヘッドドライバ26、27が吐出ヘッド20に設けられている。このうち、一方のヘッドドライバ(上流側ヘッドドライバ)26は上流側ノズル群24の吐出部材に接続され、他方のヘッドドライバ(下流側ヘッドドライバ)27は下流側ノズル群25の吐出部材に接続されている。このため、上流側ノズル群24における液滴の吐出量および吐出タイミングは上流側ヘッドドライバ26により制御され、下流側ノズル群25における液滴の吐出量および吐出タイミングは下流側ヘッドドライバ27により制御される。
次に、制御部15について図3を参照して説明する。図3は、制御部15の構成を概略的に示すブロック図である。制御部15は、CPU151、メモリ152、ASIC153、およびこれらを相互接続する内部バス154を有する。
メモリ152は、ROM155、RAM156およびEEPROM157を含む。ROM155は、CPU151により実行される様々なプログラムを格納する。たとえば、吐出タイミング決定処理を設定するプログラムがROM155に記録されている。また、RAM156は、CPU151のプログラム実行時に用いるデータや信号を一時的に記憶する記憶領域に使用される。EEPROM157は、液滴吐出装置10の電源オフ後も保持されるべき設定、フラグまたはデータを格納する。
ASIC153は、各ドライバ101、102、26、27、各センサ103、104、12a、読み取り部105およびユーザインタフェース部(UI部)106と接続される。搬送モータドライバ101は、搬送モータ107を駆動し、搬送ローラ13、14を回転させる。キャリッジモータドライバ102は、キャリッジモータ108を駆動し、キャリッジ12およびこれに保持された吐出ヘッド20を主走査方向へ移動させる。ヘッドドライバ26、27は、圧電素子28などの吐出部材を駆動し、圧電素子28によりノズル21から液滴を吐出させる。
ASIC153には、各センサ103、104、12a、読み取り部105およびUI部106から信号が入力される。レジストセンサ103は、被記録媒体16の先端が搬送ローラ13、14に到達したか否かを検出する。回転角センサ104は搬送ローラ13、14の回転角を検出する。エンコーダセンサ12aは、キャリッジ12に搭載された反射型光学センサであり、被記録媒体16からの反射光を検出する。読み取り部105は、被記録媒体16に記録された画像を読み取る、たとえば、イメージスキャナである。UI部106は、ユーザが指令、要求、ジョブまたは情報を入力する入力部である。たとえば、筐体に取り付けられたタッチパネル、ボタン、スイッチ、キーボード、マウスなどである。
制御部15は、液滴吐出装置10に接続される外部機器(図示せず)などから印刷ジョブの入力を受容すると、ROM155に記憶されたプログラムに基づいて印刷ジョブ実行の指令をASIC153へ出力する。ASIC153は、この指令に基づいて各センサなどからの信号を監視しつつ各ドライバ101、102、26、27を駆動し、印刷処理を実行する。なお、印刷ジョブは、被記録媒体16に記録される画像情報や、被記録媒体16の性状情報(サイズ、普通紙か光沢紙か等を示す情報)など、印刷処理に必要な種々情報を含む。また、液滴吐出装置10に接続される外部機器としては、たとえば、PCなどのコンピュータ、スキャナやカメラなどの画像を取得する機器、USBメモリなどの記録メディアなどが挙げられる。
なお、ここでは、制御部15がCPU151を1つだけ備え、この1つのCPU151が各種処理を一括して行っている。ただし、制御部15は、複数のCPUを備え、これら複数のCPUが各種処理を分担して行ってもよい。また、ここでは、制御部15がASIC153を1つだけ備えているが、この1つのASIC153が各種処理を一括して行っている。ただし、制御部15は、複数のASIC153を備え、これら複数のASIC153が各種処理を分担して行ってもよい。
次に、液滴吐出装置10の印刷の動作について図1〜図4を参照して説明する。この動作は制御部15により実行される。図4は、被記録媒体16に形成された画像の一例を示す図である。なお、ここでは、吐出部材として圧電素子28を用いた場合について説明するが、これ以外の吐出部材を用いた場合も同様である。
所定印刷モードでは、図1に示す制御部15は、被記録媒体16に印刷するための印刷データから各部を制御する制御信号を生成する。これにより、被記録媒体16は、給紙機構により給紙トレイから供給されて、プラテン11上に載置される。そして、ノズル21およびキャリッジ12によるパス印刷と、搬送部13、14による搬送とが交互に繰り返される。
パス印刷では、図2に示す制御部15は制御信号を吐出ヘッド20の上流側ヘッドドライバ26および下流側ヘッドドライバ27に出力する。この制御信号は、液滴の吐出量を規定する圧電素子28の電圧、および、液滴の吐出タイミングを規定する圧電素子28の駆動タイミングを含んでいる。そして、上流側ヘッドドライバ26は、上流側ノズル群24の圧電素子28を制御信号に基づいて駆動し、下流側ヘッドドライバ27は、下流側ノズル群25の圧電素子28を制御信号に基づいて駆動する。これにより、上流側ノズル群24および下流側ノズル群25の各ノズル21から液滴が吐出されて被記録媒体16の目標位置に着弾し、液滴の着弾位置にドットが形成される。
これと共に、制御部15は制御信号を図1に示すキャリッジ12に出力してキャリッジ12を主走査方向に1回移動させる。これにより、吐出ヘッド20のノズル21が主走査方向に移動し、液滴の着弾位置が主走査方向に変位していくことにより、ドットが主走査方向に並んで、図4に示すようにパス印刷による画像が形成される。なお、1回移動は、主走査方向の往路方向のみまたは復路方向のみの一方向移動であってもよいし、主走査方向の二方向の往復移動であってもよい。一方向移動では、往路方向または復路方向の一方向のキャリッジ12の移動中に液滴を吐出し、他方向のキャリッジ12の移動中には液滴を吐出しない一方向印刷が行われる。往復移動では、往路方向および復路方向の両方向のキャリッジ12の移動中に液滴を吐出する往復印刷が行われる。
そして、パス印刷の終了の度に、制御部15は、制御信号を搬送部13、14に出力して、被記録媒体16は副走査方向に所定量、搬送させる。この所定量は、副走査方向におけるノズル列23の長さに相当する。このため、任意の対象のパス印刷により形成された画像Pnは、対象のパス印刷の直前に行われる予定の先行のパス印刷により形成された画像Pn−1と副走査方向に繋がる。そして、パス印刷と搬送とを繰り返すことにより、図4に示すように、対象のパス印刷の画像Pnは、対象のパス印刷の直後に行われる予定の後続のパス印刷により形成された画像Pn+1と繋がり、さらにパス印刷の画像が繋がっていき、全体の画像が被記録媒体16に形成される。ここでは、画像は、副走査方向に延びる直線が、複数、主走査方向に間隔を開けて平行に延びる図形である。
なお、被記録媒体16が副走査方向に搬送される所定量は、副走査方向におけるノズル列23の長さより短くてもよい。この場合、対象のパス印刷による画像Pnは、先行のパス印刷による画像Pn−1と副走査方向において少し重なる。このような場合であっても、後述する吐出タイミング決定処理を行うことができる。
先行のパス印刷に関するデータ、被記録媒体16の搬送距離に関するデータ、対象のパス印刷に関するデータ、被記録媒体16の搬送距離に関するデータ、および後続のパス印刷に関するデータはこの順で制御部15に入力される。よって、先行のパス印刷、被記録媒体16の搬送、対象のパス印刷、被記録媒体16の搬送、および後続のパス印刷はこの順で連続して実行される。
次に、隣接するノズル群24、25のそれぞれについて各ノズル21から液滴を吐出するタイミングを決定する吐出タイミング決定処理について図4〜図8Bを参照して説明する。この吐出タイミング決定処理は制御部15により制御される。図5は、図4の副走査方向に延びる1本の直線を示す拡大図である。図6は、被記録媒体16、吐出ヘッド20、上流側搬送ローラ13および下流側搬送ローラ14を概略的に示す図である。図7は、吐出タイミング決定処理を示すフローチャートである。
まず、液滴の目標位置の位置ズレについて説明する。この液滴の目標位置は、液滴の吐出タイミング、液滴の吐出速度、ノズル面22と被記録媒体16との間の距離、および、吐出ヘッド20の移動速度などに依存する。たとえば、プラテン11の寸法精度、取り付け精度、または、経年変化などによってプラテン11が副走査方向に傾いたり変形したりすることがある。この傾きや変形などによりプラテン11上の被記録媒体16も副走査方向に傾いたり撓んだりする。この場合、上流側ノズル群24と被記録媒体16との距離と、下流側ノズル群25と被記録媒体16との間の距離とが異なる。たとえば、図6に示す例では、上流側ノズル群24と被記録媒体16との距離が、下流側ノズル群25と被記録媒体16との間の距離より大きい。これにより、図5に示すように、パス印刷において上流側の液滴の目標位置と下流側の液滴の目標位置は主走査方向において位置ズレ(パス印刷内の位置ズレ)Wが生じる。
また、パス印刷ごとに吐出ヘッド20は主走査方向において所定の開始位置に戻って、ここから主走査方向に移動する。しかしながら、吐出ヘッド20の位置が開始位置に完全に一致することは難しく、吐出ヘッド20の位置が開始位置からずれることがある。この場合、図4および図5に示すように、当該パス印刷により下流端に形成される液滴の目標位置(画像Pnの下流端位置)と、先行のパス印刷により上流端に形成される液滴の目標位置(画像Pn−1の上流端位置)との間において主走査方向に位置ズレ(パス印刷間の位置ズレ)が生じる。このようなパス印刷間の位置ズレX、Yは、主走査方向における吐出ヘッド20の位置ズレ、および、パス印刷内の位置ズレWなどに依存する。
このパス印刷間の位置ズレによる画質を低減するために、図7に示す吐出タイミング決定処理を実行する。この吐出タイミング決定処理では、デューティ情報に対応する値に基づいてノズル群24、25ごとに液滴の吐出タイミングを設定する。この吐出タイミングは、基準吐出タイミングから早めるまたは遅らせて、基準吐出タイミングを補正することにより決定される。基準吐出タイミングは、吐出ヘッド20の主走査方向の位置、ノズル面22と被記録媒体16との間の距離、および、吐出ヘッド20の移動速度などから予め求められている。
具体的には、制御部15は、パス印刷間の位置ズレ量である上流側位置ズレ量Xおよび下流側位置ズレ量Yを取得する(ステップS1)。上流側位置ズレ量Xおよび下流側位置ズレ量Yは、対象のパス印刷、先行のパス印刷および後続のパス印刷の各印刷データから算出される。たとえば、液滴吐出装置10により印刷した画像を読み取り部105などにより読み取り、この画像の位置ズレから上流側位置ズレ量Xおよび下流側位置ズレ量Yを予め求めていてもよい。また、液滴吐出装置10の製造時に、被記録媒体16とノズル面22との間の距離を測距センサなどにより求め、この距離から上流側位置ズレ量Xおよび下流側位置ズレ量Yを予め求めていてもよい。
上流側位置ズレ量Xは、対象のパス印刷のときに複数のノズル21から吐出される液滴を被記録媒体16に着弾させる目標位置のうち副走査方向の最も上流側の目標位置と、後続のパス印刷のときに複数のノズル21から吐出される液滴を被記録媒体16に着弾させる目標位置のうち副走査方向の最も下流側の目標位置との主走査方向のズレ量である。図5の例では、上流側位置ズレ量Xは、対象のパス印刷による副走査方向の上流端のドット(画像)Pnと、後続のパス印刷による副走査方向の下流端のドット(画像)Pn+1との間の主走査方向の間隔である。
下流側位置ズレ量Yは、対象のパス印刷のときに複数のノズル21から吐出される液滴を被記録媒体16に着弾させる目標位置のうち副走査方向の最も下流側の目標位置と、先行のパス印刷のときに複数のノズル21から吐出される液滴を被記録媒体16に着弾させる目標位置のうち副走査方向の最も上流側の目標位置との主走査方向のズレ量である。図5の例では、下流側位置ズレ量Yは、対象のパス印刷による副走査方向の下流端のドット(画像)Pnと、先行のパス印刷による副走査方向の上流端のドット(画像)Pn−1との間の主走査方向の間隔である。
制御部15は、上流側位置ズレ量Xと下流側位置ズレ量Yとの和である総位置ズレ量Tを算出する(ステップS2)。たとえば、上流側位置ズレ量Xが70μmであり、下流側位置ズレ量Yが50μmである場合、総位置ズレ量Tは120μmである。
また、制御部15は、デューティ情報に対応する値を取得する(ステップS3)。このデューティ情報に対応する値は、液滴吐出装置10のメモリ152(図3)に記憶されている情報であってもよいし、カメラおよびコンピュータなどのドライバから液滴吐出装置10へ入力された情報であってもよいし、入力された情報から液滴吐出装置10において求められた情報であってもよい。
デューティ情報は、1回のパス印刷のときに複数のノズル21から吐出される液滴の量の情報である。デューティ情報は、印刷データであってもよいし、印刷データから導き出せる情報であってもよい。この情報としては、たとえば、液滴の液適量、および、ドットのサイズなどが挙げられる。デューティ情報に対応する値は、デューティ情報に対応する値は、デューティ情報に関する値であって、デューティ情報であってもよいし、それ以外の値であってもよい。この値としては、たとえば、デューティ情報を段階分けしたレベルなどが挙げられる。
ここでは、液滴の液適量からデューティ情報に対応する値を求める方法を説明するが、他の方法であってもよい。また、デューティ情報に対応する値としてデューティ情報を用いたが、これ以外の値であってもよい。
印刷データは、たとえば、4種のデータ値00、01、10、11で構成されており、液滴の液滴量を表している。この場合、データ値00は液滴量が0plを表し、データ値01は液滴量が5plを表し、データ値10は液滴量が15plを表し、データ値11は液滴量が35plを表している。この液滴の液適量は液滴により形成されるドットのサイズに対応している。データ値00はドットのサイズが「0」、つまりドットが「無」で、「空白」である。また、データ値01はドットのサイズが「小」であり、データ値10はドットのサイズが「中」であり、データ値11はドットのサイズが「大」である。
デューティ情報は、印刷可能領域に占める画像形成領域の割合である。印刷可能領域は、液滴が吐出されるか否かに関わらず、被記録媒体16上に画像(ドット)が形成され得る領域である。また、画像形成領域は、液滴が吐出され、被記録媒体16上に画像(ドット)が形成される領域である。
たとえば、主走査方向の幅が297mmのA4サイズの被記録媒体16では、主走査方向の解像度が600dpiの1ラインの画素数は、297[mm]/25.4[inch/mm]×600[dpi]=7014になる。また、各ノズル列23には420本のノズル21が副走査方向に並んでいる。このため、パス印刷による画素数は、7014×420=2、945、880になる。
このパス印刷の全ての印刷データがデータ値00で構成されている場合、デューティ情報は0%になる。この場合、印刷可能領域にドットが形成されず、空白になる。
一方、パス印刷の全ての印刷データがデータ値11で構成されている場合、デューティ情報は100%になる。この場合、印刷可能領域の全体がドットで覆われ、いわゆるべた塗りになる。このパス印刷に用いられる液適量は、7014×35pl=245490plである。
これに対し、パス印刷の印刷データの30%のデータ値が11で、70%のデータ値が01である場合、パス印刷に用いられる液適量は、7014×(0.3×35[pl]+0.70×5[pl])=98、196[pl]になる。よって、デューティ情報は、98196[pl]/245490[pl]×100=40%になる。
制御部15は、このようにして求めたデューティ情報に対応する値が第1閾値以下であるか否かを判定する(ステップS4)。ここで、デューティ情報に対応する値が第1閾値以下である場合(ステップS4:YES)、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値以上になるように、吐出タイミングを決定する(ステップS5)。
第2閾値は、デューティ情報に対応する値が第1閾値以下では、隣接するノズル群24、25の間の液滴の目標位置の位置ズレによる画像の境目が目立ち難いが、デューティ情報に対応する値が第1閾値より大きい場合には、隣接するノズル群24、25の間の液滴の目標位置の位置ズレによる画像の境目が目立ち易い値である。たとえば、第2閾値は、1ドットに相当する値である。
たとえば、画像が線で形成されている文字および図表などである場合、印刷可能領域に対する画像形成領域が小さく、デューティ情報に対応する値が第1閾値以下になる。この場合、制御部15は、総位置ズレ量Tをノズル群24、25の数に1足した数で等分する。そして、この値が、対象のパス印刷のときの隣接するノズル群24、25の間の位置ズレ量の目標値Z、上流側位置ズレ量の目標値X'および下流側位置ズレ量の目標値Y'となるように、各ノズル群24、25の吐出タイミングに設定する。
隣接するノズル群24、25の間の位置ズレ量の目標値Zは、隣接するノズル群24、25の一方のノズル群の複数のノズル21から吐出される液滴を被記録媒体16に着弾させる目標位置と、他方のノズル群の複数のノズル21から吐出される液滴を被記録媒体16に着弾させる目標位置との主走査方向のズレ量の目標値である。図8Aの例では、位置ズレ量の目標値Zは、対象のパス印刷により上流側ノズル群24のノズル21から吐出される液滴により形成される下流端のドットと、対象のパス印刷により下流側ノズル群25のノズル21から吐出される液滴により形成される上流端のドットとの主走査方向の間隔である。
この実施の形態では、図8Aに示すように、ノズル群24、25の数は2つであり、総位置ズレ量Tが120μmである。この場合、位置ズレ量の目標値Z、X'、Y'は、120μm/(2+1)=40μmになる。このため、ノズル群24、25の間の位置ズレ量の目標値Z、上流側位置ズレ量の目標値X'および下流側位置ズレ量の目標値Y'のそれぞれが、40μmになるように、上流側ノズル群24および下流側ノズル群25の吐出タイミングを設定する。
ここでは、上流側位置ズレ量の目標値X'が40μmであるのに対し、上流側位置ズレ量Xが70μmである。このため、対象のパス印刷における上流端のドットの変位量(上流側位置の変位量△x)は30μmである。この変位量△xに対応する上流側ノズル群24の吐出タイミングの補正量を求める。そして、求めた補正量により基準吐出タイミングを補正して、上流側ノズル群24の吐出タイミングを決定する。
また、下流側位置ズレ量の目標値Y'が40μmであるのに対し、下流側位置ズレ量Yが50μmである。このため、対象のパス印刷における下流端のドットの変位量(下流側位置の変位量△y)は10μmである。この変位量△yに対応する下流側ノズル群25の吐出タイミングの補正量を求める。そして、求めた補正量により基準吐出タイミングを補正して、下流側ノズル群25の吐出タイミングを決定する。
このように、各ノズル群24、25の吐出タイミングの補正量が異なる値に設定される。なお、上流側位置の変位量△xおよび下流側位置の変位量△yと吐出タイミングの補正量との関係は、実験またはシミュレーションなどにより予め求められている。
一方、デューティ情報に対応する値が第1閾値より大きい場合(ステップS4:NO)、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値未満になるように、吐出タイミングを決定する(ステップS6)。たとえば、画像が写真およびイラストレーションなどで形成されている場合、印刷可能領域に対する画像形成領域が大きく、デューティ情報に対応する値が第1閾値より大きくなる。この場合、制御部15は、対象のパス印刷のときの隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が0になるように、吐出タイミングを決定する。そして、制御部15は、総位置ズレ量Tを2等分し、この値が、対象のパス印刷の上流側位置ズレ量の目標値X''および下流側位置ズレ量の目標値Y''となるように、各ノズル群24、25の吐出タイミングを設定する。
この実施の形態では、図8Bに示すように、ノズル群24、25の数は2つであり、総位置ズレ量Tが120μmである。この場合、位置ズレ量の目標値X''、Y''は、120μm/2=60μmになる。このため、上流側位置ズレ量の目標値X''および下流側位置ズレ量の目標値Y''のそれぞれが、60μmになる。
ここでは、上流側位置ズレ量の目標値X'が60μmであるのに対し、上流側位置ズレ量Xが70μmである。このため、上流側位置の変位量△xは10μmである。この上流側位置の変位量△xに対応する上流側ノズル群24の吐出タイミングの補正量を求める。そして、求めた補正量により基準吐出タイミングを補正して、上流側ノズル群24の吐出タイミングを決定する。また、下流側位置ズレ量の目標値Y'が60μmであるのに対し、下流側位置ズレ量Yが50μmである。このため、下流側位置の変位量△yは10μmである。この下流側位置の変位量△yに対応する下流側ノズル群25の吐出タイミングの補正量を求める。そして、求めた補正量により基準吐出タイミングを補正して、下流側ノズル群25の吐出タイミングを決定する。
上記構成によれば、デューティ情報に対応する値が第1閾値以下であると、ノズル21から吐出される液滴により被記録媒体16に形成されるドットの密度は小さい。よって、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値以上になるように、吐出タイミングを決定する。これにより、パス印刷の際に隣接するノズル群24、25の間で液滴の目標位置の位置ズレが生じるが、この位置ズレによる画像の境目が目立ち難い。このため、隣接するノズル群24、25の間で液滴の目標位置の位置ズレを生じさせて、連続するパス印刷の間における液滴の目標位置の位置ズレ量を低減することにより、画質の低下を抑制することができる。
一方、デューティ情報に対応する値が第1閾値より大きいと、ドット密度が大きい。このため、パス印刷の際に隣接するノズル群24、25の間で液滴の目標位置の位置ズレが生じると、この位置ズレによる画像の境目が目立ち易い。よって、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値未満になるように、吐出タイミングを決定する。これにより、パス印刷による画像内においてノズル群24、25の間の位置ズレによる画像の境目を目立ち難くし、画質の低下を抑制することができる。
尚、本実施形態において、液滴吐出装置10が、画質よりも印刷速度を優先した高速印刷モード、写真等の画質を優先した写真印刷モードを実行可能な構成の場合には、高速印刷モードが所定印刷モードの一例である。この例において、写真印刷モードでは、制御部15は、印刷データに関わらず、色ごとに分かれた各ノズル列23毎に、そのノズル列に属する全てのノズルを同じ吐出タイミングに設定したり、ブラックのノズル列とカラーのノズル列毎に、ノズル列に属する全てのノズルを同じ吐出タイミングに設定したりしてもよい。また、写真印刷モードについては、制御部15は、往路のパス印刷と復路のパス印刷の間に被記録媒体16を搬送せずに印刷を行うインターレース印刷を実行するように制御してもよい。
(実施の形態2)
実施の形態2に係る液滴吐出装置10では、デューティ情報に対応する値および隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値に基づいて吐出タイミングを決定する。具体的には、吐出タイミング決定処理について、図9および図10Aおよび図10Bを参照して説明する。図9は、吐出タイミング決定処理を示すフローチャートである。図10Aは、デューティ情報に対応する値が第1閾値より大きく、かつ、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値未満である場合の画像の一例を示す。図10Bは、デューティ情報に対応する値が第1閾値より大きく、かつ、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値以上である場合の画像の一例を示す。
図9に示すように、制御部15は、上流側位置ズレ量Xおよび下流側位置ズレ量Yを取得する(ステップS1)。そして、制御部15は、上流側位置ズレ量Xと下流側位置ズレ量Yとの和である総位置ズレ量Tを算出する(ステップS2)。また、制御部15は、液滴吐出装置10のメモリ152(図4)やコンピュータなどのドライバなどのデューティ情報に対応する値を取得する(ステップS3)。このデューティ情報に対応する値が第1閾値以下であるか否かを判定する(ステップS4)。
ここで、デューティ情報に対応する値が第1閾値以下である場合(ステップS4:YES)、総位置ズレ量Tを等分した値が、対象のパス印刷のときの隣接するノズル群24、25の間の位置ズレ量の目標値Z、上流側位置ズレ量の目標値X'および下流側位置ズレ量の目標値Y'になるように、吐出タイミングを決定する(ステップS7)。
すなわち、制御部15は、総位置ズレ量Tをノズル群24、25の数に1足した数で等分する。そして、この値が各位置ズレ量の目標値Z、X'、Y'とする。そして、上流側位置ズレ量の目標値X'と上流側位置ズレ量Xとから上流側位置の変位量△xを算出し、変位量△xに対応する上流側ノズル群24の吐出タイミングの補正量を求め、この補正量により基準吐出タイミングを補正して上流側ノズル群24の吐出タイミングを決定する。また、下流側位置ズレ量の目標値Y'とした下流側位置ズレ量Yとから下流側位置の変位量△yを算出し、変位量△yに対応する下流側ノズル群25の吐出タイミングの補正量を求め、この補正量により基準吐出タイミングを補正して下流側ノズル群25の吐出タイミングを決定する。
一方、デューティ情報に対応する値が第1閾値より大きい場合(ステップS4:NO)、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値未満であるか否かを判定する(ステップS8)。ここで、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値未満であれば(ステップS8:YES)、総位置ズレ量Tを等分した値が各位置ズレ量の目標値Z、X'およびY'になるように、吐出タイミングを決定する(ステップS7)。この場合、隣接するノズル群24、25の間で液滴の目標位置の位置ズレが生じても、この位置ズレ量が小さいため、図10Aに示すように、画像の境目が目立ち難い。特に、第2閾値が1ドットに相当する値である場合、ノズル群24、25の間における位置ズレにより目標位置に形成されるドットの規則性が崩れず、境目が目立ち難い。なお、主走査方向の解像度が1200dpiである場合、主走査方向における1ドットの長さは約20μmである。
これに対し、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値以上である場合(ステップS8:NO)、この場合、隣接するノズル群24、25の間で液滴の目標位置の位置ズレが生じると、このズレ量が大きいため、図10Bに示すように、画像の境目が目立つ。たとえば、第2閾値が1ドットに相当する値である場合、ノズル群24、25の間における位置ズレにより目標位置に形成されるドットの規則性がノズル群24、25間で崩れる。このため、制御部15は、対象のパス印刷のときの隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が0になるように、吐出タイミングを決定する(ステップS9)。
すなわち、隣接するノズル群24、25の間で液滴の目標位置の位置ズレが生じないように、隣接するノズル群24、25による画像の位置ズレ量の目標値Zを、0にする。そして、総位置ズレ量Tを2等分した値が上流側位置ズレ量の目標値X''および下流側位置ズレ量の目標値Y''になる上流側位置の変位量△xおよび下流側位置の変位量△yを求める。そして、上流側位置の変位量△xに対応する上流側ノズル群24の吐出タイミングの補正量を設定し、下流側位置の変位量△yに対応する下流側ノズル群25の吐出タイミングの補正量を設定する。この補正量により基準吐出タイミングを補正して上流側ノズル群24および下流側ノズル群25の吐出タイミングを決定する。
上記構成によれば、デューティ情報に対応する値が第1閾値以下である場合、総位置ズレ量Tをノズル群の数に1足した数で等分した値を各位置ズレ量の目標値Z、X’、Y’とする。これにより、隣接するノズル群24、25の間およびパス印刷の間における液滴の目標位置の位置ズレ量が等分されて、連続するパス印刷の間における液滴の目標位置の位置ズレ量が低減されるため、画質の低下を抑制することができる。
また、デューティ情報に対応する値が第1閾値より大きく、かつ、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値以上である場合、隣接するノズル群24、25の間における液滴の目標位置の位置ズレ量の目標値を0とする。これにより、ノズル群24、25の間で液滴の目標位置の位置ズレが生じないため、この位置ズレによる画質の低下を抑制することができる。
つまり、接するノズル群24、25の間における液滴の目標位置の位置ズレ量の目標値を0より大きくすると、パス印刷の間の位置ズレ量は減少するが、この位置ズレによる画像の境目は存在する。このため、パス印刷間の境目に加えて、パス印刷の間の境目も形成されるため、画像の境目が増えることにより画質が低下する。これに対して、パス印刷の間の位置ズレ量の目標値Zを0にして、ノズル群24、25の間での画像の境目を形成しないようにすることにより、画像の境目の増加による画質の低下を抑制することができる。
また、デューティ情報に対応する値が第1閾値より大きい場合であっても、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値未満であれば、画像の境目が目立たない。よって、ノズル群24、25の間で位置ズレを生じさせ、パス印刷間の位置ズレ量を減少し、画質の低下を抑制することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3に係る液滴吐出装置10では、制御部15は、吐出タイミング決定処理において、パス印刷のうちの対象のパス印刷のときに隣接するノズル群24、25の境界B(図2)を挟む複数のノズル21から吐出される液滴の量に関するデューティ情報に対応する値が第1閾値以下である否かを判定する。
図2では、上流側ノズル群24および下流側ノズル群25の2つのノズル群が吐出ヘッド20に配置され、この間にノズル群24、25の境界Bが設けられている。図10Aおよび図10Bに示すように、パス印刷により形成される画像Pnにおいて隣接するノズル群24、25の境界B(図2)に対応する位置に上流側ノズル群24による画像Pn1と下流側ノズル群25による画像Pn2との境目Lが設けられる。このため、境界Bを挟むノズル21から吐出される液滴の量に関するデューティ情報に対応する値に基づいて、第1閾値を判断する。これにより、隣接するノズル群24、25の間で液滴の目標位置の位置ズレを生じさせるか否かをより正確に判定することができる。
つまり、ノズル群24、25の境界Bを含む領域のドット密度に応じて、ノズル群24、25の境界Bにおいて液滴の目標位置の位置ズレを生じさせるか否かを判定する。これにより、ノズル群24、25の間の位置ズレによる画質の低下をより良く低減させることができる。
(実施の形態4)
実施の形態4に係る液滴吐出装置10では、制御部15は、吐出タイミング決定処理において、複数のノズル21から吐出される液滴を被記録媒体16に着弾させる目標位置が主走査方向に連続する値が第3閾値未満である場合、デューティ情報に対応する値が第1閾値以下であると判定する。
たとえば、印刷データの4種のデータ値00、01、10、11は、ノズル21から吐出される液滴の量を示している。このデータ値00は液滴量が0plを表し、データ値01は液滴量が5plを表し、データ値10は液滴量が15plを表し、データ値11は液滴量が35plを表している。この場合、データ値01、10、11である印刷データはノズル21から吐出させる指示であり、データ値00である印刷データはノズル21から吐出させない指示である。
制御部15は、データ値01、データ値10およびデータ値11のいずれかの印刷データに基づいて、複数のノズル21から吐出される液滴を被記録媒体16に着弾させる目標位置が主走査方向に連続する値をカウントする。そして、この値が第3閾値未満である場合、主走査方向に連続して並ぶドットの数が少ない。このような場合には、テキストおよび線図などドット密度が低いことが多いため、デューティ情報に対応する値が第1閾値以下であると判定することができる。
(実施の形態5)
実施の形態5に係る液滴吐出装置10は波形状生成機構30をさらに備えている。波形状生成機構30は、山部分Mと谷部分Vとが主走査方向に並んだ所定の波形状を被記録媒体16に生じさせる機構である。この場合、制御部15は、山部分Mおよび谷部分Vの少なくともいずれか一方を含む領域ごとに、吐出タイミング決定処理を実行する。
なお、山部分Mは、吐出ヘッド20側に突出した被記録媒体16の部分であって、主走査方向の往路方向においてギャップが減少から増加に転じる部分である。谷部分Vは、吐出ヘッド20と反対側に窪んだ被記録媒体16の部分であって、主走査方向の往路方向においてギャップが増加から減少に転じる部分である。このギャップは、上下方向(ノズル面22の法線方向)における被記録媒体16とノズル面22との間の距離をいう。
図11Aに示す波形状生成機構30は、複数のリブ31、複数のコルゲートプレート32および複数のコルゲート拍車33を有する。複数のリブ31、複数のコルゲートプレート32および複数のコルゲート拍車33はいずれも、主走査方向に配列されている。
リブ31は、プラテン11の上面から上方に突出し、副走査方向に延びる。コルゲートプレート32は、上流側搬送ローラの上側ローラ13aの上方でプラテン11のレール(図示せず)に係止される。コルゲートプレート32の湾曲部32aは、上側ローラ13aの外周面と間隔を開けて、この外周面に沿って湾曲する。コルゲートプレート32の押え部32bは、平板状であり、プラテン11の上面と間隔を開けて対向する。リブ31とコルゲートプレート32とは主走査方向に交互に配列されている。
下流側搬送ローラ14は、主走査方向においてリブ31と対応する位置に配置され、上側ローラ14aおよび下側ローラ14bを有する。コルゲート拍車33は、主走査方向においてコルゲートプレート32と対応する位置に配置される。
被記録媒体16は、プラテン11上においてリブ31に下から支えられると共に押え部32bの下面で上から押される。押え部32bの下面はリブ31の上縁よりも下方に位置する。このため、被記録媒体16には、リブ31に支持された部分に山部分Mが付けられ、押え部32bとプラテン11との間に挟まれた部分に谷部分Vが付けられる。この山部分Mと谷部分Vとは主走査方向に交互に並んだ波形状になる。図11Bに示すように波形状が付けられた被記録媒体16はプラテン11とノズル面22との間を通過する。ここで、被記録媒体16の山部分Mは上下方向においてノズル面22に近づき、谷部分Vは上下方向において山部分Mよりもノズル面22から遠ざかる。そして、被記録媒体16の山部分Mは下流側搬送ローラ14で挟持されて、谷部分Vはコルゲート拍車33で上から押されて、被記録媒体16は排紙トレイ(図示せず)に排出される。
このように、リブ31およびコルゲートプレート32によって波形状が付けられてからノズル面22に被記録媒体16が移動する間に、波形状が変形し、被記録媒体16の上流側と下流側とでは波形状が異なる。よって、山部分Mを含む領域および谷部分Vを含む領域ごとに、デューティ情報に対応する値に基づいてノズル群24、25の吐出タイミング決定する。これにより、被記録媒体に山部分Mおよび谷部分Vが形成されている場合、山部分Mの領域および谷部分Vの領域ごとにノズル群24、25の吐出タイミングを決定することができる。
具体的には、キャリッジ12(図1)に搭載されたエンコーダセンサ12aが、主走査方向に延びたエンコーダベルト(図示せず)に主走査方向に沿って形成されたスリットを検出する。制御部15(図1)は、このスリットの数をカウントして、スリットのカウント数から吐出ヘッド20の主走査方向の位置を算出する。
制御部15は、波形状が付けられた被記録媒体16の高さは、その主走査方向の位置によって変わる。このため、基準吐出タイミングで液滴を吐出すると、主走査方向において隣接する液滴の着弾位置は等間隔にならない。よって、制御部15は、スリットのカウント数から求めた吐出ヘッド20の主走査方向の位置に基づいて、被記録媒体16の対応する部分の高さを取得する。この高さに応じた第1補正量を算出する。第1補正量は、波形状にした被記録媒体16において、主走査方向において隣接する液滴の着弾位置の間隔を一定とするように、吐出タイミングを補正するための時間である。第1補正量は、たとえば、最も高さの低い谷部分Vで0と設定され、この谷部分Vからの高さが高くなるほど長く設定される。
また、制御部15は、山部分Mを含む領域および谷部分Vを含む領域ごとに、デューティ情報に対応する値に基づいてノズル群24、25の吐出タイミングの第2補正量を設定する。第2補正量は、デューティ情報に対応する値に基づいて、ノズル群24、25の吐出タイミングを補正するための時間である。第2補正量は、デューティ情報に対応する値が第1閾値以下である場合、隣接するノズル群24、25の間のズレ量の目標値が第2閾値以上になるように、吐出タイミングを決定する。また、第2補正量は、デューティ情報に対応する値が第1閾値より大きい場合、隣接するノズル群の間のズレ量の目標値が第2閾値未満になるように、吐出タイミングを決定する。
そして、制御部15は、基準吐出タイミングから、第1補正量および第2補正量を足した補正量(補正時間)だけ早めるまたは遅らすことにより、吐出タイミングを決定する。このように、この吐出タイミングは、波形状の被記録媒体16の高さに応じた第1補正量、および、デューティ情報に対応する値に応じた第2補正量を含む補正量によって調整されているため、被記録媒体16において適切な位置に液滴を着弾させることができる。
なお、上記実施の形態では、山部分Mを含む領域および谷部分Vを含む領域と被記録媒体16の領域を設定したが、領域の設定方向はこれに限定されない。たとえば、山部分Mおよび谷部分Vを含む領域で被記録媒体16の領域を設定してもよい。
なお、上記全ての実施の形態では、吐出タイミング決定処理において、基準吐出タイミングを補正することにより決定したが、このような補正する方法には限定されない。