JP6608926B2 - 連結した反応器−蒸留系を使用して酸化エステル化反応からその場で水を除去する方法 - Google Patents

連結した反応器−蒸留系を使用して酸化エステル化反応からその場で水を除去する方法 Download PDF

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Description

メチルメタクリレート(MMA)は、とりわけアクリルプラスチックを含む様々な製品の製造において出発材料として使用される重要な化学物質である。MMAを製造するための費用対効果の高い方法の1つは、エチレンをプロピオンアルデヒドに変換することから開始し、その後縮合によりメタクロレイン(MAL)を形成し、続いて酸化エステル化によりMMAを形成することであり、酸化エステル化の間に水が副生成物として生成される。酸化エステル化のために、MALは、典型的にはPd含有触媒の存在下でアルコール(例えばメタノール)中で分子状の酸素と反応させられる。
米国特許第6,107,515号に示されているように、メタクロレインのMMAへの酸化エステル化の間に反応器内で生成された水は、酸化エステル化反応に使用されるPd含有触媒と相互作用することにより転化率及び選択率に有害な影響を及ぼすと考えられる。生成された水の一部はメタノールと競合してMALと反応し、こうして選択性に影響を及ぼす。また、水は触媒の活性部位に吸着する傾向があり、それによって水の濃度が増加するにつれて反応速度が低下する(転化率が低下する)。MAL酸化エステル化のための多孔質スチレン−ジビニルベンゼン共重合体触媒担体(大きな表面積を有する疎水性物質)に関する最近の研究はまた、水分除去が酸化エステル化反応器の性能にとって重要であり得ることを示唆している(Wang,B.,et al.,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2013,379(0),pp.322−326、及びWang B.et al.,Ind.Eng.Chem.Res.,2012,51(10),pp.3932−3938を参照されたい)。
酸化エステル化反応から水を除去するために、米国特許第6,107,515号に記載されているような公開された方法は、膜を使用して反応系から水を連続的に除去する。しかしながら、膜は、(供給濃度及び温度が低いために)分離フラックスが低く、必要とされるであろう膜面積が非常に大きいため実用的ではない。したがって、親水性膜による水の連続的除去は、商業規模ではなく小バッチ反応器に最も適している。
水をその場で反応から連続的に除去する、MALの酸化エステル化によるMMAを商業的に製造する方法を開発することが望ましい。
一実施形態では、酸化エステル化反応器から水を除去する方法は、(a)反応器内で酸化エステル化反応を行うことと、(b)反応器から粗生成物流を除去することと、(c)粗生成物流の第1の部分を生成物回収ゾーンに直接通すことと、(d)粗生成物流の第2の部分を蒸留塔に導入して、塔頂部流及び塔底部流を生成することと、(e)塔底部流の少なくとも一部を生成物回収ゾーンに通すことと、(f)頂部流の少なくとも一部を含む再循環流を反応器へ再循環させることと、を含み、再循環流は、再循環流の総重量に基づいて1重量パーセント(重量%)未満の水を含有し、第1の部分対第2の部分の重量比は、少なくとも1:10であり、反応器へ再循環される再循環流の量は、反応器が、反応器内容物の重量に基づいて2.5重量%以下の水を含有するような量である。
例示的な反応器/蒸留塔構成を示す。
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は互換的に使用される。用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、及びそれらの変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に現れる場合に限定的な意味を有しない。したがって、例えば、「1つの(a)」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、組成物が「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むことを意味すると解釈することができる。
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。当業者の理解と一致するように、数値範囲は、その範囲に含まれる可能性のある全ての部分範囲を含み、サポートすることを意図していることを理解されたい。例えば、1〜100の範囲は、1.01〜100、1〜99.99、1.01〜99.99、40〜60、1〜55等を意味することを意図する。明示的な値(例えば、1もしくは2、または3〜5、または6、または7)を含む範囲については、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、1〜2、2〜6、5〜7、3〜7、5〜6等)。
また、本明細書では、特許請求の範囲におけるそのような記載を含む数値範囲及び/または数値の列挙は、「約」という用語を含むものと解釈することができる。そのような場合、「約」という用語は、本明細書に列挙されたものと実質的に同じである数値範囲及び/または数値を指す。
本明細書で使用される用語「(メタ)」に続くアクリレート等の別の用語の使用は、アクリレート及びメタクリレートの両方を指す。例えば、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかを指し、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリルまたはメタクリルのいずれかを指し、「(メタ)アクリル酸」という用語は、アクリル酸またはメタクリル酸のいずれかを指す。
反対の記載がない限り、または文脈から暗示されない限り、全ての部及びパーセンテージは重量に基づいており、全ての試験方法は本出願の出願日現在のものである。米国特許慣行の目的のために、参照された特許、特許出願または刊行物の内容は、特に定義の開示(本開示において具体的に提供される任意の定義と矛盾しない範囲まで)及び当技術分野における一般的知識に関して、その全体が参照により組み込まれる(またはその同等の米国版が参照により組み込まれる)。
アルコール
本方法では、1つ以上のアルコールを使用することができる。典型的には、アルコールは脂肪族アルコール、芳香族アルコール、またはこれらのアルコールの混合物である。(メタ)アクリル酸エステルの製造において、アルコールは、メタノール、エタノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。対応するエステル、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートがそれぞれ得られる。
一実施形態では、アルコールはメタノール(MeOH)である。
アルデヒド
本方法で使用されるアルデヒドは、メタクロレイン、アクロレイン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、アルデヒドは、メタクロレイン及びアクロレインからなる群から選択される。
一実施形態では、アルデヒドはメタクロレイン(MAL)である。
酸素
本方法で使用される酸素は、分子状の酸素の形態であってもよいし、酸素が、反応に対して不活性な第2の気体で希釈された混合気体であってもよい。希釈ガスの例には、窒素、炭酸ガス、及び空気が含まれる。酸素含有ガスは、空気よりも高い酸素濃度を有する濃縮空気であってもよいし、純粋な酸素であってもよい。有利には、反応系中に存在する酸素の量は、反応に必要な化学量論量以上であり、好ましくは、化学量論量の1.2倍以上である。一実施形態では、存在する酸素の量は、必要とされる化学量論量の1.2〜2倍である。過酸化水素は、酸化剤として系に導入することができる。酸素含有ガスは、当業者に知られている任意の適切な手段によって反応系に導入することができる。例えば、酸素含有ガスは、スパージャーまたはパイプを介して反応器に導入することができる。酸素含有ガスを反応系に吹き込む簡単な方法を用いることができる。
触媒
本方法において使用される触媒は、パラジウム含有担持触媒を含むパラジウム(Pd)含有触媒のような、酸化エステル化反応において典型的に使用される触媒である。一実施形態では、触媒は、担持パラジウム及び鉛(Pb)含有触媒である。パラジウム含有触媒に含めることができる追加の元素には、これらに限定されるものではないが、Hg、Tl、Bi、Te、Ni、Cr、Co、Cd、In、Ta、Cu、Zn、Zr、Hf、W、Mn、Ag、Re、Sb、Sn、Rh、Ru、Ir、Pt、Au、Ti、Al、B、及びSiが含まれる。
一実施形態では、触媒担体は、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、マグネシア、水酸化マグネシウム、チタニア、炭酸カルシウム、及び活性炭からなる群から選択される。
方法
一実施形態では、本方法は、反応器内で酸化エステル化反応を行うことを含む。酸化エステル化法は周知である。例えば、米国特許第5,969,178号、米国特許第6,107,515号、米国特許第6,040,472号、米国特許第5,892,102号、米国特許第4,249,019号、及び米国特許第4,518,796号を参照されたい。
様々なタイプの反応器、例えば、連続撹拌タンク反応器、気泡塔型反応器、または固定床型反応器等を、本方法において使用することができる。反応器は攪拌されていてもされていなくてもよく、一般に反応液と共に移動する移動触媒を有していてもよいし、反応流体が流れる触媒の固定床を含有してもよい。反応器を通した反応流体の再循環は、これらの構成のいずれかで行うことができる。反応は、バッチ式、セミバッチ式、または連続式で行うことができる。
一実施形態では、反応はスラリー相で行われる。次いで、触媒を生成混合物から、例えば濾過またはデカンテーションによって分離することができる。様々な実施形態において、不均一触媒、例えばスラリーであり得る「反応流体」、または反応流体の少なくとも一部は、方法中に触媒の固定床に接触し得る。
一実施形態では、本方法は、MALとメタノールとのエステル化反応によってメチルメタクリレートを製造することを含む。MALとメタノールとのエステル化反応によるMMAの製造方法は、特に限定されず、好適な気相法、または液相法、またはスラリー相反応のいずれかを含み得る。また、反応の実施方法も特に限定されず、反応は連続式またはバッチ式のいずれの方法で行ってもよい。例えば、パラジウム系触媒を液相で連続的に使用して反応を実施することを含む方法が挙げられる。
一実施形態では、反応は、反応器または反応ゾーンの液相中の触媒のスラリーを使用して行うことができる。
一実施形態では、単一の反応ゾーンを有する単一の反応器が本方法において使用される。別の実施形態では、複数の反応器または反応ゾーンが本方法において使用される。一実施形態では、本方法で使用される少なくとも1つの反応器は、連続撹拌タンク反応器(CSTR)である。
一実施形態では、単一の反応ゾーンを有する単一の反応器が使用される。
一実施形態では、単一の反応器はCSTRである。
一実施形態では、酸化エステル化反応は、酸化反応条件下で動作される。酸化反応条件には、例えば、所望の反応生成物を生成するのに適した酸素分圧、反応全圧、温度、反応物の濃度、pH、及び反応時間が含まれる。本方法で使用される任意の反応器の特定の条件は、特に限定されず、本方法を使用して生成される特定の反応物及び生成物に基づいて選択される。
一実施形態では、酸素分圧は、反応物、反応条件、及び反応器の種類に応じて変化する。一実施形態では、反応器の出口側の酸素分圧は0.4kg/cm(5psia)以下の正圧である。一実施形態では、反応器の出口側の酸素分圧は2.0kg/cm(28psia)以下の正圧である。酸素分圧が低すぎると、アルデヒド転化率が低下し、副生成物が増加する。
一実施形態では、反応は、減圧、大気圧、または過圧で行うことができる。酸化エステル化反応の反応全圧は、典型的には、触媒が酸化エステル化反応のために活性である範囲内で選択される。しかしながら、典型的には、反応圧力は0.5kg/cm〜20kg/cm(7psia〜280psia)、または好ましくは1kg/cm〜10kg/cm(14psia〜140psia)の範囲内である。
一実施形態では、反応は、0℃〜120℃、または40℃〜90℃の温度で行うことができる。
一実施形態では、反応のpHは6〜9の範囲に維持される。必要に応じて、pHを維持するために、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を反応に添加してもよい。例示的なアルカリ土類金属化合物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩及びカルボン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
反応時間は、反応条件、反応物、及び反応に影響を及ぼし得る他の要因に応じて変化する。しかしながら、典型的には、反応時間は0.5〜20時間である。CSTRを使用する実施形態等の連続的方法の場合、反応時間(滞留時間)は、使用される圧力、温度、及び触媒によって決定される系の動力学によって左右される。
一実施形態において、反応に供給されるアルコール(例えば、メタノール)対、反応に供給されるアルデヒド(例えば、メタクロレイン)との比率は、特に限定されない。反応は、1:10〜1,000:1、好ましくは1:2〜50:1、より好ましくは2:1〜15:1のような広範囲のアルコール対アルデヒドのモル比に亘って行うことができる。一実施形態では、アルコールはメタノールであり、アルデヒドはメタクロレインであり、反応に供給されるメタノール対、反応に供給されるメタクロレインのモル比は、1:10〜1,000:1、または1:2〜50:1、または21:〜15:1である。
触媒は触媒量で用いられる。触媒の量は、正確な反応物、触媒の調製方法、触媒の組成、方法操作条件、反応器の種類等に応じて典型的に変化するが、触媒対出発アルデヒドの重量比は、一般に1:1000〜20:1である。有利には、触媒対アルデヒドの比率は1:100〜4:1である。しかしながら、触媒は、これらの範囲外の量で使用することができる。
一実施形態では、生成物が重合性化合物である場合に、重合阻害剤を本方法において用いることができる。多種多様な阻害剤が知られており、市販されている。阻害剤の例には、ヒドロキノン(HQ)、フェノチアジン(PTZ)、ヒドロキノンのメチルエステル(MEHQ)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−n−オキシル(4−ヒドロキシTEMPOまたは4HT)、メチレンブルー、銅サリチレート、銅ジアルキルジチオカルバメート等が含まれる。
一実施形態では、本方法は、反応器から粗生成物流を除去することを含む。粗生成物は、典型的には、未反応の出発物質(例えば、アルコール、アルデヒド)及び副生成物(水を含む)と共に、標的生成物((メタ)アクリル酸エステル)を含有する。一実施形態では、粗生成物流は、未反応メタノール及びメタクロレイン、ならびに副生成物として生成される量の水と共に、MMA(標的生成物)を含む。メタクリル酸(MAA)もまた、MMAの形成において副生成物として生成される。MMAはまた、反応のpHを維持するためにアルカリ性化合物(NaOH等)が使用される場合、NaMAAのようなその塩の形態で存在し得る。一実施形態では、追加の副生成物が、生成物流中に低濃度(蟻酸メチル(Me−形態)等の少量成分)で存在してもよい。
一実施形態では、本方法は、粗生成物流の第1の部分を生成物回収ゾーンに直接通すことを含む。粗生成物流の一部を生成物回収ゾーンに通すことにより、所望の生成物または複数の生成物(例えば、MMA)が、さらなる精製のために反応ゾーンから除去される。例えば、一実施形態では、反応物及び生成物、ならびに所望の及び所望されない生成物が、粗生成物流の第1の部分から分離される。
一実施形態では、本方法は、粗生成物流の第2の部分を蒸留塔に導入して、塔頂部流及び塔底部流を生成することを含む。
一実施形態では、蒸留塔は、粗生成物流の第2の部分を直接的または間接的に受け取ることができるように、反応器と流体連通している。一実施形態では、反応器は、連続撹拌タンク反応器であり、蒸留塔は、蒸留塔への供給物が反応器出口流の一部であるように反応器に接続され、塔の頂部は、反応器(あるいは、一実施形態では、前の反応器)に直接再循環されて戻される。蒸留塔は、このように反応器に連結され、これは、蒸留塔パラメーターが反応器(または前の反応器)における反応の動力学に影響を及ぼすことを意味する。
蒸留塔は、特定の酸化エステル化反応(例えば、出発物質、反応条件)に応じて異なる条件で操作されてもよく、限定的であると解釈されるべきではない。例えば、一実施形態では、蒸留塔は、頂部流からの水の除去を最大にするために、異なる圧力、還流比、及び留出物対供給物比で操作されてもよい。
MMAを形成するためのMALの酸化エステル化の一実施形態では、蒸留塔は、約1バール〜10バール、または1〜4バールで操作される。一実施形態では、操作還流比は、0.1〜10、または0.5〜3、または1に近い。ある実施形態では、操作還流比は、成分において良好な分画を達成するために1より大きくてもよいが、より高い還流比はより多くのエネルギーを必要とする。
一実施形態では、生成物回収ゾーンに向かう粗生成物の量(例えば、粗生成物流の第1の部分の量)及び蒸留塔に向かう粗生成物の量(例えば、粗生成物流の第2の部分)は、制御弁または他の可能な方法を使用して制御される。
一実施形態では、粗生成物流の第1の部分(すなわち、生成物回収ゾーンに向かう粗生成物流の量)対、粗生成物流の第2の部分(すなわち、蒸留塔に向かう粗生成物流の量)の重量比は、少なくとも1:10である。一実施形態では、粗生成物流の第1の部分対、粗生成物流の第2の部分の重量比は、1:10〜1:1、または1:8〜1:2である。
一実施形態では、頂部流は、ごく少量(1重量%以下)の水を含む未反応メタノール及びメタクロレインを主に含有する。プロセス流中の過剰のメタノールと共に、例えばMeOH−MMA共沸混合物(メタノール−MMA共沸混合物)のような共沸混合物の形成により、ある量のMMAも頂部流中に存在する。
一実施形態では、底部流は主にMMAを含有する。蒸留塔に供給される粗生成物流からの水の大部分は、底部流に分割される。底部流は、有機流及び水性流にさらに分割することができる単一流または2相流であってもよい。
一実施形態では、本方法は、塔底部流の少なくとも一部を生成物回収ゾーンに通し、塔頂部流の少なくとも一部を反応中に再循環させることを含む。
一実施形態では、本方法は、塔底部流の少なくとも一部を生成物回収ゾーンに通し、塔頂部流の少なくとも一部を反応器、またはある実施形態では、前の反応器に再循環させることを含む。
一実施形態では、本方法は、塔底部流の少なくとも一部を生成物回収ゾーンに通し、塔頂部流の少なくとも一部を反応器に再循環させることを含む。
一実施形態では、再循環流(反応器に戻された頂部流の一部)は、頂部流の一部の総重量に基づいて、1重量%以下の水、または1重量%未満の水を含有する。通常、再循環流にはいくらかの水が残っている。一実施形態では、再循環流は、頂部流の一部の総重量に基づいて、0重量%超〜1重量%以下の水、または0重量%超〜1重量%未満の水を含有する。
(1)蒸留塔に導入される粗生成物流の量、及び/または(2)反応器に再循環される頂部流の量を制御することにより、反応器内に存在する水の量は、反応器の総内容量に基づいて、2.5重量パーセント(重量%)を超えないように制御される。蒸留しない場合、反応器における水の濃度は、典型的には3重量%〜4重量%である。本方法を使用して、反応器における水の濃度は、2.5重量%以下、または2重量%以下、または1.5重量%以下、または1重量%以下で維持される。一実施形態では、反応器における水の濃度は、1重量%〜1.5重量%である。減少した含水量は、転化率及び選択率を増加させる。
一実施形態では、本方法は、粗生成物流の第1の部分対、粗生成物流の第2の部分の重量比を変えることを含む。比率が低いとき(例えば、約1:10)、より少ない粗生成物流が生成物回収ゾーンに向かい、より多い粗生成物流が蒸留塔に向かう。蒸留塔へのより多い粗生成物は、より多くの水が最終的に除去されることを意味し、反応器におけるより少ない含水量をもたらす。それに対して、粗生成物流の第1の部分対粗生成物流の第2の部分の比率が1:1により近い場合、粗生成物のより大きい部分が生成物回収ゾーンに向かい、より少ない粗生成物が蒸留塔に向かう。結果として、より少ない水が反応から除去され、反応器における含水量はより高くなる。
最初の蒸留装置は、蒸留塔に向かう粗生成物からの水分除去を最適化するように調整することもできる。例えば、主な設計変数(例えば、還流比、温度、段数、留出物対供給物画分、底部対供給物画分、及び/またはカラム圧力)のいずれかを、分割を最適化する既知の方法に従って変えることができることは理解されよう。
連続式攪拌タンク反応器系を使用する場合、反応器全体の水の濃度は、反応器出口の水の濃度と同じである。したがって、水の濃度は、カールフィッシャー滴定またはガスクロマトグラフィー(GC)を含むがこれに限定されない一般的な濃度分析法を使用して監視することができる。
蒸留は、通常、複数の共沸混合物の存在により、水を除去するための酸化エステル化反応では使用されない。しかしながら、粗生成物流の少なくとも一部を蒸留することにより、粗生成物流から水の少なくとも一部を首尾よく除去することができ、その結果、得られた塔頂流の少なくとも一部が反応器に戻された(再循環された)とき、反応器の総水分濃度が、反応器内容物の総重量に基づいて、2.5重量%以下に首尾よく減少することが予期せず発見された。言い換えれば、酸化エステル化の間に生成された水は、驚くべきことに、蒸留を使用し、かつ蒸留された粗生成物の一部を系に戻すことにより、その生成(その場)と実質的に同時に除去された。蒸留塔及び反応器間の再循環ループは、単一反応ゾーン系における水の濃度を制御する。さらなる理論に束縛されることなく、減少した含水量は、触媒の全体的な転化率及び選択率を有利に改善する。
図1は、本方法において使用されるような例示的な反応器/蒸留塔構成を示す。図示の実施形態では、新鮮な反応物(例えば、アルコール、アルデヒド及び触媒)は、反応器20に通される前に、任意選択のミキサー10に導入される。酸素(例えば、空気)は、反応器20に導入され、反応器20は、経路6を通ってスクラバに通気され得る。粗生成物の第1の部分は、経路2を介して生成物回収ゾーン30に送られる。粗生成物の第2の部分は、経路1(ポンプアラウンドループ)を介して蒸留塔35に送られる。塔底部流の少なくとも一部は、経路4を介して生成物回収ゾーン30に送られ、塔頂部流の少なくとも一部は、経路3を介して反応器20に再循環されて戻される。生成物回収ゾーン30で生成物から分離された未反応出発物質(複数可)は、ミキサー10に再循環されて戻されてもよい。
生成物
本方法は、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びそれらの組み合わせ等の(メタ)アクリル酸エステルを調製するために使用される。
一実施形態では、本方法は、MMAを調製するために使用される。
本発明の特定の実施形態
以下の実施例は、本発明を説明するために与えられ、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
共沸混合物の同定
反応系から水を除去するための蒸留の実行可能性を決定するために、物性評価のための非ランダム2液(NRTL)活性係数モデルについての回帰蒸気液体平衡(VLE)パラメーターを使用して、大気圧での共沸温度及び組成物を得る。相平衡の正確な表現は、二元及び三元系のデータセットを含む文献相平衡データの回帰による非ランダム2液体活性係数(NRTL)相平衡モデルを使用して開発される。この研究では、市販のAspen Plus 8.0の特性データ回帰モジュールを使用してVLE二元パラメーターを回帰するために、複数のソース(Dortmundデータバンクデータセット[4245,6118,19710]及びAsahi米国特許第5,969,178号)からの系の報告された共沸混合物を使用する。回帰モデルパラメーターを使用して計算された共沸データを、以下の表1に提供される報告された共沸データと比較する。この表は、予測された共沸データと報告された共沸データとの良好な一致を示す。
蒸留の効率を測定するために、以下の表2に記載の組成を有する流入供給組成物で50トレイ蒸留装置を使用する。還流比は0.95であり、留出物対供給物比は0.71である。塔は、塔の上部の温度が61℃、底部温度が77.55℃で、大気圧下で動作される。
頂部流の組成を以下の表3に示す。底部流は有機流と水性流に分割され、その組成は以下の表4及び5に記載されている。
頂部流は、水をほとんど含有せず、したがって、反応器に再循環させることができる。有機底部流は、大部分の量(97.60重量%)の最終生成物(MMA)を含有する。水性底部流は、大部分の量(76.87重量%)の水を含有する。したがって、底部流を回収ゾーンに除去することで、(1)最終生成物(MMA)の一部を回収し、(2)水の一部が反応器に戻ることを防止する。
連結した反応器−蒸留水分除去系の設計を導き、方法及び設計変数の、酸化エステル化反応器における水の濃度への効果を理解するために、ASPEN PLUSフローシートモデリングを使用する。ASPEN PLUSにおいて、反応器用のA RSTOICモデルまたはCSTRモデル、及び蒸留用のRADFRACモデルが想定される。ASPEN Plusでは、RStoicモデルを使用して、指定された反応範囲または転化率で化学量論的反応器をシミュレートする。反応動力学が知られていないかまたは重要ではなくかつ化学量論的であり、モルの範囲または転化が各反応について知られている場合、RStoicを使用して反応器をモデル化する。RStoicは、同時または順次に起こる反応をモデル化することができる。さらに、RStoicは生成物選択性及び反応熱計算を行うことができる。蒸留用のRADFRACモジュールは、化学平衡または反応動力学論的データの組み込みと同時に位相平衡をシミュレートする能力を有する。反応蒸留系のシミュレーションに使用されるRADFRACアルゴリズムの詳細は、Venkataramanら,Reactive Distillation using ASPEN Plus.,Chem.Eng.Prog.,(1990),69,45−54に詳細に記載されている。ASPEN Plusは、塔充填の流体力学や、データベースに存在しない成分の特性を予測する能力を含む強力な物理化学的特性データベースによってさらにサポートされている。反応器のための動力学または転化率/滞留時間を特定すること、及び蒸留塔のための適切な設計変数(還流率、段階、及びカラム圧力)を特定することにより、連結した反応器−蒸留系を使用した水分除去方法をシミュレートすることができる。上記の回帰特性パラメーターは、反応器及び蒸留モデルのそれぞれに使用される。
粗生成物流の第1の部分対、粗生成物流の第2の部分の重量比は、変化する重要な設計変数である。比率が低いとき(例えば、約1:10)、より少ない粗生成物流が生成物回収ゾーンに向かい、より多い粗生成物流が蒸留塔に向かう。蒸留塔へのより多い粗生成物は、最終的により多くの水が反応ゾーンから蒸留塔底部流を通って除去されることを意味し、反応器に戻る再循環流におけるより少ない含水量をもたらし、それにより反応器におけるより少ない含水量をもたらす。それに対して、粗生成物流の第1の部分対粗生成物流の第2の部分の比率が1:1により近い場合、粗生成物の大きい部分が生成物回収ゾーンに向かい、より少ない粗生成物が蒸留塔に向かう。結果として、より少ない水が反応ゾーンから除去され、反応器における含水量はより高くなる。これは、反応器においてより低い水の濃度を維持するためには第1の部分対第2の部分のより低い比率が所望されることを示すが、このシナリオでは、流の大きい部分が蒸留塔に入っているため、蒸留塔の大きさ及びエネルギー必要量は、非常に高くなるであろう。上記の比率の増加に伴い、蒸留塔の大きさ及びエネルギー必要量は低下する。したがって、反応器における含水量は、蒸留塔の大きさ及びエネルギー必要量と逆相関を有する。

Claims (10)

  1. 酸化エステル化反応器から水を除去する方法であって、(a)反応器内で酸化エステル化反応を行うことと、(b)前記反応器から粗生成物流を除去することと、(c)前記粗生成物流の第1の部分を生成物回収ゾーンに直接通すことと、(d)前記粗生成物流の第2の部分を蒸留塔に導入して、塔頂部流及び塔底部流を生成することと、(e)前記塔底部流の少なくとも一部を前記生成物回収ゾーンに通すことと、(f)前記頂部流の少なくとも一部を含む再循環流を前記反応器へ再循環させることと、を含み、前記再循環流は、前記再循環流の総重量に基づいて1重量パーセント(重量%)未満の水を含有し、前記第1の部分対前記第2の部分の重量比は、少なくとも1:10であり、前記反応器へ再循環される前記再循環流の量は、前記反応器が、前記反応器内容物の重量に基づいて2.5重量%以下の水を含有するような量である、方法。
  2. 前記の反応器内で酸化エステル化反応を行うことが、酸化エステル化条件下で、アルコール、アルデヒド、及び酸素を接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1の部分対前記第2の部分の前記重量比が、1:10〜1:1である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記第1の部分対前記第2の部分の前記重量比が、前記反応器が、前記反応器内容物の重量に基づいて1重量%〜1.5重量%の水を含有するように制御される、請求項1に記載の方法。
  5. 酸化エステル化反応器から水を除去する方法であって、(a)反応器内で酸化エステル化反応を行うことと、(b)前記反応器から粗生成物流を除去することと、(c)前記粗生成物流の第1の部分を生成物回収ゾーンに直接通すことと、(d)前記粗生成物流の第2の部分を蒸留塔に導入して、塔頂部流及び塔底部流を生成することと、(e)前記塔底部流の少なくとも一部を前記生成物回収ゾーンに通すことと、(f)前記頂部流の少なくとも一部を含む再循環流を前記反応器へ再循環させることと、(g)前記反応器内の水の量を、前記反応器が、前記反応器内容物の重量に基づいて2.5重量%以下の水を含有するように制御することと、を含み、前記再循環流は、前記再循環流の総重量に基づいて1重量パーセント(重量%)未満の水を含有し、前記第1の部分対前記第2の部分の重量比は、1:10〜1:1である、方法。
  6. 前記反応器内の水の量を制御する前記工程が、前記第1の部分対前記第2の部分の重量比を変えることを含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記の前記第1の部分対前記第2の部分の重量比を変えることが、前記蒸留塔に通される前記粗生成物流の量を増加させるために前記重量比を減少させることを含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記の前記第1の部分対前記第2の部分の重量比を変えることが、前記蒸留塔に通される前記粗生成物流の量を減少させるために前記重量比を増加させることを含む、請求項6に記載の方法。
  9. 前記反応器内の水の量を制御する前記工程が、前記反応器へ再循環される前記頂部流の量を制御することを含む、請求項5に記載の方法。
  10. 前記反応器内の水の量を制御する前記工程が、還流比、温度、段数、留出物対供給物画分、底部対供給物画分、カラム圧力、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される前記蒸留塔の操作の詳細を調節することを含む、請求項5に記載の方法。
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