以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付しその繰り返しの説明は省略する。また、各実施形態の説明において、「放電」と「プラズマ」が混在しているが、同義語として「放電」と「プラズマ」を使用している。
<概要等>
背景技術および課題について補足説明しつつ、本実施の形態の概要等を説明する。従来、プラズマ処理および条件の切り替えの際には、例えば数秒から十数秒の時間がかかる。使用するガスの切り替えの場合、前処理で使用されたガスを処理室から排気し、次処理で使用するガスを処理室内に充填するための時間が必要とされる。
処理室における静電吸着電極とウェハとは、その間に存在する誘電体層によって有限の抵抗値および静電容量値を持って電気的に接続される。静電吸着電極は、クーロン力によってウェハを吸着する。静電吸着電極は、単極型のものと多極型のものとがある。多極型のもののうち、電極が二枚のものを、特に双極型と記載する。
単極型の電極は、電極に与えられた電位がウェハの電位に影響する。単極型の電極は、例えば正の電位が与えられてウェハを吸着すると、プラズマ放電を行っていない場合、ウェハには正の電位が現れる。
一方、双極型の電極は、各々の電極に逆極性の電位が付与されてウェハを吸着する。その際、ウェハの電位は、理想的には両電極に付与された電位の平均値となるように設計される場合が多い。例えば一方の電極に+500V、他方の電極に−500Vの電位が付与された場合、ウェハの電位は0Vになる。一方の電極に+600V、他方の電極に−400Vの電位が付与された場合、ウェハの電位は+100Vになる。
ウェハと処理室の内壁面との間に意図しない電位差を発生させる要因として、静電吸着電極の構造上の問題や経年劣化が挙げられる。例えば、双極型電極での吸着の場合、二枚の電極の面積が異なる場合や、ウェハの載置台上に異物等が付着することによって二枚の各電極とウェハとの間のそれぞれの抵抗値に差が生じる場合がある。これらの場合、二枚の静電吸着電極に付与される電位の平均値を0Vにしても、互いの電極状態の不均一から、ウェハに電位が発生することがあり得る。
上記静電吸着電極を含む影響により、プラズマ放電の中断中に、ウェハと処理室の内壁面との間に、ある程度以上に大きな電位差が発生する。これにより、処理室内の帯電した異物がクーロン力によりウェハへ引き寄せられて付着することがある。
本発明の実施の形態のプラズマ処理装置は、プラズマ処理および条件の切り替えに伴うプラズマ放電の中断中に、上記静電吸着電極を含む影響により、ウェハと処理室の内壁面との間に意図しない電位差が発生することを抑制する仕組みを有する。これにより、処理室内の帯電した異物がクーロン力によりウェハへ引き寄せられて付着することを低減する。
<実施の形態1>
図1〜図5を用いて、本発明の実施の形態1のプラズマ処理装置について説明する。
[プラズマ処理装置]
図1は、実施の形態1のプラズマ処理装置の要部断面の構成を示す。図1の実施の形態1のプラズマ処理装置は、電子サイクロトロン共鳴型エッチング装置である。以下、電子サイクロトロン共鳴をECRと記載する。本発明に係るプラズマ処理装置は、ECR型エッチング装置に限らず適用可能である。
図1のECR型エッチング装置であるプラズマ処理装置は、真空処理室である処理室101の内部の試料台である載置台102上に、試料となる半導体基板であるウェハ103が載置され、処理室101の内部にプラズマを発生させる。
プラズマ処理装置は、プラズマ発生後、載置台102の内部に設置された高周波電極104に、高周波電源105から電力を供給する。当該電力の供給により、ウェハ103には、自己バイアスと呼ばれる負の電位が発生する。この負の電位によってイオンをウェハ103に引き込むことにより、いわゆる反応性イオンエッチングが起こり、エッチング処理が進行する。
処理室101の内壁基材は、接地された導体が含まれている。実施の形態1では、上記接地された導体が含まれる内壁基材である導体内壁基材は、プラズマに暴露されていてもよい。また当該導体内壁基材は、プラズマ消失後に当該内壁表面が速やかにおおよそ0Vとなる程度の薄い誘電体の膜があってもよい。101aは、処理室101の内壁面、および上記導体内壁基材を示す。101bは、内壁面101aに関する接地を示す。
プラズマ処理装置は、プラズマを発生させる機構として、μ波発振源106およびソレノイドコイル107を備える。μ波発振源106で発生させたμ波は、導波管108を介して処理室101に導入される。μ波は、ソレノイドコイル107で発生させた磁場中でECRによって電子にエネルギーを与える。その電子が、図示しないガス供給源から供給されたガスを電離させることによって、プラズマを発生させる。
上記プラズマ処理を行う間、ウェハ103の裏面には、当該ウェハ103の温度の調整のための冷却ガスが供給される。冷却ガスによるウェハ103のずれを防ぐために、ウェハ103は、双極型の静電吸着電極109,110によって、載置台102上に吸着される。静電吸着電極109,110は、同心円状に、一方の電極である静電吸着電極109が内側、他方の電極である静電吸着電極110が外側に配置されている。静電吸着電極109,110とウェハ103との間には、誘電体層111が存在している。静電吸着電極109,110とウェハ103は、有限の抵抗値と静電容量を持って電気的に接続される。
静電吸着用電極109,110は、それぞれ、独立した直流電源である可変直流電源112,113が接続される。内側の静電吸着用電極109には、一方の可変直流電源112が接続され、外側の静電吸着用電極110には、他方の可変直流電源113が接続される。
静電吸着用電極109,110には、それぞれの電源により、逆極性の電位が付与される。例えば内側の静電吸着電極109には、可変直流電源112により+500Vの電位が付与され、外側の静電吸着電極110には、可変直流電源113により−500Vの電位が付与される。
また、実施の形態1のプラズマ処理装置は、上記可変直流電源112,113の出力電圧値を制御するための制御装置115および記憶装置114を備える。可変直流電源112,113は、制御装置115と接続され、制御装置115から出力電圧値が制御される。
実施の形態1において、静電吸着電極109,110とウェハ103との間の誘電体層111は、ある程度のリーク電流が流れる程度の抵抗率となっている。例えば、誘電体層111が、Johnsen−Rahbek効果によって吸着を行うための溶射膜である場合、上記のようなリーク電流が流れる。なお、Johnsen−Rahbek効果とは、金属表面と半導体表面との間に電位差を付与することで吸着力が発生する現象であり、静電吸着の一方式としてしばしば用いられる。
[等価回路]
図2は、実施の形態1のプラズマ処理装置における、可変直流電源112,113、静電吸着電極109,110、誘電体層111、およびウェハ103を簡単にモデル化した等価回路を示す。なお、この等価回路では、ウェハ103の抵抗は無視できるほど小さいとする。図2の等価回路で、V1は可変直流電源112の電圧、V2は可変直流電源113の電圧である。R1,R2は、誘電体層111の抵抗、C1,C2は、誘電体層111の容量である。R1,C1は、一方の静電吸着電極109側の抵抗と容量、R2,C2は、他方の静電吸着電極110側の抵抗と容量である。
プラズマ放電が行われていない時の定常状態におけるウェハ103の電位であるVwafを、下記の式1に示す。式1で、R1,R2は上記誘電体層111の抵抗の抵抗値、V1,V2は、上記可変直流電源112,113の出力電圧値を示す。
従って、式1でR1=R2の場合、ウェハ103の電位は、両電源である可変直流電源112,113の出力電圧値であるV1,V2の平均値となる。
一方、何らかの理由で抵抗値にずれが生じ、式1でR1≠R2となった場合、ウェハ103の電位は、両電源の出力電圧値の平均値とならず、ウェハ103には、意図しない電位が付与されることとなる。ウェハ103に意図しない電位が付与される場合、ウェハ103と処理室101の内壁面101aとの間の電位差によって帯電した異物が、ウェハ103に誘引される恐れがある。処理室101の内壁面101aは、異物の発生源の一つである。
ウェハ103に意図しない電位を発生させないために、実施の形態1のプラズマ処理装置は、ウェハ103に付与される電位が所望の値となるように、上記抵抗値であるR1,R2の値に応じて、可変直流電源112,113の出力電圧値であるV1,V2を制御する。
実施の形態1では、処理室101の内壁面101aの基材は接地された導体であり、その表面の接地抵抗値および対地静電容量が十分小さいとしている。従って、プラズマ放電中断中の処理室101の内壁面101aの電位は、放電終了後、比較的速やかにおよそ0Vになる。そのため、ウェハ103と処理室101の内壁面101aとの間に電位差を発生させないためには、ウェハ103の電位を0V程度にすればよい。
ウェハ103の電位が0Vになる可変直流電源112と可変直流電源113との出力電圧の比は、式1から、以下の式2となる。
実施の形態1のプラズマ処理装置は、プラズマ処理および条件の切り替えに伴うプラズマ放電中断中に、静電吸着用電極109,110に接続される可変直流電源112,113の出力電圧であるV1,V2を、上記式2を満たすように変化させる。これにより、実施の形態1のプラズマ処理装置は、ウェハ103の電位を0Vにし、ウェハ103と処理室101の内壁面101aとの電位差を発生させないようにする。
[処理タイムチャート]
図3は、プラズマ処理装置におけるプラズマ処理を含む従来の処理の様子を示すタイムチャートである。このプラズマ処理装置は、処理室101の構成は図1と同様とするが、実施の形態1の制御装置115によりプラズマ放電中断中に静電吸着用電極109,110への出力電圧を制御する仕組みを持たない構成の場合である。
図3の(a)は、μ波入射パワーを示し、μ波発振源106からのμ波電力である。(b)は、高周波バイアス入射パワーを示し、高周波電源105からの高周波電極104へ
の電力である。(c)は、可変直流電源出力電圧を示す。実線の301は内側の静電吸着電極109への可変直流電源112の出力電圧、破線の302は外側の静電吸着電極110への可変直流電源113の出力電圧を示す。この一実施の形態では、当該出力電圧は、可変の制御はされずに一定である。(d)は、ウェハ電位および内壁面電位を示す。実線の311はウェハ103の電位、破線の312は処理室101の内壁面101aの電位を示す。時刻t0からt1の時間T1は、プラズマ放電中の時間を示す。時刻t1からt2の時間T2は、プラズマ放電中断中の時間を示す。
図3の従来の形態での処理の場合、(d)の放電中断中の時間T2に、ウェハ電位である311aと内壁面電位である312aとの間に、313に示すような電位差が発生する。この電位差により、異物がウェハ103へ引き寄せられて付着する可能性がある。
図4は、実施の形態1のプラズマ処理装置におけるプラズマ処理を含む処理の様子を図3と同様に示すタイムチャートである。図4の(a)は、μ波入射パワーを示し、μ波発振源106からのμ波電力である。(b)は、高周波バイアス入射パワーを示し、高周波電源105からの高周波電極104への電力である。(c)は、可変直流電源出力電圧を示す。実線の401は内側の静電吸着電極109への可変直流電源112の出力電圧、破線の402は外側の静電吸着電極110への可変直流電源113の出力電圧を示す。実施の形態1では、当該出力電圧は、可変に制御される。(d)は、ウェハ電位および内壁面電位を示す。実線の411はウェハ103の電位、破線の412は処理室101の内壁面101aの電位を示す。
実施の形態1のプラズマ処理装置において、ウェハ103が試料台である載置台102上に載置された後、制御装置115からの制御に基づいて、可変直流電源112および可変直流電源113は、ウェハ103の吸着のための所定の電圧を出力する。プラズマ処理装置は、その後、処理室101の内部の圧力調整等の処理の準備を行う。当該準備については図示を省略する。
上記準備が終了した後、(a)のように、時刻t0から、プラズマ発生のための所定のμ波電力が印加される。これによりプラズマが発生した後、放電中の時間T1において、(b)のように、高周波バイアスが印加されて、エッチング処理が行われる。所望のエッチング処理が終了すると、(b)で、まず高周波バイアス入射パワーが遮断される。当該遮断により、(d)で、時刻t1に示すように、ウェハ103の電位である411と、内壁面101aの電位である412とは、ほぼ同程度となる。
その後、(a)で、放電中断中の時間T2において、μ波入射パワーの供給が停止し、次の処理の準備のためにプラズマ放電が中断される。
時刻t1で示すプラズマ放電終了の瞬間には、処理室101の内壁面101aは、プラズマからの電子流入により帯電しており、(d)の412のように、ある程度の電位を持っている。この電位は、処理室101の内壁面101aに溜まった電荷がアースへと抜ける時定数に従って変化していく。実施の形態1では、この時定数は短く、処理室101の内壁面101aの電位は、412aに示すように、比較的速やかに0Vになるとする。
また時刻t1で、ウェハ103の電位に関しても、ある程度のリーク電流が流れるため、プラズマからの荷電粒子の流入による帯電で発生した電位は比較的速く消失し、抵抗値の内外差等によって現れる電極個別の特性に応じた電位となる。
このため、例えば前述のR1≠R2の場合、図3の一実施の形態のプラズマ処理装置の処理の場合では、(d)に示すように、放電中断中の時間T2では、時間T2で、内壁面101aの電位は、312aのように0Vになるが、ウェハ103の電位は、311aのように、0Vにはならない。即ち、ウェハ103と内壁面101aとの間に、313に示す電位差が発生することになる。
これに対して、図4の実施の形態1のプラズマ処理装置の処理では、制御装置115による、(c)の可変直流電源112および可変直流電源113の出力電圧の可変の制御を行う。(c)の400は、この可変直流電源112および可変直流電源113の出力電圧の変化およびその時間を示す。
制御装置115は、(c)の出力電圧の制御により、(d)のように、ウェハ103の電位を変化させる。即ち、制御装置115は、(d)で、放電中の時間T1のウェハ103の電位である411が、放電中断中の時間T2に、411aのように0Vになるように、当該出力電圧を、式2を満たすように変化させる。
(c)で、放電中の時間T1では、可変直流電源112の出力電圧である401は、所定の正の電圧であり、可変直流電源113の出力電圧である402は、所定の負の電圧である。制御装置115は、放電中断中の時間T2で、400の時間において、それぞれの所定の出力電圧値に維持する制御を行う。即ち、制御装置115は、可変直流電源112の出力電圧である401を、400の時間に、所定電圧高くなるように変化させて、401aの電圧の状態を維持する。同様に、制御装置115は、可変直流電源113の出力電圧である402を、400の時間に、所定電圧高くなるように変化させて、402aの電圧の状態を維持する。これにより、(d)で、400の時間に、ウェハ103の電位である411aは、内壁面101aの電位である412aと同様に0Vに近付く。
実施の形態1のプラズマ処理装置において、上記静電吸着電極109,110への可変直流電源112,113の出力電圧値の変化は、以下により達成される。即ち、記憶装置114は、プラズマ放電中断中の時間T2に出力すべき可変直流電源112,113の出力電圧値を記憶する。制御装置115は、放電中断中の時間T2に、記憶装置114に記憶された出力電圧値になるように、可変直流電源112,113の出力電圧値を可変に制御する。
なお、プラズマ処理装置は、ユーザの操作に基づいて記憶装置114に上記制御の出力電圧値を設定するためのユーザインタフェースを備えてもよい。
実施の形態1のプラズマ処理装置は、上記制御を含む動作によって、放電中断中の時間T2に、ウェハ103と内壁面101aとの間の電位差を解消する。(d)の400の時間では、411aおよび412aのように、当該電位差がほぼ0Vとなる。これにより、異物がウェハ103に誘引されて付着することが防止される。
プラズマ処理装置は、上記制御装置115による制御により時間T2の400で所定の出力電圧を維持したまま、処理室101内の圧力調整等の、次の放電処理のための準備を行う。当該準備が終了した後、プラズマ処理装置は、制御装置115による400での制御を停止する。これにより可変直流電源112,113は、次の放電処理のための所定の電圧、即ち401,402と同じ電圧を出力する。その後、時刻t2から、μ波入射パワーの供給が開始され、次の放電処理が実施される。
プラズマ処理装置は、以上のようなプラズマ放電処理および放電中断を含む制御を、最終の放電処理が終了するまで繰り返し、最終の放電処理の終了後には、所定のウェハ除電シーケンスを経て、可変直流電源112,113の電圧を遮断する。
[効果等]
上記プラズマ放電中断中にウェハ103と処理室101の内壁面101aとの間の電位差を解消するにあたり、どの程度まで電位差を小さくすれば、異物の付着の低減効果を得るために十分であるかについて、以下のように検討した。
図5は、実施の形態1のプラズマ処理装置における、帯電した異物のウェハ103への付着の低減効果について、計算によって見積もりを行った結果のグラフである。グラフの横軸はウェハ103と処理室101の内壁面101aとの電位差[V]を示す。グラフの縦軸は異物のウェハ103への付着率[%]を示す。
この見積りの計算は、以下の条件で行われた。処理室101内の圧力を0.6Paとし、処理室101内には平均3m/s程度の排気口へ向かうガスの流れがあるものとした。異物は、真空の処理室101の内壁面101aのうちの側面から1000個発生するものとした。異物の発生位置は、大まかな範囲で指定され、1000個の個々の異物の夫々の発生場所については、指定の範囲内でランダムに決定された。異物の粒径は、1000個の異物の夫々について、15nm以上120nm以下の値がランダムに与えられた。異物の初速に関しても、1000個の異物のそれぞれについて、5m/s以下の値がランダムに与えられた。本計算では、帯電した異物をウェハ103に引き寄せる効果について見積もるため、異物の帯電は、1000個の全ての異物で、−1.6×10−19[C]とした。
上記条件で異物のウェハ103への付着率を計算した。その結果、図5に示すように、ウェハ103と処理室101の内壁面101aとの間の電位差が+10Vである場合、ウェハ103へ付着する異物は2%程度であった。この付着率は、電位差が0Vである場合の付着率との差はあまり無い。しかしながら、ウェハ103と処理室101の内壁面101aとの電位差が+20Vである場合は、付着率が、8%程度まで上昇するという結果が得られた。
上記結果から、実施の形態1のプラズマ処理装置は、十分な異物の付着の低減効果が得られる、プラズマ放電中断中のウェハ103と内壁面101aとの電位差の目安を、±10V以内とした。図4の(d)で、放電中断中の時間T2の電位差を0Vで示しているが、当該電位差が±10V以内であれば、相応の十分な効果が得られる。
上述のように、実施の形態1のプラズマ処理装置およびそのプラズマ処理方法によれば、プラズマ処理および条件の切り替えに伴うプラズマ放電の中断中に、ウェハ103と処理室101の内壁面101aとの間に意図しない電位差が発生することを抑制し、帯電した異物のウェハ103への付着を低減することができる。
<実施の形態2>
図6,図7を用いて、本発明の実施の形態2のプラズマ処理装置について説明する。以下、実施の形態2における実施の形態1とは異なる構成の部分について説明する。実施の形態2のプラズマ処理装置は、実施の形態1のプラズマ処理装置における放電中断中の可変直流電源112,113の出力電圧を、ウェハ103の電位と可変直流電源112,113の出力電圧との間の関係を把握するための計測を基に決定する。
前述の実施の形態1では、ウェハ103の電位を、ウェハ103と静電吸着電極109,110との間の誘電体層111の抵抗値を基に決定する構成を示した。しかしながら、この抵抗値が正確に把握できない場合や、意図しない電位がその他の要因によって発生している場合は、実施の形態1の構成を適用することができない。
その場合、実施の形態2の構成を適用することが有効である。実施の形態2では、ウェハ103の電位であるVwafと、可変直流電源112,113の出力電圧値であるV1,V2との間の関係を計測によって把握しておく。これにより、プラズマ放電中断中にウェハ103と処理室101の内壁面101aとの間の電位差を低減させる制御を行うことができる。上記計測による把握を含む作業を、以下、検定と記載する。
実施の形態2のプラズマ処理装置は、実施の形態1のプラズマ処理装置と同様の構成要素に加え、上記検定を行うための手段として、実験装置を含む機構を備える。実施の形態2のプラズマ処理装置におけるプラズマ処理方法は、実施の形態1と同様のプラズマ処理装置の構成において、まず上記検定を行う。
上記検定は、例えば以下のような手段および手順により実現される。実施の形態2のプラズマ処理装置は、ウェハ103の電位の計測が可能な機構を設ける。この機構は、処理室101を大気開放してウェハ103に電位計測プローブを貼り付けること等により実現される。実施の形態2のプラズマ処理装置は、この計測の機構を用いて、制御装置115により可変直流電源112,113の出力電圧を様々に変化させた場合の、ウェハ103の電位を計測する。
[検定]
図6は、実施の形態2のプラズマ処理装置における、上記実験装置および計測の機構を含む検定の手段を用いて、ウェハ103の電位と、可変直流電源112,113の出力電圧とに関する検定を行った結果の例であるグラフを示す。グラフの横軸は、可変直流電源112,113の出力電圧の平均値[V]である。グラフの縦軸は、ウェハ103の電位[V]である。また、この検定はプラズマを生成しない状態で行った。
なお、この検定の際、以下の条件とした。出力電圧は、内側の静電吸着電極109の可変直流電源112が+500V、外側の静電吸着電極110の可変直流電源113が−500Vを基準とした。この出力電圧の変化は、可変直流電源112および可変直流電源113の両方で、等しい量で変化させることとした。例えば図6の横軸の可変直流電源の出力電圧の平均値を+10V変化させる場合には、可変直流電源112と可変直流電源113との両方の出力電圧を+10V変化させた。その場合、可変直流電源112の出力電圧は+510V、可変直流電源113の出力電圧は−490Vになる。
実施の形態2のプラズマ処理装置は、上記検定の結果、図6のように、可変直流電源112,113の出力電圧の平均値が0Vである場合には、ウェハ103に−40V程度の電位が付与されていた。当該出力電圧の平均値を変化させると、ウェハ103の電位も、当該平均値の変化量とほぼ同量変化した。ウェハ103の電位が0Vになる当該出力電圧の平均値は、+40V程度であった。
実施の形態2のプラズマ処理装置は、実施の形態1と同様に、プラズマ放電中断中の処理室101の内壁面101aの電位は、放電終了後に比較的速やかにおよそ0Vになる。そのため、実施の形態2のプラズマ処理装置は、制御装置115により、放電中断中、可
変直流電源112,113の出力電圧の平均値が+40Vになるように設定する。これにより、図4の(d)のように、ウェハ103と内壁面101aとの電位差を解消できる。
上記検定によって決定された、プラズマ放電中断中の可変直流電源112,113の出力電圧値を、V1ctrl,V2ctrlとする。図4の401aがV1ctrl,402aがV2ctrlに対応する。記憶装置114は、このV1ctrl,V2ctrlの値を記憶する。プラズマ処理装置は、図4の(c)と同様に、プラズマ放電中断中の時間T2において、制御装置115により、400の時間に、可変直流電源112,113の出力電圧値を、V1ctrl,V2ctrlとなるように制御する。
[効果等]
図7は、実施の形態2のプラズマ処理装置における、異物の付着の低減効果として、放電中断中に可変直流電源112,113の出力電圧を様々に変化させた際の、ウェハ103に付着した異物数の変化を表すグラフである。グラフの横軸は、可変直流電源112,113の出力電圧の平均値[V]、およびそれに対応付けられたウェハ103の電位[V]を示す。グラフの縦軸は、ウェハ103に付着した異物数を示す。この異物数は、可変直流電源112,113の出力電圧の平均値が0Vの場合の異物数によって規格化された値を示す。
図7に示すように、可変直流電源112,113の出力電圧の平均値が+40V付近、つまりウェハ103の電位が0V付近になっている場合、従来の通常の運用である可変直流電源112,113の出力電圧の平均値が0Vの場合と比較して、40%程度の異物低減効果が得られた。また、ウェハ103の電位が負極性になる場合には、ウェハ103の電位の絶対値が大きくなる程、ウェハ103に付着する異物数が増加する。一方、ウェハ103の電位が正極性になる場合には、ウェハ103の電位の絶対値が大きくなっても、ウェハ103に付着する異物数は大きくは変化しない。
上記結果から、以下の二点が推測される。一点は、処理室101内の帯電した異物の多くが正極性に帯電しているということである。ウェハ103の電位が負極性の場合の付着する異物の増加は、正極性に帯電した異物がウェハ103の電位に引き寄せられたことの結果であると考えられる。
もう一点は、ウェハ103に異物の帯電と同極性の電位を印加して、ウェハ103に飛来する帯電異物を跳ね返して異物の低減を図るという手法の効果は小さいということである。これは、前述の結果より正極性に帯電した異物の存在が示唆されているにも関わらず、ウェハ103に正極性の電位を付与しても異物の低減効果が得られなかったことから判断される。このことに関しては、放電中断中に発生する異物は、処理室101の内壁面101aから発生する際の初速度が十分小さく、ウェハ103と内壁面101aとの間に電位差が無い場合、ウェハ103まで飛来できる異物が少ない状況であると考えることで説明できる。従って、放電中断中には帯電した異物を不要にウェハ103へ引き寄せることが無いように電位を制御することが肝要であると言える。
実施の形態2のプラズマ処理装置は、上記二点を含めて考慮し、放電中断中、帯電した異物を不要にウェハ103へ引き寄せることが無いように、制御装置115により可変直流電源112,113の出力電圧を制御して、ウェハ103の電位を制御する。
以上の結果から、実施の形態2のプラズマ処理装置によれば、放電中断中にウェハ103と処理室101の内壁面101aとの間に意図しない電位差が発生することを抑制することで、帯電した異物のウェハ103への付着を低減できることが確認された。
<実施の形態3>
図8,図9を用いて、本発明の実施の形態3のプラズマ処理装置について説明する。以下、実施の形態3における実施の形態1および実施の形態2とは異なる構成の部分について説明する。
[プラズマ処理装置]
図8は、実施の形態3のプラズマ処理装置の要部断面の構成を示す。図8の実施の形態3のプラズマ処理装置も、ECR型エッチング装置であるが、ECR型に限らず適用可能である。実施の形態3のプラズマ処理装置は、実施の形態1および実施の形態2のプラズマ処理装置の構成要素に加え、実施の形態2とは異なる検定の手段を備える。実施の形態3における検定の手段は、当該プラズマ処理装置の検定を、処理室101の大気開放を行うこと無く実施するための機構を含む。実施の形態3のプラズマ処理装置におけるプラズマ処理方法は、当該検定の手段を用いて検定を行う手順を含む。
図8で、実施の形態3のプラズマ処理装置は、上記検定の手段の構成要素として、電流計801,802と、制御装置803とを備える。電流計801,802は、可変直流電源112,113からウェハ103に流れる電流を測定する電流計であり、制御装置803と接続される。制御装置803は、前述の制御装置115の代わりに設けられ、検定の制御の機能を含む。制御装置803は、電流計801,802で測定した電流が互いに等しくなるように、可変直流電源112,113の出力電圧値を制御する。
電流計801,802は、特に、載置台102における静電吸着電極109,110から誘電体層111を介してウェハ103へ流れる電流を検出する電流計としてもよい。
実施の形態3のプラズマ処理装置は、検定を行う際、処理室101内に、検定のためのプラズマである検定用プラズマ804を発生させる。この検定用プラズマ804のプラズマ放電を、以下、検定放電と記載する。
[等価回路]
図9は、実施の形態3のプラズマ処理装置における、検定放電中における、可変直流電源112,113、静電吸着電極109,110、誘電体層111、ウェハ103、検定用プラズマ804、および真空の処理室101を簡単にモデル化した等価回路を示す。I1は電流計801の電流、I2は電流計802の電流である。I3は、ウェハ103から検定用プラズマ804への電流である。R3は、検定用プラズマ804の抵抗値、C3は、検定用プラズマ804の静電容量値である。R4は、処理室101の内壁面101aの接地抵抗、C4は、処理室101の内壁面101aの対地静電容量である。
検定放電中は、ウェハ103と処理室101の内壁面101aとが、検定用プラズマ804によって電気的に接続される。この際、ウェハ103と処理室101の内壁面101aとの間の当該プラズマを介した抵抗値R3および静電容量値C3は、ウェハ103と静電吸着電極109,110との間の抵抗値R1,R2、および静電容量値C1,C2に比べて、それぞれ十分に小さい。
また、実施の形態3のプラズマ処理装置では、処理室101の内壁面101aの接地抵抗R4および対地静電容量C4も、上記抵抗値R1,R2および静電容量値C1,C2に比べて十分小さい。そのため、ウェハ103の電位は、検定放電中、ほぼ0Vとなる。
また、検定用プラズマ804に電流I3が流れることにより、電流計801と電流計802には、異なる電流であるI1とI2が流れる。実施の形態3のプラズマ処理装置は、制御装置803により、これらの両電流の値が等しくなるように、出力電圧値であるV1およびV2を設定する。当該設定により、検定用プラズマ804には、電流I3が流れなくなる。即ち、プラズマ放電が無い場合の等価回路と等しい状態となる。上記のように決まる可変直流電源112,113の出力電圧値であるV1およびV2が、プラズマ放電が無い時もウェハ103の電位が0Vになるような出力電圧であるV1ctrlおよびV2ctrlとなる。
実施の形態3のプラズマ処理装置は、ウェハ1枚の処理ごと、あるいは1ロットごと等、必要な単位およびタイミングで、検定放電を行う。検定放電の際、まずウェハ103が真空の処理室101内の載置台102に搬入される。ウェハ103は、静電吸着電極109,110によって載置台102に吸着される。この際の吸着電圧は、製品ウェハの処理を行う際に一般的に使用される値に設定される。
プラズマ処理装置は、その後、処理室101内の圧力調整等、検定放電のための準備を行う。当該準備が終了した後、プラズマ処理装置は、プラズマ発生のための所定のμ波電力の印加によりプラズマを発生させる。プラズマ発生後、電流計801,802で電流が計測される。制御装置803は、上記電流計801,802の両電流値であるI1,I2を監視する。制御装置803は、互いの電流値であるI1,I2の差が、当該電流値の絶対値の和に対して、±1%以内になるように、可変直流電源112,113の出力電圧であるV1,V2を制御する。なお当該可変直流電源112,113の出力電圧の変化は、前述と同様に、等しい量で変化させることとする。
制御装置803は、上記制御において、上記電流値の差が当該電流値の絶対値の和の±1%以内になった場合、可変直流電源112,113の出力電圧の制御を停止し、その際の出力電圧値であるV1,V2の値を、記憶装置114に記憶させる。ここで記憶されたV1,V2の値が、上述のV1ctrl,V2ctrlとなる。
なお、上記検定放電中の可変直流電源112,113の出力電圧の制御を停止する際の条件である、上記電流値の差は、当該電流値の絶対値の和の±1%以内でなくても構わない。ただし、前述のように、ウェハ103と内壁面101aとの電位差を、異物の低減効果が得られるように十分小さくできることが望まれる。
実施の形態3において、上記制御の停止の条件を、上記電流値の差が当該電流値の絶対値の和の±1%以内であることとしたのは、以下の理由による。実施の形態1における静電吸着電極109と静電吸着電極110との間の電位差が1000Vである。この1000Vの電位差に対して、異物の低減効果が得られるウェハ103と内壁面101aとの間の許容される電位差が±10Vである。上記許容される電位差である±10Vは、上記静電吸着電極109と静電吸着電極110との間の電位差である1000Vの±1%である
。よって、上記制御の停止の条件として、上記電流値の差が当該電流値の絶対値の和の±1%以内であることとする。
プラズマ処理装置は、検定後、製品ウェハの処理を行う。プラズマ処理装置は、製品ウェハの処理の際、制御装置803により、プラズマ放電中断中に、可変直流電源112,113の出力電圧値を、前述の図4の(c)と同様に、V1ctrl,V2ctrlとなるように制御する。
[効果等]
上述のように、実施の形態3のプラズマ処理装置のプラズマ処理方法によれば、処理室101の大気開放を行うこと無く検定を実施する。そして本プラズマ処理方法によれば、製品ウェハの処理において、プラズマ放電中断中にウェハ103と処理室101の内壁面101aとの間に意図しない電位差が発生することを抑制する。これにより、帯電した異物のウェハ103への付着を低減することができる。
<実施の形態4>
図10,図11を用いて、本発明の実施の形態4のプラズマ処理装置について説明する。以下、実施の形態4における前述の形態とは異なる構成の部分について説明する。
[プラズマ処理装置]
図10は、実施の形態4のプラズマ処理装置の要部断面の構成を示す。図10の実施の形態4のプラズマ処理装置も、ECR型エッチング装置であるが、ECR型エッチング装置に限らず適用可能である。実施の形態4のプラズマ処理装置は、前述の構成要素に加え、ウェハ電位計測プローブ1001と、内壁面電位計測プローブ1002と、制御装置1003とを有する。
ウェハ電位計測プローブ1001は、処理室101内のウェハ103の電位を計測するプローブである。内壁面電位計測プローブ1002は、処理室101の内壁面101aの電位を計測するプローブである。
制御装置1003は、制御装置115の代わりに設けられ、両プローブであるウェハ電位計測プローブ1001および内壁面電位計測プローブ1002の電位計測結果を監視して、当該結果を基に可変直流電源112,113の出力電圧を制御する機能を持つ。
実施の形態4において、処理室101の内壁面101aの基材は、例えば前述と同様に接地された導体である。これに限らず、実施の形態4は、当該内壁面101aの基材が接地されていない場合や、当該基材の素材が導体ではない場合等にも、好適に適用可能である。
上記内壁面101aの基材は、プラズマに暴露されていてもよい。当該基材は、接地されている場合には、プラズマ消失後に内壁面101aの表面が速やかにおおよそ0Vとなる程度の薄い誘電体の膜があってもよい。さらに実施の形態4は、内壁面101aの基材の誘電体の膜が厚く、電位の変化の時定数が数秒から数十秒、もしくはより長い時間に及ぶ場合にも、好適に適用可能である。
実施の形態4において、静電吸着電極109,110とウェハ103との間の誘電体層111は、ある程度のリーク電流が流れる程度の抵抗率となっていてもよいし、リーク電流がほとんど流れないような抵抗率となっていてもよい。例えば、誘電体層111は、前述のJohnsen−Rahbek効果によって吸着を行うための溶射膜であってもよいし、それよりも抵抗率が105〜106倍程度になる焼結体であってもよい。
実施の形態4のプラズマ処理装置におけるプラズマ処理方法では、プラズマ放電中断中、ウェハ電位計測プローブ1001と内壁面電位計測プローブ1002とを用いて、ウェハ103の電位と内壁面101aの電位との計測が行われる。制御装置1003は、これらの両プローブの計測結果を監視する。制御装置1003は、計測結果であるウェハ103の電位および内壁面101aの電位を基に、ウェハ103と内壁面101aとの電位差が小さくなるように、可変直流電源112,113の出力電圧を制御する。なお実施の形態4で、可変直流電源112,113の出力電圧の変化は、前述と同様に、等しい量で変化させることとする。
実施の形態4のプラズマ処理装置は、制御装置1003により上記制御を行うことにより、プラズマ放電中断中に、ウェハ103と処理室101の内壁面101aとの間の電位差を解消する。これにより、帯電した異物がウェハ103に引き寄せられて付着することを防止する。
[処理タイムチャート]
図11は、実施の形態4のプラズマ処理装置におけるプラズマ処理を含む処理のタイムチャートを前述と同様に示す。図11の処理は、前述の図4とは異なる内容として、プラズマ放電中断中の時間T2における(c)および(d)の形が異なる。
(c)の可変直流電源出力電圧において、1101は、内側の静電吸着電極109への可変直流電源112の出力電圧として、基準である所定の正の電圧である。1102は、外側の静電吸着電極110への可変直流電源113の出力電圧として、基準である所定の負の電圧である。1100は、放電中断中の時間T2における、制御装置1003の制御による出力電圧の変化およびその時間を示す。制御装置1003は、1100の時間に、可変直流電源112および可変直流電源113の出力電圧値を変化させる制御を行う。
1100の時間において、可変直流電源112の出力電圧である1101は、1101aのように変化し、可変直流電源113の出力電圧である1102は、1102aのように変化する。1101aは、1101の電圧値に対して所定電圧低い状態から、次第に電位が高くなり、1101の電圧値に対して所定電圧高い状態へと至るように変化する。同様に、1102aは、1102の電圧値に対して所定電圧低い状態から、次第に電位が高くなり、1102の電圧値に対して所定電圧高い状態へと至るように変化する。
(d)のウェハ電位および内壁面電位において、1111は、ウェハ103の電位、1112は、内壁面101aの電位を示す。時間T1の放電終了の時刻t1では、1111,1112は、前述と同様の電位である。時間T2において、ウェハ103の電位である1111は、1111aのように変化する。1111aは、1100の時間に、一旦少し電位が低くなってから次第に0Vに近付く形である。同様に、内壁面101aの電位である1112は、1112aのように変化する。1112aは、1100の時間に、次第に0Vに近付く形である。時刻t1の直後は、1111と1112との電位差があるが、その後、当該電位差がほぼ0Vになる。1100の時間では、1111aと1112aとの電位差がほぼ0Vである。
実施の形態4のプラズマ処理装置は、上記放電中断中の時間T2に、制御装置1003により、可変直流電源112,113の出力電圧の制御を行いながら、前述と同様に、処理室101内の圧力調整等、次の放電処理のための準備を行う。当該準備が終了した後、プラズマ処理装置は、制御装置1003による1100のような制御を停止する。これにより、可変直流電源112,113は、次の放電処理のための所定の電圧を出力する。その後、μ波電力の供給が開始され、次の放電処理が同様に実施される。
実施の形態4のプラズマ処理装置は、ウェハ103と内壁面101aとの電位差が小さくなるように、可変直流電源112,113の出力電圧の制御を行い続ける構成である。
これに限らず、ウェハ103と内壁面101aとの電位差が所定の値以内になるように上記出力電圧の制御を行う形態としても構わない。この形態の場合、例えば前述の実施の形態1で異物の低減効果が得られる目安とした値を用いて、ウェハ103と内壁面101aとの電位差を±10V以内になるように制御してもよい。
[効果等]
上述のように、実施の形態4のプラズマ処理装置におけるプラズマ処理方法によれば、製品ウェハの処理において、プラズマ放電中断中にウェハ103と内壁面101aとの間に意図しない電位差が発生することを抑制し、異物のウェハ103への付着を低減することができる。
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、ウェハ載置台上にウェハが載置されており、かつプラズマが発生していない場合に、ウェハと処理室内壁面の電位差を低減するように、ウェハ吸着電極用の可変直流電源の出力電圧を制御するプラズマ処理装置に関するものである。
尚、本発明は上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、一方の実施例の構成の一部を他方の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、一方の実施例の構成に他方の実施例の構成を加えることも可能である。さらに各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、上述した「試料台上にウェハが載置されており、かつプラズマが発生していない場合」は、実施形態1〜4における放電中断中のみならず、ウェハが処理室に搬入され、最初のプラズマ放電が開始されるまでの間の期間も含む。
また、各実施の形態においては、可変直流電源112および可変直流電源113の出力電圧の平均値を変化させる際、可変直流電源112および可変直流電源113の両方で、等しい量を変化させることとした。この電圧の変化は、可変直流電源112および可変直流電源113のそれぞれで異なる量を変化させても構わない。例えば、可変直流電源112の出力電圧が+500V、可変直流電源113の出力電圧が−500Vの状態から、可変直流電源112および113の出力電圧の平均値を+10V変化させる場合には、可変直流電源112の出力電圧を+520V、可変直流電源113の出力電圧を−500Vとしてもよい。
さらに各実施例において、可変直流電源112および可変直流電源113のそれぞれの出力の電圧値をそれぞれ変化させた場合で説明したが、必ずしもそれぞれの電圧値を両方とも変化させる必要はなく、少なくとも、可変直流電源112または可変直流電源113の出力の電圧値により処理室の内壁面とウェハとの電位差が0となるように制御しても良い。尚、可変直流電源112および可変直流電源113のそれぞれの出力の電圧値をそれぞれ変化させた場合の方が可変直流電源112または可変直流電源113の一方の出力の電圧値だけを変化させる場合よりウェハを試料台に安定的に静電吸着させることができる効果がある。
また、例えば、実施形態4におけるプラズマ処理装置は、壁面電位を計測する内壁面電位計測プローブを備えるが、本発明は、実施例1ないし3に記載したように内壁面の電位がプラズマ中断中、速やかに0Vになることが推察される場合には、内壁面電位計測プローブを備えない構成でも良い。また、本発明は、例えば、プラズマ中断中の内壁面電位を予め計測して把握している場合にも、内壁面電位計測プローブを備えない構成でも良い。
さらに、例えば、内壁面がプラズマによって帯電し、かつ、プラズマパラメータからその電位が確実に推測可能な場合には、本発明は、内壁面電位計測プローブを備えない構成でも良い。また、本発明は、上述した例以外にも種々の要因で内壁面に電位が発生する場合に、内壁面電位の直接計測以外の方法でその電位が確実に推測可能な場合にも内壁面電位計測プローブを備えない構成でも良い。
以上、本発明の技術的思想は、「プラズマが不存在の場合における、前記試料の電位と前記プラズマ処理室の内壁の電位との電位差を低減させる」ことである。また、プラズマ処理室の内壁の電位が略0である場合は、本発明の技術的思想は、「プラズマが不存在である場合の前記試料の電位を低減させる」ことであると表現することができる。さらに本発明は、上記の本発明の技術的思想の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更可能である。
また、本発明は、プラズマが不存在の場合における、試料の電位とプラズマ処理室の内壁の電位との電位差を低減させる直流電源の電圧値として予め求められた直流電源の電圧値をプラズマが不存在の場合に直流電源の出力値として出力する形態も含む。さらに本発明は、プラズマが不存在である場合の試料の電位を低減させる直流電源の電圧値として予め求められた直流電源の電圧値をプラズマが不存在の場合に直流電源の出力値として出力する形態も含む。